(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなスピーカ装置では、各圧電振動子の基板からの高さや向きの均一性が圧電振動子の押し当ての程度に依存する。しかしながら、押し当ての程度にはばらつきが出るため、圧電振動子の形状及び大きさや向きをミクロンオーダで均一にして指向性を高めるのは困難である。
【0005】
本発明は、上記実情の下になされたものであり、より高い指向性を実現することができるスピーカ装置及びスピーカ装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るアレイスピーカ装置は、
均等な厚みを有する基板と、
それぞれ均等な厚みを有する基材層、第1の電極層、圧電素子層及び第2の電極層がこの順に積層されて構成され、前記基板の一方面に配列された振動子と、
前記振動子の振動に共振して、前記基板の厚み方向に出力される音波を前記基板に平行な平面に近づける共振子と、
を備え、
前記基板の他方面には、前記第1の電極層、前記第2の電極層を介して電圧信号が印加された前記振動子の振動により発生する音波を前記基板の厚み方向に出力する孔が、前記振動子に対応する位置に設けられ、
前記孔の中心に設けられ、前記共振子が取り付けられる取り付け部が設けられ、
前記孔の内周壁には、前記基板の厚み方向に凹凸が繰り返されたスカロップが形成されて
おり、
前記取り付け部の外周壁には、前記孔の内周壁に形成されたスカロップに対向するスカロップが形成されている。
【0008】
前記孔及び前記取り付け部はともに円柱状であり、
前記取り付け部は、前記孔と同心状に配置され、
前記共振子は、前記振動子に向かって先細りとなる円錐様の形状で、かつ、前記孔及び前記取り付け部と同心に配置されている、
こととしてもよい。
【0009】
前記第2の電極層は円形状であり、前記孔、前記取り付け部及び前記共振子と同心に配置されている、
こととしてもよい。
【0010】
前記振動子は、複数備えられており、
前記孔は
、複数の前記振動子のそれぞれに対応する位置に設けられている、
こととしてもよい。
【0011】
前記振動子は、前記基板上の正方形状の格子の交点に配列されている、
こととしてもよい。
【0012】
1つの振動子を中心とする円の円周上に、周囲の振動子が均等配置されている、
こととしてもよい。
【0013】
互いに隣接する3つの振動子が前記基板上の正三角形の頂点に位置するように、前記振動子が配列されている、
こととしてもよい。
【0014】
前記基板を複数敷き詰めた場合に、
隣接する他の基板の外縁と接する外縁に、前記他の基板の凹凸の外縁とかみ合う凹凸が設けられ、
前記基板間に跨がって隣接する3つの振動子が前記正三角形と合同の正三角形の頂点に位置するように、前記外縁の凸部分に前記振動子が設けられている、
こととしてもよい。
【0015】
前記第1の電極層の外部端子である第1の外部端子と、
前記基板の一方面に配列された前記振動子を構成する前記第2の電極層を電気接続するように前記基板上に形成された配線パターンと、
前記配線パターンの外部端子である第2の外部端子と、
を備え、
前記第1の外部端子は、
前記基板を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板に設けられた第1の外部端子に対向する前記基板上の位置に設けられ、
前記第2の外部端子は、
前記基板を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板に設けられた第2の外部端子に対向する前記基板上の位置に設けられている、
こととしてもよい。
【0016】
前記基板の一方面に露出した前記圧電素子層の一部で固定対象に固定されている、
こととしてもよい。
【0017】
前記第2の電極層を避けて形成される2次元格子の交点に配置された円形状又は矩形状の部分で、前記固定対象に固定される、
こととしてもよい。
【0018】
前記第2の電極層を避けて形成された部分全体で、前記固定対象に固定される、
こととしてもよい。
【0019】
前記第2の電極層を避けて形成される2次元格子状の部分で、前記固定対象に固定される、
こととしてもよい。
【0020】
本発明の第2の観点に係るアレイスピーカ装置の製造方法は、
SOI(Silicon On Insulator)基板の活性層としての基材層上に第1の電極層を成膜するステップと、
前記第1の電極層の上に圧電素子層を成膜するステップと、
前記圧電素子層の上
に第2の電極層を成膜するステップと、
前記基材層、前記第1の電極層、前記圧電素子層及び前記第2の電極層から成る振動子を、エッチングにより前記基板の一方面に形成するステップと、
前記基板を裏返して、前記第1の電極層、前記第2の電極層を介して電圧信号が印加された前記圧電素子層の振動により発生する音波を前記基板の厚み方向に出力する孔
と、前記孔の中心に設けられ、前記振動子の振動に共振して、前記基板の厚み方向に出力される音波を前記基板に平行な平面に近づける共振子が取り付けられる取り付け部とを、前記基板の他方面に対する深掘りエッチングにより前記振動子に対応する位置に形成
し、前記孔の内周壁及び前記取り付け部の外周壁に前記基板の厚み方向に凹凸が繰り返されたスカロップを形成するステップと、
前記取り付け部に前記共振子を取り付けるステップと、
を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、半導体製造技術を用いて、基板上に、振動子と、振動子の振動により発生する音波を基板の厚み方向に出力する孔とを形成する。これにより、振動子及び孔によって構成されるスピーカの形状、大きさ及び向きの均一性を高めることができる。この結果、より高い指向性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の実施の形態1に係るアレイスピーカ装置の斜視図である。
【
図2】
図1Bのアレイスピーカ装置のA−A断面図である。
【
図3】スピーカ部を拡大して示す断面斜視図である。
【
図4】アレイスピーカ装置に接続される信号系を示すブロック図である。
【
図5A】電圧が加えられた場合の振動子の動作(その1)を示す図である。
【
図5B】電圧が加えられた場合の振動子の動作(その2)を示す図である。
【
図6】スピーカ部に設けられたスカロップを示す断面図である。
【
図7A】アレイスピーカ装置の指向性(その1)を示す指向特性図である。
【
図7B】アレイスピーカ装置の指向性(その2)を示す指向特性図である。
【
図8】アレイスピーカ装置の製造工程を示すフローチャートである。
【
図9B】第1の電極層が積層された様子を示す図である。
【
図9C】圧電素子層が積層された様子を示す図である。
【
図10A】圧電素子層がパターニングされた様子を示す図である。
【
図10B】第2の電極層が成膜された様子を示す図である。
【
図10C】第2の電極層がパターニングされた様子を示す図である。
【
図11A】基板が裏返され、底面が保護された様子を示す図である。
【
図11B】基板上に深掘りエッチングのためのマスクが形成された様子を示す図である。
【
図11C】深掘りエッチングが行われた様子を示す図である。
【
図12A】基板がエッチングされた様子を示す図である。
【
図12B】BOX層がエッチングされた様子を示す図である。
【
図12C】カップが取り付けられた様子を示す図である。
【
図13】本発明の実施の形態2に係るアレイスピーカ装置の斜視図である。
【
図15】本発明の実施の形態3に係るアレイスピーカ装置の斜視図である。
【
図17】本発明の実施の形態4に係るアレイスピーカ装置の斜視図である。
【
図19】本発明の実施の形態5に係るアレイスピーカ装置の斜視図である。
【
図21A】本発明の実施の形態6に係るアレイスピーカ装置の上面図である。
【
図21B】本発明の実施の形態6に係るアレイスピーカ装置の底面図である。
【
図23A】本発明の実施の形態7に係るアレイスピーカ装置の上面図である。
【
図23B】本発明の実施の形態7に係るアレイスピーカ装置の底面図である。
【
図25A】本発明の実施の形態8に係るアレイスピーカ装置の上面図である。
【
図25B】本発明の実施の形態8に係るアレイスピーカ装置の底面図である。
【
図27A】アレイスピーカ装置の固定方法(その1)を示す図である。
【
図28A】アレイスピーカ装置の固定方法(その2)を示す図である。
【
図29A】アレイスピーカ装置の固定方法(その3)を示す図である。
【
図30A】アレイスピーカ装置の固定方法(その4)を示す図である。
【
図31A】アレイスピーカ装置の固定方法(その5)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
【0025】
図1A及び
図1Bに示すように、アレイスピーカ装置1Aは、装置全体の支持基板である基板2と、基板2上に2行2列で配列された複数のスピーカ部3と、を備える。各スピーカ部3は、基板2の厚み方向、すなわち+Z方向を音波の出力方向としている。各スピーカ部3は、半導体製造技術であるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて同じ形状及び大きさ、同じ向きで製造されており、高い指向性を有している。なお、音波とは、音声、楽音の他、超音波を含んでいる。
【0026】
基板2は、均等な厚みを有する正方形状の平板であり、例えば、シリコン(Si)等で形成されている。基板2の厚みは、例えば、500μm程度である。
【0027】
図1Bに示すように、スピーカ部3は、基板2上に、基板2と相似な正方形の頂点にそれぞれ配列されている。したがって、X軸方向におけるスピーカ部3の配置間隔とY軸方向におけるスピーカ部3の配置間隔は同じである。
【0028】
各スピーカ部3に対応する位置には、孔4が設けられている。各孔4は円柱状であり、スピーカ部3で発生した音波を基板2の厚み方向に出力する。各孔4の中心には、後述するカップ15を取り付けるための取り付け部5が設けられている。取り付け部5は、孔4と同心状に配置された円柱状の部材である。
【0029】
図1BのA−A断面である
図2に示すように、基板2は、支持層10A、BOX(Buried Oxide)層10B及び基材層11から構成されたSOI(Silicon On Insulator)基板から形成されている。支持層10Aはシリコン(Si)で形成されており、厚みは例えば525μmである。BOX層10Bは、シリコン酸化膜(SiO
2)で形成されており、厚みは例えば数μmである。基材層11は、シリコン(Si)で形成されている。基材層11は、Si活性層とも呼ばれており、厚みは例えば150μmである。SOI基板は、半導体製造に用いられるものであり、各層の厚みは均一である。
【0030】
図2に示すように、アレイスピーカ装置1Aは、支持層10Aと、取り付け部5と、BOX層10Bと、基材層11に加え、第1の電極層12と、圧電素子層13と、第2の電極層14と、カップ15と、を備える。
図2では、下から、第2の電極層14、圧電素子層13、第1の電極層12、基材層11、BOX層10B及び支持層10A(取り付け部5)の順に積層されている。第2の電極層14、圧電素子層13、第1の電極層12、基材層11、BOX層10B及び支持層10A(取り付け部5)は、それぞれ厚みが均一である。
【0031】
第1の電極層12は、白金、金等の導電性のある部材で形成されており、その厚みは1μm以下である。この第1の電極層12は、基板2全体に形成されている。
【0032】
圧電素子層13は、電圧を加えることによって電歪する圧電材料で形成されており、その厚みは数μmである。圧電素子層13は、電圧信号が加えられると伸縮する。圧電材質としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3:PZT)等が採用されている。
【0033】
第2の電極層14は、白金、金等の導電性のある部材で形成されており、その厚みは1μm以下である。この第2の電極層14は、スピーカ部3毎に設けられている。第2の電極層14は円形状であり、孔4、取り付け部5及びカップ15と同心に配置されている。
【0034】
本実施の形態では、
図3に示すように、それぞれ均等な厚みを有する基材層11、第1の電極層12、圧電素子層13及び第2の電極層14がこの順に積層されて振動子20が構成されている。振動子20は、基板2の一方面(−Z面)側に取り付けられている。スピーカ部3は、この振動子20の上に、BOX層10B、支持層10A(取り付け部5を含む)及びカップ15が取り付けられて、構成されている。
【0035】
カップ15は、振動子20の振動に共振して、基板2の厚み方向に出力される音波の波面を基板2に平行な平面に近づける共振子である。カップ15は、孔4が深くなるに連れて先細りとなる。言い換えると、振動子20に向かって先細りとなる円錐様の形状となっており、孔4及び取り付け部5と同心に配置されている。カップ15は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金によって形成されており、共振周波数は40kHzである。40kHz周辺の帯域は、人の可聴域から外れており、音響に影響を与えない帯域であるとされている。
【0036】
スピーカ部3には、再生する音に対応する電圧信号を供給する信号系が接続されている。信号系は、
図4に示すように、音声信号出力部30と、信号変調部31とを備える。
【0037】
音声信号出力部30は、アレイスピーカ装置1Aに再生させる音に対応する電圧信号を出力する。この電圧信号の周波数は可聴域である。
【0038】
信号変調部31は、音声信号出力部30から出力された電圧信号を、所定の変調周波数で変調する。所定の変調周波数としては、カップ15の共振周波数である40kHz近辺の周波数が用いられる。信号変調部31の変調方式としては例えばAM変調(振幅変調)が用いられる。
【0039】
信号変調部31で変調された電圧信号は、第2の電極層14及び第1の電極層12の間の電圧信号として振動子20に印加される。この電圧信号により、振動子20が振動して音波が発生する。
【0040】
例えば、
図5Aに示すように、第2の電極層14に正の電圧が印加され、第1の電極層12に負の電圧が印加されると、圧電素子層13は、矢印に示すようにXY方向に伸張する。しかしながら、基材層11は伸張しないため、振動子20は、−Z方向に凸に湾曲する。
【0041】
一方、
図5Bに示すように、第2の電極層14に負の電圧を印加し、第1の電極層12に正に電圧を印加すると、圧電素子層13は、矢印に示すようにXY方向に収縮する。しかしながら、基材層11は伸縮しないため、振動子20は+Z方向に凸に湾曲する。
【0042】
なお、圧電素子層13の極性によっては、印加される電圧に対する伸縮が逆になる場合もある。この場合、振動子20は、
図5A及び
図5Bに示す方向とは逆に湾曲する。
【0043】
上記電圧信号は、正負を繰り返して振動する信号であるため、その電圧信号に応じて振動子20は、
図5A及び
図5Bの状態を繰り返し、振動する。この振動により、音波が発生する。
【0044】
孔4は、振動子20に対応する位置に設けられている。第1の電極層12、第2の電極層14を介して電圧信号が印加された振動子20の振動により発生した音波は、孔4の中を、基板2の厚み方向に進む。このとき、取り付け部5に取り付けられたカップ15は、振動子20の振動に共振して、振動子20の振動によって発生した音波を、球面波からXY面に平行な波面を有する平面波に変換する。カップ15で波面が変換された音波(平面波)は、孔4から出力され、+Z方向に進む。
【0045】
ところで、基板2の孔4は、後述のように、深掘りエッチングにより形成される。孔4の内周壁には、
図6に示すように、基板2の厚み方向に凹凸が繰り返されたスカロップSが形成される。スカロップSは、深掘りエッチングにおけるエッチングの繰り返しに応じて形成される深さ方向の凹凸であり、その数は、後述のエッチング繰り返し回数に依存する。孔4の内周璧に形成されたスカロップSに対向して取り付け部5の外周壁にもスカロップSが形成されている。
【0046】
図7Aに示すように、電圧信号の変調周波数を40kHzとした場合の指向特性では、+Z方向(0度の方向)のピークが鋭くなっている。このことは、指向性が高くなっていることを示している。これは、各スピーカが、半導体製造技術により、形状、大きさが同一となり、向きも同じとなるように形成されているためである。
【0047】
また、
図7Bに示すように、電圧信号の変調周波数を43.6kHzとした場合の指向特性では、+Z方向のピークがさらに鋭くなっている。このことは、指向性がさらに高くなっていることを示している。これは、アレイスピーカ装置1Aの全体の共振周波数が、43.6kHzに近いためであると考えられる。
【0048】
次に、アレイスピーカ装置1Aの製造方法について説明する。アレイスピーカ装置1Aは、上述のようにMEMS技術を用いて製造される。
【0049】
アレイスピーカ装置1Aを製造する際には、
図8に示すように、まず、SOIウエハを準備する(ステップS1)。
図9Aに示すように、SOI基板とは、半導体基板から成る支持基板(支持層10Aとなる)と、支持基板上の埋込酸化膜であるBOX層(BOX層10Bとなる)と、BOX層上の半導体層であるシリコン(SOI)層(基材層11)とから成る積層構造を有する基板であり、酸化膜を内包するウエハである。
【0050】
SOIウエハは、以下の手順で形成される。まず、厚みが均一なバルクシリコンのウエハに酸素分子をイオン注入によりシリコン結晶表面から埋め込み、それを高熱で酸化させることでシリコン結晶中に酸化シリコンの絶縁膜を形成する。そして、もう一枚の加工されていない厚みが均一なバルクウエハと表面同士で貼り合わせ、先のウエハを剥離して作成する。剥離厚は、酸化膜より深部に事前に注入された水素イオンの表面からの距離によって制御され、剥離面は化学機械研磨(CMP)により表面仕上げされる。このようにして、支持層10A,BOX層10B及び基材層11に対応する部分の厚みが均一なSOIウエハが形成される。
【0051】
続いて、SOIウエハの活性層(基材層11)の上に、例えば、スパッタ装置を用いたスパッタ法により、第1の電極層12を成膜する(ステップS2)。
図9Bには、基材層11の上に第1の電極層12が成膜された様子が示されている。
【0052】
続いて、例えばスパッタ装置を用いたスパッタ法により、PZTの膜である圧電素子層13を成膜する(ステップS3)。
図9Cには、第1の電極層12の上に圧電素子層13が成膜された様子が示されている。
【0053】
続いて、フォトリソグラフィ法により圧電素子層13のパターニングを行う(ステップS4)。ここでは、圧電素子層13の四隅がエッチングにより取り除かれ、取り除かれた部分から第1の電極層12が露出するように圧電素子層13がパターニングされる。
【0054】
より具体的には、コータ等を用いて圧電素子層13上にフォトレジストが塗布され、フォトレジスト上に圧電素子層13の形状のパターンが露光装置により転写される。転写されたパターンはデベロッパ等で現像され、エッチング装置においてエッチングされて、圧電素子層13のパターニングが完了する。これにより、
図10Aに示すように、第1の電極層12の四隅に、外部端子12Aが形成される。
【0055】
続いて、スパッタ装置を用いたスパッタ法により、圧電素子層13の上に第2の電極層14を成膜する(ステップS5)。
図10Bに示すように、第2の電極層14は、圧電素子層13及び第1の電極層12の一部の上に成膜される。
【0056】
続いて、第2の電極層14をフォトリソグラフィ法でパターニングする(ステップS6)。ここでは、第2の電極層14の周辺がエッチングにより取り除かれ、第2の電極層14がパターニングされ、振動子20に対応する位置に第2の電極層14が形成される。
【0057】
より具体的には、コータ等を用いて第2の電極層14上にフォトレジストが塗布され、第2の電極層14の形状のパターンが、露光装置によりフォトレジストに転写される。転写されたパターンはデベロッパ等で現像され、エッチング装置においてエッチングされ、パターンニングが完了し、第2の電極層14が形成される。これにより、
図10Cに示すように、円形状の第2の電極層14が形成される。
【0058】
続いて、基板2を裏返し、活性層(基材層11)側の保護を行う(ステップS7)。このとき、
図11Aに示すように、下側となる第1の電極層12、圧電素子層13及び第2の電極層14の上には保護膜16が形成される。
【0059】
続いて、深掘りエッチング用のマスク17を形成し、支持層10Aの上に取り付ける(ステップS8)。このようなマスク17には、例えば石英(SiO
2)が用いられる。これにより、
図11Bに示すように、支持層10A及び取り付け部5が形成される領域
以外の領域のみ孔が空いたマスク17が支持層10A上に設置される。
【0060】
続いて、支持層10Aに対して深掘りエッチングを行う(ステップS9)。深掘りエッチングは、ボッシュプロセスとも呼ばれる。ボッシュプロセスでは、等方性エッチング、保護膜形成(パッシベーション)、異方性エッチングを複数回繰り返すことにより、
図11Cに示すように、深い(アスペクト比が高い)孔4が形成されるとともに取り付け部5が形成される。この過程で、孔4の内周璧、取り付け部5の外周壁にスカロップ(スカロプス)Sが形成される。
【0061】
等方性エッチングでは、例えば、SF
6ガスが用いられる。このSF
6ガスから発生するF系ラジカルにより、マスク17で覆われていない支持層10Aの部分(孔4の部分)がエッチングされる。
【0062】
また、保護膜形成には、C
4F
8プラズマが用いられ、C
4F
8が保護膜として堆積する。これにより孔4を含む支持層10Aの全体に保護膜が形成される。
【0063】
また、異方性エッチングでは、F系の反応性のイオン(F
+イオン)を孔4の底部に高速で当てることにより、等方性エッチングの底部に形成された保護膜が除去される。
【0064】
この保護膜が除去された部分に、再び等方性エッチングが行われ、孔4を深さ方向に広げていく。このような工程が繰り返されて、深堀エッチングが進められる。深さがBOX層10Bまで到達すると、深堀エッチングを終了する。なお、スカロップSのピッチや凹凸の深さは、各工程での反応時間の調整等により決定することが可能である。
【0065】
続いて、活性層(基材層11)側を覆っていた保護膜16を除去する(ステップS10)。これにより、スピーカ部3の周辺の断面は、
図12Aに示されるような状態となる。
【0066】
続いて、深掘りエッチングのストッパとなっていた孔4の底面のBOX層10Bを、エッチング装置を用いたエッチングにより除去する(ステップS11)。これにより、スピーカ部3の周辺の断面は、
図12Bに示されるような状態となる。
【0067】
続いて、カップ(共振子)15を接着剤により取り付け部5に取り付ける(ステップS12)。これにより、スピーカ部3の周辺は、
図12Cに示されるような状態となる。この後、SOIウエハをダイシングして、正方形状にカットする。これにより、アレイスピーカ装置1Aがほぼ完成する。
【0068】
上述のように、アレイスピーカ装置1Aは、複数のスピーカ部3が、均一な厚みの層が積層されて形成される。これにより、各スピーカ部3の大きさ及び形状や向きは、ほぼ同一となる。したがって、各スピーカ部3に同じ電圧信号を入力すれば、発生する音波は、すべて同じ方向に出力される。この結果、より高い指向性を実現することができる。
【0069】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、半導体製造技術を用いて、基板2上に振動子20と、振動子20の振動により発生する音波を基板2の厚み方向に出力する孔4とを形成する。これにより、振動子20及び孔4によって構成されるスピーカ部3の形状、大きさ及び向きの均一性を高めることができる。この結果、各スピーカ部3から出力される音波の向きのばらつきや位相差を低減して、より高い指向性を実現することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、アレイスピーカ装置1Aの薄膜化も可能である。例えば、全体の厚みを600μm程度にすることができる。
【0071】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図13に示すように、本実施の形態2に係るアレイスピーカ装置1Bは、9つのスピーカ部3(振動子20)を備えている。9つのスピーカ部3(振動子20)は、正方形状の格子の交点上に配置している。本実施の形態でも、各スピーカ部3の取り付け部5にカップ15が取り付けられている。
【0072】
本実施の形態では、X軸方向及びY軸方向のスピーカ部3の配列間隔は均一である。したがって、アレイスピーカ装置1Bで発生する音波は、基板2の厚み方向に均一であり、高い指向性を実現することができる。
【0073】
図14Aには、電圧信号の変調周波数を40kHzとしたときの指向特性が示され、
図14Bには、電圧信号の変調周波数を43.6kHzとしたときの指向特性が示されている。
図14A及び
図14Bに示すように、この実施の形態に係るアレイスピーカ装置1Bも、+Z方向のピークが鋭くなっている。また、変調周波数をアレイスピーカ装置1B全体の共振周波数に近い43.6kHzとしたときの方が、+Z方向のピークが鋭くなっている。
【0074】
実施の形態3.
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図15に示すように、本実施の形態3に係るアレイスピーカ装置1Cは、上記実施の形態2と同様に、9つのスピーカ部3(振動子20)を備えているが、スピーカ部3には、カップ15が取り付けられていない。
【0075】
この場合でも、
図16A(変調周波数40kHz)及び
図16B(変調周波数45.4kHz)に示すように、基板2の厚み方向の指向性は極めて鋭くなっている。ここでも、変調周波数を、アレイスピーカ装置1C全体の共振周波数に近い45.4kHzとしたときの方が、+Z方向のピークが大きくなっている。
【0076】
実施の形態4.
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図17に示すように、本実施の形態4に係るアレイスピーカ装置1Dは、7個のスピーカ部3(振動子20)を備えている。1つのスピーカ部3(振動子20)を中心とする円の円周上に、周囲の残りのスピーカ部3(振動子20)が均等配置されている。
【0077】
この場合でも、
図18A(変調周波数40kHz)及び
図18B(変調周波数37.6kHz)に示すように、基板2の厚み方向(+Z方向)の音波の指向性は極めて鋭くなっている。
【0078】
実施の形態5.
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図19に示すように、本実施の形態5に係るアレイスピーカ装置1Eは、基板2が円形状となっている。1つのスピーカ部3(振動子20)を中心とする円の円周上に、残りのスピーカ部3(振動子20)が均等配置されている点は、上記実施の形態4と同じである。
【0079】
この場合でも、
図20A(変調周波数40kHz)及び
図20B(変調周波数38.2kHz)に示すように、基板2の厚み方向の指向性は極めて鋭くなっている。ここでも、変調周波数を、アレイスピーカ装置1E全体の共振周波数に近い周波数38.2kHzとした場合の方が、指向性は鋭くなっている。
【0080】
実施の形態6.
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
図21Aに示すように、本実施の形態6に係るアレイスピーカ装置1Fでは、基板2上に27個のスピーカ部3(振動子20)が配列されている。本実施の形態6に係るアレイスピーカ装置1Fでは、
図21Bに示すように、互いに隣接する3つのスピーカ部3(振動子20)が基板2上の正三角形の頂点に位置するように、スピーカ部3(振動子20)が配列されている。
【0081】
図21Bに示すように、アレイスピーカ装置1Fの底面では、圧電素子層13上の振動子20に対応する位置に、円形状の第2の電極層14が形成されており、第2の電極層14間を結ぶ配線パターン14Aが接続されている。配線パターン14Aは、基板2の四隅に配設された外部端子14Bに接続されている。この外部端子14Bに、
図4の信号変調部31
が接続されており、外部端子14B、配線パターン14Aを介して電圧信号が第2の電極層14に印加される。
【0082】
図21Bに示すように、XY面内において、隣接するスピーカ部3(振動子20)の間の距離は均等であるため、基板2の厚み方向への指向性をさらに高めることができる。
【0083】
このアレイスピーカ装置1Fでは、
図22Aに示すように、スピーカ部3を同じ方向に向けて基板2をXY面に複数敷き詰めることができる。このようにすれば、全体の音量をより大きくすることができる。この場合、
図22Bに示すように、外部端子12Aは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子12Aに対向する基板2上の位置(基板2の四隅)に設けられている。
【0084】
同じく、外部端子14Bは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子14Bに対向する基板2上の位置(基板2の四隅)に設けられている。これらの外部端子12A、14Bを基板2間でジャンパ線等を用いて電気的に接続すれば、基板2間にまたがって、圧電素子層13の並列回路を構築することができる。これにより、電圧信号を送るための回路を簡素化することができる。
【0085】
実施の形態7.
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
図23Aに示すように、本実施の形態7に係るアレイスピーカ装置1Gには、基板2上に25個のスピーカ部3が配列されている。スピーカ部3は、基板2上の正方形状の格子の交点に配列されている。
【0086】
図23Bに示すように、アレイスピーカ装置1Gの−Z面では、圧電素子層13上に、振動子20に対応する位置に、円形状の第2の電極層14が形成され、第2の電極層14間を結ぶ配線パターン14Aが接続されている。配線パターン14Aは外部端子14Bに接続されている。この外部端子14Bに、
図4の信号変調部31が接続されており、外部端子14B、配線パターン14Aを介して電圧信号が第2の電極層14に印加される。
【0087】
XY面内において、X軸方向及びY軸方向に隣接するスピーカ部3(振動子20)の距離は均等であるため、基板2の厚み方向への指向性をさらに高めることができる。
【0088】
このアレイスピーカ装置1Gでは、
図24Aに示すように、スピーカ部3を同じ方向に向けて基板2をXY面に複数敷き詰めることができる。このようにすれば、全体の音量をより大きくすることができる。この場合、
図24Bに示すように、外部端子12Aは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子12Aに対向する基板2上の位置(基板2の四隅)に設けられている。
【0089】
同じく、外部端子14Bは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子14Bに対向する基板2上の位置(基板2の四隅)に設けられている。隣接する基板2の外部端子12A、14B同士をジャンパ線等で接続すれば、基板2間に跨がって圧電素子層13の並列回路を構築することができる。したがって、電圧信号を送るための回路を簡素化することができる。
【0090】
実施の形態8.
次に、本発明の実施の形態8について説明する。
図25A及び
図25Bに示すように、本実施の形態8に係るアレイスピーカ装置1Hには、30個のスピーカ部3が配列されている。本実施の形態8に係るアレイスピーカ装置1Hでは、互いに隣接する3つのスピーカ部3(振動子20)が基板2上の正三角形の頂点に位置するように、スピーカ部3(振動子20)が配列されている。
【0091】
本実施の形態では、
図26Aに示すように、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2の外縁と接する外縁に、他の基板2の凹凸の外縁とかみ合う凹凸が設けられている。また、本実施の形態では、基板2間に跨がって隣接する3つのスピーカ部3(振動子20)が、1つの基板2上に配置された隣接する3つのスピーカ部3(振動子20)が形成する正三角形と合同の正三角形の頂点に位置するように、外縁の凸部分にスピーカ部3(振動子20)が設けられている。
【0092】
図25B及び
図26Bに示すように、外部端子12Aは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子12Aに対向する基板2上の位置(四隅)に設けられている。同じく、外部端子14Bは、基板2を複数敷き詰めた場合に、隣接する他の基板2に設けられた外部端子14Bに対向する基板2上の位置(基板2の外縁の中点及び凹凸の角部)に設けられている。隣接する基板2の外部端子14B同士をジャンパ線等で接続し、基板2間に跨がる圧電素子層13の並列回路を構築することができる。したがって、複数のアレイスピーカ装置1Hに電圧信号を送るための回路を簡素化することができる。
【0093】
このように、隣接する複数の基板2に跨がって、スピーカ部3(振動子20)の配置間隔が均等になっているので、音量を大きくすることができるとともに、指向性を高めることができる。
【0094】
実施の形態9.
次に、本発明の実施の形態9について説明する。本実施の形態9に係るアレイスピーカ装置は、固定対象へ装置を固定する部分に特徴を有する。固定対象には、金属製(例えばアルミや真鍮)、樹脂製の台座などがある。
【0095】
図27Aに示すように、本実施の形態9に係るアレイスピーカ装置1Iでは、基板2の一方面(−Z面)に露出した圧電素子層13の一部に固定部40が形成されている。本実施の形態に係るアレイスピーカ装置1Iでは、固定部40は、第2の電極層14を避けて形成される2次元格子の交点に配置されている。各固定部40の形状は円形状である。この固定部40で、アレイスピーカ装置1
Iは、固定対象に接着剤又はねじ止めされて固定される。
【0096】
図27Bは、電圧信号の変調周波数を40kHzとしたときの指向特性が示され、
図27Cには、電圧信号の変調周波数をアレイスピーカ装置1I全体の共振周波数である39.6kHzとしたときの指向特性が示されている。
図27B及び
図27Cに示すように、+Z方向への音の指向性は、極めて鋭くなっている。
【0097】
実施の形態10.
次に、本発明の実施の形態10について説明する。本実施の形態10に係るアレイスピーカ装置は、固定対象へ装置を固定する部分に特徴を有する。
【0098】
図28Aに示すように、本実施の形態10に係るアレイスピーカ装置1Jは、基板2の一方面(−Z面)に露出した圧電素子層13の一部に固定部41が形成されている。本実施の形態に係るアレイスピーカ装置1Jでは、固定部41は、第2の電極層14を避けて形成される2次元格子の交点に配置されている。各固定部41の形状は矩形状である。この固定部41で、アレイスピーカ装置1Jは、固定対象に接着剤等で接着されて固定される。
【0099】
図28Bは、電圧信号の変調周波数を40kHzとしたときの指向特性が示され、
図28Cには、電圧信号の変調周波数をアレイスピーカ装置1J全体の共振周波数である39.6kHzとしたときの指向特性が示されている。
図28B及び
図28Cに示すように、+Z方向への音の指向性は鋭くなっている。変調周波数を39.6kHzとした
図28Cの方が、ピークは若干鋭くなっている。
【0100】
実施の形態11.
次に、本発明の実施の形態11について説明する。本実施の形態に係るアレイスピーカ装置は、固定対象へ装置を固定する部分に特徴を有する。
【0101】
図29Aに示すように、本実施の形態で係るアレイスピーカ装置1Kでは、基板2の一方面に露出した圧電素子層13の一部で固定部42が形成される。固定部42は、第2の電極層14を避けて形成された圧電素子層13の全体を覆っている。固定部42と第2の電極層14との間には、若干のマージンが設けられている。
【0102】
図29Bは、電圧信号の変調周波数を40kHzとしたときの指向特性が示され、
図29Cには、電圧信号の変調周波数をアレイスピーカ装置1K全体の共振周波数である39.6kHzとしたときの指向特性が示されている。
図29B及び
図29Cに示すように、+Z方向への音の指向性は、極めて鋭くなっている。変調周波数を39.6kHzとしたときの方が、若干ピークが鋭くなっている。
【0103】
実施の形態12.
次に、本発明の実施の形態12について説明する。本実施の形態12に係るアレイスピーカ装置は、固定対象へ装置を固定する部分に特徴を有する。
【0104】
図30Aに示すように、本実施の形態に係るアレイスピーカ装置1Lでは、基板2の一方面(−Z面)に露出した圧電素子層13の一部で固定部43が形成され、固定部43が固定対象に接着されて固定されている。固定部43は、第2の電極層14を避けて形成された正方形格子状となっている。
【0105】
図30Bは、音声信号の変調周波数を、40kHzとしたときの指向特性が示され、
図30Cには、音声信号の変調周波数を、アレイスピーカ装置1L全体の共振周波数である37kHzとしたときの指向特性が示されている。
図30B及び
図30Cに示すように、+Z方向への音の指向性は極めて鋭くなっている。変調周波数を37kHzとしたときの方が、ピークは鋭くなっている。
【0106】
実施の形態13.
次に、本発明の実施の形態13について説明する。本実施の形態13に係るアレイスピーカ装置は、固定対象へ装置を固定する部分に特徴を有する。
【0107】
図31Aに示すように、本実施の形態13に係るアレイスピーカ装置1Mでは、基板2の一方面に露出した圧電素子層13の一部で固定部44が形成され、固定部44が固定対象に接着されて固定されている。固定部44は、第2の電極層14を避けて形成された正方形格子状の交点に形成されており、その形状は円形状となっている。固定部44の大きさは、第2の電極層14との隙間(マージン)を最小限としてできるだけ大きくなっている。
【0108】
図31Bには、電圧信号の変調周波数を、40kHzとしたときの指向特性が示され、
図31Cには、電圧信号の変調周波数を、アレイスピーカ装置1M全体の共振周波数である40.6kHzとしたときの指向特性が示されている。
図31B及び
図31Cに示すように、+Z方向への音の指向性は、極めて鋭くなっている。
【0109】
固定方法が異なるアレイスピーカ装置1I〜1Mにおける指向特性をそれぞれ比較すると、上記実施の形態9に係るアレイスピーカ装置1
Iにおける固定部40により固定対象に固定した場合に、最も出力する音の指向性が高くなるという結果が得られた。
【0110】
上記各実施の形態に係るアレイスピーカ装置の製造方法における各工程で用いる具体的な加工方法、例えば各層の成膜、パターニング、エッチング方法などについては、適宜変更が可能である。例えば、用いる材料に応じて、その材料に適した半導体ウエハ上への成膜方法を採用することが可能である。
【0111】
上述したアレイスピーカ装置の1A〜1Mにおける各種材質及び寸法は、あくまで例示であり、これに限定されない。そのサイズは、実装する各種機器に応じて適宜調整可能である。
【0112】
上記各実施の形態では、圧電材料をPZTとしたが、他の圧電材料を用いてもよい。BaTiO
3、PbTiO
3等の他の圧電材料であってもよいし、水晶やニオブ酸リチウム等の圧電単結晶を用いてもよい。また、酸化亜鉛(ZnO)、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン重合体等の圧電高分子膜を用いてもよい。
【0113】
上記各実施の形態では、孔4は円形状であったが、矩形等、その他の形状であってもよい。取り付け部5、カップ15も、音波の波面を平面波に変換できるのであれば、多角形等、その他の形状であってもよい。
【0114】
上記各実施の形態では、音声信号の変調方式をAM変調としたが、FM方式(周波数変調方式)を採用するようにしてもよい。
【0115】
上記各実施の形態では、MEMS技術を用いて製造される対象を、単体のスピーカ部3がアレイ化されたアレイスピーカ装置としたが、これに限られるものではない。本発明のスピーカ装置は、スピーカを1つだけ有する装置であってもよい。
【0116】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0117】
なお、本願については、2015年12月25日に出願された日本国特許出願2015−254860号を基礎とする優先権を主張し、本明細書中に日本国特許出願2015−254860号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照として取り込むものとする。