特許第6569791号(P6569791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569791
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】蓄電池搭載機器の保守運用システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20190826BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20190826BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20190826BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H02J13/00 301A
   H02J13/00 A
   H02J9/06 120
   H02J7/00 Y
   H01M10/48 P
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-170731(P2018-170731)
(22)【出願日】2018年9月12日
(62)【分割の表示】特願2014-259847(P2014-259847)の分割
【原出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2018-201331(P2018-201331A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2018年9月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-44959(P2014-44959)
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今泉 博文
(72)【発明者】
【氏名】内堀 富勝
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−110047(JP,A)
【文献】 特開2012−135151(JP,A)
【文献】 特開2012−133552(JP,A)
【文献】 特開2004−254459(JP,A)
【文献】 特開2011−072121(JP,A)
【文献】 特開2013−009531(JP,A)
【文献】 米国特許第05859596(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 −10/48
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H02J 9/00 −13/00
G06F 1/26 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池及びその蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置を備えた蓄電池搭載機器の保守運用システムであって、
前記蓄電池搭載機器には、前記蓄電池の状態をその蓄電池の管理情報として取得して記憶する管理情報記憶部と、管理用ネットワークを介して前記蓄電池搭載機器の管理用コンピュータと通信する管理ネットワーク用通信部と、前記管理用ネットワークとは独立した無線通信回線を介して情報端末と通信する無線通信部とが備えられ、
前記無線通信回線を介して前記管理情報を前記情報端末に送信する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項2】
蓄電池及びその蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置を備えた蓄電池搭載機器の保守運用システムであって、
前記蓄電池搭載機器には、前記蓄電池の状態をその蓄電池の管理情報として取得して記憶する管理情報記憶部と、管理用ネットワークを介して前記蓄電池搭載機器の管理用コンピュータと通信する管理ネットワーク用通信部と、前記管理用ネットワークとは独立した通信回線を介して携帯情報端末と通信する通信部とが備えられ、
前記通信回線を介して前記管理情報を前記携帯情報端末に送信する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項3】
請求項2に記載の保守運用システムにおいて、前記蓄電池を管理するための設定情報を、前記携帯情報端末から前記蓄電池搭載機器に設定する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の保守運用システムにおいて、前記携帯情報端末は、前記管理情報記憶部から取得した前記管理情報を分析して表示する分析アプリケーションを有する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか一項に記載の保守運用システムにおいて、前記携帯情報端末は、前記蓄電池搭載機器の前記管理情報を記録したデータベースを有する運用サーバーと公衆無線電話回線を介して通信する通信アプリケーションを有する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項6】
請求項5に記載の保守運用システムにおいて、前記運用サーバーは、前記蓄電池を管理するための設定情報を、前記運用サーバーから前記携帯情報端末を介して前記蓄電池搭載機器に設定する、もしくは前記蓄電池搭載機器に設定された前記設定情報を、前記携帯情報端末を介して取得し記憶する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の保守運用システムにおいて、前記管理用ネットワークから前記管理ネットワーク用通信部に通信できなくなった際には、前記運用サーバーに予め設定されたセキュリティコードの認証により前記携帯情報端末から前記通信回線を介して前記管理ネットワーク用通信部の通信用設定情報を設定する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項8】
請求項5から請求項7の何れか一項に記載の保守運用システムにおいて、前記携帯情報端末は、前記管理情報記憶部から取得した前記管理情報を分析して表示する分析アプリケーションを有する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【請求項9】
請求項8に記載の保守運用システムにおいて、前記分析アプリケーションは、前記運用サーバーが前記管理情報記憶部から取得して分析した前記管理情報を表示する蓄電池搭載機器の保守運用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される発明は、蓄電池搭載機器及びその保守運用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池搭載機器として例えば無停電電源装置があり、これは電力系統の停電時に蓄電池から負荷装置に交流電力を供給するバックアップ電源として機能するよう設計されている。近年、この無停電電源装置等の蓄電池搭載機器は、リチウムイオン電池等の高性能蓄電池を多数搭載して、高容量化・高機能化が進み、ネットワークを介した運用監視が実用化されている。
【0003】
ところが、高容量の蓄電池を搭載した蓄電池搭載機器では、蓄電池のセル数は極めて多数にのぼり、その分、管理情報量は膨大になる。このため、その情報を管理用のネットワークを介してサーバーに送り込むとネットワークのトラフィック量が大きくなって各種の障害が予想される。
【0004】
そこで、例えば、セル毎の電流・電圧の経時的な計測情報、停電検出情報、蓄電池の充電情報等の管理情報を無停電電源装置側の記憶装置に蓄積しておき、例えば無停電電源装置の状態が変化したときに電子メール機能によって管理者にメールを送信するメール報知システムが実用化されている。メールを受けた保守要員は、管理コンピュータのウエブブラウザから無停電電源装置の制御装置に設定されているウエブサーバーにアクセスして無停電電源装置の管理情報を確認したり、無停電電源装置の設置場所に赴いて直接に検査したりすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−009531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異常報知のメールを受けて保守要員が現場に赴いた場合、現場において詳細な管理情報を確認したいときがある。そのためには、ネットワークにノートパソコン等を接続して無停電電源装置のウエブサーバーからの情報を閲覧することが望ましい。しかし、多くの場合、無停電電源装置のメーカーのサービスマンである保守要員が顧客会社のネットワークにノートパソコンを接続するには、セキュリティ上の問題があるため、その承認手続は容易ではない。
【0007】
このため、蓄電池搭載機器の管理用のネットワークに接続しなくても、簡易に管理情報を閲覧できる仕組みが要望されていた。
【0008】
そこで本明細書は、蓄電池搭載機器を運用保守するに際し、保守要員が蓄電池搭載機器に記録された管理情報を簡易に確認できる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示される蓄電池搭載機器の保守運用システムは、蓄電池搭載機器は、蓄電池の状態をその蓄電池の管理情報として取得して記憶する管理情報記憶部と、管理用ネットワークを介して前記蓄電池搭載機器の管理用コンピュータと通信する管理ネットワーク用通信部と、前記管理用ネットワークとは独立した無線通信回線を介して情報端末と通信する無線通信部とが備えられ、前記無線通信回線を介して前記管理情報を前記情報端末に送信するようにしたものである。
本明細書で開示される蓄電池搭載機器の保守運用システムは、蓄電池搭載機器は、蓄電池の状態をその蓄電池の管理情報として取得して記憶する管理情報記憶部と、管理用ネットワークを介して前記蓄電池搭載機器の管理用コンピュータと通信する管理ネットワーク用通信部と、前記管理用ネットワークとは独立した通信回線を介して携帯情報端末と通信する通信部とが備えられ、前記通信回線を介して前記管理情報を前記携帯情報端末に送信するようにしたものである。
【0010】
蓄電池搭載機器が電力管理システムの電力管理サーバーによって制御されている場合には、携帯情報端末が公衆無線電話回線を介して電力管理サーバーと通信する公衆回線通信部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本明細書により開示される技術によれば、蓄電池搭載機器を運用保守するに際し、保守要員が蓄電池搭載機器に記録された管理情報を簡易に確認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電力管理システムの構成を示すブロック図
図2】無停電電源装置の構成を示すブロック図
図3】ネットワークユニットと保守運用システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態を図1ないし図3を参照して説明する。
【0014】
交流の電力系統10に複数台の負荷装置11〜14が接続されている。負荷装置11,12としては電力系統10の停電に対して電力のバックアップを必要とするサーバー機器を例示でき、負荷装置13,14としては空調機器や照明機器等の一般的な負荷装置を例示できる。負荷装置11,12は、電力バックアップのためそれぞれ蓄電池搭載機器に相当する無停電電源装置20(以後、「UPS20」と称する)を介して電力系統10に連なる。
【0015】
2台のUPS20及び負荷装置13,14は、ネットワーク30を介してEMSコントローラ31に接続され、後に詳述するように電力管理サーバー32からの信号を受けたEMSコントローラ31によってそれらの動作が制御される。なお、電力管理サーバー32は、各負荷装置11〜14及びUPS20の動作に関する情報のデータベースを有しており、それに基づいて実際の電力需給状態に応じて負荷装置の最適な運用態様を解析し、その解析結果に基づいてEMSコントローラ31がUPS20,負荷装置13,14に動作指令を出力する。
【0016】
UPS20は、図2に示すように、電力系統10からの交流を整流器21によって整流し、双方向コンバーター22を介してリチウムイオン電池等の蓄電池23を充電する。蓄電池23に蓄えられた電力は、双方向コンバーター22を介してインバータ24に与えられ、交流電力に変換されてインバータバイパススイッチ25を介して負荷装置11,12に与えられる。
【0017】
UPS20内の構成要素である整流器21、双方向コンバーター22、インバータ24及びインバータバイパススイッチ25はUPS制御回路26によって制御される。電力系統10が正常に電力を供給している場合には、蓄電池23が所定の残容量を維持するように充電すると共にインバータ24からの交流電力が負荷装置11,12に供給される。
【0018】
蓄電池23の残容量は、例えば蓄電池23の電圧・内部抵抗等の情報からUPS制御装置26が演算する。UPS制御装置26は、その蓄電池23を構成するセル毎の電圧、SOC(State Of Charge:残容量)、SOH(State Of Health:劣化状態)及び温度も所定時間毎に演算又は測定しており、併せてUPS20の動作状態、UPS20を構成する部品の故障状況も取得し、UPS制御装置26内に設けられている図示しない記憶回路に記憶している。従って、このUPS制御装置26が蓄電池23の状態をその蓄電池の管理情報として取得して記憶する管理情報記録部として機能する。
【0019】
一方、電力系統10の停電が検出されると、UPS制御装置26は、蓄電池23に充電されている直流電力を、双方向コンバーター22を介してインバータ24に供給して交流電力に変換し、インバータ24からの交流電力を負荷装置11,12に供給する。このように、このUPS制御装置26は、蓄電池23の充放電を所定の充放電アルゴリズムに従って制御する充放電制御装置として機能する。その充放電アルゴリズムは、UPS制御装置26のメモリーと後述するネットワークユニット40に設けられているアルゴリズム記憶部に相当する記憶部41に記録されている。なお、インバータバイパススイッチ25は例えばUPS20の点検作業時にインバータ24を停止させる場合に、電力系統10の電力を負荷装置11,12に直接的に供給するように切り換えられる。
【0020】
UPS20には、UPS20をネットワーク30に接続するためのネットワークユニット40が備えられている。このネットワークユニット40は、詳細には図3に示す構成で、前述の記憶部41,有線LAN用通信部42,主演算部43及び無線LAN用通信部44を備える。
【0021】
有線LAN用通信部42は、EMSコントローラ31がつながるネットワーク30に有線接続するためのコネクタ(図示せず)を有する。ネットワーク30は図3に示すようにUPS20の動作をモニターする管理用コンピュータ45も接続することができ、電力管理システムのためのネットワークとして機能するだけでなく、UPS20の動作を管理する管理用ネットワークとしても機能する。
【0022】
無線通信部44は例えばWi−Fi(登録商標)等の無線LAN又はブルートゥース(登録商標)等の無線通信回線のためのインターフェースである。この無線通信部44は例えば保守点検用の携帯情報端末50を無線通信によって接続するためのもので、ネットワーク30とは切り離された独立の無線ネットワークを確立する。なお、携帯情報端末50は、3G又は4G等の公衆無線電話回線を介して基地局51とも通信できる。携帯情報端末50には、基地局51がつながるネットワーク52を介して例えばUPS20群の動作パラメータや動作ログを記録しているUPS20用の運用サーバー53との間で通信するための通信プログラムがインストールされている。
【0023】
記憶部41には、主演算部43の各種機能を実行するプログラムが格納されている。例えば、UPS制御装置26において取得した蓄電池23の管理情報がUPS制御装置26の記憶部内でオーバーフローする前に記憶部41に転送するプログラム、それらの情報を管理するログファイルプログラム、動作情報をHTTP/HTTPSベースのユーザインターフェースとして提供するためのWEBサーバープログラム、遠隔監視のためのSNMP(Simple Network Management Protocol)プログラム、無線通信部44を介して携帯情報端末50との間で通信する通信制御プログラム、UPS20側で異常や停電を検出した場合にメール送信するメール送信プログラム等が記憶部41に記録されている。併せて、記憶部41には、前述したUPS制御装置26の充放電アルゴリズムを記憶する領域と、蓄電池23の管理情報を記憶する領域が確保され、管理情報記憶部としても機能する。
【0024】
次に、本実施形態において、UPS20に異常が生じたときの保守手順について説明する。UPS20において、例えば蓄電池23のSOHが設定レベルを下回った場合、或いは部品故障を検出した場合、或いは蓄電池23の温度が設定レベルを上回った場合等には、ネットワーク30内の所定のアドレスにそれを報知する電子メールがネットワークユニット40から送信される。ネットワーク30に接続されている管理用コンピュータ45にインストールしたブラウザにおいて所定のURLを入力することで、ネットワークユニット40に設定されているWEBサーバーからUPS20の動作状況が管理用コンピュータ45に送信され、遠隔地の管理用コンピュータ45のブラウザで確認することができる。
【0025】
その結果、UPS20が設置されている現場に保守要員が出向く必要があると判断される場合には、保守要員は所定の携帯情報端末50を持って現場にでかける。UPS20の設置現場に到着したら、携帯情報端末50において無線LAN接続のための所定の認証作業を行えば、携帯情報端末50がネットワークユニット40の無線LAN用通信部44を介してデータ通信が確立する。そこで、携帯情報端末50の所定のアプリケーションプログラムを立ち上げることで、UPS20のログファイルを記憶部41から読み出して携帯情報端末50において閲覧することができる。
【0026】
この場合、携帯情報端末50とネットワークユニット40との間の無線通信回線によって確立された無線ネットワークを介して、膨大なデータ量の管理情報が送信されることになるが、その無線ネットワークは管理用のネットワーク30とは全く独立であるから、ネットワーク30を介した電力管理サーバー32による電力管理システムの管理動作やUPS20の監視動作に影響を与えることはなく、安全・安定的に電力管理とUPS20の監視を継続することができる。また、携帯情報端末50からネットワーク30内に侵入することはできないから、セキュリティ上の問題・懸念を生じさせることもない。
【0027】
保守要員は、携帯情報端末50にUPS20のUPS制御装置26およびネットワークユニット40に記憶されている管理情報を転送してディスプレイに表示させたり、携帯情報端末50において所定の分析用アプリケーションを動作させたりすることでUPS20に発生した問題点を分析することができる。または、取得した管理情報を、携帯情報端末50が備えている3G又は4Gの公衆無線電話回線を介して運用サーバー53に送り込み、ここで分析するようにしてもよい。その分析結果は、携帯情報端末50に送り返され、保守要員はその結果を見てUPS20の異常対策を講ずることができる。
【0028】
また、異常が生じた時や点検時など、携帯情報端末50と運用サーバー53との間において通信が行われた際に、携帯情報端末50には、UPS20のファームウェアなどの更新情報が表示され、保守要員は、携帯情報端末50を操作することにより、運用サーバー53から携帯情報端末50を介してUPS20のファームウェアなどを更新することもできる。
【0029】
運用サーバー53を利用した保守手順としては、次のものが例示できる。
例えば運用サーバー53には、UPS20が設置される地域毎の望ましい停電検出レベルがデータベースとして記録されている。停電検出レベルとは、例えば電力系統10の電圧が定格電圧の80%を下回ったときに停電とみなして、バックアップ動作に移行するという基準である。携帯情報端末50から運用サーバー53に管理情報を送信し、運用サーバー53においてログを分析したところ、停電検出頻度が飛び抜けて高い場合には、例えば携帯情報端末50から取得したGPSデータに基づいてUPS20の設置場所を取得し、データベースからその設置場所における標準的な停電検出レベルと実際に設定されている停電検出レベルとを比較する。両者が異なる場合には、情報端末50に標準的な停電検出レベルを送信し、保守要員にそのUPS20の停電検出レベルを標準値に設定し直すように指示するのである。
【0030】
保守要員が携帯情報端末50において、停電検出レベルの設定操作を行うと、その情報が無線ネットワークを介してネットワークユニット40に送信され、主演算部43からの信号によってUPS制御装置26に設定されている停電検出レベルが新しい値に設定される。これと同時に携帯情報端末50から公衆無線電話回線を介して運用サーバー53のデータベースに当該UPS20において、停電検出レベルが新しい値に更新されたことが記憶される。これにより、適切な停電検出レベルにおいてUPS20を運用することができる。
【0031】
また、運用サーバー53には、地域毎の望ましい停電検出レベルだけでなく、例えば、UP有線LAN通信部42、無線通信部44などの設定情報が記憶されており、UPS20を新規もしくは更新などにより設置する際に、当該設定情報を、携帯情報端末50を介してネットワークユニット40に設定することができる。
【0032】
また、運用サーバー53には、UPS20を新規もしくは更新などにより設置する際に、UPS20の個別情報(例えば、シリアル番号、ハードウェアやファームウェアのバージョン、設置場所など)や携帯情報端末50から入力する設定情報が、停電検出レベルと共に、運用サーバー53のデータベースに記憶されるようになっており、ネットワークユニット40が故障などした際に、運用サーバー53に記憶された設定情報や停電検出レベルなどの設定情報を、交換後の新しいネットワークユニットに転送することで復旧作業の効率化を図ることができる。
【0033】
つまり、ネットワークユニット40において有線LAN用通信部42において通信できないトラブル(例えば、LANポートの故障や通信異常など)が生じた場合、ネットワークユニット40の交換後、運用サーバー53に記憶されていた設定情報を転送することで、復旧作業を効率的に行うことができる。
【0034】
さらに、運用サーバー53を利用することにより、次のような保守手順を実施できる。例えば、通信設定情報に相当するアクセスパスワード忘れにより管理コンピュータ45からブラウザを用いてネットワークユニット40にアクセスできなくなった場合、保守要員は、まず、無線ネットワーク側の運用サーバー53において事前に保存しておいたセキュリティコードを、携帯情報端末50によって取得する。そして、取得したセキュリティコードを用いて携帯情報端末50からネットワークユニット40にアクセスすることにより使用回数および使用期限付きの仮パスワードを取得する。
【0035】
次に、保守要員が取得した仮パスワードを受け取り、管理用のネットワーク30の管理コンピュータ45のブラウザから仮パスワードを用いてネットワークユニット40にアクセスすることにより、アクセスパスワードを再設定する。つまり、無線ネットワークと管理用のネットワーク30とを独立に構築し、セキュリティコードの認証による仮パスワードの発行と、仮パスワードによるアクセスパスワードの再設定とを異なるネットワークにおいて行うようにしているから、セキュリティの強化を図りつつパスワードの再設定を行うことができるようになっている。
【0036】
<他の実施形態>
(1)上記実施形態では、蓄電池搭載機器として無停電電源装置を例示したが、これに限られず、例えば深夜電力によって充電した電力を昼間に放電させて電力需要の平準化を図るピークシフト用の蓄電池搭載機器や、昼間に太陽電池出力によって充電し、夜間に放電する太陽電池用の蓄電池搭載機器であってもよい。
【0037】
(2)上記実施形態では、蓄電池がリチウムイオン電池からなる例を示したが、これに限らず、鉛蓄電池やニッケル水素電池等の各種の二次電池が利用できることはもちろんである。
【0038】
(3)上記実施形態では、説明の簡略化のために電力管理システムが4台の負荷装置11〜14を管理する構成を例示したが、これに限らず、電力管理システムが工場全体の電力負荷を管理するFEMS(Factory Energy Management System)、家庭内の電力機器を管理するHEMS(Home Energy Management System)、街や地域の電力機器を管理するCEMS(Community Energy Management System)、ビル全体や商業施設の電力機器を管理するBEMS(Building Energy Management System)に適用できることはもちろんである。
【0039】
(4)上記実施形態では、EMSコントローラ31とは別に電力管理サーバー32を設けた構成例を示したが、これに限らず、EMSコントローラ31に電力管理サーバー32のデータ処理機能を与えて両者を一体化した構成としてもよい。或いは、複数のEMSコントローラを、ネットワークを介して電力管理サーバーに接続した大規模な電力管理システムに適用しても良い。
【0040】
(5)上記実施形態では、管理用のネットワーク30は有線ネットワークである例を示したが、これに限られず、少なくとも一部を無線LANによって置き換えてもよい。
【0041】
(6)上記実施形態では、携帯情報端末50には、UPS20のネットワークユニット40や運用53にと接続して各種情報を確認・設定するための専用のアプリケーションをインストールする例を示したが、これに限らず携帯情報端末50が備えるWEBブラウザ機能を利用して、ネットワークユニット40や運用サーバーと情報の授受を行うようにしてもよいことはもちろんである。
(7)上記実施形態では、UPS制御装置26が蓄電池23を構成するセル毎の電圧、SOC、SOH及び温度等の管理情報を取得した例を示したが、例えば、電池モジュール毎に電池の電圧、SOC、SOH、電流および温度等の管理情報を取得してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10:電力系統
11〜14:負荷装置
20:UPS(蓄電池搭載機器)
26:UPS制御装置(充放電制御装置)
30:管理用ネットワーク
31:EMSコントローラ
32:電力管理サーバー
40:ネットワークユニット
41:記憶部(管理情報記憶部)
42:有線LAN用通信部(管理ネットワーク用通信部)
44:無線LAN用通信部(通信部、無線通信部)
45:管理用コンピュータ
53:運用サーバー
図1
図2
図3