(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、種々の電気機器・装置等において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)や、フレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等の各種信号伝送媒体を電気的に接続するために種々の電気コネクタが広く用いられている。例えば下記の特許文献1のように、印刷配線基板上に実装されて使用される電気コネクタでは、絶縁ハウジング(インシュレータ)の前端部分に設けられた媒体挿入用の開口部から、FPCやFFC等からなる信号伝送媒体が挿入される。その信号伝送媒体は、コンタクト部材を構成している下ビームと上ビームとの間部分に挟み込まれるように挿入され、それまで「初期待機位置」に保持されていたアクチュエータ(接続操作手段)が、コネクタ前方側又は後方側の「操作挟持位置」に向かって作業者の操作力により、例えば押し倒されるようにして回動される構成になされている。
【0003】
そして、そのアクチュエータ(接続操作手段)が、「操作挟持位置」まで回動操作されると、当該アクチュエータに設けられたカム部材が、コンタクト部材の上ビームを弾性的に揺動変位させ、信号伝送媒体(FPC,FFC等)の表裏両面にコンタクト部材の上ビームと下ビームが圧接状態となることによって、信号伝送媒体の挟持が行われる。一方、そのように「操作挟持位置」に回動されたアクチュエータが、元の「初期待機位置」に向かって、例えば上方に起こされるようにして回動操作が行われると、コンタクト部材の上ビームが、自身の弾性によって信号伝送媒体(FPC,FFC等)から離間するように揺動変位し、それによって信号伝送媒体が開放状態になされる。
【0004】
一方、近年の電気コネクタは、小型化及び低背化が大幅に進められつつあり、それに伴って、アクチュエータが「初期待機位置」に回動された場合にコンタクト部材と干渉するおそれがあることから、それを避けるために次のような構成が採用されつつある。例えば、アクチュエータに櫛歯状をなすように干渉回避穴を設けておき、アクチュエータが印刷配線基板から立ち上がるように「初期待機位置」に回動されたときに、上述したアクチュエータの干渉回避穴をコンタクト部材の上ビームの先端部分が貫通し、当該コンタクト部材の上ビームの先端部分が、アクチュエータの操作部背面から外方に突出することによって、アクチュエータとコンタクト部材との衝突が回避されるようになっている。
【0005】
しかしながら、上述したようにコンタクト部材の上ビームの先端部分がアクチュエータの操作部背面から外方に突出した状態になっていると、そのコンタクト部材の突出部分に対して、アクチュエータを操作する作業者の指先や爪が引っ掛かるおそれがあり、コンタクト部材が塑性変形し、更には破損を生じてしまうことも考えておく必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、簡易な構成で、アクチュエータ操作時におけるコンタクト部材の変形や破損を確実に防止することが出来るようにした電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明では、信号伝送媒体を配線基板
に接続するように前記配線基板の表面上に実装して使用されるものであって、
複数体にわたって配列され
たコンタクト部材の各々が、前記配線基板の実装表面からの高さ方向における上下の各位置に互いに対向するように延在する上ビーム及び下ビームを有し
ているとともに、
前記コンタクト部材の前記下ビームが、前記配線基板に接続される基板接続部を備え、前記コンタクト部材を構成する上ビームを
前記下ビームに向かって弾性変位させるアクチュエータが、前記配線基板から立ち上がるように配置される初期待機位置と、当該初期待機位置から前記信号伝送媒体を挟持する操作挟持位置との間において回動操作されるように構成され、前記アクチュエータが前記初期待機位置にあるときには、前記上ビームの延在方向にお
いて、前記上ビームの一端部分が、前記アクチュエータの操作部背面から
前記延在方向で外方に突出するとともに、前記アクチュエータが前記操作挟持位置に回動された際には、前記アクチュエータの操作部背面が、
前記延在方向における前記下ビーム
の一端部分に対して上方から対
向する構成になされた電気コネクタにおいて、前記アクチュエータの操作部背面
における前記回動の半径方向の一部の領域に、当該操作部背面から突出する保護突起部が設けられ
ているとともに、前記操作部背面における前記回動の半径方向の他の領域には、前記アクチュエータが前記初期待機位置にあるときに、前記上ビームの一端部分に対して前記延在方向に引き込まれる部分が設けられ、前記保護突起部は、前記アクチュエータが前記初期待機位置にあるときに、前記操作部背面から突出する前記上ビームの一端部分に対して、前記コンタクト部材
の配列の方向に隣り合う位置に配置され、かつ
前記アクチュエータが前記初期待機位置にあるときに、前記保護突起部の前記操作部背面からの突出高さH1が、前記上ビーム
における前記一端部分の前記操作部背面からの突出高さH2と同一又は大きくなるように設定されている(H1≧H2)
とともに、前記アクチュエータが前記操作挟持位置にあるときには、当該アクチュエータの前記操作部背面における前記延在方向に引き込まれる部分が、前記コンタクト部材の前記基板接続部に対して前記高さ方向の上方から対向する構成が採用されている。
【0009】
このような構成を有する本発明によれば、アクチュエータが初期待機位置にある場合において、コンタクト部材の上ビームの一端部分がアクチュエータの保護突起部と同一又は引き込まれた位置に配置されることから、アクチュエータ操作者の指先や爪は、アクチュエータの保護突起部に当接することはあっても、コンタクト部材の上ビームに引っ掛かることがなくなり、コンタクト部材の変形や破損等が防止される。
【0010】
また、本発明においては、前記コンタクト部材の下ビームの一部を切り欠くようにして半田逃がし部が設けられたものであって、前記アクチュエータが操作挟持位置にある際に、前記コンタクト部材の半田逃がし部に対して、前記保護突起部が、前
記配線基板の上方に位置するように設けられていることが望ましい。
【0011】
このような構成を有する本発明によれば、コンタクト部材の半田接合を行う場合に、半田逃がし部には半田材が回らないことから、アクチュエータが操作挟持位置に回動された際にあっても、当該アクチュエータに設けられた保護突起部が半田材に接触することがなくなり、半田接合の信頼性が確保される。
【0012】
さらに、本発明においては、前記配線基板の表面上に配線ランド部が形成されたものであって、前記アクチュエータが操作挟持位置にある際に、前記保護突起部が、前記配線基板における前記配線ランド部から外れた部分と対
向するように設けられていることが望ましい。
【0013】
このような構成を有する本発明によれば、コンタクト部材の半田接合を行う場合に、配線ランド部から外れた位置には半田材が回らないことから、アクチュエータが操作挟持位置に回動された際にあっても、当該アクチュエータに設けられた保護突起部が半田材に接触することがなくなり、半田接合の信頼性が確保される。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、コンタクト部材の上ビームを下ビームに向かって弾性変位させるアクチュエータに、操作部背面から突出する保護突起部を設け、アクチュエータが初期待機位置にあるときにコンタクト部材の上ビームの一端部分に隣り合って延出する保護突起部の突出高さを、コンタクト部材の上ビームと同一又は大きくなるように設定したことにより、アクチュエータの操作部背面から突出するコンタクト部材の上ビームの一端部分を保護突起部と同一又は引き込まれた位置に配置し、操作者の指先や爪が、アクチュエータの保護突起部に当接することはあってもコンタクト部材の上ビームに引っ掛かることを無くすことで、コンタクト部材の変形や破損等を防止するように構成したものであるから、簡易な構成で、アクチュエータ操作時におけるコンタクト部材の変形や破損を確実に防止することができ、電気コネクタの信頼性を安価かつ大幅に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体の接続を行うために配線基板の表面上に実装して使用される電気コネクタに本発明を適用した実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1〜
図9に示されている電気コネクタ10は、絶縁ハウジング11の後端縁側(
図5〜
図9の右端縁側)に、接続操作手段としてのアクチュエータ12を備えた、いわゆるバックフリップ型構造からなるものであり、上述したアクチュエータ12は、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入するコネクタ前端側(
図5〜
図9の左端側)とは反対側の後方側(
図5〜
図9右方側)に向かって押し倒されるように回動される構成になされている。
【0018】
このときの絶縁ハウジング11は、細長状に延在する中空枠体状の絶縁部材から形成されているが、その絶縁ハウジング11の長手横幅方向を、以下において「コネクタ長手方向」と呼び、また信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの端末部分を挿入又は離脱させる方向を「コネクタ前方」又は「コネクタ後方」と呼ぶこととする。また、当該電気コネクタ10が実装される配線基板の実装表面から垂直に離れる高さ方向を「上方向」とし、その反対方向を「下方向」とする。
【0019】
上述した絶縁ハウジング11の内部には、適宜の形状をなす薄板状金属製部材により形成された2種類の異なる形状を有する導電コンタクト部材13,14が複数体にわたって多極状をなすように配列されている。それらの導電コンタクト部材13,14は、絶縁ハウジング11の内部において「コネクタ長手方向」に沿って適宜の間隔をなして装着されており、異なる形状を有する一方側の導電コンタクト部材13と他方側の導電コンタクト部材14とが、多極配列の方向である「コネクタ長手方向」において交互に配列されている。これらの導電コンタクト部材13,14の各々は、信号伝送用又はグランド接続用のいずれかとして用いられ、特に
図1及び
図2に示されているように、印刷配線基板P上に形成された配線ランド部(導電路)P1,P2に半田接合により接合されることで実装された状態で使用される。
【0020】
ここで、絶縁ハウジング11の前端縁側(
図5〜
図9の左端縁側)には、上述したようにフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの端末部分が挿入される媒体挿入口11aが、コネクタ長手方向に横細長状をなすように設けられているとともに、その反対側のコネクタ前後方向の後端縁側(
図5〜
図9の右端縁側)には、上述した一方側の導電コンタクト部材13やアクチュエータ(接続操作手段)12等を装着するための部品取付口が、同じく横細長状に設けられている。
【0021】
このとき、上述した一方側の導電コンタクト部材13は、絶縁ハウジング11のコネクタ後端側に設けられた部品取付口からコネクタ前方側(
図6の左方側)に向かって挿入されることで装着されているが、他方側の導電コンタクト部材14は、絶縁ハウジング11のコネクタ前端側に設けられた媒体挿入口11aからコネクタ後方側(
図5の右方側)に向かって挿入されることにより装着されている。それらの各導電コンタクト部材13,14は、絶縁ハウジング11の内部に挿入された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fに形成された伝送パターンFaに対応した位置に配置されていて、それら信号伝送媒体Fに形成された伝送パターンFaは、信号伝送用配線ランド部(信号線パッド)又はシールド用配線ランド部(シールド線パッド)を適宜のピッチ間隔で配置したものである。
【0022】
ここで、上述した各導電コンタクト部材13,14は、信号伝送媒体Fの挿抜方向(
図5〜
図9の左右方向)である「コネクタ前後方向」に沿って略平行に延在する一対の細長状ビーム部材からなる可動上ビーム13a,14a及び固定下ビーム13b,14bをそれぞれ有している。これらの可動上ビーム13a,14a及び固定下ビーム13b,14bは、上述した絶縁ハウジング11の内部空間において「上下方向」に適宜の間隔をなして互いに対向するように配置されている。そのうちの固定下ビーム13b,14bは、絶縁ハウジング11の底面板の内壁面に沿って略不動状態となるように固定されているとともに、その固定下ビーム13b,14bの延在方における途中位置から上方に延出する連結支柱部13c,14cを介して可動上ビーム13a,14aが、上述した固定下ビーム13b,14bに対して一体的に連結されている。
【0023】
そのときの連結支柱部13c,14cは、細幅の板状部材から形成されており、上述した両ビーム13a,14a及び13b,14bの延在方向の略中央部分において上下方向に延在するように配置されている。そして、当該連結支柱部13c,14c、並びに両ビーム13a,14a及び13b,14bが有する弾性的な可撓性によって、各可動上ビーム13a,14aが、連結支柱部13c,14c又はその近傍を回動中心として揺動するように弾性変位する構成になされている。そのときの可動上ビーム13a,14aの揺動は、
図5〜
図9の紙面内において上下の方向に行われることとなる。
【0024】
また、上述した可動上ビーム13a及び14aの前端側部分(
図5〜
図9の左端側部分)には、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの図示上面側に形成された伝送パターン(信号伝送用又はシールド用の配線ランド部)Faのいずれかに接続される上端子接触凸部13a1,14a1が図示下向きの突形状をなすように設けられている。
【0025】
一方、上述したように固定下ビーム13b,14bは、絶縁ハウジング11の底面板の内壁面に沿って前後方向に延在するように配置されており、それらの固定下ビーム13b,14bの上縁に配置された信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fが、可動上ビーム13a,14aの上端子接触凸部13a1,14a1の押圧力によって挟持される構成になされている。なお、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの図示下面側に伝送パターンが形成されている場合には、上述した固定下ビーム13b,14bにおける前方側部分(
図5〜
図9の左方側部分)に、図示上向きの突形状をなすようにして下端子接触凸部が設けられる。
【0026】
なお、これら可動上ビーム13a,14aの上端子接触凸部13a1,14a1、及び固定下ビーム13b,14bの下端子接触凸部(図示しない)は、互いの位置をコネクタ前方側(
図5〜
図9の左方側)或いはコネクタ後方側(
図5〜
図9の右方側)にずらして配置することも可能である。また、固定下ビーム13b,14bは、基本的に不動状態となるように固定されているが、挿入される信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fを仮保持する等の目的で、先端部分が弾性変位可能となるように形成することが可能であり、当該固定下ビーム13b,14bの前端部分を、絶縁ハウジング11の底面板の内壁面から僅かに浮き上がるように形成することもできる。
【0027】
さらに、上述した固定下ビーム13bの後端側部分(
図5〜
図9の右端側部分)、及び固定下ビーム14bの前端側部分(
図5〜
図9の左端側部分)には、印刷配線基板P上に形成された配線ランド部(導電路)P1,P2に半田接続される基板接続部13b2,14b2がそれぞれ設けられている。これらの基板接続部13b2,14b2は、印刷配線基板P上の配線ランド部(導電路)P1,P2に対して上方から位置合わせされた状態で載置され、半田材を用いた一括的な接合作業によって電気的な接続が行われる。
【0028】
このような基板接続部13b2,14b2に対する半田接合作業に対応して、当該基板接続部13b2,14b2の先端からコネクタ前後方向にやや引き込まれた奥側の位置には、切り欠き状の空隙部からなる半田逃がし部13b4,14b4が形成されている。これらの半田逃がし部13b4,14b4は、半田接合の作業時に溶融状態となった半田材の流動を止める部位となるものであって、それらの半田逃がし部13b4,14b4を形成している凹状空間部のうち、基板接続部13b2,14b2寄りの隅部に、半田材のフィレットが立ち上がるように形成されることで半田材の流れが止められ、当該半田逃がし部13b4,14b4における他の凹状空間部分に対しては、半田材の回り込みが無い状態に維持される。
【0029】
さらにまた、前記可動上ビーム13a,14aの後端側部分(
図5〜
図9の右端側部分)には、略平坦状の下縁をなすようにして延在するカム圧受け部13a2,14a2が設けられている一方、固定下ビーム13b,14bの後端側部分(
図5〜
図9の右端側部分)には、凹形状の上縁をなすように形成されたカム滑り受凹部13b3,14b3がそれぞれ設けられている。そして、固定下ビーム13b,14bのカム滑り受凹部13b3,14b3に対しては、上述した絶縁ハウジング11の後端部分に装着されたアクチュエータ(接続操作手段)12の押圧カム部12aの下半側部分が上方から滑動可能な状態で受けられるように配置され、そのような滑動可能な接触配置関係によって、アクチュエータ12が押圧カム部12aの回動中心の回りに回動自在に支持される構成になされている。
【0030】
上述した押圧カム部12aの外周にはカム面が形成されており、その押圧カム部12aの上半側部分に形成されたカム面に対して、可動上ビーム13a,14aのカム圧受け部13a2,14a2が、上方側から近接又は接触するように配置されている。
【0031】
一方、前述したように絶縁ハウジング11の後端部分(
図5〜
図9の右端側部分)に回動されるように配置されたアクチュエータ(接続操作手段)12の全体は、コネクタ長手方向に沿って細長状に延在するように形成されていて、絶縁ハウジング11の全幅とほぼ同じ長さに渡って配置されている。このアクチュエータ12は、当該アクチュエータ12の長手方向に延在する回動中心、すなわち上述した押圧カム部12aの回動中心の回りに回動可能となるように取り付けられており、その回動半径の外方側の部分(
図5〜
図9の上方側部分)が開閉操作部12bになされている。そして、その開閉操作部12bに対して作業者による適宜の操作力が付与されることによって、アクチュエータ12の全体が、
図1〜
図9のようにほぼ直立した状態の「初期待機位置」と、
図10〜
図18のようにコネクタ後方側に向かってほぼ水平に倒された状態の「操作挟持位置」との間で往復回動される構成になされている。
【0032】
このアクチュエータ(接続操作手段)12の開閉操作部12bが、上述した押圧カム部12aと連結されている回動中心側の部分には、導電コンタクト部材13,14の可動上ビーム13a,14aとの干渉を回避するための複数のスリット穴12cが、「コネクタ長手方向」に沿って一定の間隔をなして並列する櫛歯状をなすように形成されている。それらのスリット穴12cは、導電コンタクト部材13,14に対応した位置において、アクチュエータ12の開閉操作部12bを「コネクタ前後方向」に貫通するように形成されている。
【0033】
そして、アクチュエータ(接続操作手段)12が「操作挟持位置」(
図10〜
図18参照)から「初期待機位置」(
図1〜
図9参照)に向かって回動されることで、当該アクチュエータ12が配線基板Pから立ち上がるように配置されたときには、上述したスリット穴12cの内方に向かって、導電コンタクト部材13,14を構成している可動上ビーム13a,14aの後端部分が挿入される。このときの挿入は、アクチュエータ12の開閉操作部12bの正面側である操作部正面から行われ、スリット穴12cを貫通した可動上ビーム13a,14aの後端部分が、アクチュエータ12の開閉操作部12bの背面側である操作部背面12b1から外方(後方)に向かって突出した状態になされる。
【0034】
一方、アクチュエータ(接続操作手段)12の開閉操作部12bを、作業者の手により「初期待機位置」(
図5〜
図9参照)から「操作挟持位置」(
図10〜
図18参照)に向かって押し倒すように回動操作が行われると、上述した押圧カム部12aの回転半径が、固定下ビーム13b,14bと可動上ビーム13a,14aとの間において増大する方向に変化する構成になされている。そして、その押圧カム部12aの径が増大する変化に従って前記可動上ビーム13a,14aの後端側に設けられたカム圧受け部13a2,14a2が図示上方側に持ち上げられるように変位し、それに伴ってカム圧受け部13a2,14a2と反対側(コネクタ前端側)に設けられた上端子接触凸部13a1,14a1が下方に押し下げられていくようになっている。
【0035】
このようにしてアクチュエータ(接続操作手段)12が最終の回動位置である「操作挟持位置」まで回動しきったとき(
図10〜
図18参照)、上述した可動上ビーム13a,14aの上端子接触凸部13a1,14a1と、固定下ビーム13b,14bの上縁との間に挿入されていた信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの挟持が行われることとなるが、そのような挟持状態において、信号伝送媒体Fの配線ランド部(信号伝送用及びシールド用の配線ランド部)Faには、可動上ビーム13a,14aの上端子接触凸部13a1,14a1が圧接され、それによって電気的な接続が行われる構成になされている。
【0036】
このとき、「コネクタ長手方向」の両側部分に配置された導電コンタクト部材13,14のさらに同方向の外方側には、細長板状の金属部材からなるロック部材15,15が絶縁ハウジング11に取り付けられている。これらのロック部材15,15は、上述した導電コンタクト部材13,14に対して略平行に延在するように配置されており、信号伝送媒体(FPC又はFFC等)Fの両側縁部に形成された位置決め凹部Fb,Fb(
図19参照)に対して係合可能な係止突起(図示省略)を有している。そして、アクチュエータ(接続操作手段)12が「操作挟持位置」に回動操作されることで(
図10〜
図18参照)、上述したロック部材15,15が信号伝送媒体Fの位置決め凹部Fb,Fb(
図19参照)に係合するように弾性変位し、それによって信号伝送媒体Fが最終挿入位置から抜け出さないように保持される。
【0037】
さらに、上述したロック部材15,15に対して「コネクタ長手方向」の両側外方部分には、細長板状の金属部材からなる固定金具16,16が絶縁ハウジング11に取り付けられている。これらの固定金具16,16は、上述した導電コンタクト部材13,14及びロック部材15に対して略平行に延在する配置関係になされており、その延在方向における両端部分には、印刷配線基板P上に形成された固定パッドP3,P3(
図1及び
図2参照)上に載置されて半田接合される半田固定部16a,16aが設けられている。
【0038】
一方、前述したようにアクチュエータ(接続操作手段)12が「操作挟持位置」まで回動しきった状態においては(
図10〜
図18参照)、当該アクチュエータ12の開閉操作部12bの操作部背面12b1が、印刷配線基板Pの実装表面に対して略平行に延在する下面をなすように配置されることとなるが、その場合におけるアクチュエータ12の操作部背面12b1は、導電コンタクト部材13を構成している固定下ビーム13bの延在方向における後端部分、すなわち基板接続部13b2の上方側に位置する関係になされる。
【0039】
このようなアクチュエータ(接続操作手段)12の開閉操作部12bには、上述した操作部背面12b1から突出する保護突起部12b2が設けられている。すなわち、その保護突起部12b2は、アクチュエータ12が「初期待機位置」にあるときに、アクチュエータ12の操作部背面12b1からコネクタ後方側に向かって突出するように形成されており、多極配列方向(コネクタ長手方向)において互いに隣り合う一対の導電コンタクト部材13,14同士の間部分に配置されている。
【0040】
より具体的に説明すると、上述したようにアクチュエータ(接続操作手段)12の操作部背面12b1に突設された保護突起部12b2は、当該アクチュエータ12が印刷配線基板Pから立ち上がるように「初期待機位置」(
図1〜
図9参照)に配置されたときに、導電コンタクト部材13の可動上ビーム13aと、導電コンタクト部材14の可動上ビーム14aとの間に配置される構成になされており、それら一対の可動上ビーム13a,14aの後端部分に対して、保護突起部12b2が、多極配列の方向(コネクタ長手方向)において隣り合うように配置されることで、それらの可動上ビーム13a、保護突起部12b2、及び可動上ビーム14aが、多極配列の方向(コネクタ長手方向)において並列する配置関係になされる。
【0041】
そして、特に
図5、
図6及び
図7に示されているように、アクチュエータ(接続操作手段)12が「初期待機位置」(
図5〜
図9参照)に配置された状態における保護突起部12b2の突出高さH1、すなわちアクチュエータ12の操作部背面12b1を基準面としたときの突出高さは、可動上ビーム13a,14aの後端部分が、基準面としての操作部背面12b1から突出している高さH2に対して、同一又はやや大きくなるように設定されている(H1≧H2)。
【0042】
このように、アクチュエータ(接続操作手段)12が印刷配線基板Pから立ち上がるように「初期待機位置」(
図1〜
図9参照)に配置された際における導電コンタクト部材13,14の可動上ビーム13a,14aの後端部分は、アクチュエータ12の操作部背面12b1から外方(後方)に向かって突出することとなるが、当該可動上ビーム13a,14aの突出先端部は、アクチュエータ12側に設けられた保護突起部12b2の突出先端部と同一の位置、又は引き込まれた位置に配置されることとなる。その結果、回動操作者の指先や爪は、アクチュエータ12の保護突起部12b2に当接することはあっても、導電コンタクト部材13,14の可動上ビーム13a,14aの後端部分に引っかかることがなくなり、導電コンタクト部材13,14の回動操作時における変形や破損等が防止される。
【0043】
一方、アクチュエータ12が「操作挟持位置」(
図10〜
図18参照)まで回動操作された際においては、アクチュエータ(接続操作手段)12の開閉操作部12bの操作部背面12b1に設けられた保護突起部12b2は、印刷配線基板P1側である下方側に向かって突出した状態となるが、そのときの保護突起部12b2は、導電コンタクト部材13に設けられた半田逃がし部13b4の上方に位置する配置関係になされている。
【0044】
すなわち、導電コンタクト部材13,14の半田接合を行う場合に、半田逃がし部13b4,14b4には半田材が回らないことから、上述したように導電コンタクト部材13に設けられた半田逃がし部13b4の上方に保護突起部12b2が位置する配置関係としておけば、アクチュエータ12が「操作挟持位置」に回動された場合においても、当該アクチュエータ12の保護突起部12b2が半田材に接触することがなくなり、半田接合の信頼性が確保される。
【0045】
なお、印刷配線基板P上の伝送パターンP1に導電コンタクト部材13の基板接続部13b2を半田接合するにあたって、基板接続部13b2のみならず半田逃がし部13b4も伝送パターンP1上に載置される場合には、半田逃がし部13b4に対しても半田材が用いられることがある。そのような場合にあっては、アクチュエータ12の保護突起部12b2が、伝送パターンP1から外れた部分と対面するように設けられる。
【0046】
このような配置関係においては、アクチュエータ12が「操作挟持位置」にある場合の保護突起部12b2が、半田逃がし部13b4からコネクタ内方の奥側(前方側)に位置ズレした状態に配置されることとなり、伝送パターンP1の端部からコネクタ内方側に外れた部分において、保護突起部12b2が印刷配線基板Pの表面と対面する構成になされる。
【0047】
すなわち、導電コンタクト部材13の半田接合を行う場合に、伝送パターンP1から外れた位置には半田材が回らないことから、上述したように伝送パターンP1の端部からコネクタ内方側に外れた部分に保護突起部12b2が対面する配置関係としておけば、アクチュエータ(接続操作手段)12が「操作挟持位置」に回動された場合においても、当該アクチュエータ12の保護突起部12b2が半田材に接触することがなくなり、半田接合の信頼性が確保される。
【0048】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であるというのはいうまでもない。
【0049】
例えば、上述した各実施形態では、電気コネクタに固定される信号伝送媒体として、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)、及びフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)を採用しているが、その他の信号伝送用媒体等を用いた場合に対しても本発明は同様に適用することができる。
【0050】
また、上述した実施形態における接続操作手段は、回動操作されるアクチュエータから構成されているが、スライド操作される接続操作手段を有する電気コネクタに対しても本発明は同様に適用することが可能である。同様に本発明は、接続操作手段(アクチュエータ)が、前端側部分に配置された電気コネクタや、前端側部分と後端側部分との間部分に接続操作手段(アクチュエータ)が配置された電気コネクタに対しても同様に適用することが可能であり、さらにそのときの接続操作手段(アクチュエータ)の回動方向又はスライド方向は、前方側又は後方側のいずれであっても良い。
【0051】
また、上述した実施形態にかかる電気コネクタには、形状が異なる導電コンタクト部材を用いたものであるが、同一形状の導電コンタクト部材を用いたものであっても本発明は同様に適用することが可能である。