特許第6569854号(P6569854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569854
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ランプシェードとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21V 1/26 20060101AFI20190826BHJP
   F21V 1/16 20180101ALI20190826BHJP
   F21V 1/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F21V1/26
   F21V1/16 330
   F21V1/00 200
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-145119(P2015-145119)
(22)【出願日】2015年7月22日
(65)【公開番号】特開2017-27787(P2017-27787A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503237806
【氏名又は名称】株式会社NHVコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康之
(72)【発明者】
【氏名】客野 綾子
(72)【発明者】
【氏名】星 康久
【審査官】 安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−199313(JP,A)
【文献】 特開平10−321022(JP,A)
【文献】 特開2012−125944(JP,A)
【文献】 特開2011−031409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 1/26
F21V 1/00
F21V 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調製する紙料液調製工程と、
前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調製するハイドロゲル分散紙料液調製工程と、
所望するランプシェードの形状に合わせて準備された型の表面に、所望する模様に対応して染料を塗布する染料塗布工程と、
前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型上に堆積させるハイドロゲル分散紙料液堆積工程と、
前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥させて、和紙立体形状物を形成するハイドロゲル分散紙料液乾燥工程と、
乾燥した前記和紙立体形状物の表面から前記染料を溶解させる溶剤を浸透させて、前記型の表面に塗布された前記染料を、前記和紙立体形状物に転写する染料転写工程と
を備えていることを特徴とするランプシェードの製造方法。
【請求項2】
前記染料塗布工程において、前記染料として油性染料を用い、
前記染料転写工程において、前記溶剤として有機溶剤を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載のランプシェードの製造方法。
【請求項3】
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程が、スプレーガンを用いて前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型の表面に吹き付けることにより、前記ハイドロゲル分散紙料液を堆積させる工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のランプシェードの製造方法。
【請求項4】
前記スプレーガンの吹き付け口径が2〜20mmであることを特徴とする請求項3に記載のランプシェードの製造方法。
【請求項5】
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程と前記ハイドロゲル分散紙料液乾燥工程とを3〜6回繰り返して、前記和紙立体形状物を作成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法を用いて製造されていることを特徴とするランプシェード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランプシェードとその製造方法、詳しくは、複雑な立体形状でありながら複雑な模様が施された和紙材料製のランプシェードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、和紙材料を用いたランプシェードが、天然素材感を有すると共にインテリア性にも優れていることなどから広く好まれている。
【0003】
このような和紙材料を用いたランプシェードは、一般的に、竹ひごなどを用いて作製された骨組の表面に和紙材料を貼り付けることにより製造されている。しかし、このような方法では、通常、四角柱型などの単純な形状のランプシェードしか作ることができず、複雑な立体形状のランプシェードを作ることは容易ではなかった。
【0004】
そこで、近年では、和紙原料、水、粘剤を含む紙料液にハイドロゲルを分散させて調製したハイドロゲル分散紙料液を、所望するランプシェードの形状に合わせて準備された型に吹き付けて、紙料を堆積、乾燥させることにより、所望する複雑な形状の和紙立体形状物を作製して、ランプシェードとする技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5386741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した方法を用いてランプシェードを製造した場合、複雑な形状の和紙立体形状物を作製することはできるものの、その表面に複雑な模様を施すことが難しいため、現状は、単純な模様が施されたランプシェードが提供されるに留まっている。
【0007】
そこで、本発明は、複雑な立体形状でありながら、複雑な模様が施された和紙材料製のランプシェードとその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調製する紙料液調製工程と、
前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調製するハイドロゲル分散紙料液調製工程と、
所望するランプシェードの形状に合わせて準備された型の表面に、所望する模様に対応して染料を塗布する染料塗布工程と、
前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型上に堆積させるハイドロゲル分散紙料液堆積工程と、
前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥させて、和紙立体形状物を形成するハイドロゲル分散紙料液乾燥工程と、
乾燥した前記和紙立体形状物の表面から前記染料を溶解させる溶剤を浸透させて、前記型の表面に塗布された前記染料を、前記和紙立体形状物に転写する染料転写工程と
を備えていることを特徴とするランプシェードの製造方法である。
【0009】
本発明者は、上記した課題の解決について、鋭意検討を行った結果、和紙立体形状物を形成するための型は表面が滑らかであり、さらに染料が滲みにくいため、従来のような形成後の和紙立体形状物の表面に直接模様を施す場合に比べて、遥かに緻密で複雑な模様を施すことができると考えた。そして、和紙立体形状物の形成に先立って、予め、所望する模様に対応して型の表面に染料を塗布し、これを型の表面から和紙立体形状物に転写させることにより、上記課題が解決されて、複雑な立体形状でありながら、所望する複雑な模様が施された和紙材料製のランプシェードを製造することができることに思い至り本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、この方法の場合、滑らかであり、さらに染料が滲みにくい型の表面に、筆などを用いて様々な染料で多種多様に模様を施すことができるため、従来に比べて、遥かに緻密で複雑な模様を施すことができ、従来は不可能であった5mm以下という細い線の間隔の模様を容易に形成させることができる。
【0011】
そして、型の表面に施された模様を、和紙立体形状物の表面から染料を溶解させる溶剤を浸透させることにより、型の表面に塗布された染料が溶解されて、和紙立体形状物の中を表面に向けて滲み出していくため、その後、溶剤を乾燥させることにより、型に施された緻密で複雑な模様を和紙立体形状物の表面まで転写させることができる。この結果、所望する複雑な模様が表面に施されたランプシェードを製造することができる。
【0012】
また、転写に際して、染料を溶解させて和紙立体形状物の表面に滲み出させるため、適宜溶剤を選択してその滲み出し状況を制御することにより、和紙材料製のランプシェードで多く好まれる「ぼかし」や「グラデーション」が効いた温かみのある独特の風合いの模様でも容易に形成させることができ、従来では得られなかった優れた外観のランプシェードを製造することができる。
【0013】
また、形成された和紙立体形状物を型から外して模様付けを行う従来の方法と異なり、和紙立体形状物の形成と模様付けとを連続した一連の工程の下で行うことができるため、緻密で複雑な模様が形成されたランプシェードを効率良く製造することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、
前記染料塗布工程において、前記染料として油性染料を用い、
前記染料転写工程において、前記溶剤として有機溶剤を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載のランプシェードの製造方法である。
【0015】
型表面に模様を施すための染料としては、型上に堆積させたハイドロゲル分散紙料液に溶解することを防止するという観点から、油性染料が好ましく、このような油性染料として、例えば、市販の油性マーカーなどを挙げることができる。
【0016】
また、油性染料を用いる場合、溶剤としては、型や乾燥した和紙立体形状物を溶かすことなく、油性染料だけを溶かす有機溶剤が好ましく、このような有機溶剤として、例えば、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、デカン、酢酸エチルなどを挙げることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程が、スプレーガンを用いて前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型の表面に吹き付けることにより、前記ハイドロゲル分散紙料液を堆積させる工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のランプシェードの製造方法である。
【0018】
スプレーガンを用いてハイドロゲル分散紙料液を型の表面に吹き付けることにより、ハイドロゲル分散紙料液を型上に容易に均質に堆積させることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、
前記スプレーガンの吹き付け口径が2〜20mmであることを特徴とする請求項3に記載のランプシェードの製造方法である。
【0020】
スプレーガンの吹き付け口径(スプレー口径)が大き過ぎる場合には堆積物にムラが発生する恐れがある一方で、小さ過ぎる場合には詰まりが発生する恐れがあるため、吹き付け口径は、2〜20mmであることが好ましく、6mm程度であるとより好ましい。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程と前記ハイドロゲル分散紙料液乾燥工程とを3〜6回繰り返して、前記和紙立体形状物を作成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法である。
【0022】
上記のように、ハイドロゲル分散紙料液堆積工程とハイドロゲル分散紙料液乾燥工程とを複数回繰り返すことにより、厚みが均一な高品質の和紙立体形状物とすることができる。このとき、ハイドロゲル分散紙料液堆積工程とハイドロゲル分散紙料液乾燥工程を繰り返す回数としては、製造後のランプシェードの品質と製造効率との両方の観点から、3〜6回が好ましい。
【0023】
また、請求項6に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法を用いて製造されていることを特徴とするランプシェードである。
【0024】
上記した各製造方法を用いて製造されていることにより、複雑な立体形状でありながら複雑な模様が施された優れた外観品質のランプシェードを提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、複雑な立体形状でありながら、複雑な模様が施された和紙材料製のランプシェードとその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係るランプシェードの製造方法を模式的に説明する図である。
図2】本発明の他の実施の形態に係るランプシェードの製造方法において用いられる型を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。
【0028】
図1は本実施の形態に係るランプシェードの製造方法を模式的に説明する図である。本実施の形態においては、従来とは異なり、図1に示すように、ハイドロゲル分散紙料液5を堆積させる前に型2の表面に染料が塗布されて、模様3が施されている。以下、工程順に説明する。
【0029】
(1)紙料液調製工程
まず、和紙原料と水と粘剤とを所定の比率で混合して紙料液を調製する。具体的には和紙原料である楮、パルプ塊及び所定の濃度で粘剤を溶解させた水を、所定の比率で攪拌槽に投入して撹拌することにより紙料液を調製する。
【0030】
粘剤としては、和紙抄紙用合成粘剤として一般に用いられている粘剤を使用することができる。この粘剤を添加することにより、ハイドロゲル分散紙料液を型に吹き付けたときに液が流下することを抑制して、型の表面にハイドロゲル分散紙料液を均一に堆積させることを容易にすることができる。このような粘剤としては、例えば、ポリエチレンオキサイド−アクリルアミド共重合物を主な組成とする粘剤(例えば、明成化学工業株式会社製 アルコックスK−2)などを挙げることができる。
【0031】
(2)ハイドロゲル分散紙料液調製工程
次に、上記した紙料液にハイドロゲルを分散させてハイドロゲル分散紙料液を調製する。ハイドロゲルは、多量の水分を吸収保持するという性質を有しており、粘剤と共に添加することにより、和紙原料を型上に安定的に堆積させることができる。
【0032】
ハイドロゲルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)ハイドロゲルが好ましく用いられる。このCMCハイドロゲルは、CMCと水との混練物からなるペーストに電子線などの電離放射線を照射することにより得られ、ゲル分率が10〜80%、より好ましくは40〜70%のものが用いられる。
【0033】
(3)染料塗布工程
上記した工程と並行して、型の表面に染料を塗布して、予め、ランプシェードの模様に対応した模様3を施す。
【0034】
(a)型の準備
まず、所望するランプシェードの形状に合わせた形状の型2を準備する。このような型としては、従来の型をそのまま用いることができ、例えば、空気を供給することにより図1に示す所望の型形状とすることができるようなゴム製の風船タイプの型2を用いることができる。
【0035】
型としては、また、図2に示すような複数のブロック11が組合わされた木製の型1を用いることもできる。なお、図2において破線はブロック11の継ぎ目を示している。
【0036】
(b)染料の塗布
以下、再度、図1を用いて説明する。次に、準備した型2の表面に染料を用いて模様3を施す。このとき、前記したように、型2の表面は、形成後の和紙立体形状物の表面に比べて滑らかであり、さらに塗布された染料が滲みにくいため、筆などを用いて様々な染料で多種多様に模様を施すことにより、従来のような和紙立体形状物に直接模様を施す場合よりも、遥かに緻密で複雑な模様を施すことができる。
【0037】
(4)ハイドロゲル分散紙料液堆積工程
次に、表面に模様が施された型上に、ハイドロゲル分散紙料液を堆積させる。具体的には、図1に示すように、模様3が施された風船タイプの型2の表面に、スプレーガン4を用いてハイドロゲル分散紙料液5を吹き付ける。この時、前記したように、ハイドロゲル分散紙料液には粘剤が含有されているため、型2に吹き付けられたハイドロゲル分散紙料液5が流下せず、型2の表面に均一にハイドロゲル分散紙料液5を堆積させることができる。
【0038】
なお、吹き付けるハイドロゲル分散紙料液5の量は、所望するランプシェードのサイズに応じて適宜調節する。
【0039】
また、スプレーガン4の吹き出し口の口径(スプレー口径)が大き過ぎる場合には堆積物にムラが発生する恐れがある一方で、小さ過ぎる場合には詰まりが発生する恐れがあるため、スプレー口径は、2〜20mmであることが好ましく、6mm程度であるとより好ましい。
【0040】
(5)ハイドロゲル分散紙料液乾燥工程
次に、型2上に堆積されたハイドロゲル分散紙料液を乾燥させることにより、型2の形状に応じた和紙立体形状物を形成させる。なお、上記したハイドロゲル分散紙料液堆積工程と本工程とは、複数回、例えば3〜6回程度繰り返し行うことが好ましい。これにより、より均一な厚みの和紙立体形状物を形成することができる。このとき、1回のハイドロゲル分散紙料液堆積工程で500ml程度のハイドロゲル分散紙料液5を型2に吹き付けることが好ましい。
【0041】
(6)染料転写工程
次に、型2の表面に塗布された染料を和紙立体形状物に転写する。具体的には、型2上の和紙立体形状物の表面から、型2に塗布された染料を溶解させる溶剤を浸透させる。これにより、溶剤が和紙立体形状物内を通って型2の表面にまで届き、型2表面の模様3の染料を溶解させる。
【0042】
溶剤は、使用する染料との関係で適宜変更することが好ましい。例えば、上記のように、油性の染料を用いている場合には、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、デカン、酢酸エチルなどの有機溶剤が用いられる。また、溶剤を浸透させる方法としては、和紙立体形状物の表面からスプレーなどを用いて溶剤を吹き付ける方法や刷毛などを用いて溶剤を塗布する方法などを用いることができる。
【0043】
そして、溶剤に溶解した染料は、和紙立体形状物の中を表面に向けて滲み出していき、和紙立体形状物の表面から溶剤が蒸発する一方で、染料が和紙立体形状物の表面に残る。この結果、型2に施された模様が和紙立体形状物の表面に転写されて、所望する複雑な模様が施された和紙立体形状物が得られる。
【0044】
(7)型抜き工程
最後に、模様が転写された和紙立体形状物から型2を抜き取る。型2の抜き取り方法として、図1に示すような風船タイプの型2の場合には、型2から空気を抜いて縮小させることにより、乾燥後の和紙立体形状物から容易に型抜きを行うことができる。一方、図2に示すような木製の型1の場合は各ブロック11を分解して個別に抜いていくことにより、乾燥後の和紙立体形状物から容易に型抜きを行うことができる。なお、和紙立体形状物から抜き取った型は、洗浄して染料を除去することにより、繰り返し使用することができる。
【0045】
本実施の形態によれば、前記したように、和紙立体形状物よりも滑らかであり、かつ、染料が滲みにくい型の表面に、筆などを用いて様々な染料で多種多様に模様が施しており、この模様を型から和紙立体形状物に転写しているため、線の間隔が5mm程度もしくはそれ以下という従来に比べて、遥かに緻密で複雑な模様のランプシェードを製造することができる。
【0046】
また、溶剤を適宜選択して染料の滲み出し状況を制御することにより、「ぼかし」や「グラデーション」を形成させることもできるため、和紙材料製のランプシェードに独特の風合いの模様でも容易に形成させて、従来では得られなかった優れた外観のランプシェードを製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づき、本発明をより具体的に説明する。
【0048】
1.ハイドロゲル分散紙料液の調製
下記配合(質量比率)のハイドロゲル分散紙料液を調製した。
水 :98.6%
楮 : 0.7%
パルプ : 0.5%
粘剤(アルコックスK−2) : 0.1%
CMCハイドロゲル : 0.1%
【0049】
上記のハイドロゲル分散紙料液は、CMCハイドロゲルを水(温水)に溶解してCMCハイドロゲル溶液とし、水、楮、パルプ塊および粘剤が溶解された紙料液と混合した後、20メッシュ程度のメッシュ部材を用いて余分の水を除去することにより調製した。
【0050】
2.型の準備および型への染料塗布
風船タイプのゴム製の型を準備し、この型を直径300mmの球状に膨らませた状態で、型の表面に、太さ1mmの線が2mm間隔で3本描かれた模様を市販の黒色の油性マーカーを用いて描いた。
【0051】
3.和紙立体成形物の形成
口径6mmのスプレーガンにハイドロゲル分散紙料液を充填して、模様が施された型上に0.45MPaのスプレー圧で吹き付けた。なお、本実施例においては、500mlのハイドロゲル分散紙料液を、約60分間隔で3回吹き付けて型上に堆積させた。その後、これを乾燥させて、型上に球形の和紙立体成形物を形成した。
【0052】
4.染料転写および型抜き
乾燥させた和紙立体成形物の表面に酢酸ブチルを吹き付けて浸透させることにより、型表面に塗布した染料を溶解し、紙立体成形物に滲み出させ、型に施された模様を和紙立体成形物に転写した。その後、酢酸ブチルを乾燥させて風船タイプの型から空気を抜いて型抜きを行い、模様付きのランプシェードを作製した。
【0053】
5.転写された模様の評価
作製されたランプシェードの表面を目視により調べた結果、本実施例においては、型の表面に描かれた全ての線が明確に分離したまま和紙立体成形物の表面に転写されており、5mm以下という従来ではなし得なかった狭い間隔の模様であるにもかかわらず、隣接する線が互いに繋がっていなかった。
【0054】
このことから、予め型の表面に染料により模様を施し、この模様を型上に形成された和紙立体成形物に転写させることにより、作製した和紙立体成形物に直接模様を施すような従来の方法に比べて、緻密な模様が正確に施されたランプシェードを製造することができることが確認された。
【0055】
以上、本発明を実施の形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、2 型
3 模様
4 スプレーガン
5 ハイドロゲル分散紙料液
11 ブロック
図1
図2