【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
和紙原料と水と粘剤とを含む紙料液を調製する紙料液調製工程と、
前記紙料液にハイドロゲルを分散しハイドロゲル分散紙料液を調製するハイドロゲル分散紙料液調製工程と、
所望するランプシェードの形状に合わせて準備された型の表面に、所望する模様に対応して染料を塗布する染料塗布工程と、
前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型上に堆積させるハイドロゲル分散紙料液堆積工程と、
前記型上に堆積された前記ハイドロゲル分散紙料液を乾燥させて、和紙立体形状物を形成するハイドロゲル分散紙料液乾燥工程と、
乾燥した前記和紙立体形状物の表面から前記染料を溶解させる溶剤を浸透させて、前記型の表面に塗布された前記染料を、前記和紙立体形状物に転写する染料転写工程と
を備えていることを特徴とするランプシェードの製造方法である。
【0009】
本発明者は、上記した課題の解決について、鋭意検討を行った結果、和紙立体形状物を形成するための型は表面が滑らかであり、さらに染料が滲みにくいため、従来のような形成後の和紙立体形状物の表面に直接模様を施す場合に比べて、遥かに緻密で複雑な模様を施すことができると考えた。そして、和紙立体形状物の形成に先立って、予め、所望する模様に対応して型の表面に染料を塗布し、これを型の表面から和紙立体形状物に転写させることにより、上記課題が解決されて、複雑な立体形状でありながら、所望する複雑な模様が施された和紙材料製のランプシェードを製造することができることに思い至り本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、この方法の場合、滑らかであり、さらに染料が滲みにくい型の表面に、筆などを用いて様々な染料で多種多様に模様を施すことができるため、従来に比べて、遥かに緻密で複雑な模様を施すことができ、従来は不可能であった5mm以下という細い線の間隔の模様を容易に形成させることができる。
【0011】
そして、型の表面に施された模様を、和紙立体形状物の表面から染料を溶解させる溶剤を浸透させることにより、型の表面に塗布された染料が溶解されて、和紙立体形状物の中を表面に向けて滲み出していくため、その後、溶剤を乾燥させることにより、型に施された緻密で複雑な模様を和紙立体形状物の表面まで転写させることができる。この結果、所望する複雑な模様が表面に施されたランプシェードを製造することができる。
【0012】
また、転写に際して、染料を溶解させて和紙立体形状物の表面に滲み出させるため、適宜溶剤を選択してその滲み出し状況を制御することにより、和紙材料製のランプシェードで多く好まれる「ぼかし」や「グラデーション」が効いた温かみのある独特の風合いの模様でも容易に形成させることができ、従来では得られなかった優れた外観のランプシェードを製造することができる。
【0013】
また、形成された和紙立体形状物を型から外して模様付けを行う従来の方法と異なり、和紙立体形状物の形成と模様付けとを連続した一連の工程の下で行うことができるため、緻密で複雑な模様が形成されたランプシェードを効率良く製造することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、
前記染料塗布工程において、前記染料として油性染料を用い、
前記染料転写工程において、前記溶剤として有機溶剤を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載のランプシェードの製造方法である。
【0015】
型表面に模様を施すための染料としては、型上に堆積させたハイドロゲル分散紙料液に溶解することを防止するという観点から、油性染料が好ましく、このような油性染料として、例えば、市販の油性マーカーなどを挙げることができる。
【0016】
また、油性染料を用いる場合、溶剤としては、型や乾燥した和紙立体形状物を溶かすことなく、油性染料だけを溶かす有機溶剤が好ましく、このような有機溶剤として、例えば、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、キシレン、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、デカン、酢酸エチルなどを挙げることができる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明は、
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程が、スプレーガンを用いて前記ハイドロゲル分散紙料液を前記型の表面に吹き付けることにより、前記ハイドロゲル分散紙料液を堆積させる工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のランプシェードの製造方法である。
【0018】
スプレーガンを用いてハイドロゲル分散紙料液を型の表面に吹き付けることにより、ハイドロゲル分散紙料液を型上に容易に均質に堆積させることができる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、
前記スプレーガンの吹き付け口径が2〜20mmであることを特徴とする請求項3に記載のランプシェードの製造方法である。
【0020】
スプレーガンの吹き付け口径(スプレー口径)が大き過ぎる場合には堆積物にムラが発生する恐れがある一方で、小さ過ぎる場合には詰まりが発生する恐れがあるため、吹き付け口径は、2〜20mmであることが好ましく、6mm程度であるとより好ましい。
【0021】
また、請求項5に記載の発明は、
前記ハイドロゲル分散紙料液堆積工程と前記ハイドロゲル分散紙料液乾燥工程とを3〜6回繰り返して、前記和紙立体形状物を作成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法である。
【0022】
上記のように、ハイドロゲル分散紙料液堆積工程とハイドロゲル分散紙料液乾燥工程とを複数回繰り返すことにより、厚みが均一な高品質の和紙立体形状物とすることができる。このとき、ハイドロゲル分散紙料液堆積工程とハイドロゲル分散紙料液乾燥工程を繰り返す回数としては、製造後のランプシェードの品質と製造効率との両方の観点から、3〜6回が好ましい。
【0023】
また、請求項6に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のランプシェードの製造方法を用いて製造されていることを特徴とするランプシェードである。
【0024】
上記した各製造方法を用いて製造されていることにより、複雑な立体形状でありながら複雑な模様が施された優れた外観品質のランプシェードを提供することができる。