特許第6569870号(P6569870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569870
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】グラフト重合体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 271/00 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   C08F271/00
【請求項の数】13
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2016-510173(P2016-510173)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2015055891
(87)【国際公開番号】WO2015146486
(87)【国際公開日】20151001
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-60419(P2014-60419)
(32)【優先日】2014年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.日本臨床検査自動化学会会誌掲載の日本臨床検査自動化学会 第46回大会抄録集(発行日 平成26年9月1日) 2.日本臨床検査自動化学会第46回大会ならびに同技術セミナー(日本・神戸)(開催日 平成26年10月9日及び10日) 3.JSBMS Letters掲載の第39回日本医用マススペクトル学会年会抄録集(発行日 平成26年9月1日) 4.第39回日本医用マススペクトル学会年会(日本・千葉)(開催日 平成26年10月17日) 5.第13回HUPO(Human Proteome Oraganization)世界大会抄録集(http://www.hupo2014.com/schedule.html)(公開日 2014年10月4日) 6.第13回HUPO(Human Proteome Oraganization)世界大会(スペイン・マドリッド)(開催日 2014年10月6日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃司
(72)【発明者】
【氏名】文屋 勝
【審査官】 佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/146487(WO,A1)
【文献】 特表2009−516012(JP,A)
【文献】 特開平02−311502(JP,A)
【文献】 特表2008−528745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 251/00−283/00
C08F 283/02−289/00
C08F 291/00−291/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体であって、
該少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が、一般式(2)で表される構造を含むビニルアミン系(共)重合体、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体、一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体、及び一般式(5)で表される構造を含むアクリルアミン系(共)重合体からなる群より選ばれる、上記ポリアミングラフト重合体(ただし、下記一般式中、nは10から200000の整数であり、mは5から18000の整数であり、lは5から15000の整数であり、oは10から10000の整数であり、pは1から100の整数である。)。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】
【請求項2】
少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体。
【請求項3】
前記アリルアミン系単量体(a’)が、ジアリルアミンである、請求項2に記載のポリアミングラフト重合体。
【請求項4】
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、1のエポキシ基を有し、かつ、一般式(6)で表される化合物である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアミングラフト重合体(ただし、一般式(6)中のRは、置換又は非置換の炭化水素基である。)。
【化5】
【請求項5】
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(7)で表される1のエポキシ基を有する化合物であって、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中に水酸基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐しているアルキル基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリル含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、からなる群より選ばれる、請求項1から4のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体。
【化6】
【請求項6】
前記エチレン系不飽和単量体(c)が、ビニル系単量体、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体、アリル系単量体、ジアリル系単量体、及び不飽和カルボン酸からなる群より選ばれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体。
【請求項7】
極性溶媒中において、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法であって、
該少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が、一般式(2)で表される構造を含むビニルアミン系(共)重合体、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体、一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体、及び一般式(5)で表される構造を含むアクリルアミン系(共)重合体からなる群より選ばれる、上記ポリアミングラフト重合体(ただし、下記一般式中、nは10から200000の整数であり、mは5から18000の整数であり、lは5から15000の整数であり、oは10から10000の整数であり、pは1から100の整数である。)。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】
【請求項8】
極性溶媒中において、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
【請求項9】
前記アリルアミン系単量体(a’)が、ジアリルアミンである、請求項8に記載のポリアミングラフト重合体の製造方法。
【請求項10】
前記ラジカル重合開始剤が、一般式(8)で表されるアゾ系開始剤、一般式(9)で表される過酸化物系開始剤、及び一般式(10)で表される無機過硫酸塩系開始剤からなる群より選ばれる、請求項7から9のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法(ただし、下記一般式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1から20の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から20の有機基であり、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。)。
【化11】

【化12】

【化13】
【請求項11】
前記重合させる工程において、温度が0〜100℃であるポリアミン誘導体溶液を用いる、請求項7から10のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
【請求項12】
前記重合させる工程において、pHが0以上のポリアミン誘導体溶液を用いる、請求項7から11のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
【請求項13】
前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(7)で表される1のエポキシ基を有する化合物であって、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中に水酸基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐しているアルキル基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリル含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、からなる群より選ばれる、請求項7から12のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
【化14】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導入コストが低く、簡便な操作で、安全に且つ安定して製造することができるグラフト重合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体や高分子化合物に所望の性質を付与するための好適な手段として、高分子主鎖に官能基を有する側鎖をグラフトするグラフト重合、及びそれにより得られたグラフト重合体が広く用いられている。
例えばアリルアミン系重合体を主鎖とするグラフト重合体の製造方法としては、化学修飾による方法、放射線を利用する方法が知られている。
化学修飾による方法として、グラフト鎖とする高分子末端にアミノ基と反応する官能基(例えばアルデヒド基、カルボキシル基、酸ハライド基、イソシアネート基、エポキシ基、アクリロイル基等)を有する高分子を修飾する方法(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)、高分子主鎖にラジカル重合性官能基を有しさらにアミノ基と反応する官能基を有する化合物を修飾し、続けて重合する方法(例えば、特許文献3参照)、グラフト鎖とする高分子末端にラジカル重合性官能基を有しさらにアミノ基と反応する官能基を有する化合物を重合し、続けてアミノ基を有する高分子を反応させる方法(例えば、特許文献4参照)などが知られている。
放射線を用いる方法では、基材(例えばポリオレフィン、セルロース等)に電子線を照射させ高分子主鎖にラジカルを誘起させ重合開始点とし、グラフト鎖とする単量体を重合させる方法(例えば、特許文献5参照)が知られている。
なお、アリルアミン系重合体を含むグラフト重合体は知られている。一方、アリルアミン系重合体にエポキシ化合物を反応させた誘導体も知られているが、該誘導体のグラフト重合体は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−89787号公報
【特許文献2】米国公開特許出願US2010−0029544公報
【特許文献3】特開2006−36830号公報
【特許文献4】特開2004−225181号公報
【特許文献5】特開2005−154973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルデヒド、酸ハロゲン化物などの反応性官能基はその反応性の高さのため潜在的な毒性が懸念され、また容易に加水分解するために原料として取り扱いが難しい。また、カルボキシル基との反応では、脱水反応であるため130℃以上の高温を必要とする。さらに、この方法では幹ポリマーとグラフト鎖の高分子をそれぞれ製造する必要があり、コストが高い。加えてアミノ基との反応により官能基変換が生じるため、グラフト鎖の導入率が高くなればなるほど、アミノ基が少なくなる。このため、アリルアミン系重合体として求められるアミンの特性が失われていってしまう等の課題が残されていた。
【0005】
放射線を用いる方法は、上記のような高温を必要とせずワンポットで製造が可能であるものの、放射線照射装置が非常に高価である事、また放射線を取り扱う設備にする必要がある事など、導入コストが高い。さらに放射線は高エネルギーを必要とするため、コストが高い。加えて放射線等の電子線は人体への影響が懸念され、製造における安全性確保も課題として残されていた。
【0006】
本発明者らは、従来技術に残された上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、安全に且つ安定して製造することができるグラフト重合方法、及びそれにより得られるグラフト重合体を見出し、本発明に至った。なお、本発明は、アリルアミン系重合体のグラフト重合に特に好適に適用される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本願第1発明は、
[1]少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体、に関する。
下記、[2]は、本発明の好ましい一実施形態である。
[2]前記少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が、一般式(1)で表される構造を含むエチレンイミン系(共)重合体、一般式(2)で表される構造を含むビニルアミン系(共)重合体、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体、一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体、及び一般式(5)で表される構造を含むアクリルアミン系(共)重合体からなる群より選ばれる、上記[1]に記載の、ポリアミングラフト重合体ただし、下記一般式中、nは10から200000の整数であり、mは5から18000の整数であり、lは5から15000の整数であり、oは10から10000の整数であり、pは1から100の整数である。)。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

また本願第2発明は、
[3]少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体、に関する。
下記[4]から[7]も、いずれも本発明の好ましい実施形態の一つである。
[4]前記アリルアミン系単量体(a’)が、ジアリルアミンである、上記[3]に記載のポリアミングラフト重合体。
[5]前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(6)で表される化合物である、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載のポリアミングラフト重合体(ただし、一般式(6)中のRは、置換又は非置換の炭化水素基である。)。
【化6】

[6]前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(7)で表される化合物であって、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にヒドロキシ基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐しているアルキル基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(9)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはエポキシ環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、多官能エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリルを含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、からなる群より選ばれる、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体。
【化7】

[7]前記エチレン系不飽和単量体(c)が、ビニル系単量体、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体、アリル系単量体、ジアリル系単量体、及び不飽和カルボン酸からなる群より選ばれる、上記[1]から[6]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体。
【0008】
また本願第3発明は、
[8]極性溶媒中において、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法、に関する。
また本願第4発明は、
[9]極性溶媒中において、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法、に関する。
下記[10]から[14]も、いずれも本発明の好ましい実施形態の一つである。
[10]前記アリルアミン系単量体(a’)が、ジアリルアミンである、上記[9]に記載のポリアミングラフト重合体。
[11]前記ラジカル重合開始剤が、一般式(8)で表されるアゾ系開始剤、一般式(9)で表される有機化酸化物系開始剤、及び一般式(10)で表される無機過硫酸塩系開始剤からなる群より選ばれる、上記[8]から[10]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法(ただし、下記一般式中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1から20の有機基であり、R及びRはそれぞれ独立に水素、又は炭素数1から20の有機基であり、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。)。
【化8】

【化9】

【化10】

[12]前記重合させる工程において、温度が0〜100℃であるポリアミン誘導体溶液を用いる、上記[8]から[11]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
[13]前記重合させる工程において、pHが0以上のポリアミン誘導体溶液を用いる、上記[8]から[12]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
[14]前記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、一般式(7)で表される化合物であって、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にヒドロキシ基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐しているアルキル基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(9)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはエポキシ環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、多官能エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリルを含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、からなる群より選ばれる、上記[8]から[13]のいずれか一項に記載の、ポリアミングラフト重合体の製造方法。
【化11】
【発明の効果】
【0009】
本願第1及び第3発明によれば、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、アミンの特性を保持しつつ、安全に且つ安定して製造することができる、グラフト共重合体およびその製造方法を提供することができる。本願第1及び第3発明は、アリルアミン系グラフト共重合体において、特に好ましく利用することができる。
本願第2及び第4発明によれば、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、効率良く且つ制御性良く反応を行い、アミンの特性を保持しつつ、安全に且つ安定して製造することができる、グラフト共重合体およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図2】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンのGPCチャート。
図3】本発明の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図4】本発明の一実施例における精製後のグラフト重合体のGPCチャート。
図5】本発明の一実施例における精製後のグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図6】本発明の一実施例における精製後のグラフト重合体のH NMRチャート。
図7】本発明の他の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図8】本発明の他の一実施例における精製後のグラフト重合体のGPCチャート。
図9】本発明の他の一実施例における精製後のグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図10】本発明の他の一実施例における精製後のグラフト重合体のH NMRチャート。
図11】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図12】本発明の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図13】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図14】本発明の一実施例におけるエポキシオクタン変性ポリアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図15】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図16】本発明の一実施例におけるエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図17】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図18】本発明の一実施例におけるスチレンオキシド変性ポリアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図19】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図20】本発明の一実施例におけるグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図21】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図22】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図23】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図24】本発明の一実施例におけるグリシドール変性ポリジアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図25】本発明の一実施例におけるグリシドール変性ポリジアリルアミンのGPCチャート。
図26】本発明の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図27】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図28】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンの赤外分光スペクトル。
図29】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図30】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリビニルアミンの赤外分光スペクトル。
図31】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図32】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンの赤外分光スペクトル。
図33】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンのGPCチャート。
図34】本発明の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図35】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
図36】本発明の一実施例におけるプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンのGPCチャート。
図37】本発明の一実施例におけるグラフト重合体のGPCチャート。
図38】本発明の一実施例におけるグラフト重合体の赤外分光スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願第1発明は、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体、である。
【0012】
[少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)]
本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)としては、その構造中に少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物であれば、いかなる化合物をも使用することが可能であるが、一般式(1)で表される構造を含むエチレンイミン系(共)重合体、一般式(2)で表される構造を含むビニルアミン系(共)重合体、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体、一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体、及び一般式(5)で表される構造を含むアクリルアミン系(共)重合体を用いることが好ましい。なお、下記一般式中、nは10から200000の整数であり、mは5から18000の整数であり、lは5から15000の整数であり、oは10から10000の整数であり、pは1から100の整数である。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】
【0013】
本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)としては、一般式(3)で表されるアリルアミン系重合体が特に好ましく用いられる。
一般式(3)で表されるアリルアミン系重合体は、グラフト後もアミンとしての性質を併せ持つことから実用上の価値が高く、また、従来技術では温和な条件でグラフトすることが困難であったため、本発明を適用することの技術的意義が高い。
【0014】
なお、本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)は、少なくとも1のアミノ基を有すればよいものであり、その構成単位中にアミノ基を有さない構成単位を含んでいてもよい。従って、上記一般式(1)から(5)で表される構造を有する各重合体も、それぞれ上記一般式(1)から(5)で表される構造の構成単位に加えて、アミノ基を有さない構成単位を含んでいてもよく、また含んでいなくともよい。アミノ基を有さない構成単位としては二酸化硫黄、アクリルアミド、アリルアルコール、アクリル酸等を挙げることができるが、これらには限定されない。
【0015】
本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)におけるアミノ基は、一級アミノ基、二級アミノ基、及び三級アミノ基のいずれであってもよく、一級アミノ基、又は二級アミノ基であることが特に好ましい。
少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)におけるアミノ基の数には、特に制限はないが、反応性、使いやすさ等の観点から、1高分子あたり5〜15000個であることが好ましく、8〜3000個であることが特に好ましい。また、高分子化合物の分子量あたりの個数に換算すると、分子量10000あたり、5個から230個であることが好ましく、10個から130個であることが特に好ましい。アミノ基の数が少なすぎなければグラフト開始点となるアルキレンオキサイドの導入率が過小とならず、グラフト効率の悪化が抑制される。
【0016】
本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)の分子量には特に制限は無いが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留などの観点から、数平均分子量で500〜10000000であることが好ましく、500〜1000000であることが特に好ましい。
また、本願第1発明において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)が有する繰り返し単位の数にも特に制限は無いが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留などの観点から、10〜150000個であることが好ましく、10〜3000個であることが特に好ましい。
【0017】
本願第2発明は、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体と、エチレン性不飽和単量体(c)とを重合して得られる、ポリアミングラフト重合体、である。
【0018】
[少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)]
本願第2発明において用いられる少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)としては、その構造中に少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基を有とする重合性の化合物であれば、いかなる化合物をも使用することが可能であるが、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物であることが好ましい。
【化17】

一般式(a1)中、R及びR10はその少なくとも一方が水素原子であり、他方が水素又は炭素数1から8の炭化水素基であり、好ましくは、水素原子又は炭素数1から3のアルキル基である。
また、一般式(a1)において、R及びR10のいずれか一方もアリル基であること、すなわち2のアリル基を有するジアリルアミン系単量体であることが、重合性等の観点から特に好ましい。
【0019】
高い重合性を得る観点からは、本願第2発明の製造にあたり用いられるアリルアミン系単量体(a’)のうち少なくとも一部は、2のアリル基を有するジアリルアミン系単量体であることが好ましく、該アリルアミン系単量体(a’)の30モル%以上がジアリルアミン系単量体であることがより好ましく、50モル%以上がジアリルアミン系単量体であることが特に好ましい。
一般式(a1)において、R及びR10の一方(例えばR)が水素原子である場合、他方(この場合R10)は、水素原子、メチル基、エチル基、アリル基、又はベンジル基であることが好ましい。すなわち、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物は、好ましくは、アリルアミン、メチルアリルアミン、エチルアリルアミン、ジアリルアミン、又ベンジルアリルアミンである。
【0020】
また、一般式(a1)で表される構造を有するアリルアミン系化合物の有機酸塩又は無機酸塩も、本願第1発明において、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)として好ましく用いることができる。上記有機酸塩又は無機酸塩におけるカウンターイオンとしては、ハロゲンイオン(さらに好ましくは、Cl、Br、若しくはI)、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、2−ヒドロキシ−1−エタンスルホン酸イオン、酢酸イオン又はヒドロキシ酢酸イオンが好ましい。
【0021】
[少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)]
本願第1発明及び第2発明において用いられる少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)としては、その構造中に少なくとも1のエポキシ基を有する化合物であれば、いかなる化合物をも使用することが可能である。本願第1発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたっては、この少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)は、上記少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)中のアミノ基と反応して、末端にヒドロキシ基を有する側鎖を有するポリアミン誘導体(以下、「幹ポリマー1」とも呼ぶ。)を生成する。幹ポリマー1は側鎖にヒドロキシ基を有するので、エチレン性不飽和単量体(c)中の炭素−炭素二重結合と反応性が高く、比較的温和な条件で、当該ヒドロキシ基に隣接する炭素を起点として、エチレン性不飽和単量体(c)から導かれる構造や基を幹ポリマー1上にグラフトすることが可能となる。
【0022】
本願第2発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたっては、この少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)は、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)中のアミノ基と反応して、変性アリルアミン系単量体を生成し、該変性アリルアミン系単量体がその後の工程に供される。この点において、本願第2発明は、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が高分子化合物(a)と反応する本願第1発明と異なる。このような相違に起因して、本願第2発明のポリアミングラフト重合体は、高効率且つ高い制御性で製造することが可能であり、また
、共重合成分等の導入により、所望の構造を高い自由度で実現することができる。
本願第1発明及び第2発明において用いられる少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)としては、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。なお、一般式(6)中のRは、置換又は非置換の炭化水素基である。
【化18】

一般式(6)で表される化合物は、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)又はアリルアミン系単量体(a’)中のアミノ基との反応性が高く、高温や放射線を必要とすることなく、比較的温和な条件で、簡便な操作で、安全に、且つ安定して、末端にヒドロキシ基を有する側鎖を高分子化合物上に付与することができるので、好ましい。
【0023】
また、本願第1発明及び第2発明において用いられる少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)としては、下記一般式(7)で表される化合物であって、RからRが特定の基の組み合わせとなる化合物であることも好ましい。
【化19】
【0024】
一般式(7)で表される化合物であって、RからRが特定の基の組み合わせとなる化合物は、より具体的には、(1)式中R、R、R、及びRが、水素原子である、エチレンオキサイド、(2)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にヒドロキシ基を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(3)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜18の直鎖もしくは分岐しているアルキル基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(4)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエーテル結合を含む炭素数1〜8の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(5)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはハロゲンである(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(6)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または不飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(7)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または脂環式または不飽和結合を有する環式炭化水素基を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(8)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または芳香環もしくは複素環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(9)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子またはエポキシ環を含む炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、多官能エポキシ化合物、(10)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にアルコキシシリルを含む炭素数3〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(11)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にフッ素を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(12)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にカルボキシル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、(13)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にエステル結合もしくはアミド結合を含む炭素数1〜12の直鎖もしくは分岐している飽和炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物、並びに(14)式中R、R、R、及びRが、それぞれ独立に水素原子または鎖中にスルホン酸エステル基を有する炭化水素基である(但し、R、R、R、及びRの全てが水素原子ではない)、エポキシ化合物からなる群より選ばれる化合物である。
これらの化合物は、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)又はアリルアミン系単量体(a’)中のアミノ基との反応性が高く、高温や放射線を必要とすることなく、比較的温和な条件で、簡便な操作で、安全に、且つ安定して、末端にヒドロキシ基を有する側鎖を高分子化合物上に付与することができるので、好ましい。
【0025】
また、具体的な化合物としては、エチレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化20】
【0026】
グリシドール(構造は、下式参照)、
【化21】
【0027】
プロピレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化22】

ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,2−エポキシヘキサン、及び1,2−エポキシヘキサデカン、
【0028】
グリシジルメチルエーテル(構造は、下式参照)、
【化23】

エチルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、及びトリグリシジルイソシアヌレート
【0029】
エピクロリヒドリン(構造は、下式参照)、
【化24】

エピブロモヒドリン、及び2−(クロロメチル)−1,2−エポキシブタン
【0030】
1,3−ブタジエンモノオキサイド(構造は、下式参照)、
【化25】

1,2−エポキシ−5−ヘキセン、及びアリルグリシジルエーテル
【0031】
1,2−エポキシシクロペンタン(構造は、下式参照)、
【化26】

1,2−エポキシシクロヘキサン、及び1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン3,4−エポキシテトラヒドロフラン
【0032】
スチレンオキサイド(構造は、下式参照)、
【化27】

グリシジルフェニルエーテル、及び4−グリシジルオキシカルバゾール
【0033】
1,2:3,4−ジエポキシブタン(構造は、下式参照)、
【化28】

1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、及びエチレングリコールジグリシジルエーテル
【0034】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(構造は、下式参照)、
【化29】

及び3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン
【0035】
1,2−エポキシ−1H,1H,2H,3H,3Hヘプタデカフルオロウンデカン(構造は、下式参照)
【化30】
【0036】
エポキシコハク酸(構造は、下式参照)
【化31】
【0037】
グリシジルブチレート(構造は、下式参照)、
【化32】

及びN−グリシジルフタルイミド、並びに、
【0038】
グリシジルニトロベンズスルホネート(構造は、下式参照)、
【化33】

及びグリシジル−p−トルエンスルホネートなどを挙げることができるが、これらには限定されない。
【0039】
(幹ポリマー1)
本願第1発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたっては、上記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)を、上記少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と反応させることで、幹ポリマー1が形成される。幹ポリマー1は側鎖にヒドロキシ基を有するので、エチレン性不飽和単量体(c)中の炭素−炭素二重結合と反応性が高く、当該ヒドロキシ基に隣接する炭素を起点として、エチレン性不飽和単量体(c)に由来する側鎖構造や、官能基を幹ポリマー1上にグラフトすることが可能となる。
【0040】
幹ポリマー1は、上記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)を、上記の少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と反応させることで得られるポリアミン誘導体であればよく、それ以外の制限は特に課されないが、特に好ましい幹ポリマー1として、(A)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体とプロピレンオキシドとを反応させて得られるポリアミン誘導体、(B)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体とグリシドールとを反応させて得られるポリアミン重合体、(C)一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体とグリシドールとを反応させて得られるポリアミン重合体、及び(D)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体と1,2−エポキシオクタンとを反応させて得られるポリアミン重合体等を挙げることができる。
上記少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)を、上記の少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と反応させる割合には特に制限はないが、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物中(a)のアミノ基に対してエポキシ基0.01から2当量が好ましく、0.1から2当量が特に好ましい。
なお、アミノ基が一級のアミノ基である場合には、アミノ基に対してエポキシ基0.1から2当量が特に好ましく、アミノ基が二級のアミノ基である場合には、アミノ基に対してエポキシ基0.1から1当量が特に好ましい。
【0041】
上記の好ましい幹ポリマー1の一つである(A)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体とプロピレンオキシドとを反応させて得られるポリアミン誘導体においては、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体中のアミノ基に対して、エポキシ基がほぼ2当量となる割合で反応させることが好ましく、この場合、得られる幹ポリマー1は、下記式(A)で表される構造を含むこととなる。
【化34】
【0042】
また、上記の好ましい幹ポリマー1の一つである(B)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体とグリシドールとを反応させて得られるポリアミン重合体においては、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体中のアミノ基に対して、エポキシ基がほぼ2当量となる割合で反応させることが好ましく、この場合、得られる幹ポリマー1は、下記式(B)で表される構造を含むこととなる。
【化35】

【0043】
また、上記の好ましい幹ポリマー1の一つである(C)一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体とグリシドールとを反応させて得られるポリアミン重合体においては、一般式(4)で表される構造を含むジアリルアミン系(共)重合体中のアミノ基に対して、エポキシ基がほぼ1当量となる割合で反応させることが好ましく、この場合、得られる幹ポリマー1は、下記式(C)で表される構造を含むこととなる。
【化36】
【0044】
また、上記の好ましい幹ポリマー1の一つである(D)一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体と1,2−エポキシオクタンとを反応させて得られるポリアミン重合体においては、一般式(3)で表される構造を含むアリルアミン系(共)重合体中のアミノ基に対して、エポキシ基がほぼ0.1当量となる割合で反応させることが好ましく、この場合、得られる幹ポリマー1は、下記式(D)で表される構造を含むこととなる。
【化37】
【0045】
幹ポリマー1の分子量には特に制限はないが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留等の観点から、数平均分子量で500〜10000000であることが好ましく、500〜1000000であることが特に好ましい。通常は、幹ポリマー1の分子量は、上記少なくとも1のアミノ基を有する化合物(a)の分子量によって概ね規定されるので、少なくとも1のアミノ基を有する化合物(a)の分子量を上記の好ましい範囲に設定することで、好ましい分子量を有する幹ポリマー1を得ることができる。
幹ポリマー1の繰り返し単位数にも特に制限はないが、反応性、粘度、ハンドリング、歩留等の観点から、10〜150000であることが好ましく、10〜3000であることが特に好ましい。通常は、幹ポリマー1の繰り返し単位数は、上記少なくとも1のアミノ基を有する化合物(a)の繰り返し単位数と略一致するので、少なくとも1のアミノ基を有する化合物(a)の繰り返し単位数を上記の好ましい範囲に設定することで、好ましい繰り返し単位数を有する幹ポリマー1を得ることができる。
【0046】
(変性アリルアミン系単量体)
本願第1発明の場合とは異なり、本願第2発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたっては、まず、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応させることで、変性アリルアミン系単量体を得る。アリルアミン系単量体(a’)は、一般的に高分子化合物と比較して立体障害となる構造が少ないため、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)との反応性が高く、反応を効率よく行うことができるとともに、反応の制御性が高く、グラフト化率等を適切に制御して、また必要に応じて共重合成分等を導入するなどして、所望の構造のポリアミングラフト重合体を容易に得ることができる。このような反応性、グラフト化率、共重合成分等の影響により、本願第2発明のポリアミングラフト重合体の構造は、本願第1発明のポリアミングラフト重合体の構造とは異なるものとなる。
具体的には、例えば本願第1発明において少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)としてポリアリルアミン、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)としてプロピレンオキシドを選択した場合には、幹ポリマー1は式(A)で表される構造を含むものとなるが、全てのアミノ基に対しエポキシ化合物を反応させる事は立体障害のため難しく、従ってこの場合の幹ポリマー1は未反応のアミノ基をも含むものとなる。一方、本願第2発明において、例えば少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)としてアリルアミン、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)としてプロピレンオキシドを選択した場合には、アリルアミン単量体とプロピレンオキシドを反応させ変性アリルアミン系単量体を得るが、立体障害が少ないため全てのアミノ基を反応させ、単一種の変性アリルアミンを得る事ができる。また、反応が上手く進行しなかった場合でも、精留操作により未反応物を除去する事によって、単一種の変性アリルアミンを得る事ができる。この様にして得た単一種の変性アリルアミンを用いて重合する事によって、この場合のポリアミン誘導体(以下、「幹ポリマー2」ともいう。)は実質的に式(A)で表される構造のみを含むものとなる。また、この様な幹ポリマーの構造の違いによって、本願第1発明のポリアミングラフト重合体と本願第2発明のポリアミングラフト重合体も、明確に異なる構造を有する。
【0047】
上記変性アリルアミン系単量体の製造方法は、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応させるものであればよく、特に制限は無いが、例えば、上記アリルアミン系単量体(a’)を水等の極性溶媒中に溶解し、冷却及び撹拌しながら少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)を滴下し、その後温度0〜100℃において0.1〜24時間反応させる方法で、製造することができる。
【0048】
(幹ポリマー2)
本願第2発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたっては、上記工程で得られた変性アリルアミン系単量体を重合することで、側鎖にヒドロキシ基を有するポリアミン誘導体(「幹ポリマー2」)を得る。このポリアミン誘導体(幹ポリマー2)は、本願第1発明のポリアミングラフト重合体の製造にあたって製造されるポリアミングラフト重合体(幹ポリマー1)と類似の構造を有するものではあるが、反応性、グラフト化率、共重合成分等の影響により、実質的に異なる構造を有するものとなる。
【0049】
なお、幹ポリマー2の重合にあたっては、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体以外の単量体を共重合成分として共重合してもよい。共重合成分は、上記変性アリルアミン系単量体と共重合可能であればよく、その種類に特に制限は無いが、好ましい共重合成分として、アクリルアミド、メタクリルアミド、二酸化イオウ、アクリル酸等を例示することができる。
共重合成分の量には特に制限は無いが、変性アリルアミン系単量体100モルに対して、1〜10000モルの共重合成分を用いることが好ましく、10〜1000モルの共重合成分を用いることが特に好ましい。
幹ポリマー2は、側鎖にヒドロキシ基を有するので、エチレン性不飽和単量体(c)中の炭素−炭素二重結合と反応性が高く、当該ヒドロキシ基に隣接する炭素を起点として、エチレン性不飽和単量体(c)に由来する側鎖構造や、官能基を幹ポリマー上にグラフトすることが可能である。
幹ポリマー2の分子量、繰り返し単位数には、特に制限は無いが、通常は幹ポリマー1と同様の分子量、繰り返し単位数を有することが好ましい。
【0050】
[エチレン系不飽和単量体(c)]
エチレン系不飽和単量体(c)を幹ポリマー1又は幹ポリマー2とをグラフト重合することで、本願第1発明又は第2発明のポリアミングラフト重合体を得ることができる。エチレン系不飽和単量体(c)は、少なくとも1のエチレン系不飽和二重結合を有する化合物であればよく、それ以外の制限はないが、ビニル系単量体、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系単量体、アクリルアミド系単量体、アリル系単量体、ジアリル系単量体、及び不飽和カルボン酸からなる群より選ばれる単量体であることが好ましい。
エチレン系不飽和単量体(c)の分子量には特に制限はないが、グラフト効率などの観点から、分子量28から1100であることが好ましく、28から500であることが特に好ましい。
エチレン系不飽和単量体(c)の炭素原子数にも特に制限はないが、2個から50個であることが好ましく、2個から30個であることが特に好ましい。
【0051】
エチレン系不飽和単量体(c)のうち本発明において好ましく用いられる単量体のより具体的な例としては、スチレン、ジビニルベンゼン、p−スチレンスルホン酸ナトリウム水和物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、アクリロニトリル、アリルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、ジメチルジアミン塩酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、特にその60%水溶液、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、などを挙げることができる。これらのうち、幹ポリマー上のヒドロキシ基と隣接した炭素との反応性、グラフト後の側鎖末端の基の有用性などの観点から、ジメチルアクリルアミド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、スチレン、アクリロニトリルなどが特に好ましい。
これらの単量体の化学構造、CAS番号等は、当業者において自明であるので、その記載を省略する。
【0052】
エチレン系不飽和単量体(c)は、本発明の目的に応じて、1種類のみを単独で使用することもできるし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。2種類以上のエチレン系不飽和単量体(c)を組み合わせて使用する場合、その全てが上記の好ましい例に該当するものであってもよいし、その一部のみが上記の好ましい例に該当するものであってもよい。
【0053】
本願第1発明及び第2発明のポリアミングラフト重合体は、比較的安定な主鎖を有する高分子化合物の側鎖末端に所望の基を導入することができるので、各種の用途に好適に使用することが可能である。とりわけ、特定の物質との反応性及び特定の媒質中における分散/凝集性を好適に制御することが容易であり、印刷用インク、塗料、顔料等の分散剤、医薬/薬剤送達用物質、金属イオン補足剤、血中微量物質の分離、濃縮等の用途に好適に使用できる。
また、本願第1発明及び第2発明のポリアミングラフト重合体は、所望により少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)又はアリルアミン系単量体(a’)のアミノ基を一部維持することができるので、反応性、塩基性、帯電性などポリアミンとしての性質と、上記のポリアミングラフト重合体としての性質を併せ持つことが可能であり、種々の用途、特に反応性や分散/凝集性の制御が必要な各種用途における応用に好適である。
さらに、本願第1発明及び第2発明のポリアミングラフト重合体は、導入コストが低く、簡便な操作で、安全に且つ安定して製造することが可能であり、実用上高い価値を有する。
加えて、本願第2発明のポリアミングラフト重合体は、グラフト化率を制御することが比較的容易であり、所望の構造のポリアミングラフト重合体を容易に得ることができる。
【0054】
本願第1発明のポリアミングラフト重合体は、後述の本願第3発明の製造方法で製造することが好ましいが、これには限定されず、それ以外の製造方法で製造してもよい。
本願第2発明のポリアミングラフト重合体は、後述の本願第4発明の製造方法で製造することが好ましいが、これには限定されず、それ以外の製造方法で製造してもよい。
【0055】
[ポリアミングラフト重合体の製造方法]
本願第3発明のポリアミングラフト重合体の製造方法は、極性溶媒中において、少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法である。
【0056】
本願第2発明の製造方法において用いられる少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)、幹ポリマー1(少なくとも1のアミノ基を有する高分子化合物(a)と少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られるポリアミン誘導体)及び、エチレン性不飽和単量体(c)は、本願第1発明で用いられるものと同じであり、その詳細は、本願第1発明との関連で既に説明したとおりである。
【0057】
本願第4発明のポリアミングラフト重合体の製造方法は、極性溶媒中において、少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)と、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体に、エチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程を有する、ポリアミングラフト重合体の製造方法である。少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)が、高分子化合物(a)ではなく、単量体(a’)と反応する点で、本願第3発明の方法とは異なる。
【0058】
本願第4発明の製造方法において用いられる少なくとも1のアリル基と少なくとも1のアミノ基とを有するアリルアミン系単量体(a’)、少なくとも1のエポキシ基を有する化合物(b)、該アリルアミン系単量体(a’)と該化合物(b)とを反応して得られる変性アリルアミン系単量体、幹ポリマー2(該変性アリルアミン系単量体を重合して得られるポリアミン誘導体)及び、エチレン性不飽和単量体(c)は、本願第2発明で用いられるものと同じであり、その詳細は、本願第2発明との関連で既に説明したとおりである。
【0059】
[極性溶媒]
本願第3発明及び第4発明で用いられる極性溶媒には特に制限はなく、重合に用いる単量体、重合条件等に応じて適宜選択することができるが、例えば誘電率が5以上の溶媒を用いることができる。また、極性溶媒としては、水、エタノール、酢酸等のプロトン性極性溶媒、アセトニトリル、アセトン等の非プロトン性極性溶媒のいずれをも用いることがきる。これらのうちで、反応の容易さ、安全性、コスト等の観点から水を用いることが好ましい。
【0060】
[ラジカル重合開始剤]
本願第3発明及び第4発明で用いられるラジカル重合開始剤は、グラフト重合条件において、熱、光、酸化-還元等の刺激によりラジカルを発生させうる化合物であればよく、それ以外の制 限は受けない。本願第3発明及び第4発明においては、ラジカル重合開始剤として、一般式(8)で表されるアゾ系開始剤(式中、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1から20の有機基であり、炭素数4〜7の有機基であることが好ましい。また、アミノ基、アミジノ基、又はイミダゾリル基を有することが好ましい。)、一般式(9)で表される過酸化物系開始剤(式中、R、及びRは、それぞれ独立に水素、又は炭素数1から20の有機基であり、炭素数4〜7の有機基であることが好ましい。)、及び一般式(10)で表される無機過硫酸塩系開始剤(式中、Mは、アルカリ金属又はアンモニウムであり、カリウム、ナトリウム又はアンモニウムであることが好ましい。)からなる群より選ばれる重合開始剤を用いることが安価で取扱い易いため好ましい。
【化38】

【化39】

【化40】
【0061】
ラジカル重合開始剤のうち本願第3発明及び第4発明において好ましく用いられる開始剤のより具体的な例としては、過酸化水素(化学構造は、下記式(11)参照。)、tert−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP、化学構造は、下記式(12)参照。)、過酸化ベンゾイル(BPO、化学構造は、下記式(13)参照。)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(和光純薬工業株式会社製 商品名:V−50。化学構造は、下記式(14)参照)。)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(和光純薬工業株式会社製 商品名:VA−057。化学構造は、下記式(15)参照)。)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩(和光純薬工業株式会社 製商品名:VA−044。化学構造は、下記式(16)参照)。)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2硫酸塩2水和物(和光純薬工業株式会社製 商品名:VA−046B。化学構造は、下記式(17)参照)。)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン] (和光純薬工業株式会社製 商品名:VA−061。化学構造は、下記式(18)参照)。)、2,2’−アゾビス(2-メチルプロピオン酸メチル) (和光純薬工業株式会社製 商品名:V−601。化学構造は、下記式(19)参照)。)過硫酸アンモニウム(APS。化学構造は、下記式(20)参照))過硫酸カリウム(KPS。化学構造は、下記式(21)参照))過硫酸ナトリウム(SPS。化学構造は、下記式(22)参照))などを挙げることができる。これらのうちで、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムが安価で取扱い易いため、最も好ましい。
【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】
【0062】
本願第3発明及び第4発明の製造方法においては、幹ポリマーにエチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程における重合温度には特に制限はないが、0〜100℃の温度範囲のポリアミン誘導体溶液を用いることが好ましい。5〜80℃の温度範囲のポリアミン誘導体溶液がより好ましく、10〜60℃の温度範囲のポリアミン誘導体溶液が特に好ましい。
このように比較的低温の温和な条件でのグラフト重合は、従来技術では到底実現し得なかったものであり、当業者の予測を超えた顕著な技術的効果であると同時に、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、安全に且つ安定してグラフト重合を行うことができる点で、実用上高い価値を有する技術的効果でもある。
【0063】
また、本願第3発明及び第4発明の製造方法においては、幹ポリマーにエチレン性不飽和単量体(c)、及びラジカル重合開始剤を加えて重合させる工程における反応溶液(ポリアミン誘導体溶液)の(各成分のpKaに依存する)pHには特に制限はないが、グラフト重合を効率的に進行させる観点から、pHが0以上であることが好ましい。pHが4以上であることがより好ましく、7以上であることが特に好ましい。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は、いかなる意味においても、これらの実施例により限定されるものではない。
【0065】
〈共重合体の重量平均分子量の測定〉
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立製高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。溶離液流路ポンプは日立L−2130イナートポンプ、検出器は日立クロマスター(登録商標)5450、カラムはアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とをダブルに接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調整し、20μlを用いた。溶離液には、0.4mol/Lの塩化ナトリウム水溶液を使用した。カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準サンプルとして分子量106、194、420、615、1010、1970、3930、7920、12140、18380、21300、25240、50630、77360、116300、199800、278000、454000、及び895500のポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0066】
〈反応溶液pHの測定〉
反応溶液のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所製 B−212)を用いて測定した。センサーに25℃の反応溶液を滴下し、1分後の数値を採用した。
【0067】
(実施例1)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量3000)を氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し2当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、テトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図1に示す。IR測定において2969cm−1付近にメチル基に起因するピークが見られ、1637cm−1付近のアミノ基に起因するピークが減少した。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンが生成したことを支持している。
また、GPC測定による重量平均分子量は3800であった。本測定において得られたGPCチャートを図2に示す。
上記に従い調製した42質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%のジメチルアクリルアミド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定により、重量平均分子量は120000であった。本測定において得られたGPCチャートを図3に示す。
また、得られた溶液の一部に25質量%の水酸化ナトリウムを加えた後、テトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に溶解し35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、アセトンで再沈殿させ沈殿物を濾別し40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色個体を水で溶解し、25質量%の水酸化ナトリウムを加えた溶液を濃縮後、40℃で24時間真空乾燥させた。得られた白色固体のGPCチャート、赤外分光スペクトル、及びH NMRをそれぞれ図4図5、及び図6に示す。
GPC測定の結果、重量平均分子量は322000であった。また、赤外分光スペクトルより、1617cm−1にアミド基に起因する吸収が見られた。さらにH NMR測定の結果、1.2ppm付近にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンの構造中のメチル基に起因するピークが得られ、2.9〜3.1ppm付近にジメチルアクリルアミドの構造中のメチル基に起因するピークが得られた。また、その積分比は1.00:11.50であった。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0068】
(実施例2) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
実施例1と同様に調製した50質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、30質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)を加えた。さらに28.5質量%のAPS水溶液96.08g(単量体に対して20モル%)を分割して加え72時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定による重量平均分子量は24000であった。本測定において得られたGPCチャートを図7に示す。
得られた溶液の一部をとりエタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、溶液を濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に溶解させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体のGPCチャート、赤外分光スペクトル、及びH NMRをそれぞれ図8図9、及び図10に示す。
GPC測定の結果、重量平均分子量は4800であった。また、赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。さらにH NMR測定の結果、1.2ppm付近にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンの構造中のメチル基に起因するピークが得られ、3.15〜3.33ppmにジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に由来するピークを観測した。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0069】
(実施例3) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミンを氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12で あった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して20モル%)を滴下し、24時間重合させた。その後70℃で24時間加温し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、120nmであった。
得られた乳白色溶液の一部をとりテトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水で洗浄した後、固体を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に分散させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図11に示す。
赤外分光スペクトルより、696cm−1付近に芳香環に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
出発原料及び上記分析結果等から、得られたグラフト重合体は下式の構造を有するものと推定された(q、r、s、t、u、及びwはそれぞれ独立に正の整数。)。
【化53】
【0070】
(実施例4) プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体の製造(pH7での製造)
実施例1と同様に調製した42質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。次に35質量%の塩酸を加えpHを7に調整し、ジメチルアクリルアミド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定により、重量平均分子量は210000であった。本測定において得られたGPCチャートを図12に示す。
また、得られた溶液の一部に25質量%の水酸化ナトリウムを加えた後、テトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に溶解し35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、アセトンで再沈殿させ沈殿物を濾別し40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色個体の赤外分光スペクトルを図13に示す。
赤外分光スペクトルより、1617cm−1にアミド基に起因する吸収が見られた。さらに電位差滴定よりpH3及び8付近にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに起因する変曲点が得られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジメチルアクリルアミドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0071】
(実施例5)エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらエポキシオクタン(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図14に示す。IR測定において1120cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はエポキシオクタン変性ポリアリルアミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した30質量%のエポキシオクタン変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、エポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に溶解させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に溶解させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図15に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にエポキシオクタン変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はエポキシオクタン変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0072】
(実施例6)エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらエチレングリコールジグリシジルエーテル(アミンに対し0.05当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図16に示す。IR測定において1120cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した30質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、エチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を黄色ゲルとして得た。
得られたゲルの一部をとり水で洗浄した後、ゲルを濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に分散させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図17に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はエチレングリコールジグリシジルエーテル変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0073】
(実施例7)スチレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらスチレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、スチレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図18に示す。IR測定において1120cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はスチレンオキシド変性ポリアリルアミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した30質量%のスチレンオキシド変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、スチレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に溶解させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に溶解させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図19に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にスチレンオキシド変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はスチレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0074】
(実施例8)グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
20質量%のポリアリルアミンに13質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシジルブチレート(アミンに対し0.1当量)を滴下した。滴下終了後40℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、35質量%の塩酸を加え中和し付加塩とした後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図20に示す。IR測定において1120cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した30質量%のグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンに、19質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、グリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、溶液を濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に溶解させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に溶解させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図21に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はグリシジルブチレート変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0075】
(実施例9)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体の製造
実施例3と同様に調製したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のSPS水溶液12.53g(単量体に対して20モル%)を滴下し、24時間重合させた。その後70℃で24時間加温し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、135nmであった。
得られた乳白色溶液の一部をとりテトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水で洗浄した後、固体を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に分散させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図22に示す。
赤外分光スペクトルより、696cm−1付近に芳香環に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0076】
(実施例10)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体の製造
実施例3と同様に調製したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加え、次にスチレン (アミンに対し0.3当量)を加え、80℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して20モル%)を滴下し、24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、144nmであった。
得られた乳白色溶液の一部をとりテトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水で洗浄した後、固体を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体を水に分散させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図23に示す。
赤外分光スペクトルより、696cm−1付近に芳香環に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとスチレンとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0077】
(実施例11)グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
ジアリルアミンに79質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらグリシドール(アミンに対し1当量)を滴下した。滴下終了後45℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、グリシドール変性ジアリルアミンを水溶液として得た。
78質量%のグリシドール変性ジアリルアミンに35質量%の塩酸(アミンに対し1当量)を加えた。その後、50質量%となるように水を加え、60℃に加温し、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(単量体に対し6モル%)を分割して加え、24時間重合させた。得られた溶液を電気透析によって精製し、グリシドール変性ポリジアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、アセトンで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図24に示す。IR測定において1035cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はグリシドール変性ポリジアリルアミンが生成したことを支持している。
また、GPC測定による重量平均分子量は20000であった。本測定において得られたGPCチャートを図25に示す。
上記に従い調製した、43質量%のグリシドール変性ポリジアリルアミンに30質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH11であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液36.04g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液36.04g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、50℃で24時間重合させ、グリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定による重量平均分子量は84000であった。本測定において得られたGPCチャートを図26に示す。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、ドデカン酸を添加し、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に溶解させた後、エタノールで再沈殿させ濾過により濾液を回収した後、溶液を濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図27に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。さらに電位差滴定よりpH4及び9付近にグリシドール変性ポリジアリルアミンに起因する変曲点が得られた。これらの結果はグリシドール変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0078】
(実施例12)プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
47質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量2000)を撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させ、プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミン水溶液を得た。
得られた溶液の一部をとり、IR測定を実施した。得られた赤外分光スペクトルを図28に示す。IR測定において2930cm−1付近にメチル基に起因するピークが見られ、1580cm−1付近のアミノ基に起因するピークが見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した50質量%のプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンに、14質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液31.23g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ濾過により濾液を回収した後溶液を減圧乾固し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色固体を水に溶解させた後、2−プロパノールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色固体の赤外分光スペクトルを図29に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。さらに電位差滴定によりpH10、pH7、pH6、pH4付近にプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンに起因する変曲点が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0079】
(実施例13)プロピレンオキシド変性ポリビニルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
15質量%のポリビニルアミン(重量平均分子量150000)を撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、23質量%のプロピレンオキシド変性ポリビニルアミン水溶液を得た。
得られた溶液の一部をとり、IR測定を実施した。得られた赤外分光スペクトルを図30に示す。IR測定において2930cm−1付近にメチル基に起因するピークが見られ、1580cm−1付近のアミノ基に起因するピークが見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリビニルアミンが生成したことを支持している。
上記に従い調製した23質量%のプロピレンオキシド変性ポリビニルアミンに、15質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液31.23g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリビニルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ濾過により濾液を回収した後溶液を減圧乾固し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色固体を水に溶解させた後、2−プロパノールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色固体の赤外分光スペクトルを図31に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。さらに電位差滴定によりpH7、pH4付近にプロピレンオキシド変性ポリエチレンイミンに起因する変曲点が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリビニルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0080】
(実施例14)プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造
ジアリルアミンに78質量%となるように水を加え、氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させ、プロピレンオキシド変性ジアリルアミンを水溶液として得た。
79質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミンに35質量%の塩酸(アミンに対し1当量)を加え、59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩を水溶液として得た。得られた59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩41.33gに7質量%となるように水を加え、60℃に加温した。その後、59質量%のプロピレンオキシド変性ジアリルアミン塩酸塩123.99gと2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(単量体に対し5.6モル%)を分割して加え、24時間重合させた。得られた溶液を電気透析によって精製し、プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンを水溶液として得た。
得られた溶液の一部をとり、テトラヒドロフランで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた白色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図32に示す。IR測定において1060cm−1付近にヒドロキシル基に起因するピークが見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンが生成したことを支持している。
また、GPC測定による重量平均分子量は3000であった。本測定において得られたGPCチャートを図33に示す。
上記に従い調製した30質量%のプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンに、24質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、60℃で24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定による重量平均分子量は19000であった。本測定において得られたGPCチャートを図34に示す。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、溶液を濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に分散させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図35に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。さらに電位差滴定よりpH4及び10付近にプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンに起因する変曲点が得られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリジアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0081】
(実施例15)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体の製造(重量平均分子量2000、アミンに対してプロピレンオキシド0.1当量添加したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを使用した製造)
15質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量1600)を氷水で冷却及び撹拌しながらプロピレンオキシド(アミンに対し0.1当量)を滴下した。20℃にて24時間反応させた後、溶液を濃縮し、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンを水溶液として得た。
GPC測定による重量平均分子量は2000であった。本測定において得られたGPCチャートを図36に示す。
上記に従い調整した30質量%のプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに、18質量%となるように水を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH10であった。次に65質量%のジアリルジメチルアンモニウムクロライド(アミンに対し3当量)と28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)をそれぞれ分割して加え24時間重合させた。その後、28.5質量%のAPS水溶液14.42g(単量体に対して10モル%)を分割してさらに追加し、60℃で24時間重合させ、プロピレンキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドのグラフト重合体を水溶液として得た。
GPC測定による重量平均分子量は16000であった。本測定において得られたGPCチャートを図37に示す。
得られた溶液の一部をとり25質量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、エタノールで再沈殿させ、濾過により濾液を回収した後、濃縮し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた淡黄色固体を水に分散させた後、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体を水に分散させた後、サリチルアルデヒドを添加し、2−プロピルアルコールで再沈殿させ沈殿物を濾別し、40℃で24時間真空乾燥した。得られた黄色粉末状固体の赤外分光スペクトルを図38に示す。
赤外分光スペクトルより、3010cm−1付近にジアリルジメチルアンモニウムクロライドの構造中のメチル基に起因する吸収が見られた。また、1627cm−1にプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとサリチルアルデヒドの反応物の構造中のイミノ基に由来する吸収が見られた。これらの結果はプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンとジアリルジメチルアンモニウムクロライドとのグラフト重合体が生成したことを支持している。
【0082】
(実施例16)プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンと2−ビニルピリジンとのグラフト重合体の製造
実施例3と同様にして調整したプロピレンオキシド変性ポリアリルアミンに20質量%となるように水を加えた。次に2−ビニルピリジン (アミンに対し0.3当量)を加え、20℃で撹拌した。反応溶液はpH12であった。その後、28.5質量%のAPS水溶液12.01g(単量体に対して20モル%)を滴下し、24時間重合させ、プロピレンオキシド変性ポリアリルアミンと2−ビニルピリジンのグラフト重合体を得た。平均粒径は、225nmであった。
出発原料等から、得られたグラフト重合体は下式の構造を有するものと推定された(q、r、s、t、u、及びwはそれぞれ独立に正の整数。)。
【化54】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願第1及び第3発明のグラフト重合体、及びその製造方法は、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、アミンの特性を保持しつつ、安全に且つ安定して製造することができるので、各種の産業において、高い利用価値、及び高い利用可能性を有する。
本願第2及び第4発明のグラフト重合体、及びその製造方法は、従来よりも導入コストが低く、簡便な操作で、効率良く且つ制御性良く反応を行い、アミンの特性を保持しつつ、安全に且つ安定して製造することができるので、各種の産業において、高い利用価値、及び高い利用可能性を有する。
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