特許第6569872号(P6569872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6569872液晶配向剤、液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569872
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20190826BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】9
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-552166(P2016-552166)
(86)(22)【出願日】2015年10月1日
(86)【国際出願番号】JP2015077986
(87)【国際公開番号】WO2016052714
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205126(P2014-205126)
(32)【優先日】2014年10月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 加名子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 謙治
(72)【発明者】
【氏名】巴 幸司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】相馬 早紀
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−152421(JP,A)
【文献】 特開平10−104633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族テトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸二無水物成分と、下記式(1)のジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られるポリアミック酸及びそれをイミド化して得られるポリイミドのうち少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤。
【化1】
は水素、または1価の有機基を表し、Qは炭素原子数1乃至5のアルキレンを表し、Cyはアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミンからなる脂肪族へテロ環を表す2価の基であり、これらの環部分に置換基が結合されていてもよく、R、Rは、1価の有機基であり、qおよびrはそれぞれ独立に0〜4の整数である。但し、qあるいはrの合計が2以上の場合、複数のRおよびRは独立して上記定義を有する。
【請求項2】
が炭素原子数1乃至3のアルキル基、水素原子、または熱により水素原子に置き換わる熱脱離性基であり、R、Rがそれぞれ独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、または、メトキシ基である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
が炭素原子数1乃至3の直鎖アルキル基、水素原子、またはtert−ブトキシカルボニル基であり、Cyがピロリジン環又はピペリジン環である、請求項1または請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
下記一般式(2)で表されるジアミン化合物を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化2】
式(2)において、Rは水素原子、メチル基、またはtert−ブトキシカルボニル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜5の直鎖アルキレンである。
【請求項5】
芳香族テトラカルボン酸二無水物が、全テトラカルボン酸二無水物成分の20モル%以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記式(1)のジアミンが、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜。
【請求項9】
請求項8に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に用いられる液晶配向剤、液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶ディスプレイなどに用いられる液晶表示素子は、通常、液晶の配列状態を制御するための液晶配向膜が素子内に設けられている。液晶配向膜としては、これまで、ポリアミック酸(ポリアミド酸)などのポリイミド前駆体や可溶性ポリイミドの溶液を主成分とする液晶配向剤をガラス基板等に塗布し焼成したポリイミド系の液晶配向膜が主として用いられている。
【0003】
液晶表示素子の高精細化に伴い、液晶表示素子のコントラスト低下の抑制や残像現象の低減といった要求から、液晶配向膜においては、優れた液晶配向性や安定したプレチルト角の発現に加えて、高い電圧保持率、交流駆動により発生する残像の抑制、直流電圧を印加した際の少ない残留電荷、及び/又は直流電圧による蓄積した残留電荷の早い緩和といった特性が次第に重要となっている。
【0004】
ポリイミド系の液晶配向膜においては、上記のような要求にこたえるために、種々の提案がなされてきている。例えば、直流電圧によって発生する残像が消えるまでの時間が短い液晶配向膜として、ポリアミド酸やイミド基含有ポリアミド酸に加えて特定構造の3級アミンを含有する液晶配向剤を使用したもの(例えば、特許文献1参照)や、ピリジン骨格などを有する特定ジアミン化合物を原料に使用した可溶性ポリイミドを含有する液晶配向剤を使用したもの(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。また、電圧保持率が高く、かつ直流電圧によって発生した残像が消えるまでの時間が短い液晶配向膜として、ポリアミド酸やそのイミド化重合体などに加えて分子内に1個のカルボン酸基を含有する化合物、分子内に1個のカルボン酸無水物基を含有する化合物及び分子内に1個の3級アミノ基を含有する化合物から選ばれる化合物を極少量含有する液晶配向剤を使用したもの(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【0005】
また、液晶配向性に優れ、電圧保持率が高く、残像が少なく、信頼性に優れ、且つ高いプレチルト角を示す液晶配向膜として、特定構造のテトラカルボン酸二無水物とシクロブタンを有するテトラカルボン酸二無水物と特定のジアミン化合物から得られるポリアミド酸やそのイミド化重合体を含有する液晶配向剤を使用したもの(例えば、特許文献4参照)が知られている。また、横電界駆動方式の液晶表示素子において発生する交流駆動による残像を抑制する方法として、液晶配向性が良好で、且つ液晶分子との相互作用が大きい特定の液晶配向膜を使用する方法(特許文献5参照)が提案されている。
【0006】
しかし、近年では大画面で高精細の液晶テレビが主体となり、残像に対する要求はより厳しくなり、且つ過酷な使用環境での長期使用に耐えうる特性が要求されている。それとともに、使用される液晶配向膜は従来よりも信頼性の高いものが必要となってきており、液晶配向膜の諸特性に関しても、初期特性が良好なだけでなく、例えば、高温下に長時間曝された後であっても、良好な特性を維持することが求められている。
【0007】
一方、ポリイミド系の液晶配向剤を構成するポリマー成分として、ポリアミック酸エステルは、これをイミド化するときの加熱処理により、分子量低下を起こさないために、液晶の配向安定性・信頼性に優れることが報告されている(特許文献6参照)。ポリアミック酸エステルは、一般に、体積抵抗率が高く、直流電圧を印加した際の残留電荷が多いなどの問題があるため、ポリアミック酸エステルと、電気特性の点で優れるポリアミック酸をブレンドした液晶配向剤が開示されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−316200号公報
【特許文献2】特開平10−104633号公報
【特許文献3】特開平8−76128号公報
【特許文献4】特開平9−138414号公報
【特許文献5】特開平11−38415号公報
【特許文献6】特開2003−26918号公報
【特許文献7】WO2011/15080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、種々の要求に対応する液晶配向剤が開示されているが、最近新たな課題が生じている。
最近の液晶表示素子は、従来のものと比較して、額縁領域に対して有効画素領域が大きい設計が主流となっている。そのため、額縁領域内に塗布したシール成分が液晶中に溶出した場合、有効画素領域まで拡散し、表示不良を生じることが問題となっている。この問題を解決するためには、液晶中にシール成分が溶出した場合でも、残像特性が変化しないことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定構造を有するテトラカルボン酸二無水物及び、特定構造を有するジアミン化合物を用いることにより、上記の課題を満たす優れた特性を示す液晶配向膜が得られることを見出し、本発明を完成した。本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記を要旨とするものである。
1.芳香族テトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸二無水物成分と、下記式(1)のジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られるポリアミック酸及びそれをイミド化して得られるポリイミドのうち少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤。
【0011】
【化1】
【0012】
は水素、または1価の有機基を表し、Qは炭素原子数1乃至5のアルキレンを表し、Cyはアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミンからなる脂肪族へテロ環を表す2価の基であり、これらの環部分に置換基が結合されていてもよく、R、Rは、1価の有機基であり、qおよびrはそれぞれ独立に0〜4の整数である。但し、qあるいはrの合計が2以上の場合、複数のRおよびRは独立して上記定義を有する。
2.Rが炭素原子数1乃至3のアルキル基、水素原子、または熱により水素原子に置き換わる熱脱離性基であり、R、Rがそれぞれ独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、または、メトキシ基である、1に記載の液晶配向剤。
3.Rが炭素原子数1乃至3の直鎖アルキル基、水素原子、またはtert−ブトキシカルボニル基であり、Cyがピロリジン環又はピペリジン環である、1または2に記載の液晶配向剤。
4.下記一般式(2)で表されるジアミン化合物を含有する1から3のいずれか1つに記載の液晶配向剤。
【0013】
【化2】
【0014】
式(2)において、Rは水素原子、メチル基、またはtert−ブトキシカルボニル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Qは炭素数1〜5の直鎖アルキレンである。
5.芳香族テトラカルボン酸二無水物が、全テトラカルボン酸二無水物成分の20モル%以上である、1から4のいずれか1つに記載の液晶配向剤。
6.芳香族テトラカルボン酸二無水物が、ピロメリット酸二無水物である、1から5のいずれか1つに記載の液晶配向剤。
7.前記式(1)のジアミンが、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上である、1から6のいずれか1つに記載の液晶配向剤。
8.1から7のいずれか1つに記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜。
9.8に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶配向性や蓄積電荷の緩和特性を低下させずに、液晶中にシール成分がコンタミした場合でも蓄積DC電荷量が変化しにくい、つまりシール成分の影響による表示不良が発生しにくい液晶配向膜およびそれを用いた液晶表示素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の液晶配向剤は、芳香族テトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸二無水物成分と、上記式(1)のジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及びそれをイミド化して得られるポリイミドのうち少なくとも1種の重合体を含有する液晶配向剤である。以下、それぞれの構成要件について詳述する。
【0018】
<芳香族テトラカルボン酸二無水物>
本発明の液晶配向剤には、芳香族テトラカルボン酸二無水物が用いられる。これは1種類であっても2種類以上混合して用いてもよい。芳香族テトラカルボン酸二無水物を得るための原材料であるテトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジンなどが挙げられるが、液晶の配向性および残像を低減させる観点から、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテルなどが挙げられ、特にピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸がより好ましい。
【0019】
芳香族テトラカルボン酸二無水物は、本発明の液晶配向剤が含有する重合体の合成に用いられる全テトラカルボン酸二無水物成分の20モル%以上であることが好ましい。
【0020】
<その他のテトラカルボン酸二無水物>
本発明の液晶配向剤に用いられるポリアミック酸を合成するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物他に、その他のテトラカルボン酸二無水物を用いることが出来る。その他のテトラカルボン酸二無水物の具体例を以下に挙げる。
【0021】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物を得るための原材料であるテトラカルボン酸としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸などが挙げられるが、液晶配向性の観点では、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸またはそれらの誘導体が好ましい。また、横電界駆動用の液晶表示素子に必要な、低いプレチルト角の観点では、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸が好ましい。
【0022】
よって、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸またはそれらの誘導体の二無水物と、ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ペンタンテトラカルボン酸の二無水物から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を併用すると、良好な液晶配向性と、低いプレチルト角の両立を図ることが出来るため好ましい。
【0023】
<特定ジアミン>
本発明の液晶配向剤に用いられるポリアミック酸を合成するに当たり使用される特定ジアミンは下記式(1)で表される。
【0024】
【化3】
【0025】
は水素または1価の有機基を表し、好ましくは、水素原子、炭素数1〜3の直鎖アルキル基又は熱により脱離反応を生じ水素原子に置き換わる保護基であり、より好ましくは水素原子、メチル基又は熱により脱離反応を生じ水素原子に置き換わる保護基である。
【0026】
熱により脱離反応を生じ水素原子に置き換わる保護基は、液晶配向剤の保存安定性の点から、室温において脱離せず、好ましくは、80℃以上の熱で脱離する保護基であり、より好ましくは100℃以上での熱で脱離する保護基である。このような保護基の例としては1,1−ジメチル−2−クロロエトキシカルボニル基、1,1−ジメチル−2−シアノエトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基が挙げられ、好ましくはtert−ブトキシカルボニル基が挙げられる。
【0027】
は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、好ましくは、合成の簡便さから炭素数1〜5の直鎖アルキレンである。
Cyはアゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミンからなる脂肪族へテロ環を表す2価の基であり、合成の簡便さからアゼチジン、ピロリジン、ピペリジンが好ましい。また、これらの環部分に置換基が結合されていてもよい。
【0028】
、Rは、1価の有機基であり、q、rはそれぞれ独立に0〜4の整数である。但し、qあるいはrの合計が2以上の場合、複数のRおよびRは独立して上記定義を有する。好ましくは、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、シアノ基または、メトキシ基であることが好ましく、合成の簡便さから、水素原子またはメチル基であることがより好ましい。また、上記ジアミン化合物を構成するベンゼン環におけるアミノ基の結合位置は限定されないが、アミノ基がそれぞれ、Cy上の窒素原子に対して3位、または、4位、QとRが結合する窒素原子に対して3位、または、4位の位置にあることが好ましく、Cy上の窒素原子に対して4位、QとRが結合する窒素原子に対して4位の位置にあることがより好ましい。
【0029】
本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物は下記式(2)の構造であることが好ましい。
【0030】
【化4】
【0031】
式(2)において、Rは水素原子、メチル基、または、tert−ブトキシカルボニル基である。Rは水素原子またはメチル基である。Qは炭素数1〜5の直鎖アルキレンである。
【0032】
上記(2)式で表される具体例としては、例えば下記式(2−1)から(2−10)のそれぞれで表されるものを挙げることができる。下記式において、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0033】
【化5】
【0034】
本発明の液晶配向剤に用いられる、上記式(1)の特定ジアミンは、本発明の液晶配向剤に用いられる芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して30モル%以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の式(1)で表されるジアミン化合物を製造する方法は特に限定されないが、好ましい方法としては以下の[1]又は[2]の製法で製造することができる。
【0036】
製法[1]
2当量以上のニトロ化合物(3−1)と、脂肪族アミン化合物(3−2)を反応させることにより以下のジニトロ体(3−3)を製造する。さらに必要に応じてRからなる1価の有機基を導入して、その後ニトロ基を還元することで目的のジアミンを得ることができる。これらのニトロ化合物(3−1)、脂肪族アミン化合物(3−2)は容易に市販品として入手することが可能である。
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
【化8】
【0040】
(3−1)中、Xはハロゲン原子を示し、F、Cl、Br又はI原子を意味する。Rは1価の有機基であり、qはそれぞれ0〜4の整数であり、qが2以上の場合、複数のRは独立して上記定義を有する。
【0041】
XがF又はClであって、かつ、NO基がXに対して2位、または4位にあれば、適当な塩基の存在下、ハロゲン化アリールと脂肪族アミン化合物とを反応させ、ジニトロ体(3−3)を得ることができる。使用する塩基は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、コリジンなどのアミン類や水素化ナトリウム、水素化カリウムなどの塩基を使用できる。
【0042】
溶媒に関しても、原料と反応しない溶媒であれば使用することができ、非プロトン性極性有機溶媒(DMF、DMSO、DMAc、NMPなど)、エーテル類(EtO、i-PrO、TBME、CPME、THF、ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど)、ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)が使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、この場合、上記溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。また場合によっては、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて非水溶媒として用いることもできる。反応温度は−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲で任意の温度を選択することができるが、好ましくは−50〜150℃の範囲である。反応時間は0.1〜1000時間の範囲で任意に選択することができる。生成物は、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製しても良い。
【0043】
XがBr又はIであれば、NO基がXに対して2位でも3位でも4位でもよく、適当な金属触媒、配位子、塩基存在下でC-Nクロスカップリング反応を用いることでもジニトロ体を得ることができる。金属触媒の例としては、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化パラジウム-アセトニトリル錯体、パラジウム−活性炭、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、CuCl, CuBr, CuI, CuCN,等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。配位子の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリ-tert-ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基の例としては前述の塩基を用いることができる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。生成物は、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製しても良い。
【0044】
式(4)において、ジニトロ体(3−3)に、必要に応じてRからなる1価の有機基を導入してもよい。
【0045】
を導入するにあたっては、アミン類と反応が可能な化合物であればよく、例えば、酸ハライド、酸無水物、イソシアネート類、エポキシ類、オキセタン類、ハロゲン化アリール類、ハロゲン化アルキル類が挙げられ、また、アルコールの水酸基をOMs、OTf、OTs等の脱離基に置換したアルコール類などが利用できる。
【0046】
NH基にRからなる1価の有機基を導入する方法には、特に制限はないが、適当な塩基存在下で酸ハライドを反応させる方法が挙げられる。酸ハライドの例としては、アセチルクロリド、プロピオン酸クロリド、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸n−プロピル、クロロギ酸i−プロピル、クロロギ酸n−ブチル、クロロギ酸i−ブチル、クロロギ酸t−ブチル、クロロギ酸ベンジル、及び、クロロギ酸−9−フルオレニルが挙げられる。塩基の例としては前述の塩基を用いることができる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0047】
NH基に酸無水物を反応させてRを導入させてもよく、酸無水物の例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、二炭酸ジメチル、二炭酸ジエチル、二炭酸−ジ−ターシャリーブチル、二炭酸ジベンジルなどが挙げられる。反応を促進させるために触媒を入れてもよく、ピリジン、コリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジンなどを使用してもよい。触媒量は(3−3)の使用量に対し、0.0001モル〜1モルである。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0048】
NH基にイソシアネート類を反応させてRを導入させてもよく、イソシアネート類の例としては、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、n−プロピルイソシアネート、フェニルイソシアネートなどが挙げられる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0049】
NH基にエポキシ化合物類やオキセタン化合物類を反応させてRを導入させてもよく、エポキシ類やオキセタン類の例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、トリメチレンオキシドなどが挙げられる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0050】
NH基へ金属触媒と配位子と塩基存在下、ハロゲン化アリール類を反応させてRを導入させてもよく、ハロゲン化アリールの例としては、ヨードベンゼン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられる。金属触媒の例としては、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化パラジウム-アセトニトリル錯体、パラジウム−活性炭、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム、CuCl, CuBr, CuI, CuCN等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。配位子の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリ−tert−ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基の例としては前述の塩基を用いることができる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0051】
NH基へ適当な塩基存在下でアルコールの水酸基をOMs、OTf、OTs等の脱離基に置換したアルコール類を反応させてRを導入させてもよく、アルコール類の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノールなどが挙げられ、これらのアルコール類と、メタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、パラトルエンスルホン酸クロリド等とを反応させることで、OMs、OTf、OTs等の脱離基に置換されたアルコールを得ることができる。塩基の例としては前述の塩基を用いることができる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0052】
NH基に適当な塩基存在下、ハロゲン化アルキルを反応させてRを導入させてもよく、ハロゲン化アルキル類の例としては、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化n−プロピル、臭化メチル、臭化エチル、臭化n−プロピルなどが挙げられる。塩基の例としては前述の塩基に加え、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、等の金属アルコキシド類を用いることができる。反応溶媒、反応温度は、前記の記載に準ずる。
【0053】
次に式(5)において、得られたジニトロ体(4−1)のニトロ基の還元を行い、目的のジアミン化合物(5−1)を得ることができる。この目的のためには、パラジウムカーボン粉末や白金カーボン粉末などを使用することができ、水素雰囲気下、常圧、または加圧条件下で行なわれる。
【0054】
また、Fe, Sn, Znなどの金属、もしくはこれらの金属塩をプロトン源と共に使用してニトロ基の還元を行ってもよい。金属と金属塩は単体もしくは共同で使用しても良い。
プロトン源としては、塩酸などの酸、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩、メタノール、エタノールなどのプロトン性溶媒が使用できる。
【0055】
溶媒は、還元的雰囲気下の環境に耐えられるものであれば良く、非プロトン性極性有機溶媒(DMF, DMSO, DMAc, NMPなど)、エーテル類(EtO, i−PrO, TBME, CPME, THF, ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど)、低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等)が使用できるこれらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、この場合、上記溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。また場合によっては、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて非水溶媒として用いることもできる。反応温度は−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲で任意の温度を選択することができるが、好ましくは−50〜150℃の範囲である。反応時間は0.1〜1000時間の範囲で任意に選択することができる。生成物は、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、活性炭などで精製しても良い。
【0056】
製法[2]
ニトロ化合物(3−1、または、6−1)と、保護基で保護された脂肪族アミン化合物(6−2)を反応させることにより、中間体(6−3、または、6−4)を得る。その後脱保護を行った後、ニトロ化合物(3−1、または、6−1)を反応させることで以下のジニトロ体(8−1、または、8−2)を得る。さらに必要に応じて、製法〔1〕と同様の方法によりRに1価の有機基を導入し、その後ニトロ基を還元することで目的のジアミンを得ることができる。
【0057】
これらジニトロ体(6−1)と、保護基で保護されたアミン化合物(6−2)は容易に市販品として入手することが可能である。
【0058】
式(6)中、X、R、qは前述のとおりであり、Rは1価の有機基であり、rはそれぞれ0〜4の整数であり、rが2以上の場合、複数のRは独立して上記定義を有する。
【0059】
Proは保護基を表し、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ピバロイル基、tert-ブトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、tert-ブチルジエチルシリル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基、アリルオキシカルボニル基、p-トルエンスルホニル基、o-ニトロベンゼンスルホニル基等を表す。
【0060】
これらニトロ体(6−3、または、6−4)の合成法は、ニトロ化合物(3−1、または、6−1)を1当量以上使用して、製法[1] の式(3)と同様の方法で実施することが可能である。保護基が塩基条件によって脱保護されないことが望ましく、反応後の脱保護の容易性と入手性の観点からはtert−ブトキシカルボニル基が望ましい。
【0061】
【化9】
【0062】
式(7)中、ニトロ化合物(6−3、または、6−4)に対して、脱保護を行うことにより、中間体(7−1、または、7−2)を得ることができる。
【0063】
保護基の脱保護の方法としては、特に限定はされないが、酸または塩基存在下、加水分解後に中和することによって目的物を得ることが可能である。使用する酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸等の無機酸や蟻酸、酢酸、蓚酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸が挙げられ、使用する塩基の例としては、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、燐酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどの無機塩基、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、コリジンなどの有機アミン類等を使用してもよい。また、塩化アルミニウムや、トリフルオロボランージエチルエーテル錯体等のルイス酸化合物を用いて脱保護を行っても良い。ただし、水素雰囲気下の脱ベンジル化反応は芳香族ニトロ基のアミンへの還元が生じるため好ましくない。
【0064】
溶媒に関しては、加水分解を妨げない溶媒であれば使用することができ、非プロトン性極性有機溶媒(DMF, DMSO, DMAc, NMPなど)、エーテル類(EtO, i−PrO, TBME, CPME, THF, ジオキサンなど)、脂肪族炭化水素類(ペンタン、へキサン、ヘプタン、石油エーテルなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラリンなど)、ハロゲン系炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタンなど)、低級脂肪酸エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等)、または、水が使用できる。これらの溶媒は、反応の起こり易さなどを考慮して適宜選択することができ、この場合、上記溶媒は1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。ルイス酸の使用等を考慮し、適当な脱水剤や乾燥剤を用いて非水溶媒として用いることもできる。反応温度は−100℃から使用する溶媒の沸点までの範囲で任意の温度を選択することができるが、好ましくは−50〜150℃の範囲である。反応時間は0.1〜1000時間の範囲で任意に選択することができる。生成物は、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどで精製しても良い。
【0065】
【化10】
【0066】
脱保護されたニトロ体(7−1、または、7−2)に対し、ニトロ化合物(3−1、または、6−1)を1当量以上使用して、製法[1] の上記式(3)と同様の方法でジニトロ体(8−1、または、8−2)を得ることが可能である。
【0067】
【化11】
【0068】
得られたジニトロ体(8−1、または、8−2)へ必要に応じてRを導入する方法は、上記式(4)と同様の反応条件でよく、その後ニトロ基を還元することで目的のジアミンを得ることができる。ジニトロ体の還元方法も上記式(5)と同様の反応条件で実施すればよい。
【0069】
<その他のジアミン>
本発明の液晶配向剤に用いられるポリアミック酸を合成するにあたり、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の特定ジアミンのほかに、その他のジアミン化合物を用いることが出来る。その他のジアミン化合物の具体例を以下に挙げる。
【0070】
p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェネチル)ウレア、N−メチル−2−(4−アミノフェニル)エチルアミン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンdビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェノキシ)メタン、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−(3−アミノフェノキシ)ドデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。このうち、良好な配向性等の観点から、ビス(4−アミノフェノキシ)メタン、1,2−ビス(4−アミノフェノキシ)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,3−ビス(4−アミノフェネチル)ウレア、N−メチル−2−(4−アミノフェニル)エチルアミン、が好ましく用いられる。
【0071】
以上で挙げたその他のジアミン化合物は、液晶配向膜とした際の体積抵抗率、ラビング耐性、イオン密度特性、透過率、液晶配向性、電圧保持特性および蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0072】
<ポリアミック酸の合成>
本発明の液晶配向剤に用いるポリアミック酸を、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により得る場合には、有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを混合して反応させる方法が簡便である。
【0073】
上記反応の際に用いられる有機溶媒は、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。あえてその具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。これらは単独でも、また混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒はなるべく脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0074】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを有機溶媒中で混合させる方法としては、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、本発明においてはこれらのいずれの方法であっても良い。また、テトラカルボン酸二無水物成分またはジアミン成分が複数種の化合物からなる場合は、これら複数種の成分をあらかじめ混合した状態で反応させても良く、個別に順次反応させても良い。
【0075】
テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶剤中で反応させる際の温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜100℃、より好ましくは10〜80℃である。温度が高い方が重合反応は早く終了するが、高すぎると高分子量の重合体が得られない場合がある。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加しても構わない。
【0076】
ポリアミック酸の重合反応に用いるテトラカルボン酸二無水物成分:ジアミン成分の比率は、モル比で1:0.8〜1.2であることが好ましい。また、ジアミン成分を過剰にして得られたポリアミック酸は、溶液の着色が大きくなる場合があるので、溶液の着色が気になる場合、上記の比率は1:0.8〜1とすれば良い。通常の重縮合反応と同様に、このモル比が1:1に近いほど得られるポリアミック酸の分子量は大きくなる。ポリアミック酸の分子量は、小さすぎるとそこから得られる塗膜の強度が不十分となる場合があり、逆にポリアミック酸の分子量が大きすぎると、液晶配向剤を塗布溶液としたときの溶液粘度が高くなり過ぎて、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性が悪くなる場合がある。
【0077】
また、このようなポリアミック酸の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜300,000であり、より好ましくは10,000〜200,000であり、数平均分子量としては、好ましくは2,500〜150,000であり、より好ましくは5,000〜100,000である。
【0078】
ポリアミック酸の重合に用いた溶媒を本発明の液晶配向剤中に含有させたくない場合や、反応溶液中に未反応のモノマー成分や不純物が存在し、これを除去したい場合には、ポリアミック酸の沈殿回収および精製を行う。その方法は、ポリアミック酸溶液を攪拌している貧溶媒に投入し、沈殿回収する方法が簡便である。ポリアミック酸の沈殿回収に用いる貧溶媒としては特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが例示できる。貧溶媒に投入することにより沈殿したポリアミック酸は濾過・洗浄して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱乾燥してパウダーとすることが出来る。このパウダーを更に良溶媒に溶解して、再沈殿する操作を2〜10回繰り返すと、ポリアミック酸を精製することもできる。一度の沈殿回収操作では不純物が除ききれないときは、この精製工程を行うことが好ましい。この際の貧溶媒として例えばアルコール類、ケトン類、炭化水素など3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。上記の沈殿回収および精製操作は、後述するポリイミドの合成に際しても同様に行うことができる。
【0079】
ポリアミック酸を部分的または全部をイミド化する場合、その製造方法は特に限定されるものではないが、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させたポリアミック酸を溶液中でそのままイミド化することができる。このとき、ポリアミック酸の一部または全部をポリイミドに転化させるには、加熱によって脱水閉環させる方法や公知の脱水閉環触媒を使用して化学的に閉環する方法が採用される。加熱による方法では、100℃から300℃、好ましくは120℃から250℃の任意の温度を選択できる。化学的に閉環する方法では、たとえばピリジン、トリエチルアミンなどを無水酢酸など存在下で使用することができ、このときの温度は、−20℃から200℃の任意の温度を選択することができる。
【0080】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液である。ここで、前記の樹脂成分は、上記したポリアミック酸およびこれをイミド化させて得られるポリイミドのうち少なくとも1種を含む樹脂成分である。その際、樹脂成分の含有量は1質量%から20質量%が好ましく、より好ましくは1.5質量%から15質量%、特に好ましくは2質量%から10質量%である。
【0081】
本発明の液晶配向剤において、前記の樹脂成分は、全てが本発明のポリアミック酸およびそれをイミド化して得られるポリイミドであってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における本発明のポリアミック酸およびそれをイミド化して得られるポリイミド以外の他の重合体の含有量は0.5質量%から95質量%、好ましくは1質量%から90質量%である。
【0082】
かかる他の重合体は、例えば、本発明のポリアミック酸およびそれをイミド化して得られるポリイミド以外のポリアミック酸およびそれをイミド化して得られるポリイミドなどが挙げられる。
【0083】
本発明の液晶配向剤に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0084】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0085】
本発明の液晶配向剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などである。
【0086】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては次のものが挙げられる。
【0087】
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する溶媒などが挙げられる。
【0088】
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5から80質量%であることが好ましく、より好ましくは15から60質量%である。
【0089】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
【0090】
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製))、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01から2質量部、より好ましくは0.01から1質量部である。
【0091】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0092】
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0093】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、液晶配向剤に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1から30質量部であることが好ましく、より好ましくは1から20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0094】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物を添加してもよい。
【0095】
以上のようにして得られた本発明の液晶配向剤は、必要に応じて濾過した後、基板に塗布し、乾燥、焼成して塗膜とすることができ、この塗膜面をラビングや光照射などの配向処理をすることにより、液晶配向膜として使用することができる。
【0096】
この際、用いる基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板などを用いることができ、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
【0097】
液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられるが、生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明の液晶配向剤においても好適に用いられる。
【0098】
液晶配向剤を塗布した後の乾燥の工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後〜焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合や、塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含める方が好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が蒸発していれば良く、その乾燥手段については特に限定されない。具体例を挙げるならば、50〜150℃、好ましくは80〜120℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法がとられる。
【0099】
液晶配向剤の焼成は、100〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは150℃〜300℃であり、さらに好ましくは200℃〜250℃である。液晶配向剤中にポリイミド前駆体を含有する場合は、この焼成温度によってポリイミド前駆体からポリイミドへの転化率が変化するが、本発明の液晶配向剤は、必ずしも100%イミド化させる必要は無い。ただし、液晶セル製造行程で必要とされる、シール剤硬化などの熱処理温度より、10℃以上高い温度で焼成することが好ましい。
【0100】
焼成後の塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜100nmである。
【0101】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された1対の基板を、通常、1〜30μm、好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで、ラビング方向が好ましくは、0〜270°の任意の角度となるように設置して周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶配向膜に対するラビング処理には、既存のラビング装置を使用することができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、レーヨン、ナイロン等が挙げられる。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後、液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後、封止を行う滴下法などが例示できる。
【0102】
このようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子は、液晶の配向性、配向規制力に優れ、かつ優れた電気特性を有しているため、コントラストの低下や焼き付きの起こり難い液晶表示デバイスとすることができる。これらの液晶表示素子のなかでも、配向規制力由来の焼き付きが起こりやすい横電界型の液晶表示素子に特に好ましく用いられる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではないことはもちろんである。
【0104】
X-1 :1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
X-2 :ピロメリット酸二無水物
X-3 :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0105】
【化12】
【0106】
Y−1 :1,3−ビス(4−アミノフェネチル)ウレア
Y−2 :4−(2−(メチルアミノ)エチル)アニリン
Y−3 :4,4’-ジアミノジフェニルアミン
Y−4 :ビス(4−アミノフェノキシ)メタン
DA−1 :下記構造式にて表される化合物
【0107】
【化13】
【0108】
以下に、各測定方法を示す。
【0109】
[粘度]
合成例において、ポリアミック酸溶液の粘度はE型粘度計TVE−22H(東機産業株式会社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0110】
[固形分濃度]
合成例において、ポリアミック酸溶液の固形分濃度の算出は以下のようにして行った。
【0111】
持手付アルミカップNo.2(アズワン社製)に溶液をおよそ1.1g量り取り、オーブンDNF400(Yamato社製)で200℃2時間加熱した後に室温5分間放置し、アルミカップ内に残った固形分の重量を計量した。この固形分重量、および元の溶液重量の値から固形分濃度を算出した。
【0112】
[分子量]
ポリアミック酸溶液の分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(以下、Mnとも言う。)と重量平均分子量(以下、Mwとも言う。)を算出した。
GPC装置:(株)Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、および150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定。
【0113】
[液晶セルの作製]
FFS方式の液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製した。
【0114】
初めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたIZO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてIZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素および第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0115】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0116】
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0117】
次に、得られた液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。100℃のホットプレート上で100秒間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、イソプロピルアルコールと純水の3/7混合溶媒中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として裏面にITO電極が形成されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合いラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させてセルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク株式会社製)(以降、通常液晶と記載)、または本液晶に対して、シール剤STRUCT BONDTM XN−1500T(三井化学株式会社製)を5wt%添加し、50℃で1時間加熱した液晶(以降、シールコンタミ液晶と記載)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で30分加熱し、23℃で一晩放置してから各評価に使用した。
【0118】
[蓄積電荷の緩和特性]
上記液晶セル(通常液晶を使用)を、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
【0119】
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、23℃の温度下でのV−T特性(電圧−透過率特性)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を算出した。この交流電圧は電圧に対する輝度の変化が大きい領域に相当するため、蓄積電荷を輝度を介して評価するのに都合がよい。
【0120】
次に、相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波を5分間印加した後、+1.0Vの直流電圧を重畳し30分間駆動させた。その後、直流電圧を切り、再び相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波のみを30分間印加した。
【0121】
蓄積した電荷の緩和が速いほど、直流電圧を重畳したときの液晶セルへの電荷蓄積も速いことから、蓄積電荷の緩和特性は、直流電圧を重畳した直後の相対透過率が30%以上の状態から23%に低下するまでに要した時間で評価した。この時間が短いほど蓄積電荷の緩和特性が良好であり、30分未満の場合を○、30分以上の場合を×とした。
【0122】
[液晶配向性]
上記液晶セル(通常液晶を使用)を、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで相対透過率が100%となる交流電圧を150時間印加した。
その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
【0123】
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度△Angleとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度△Angleを算出した。そして、第1画素と第2画素の角度△Angle値の平均値を液晶セルの角度△Angleとして算出した。△Angleが0.1°未満の場合を○、0.1°以上の場合を×とした。
【0124】
[シールコンタミ条件下でのVcom安定性]
上記液晶セル(通常液晶およびシールコンタミ液晶を使用)を、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
【0125】
次に、この液晶セルに周波数30Hzの交流電圧を印加しながらV−Tカーブ(電圧−透過率曲線)を測定し、相対透過率が23%または100%となる交流電圧を駆動電圧として算出した。液晶セルを60℃に昇温し、周波数1kHzで20mVの矩形波を30分間印加した。
その後、相対透過率が100%となる交流駆動を30分間印加した。その間、3分毎に最小オフセット電圧値を測定し、測定開始から30分後までの変化量を算出した。通常液晶を使用したセルでの30分後の最少オフセット電圧値変化量と、シールコンタミ液晶を使用したセルでの30分後の最少オフセット電圧値の差を△Vcomとした。△Vcomが50mV未満の場合を○、50mV以上の場合を×とした。
【合成例】
【0126】
(DA−1)の合成
【0127】
【化14】
【0128】
窒素雰囲気下、4口フラスコにジメチルホルムアミド(390g)、4−フルオロニトロベンゼン(65.0g、0.461mol)、4―アミノメチルピペリジン(25.0g、0.219mol)、炭酸カリウム(90.9g、0.658mol)を加え60℃で反応させた。22時間加熱攪拌後に中間体の消失をHPLCで確認した後、ろ過により炭酸カリウムを除去し、さらに炭酸カリウムをジメチルホルムアミド250gで2回洗浄した。得られた溶液を内容物が295gになるまで減圧留去し、水1.50kgを加えて化合物(11)を析出させた後に析出物をろ過により回収し、乾燥して化合物(11)の粗物を得た。得られた粗物をテトラヒドロフランにて再結晶精製し、黄色固体の化合物(11)を得た(58.8g、0.165mol、収率75.3%)。
【0129】
化合物(11)の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(DMSO):
δ=8.05-7.98(m,4H), 7.41(t,1H J=6.8), 7.02(d,2H, J=9.6), 6.68(d,2H, J=9.2), 4.09(d,2H, J=13.6), 3.10(t,2H, J=6.0), 2.98(t,2H, J=12.0), 1.91−1.89(m,1H), 1.89−1.83(m,2H), 1.29−1.19(m,2H).
【0130】
【化15】
【0131】
窒素雰囲気下、4口フラスコにテトラヒドロフラン(400g)、化合物(11)(20.0g、0.0561mol)、N、N―ジメチル−4−アミノピリジン(77.4mg、0.634mmol)を加え50℃に加熱した。その溶液へ二炭酸ジ-tert−ブチル(15.3g、0.0699mol)とテトラヒドロフラン15.0gの混合液を滴下し、24時間反応させた後HPLCにて原料が消失したことを確認した。内容物を減圧留去した後、トルエンによって再結晶を行い、析出した結晶をろ取し、乾燥させて黄色固体の化合物(12)を収率87.3%で得た(22.3g、0.0489mol)。
【0132】
化合物(12)の構造は、H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(DMSO):δ=8.21(d,2H, J=8.8), 8.01(d,2H J=9.2), 7.61(d,2H, J=9.2), 6.98(d,2H, J=9.6), 4.02(d,2H, J=13.6), 3.69(d,2H,J=7.2), 2.91(t,2H, J=11.6), 1.86−1.70(m,1H), 1.66(d,2H, J=11.2), 1.42(s,9H), 1.22−1.10(m,2H).
【0133】
【化16】
【0134】
窒素雰囲気下、4口フラスコにテトラヒドロフラン(447g)、化合物(12)(22.3g、0.0489mol)、パラジウムカーボン粉末(1.16g)を入れた後に水素雰囲気に置換し、室温で23時間攪拌した。HPLCにて原料が消失したことを確認した後、パラジウムカーボンをろ過して得られた溶液を減圧留去して粗物を得た。粗物へクロロホルム(206g)を加え、60℃に加温した後、60℃の水(100g)で2回分液操作を繰り返した。得られた有機層に活性炭(0.754g)を加え攪拌した後、ろ過により活性炭を除去した。内容物を濃縮し、トルエンで再結晶を行った後、乾燥させて薄クリーム色固体の目的物、(DA−1)を収率71.3%で得た(13.8g、0.0349mol)。
【0135】
化合物(DA−1)の構造は、1H−NMR分析により以下のスペクトルデータを得て確認した。
H−NMR(DMSO):δ=6.83(d,2H, J=8.0), 6.65(d,2H J=8.4), 6.50(d,2H, J=8.4), 6.45(d,2H, J=8.4), 5.05(br, 2H), 4.54(br,2H), 3.41(d,2H, J=6.8), 3.29(d,2H,J=12.4), 2.36(t,2H, J=10.8), 1.64(d,2H, J=11.6), 1.42−1.19(br,12H).
【0136】
(合成例1)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を4.18g(14.0mmol)、(DA−1)を2.38g(6.0mmol))取り、N−メチル−2−ピロリドン76.7gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−2)を4.14g(19.0mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを19.2g加え、窒素雰囲気下、60℃で13時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は131mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=10,600、Mw=32,800であった。
【0137】
このポリアミック酸溶液18.1gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン12.1g、ブチルセロソルブ10.0gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.33質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0138】
(合成例2)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を2.83g(9.5mmol)、(DA−1)を3.77g(9.5mmol))取り、N−メチル−2−ピロリドン75.6gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−2)を3.90g(17.9mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを18.9g加え、窒素雰囲気下、60℃で13時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は99mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=8,600、Mw=26,900であった。
【0139】
このポリアミック酸溶液18.9gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン12.6g、ブチルセロソルブ10.5gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.51質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0140】
(合成例3)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を1.70g(5.7mmol)、(DA−1)を5.27g(13.3mmol))取り、N−メチル−2−ピロリドン78.3gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−2)を3.94g(18.1mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを19.6g加え、窒素雰囲気下、60℃で13時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は121mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=11,200、Mw=39,200であった。
【0141】
このポリアミック酸溶液18.1gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン12.1g、ブチルセロソルブ10.1gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度3.95質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0142】
(合成例4)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を3.76g(12.6mmol)、(Y−2)を0.31g(2.1mmol)、(DA−1)を2.50g(6.3mmol))取り、N−メチル−2−ピロリドン67.1gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−1)を2.47g(12.6mmol)、(X−2)を1.60g(7.4mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドン28.8g加え、窒素雰囲気下、50℃で12時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は145mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=10,300、Mw=33,700であった。
【0143】
このポリアミック酸溶液19.1gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン11.5g、ブチルセロソルブ7.6gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.12質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0144】
(合成例5)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を6.27g(21.0mmol)、(Y−2)を2.10g(14.0mmol)取り、N−メチル−2−ピロリドン67.5gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−1)を6.52g(33.3mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドン16.9g加え、窒素雰囲気下、23℃で4時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は740mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=11,100、Mw=33,500であった。
【0145】
このポリアミック酸溶液18.6gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン19.8g、ブチルセロソルブ10.3gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.08質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0146】
(合成例6)
撹拌子を入れた200mLの四つ口フラスコに(Y−1)を10.44g(35.0mmol)取り、N−メチル−2−ピロリドン103.4gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−2)を7.18g(32.9mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドン25.8g加え、窒素雰囲気下、60℃で8時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は300mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=10,200、Mw=29,500であった。
【0147】
このポリアミック酸溶液18.3gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン19.5g、ブチルセロソルブ10.2gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.25質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0148】
(合成例7)
撹拌子を入れた50mLの四つ口フラスコに(Y−3)を2.40g(12.0mmol)取り、N−メチル−2−ピロリドン29.8gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−3)を3.41g(11.6mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを12.8g加え、窒素雰囲気下、23℃で25時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は550mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=11,200、Mw=33,900であった。
【0149】
このポリアミック酸溶液16.2gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン13.0g、LS-4668を0.02g、ブチルセロソルブ9.73gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度5.00質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0150】
(合成例8)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−4)を8.52g(37.0mmol)取り、N−メチル−2−ピロリドン112.0gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−1)を6.89g(35.2mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを27.7g加え、窒素雰囲気下、23℃で5時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は436mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=18400、Mw=47000であった。
【0151】
このポリアミック酸溶液10.3gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン18.7g、ブチルセロソルブ9.68gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.00質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0152】
(合成例9)
撹拌子を入れた500mLの四つ口フラスコに(DA−1)を23.79g(60.0mmol)取り、N−メチル−2−ピロリドン300.0gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−1)を11.18g(58.2mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを14.7g加え、窒素雰囲気下、23℃で5時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は184mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=11,300、Mw=49,600であった。
【0153】
このポリアミック酸溶液19.3gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン11.6g、ブチルセロソルブ7.73gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.31質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0154】
(合成例10)
撹拌子を入れた100mLの四つ口フラスコに(Y−1)を5.07g(17.0mmol)、(DA−1)を1.19g(3.0mmol))取り、N−メチル−2−ピロリドン74.6gを加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら(X−2)を4.10g(18.8mmol)添加し、更にN−メチル−2−ピロリドンを18.7g加え、窒素雰囲気下、60℃で13時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液の温度25℃における粘度は113mPa・sであった。また、このポリアミック酸の分子量はMn=9,400、Mw=28,900であった。
【0155】
このポリアミック酸溶液18.4gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに分取し、N−メチル−2−ピロリドン12.2g、ブチルセロソルブ10.2gを加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して固形分濃度4.33質量%のポリアミック酸溶液を得た。
【0156】
<実施例1>
合成例1で得られたポリアミック酸溶液と、合成例5で得られたポリアミック酸溶液とを、固形分重量比40:60で混合した溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0157】
<実施例2>
合成例2で得られたポリアミック酸溶液と、合成例5で得られたポリアミック酸溶液とを、固形分重量比40:60で混合した溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0158】
<実施例3>
合成例3で得られたポリアミック酸溶液と、合成例5で得られたポリアミック酸溶液とを、固形分重量比40:60で混合した溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0159】
<実施例4>
合成例4で得られたポリアミック酸溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0160】
<比較例1>
合成例6で得られたポリアミック酸溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0161】
<比較例2>
合成例6で得られたポリアミック酸溶液と、合成例5で得られたポリアミック酸溶液とを、固形分重量比40:60で混合した溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0162】
<比較例3>
合成例7で得られたポリアミック酸溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0163】
<比較例4>
合成例8で得られたポリアミック酸溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0164】
<比較例5>
合成例9で得られたポリアミック酸溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0165】
<比較例6>
合成例10で得られたポリアミック酸溶液と、合成例5で得られたポリアミック酸溶液とを、固形分重量比40:60で混合した溶液を用いて、液晶セルを作製した。
【0166】
【表1】