(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、電動モータ側とは反対側の、ハウジングの一端が閉塞されている。このため、前記付勢部材を含む付勢機構をハウジングの一端側から組み込むことができない。したがって、電動パワーステアリング装置の組立性が低下する。
特許文献2では、ハウジングの一端が開口により開放されている。このため、付勢機構をハウジングの一端側から組み込むことができる。しかしながら、ハウジングの一端の開口を閉塞するエンドカバーが必要であり、部品点数が増大する。
【0005】
本発明は、組立性を向上し部品点数の増大を抑制することができるウォーム減速機および電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、一端(171)に開口(44a)を有する保持孔(44)が形成されたハウジング(17)と、電動モータ(14)に連結される第1端部(18a)および前記第1端部の反対側に位置する第2端部(18b)を含み、前記ハウジングに収容されたウォームシャフト(18)と、前記ウォームシャフトと噛み合うウォームホイール(19)と、前記ハウジングに保持され前記第1端部を回転可能に支持する第1軸受(33)と、前記第2端部を回転可能に支持する第2軸受(34)と、前記第2端部を直接または間接的に前記ウォームホイールに近づく方向に付勢する付勢部材(60)と、前記ハウジングの前記保持孔に嵌合されて前記ウォームシャフトの前記第2端部の移動を案内するリング部(51)、および
前記リング部と一体成形された閉塞部であって前記リング部の一端(511)を閉塞し前記保持孔の前記開口を塞ぐ閉塞部(52)を含む案内部材(50)と、
前記第2端部および前記第2軸受の少なくとも一方の軸方向外方(X2)に配置される受け座(82a)であって前記付勢部材を受ける受け座を形成し、前記第2軸受の外輪と一体に設けられた受け座形成部材(80)と、を備え
、前記案内部材、前記受け座形成部材および前記付勢部材を含むサブアセンブリ(SA)が形成されており、前記案内部材には、前記サブアセンブリ単体の状態で前記受け座によって受けられた前記付勢部材を挿通保持可能な挿通孔(58)が形成されているウォーム減速機(15;15R)を提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2のように、前記案内部材は、樹脂により形成されていてもよい。
請求項3のように、前記案内部材は、前記第2端部の、前記ウォームホイールから離れる方向への移動量を規制するストッパ部(57)を含んでいてもよい。
【0008】
請求項4のように、前記案内部材によって前記付勢部材と直列に保持され、前記付勢部材としてのばね部材のセット長を変更可能なスペーサ(70)を備えていてもよい。
請求項5のように
、前記付勢部材は、前記第2端部および前記第2軸受の少なくとも一方の軸方向(X)に隣接し、且つ、前記ハウジングと前記受け座との間に配置されて、前記受け座形成部材および前記第2軸受を介して前記第2端部を前記ウォームホイールに近づく方向に付勢するように構成されていてもよい。
【0009】
請求項
6のように、
前記受け座形成部材は、前記第2軸受の前記外輪を取り囲み前記第2軸受を保持する軸受ホルダ(80)を含み、前記案内部材は、前記軸受ホルダを介して前記ウォームシャフトの前記第2端部の移動を案内する案内部(56)を含んでいてもよい。
【0010】
請求項
7の発明は、前記ウォーム減速機を介して電動モータの動力をステアリングシャフト(6)に伝達する電動パワーステアリング装置(1)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、組立時において、案内部材のリング部を、ハウジングの一端の保持孔の開口を通して組み入れて、リング部を保持孔に嵌合させることができる。開口を有するハウジングの一端側から組立が行えるので、組立性が向上する。
特に、組立時において、案内部材、受け座形成部材および付勢部材を含むサブアセンブリを保持孔内に一体に組み込むことができるため、組立性がより向上する。また、保持孔に嵌合されたリング部の一端に設けられた閉塞部によって、ハウジングの一端の開口を閉塞することができる。このため、ハウジングの一端の開口を閉塞するエンドカバーを別途に設ける必要がない。したがって、部品点数の増大を抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明では、案内部材が樹脂により形成される。このため、案内部材と他部材との接触による打音の発生を抑制することができる。
請求項3の発明では、案内部材のストッパ部によって、ウォームホイールから離れる方向への、第2端部の移動量を規制することができる。このため、付勢部材の劣化を抑制することができる。
【0013】
請求項4の発明では、案内部材によって付勢部材と直列に保持されたスペーサによって、付勢部材としてのばね部材のセット長を変更することができる。このため、ばね部材の荷重調整を容易に行うことができる。
請求項5の発明では、付勢部材が、ウォームシャフトの第2端部および第2軸受の少なくとも一方の軸方向に隣接し、かつ、第2軸受の外輪に設けられた部材に形成された受け座をウォームホイール側へ付勢する。このため、ロストルクの抑制しつつ、車両等への搭載性を向上させることができる。
【0014】
請求項
6の発明では、案内部材の案内部によって、第2軸受を保持する軸受ホルダを介して、ウォームシャフトの第2端部の移動を円滑に案内することができる。
【0015】
請求項7
の発明では、組立性を向上し部品点数の増大を抑制する電動パワーステアリング装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1を用いて、本発明の第1実施形態のウォーム減速機を含む電動パワーステアリング装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のウォーム減速機を含む電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
【0018】
電動パワーステアリング装置1は、操舵機構4および転蛇機構Aを備え、運転者のステアリングホイール2(操舵部材)の操作に基づき、転舵輪3を転舵させる。操舵機構4は、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構5を備えている。
操舵機構4は、入力シャフト7a、出力シャフト7b、インターミディエイトシャフト9、および、ピニオンシャフト11を有している。入力シャフト7aは、ステアリングホイール2(操舵部材)に連結されている。出力シャフト7bは、トーションバー7cを介して、入力シャフト7aに連結されている。インターミディエイトシャフト9は、自在継手8を介して、ピニオン11aを有するピニオンシャフト11に連結されている。
【0019】
転蛇機構Aは、ラックシャフト12およびタイロッド13を有している。ラックシャフト12は、ピニオン11aに噛み合ったラック12aを有している。タイロッド13は、一端がラックシャフト12に連結されて、他端が転蛇輪3に連結されている。
運転者のステアリングホイール2の操作に応じて、ステアリングホイール2が回転すると、入力シャフト7a、出力シャフト7bおよびインターミディエイトシャフト9を介して、ピニオンシャフト11が回転する。ピニオンシャフト11の回転は、転舵機構Aにより、ラックシャフト12の軸方向の往復運動に変換される。ラックシャフト12の軸方向の往復運動により、転舵輪3の転舵角が変化する。
【0020】
アシスト機構5は、トルクセンサ21、ECU(Electronic Control Unit) 16、電動モータ14、および、ウォーム減速機15を有している。
トルクセンサ21は、入力シャフト7aと出力シャフト7bとの間の捩れ量を検出する。ECU16は、トルクセンサ21により検出された捩れ量から得られる操舵トルクおよび図示しない車速センサにより検出された車速に基づいて、アシストトルクを決定する。電動モータ14は、ECU16により駆動制御される。ウォーム減速機15は、電動モータ14の回転力を出力シャフト7bに伝達する。その結果、アシストトルクが出力シャフト7bに付与されて、運転者のステアリング操作が補助される。
【0021】
図2を用いて、本発明の第1実施形態のウォーム減速機15を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態のウォーム減速機15の要部の断面図である。
ウォーム減速機15は、ハウジング17、ウォームシャフト18、第1軸受33、第2軸受34、ウォームホイール19、および、付勢部を有している。ウォームシャフト18、第1軸受33、第2軸受34、ウォームホイール19および付勢部は、ハウジング17内に収容されている。
【0022】
ウォームシャフト18は、軸方向に離隔する第1端部18aおよび第2端部18bと、第1端部18aおよび第2端部18b間の中間部の歯部18cとを有している。ウォームシャフト18は、ハウジング17の収容部17aに収容されている。ウォームシャフト18は、電動モータ14の出力軸14aと同軸上に配置されている。ウォームシャフト18の第1端部18aは、電動モータ14の出力軸14aの端部と軸方向Xに対向している。ウォームシャフト18の第1端部18aと電動モータ14の出力軸14aの端部とは、動力伝達継手20を介して、トルク伝達可能に連結されている。
【0023】
動力伝達継手20は、第1回転要素23、第2回転要素24および中間要素25を有している。第1回転要素23は、ウォームシャフト18の第1端部18aに一体回転可能に固定されている。第2回転要素24は、電動モータ14の出力軸14aの端部に一体回転可能に固定されている。
第1回転要素23は、第2回転要素24に向けて軸方向Yに突出する複数の係合突起29を有している。複数の係合突起29は、回転方向Z(周方向に相当)に互いに回転方向Zに間隔を空けて配置されている。第2回転要素24は、第1回転要素23に向けて軸方向Xに突出する複数の係合突起30を有している。複数の係合突起30は、回転方向Z(周方向に相当)に互いに回転方向Zに間隔を空けて配置されている。第1回転要素23の係合突起29と第2回転要素24の係合突起30とは、互いに回転方向Zに間隔を空けて交互に配置されている。
【0024】
中間要素25は、径方向外方に放射状に延びる複数の係合突起32を備えている。複数の係合突起32のそれぞれは、回転方向Zにおける第1回転要素23の係合突起29と第2回転要素24の係合突起30との間に配置されている。そのため、電動モータ14の出力軸14aのトルクは、第2回転要素24、中間要素25および第1回転要素23を介して、ウォームシャフト18に伝達される。加えて、中間要素25は、弾性部材により構成されている。そのため、第1回転要素23は、第2回転要素24に対して、揺動可能に構成されている。すなわち、ウォームシャフト18は、電動モータ14の出力軸14aに揺動可能に連結されている。
【0025】
ウォームホイール19は、芯金部19aおよび歯部19bを有している。芯金部19aは、例えば金属材料からなり、環状に形成されている。
芯金部19aは、出力シャフト7bの外周に嵌合されて、出力シャフト7bと一体回転する。歯部19bは、例えば樹脂材料からなり、環状に形成されている。なお、本発明は、電動モータ14のトルクをピニオンシャフト11の上流の出力シャフト7bに付与する、本実施形態のコラムアシストタイプに限られない。例えば、電動モータ14のトルクをピニオンシャフト11に付与するピニオンアシストタイプであっても良く、この場合には、ウォームホイール19は、ピニオンシャフト11に固定される。
【0026】
歯部19bは、芯金部19aの外周に嵌合されて、芯金部19aと一体回転する。歯部19bの外周面には、ウォームシャフト18の歯部18cの歯と噛み合う歯19cが形成されている。
第1軸受33は、例えばころがり軸受により構成されている。第1軸受33は、内輪35、外輪37および複数の転動体を有している。内輪35は、ウォームシャフト18の第1端部18aの外周に嵌合されて、ウォームシャフト18と一体回転する。外輪37は、ハウジング17に設けられた軸受孔36に嵌合されている。外輪37は、軸受孔36の端部の位置決め段部38と軸受孔36に螺合された止定部材39との間で軸方向に挟持されている。第1軸受33は、内部隙間を有している。
【0027】
本実施形態では、動力伝達継手20の中間要素25が弾性部材により構成され、かつ、複数の転動体と内輪35および外輪37との間には、僅かな隙間が設定されている。そのため、ウォームシャフト18は、第1軸受33の中心Bを支点として、ハウジング17に対して揺動可能に支持されている。
第2軸受34は、例えばころがり軸受により構成されている。第2軸受34は、内輪40、外輪43および複数の転動体を有している。第2軸受34は、ハウジング17の保持孔44に収容されている。内輪40は、ウォームシャフト18の第2端部18bに嵌合されて、ウォームシャフト18と一体回転する。内輪40の一方の端面は、ウォームシャフト18の第2端部18bに形成された位置決め段部42に当接している。
【0028】
図3〜
図7を用いて、本発明の第1実施形態のウォーム減速機15の付勢部を詳細に説明する。
図3は、第1実施形態のウォーム減速機15の要部の分解斜視図である。
図4(a)は、第1実施形態の案内部材の側面図であり、
図4(b)は第1実施形態の案内部材の断面図である。
図4(c)は
図4(a)のE−E断面図であり、
図4(d)は
図4(a)のF−F断面図である。
図5は組立工程のウォーム減速機15の概略断面図である。
図6は
図2のVI−VI断面図である。
図7は
図2のVII−VII断面図である。
【0029】
図2に示すように、第1実施形態の付勢部は、案内部材50と、付勢部材60と、受け座形成部材を提供する軸受ホルダ80と、スペーサ70とを備えている。
軸受ホルダ80および案内部材50は、第2軸受34の周囲に配置されている。軸受ホルダ80が第2軸受34の周囲に配置され、案内部材50が、軸受ホルダ80の周囲に配置されている。案内部材50は、軸受ホルダ80および第2軸受34を介してウォームシャフト18の第2端部18bの移動を案内する。
【0030】
付勢部材60は、例えば圧縮コイルばね等のばね部材により形成されている。付勢部材60は、ウォームシャフト18がウォームホイール19に近づくように、第1軸受33の中心Bを支点として、ハウジング17に対して、軸受ホルダ80および第2軸受34を介してウォームシャフト18の第2端部18bをウォームホイール19側に付勢する。スペーサ70は、付勢部材60としてのばね部材のセット長を変更するために用いられる。
【0031】
ハウジング17には、収容部17aに連通する軸方向Xの貫通孔からなる保持孔44が形成されている。案内部材50、軸受ホルダ80および第2軸受34は、保持孔44に収容されている。
図3に示すように、ハウジング17の一端171(軸方向Xに関して電動モータ14側の反対側の端部に相当)が、保持孔44の一端の開口44aを介して開放されている。
【0032】
図5に示すように、案内部材50、軸受ホルダ80(受け座形成部材)、付勢部材60、スペーサ70および第2軸受34は、保持孔44の開口44aを通してハウジング17内に組み込まれる。案内部材50、軸受ホルダ80(受け座形成部材)、付勢部材60、スペーサ70および第2軸受34が互いに組み付けられて、案内部材50、軸受ホルダ80(受け座形成部材)、付勢部材60、スペーサ70および第2軸受34を含むサブアセンブリSAが構成されている。
【0033】
案内部材50は、保持孔44に圧入固定される。
図2に示すように、案内部材50は、ハウジング17の一端171(保持孔44の開口44a)を閉塞するエンドカバーとして機能する。
図2および
図3に示すように、受け座形成部材として機能する軸受ホルダ80は、環状の本体部81と、受け座形成部82とを含む。軸受ホルダ80は、ポリアミド等の樹脂材料により形成されている。第2軸受34の外輪43が、軸受ホルダ80の本体部81の内周81bに圧入嵌合されている。本体部81の外周81aには、一対の被案内部83が設けられている。一対の被案内部83は、第1方向Y1および第2方向Y2に平行な平坦面に形成されている。
【0034】
受け座形成部82は、付勢部材60の第1端部61を受ける受け座82aを形成している。受け座82aは、ウォームシャフト18の第2端部18bおよび第2軸受34の少なくとも一方の軸方向外方X2に配置されている。受け座形成部82を含む軸受ホルダ80は、第2軸受34の外輪43に組み付けられることにより、外輪43と一体に設けられる。
【0035】
受け座82aには、例えば凸部からなるばねガイド等のガイド84が設けられている。凸部からなるガイド84は、付勢部材60の第1端部61に挿入される。ガイド84として、付勢部材60の第1端部61を収容する凹部が、受け座82aに設けられてもよい(図示せず)。
案内部材50は、ポリアミド等の樹脂材料または金属材料により形成されている。
【0036】
図4(a)〜(d)に示すように、案内部材50は、リング部51と、閉塞部52とを含む。リング部51は、
図6に示すように、ハウジング17の保持孔44に嵌合されてウォームシャフト18の第2端部18bの移動を案内する。
図4(b)に示すように、閉塞部52は、リング部51の一端511(案内部材50の一端に相当)を閉塞する。
図2に示すように、閉塞部52は、保持孔44の開口44aを塞ぐ。案内部材50の他端512は開放されている。
【0037】
図4(b)に示すように、リング部51は、外周51aと内周51bとを含む。リング部51の外周51aが、
図6および
図7に示すように、保持孔44の内周に圧入嵌合される。
図4(b)に示すように、リング部51は、軸方向Xに関して、第1部分53と第2部分54とを含む。
第1部分53は、軸方向Xに関して、電動モータ14側に配置される。第2部分54は、軸方向Xに関して、第1部分53よりも電動モータ14側とは反対側(ウォームシャフト18の軸方向外方X2)に配置される。
【0038】
図4(c)は、リング部51の第1部分53の断面を示している。
図4(c)および
図6に示すように、リング部51の第1部分53の内周51bは、軸受ホルダ80を案内する案内空間としての案内孔55を区画形成している。案内孔55は、ウォームシャフト18の第2端部18bが第1方向Y1および第2方向Y2に移動できるように、軸受ホルダ80を保持すべく、偏倚孔に形成されている。
【0039】
図2に示すように、第1方向Y1は、ウォームシャフト18とウォームホイール19との芯間距離D1(ウォームシャフト18の中心軸C1とウォームホイール19の中心軸C2との距離に相当)が増加する方向である。第2方向Y2は、ウォームシャフト18とウォームホイール19との芯間距離D1が減少する方向である。第2方向Y2が、付勢部材60の付勢方向に相当する。第1方向Y1が、付勢部材60の付勢方向の反対方向に相当する。
【0040】
図4(c)および
図6に示すように、案内部材50は、一対の案内部56を含む。一対の案内部56は、リング部51の第1部分53の内周51b(案内孔55の内周に相当)に設けられている。一対の案内部56は、第1方向Y1および第2方向Y2と平行に延びる一対の平坦面により形成されている。
図6に示すように、一対の案内部56は、軸受ホルダ80の被案内部83に接触することにより、第1〜第3の機能を果たす。第1の機能は、第2軸受34の第1方向Y1および第2方向Y2への移動を案内する機能である。第2の機能は、第2軸受34の第1方向Y1および第2方向Y2に直交する方向への移動を規制する機能である。第3の機能は、第2軸受34の外輪43の回転を規制する機能である。
【0041】
案内部材50の内面(リング部51の第1部分53の内周51b)においてウォームホイール19に近い部分と軸受ホルダ80の本体部81の外周81aとの間には、隙間S1が形成されている。隙間S1により、例えばウォームホイール19の歯部19bが磨耗した場合であっても、ウォームシャフト18は、常にウォームホイール19に向けて付勢される。
【0042】
案内部材50は、ウォームシャフト18の第2端部18bの、ウォームホイール19から離れる方向(第1方向Y1)への移動量を規制するストッパ部57を含む。ストッパ部57は、リング部51の第1部分53の第1方向側端部53eにおける内周51bに設けられている。通常時は、ストッパ部57と軸受ホルダ80の本体部81の外周81aとの間には、第1方向Y1に関して隙間S2が設けられている。悪路走行時等に、ストッパ部57と軸受ホルダ80の本体部81との当接により、ウォームシャフト18の第2端部18bの第1方向Y1への過度な移動が規制される。
【0043】
図4(d)および
図7に示すように、案内部材50のリング部51の第2部分54において、内周51bは、内方へ張り出す張出部53hを備えている。張出部53hには、付勢部材60およびスペーサ70を挿通させて保持する挿通孔58が形成されている。
図2に示すように、ハウジング17の保持孔44の内周には、第1方向Y1に窪む保持凹部45が形成されている。ハウジング17の保持凹部45と案内部材50の挿通孔58とが連通するように、保持孔44に対する案内部材50の周方向位置が位置決めされている。
【0044】
案内部材50の挿通孔58に挿通されて保持されたスペーサ70は、例えばピンからなる。スペーサ70は、ハウジング17の保持孔44の底と付勢部材60の第2端部62との間に介在している。スペーサ70は、案内部材50によって付勢部材60と直列に保持されている。長さの異なるスペーサ70を適宜選択して用いることにより、付勢部材60としてのばね部材のセット長が変更可能とされている。
【0045】
図5に示すサブアセンブリSAにおいて、付勢部材60が自由状態にあるときは、案内部材50の挿通孔58に保持されたスペーサ70の一部が、
図5において二点鎖線で示されるように、案内部材50のリング部51の外周51aから突出する状態となる。
スペーサ70が保持孔44へのサブアセンブリSAの組み入れの邪魔にならないように、スペーサ70を挿通孔58内に押し入れて、
図5において実線で示されるように、スペーサ70がリング部51の外周51aから突出しないようにする。
【0046】
図2に示すように、ハウジング17は、案内部材50をウォームシャフト18の軸方向Xに位置決めする位置決め部46を含む。位置決め部46は、保持孔44の内周に形成された例えば段部である。位置決め部46は、案内部材50のリング部51の他端512と当接することにより、案内部材50を軸方向Xに位置決めする。
第1実施形態では、組立時において、案内部材50のリング部51を、ハウジング17の一端171の開口44aを通して組み入れて、リング部51を保持孔44に嵌合させることができる。開口44aを有するハウジング17の一端171側から組立が行えるので、組立性が向上する。また、保持孔44に嵌合されたリング部51の一端に設けられた閉塞部52によって、ハウジング17の一端171の開口44aを閉塞することができる。このため、ハウジング17の一端171の開口44aを閉塞するエンドカバーを別途に設ける必要がない。したがって、部品点数の増大を抑制することができる。
【0047】
ひいては、組立性を向上し部品点数の増大を抑制する電動パワーステアリング装置1を実現することができる。
また、案内部材50が樹脂により形成される。このため、案内部材50と他部材(例えば軸受ホルダ80)との接触による打音の発生を抑制することができる。
また、案内部材50が、第2端部18bの、ウォームホイール19から離れる方向(第1方向Y1)への移動量を規制するストッパ部57を含む。このため、付勢部材60の劣化およびウォームホイール19の劣化を抑制することができる。
【0048】
また、案内部材50によって付勢部材60と直列に保持されたスペーサ70によって、付勢部材60としてのばね部材のセット長を変更することができる。このため、ばね部材の荷重調整を容易に行うことができる。
また、付勢部材60が、ウォームシャフト18の第2端部18bおよび第2軸受34の少なくとも一方の軸方向Xに隣接し、かつ、第2軸受34の外輪43と一体に設けられた受け座形成部82の受け座82aをウォームホイール19側へ付勢する。このため、ロストルクの抑制しつつ、車両等への搭載性を向上させることができる。
【0049】
また、組立時において、
図5に示すように、案内部材50、軸受ホルダ80(受け座形成部材)、付勢部材60、スペーサ70および第2軸受34をサブアセンブリSAとして保持孔44内に一体に組み込むことができる。このため、組立性が向上する。なお、第2軸受34またはスペーサ70の少なくとも一方を除いて、案内部材50、軸受ホルダ80(受け座形成部材)および付勢部材60を含むサブアセンブリSAを構成するようにしてもよい。
【0050】
案内部材50が案内部56を含む。案内部56によって、第2軸受34を保持する軸受ホルダ80を介して、ウォームシャフト18の第2端部18bの移動を円滑に案内することができる。
本実施形態において、案内部材50が金属部材で形成される場合には、軸受ホルダ80が樹脂材料で形成されることが、接触による打音を抑制するうえで好ましい。
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態のウォーム減速機の要部の断面図である。
図8の第2実施形態のウォーム減速機15Pが、
図6の第1実施形態のウォーム減速機15と主に異なるのは、案内部材50のストッパ部57に、吸音用の弾性体90が固定されている点である。
【0051】
弾性体90は、ゴム材料または樹脂材料からなり、例えば板状に形成されている。悪路走行時等に、ストッパ部57が軸受ホルダ80の本体部81の衝突を受け止めるときに、弾性体90によって、前記衝突による衝撃が緩和され、接触打音が抑制される。
また、弾性体90を設けることにより、案内部材50や軸受ホルダ80の寸法精度や組合せ精度を厳密に設定しなくても、接触打音を抑制することが可能となる。
【0052】
なお、弾性体90は、ストッパ部57、および、軸受ホルダ80の本体部81の外周81aにおいてストッパ部57に対向する部分の少なくとも一方に取り付けられて、ストッパ部57および前記対向する部分の他方との衝突による接触打音を抑制すればよい。
本発明は各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、電動パワーステアリング装置1が、電動モータ14の動力をピニオンシャフト11に付与する電動パワーステアリング装置であってもよい。