特許第6569906号(P6569906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6569906ガス圧接用カバーと該カバーを用いたガス圧接方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569906
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ガス圧接用カバーと該カバーを用いたガス圧接方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20190826BHJP
   E04C 5/18 20060101ALN20190826BHJP
【FI】
   B23K20/00 330C
   !E04C5/18
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-227684(P2015-227684)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-94349(P2017-94349A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596171384
【氏名又は名称】株式会社 徳武製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】394024983
【氏名又は名称】東海ガス圧接株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】徳武 利洋
(72)【発明者】
【氏名】宮口 樹哉
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−102883(JP,A)
【文献】 特開2003−239019(JP,A)
【文献】 特開2010−090456(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0056076(US,A1)
【文献】 特表2008−526522(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2015−0020467(KR,A)
【文献】 国際公開第2012/103621(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
B23K 31/00
E04C 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス圧接直後の赤熱し、こぶ状のふくらみが形成された鉄筋について、
前記鉄筋の熱影響部位置又は圧接部位置に、
前記鉄筋の表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋を包囲するように装着されるガス圧接された鉄筋用のカバーであって、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されていて、前記赤外線の反射により前記鉄筋の熱影響部又は圧接部を均熱化する、ガス圧接された鉄筋用のカバー。
【請求項2】
前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、請求項1に記載のガス圧接された鉄筋用のカバー。
【請求項3】
前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、請求項1又は2に記載のガス圧接された鉄筋用のカバー。
【請求項4】
ガス圧接直後の赤熱し、こぶ状のふくらみが形成された鉄筋について、
前記鉄筋の熱影響部位置又は圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接された鉄筋用のカバーを、
前記鉄筋の表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋を包囲するように、少なくとも10分間以上装着し、
前記赤外線の反射により前記鉄筋の熱影響部又は圧接部を均熱化する、
ことを特徴とする、
ガス圧接された鉄筋の均熱化方法。
【請求項5】
前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、請求項4又は5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス圧接用カバーと該カバーを用いたガス圧接方法とに関し、詳しくは、鉄筋又はレールのガス圧接用カバーと該カバーを用いた鉄筋又はレールのガス圧接方法とに関し、さらに詳しくは、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、が有効に抑止された、鉄筋又はレールのガス圧接用カバーと該カバーを用いたガス圧接方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス圧接は、鉄筋、レール等を接合する場合に広く用いられている。
例えば、高層建築、橋脚などにおいて、特に高層建築などにおいては、高強度の鉄筋を採用するケースが増えている。
ところが、このような高強度の鉄筋は、成分に炭素(C)が多く含有されていることから、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接部が脆化し、圧接終了後に自然放冷された鉄筋のガス圧接継手は、引張試験、特に曲げ試験にて、熱影響部破断(HAZ破断)する事例が多く見られる。このため、その改善が要望されていた。
【0003】
そこで、例えば、棒鋼をガス圧接するに際して生じた圧接膨出部を調質するにあたり、変態終了温度以下になるまで冷えた圧接膨出部を、例えば750〜900℃の温度まで再加熱する、ガス圧接部の調質方法が提案されている(特許文献1の請求項1、請求項3など参照)。
【0004】
しかしながら、ここで「変態終了温度」とは、実際には、100℃以下程度、例えば室温程度であることから、このような温度まで一旦冷えたものを再加熱しなければならず、また、再加熱して、750〜900℃にするには、多大なエネルギーを必要とするという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−292476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、多大なエネルギーを必要とすることなく、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することのできる、鉄筋又はレールのガス圧接用カバーと、該カバーを用いた、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止した、鉄筋又はレールのガス圧接方法と、を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来の問題点を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバーを用い、ガス圧接を行った直後に、これを鉄筋又はレールの表面との間に空間(間隔)を設けて装着するだけで、ガス圧接時においてまだ赤熱している鉄筋又はレールについて、赤外線を反射させることができ、このためガス圧接用カバーを装着した箇所における鉄筋又はレールの表面付近温度を均熱化させることが可能となり、その結果、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明は、以下の(1)〜(6)に関するものである。
(1):ガス圧接直後の赤熱し、こぶ状のふくらみが形成された鉄筋について、
前記鉄筋の熱影響部位置又は圧接部位置に、
前記鉄筋の表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋を包囲するように装着されるガス圧接された鉄筋用のカバーであって、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されていて、前記赤外線の反射により前記鉄筋の熱影響部又は圧接部を均熱化する、ガス圧接された鉄筋用のカバーに関する。

(2):前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、前記(1)に記載のガス圧接用カバーに関する。

(3):前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、前記(1)又は(2)に記載のガス圧接用カバーに関する。

(4):ガス圧接直後の赤熱し、こぶ状のふくらみが形成された鉄筋について、
前記鉄筋の熱影響部位置又は圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接された鉄筋用のカバーを、
前記鉄筋の表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋を包囲するように、少なくとも10分間以上装着し、
前記赤外線の反射により前記鉄筋の熱影響部又は圧接部を均熱化する、
ことを特徴とする、
ガス圧接された鉄筋の均熱化方法に関する。

(5):前記耐熱性を有し、赤外線を反射する素材が、セラミックファイバーである、前記(4)に記載の方法に関する。

(6):前記ガス圧接用カバーが、開閉自在とされた環状形構造体からなる、前記(4)又は(5)に記載の方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガス圧接用カバーを装着した箇所における鉄筋又はレールの表面付近温度を均熱化させることができ、このため、多大なエネルギーを必要とすることなく、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することのできる、ガス圧接用カバーと、該カバーを用いた、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止した、鉄筋又はレールのガス圧接方法と、が提供される。
本発明のガス圧接用カバーと鉄筋又はレールのガス圧接方法とによれば、多大なエネルギーを必要とすることなく、鉄筋又はレールのガス圧接時の熱影響部(HAZ)における破断(HAZ破断)、特に高強度の鉄筋又はレールのガス圧接時の熱影響部(HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のガス圧接用カバー1の一態様を示す斜視図であって、開いた状態を示すものである。
図2図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2を包囲するように装着している様子を示す説明図である。
図3図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2を包囲するように装着している様子を示す説明図であって、縦方向に垂直に切断した断面の模様を示す説明図である。
図4図3における赤外線の反射状況と温度の測定ポイントを示す説明図である。
図5】実施例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフである。
図6】比較例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、第1に、ガス圧接用カバーに関するものであり、このガス圧接用カバーは、鉄筋又はレールの圧接処理直後というガス圧接の際に用いられるものであって、鉄筋又はレールのガス圧接時における、前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーであって、
かつ、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
以下、本発明を図面により、詳細に説明する。
図1は、本発明のガス圧接用カバー1の一態様を示す斜視図であって、これを開いた状態を示すものである。図中、符号11は耐熱性を有し、赤外線を反射する素材であり、符号12は金属板である。
また、図2は、図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋2を包囲するように装着している様子を示す説明図である。図中、符号21は、圧接箇所の端面を表わす線である。
図3は、図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2を包囲するように装着している様子を示す説明図であって、縦方向に垂直に切断した断面の模様を示す説明図である。
図4は、図3における赤外線の反射状況と温度の測定ポイントを示す説明図である。図4中、ガス圧接用カバーの内部に表わされている太い矢印で示す折れ線が、赤外線の反射状況を示している。
また、図4中、符号Aで示した箇所が、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕であり、符号Bで示した箇所が、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕であり、符号Cで示した箇所が、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕である。
また、図4中、網掛けした箇所が、圧接時の赤熱部である。
図5は、実施例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフであって、符号Aで示したグラフが測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における経時変化を示すグラフであり、符号Bで示したグラフが測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフであり、符号Cで示したグラフが、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフである。
図6は、比較例1における鉄筋表面温度の経時変化を示すグラフであり、図中の符号は、図5と同様である。
【0013】
本発明のガス圧接用カバー1は、建築現場や鉄道現場などで利用されている、鉄筋又はレールのガス圧接の際に、詳しくはガス圧接を行った直後に、鉄筋又はレールを包囲するように装着されるものである。
【0014】
本発明のガス圧接用カバー1は、少なくともその内側部分(つまり、鉄筋又はレール2に直に向き合う部分)が、耐熱性を有し、赤外線を反射する素材11から形成されているものである。
【0015】
耐熱性を有し、赤外線を反射する素材として、例えばセラミック系無機繊維、特にセラミックファイバー(Ceramic Fiber;CF)を、挙げることができるが、これに限定されるものではなく、要するにガス圧接(1200〜1300℃程度となる)直後の高温に耐えるだけの耐熱性を有し、かつ、赤外線を反射する素材であれば、広く用いることができる。なお、赤外線の反射度合いは、少なくともその一部を反射しうるものであればよいが、セラミック系無機繊維、特にセラミックファイバーは、赤外線の少なくとも一部を反射させることができる素材である。
【0016】
ここでセラミックファイバーは、アルミナとシリカを主成分とした人造鉱物繊維の総称であり、1200℃を超える耐熱性を有していて、断熱材などに用いられている。
但し、本発明においては、このセラミックファイバーを断熱材として用いているものではなく、あくまで均熱化のための赤外線の反射材料として、用いているものである。
【0017】
セラミックファイバーは、一般に、非晶質のアルミナシリカ繊維(Refractory Ceramic Fiber;RCF)と結晶質の繊維(Alumina Fiber;AF)とに分類されるが、本発明においては、このいずれをも用いることができる。
本発明においては、このセラミックファイバーをそのまま赤外線を反射する素材11の材料として用いてもよいが、必要に応じて、このセラミックファイバーを積層したものや、板状(ボード状)に成形したものなど、その加工品を用いることもできる。
【0018】
本発明のガス圧接用カバー1は、少なくともその内側部分が、耐熱性を有し、赤外線を反射する素材11から形成されているものであればよいので、その外側部分も同じく耐熱性を有し、赤外線を反射する素材11から形成されているもの(例えば、セラミックファイバーの集合体を保形化したようなもの)であってもよいが、通常は、カバーのし易さや保管等の便を考慮して、図示したように、外側部分に金属板12を備えたものが用いられる。
外側部分の金属板12の材質は、通常、鉄、鋼、アルミなどが用いられ、また、これらに限定されるものではないが、耐熱性を有するものが好ましい。
【0019】
本発明のガス圧接用カバー1の形状としては、鉄筋又はレール2を包囲するように装着しうるものであれば特に限定されないが、例えば図1、2などに示した如き環状形(トロイダル形)のものが好ましい。
なお、図1、2では、ガス圧接用カバー1の内側部分にある赤外線を反射する素材11が、綺麗な面状となっているが、あくまで作図上からそのように綺麗な面状となっているものであって、例えば、綿状のセラミックファイバーなどのようになっているものの場合もある。
【0020】
また、本発明のガス圧接用カバー1としては、鉄筋又はレール2を包囲するように装着しうるものであれば、特に開閉自在であることまでは必須ではないが、取り扱い性を考慮して、ヒンジなどにより、開閉自在とされているものが好ましい。従って、本発明のガス圧接用カバー1の形状、構造としては、図1、2などに示すように、開閉自在とされた環状形構造体からなるものが特に好ましい。なお、図1、2では、いわゆる半割体(2分割体)としたものを示しているが、これに限定されるものではなく、3分割体としたものであってもよい。
【0021】
さらに、本発明のガス圧接用カバー1は、鉄筋又はレールの表面との間に空間(間隔)を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着できるような構造のものであることが必要であり、このようなガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレールの表面との間に空間(間隔)を設けつつ、ガス接処理直後の鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、鉄筋又はレール2の圧接部位置に、これを包囲するように装着することにより、赤外線の反射による、鉄筋又はレール2の表面付近温度の均熱化効果を得ることができる。
ここで、鉄筋又はレール2の表面との間に空間(間隔)を設けずに、密着したものであると、赤外線の反射による、鉄筋又はレール2の表面付近温度の均熱化効果を得ることができない。
【0022】
本発明の第1は、上記した如きガス圧接用カバーに関するものであるが、本発明は第2に、このガス圧接用カバーを用いた、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができる、鉄筋又はレールのガス圧接方法を提供するものである。
従って、本発明の第1のガス圧接用カバーの詳しい使用方法については、以下の本発明の第2のガス圧接方法に関する説明中において述べることとする。
【0023】
即ち、本発明は、第2に、鉄筋又はレールのガス圧接方法に関し、
鉄筋又はレールのガス圧接方法において、
鉄筋又はレールのガス圧接直後に、
前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、
少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバーを、
前記鉄筋又はレールの表面との間に空間を設けつつ、
前記鉄筋又はレールを包囲するように装着する、
ことを特徴とするものである。
【0024】
鉄筋やレール等を繋ぐために、ガス圧接方法が用いられている。
本発明の第1のガス圧接用カバーは、このような鉄筋又はレールについてガス圧接を行った直後において、前記鉄筋又はレールの熱影響部位置、又は、前記鉄筋又はレールの圧接部位置に、前記鉄筋又はレールの表面との間に空間(間隔)を設けつつ、前記鉄筋又はレールを包囲するように装着されるガス圧接用カバーである。
【0025】
ガス圧接は、高層建築、橋脚などにおいて鉄筋を繋ぐためや、鉄道現場でレールを繋ぐために広く用いられている。
【0026】
鉄筋を例にとり、ガス圧接について説明すると、鉄筋に関しては、ガス圧接継手と呼ばれる。
ガス圧接継手は、所定の長さに切断した状態で現場に搬入された鉄筋を繋ぎ合わせるために用いられる鉄筋継手方法の一つであって、鉄筋の端面同士を突き合わせ、突き合わせられた周辺を、酸素・アセチレン炎を用いて加熱すると共に鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧することで得られ、接合面を跨いで両端面の原子が移動拡散し、金属結合して一体となる継手である。

鉄筋としては、通常の丸鋼を用いた鉄筋の他、高層建築、橋脚などにおいては、横節又はねじ節鉄筋が用いられている。本発明においては、これらのいずれをも用いることができるが、特に成分に炭素(C)を多く含む、高強度の横節又はねじ節鉄筋が好ましく用いられる。
ここで鉄筋のサイズとしては、一般にD19サイズからD51サイズ程度のものが用いられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
このような鉄筋のガス圧接継手を製造するためのガス圧接技術に関しては、従来一般的に行われているガス圧接技術を採用することができる。
即ち、従来一般的に行われているガス圧接技術は、二本の鉄筋の端面をそれぞれ平坦にした後、端面同士を突き合わせ、圧接器などを用いて鉄筋の軸方向に圧縮力を加えて加圧し、圧接した端面同士が密着するまで、突き合わせられた周辺を、酸素・アセチレン炎を用いて、1200〜1300℃程度に加熱し、溶かすことなく赤熱状態で接合する技術である。
ガス圧接継手の製造に際しては、加熱・加圧によって、突き合わせられた周辺がふくらみ、直径が鉄筋径の1.4倍以上、特に1.6倍程度のこぶ状のふくらみ部分(圧接部)が形成される。
このような鉄筋のガス圧接継手には、横節鉄筋のガス圧接継手と、ねじ節鉄筋のガス圧接継手と、がある。
ここで横節(竹節)鉄筋とは、ねじを切ってない節状の鉄筋を指し、ねじ節鉄筋とは、ねじを切ってある節状の鉄筋を指す。
【0028】
このようなガス圧接技術は、鉄筋の継手を製造するために有効な技術であるが、成分に炭素(C)を多く含む、高強度の鉄筋の場合には、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)付近において破断する現象が見られ、特にこのこぶ状のふくらみ部分(圧接部)のすぐ外側のガス圧接継手の「熱影響部(HAZ)」において破断する現象が見られた。
即ち、高強度の鉄筋は、成分に炭素(C)が多く含有されていることから、ガス圧接のように加熱を伴う施工方法であると、圧接終了後に自然放冷された横節又はねじ節鉄筋のガス圧接継手は、引張試験、特に曲げ試験にてHAZ破断(熱影響部破断)する現象が多く見られた。
【0029】
本発明は、このような鉄筋のガス圧接時において、ガス圧接継手の熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止するものであり、さらに、レールのガス圧接時における熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止するものである。
このため、本発明では、鉄筋又はレール2(通常は、鉄筋同士又はレール同士)のガス圧接直後に、鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、鉄筋又はレール2の圧接部位置に、ガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋又はレール2を包囲するように装着させるのである。
【0030】
ここで、成分に炭素(C)が多く含有されている、高強度の鉄筋としては、例えば降伏強度が490MPa程度のSD490が挙げられる。
勿論、これ以下の降伏強度を有する鉄筋(SD390やSD345など)について本発明の方法を適用することができるが、SD490に比べて、SD390やSD345などは、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)や、このこぶ状のふくらみ部分(圧接部)のすぐ外側のガス圧接継手の「熱影響部(HAZ)」において破断する現象の発生率は一般に低い。
この他、降伏強度が590MPa以上という、USD590や、降伏強度が685MPa以上という、USD685の如き超高強度の鉄筋に対しても、本発明の方法を適用することが可能である。
【0031】
本発明は、このようにして鉄筋又はレール2(通常は、鉄筋同士又はレール同士)のガス圧接直後に、鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、鉄筋又はレール2の圧接部位置に、少なくともその内側部分が耐熱性を有し、赤外線を反射する素材から形成されているガス圧接用カバー1を、図3に示すように、鉄筋又はレール2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋又はレール2を包囲するように装着し、図4に示すように、赤外線(熱)を反射させて、これにより鉄筋又はレール2の表面付近温度を均熱化させるものである。
【0032】
ここで鉄筋又はレールの「熱影響部(HAZ)」とは、圧接時の熱で組織・冶金的性質・機械的性質などが変化を生じた母材部分を指している。
また、鉄筋又はレールの「圧接部」とは、圧接によって得られた熱影響部を含む接合部(継手部)全体を指している。
【0033】
本発明では、鉄筋又はレール2の熱影響部位置、又は、鉄筋又はレール2の圧接部位置に、ガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋又はレール2を包囲するように装着し、鉄筋又はレール2の熱影響部、又は、鉄筋又はレール2の圧接部における、鉄筋又はレール2の表面付近温度を均熱化させ、これにより鉄筋又はレール2についてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部(Heat Affected Zone;HAZ)における破断(HAZ破断)、を有効に抑止することができるものである。
従って、少なくとも鉄筋又はレール2の「熱影響部(HAZ)」を上記のようにして均熱化させれば十分であり、この鉄筋又はレール2の熱影響部を含む「圧接部」全体を上記のようにして均熱化させてもよいが、特に鉄筋又はレール2の「熱影響部(HAZ)」を上記のようにして均熱化させることが、経済的な観点からも好ましい。
【0034】
本発明においては、鉄筋又はレール2の熱影響部(HAZ)又は圧接部を上記のようにして均熱化させることが必要であって、この部分以外を上記のようにして均熱化させたとしても、本発明の目的を達成することはできない。
この理由は必ずしも定かではないが、鉄筋を例にとり説明すると、何も装着しない場合には、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などに比べると、それ以外の鉄筋母材はゆっくり冷えると考えられる(即ち、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などは早く冷えると考えられる)ことから、本発明のガス圧接用カバーを熱影響部(HAZ)位置に、又は圧接部位置に装着し、赤外線(熱)を反射させることにより一定の熱を付与し、こぶ状のふくらみ部分(圧接部)の先端部分などを、それ以外の鉄筋母材と同様の速度で冷ますようにすることで、均熱化させ、その結果、組織などの均一化が図られ、残留応力が抑えられ、熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができるものと考えられる。
【0035】
本発明において、ガス圧接用カバー1を、鉄筋又はレール2を包囲するように装着しておく時間は、少なくとも鉄筋又はレール2の表面温度がA1変態点より低くなるまで行うことが望ましい。このため、鉄筋のサイズにより必要な装着時間は異なるが、D51サイズのものを例にとると、圧接処理直後にこれを装着してから、少なくとも10分間以上、できれば15分間以上、さらには20分間以上装着しておくことが好ましい。特には、ガス圧接直後に1200〜1300℃程度に加熱された鉄筋又はレール2が、常温程度に戻るまでの時間装着しておくことが最も望ましい。
【0036】
このような本発明の第2の圧接方法によれば、鉄筋又はレールの圧接の際において、その熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができる。
【0037】
このようにして、本発明のガス圧接用カバーを、鉄筋又はレールのガス圧接直後にこれに装着するだけで、鉄筋又はレールについてガス圧接を行った箇所における破断、特に熱影響部における破断(HAZ破断)を有効に抑止することが可能となる。
従って、本発明によれば、単にガス圧接用カバーを装着するだけでよく、安価に、しかも現場で容易に行えることができるという利点がある。
【実施例】
【0038】
以下に本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
D51サイズの高強度の異形棒鋼(ねじ節鉄筋;SD490規格)を使用し、2本の異形棒鋼同士を突き合わせ、公益社団法人日本鉄筋継手協会が定める「鉄筋継手工事標準仕様書 高分子天然ガス圧接継手工事(案)」に従って、ガス圧接を行った。
【0040】
ガス圧接を行った直後に、図1に示す本発明のガス圧接用カバー1を、図2図3に示すように、鉄筋2の熱影響部を含む位置の真上に、鉄筋2の表面との間に空間を設けつつ、鉄筋2を包囲するように装着し、この状態で約30分間保持した。
ガス圧接用カバー1としては、内側に、耐熱性を有し、赤外線を反射する素材としてのセラミックファイバー(厚さ6mm)を備え、外側に金属板(厚さ2mm;SUS製)を備えたもの(外径120mm、長さ150mm)のものを使用した。
【0041】
所定時間毎に、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度、及び、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における鉄筋の表面温度をそれぞれ測定した。結果を図5に示す。
なお、本実施例では、D51サイズ(公称直径50.8mm)の鉄筋を使用しており、圧接接合部(中心)より30mm離れた地点が熱影響部に相当することから、この圧接接合部(中心)より30mm離れた地点と、同じく60mm離れた地点を、それぞれ測定ポイント(測定ポイントBと測定ポイントC)としている。
しかし、これら測定ポイントは、D51サイズの鉄筋における測定ポイントを示したものであって、鉄筋サイズにより、測定ポイントは変わる。
図5において、符号Aで示したグラフが測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における経時変化を示すグラフであり、符号Bで示したグラフが測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフであり、符号Cで示したグラフが、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における経時変化を示すグラフである。
【0042】
<比較例1>
実施例1において、ガス圧接用カバー1を装着しなかった(即ち、大気放冷した)こと以外は、実施例1と同様にして、所定時間毎に、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度、及び、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における鉄筋の表面温度をそれぞれ測定した。結果を図6に示す。
【0043】
図5(実施例=本発明)と図6(比較例)との比較から明らかなように、本発明によれば、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度と、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度と、温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕における鉄筋の表面温度との温度差がより小さく、均熱化されていることが分かる。
特に、図5(実施例)から明らかなように、本発明によれば、温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕における鉄筋の表面温度と、温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点;熱影響部に相当〕における鉄筋の表面温度との温度差が極めて小さく均熱化されており、このことから、本発明によれば、鉄筋又はレールのガス圧接の際において、その熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができるものと理解される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、鉄筋又はレールのガス圧接の際において、その熱影響部(HAZ)における破断を有効に抑止することができることから、ガス圧接分野において広く利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0045】
1 ガス圧接用カバー
2 鉄筋又はレール
11 耐熱性を有し、赤外線を反射する素材
12 金属板
21 圧接箇所の端面を表わす線
A 温度の測定ポイントA〔圧接接合部(中心)〕
B 温度の測定ポイントB〔圧接接合部(中心)より30mm離れた地点〕
C 温度の測定ポイントC〔圧接接合部(中心)より60mm離れた地点〕
図1
図2
図3
図4
図5
図6