特許第6569909号(P6569909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569909
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】錠剤カセット
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61J3/00 310F
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-9939(P2016-9939)
(22)【出願日】2016年1月21日
(65)【公開番号】特開2017-127532(P2017-127532A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100106345
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 香
(72)【発明者】
【氏名】大村 義人
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−140615(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/041230(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0001956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤を収容しうる薬剤収容部と、前記薬剤収容部の中で軸回転しうる整列盤と、有底孔の形成された下端部が前記薬剤収容部の底部を貫いて下方へ突き出ている回転軸とを備えていて、前記回転軸が回転させられるとそれに随伴して前記整列盤が軸回転することで前記薬剤収容部から錠剤を逐次排出する錠剤カセットにおいて、
前記回転軸の有底孔部分に形成されたスリット内で前記回転軸に固設されている揺動支点と、前記薬剤収容部の底部に設けられていて前記回転軸から離れて前記回転軸を一周する係留部材と、前記揺動支点にて揺動可能に支持されており且つ受動端部と係止端部とが前記揺動支点の両側に分かれている揺動部材と、前記係止端部が前記係留部材に向かって進むとともに前記受動端部が前記有底孔に進入するように前記揺動部材を付勢する付勢部材とを具備し、自由状態では前記付勢部材の付勢によって前記係止端部が前記係留部材に当接して係止され、ベースに装着されて駆動軸が前記有底孔に嵌入すると前記受動端部が前記有底孔から押し出されて前記係止端部が前記係留部材から離脱するようになっていることを特徴とする錠剤カセット。
【請求項2】
前記整列盤の底面のうち前記回転軸の周囲が辺縁部から見て彫り込まれた状態の空間になっており、その空間内に前記係留部材と係止端部とのうち一部または全部が納まっていることを特徴とする請求項1記載の錠剤カセット。
【請求項3】
前記付勢部材が前記有底孔の中に納まっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された錠剤カセット。
【請求項4】
前記回転軸の前記有底孔における前記受動端部の軸方向位置が、前記回転軸の前記有底孔の面取部の軸方向長と前記駆動軸の先端の面取部の軸方向長との和よりも大きく、前記有底孔の底側に寄っている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載された錠剤カセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病院や薬局等で行われる調剤において錠剤供給の自動化に寄与する錠剤フィーダを成す駆動部や従動部のうち後者の従動部にあたる錠剤カセットに関し、詳しくは、錠剤をランダム収容する容器部(薬剤収容部)と容器部の中で軸回転しうる整列盤(ロータ)とを具備していて整列盤が軸回転駆動されると整列盤の周縁部の区画室と容器部の排出口とを介して錠剤を逐次落下させる錠剤カセットに関し、更に詳しくは、モータ部(駆動部)を具備したベース(支持部)への着脱に応じて、整列盤の底部から直に又は間接的に下方へ容器部底面を貫いて突き出ている雌形の回転軸(収容部側伝動機構)が、ベースに上向きで設けられている雄形の駆動軸(駆動部側伝動機構)に対して嵌合/離脱するようになっている錠剤カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤カセットと該カセットを着脱可能に支持するベースとからなる錠剤フィーダについて、図面を引用して説明する。図4は、そのような錠剤フィーダの外観を示しており、(a)が錠剤カセット10をベース20から取り外した状態の斜視図、(b)が錠剤カセット10をベース20に装着した状態の斜視図である。また、図5は、(a)が錠剤カセット10の内部を示す縦断斜視図、(b)が錠剤カセット10とそれを上から装着されて下から支持するベース20との縦断斜視図である。さらに、図6は、錠剤カセット10とベース20との伝動機構部分17,24を示しており、(a)が整列盤16の縦断斜視図、(b)がそれにモータ部21を係合させたところの斜視図である。
【0003】
錠剤カセット10は(図4図5参照)、ベース20(支持部)への装着時に水平方向の位置決めや姿勢を安定させるための嵌合枠11と、ベース20への装着時に鉛直方向の位置決めや姿勢を安定させるための底板部12と、錠剤を収容する容器部を成すとともに錠剤を逐次落下させるための排出口や仕切り板を装備した容器下部13(薬剤収容部)と、同じく錠剤を収容する容器部を成すとともに容器下部13の上方へ薬剤収容空間を拡張している容器上部14(薬剤収容部)と、錠剤補充時等に開閉される蓋15と、容器下部13の中に軸回転可能な状態で格納されている整列盤16(ロータ)と、整列盤16の軸心位置から直に(例えば特許文献1〜3参照)又はギヤ等を介在させて間接的に(例えば特許文献4参照)鉛直下方へ延びて容器下部13の底面から突き出ている回転軸17(従動軸)とを備えている。
【0004】
ベース20は(図4図5参照)、錠剤分包機の庫部の棚などに列設固定されたり(例えば特許文献1参照)、錠剤分割装置の天板部に固設されて(例えば特許文献2参照)、装着先から動作に必要な給電と制御を受けるものであり、上端部に外歯部25の付いた駆動軸24を具備していて制御に従って駆動軸24を軸回転させるモータ部21(駆動部)と、モータ部21を保持して装備先に固定される概ね横板状の支承部22(座部)と、支承部22の側周面上部に形成されていて嵌合枠11に嵌入しうる段差状の嵌入部23(座部)とを備えていて、錠剤カセット10が上に装着されると(図4(b)参照)、それを下から支持するとともに、モータ回転力を錠剤カセット10に伝達するようになっている。
【0005】
両者10,20間の回転伝動機構は(図6参照)、錠剤カセット10側の部分(収容部側伝動機構)の回転軸17と、ベース20側の部分(駆動部側伝動機構)の駆動軸24とからなる。回転軸17には、下端開口の有底孔17aが穿孔形成されており、その有底孔17aのうち下側部分に内歯部18が形成され、内歯部18の下端開口部分には面取部19が形成されている。それに対応して、モータ部21の駆動軸24は、上側部分に外歯部25が形成され、外歯部25の上端部には面取部26が形成されている。そして、錠剤カセット10が上方からベース20の上に下ろされると(図4(b)参照)、嵌合枠11と嵌入部23とが嵌合するとともに(図5(b)参照)、回転軸17と駆動軸24とが嵌合するのであるが(図6(b)参照)、その際、当初は回転軸17の面取部19と駆動軸24の面取部26とが遊嵌し、それから回転軸17の内歯部18と駆動軸24の外歯部25とが噛合するようになっている(例えば特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−279068号公報
【特許文献2】特開2012−179127号公報
【特許文献3】特開2012−120719号公報
【特許文献4】特願2015−021533号[出願]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような錠剤カセット10については、ベース20と共になす伝動機構が上述したような謂わば軸方向嵌合方式の回転伝動機構であることから、ベース20に対する着脱や他のカセットとの入替などがあった後に両伝動機構の内歯部18と外歯部25とで歯位置がずれていると、そのずれに起因してカセット装着時に回転軸17ひいては整列盤16が軸回転しかねず、制御外の不所望な排出動作を招きかねないことから、上述のずれの影響を抑制や緩和する対策にとどまらず、嵌合時・噛合時に制御外の軸回転を生じない方策も案出され、必要に応じた対策が採られている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、その対策は、不所望な錠剤排出の起きやすいカセット装着時を主眼にしたものであり、更に錠剤カセット10の回転軸(従動部)とベース20の駆動軸24(駆動部)との双方に改造を伴うものであった。このため、対策を施した錠剤カセット10を使用できるのが、対応する対策を施したベース20を搭載した分包機等に限られるので、既存の分包機等に適用するのは容易とは言えない。また、ベース20から取り外した錠剤カセット10を取り扱うときには、例えば錠剤カセット10を持ち運ぶときや錠剤カセット10に錠剤を補充するときなどには、ロックされていない回転軸17及び整列盤16が回転しないように注意して取り扱わなければならなかった。
そこで、ベース非装着時には単独で軸方向嵌合方式の回転軸の回転を阻止する錠剤カセットを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の錠剤カセットは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、錠剤を収容しうる薬剤収容部と、前記薬剤収容部の中で軸回転しうる整列盤と、有底孔の形成された下端部が前記薬剤収容部の底部を貫いて下方へ突き出ている回転軸とを備えていて、前記回転軸が回転させられるとそれに随伴して前記整列盤が軸回転することで前記薬剤収容部から錠剤を逐次排出する錠剤カセットにおいて、
前記回転軸の有底孔部分に形成されたスリット内で前記回転軸に固設されている揺動支点と、前記薬剤収容部の底部に設けられていて前記回転軸から離れて前記回転軸を一周する係留部材と、前記揺動支点にて揺動可能に支持されており且つ受動端部と係止端部とが前記揺動支点の両側に分かれている揺動部材と、前記係止端部が前記係留部材に向かって進むとともに前記受動端部が前記有底孔に進入するように前記揺動部材を付勢する付勢部材とを具備し、自由状態では前記付勢部材の付勢によって前記係止端部が前記係留部材に当接して係止され、ベースに装着されて駆動軸が前記有底孔に嵌入すると前記受動端部が前記有底孔から押し出されて前記係止端部が前記係留部材から離脱するようになっていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段2)、上記解決手段1の錠剤カセットであって、前記整列盤の底面のうち前記回転軸の周囲が辺縁部から見て彫り込まれた状態の空間になっており、その空間内に前記係留部材と係止端部とのうち一部または全部が納まっていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の錠剤カセットは(解決手段3)、上記解決手段1,2の錠剤カセットであって、前記付勢部材が前記有底孔の中に納まっていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の錠剤カセットは(解決手段4)、上記解決手段1〜3の錠剤カセットであって、前記回転軸の前記有底孔における前記受動端部の軸方向位置が、前記回転軸の前記有底孔の面取部の軸方向長と前記駆動軸の先端の面取部の軸方向長との和よりも大きく、前記有底孔の底側に寄っている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段1)、ベース非装着状態すなわちベースから取り外された自由状態では、付勢部材の付勢によって揺動部材の係止端部が係留部材に当接して係止されることから、係留部材に対する揺動部材ひいては回転軸の動きが制止され、それに随伴して整列盤の薬剤収容部に対する回転が止められるので、単独で回転軸および整列盤の回転を阻止するものとなっている。また、この錠剤カセットがベースに装着されると、ベース側の駆動軸が回転軸の有底孔に嵌入されるが、その際、揺動部材の受動端部が駆動軸によって有底孔から押し出されることから、揺動部材が付勢に逆らって揺動し、それに随伴して揺動部材の係止端部が係留部材から離脱するため、ベース装着状態では、回転軸さらには整列盤の軸回転が可能になって薬剤収容部から錠剤を逐次排出することができるので、錠剤カセットに必要な本来の機能は維持される。
【0014】
しかも、錠剤カセットの回転軸が軸方向嵌合方式伝動機構のうち有底孔の形成されている雌形の方であり、ベース側の駆動軸が軸方向嵌合方式伝動機構のうち雄形の方であり、カセットのベースへの装着に随伴して回転軸の有底孔に駆動軸が嵌入される軸方向嵌合方式であっても、回転軸の有底孔部分にスリットを形成して、そのスリット内に揺動支点と揺動部材の中央部とを配するとともに、回転軸を一周する係留部材を薬剤収容部の底部に設けたことにより、係留部材や揺動部材を含むロック機構がコンパクトに収まる。
したがって、この発明によれば、ベース非装着時には単独で軸方向嵌合方式の回転軸の回転を阻止するコンパクトな錠剤カセットを実現することができる。
【0015】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段2)、追設した所望のロック機構が係留部材と係止端部とを含んでいても、その係留部材と係止端部との大分を整列盤の底面の彫込状空間に納めたことにより、薬剤収容部の中の錠剤収容空間を犠牲にすることがなく、しかも他の部材の大形化を招くこともなく、ロック機構がカセットに内装されるので、カセット全体がコンパクトなものとなっている。
【0016】
さらに、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段3)、ロック機構が付勢部材を含んでいても、付勢部材を有底孔の中に納めたことにより、占有空間が不要なうえ他の部材の大形化を招くこともないので、カセット全体がコンパクトなものとなっている。
【0017】
また、本発明の錠剤カセットにあっては(解決手段4)、自身の回転軸の有底孔の開口部と、装着先ベースの駆動軸の先端部とのうち、何れか一方または双方に面取りが施されていることが前提となっているが、そのような面取りが回転軸や駆動軸に施されていると、回転軸と駆動軸との嵌合が円滑に行えるようになる一方、回転軸の有底孔の面取部の軸方向長と駆動軸の先端の面取部の軸方向長との和よりも長く回転軸と駆動軸とが嵌合して初めて回転軸と駆動軸との回転伝動状態が確立されることなる。
【0018】
このような前提の下で、更に、本発明の錠剤カセットにあっては、回転軸による揺動部材の支持の状態について更なる要件が課されていて、回転軸の有底孔における揺動部材の受動端部の軸方向位置が上記の和よりも大きく有底孔の底側に寄っている。厳密には、揺動部材の受動端部のうち嵌入時の駆動軸が最初に当接する部位に係る軸方向位置が、有底孔開口端から見て、上記の和よりも大きく、有底孔の底側に寄っている。そのため、回転軸と駆動軸とを嵌合させると、先ず面取部で円滑だが伝動不全状態で嵌合し始め、次に面取部を過ぎて嵌合が深まると回転軸と駆動軸との回転伝動状態が確立され、その後に、駆動軸と揺動部材とが当接する。これにより、回転伝動状態が確立されてから揺動部材と係留部材との掛止が解かれることになることから相互干渉することなく何れも円滑になされるうえ、回転軸と駆動軸との間に歯位置等のずれがあっても、回転軸の回転固定が優先し、駆動軸の回転が従う形で回転伝動が可能になるので、カセット装着時の制御外の不所望な排出動作までも的確に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1について、錠剤カセットの内部構造を示し、(a)が自由状態の錠剤カセットの縦断斜視図、(b)がベースとそれに装着した錠剤カセットとの縦断斜視図である。
図2】本発明の実施例1について、錠剤カセットの要部の内部構造を示し、(a)が蓋と容器上部とを除いた自由状態の錠剤カセットの縦断斜視図、(b)がそれをベース装着したところの縦断斜視図である。
図3】本発明の実施例1について、錠剤カセットとベースとの伝動部およびロック機構の構造を示し、(a)が整列盤とロック機構との縦断斜視図、(b)が整列盤の回転軸やモータ部の駆動軸における面取部の断面拡大図、(c)が整列盤の回転軸にモータ部の駆動軸を係合させたところの縦断斜視図である。
図4】錠剤カセットとそれを着脱可能に支持するベースとからなる錠剤フィーダの外観を示し、(a)が取り外した状態の斜視図、(b)が装着状態の斜視図である。
図5】従来の錠剤カセットの内部構造を示し、(a)が錠剤カセットの縦断斜視図、(b)がそれをベース装着したところの縦断斜視図である。
図6】従来の錠剤カセットとベースとの伝動部の構造を示し、(a)が整列盤の縦断斜視図、(b)がそれにモータ部を係合させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
このような本発明の錠剤カセットについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1により説明する。
図1〜3に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を総て具現化したものである。
なお、それらの図示に際し従来と同様の構成要素には同一の符号を付して示したので、また、それらについて背景技術の欄で述べたことは以下の実施例においても共通するので、重複する再度の説明は割愛し、以下、従来との相違点を中心に説明する。
【実施例1】
【0021】
本発明の錠剤カセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が自由状態の錠剤カセット40の内部を示す縦断斜視図、(b)が錠剤カセット40とそれを上から装着されて下から支持するベース20との縦断斜視図である。また、図2は、錠剤カセット40から蓋15と容器上部14とを取り外して拡大図示したものであり、(a)が自由状態の錠剤カセット40の内部を示す縦断斜視図、(b)が錠剤カセット40とそれを上から装着されて下から支持するベース20との縦断斜視図である。
【0022】
さらに、図3は、錠剤カセット40とベース20との伝動部(17,24)およびロック機構60〜80に係り、(a)が整列盤16とロック機構60〜80との縦断斜視図、(b)が(b)が整列盤16の回転軸17の内歯部18の面取部19とモータ部21の駆動軸24の外歯部25の面取部26と揺動部材70の受動端部71とに係る断面拡大図、(c)が整列盤50の回転軸17の内歯部18にモータ部21の駆動軸24の外歯部25を係合させたところの縦断斜視図である。なお、図3(a),(c)では、付勢部材80を明瞭化のため縦断しないで揺動部材70の手前側部分も図示している。また、錠剤カセット40の外観は、図4に示した既述の錠剤カセット10の外観と同じである。
【0023】
この錠剤カセット40は(図1図3参照)、既述した錠剤カセット10から引き継いだ嵌合枠11と底板部12と容器下部13と容器上部14と蓋15とを具備するとともに、錠剤カセット10の整列盤16を改造した整列盤50と、新たに追加されたロック機構60〜80とを具備している。
整列盤50が既述の整列盤16と相違するのは、その底面のうち回転軸17の付け根の部分を一周して囲む部分にロック機構収納空間51が形成されている点と、回転軸17における有底孔17aの周壁の一部分が軸方向に切り抜かれてスリット52が形成されている点と、そのスリット52の中に揺動支点53が導入されている点である。
【0024】
そのうち、ロック機構収納空間51は、それより遠心側の辺縁部から見て上方へ彫り込まれてできたかのような円環状の空間であり、ロック機構60〜80のうち後述する係留部材60の大部分と揺動部材70の係止端部72とを収容しうるようになっている。
また、揺動支点53は、両端が回転軸17に固定されてスリット52を貫いており、あるいは何れか一端が回転軸17に固定されてスリット52内に延びており、ロック機構60〜80のうち後述する揺動部材70の揺動中心で揺動部材70を支持することで揺動部材70の揺動を可能にするものとなっている。
【0025】
ロック機構60〜80は、錠剤カセット40がベース20から取り外されて自由状態になっているときに整列盤50及び回転軸17が軸回転するのを阻止するために、係留部材60と揺動部材70と付勢部材80とを具えている。
係留部材60は、回転軸17の外径より内径の大きな環状部材からなり、回転軸17から離れて回転軸17を一周する状態で、容器下部13(薬剤収容部)の底板部12の上面に固定して設けられて、ほぼ全体が上述したロック機構収納空間51の中に納まっている。係留部材60の内周部等には、一週に亘って、揺動部材70の係止端部72と噛合・係合しうる内歯部61が形成されている。
【0026】
揺動部材70は、上述したスリット52内で揺動支点53によって支持されて揺動しうるものであり、回転軸17の下端の近くで揺動する受動端部71と、係留部材60の内歯部61の近くで揺動する係止端部72と、付勢部材80の作用部位とを具備している。
それらのうち受動端部71と係止端部72は、揺動支点53の両側に分かれており、後者の係止端部72とその根元部分が、ロック機構収納空間51の中に納まっている。
そして、受動端部71が回転軸17の有底孔17aの中に進入している揺動状態では、係止端部72が内歯部61に係止されて、回転軸17ひいては整列盤50の軸回転を阻止するようになっている。これに対し、受動端部71が回転軸17の有底孔17aから押し出されている揺動状態では、係止端部72が内歯部61から離れて、回転軸17ひいては整列盤50の軸回転を許容するようになっている。
【0027】
さらに(図3(b)参照)、受動端部71については、回転軸17の有底孔17aの中に進入したときに孔内で最も下になる位置を有底孔17aの下端開口から測った軸方向位置Aが、回転軸17の有底孔17aの面取部19の軸方向長Bと駆動軸24の外歯部25の先端の面取部26の軸方向長Cとの和(B+C)よりも、大きくなるように、形状や位置が決められている。
このような受動端部71は、受動端部71のうち嵌入時の駆動軸24が最初に当接する部位に係る軸方向位置(A)が、両面取部19,25の軸方向長B,Cの和(B+C)よりも大きく有底孔17aの底側(図では上側)に寄っているものになっている。
【0028】
付勢部材80は(図3参照)、コイルバネ等の弾性部材からなり、回転軸17の有底孔17aの中に収納されて有底孔17aの内底(図では上端部)近くに位置しており、揺動部材70の揺動部位のうち常に有底孔17aの中に入っている部位に作用して、揺動部材70の係止端部72が回転軸17から離れて係留部材60の内歯部61へ向かって進むように揺動部材70に対する付勢を行うようになっている。この付勢は、上述のように受動端部71と係止端部72が揺動支点53の両側に分かれているので、受動端部71が回転軸17の有底孔17aに進入するように揺動部材70を付勢するものともなっている。
【0029】
この実施例1の錠剤カセット40について、その使用態様及び動作を、上述した図面を引用して説明する。
【0030】
錠剤カセット40を使用するには先ず錠剤カセット40に錠剤を補充しておかなければならないので、錠剤カセット40をベース20から取り外して自由状態にし(図1(a),図2(a),図3(a)参照)、その状態で蓋15を開けて容器上部14(薬剤収容部)へ適量の錠剤を投入し、それから蓋15を閉めて補充作業を終え、錠剤を収容した錠剤カセット40をベース20の直ぐ上に移す(図3(b)参照)。それまでの間、自由状態の錠剤カセット40では、揺動部材70の受動端部71が当接するものの無い自由状態に置かれることから、揺動部材70の係止端部72が付勢部材80にて付勢されて係留部材60の内歯部61に係止され続けるため、回転軸17も整列盤50も全く軸回転しないので、錠剤カセット40の排出口から錠剤が不所望に排出されることが無い。
【0031】
そして、錠剤カセット40を下方のベース20に向けて下げると、錠剤カセット40の嵌合枠11がベース20の嵌入部23と嵌合して水平方向・横方向における両者40,20の概略の位置合わせがなされるとともに、錠剤カセット40の回転軸17の有底孔17aの下端開口の面取部19とベース20の駆動軸24の外歯部25の上端の面取部26とが嵌合する。この面取段階での嵌合は、遊嵌状態で円滑に行われる。それから、更に錠剤カセット40を下げると、錠剤カセット40の回転軸17とベース20の駆動軸24との嵌合が次の噛合段階に進んで、錠剤カセット40の回転軸17の内歯部18の下側部分とベース20の駆動軸24の外歯部25の上側部分とが嵌合するので、両者18,24の噛合が確立される。
【0032】
この時点では、未だベース20の駆動軸24が錠剤カセット40の揺動部材70の受動端部71に到達しておらず、回転軸17及び整列盤50の軸回転がロック機構60〜80によって阻止されているので、錠剤カセット40の内歯部18とベース20の外歯部25との歯位置にずれがあると、半歯分以内でベース20の駆動軸24が嵌合推力の分力を受けて軸回転することで、ずれが吸収される。
そのため、錠剤カセット40をベース20に装着するときにも、錠剤カセット40の排出口から錠剤が不所望に排出されることが無い。
【0033】
それから、更に錠剤カセット40を下げると(図1(b),図2(b),図3(c)参照)、錠剤カセット40の回転軸17とベース20の駆動軸24との嵌合および内歯部18と外歯部25との噛合が深まるとともに、ベース20の駆動軸24が錠剤カセット40の揺動部材70の受動端部71に当接してそれを押すようになるので、その押しを受けた受動端部71が回転軸17の有底孔17aから出る向きに揺動部材70が揺動し、この揺動に随伴して揺動部材70の係止端部72が係留部材60の内歯部61から離脱するため、係留部材60と揺動部材70との掛止が解かれる。
【0034】
こうして、錠剤カセット40をベース20に装着する作業に随伴してロック機構60〜80の役目が解かれた錠剤カセット40は、回転軸17及び整列盤50がベース20の駆動軸24と共に軸回転しうる状態になる。そのため、ベース20に装着後の錠剤カセット40は、従来品(10)と同様に動作するので簡潔に述べると、ベース20が制御に従ってモータを作動させて駆動軸24を回転させる度に、それと一緒に回転軸17が軸回転し、更にそれに随伴して整列盤50が軸回転するので、それによって整列させられた錠剤が容器下部13の排出口から一錠ずつ落下する。
【0035】
[その他]
上記実施例では、錠剤カセット40の回転軸17の内歯部18とベース20の駆動軸24の外歯部25とにおける歯数が多数であったが、それらの歯数は、対応し合っていれば、少数であっても良い(例えば特許文献3参照)。
上記実施例では、回転軸17と整列盤50とが直結されていたが、回転軸17と整列盤50とが連動する別体になっていても良い(例えば特許文献4参照)。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の錠剤カセットは、装着可能な錠剤フィーダの駆動部を具備した機器であれば、既述した錠剤分包機や錠剤分割装置に限らず、瓶詰機など他の調剤機にも適用できる。
全自動の調剤機に限らず、例えば手動操作の度に一錠ずつ処理する半自動の調剤機などにも、使用することができる。
玉剤などの典型的な錠剤に限らず、カプセル剤などについても、ランダム収容して逐次排出するのに使用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10…錠剤カセット、
11…嵌合枠、12…底板部、13…容器下部(薬剤収容部)、
14…容器上部(薬剤収容部)、15…蓋、16…整列盤(ロータ)、
17…回転軸、17a…有底孔、18…内歯部、19…面取部、
20…ベース(支持部)、
21…モータ部(駆動部)、22…支承部(座部)、
23…嵌入部(座部)、24…駆動軸、25…外歯部、26…面取部、
40…錠剤カセット、
50…整列盤(ロータ)、51…ロック機構収納空間、
52…スリット(切抜)、53…揺動支点、
60…係留部材、61…内歯部(係止部)、
70…揺動部材、71…受動端部、72…係止端部、80…付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6