特許第6569916号(P6569916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

<>
  • 特許6569916-コイル電子部品 図000003
  • 特許6569916-コイル電子部品 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569916
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】コイル電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/00 20060101AFI20190826BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20190826BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   H01F27/00 R
   H01F17/04 F
   H01F17/04 A
   H01F17/00 B
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-220141(P2017-220141)
(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公開番号】特開2018-137421(P2018-137421A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2017年11月15日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0022547
(32)【優先日】2017年2月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユン、チャン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ドン ファン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヨウン ギュ
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−067214(JP,A)
【文献】 特開2008−166625(JP,A)
【文献】 特開2015−076603(JP,A)
【文献】 特開平11−054336(JP,A)
【文献】 特開2013−201375(JP,A)
【文献】 特開2017−034227(JP,A)
【文献】 実開平05−050708(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
前記第1コイルの磁性コアを共有し、前記第1コイルと同一方向または反対方向に巻き取られた第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置されるメイン基板と、
前記第1コイルと連結される第1及び第2外部電極と、
前記第2コイルと連結される第3及び第4外部電極と、を含むコイル電子部品であって、
前記第1コイルは、第1絶縁膜の一面に配置され、前記第1外部電極と連結された第1コイルパターンと、前記第1絶縁膜の他面に配置され、前記第2外部電極と連結された第2コイルパターンと、を含み、
前記第1絶縁膜は、前記第1コイルパターン及び前記第2コイルパターンのうちいずれか一つの一面上に積層されたビルドアップフィルムであり
前記第2コイルは、第2絶縁膜の一面に配置され、前記第3外部電極と連結された第3コイルパターンと、前記第2絶縁膜の他面に配置され、前記第4外部電極と連結された第4コイルパターンと、を含み、
前記第2絶縁膜は、前記第3コイルパターン及び前記第4コイルパターンのうちいずれか一つの一面上に積層されたビルドアップフィルムであり、
前記第1〜第4コイルパターンのうち前記メイン基板側に位置するコイルパターンは、前記メイン基板の上面及び下面上に突出して形成され、
前記第1絶縁膜は前記第1コイルの磁性コアを形成する第1貫通孔を含み、前記第2絶縁膜は前記第2コイルの磁性コアを形成する第2貫通孔を含む、コイル電子部品。
【請求項2】
前記第1コイルと前記第2コイルは所定間隔で離隔しており、前記第2コイルは、前記メイン基板によって前記第1コイルと物理的に断絶される、請求項1に記載のコイル電子部品。
【請求項3】
前記メイン基板の上面には前記第1コイルが配置され、前記メイン基板の下面には前記第2コイルが配置される、請求項1または2に記載のコイル電子部品。
【請求項4】
前記メイン基板は中央部に配置される第3貫通孔を含み、前記第3貫通孔の重心は、前記第1コイル及び前記第2コイルが共有する前記磁性コア上に形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項5】
前記メイン基板はPCB基板である、請求項1から4のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項6】
前記第1絶縁膜は第1ビアを含み、フィルム状からなり、
前記第1ビアは前記第1絶縁膜の上面から下面を貫通し、
前記第2絶縁膜は第2ビアを含み、フィルム状からなり、
前記第2ビアは前記第2絶縁膜の上面から下面を貫通する、請求項1から5のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項7】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は、熱硬化性の特性を有する絶縁フィルムである、請求項1から6のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項8】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜のそれぞれは、10μm以上50μm以下の厚さを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項9】
第1コイルと、
前記第1コイルの磁性コアを共有し、前記第1コイルと同一方向または反対方向に巻き取られた第2コイルと、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に配置されるメイン基板と、
前記第1コイルと連結される第1及び第2外部電極と、
前記第2コイルと連結される第3及び第4外部電極と、を含むコイル電子部品であって、
前記メイン基板は中央部に貫通孔を含み、前記貫通孔以外に、前記メイン基板の上面から下面を貫通する孔を含まず、
前記メイン基板の前記上面は前記第1コイルの下面と接し、前記メイン基板の下面は前記第2コイルの上面と接しており、
前記第1コイルは、第1コイルパターンと、第1ビアを介して前記第1コイルパターンと連結される第2コイルパターンと、を含み、
前記第2コイルは、第3コイルパターンと、第2ビアを介して前記第3コイルパターンと連結される第4コイルパターンと、を含み、
前記第1コイルは第1両端部を含み、第1絶縁膜を貫通する前記第1ビアを介して前記第1両端部を連結し、
前記第2コイルは第2両端部を含み、第2絶縁膜を貫通する前記第2ビアを介して前記第2両端部を連結し、
前記第1絶縁膜は、前記第1コイルパターン及び前記第2コイルパターンのうちいずれか一つの一面上に積層されたビルドアップフィルムであり、
前記第2絶縁膜は、前記第3コイルパターン及び前記第4コイルパターンのうちいずれか一つの一面上に積層されたビルドアップフィルムであり、
前記第1〜第4コイルパターンのうち前記メイン基板側に位置するコイルパターンは、前記メイン基板の上面及び下面上に突出して形成される、コイル電子部品。
【請求項10】
前記第1コイルの一端部は前記第1コイルパターンと連結され、他端部は前記第2コイルパターンと連結され、
前記第2コイルの一端部は前記第3コイルパターンと連結され、他端部は前記第4コイルパターンと連結される、請求項9に記載のコイル電子部品。
【請求項11】
前記第1コイルパターンと前記第2コイルパターンは前記第1絶縁膜を介在して上下に配置され、
前記第3コイルパターンと前記第4コイルパターンは前記第2絶縁膜を介在して上下に配置される、請求項10に記載のコイル電子部品。
【請求項12】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜は、熱硬化性の特性を有する絶縁フィルムである、請求項11に記載のコイル電子部品。
【請求項13】
前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜のそれぞれは、10μm以上50μm以下の厚さを有する、請求項11または12に記載のコイル電子部品。
【請求項14】
前記第1絶縁膜は、上面から下面を貫通する前記第1ビアを含み、
前記第2絶縁膜は、上面から下面を貫通する前記第2ビアを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項15】
前記第1コイル及び前記第2コイルは、磁性粒子と樹脂の複合物質により埋め込まれる、請求項9から14のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項16】
前記貫通孔の重心は、前記第1コイル及び前記第2コイルが共有する前記磁性コア上に形成される、請求項9から15のいずれか一項に記載のコイル電子部品。
【請求項17】
前記第1及び第2コイルは、前記メイン基板を中心として、前記メイン基板の上下面に互いに対称に配置される、請求項1または9に記載のコイル電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル電子部品に関し、具体的に、インダクターに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルTV、スマートフォン、ノート型パソコンなどの電子製品は高周波帯域におけるデータ送受信の機能が広く用いられており、今後もこのようなIT電子製品は1つの機器だけでなく、USB、その他の通信ポートを互いに連結して多機能化、複合化して活用される頻度が高いと予想される。
【0003】
スマートフォンの進化に伴い、高電流化、高効率化及び高性能化した小型サイズの薄型化パワーインダクターの需要が増加している。
【0004】
これにより、2520サイズの厚さ1mmの製品に代わり、2016サイズの厚さ1mmの製品が採用されており、1608サイズの厚さ0.8mmにまで製品のサイズが小型化している。
【0005】
これとともに、実装面積を減少させることができる利点を有するアレイの需要も増加している。
【0006】
上記アレイは、複数のコイル部間の結合係数もしくは相互インダクタンスによって、非結合(Non‐Coupled)もしくは結合(Coupled)インダクターの形態、または上記形態の混合形態を有することができる。
【0007】
一方、結合インダクターにおいて、漏れインダクタンス(Leakage Inductance)は出力電流リップル(output current ripple)に関し、相互インダクタンス(Mutual Inductance)はインダクター電流リップル(Inductor Current Ripple)に関する。結合インダクターが従来の非結合インダクターと同一の出力電流リップルを有するためには、結合インダクターの漏れインダクタンスが、従来の非結合インダクターのインダクタンスと同一でなければならない。そして、相互インダクタンスが増加すると結合係数(k)が増加するようになり、これにより、インダクター電流リップルを減少させることができる。
【0008】
したがって、従来の非結合インダクターと同一サイズの結合インダクターが、従来の非結合インダクターと同一の出力電流リップルを有し、且つインダクター電流リップルを減少させることができれば、実装面積が増加することなく効率を向上させることができる。
【0009】
したがって、チップサイズを維持しながらもインダクターアレイチップの効率を向上させるために、相互インダクタンスを増加させて、結合係数の大きい結合インダクターを提供することが求められている状況である。また、結合インダクターで結合係数を増加させるためには、コイル間の間隔を減少させなければならないが、上記間隔の減少には工程上の限界が存在する。したがって、上記工程上の限界を克服し、且つコイル間の結合係数を増加させるための方法が要求されている状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2008‐0102993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、複数のコイル間の結合係数が増加されたコイル電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一例によるコイル電子部品は、第1コイルと、上記第1コイルの磁性コアを共有し、上記第1コイルと同一方向または反対方向に巻き取られた第2コイルと、上記第1コイルと第2コイルとの間に配置されるメイン基板と、上記第1コイルと電気的に連結される第1外部電極と、上記第2コイルと電気的に連結される第2外部電極と、を含む。上記第1コイルは第1コイルパターンと第2コイルパターンを含み、上記第1コイルパターンと第2コイルパターンとの間には第1絶縁膜が配置される。上記第2コイルは第3コイルパターンと第4コイルパターンを含み、上記第3コイルパターンと第4コイルパターンとの間には第2絶縁膜が配置される。上記第1絶縁膜は、上記第1コイルの磁性コアである第1磁性コアを形成する貫通孔を含み、上記第2絶縁膜は、上記第2コイルの磁性コアである第2磁性コアを形成する貫通孔を含む。
【0013】
本発明の他の例によるコイル電子部品は、第1コイルと、上記第1コイルの磁性コアを共有し、上記第1コイルと同一方向または反対方向に巻き取られた第2コイルと、上記第1コイルと第2コイルとの間に配置されるメイン基板と、上記第1コイルと電気的に連結される第1外部電極と、上記第2コイルと電気的に連結される第2外部電極と、を含む。上記メイン基板は中央部に貫通孔を含み、上記貫通孔以外に、上記メイン基板の上面から下面を貫通する孔を含まない。上記メイン基板の上記上面は上記第1コイルの下面と接し、上記メイン基板の下面は上記第2コイルの上面と接する。また、上記第1及び第2コイルはそれぞれ両端部を含み、それぞれの両端部は、第1絶縁膜を貫通する第1ビア及び第2絶縁膜を貫通する第2ビアのそれぞれを介して互いに連結される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一効果として、コイル電子部品において、1つのチップ内に複数のコイルがそれぞれの磁性コアを互いに共有するように配置される際に、上記複数のコイル間の間隔を変更させることなく、且つ結合係数を増加させて効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一例によるコイル電子部品の概略的な斜視図である。
図2図1のI‐I'線に沿った概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0017】
以下では、本発明の一例によるコイル電子部品を説明するが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0018】
図1は本発明の一例によるコイル電子部品の斜視図であり、図1を参照すると、本発明の一例によるコイル電子部品100は、第1コイル11及び第2コイル12を含む。上記第1及び第2コイルは、例えば、渦巻き(spiral)状に巻き取られ、互いに同一方向に巻き取られるか、互いに反対方向に巻き取られる。上記第1及び第2コイルは互いに磁性コアを共有する。上記第1及び第2コイルはそれぞれ第1磁性コアと第2磁性コアを含み、上記第1磁性コアと上記第2磁性コアは実質的に一致する。
【0019】
また、上記第1コイル11は、第1コイルパターン111と、上記第1コイルパターンと連結され、上記第1コイルパターンの上側に配置される第2コイルパターン112と、を含む。上記第2コイル12は、第3コイルパターン121と、上記第3コイルパターンと連結され、上記第3コイルパターンの上側に配置される第4コイルパターン122と、を含む。上記第1コイルと上記第2コイルのそれぞれは、第1及び第2コイルパターンと第3及び第4コイルパターンを含み、1つのコイルを構成する。この際、第1〜第4コイルパターンは、電気伝導性に優れた金属を含んで形成され、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、またはこれらの合金で形成されることができる。
【0020】
一方、コイル部品100は、第1及び第2コイルを内部に埋め込む本体3を含むことができる。上記本体3は、厚さ方向に互いに対向する上面及び下面、長さ方向に互いに対向する第1面及び第2面、幅方向に互いに対向する第3面及び第4面を含み、実質的に六面体であることができるが、これに限定されるものではない。上記本体3は、コイル部品の外観を成すものであって、磁気特性を示す材料であれば制限されずに含まれることができる。例えば、フェライトまたは金属系軟磁性材料が充填されて形成されることができる。上記フェライトとしては、Mn‐Zn系フェライト、Ni‐Zn系フェライト、Ni‐Zn‐Cu系フェライト、Mn‐Mg系フェライト、Ba系フェライト、またはLi系フェライトなどが挙げられ、上記金属系軟磁性材料としては、Fe、Si、Cr、Al、及びNiからなる群から選択される1つ以上を含む合金が挙げられる。また、上記金属系軟磁性材料の粒径は0.1μm〜20μmであることができる。一方、上記フェライトまたは金属系軟磁性材料は、エポキシ樹脂またはポリイミド樹脂などの高分子に分散された形態で含まれ、複合体を構成することができるが、これに限定されるものではない。
【0021】
上記本体3の外部面上には、第1〜第4外部電極21、22、23、24が配置される。
【0022】
上記第1外部電極21は第1コイルの一端部と連結され、上記第2外部電極22は第1コイルの他端部と連結される。上記第1及び第2外部電極は互いに対向するように配置され、本体の幅方向に互いに対向する第3面及び第4面にそれぞれ配置される。
【0023】
同様に、上記第3外部電極23は第2コイルの一端部と連結され、上記第4外部電極24は第2コイルの他端部と連結される。上記第3及び第4外部電極は互いに対向するように配置され、本体の幅方向に互いに対向する第3面及び第4面にそれぞれ配置される。
【0024】
この場合、上記第1及び第3外部電極は入力端子として機能し、上記第2及び第4外部電極は出力端子として機能することができ、その反対の場合も可能であることは言うまでもない。
【0025】
上記第1〜第4外部電極は電気伝導性に優れた金属を含み、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、またはスズ(Sn)などの単独またはこれらの合金で形成されることができ、複数層で構成されてもよいなど、特に制限されない。
【0026】
一方、第1コイル11と第2コイル12は、それらの間に介在されたメイン基板4により分離されており、上記第1コイル内の第1コイルパターンと第2コイルパターンとの間には第1絶縁膜51が配置され、上記第2コイル内の第3コイルパターンと第4コイルパターンとの間には第2絶縁膜52が配置されることが分かる。
【0027】
上記メイン基板4は中央部に貫通孔4Hを含み、上記貫通孔は磁性物質で充填されてコアを構成するため、コイル電子部品の透磁率の向上に有利な構成である。
【0028】
また、上記貫通孔は、第1及び第2コイルの磁性コアにおいて、磁性物質が充填される領域の断面が成す形態と同一の形状を有することができる。そして、メイン基板の上面の形状は、その上面上に配置される第1コイルの下面の形状と実質的に同一であり、上記メイン基板の下面の形状は、その下面上に配置される第2コイルの上面の形状と実質的に同一であることが好ましい。
【0029】
上記貫通孔の重心は、第1コイルと第2コイルが共有する磁性コアCm上に形成される。これは、メイン基板により支持され、上記メイン基板の上面上に形成された第1コイルにより形成される第1磁性コアの重心と、同様に、メイン基板により支持され、上記メイン基板の下面上に形成された第2コイルにより形成される第2磁性コアの重心と、貫通孔の重心とが実質的に一致することを意味する。つまり、第1コイルと、その下側に配置される第2コイルとの間にメイン基板を介在させることで、第1コイルと第2コイルの配列のずれ(mismatch)を実質的に除去したものである。
【0030】
次に、図2図1のI‐I'線に沿って切断した概略的な断面図である。図2を参照して、コイル電子部品100内の上記メイン基板、第1及び第2絶縁膜をより詳細に説明する。
【0031】
先ず、第1コイルと第2コイルとの間に介在されるメイン基板4は、磁性特性を有しない材質で構成されれば十分であり、特に制限されないが、例えば、PCB基板であることができる。
【0032】
上記メイン基板の厚さは、それにより支持される第1コイル及び第2コイルの両方を支持できる程度であれば十分である。例えば、40μm以上120μm以下であることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
上記メイン基板4の上面には第1コイルが配置され、その下面には第2コイルが配置される。上記第1及び第2コイルは、上記メイン基板を中心として、メイン基板の上下面に互いに対称に配列されることができる。ここで、「対称」とは、第1及び第2コイルの材質や構造、各コイルがメイン基板の表面で占める面積や長さが実質的に互いに同一であることを意味する。
【0034】
第1コイル11と第2コイル12は、メイン基板4の厚さ分だけ、またはメイン基板の厚さより大きく互いに離隔するように配置されることができる。例えば、上記第1及び第2コイルがメイン基板の厚さ分だけ互いに離隔している場合、上記第1コイルの下面が上記メイン基板の上面と接するように配置され、上記第2コイルの上面が上記メイン基板の下面と接するように配置される。これに対し、上記第1コイルと第2コイルがメイン基板の厚さより大きく互いに離隔している場合、第1コイルの下面とメイン基板の上面との間に形成される空間が磁性物質で充填され、その磁性物質は、コイル電子部品の本体内に充填される磁性物質と同一の成分及び含量を含むことができる。
【0035】
第1コイルと第2コイルとの間の離隔空間内にメイン基板4が配置されるため、上記第1コイルから第2コイルへ流れる磁束が、上記第1コイルと第2コイルとの間の離隔空間に漏れることを防止することができる。その結果、第1コイルと第2コイルとの間の相互インダクタンス(Lm)を増加させることができ、コイル部品の結合係数(k)を増加させることができる。
【0036】
第1コイル11と第2コイル12はメイン基板4により物理的に互いに断絶される。ここで、「物理的に互いに断絶される」とは、メイン基板4が第1及び第2コイルの物理的な連結のための構成を含まないことを意味する。例えば、上記メイン基板4は、上面から下面を貫通するビアホールなどを全く含まず、上面から下面を貫通する構成として、後述の貫通孔のみを含む。
【0037】
一方、第1コイル11の第1コイルパターン111は両端部111a、111bを含む。上記第1コイルパターンの一端部111aは第1外部電極21と連結され、他端部111bは第1ビア113に連結される。同様に、第1コイル11の第2コイルパターン112は両端部112a、112bを含む。上記第2コイルパターンの一端部112aは第2外部電極22と連結され、他端部112bは第1ビア113に連結される。上記第1コイルパターン111は、第1絶縁膜51を貫通して形成される第1ビア113を介して上記第2コイルパターン112と電気的に連結されることができる。
【0038】
第2コイル12の第3コイルパターン121は両端部121a、121bを含む。上記第3コイルパターンの一端部121aは第3外部電極23と連結され、他端部121bは第2ビア123に連結される。同様に、第2コイル12の第4コイルパターン122は両端部122a、122bを含む。上記第4コイルパターンの一端部122aは第4外部電極24と連結され、他端部122bは第2ビア123に連結される。上記第3コイルパターン121は、第2絶縁膜52を貫通して形成される第2ビア123を介して上記第4コイルパターン122と電気的に連結されることができる。
【0039】
一例として、上記第1及び第3外部電極21、23は入力端子であり、上記第2及び第4外部電極22、24は出力端子であることができる。具体的に、入力端子である第1外部電極21に入力された電流は、上記第1コイルパターン、及び第1絶縁膜を貫通する第1ビアを介して、第2コイルパターンを経て出力端子である第2外部電極22に流れる。同様に、入力端子である第3外部電極23に入力された電流は、上記第3コイルパターン、及び第2絶縁膜を貫通する第2ビアを介して、第4コイルパターンを経て出力端子である第4外部電極24に流れる。
【0040】
一方、第1及び第2絶縁膜51、52はフィルム(film)状からなる。ここで、フィルム状からなるということは、薄膜の板状からなることを意味し、上面から下面に至る距離である絶縁膜の厚さが比較的薄く、絶縁膜の全体にわたって均一に構成されるものであれば制限されずに適用可能である。例えば、上記第1及び第2絶縁膜のそれぞれの厚さは10μm以上50μm以下であることが好ましく、メイン基板の厚さよりも薄く40μm以下に構成されることがより好ましく、チップ部品をさらに小型化するためには、10μm〜15μmに制御することがさらに好ましい。
【0041】
上記第1及び第2絶縁膜51、52は、絶縁特性を有する材質として、工程制御の容易性を考慮して熱硬化性樹脂で構成されることが好ましい。
【0042】
上記第1及び第2絶縁膜51、52は、ビルドアップフィルムとして、具体的にABF(Ajimoto Build‐up Film)及びその等価物から選択される何れか1つで形成されることができるが、その材質を限定する必要はなく、絶縁特性を有する材質であれば十分である。上記ABFは、ビルドアップ工程に適した材料であり、熱硬化性の特性を有する。また、上記ABFは、レーザービームによってマイクロビア(micro via)を容易に形成することができるため、第1及び第2絶縁膜にABFを適用する場合、第1及び第2ビアの形成に有利である。
【0043】
上記第1及び第2絶縁膜51、52はそれぞれ、第1ビア及び第2ビアだけでなく、中央部に別の貫通孔をさらに含むことができる。この貫通孔は、実質的に第1コイルと第2コイルが互いに共有する磁性コアを中心として構成される。また、第1ビアの貫通孔と第2ビアの貫通孔は、メイン基板の貫通孔と実質的に同一の形状、面積などを有するように構成される。
【0044】
次に、図1及び図2に示されたコイル電子部品を製造するための一例を説明する。後述する製造方法は一例示に過ぎず、当業者が工程要件及び環境を考慮してその製造方法を適宜設計変更することができることは言うまでもない。
【0045】
先ず、貫通孔を有するメイン基板を準備し、上記メイン基板の上面及び下面上にそれぞれの独立したコイルパターンを構成させる。上記コイルパターンは、図1及び図2の第1及び第3コイルパターンで構成される。上記コイルパターンを構成する方式は制限されず、例えば、開口部を有するめっきレジストの開口部に電気めっきなどの工程を適用して、電気伝導性金属を充填する方式を用いることができる。この際、上記めっきレジストは、通常、感光性レジストフィルムとして、ドライフィルムレジストなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
次に、第1絶縁膜として、例えば、10μm〜15μmのビルドアップフィルムを上記コイルパターン上に積層し、上記第1絶縁膜を貫通する孔を形成した後、その上にコイルパターンをさらにめっきすることで、追加のコイルパターンを形成する。次いで、第1絶縁膜及びその上に形成されるコイルパターンを形成する方式と同様に、メイン基板の下面に配置されたコイルパターン上に、第2絶縁膜及びその下側にコイルパターンを形成する。この際、第1絶縁膜と第2絶縁膜内に形成した孔も電気伝導性を有する物質で満たすことで、メイン基板を中心として上側と下側にそれぞれ2つのコイルが形成される。
【0047】
その後、磁性特性を有する磁性粒子‐樹脂の複合体を充填することでチップの外観を成す本体を構成し、ダイシングなどによりコイルパターンの端部を露出させ、上記端部と電気的に連結され得る外部電極を上記本体の外部面に配置する工程を行う。
【0048】
上記工程を経て製造されたコイル電子部品は、メイン基板を中心として上側と下側にそれぞれ第1及び第2コイルを形成することで、物理的に独立して形成される第1及び第2コイルを配列する際に、それぞれのコイルの磁性コアが互いにずれるなどのコイルのアラインメントずれ(Alignment Mismatch)が生じることを効果的に防止することができる。
【0049】
下記の表1は、本発明の一例によるコイル電子部品(実施例1)と従来のコイル電子部品(比較例1)の自己インダクタンス、直流抵抗(Rdc)、及び結合係数を示す。
【0050】
参考までに、従来のコイル電子部品(比較例1)は、独立した2つのコイルを準備した後、予め準備したコイルの間に磁性物質を充填させ、それぞれのコイルを上下に配置したものである。この場合、それぞれのコイルの磁性コアを一致させることが容易ではない。
【0051】
下記表1の実施例1と比較例1において、コイル電子部品は2520サイズ、厚さ1.0Tのチップサイズを有するインダクターである。実施例1は、第1コイルと第2コイルとの間のメイン基板の厚さが何れも60μmであり、本体の厚さ方向を基準として、上側から第1コイル、メイン基板、第2コイルの順に配列される。これに対し、比較例1は、第2コイル上に磁性物質を充填した後、その上に第1コイルを配置したインダクターである。
【0052】
【表1】
【0053】
上記表1から分かるように、実施例1の第1及び第2コイルの直流抵抗(Rdc)は、比較例1の第1及び第2コイルの直流抵抗と一致する。これは、コイルの直流抵抗は、第1及び第2コイルの材質などによって特定される比抵抗、コイルの面積、及びコイルの長さの3つの因子(factor)によって決定され、実施例1と比較例1で用いた第1及び第2コイルのコイルパターンが実質的に同一であるためである。
【0054】
一方、上記表1に示されたように、実施例1の第1及び第2コイルの自己インダクタンス(Ls)は、比較例1の自己インダクタンスより低い。これは、比較例1では、第1及び第2コイルの下面及び第2コイルの上面にも磁性物質が充填されていて、第1及び第2コイルの隣接する領域の磁性物質の充填率が実施例1に比べて高いためである。
【0055】
上記表1の結合係数を参照すると、結合係数は、絶対値が1に近い値である場合が、より大きいものであり、マイナス符号はネガティブ結合を意味する。この場合、表1の実施例1の結合係数は、比較例1の結合係数に比べて約70%程度増加したことが分かる。これは、第1コイルの磁性コアで発生した磁束が中間で漏れることなく第2コイルの磁性コアに伝達されたことを意味する。
【0056】
このように、実施例1によるコイル電子部品を用いる場合、結合係数を著しく改善することができるため、インダクター電流リップルを減少させることができ、全体的なDC‐DCコンバーターの効率が向上する効果を得ることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0058】
100 コイル電子部品
11 第1コイル
12 第2コイル
111 第1コイルパターン
112 第2コイルパターン
113 第1ビア
121 第3コイルパターン
122 第4コイルパターン
123 第2ビア
21、22、23、24 第1〜第4外部電極
3 本体
4 メイン基板
51 第1絶縁膜
52 第2絶縁膜
図1
図2