(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被削材に形成する穴の径を大きくするためには、切れ刃の長さも大きくする必要がある。しかしながら、切れ刃の長さを大きくすると、それに伴い切れ刃に作用する切削抵抗も大きくなる。この結果、切れ刃が欠損したり、ボデーを回転させるアクチュエータに要求される性能が高まり、製造コストの増加を招いたりするおそれがある。
【0006】
このような切削抵抗の増加に対処する方法として、複数の切れ刃により被削材を切削するものが知られている。切れ刃は、ボデーの軸の周方向に互いに間隔を空けて設けられる。当該手法によれば、1つの切れ刃に作用する切削抵抗を小さくすることが可能になる。
【0007】
しかしながら、複数の切れ刃により被削材を切削する場合、各切れ刃に対応する複数の排出溝をボデーに形成する必要がある。この結果、ボデーの断面積が小さくなり、ボデーの剛性の低下を招くおそれがある。ボデーの剛性の低下は、穴の寸法精度の低下など、種々の不都合を招く。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の排出溝を備えながらも、剛性の低下を抑制可能なボデーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るボデーは、所定の軸に沿って延伸するボデーの先端部において、軸の周方向に互いに間隔を空けて設けられ、被削材を切削する切れ刃がそれぞれ配置される第1配置部及び第2配置部と、ボデーの外周面のうち第1配置部と対応する部位に一端が形成され、ボデーの先端部側から基端部側に向かって延伸するとともに、第1配置部に配置された切れ刃により生成された切りくずを案内する第1排出溝と、ボデーの外周面のうち第2配置部と対応する部位に一端が形成され、ボデーの先端部側から基端部側に向かって延伸するとともに、第2配置部に配置された切れ刃により生成された切りくずを案内する第2排出溝と、を備える。第2排出溝は螺旋状に延伸し、その他端がボデーの外周面において第1排出溝の途中に接続されている。第1排出溝は、軸に沿って延伸している。
【0010】
ここで、第1配置部及び第2配置部に配置される切れ刃は、種々の形態のものを採用し得る。例えば、当該切れ刃は、ボデーと一体的に形成されていてもよい。この場合、ボデーのうち、切れ刃が形成されている部分が、第1配置部や第2配置部に相当する。
【0011】
また、ボデーとは別体の切削インサートに切れ刃が形成され、当該切削インサートがボデーに取り付けられる形態でもよい。この場合、ボデーのうち、切削インサートが取り付けられる部位が、第1配置部や第2配置部に相当する。
【0012】
上記構成によれば、第2配置部に配置された切れ刃により生成された切りくずは、第2排出溝により案内され、第1排出溝に進入する。当該切りくずは、第1配置部に配置された切れ刃により生成された切りくずとともに、第1排出溝により案内され、穴から排出される。
【0013】
つまり、上記構成によれば、ボデーのうち、第1排出溝と第2排出溝とが接続される部分から基端部側には第2排出溝を形成することなく、第1配置部及び第2配置部のそれぞれに配置された切れ刃により生成された切りくずを、穴の外部に排出することができる。これにより、ボデーの剛性の低下を抑制することが可能になる。
【0014】
また、ボデーの外周面において、第2排出溝の他端が、第1排出溝の途中に接続されている。これにより、第2排出溝がボデーの内部を貫通して第1排出溝の途中に接続される形態と比べて、第2排出溝における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。また、ボデーの内部に、クーラントの流路等を容易に形成することが可能になる。
【0015】
ここで、第1排出溝の全体が螺旋状に延伸する仮のボデーについて検討する。この場合、軸が水平方向に沿うように当該ボデーが配置された際に、切りくずの排出が困難になるおそれがある。つまり、ボデーの外周面で第1排出溝が螺旋状に延伸しており、軸が水平方向に沿うように当該ボデーが配置されている場合、第1排出溝によって案内される切りくずは、上下に往復しながら旋回する。これにより、第1排出溝による切りくずのスムーズな案内と、その排出が阻害されるおそれがある。
【0016】
そこで、上記構成では、第1排出溝は、軸に沿って延伸し、第2排出溝は、螺旋状に延伸している。
【0017】
この構成によれば、軸が水平方向に沿うようにボデーが配置された場合でも、切りくずは第1排出溝によって水平方向に案内される。これにより、切りくずの無為な旋回を抑制し、切りくずをスムーズに案内して穴の外部に排出することが可能になる。
【0018】
軸に直交する方向から前記ボデーを見た場合に、第1排出溝の延伸方向と軸とがなす角度は、第2排出溝の延伸方向と軸とがなす角度よりも小さくてもよい。
【0019】
この構成によれば、ボデーの基端部側に向かうにしたがって第1排出溝に漸次接近するように第2排出溝を延伸させ、第2排出溝を第1排出溝に接続させることが可能になる。
【0020】
第2排出溝は、第2配置部から軸に沿って延伸する直線部と、直線部の端部に接続され螺旋状に延伸する螺旋部と、を有していてもよい。
【0021】
この構成によれば、ボデーの外周面のうち、第1排出溝と、第2排出溝の直線部との間の部位に、比較的広いスペースを確保することが可能になる。これにより、当該スペースをガイドパッドの取り付け等に利用することが可能になる。
【0022】
ところで、被削材の穴の内部にクーラントを吐出しながら切削する場合、吐出されたクーラントは、主にボデーの先端部側から排出溝に流入する。当該クーラントを排出溝により案内し、切りくずを押し流すことにより、穴から切りくずを排出し、より深い穴を被削材に形成することが可能になる。
【0023】
複数の排出溝が形成されているボデーの場合、吐出されたクーラントは各排出溝に流入する。この場合、単一の排出溝が形成されている形態と比べて、各排出溝に流入するクーラントの流速が小さくなることがある。この結果、各排出溝が切りくずをスムーズに案内できなくなるおそれがある。特に、他の排出溝が接続される排出溝は、合流後の多量のクーラントを案内する必要があるため、当該排出溝に流入するクーラントの流速の低下は、切りくずの詰まりの原因となるおそれがある。
【0024】
そこで、第1排出溝は、第1配置部から螺旋状に延伸する螺旋部と、螺旋部の端部に接続され軸に沿って延伸する直線部と、を有していてもよい。
【0025】
この構成によれば、吐出されたクーラントの一部は、第1排出溝の螺旋部に流入する。当該螺旋部は第1配置部から螺旋状に延伸している。このため、ボデーの回転に伴い、クーラントをスムーズに第1排出溝に流入させることが可能になる。第1排出溝の螺旋部を通過したクーラントは、次に第1排出溝の直線部により案内される。この結果、第1排出溝に流入するクーラントの流速の低下を抑制しつつ、切りくずの無為な旋回を抑制することが可能になる。
【0026】
第2排出溝の他端は、第1排出溝の螺旋部に接続されていてもよい。
【0027】
この構成によれば、第2排出溝の他端が第1排出溝の直線部に接続されている形態と比べて、第2排出溝から第1排出溝に流入するクーラントの進行方向と、合流相手であるクーラント(つまり、第1排出溝の螺旋部を流れるクーラント)の進行方向と、が成す角度を小さくすることが可能になる。この結果、第2排出溝を通過したクーラントを、第1排出溝を流れるクーラントにスムーズに合流させることが可能になる。
【0028】
ところで、第2排出溝の延伸方向と軸とがなす角度を大きくすると、第2排出溝による切りくずの案内が困難になるおそれがある。その結果、切りくずが第2排出溝で詰まるおそれがある。
【0029】
そこで、第2配置部に配置される切れ刃のうち切削に寄与する部分の長さは、第1配置部に配置される切れ刃のうち切削に寄与する部分の長さよりも小さくてもよい。
【0030】
この構成によれば、所定期間において、第2配置部に配置された切れ刃により生成される切りくずの量は、第1配置部に配置された切れ刃により生成される切りくずの量よりも少なくなる。その結果、第2排出溝における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。
【0031】
第1排出溝の幅は、第2排出溝の幅よりも大きくてもよい。
【0032】
前述したように、第1排出溝のうち、第2排出溝が接続される部分よりもボデーの基端部側の部分では、第1配置部及び第2配置部のそれぞれに配置された切れ刃により生成された切りくずが案内される。このように多量の切りくずを案内する第1排出溝の幅を大きくすることにより、第1排出溝における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0035】
[第1実施形態]
図1から
図3を参照しながら、第1実施形態に係るガンドリル100の概要について説明する。ガンドリル100は、深穴加工に用いられる穴あけ工具の例示である。
図1及び
図2は、ガンドリル100を示す斜視図である。
図3は、ガンドリル100を示す側面図である。
【0036】
ガンドリル100は、ボデー1を備えている。ボデー1は、金属材料により形成された棒形状の部材である。ボデー1は、軸Cに沿って基端部1aから先端部1bまで延伸している。軸Cは略水平方向に延伸する仮想の直線であり、ボデー1の中心を貫通している。基端部1aと先端部1bとの間には、円柱面である外周面1cが延伸している。外周面1cには、第1排出溝11及び第2排出溝12が形成されている。
【0037】
尚、理解を容易にするため、各図面には、軸Cが延伸する方向をX方向とし、X方向に直交する方向をY方向、Z方向とする座標が示されている。
図4以降においても、同様の座標が示されている。
【0038】
ボデー1の基端部1aは、治具であるブッシュ6に挿通されている。ボデー1の先端部1bには、第1切削インサート31、第2切削インサート32及び第3切削インサート33が取り付けられている。後述するように、第1切削インサート31、第2切削インサート32及び第3切削インサート33には切れ刃が形成されている。
【0039】
ガンドリル100は、不図示のモータの駆動に伴い、軸Cを中心として、
図1及び
図2に矢印Rで示される方向に回転する。ボデー1の先端部1bが被削材に押し付けられると、第1切削インサート31、第2切削インサート32及び第3切削インサート33の切れ刃が被削材を切削する。これにより、被削材に円柱形状の穴が形成される。
【0040】
ガンドリル100による切削時、ボデー1の先端部1bから穴の内部に向けてクーラントが吐出される。当該クーラントは、摩擦熱により昇温した切れ刃や被削材を冷却するほか、切れ刃により生成された切りくずを押し流す。切りくずを含むクーラントは、第1排出溝11及び第2排出溝12によって基端部1a側に案内され、穴から排出される。ガンドリル100は、切りくずを排出しながら被削材を切削することにより、深さがボデー1の直径の10倍を超える穴を形成することができる。
【0041】
次に、
図4から
図10を参照しながら、ガンドリル100の構成について詳細に説明する。
図4から
図7は、ガンドリル100を示す拡大図であり、ボデー1の先端部1bの近傍を示している。
図4は、分解されたガンドリル100を示している。
図8は、ガンドリル100を示す側面図であり、先端部1bと対向するようにガンドリル100を示している。
図9は、
図3のIX−IX断面を示す断面図である。
図10は、
図3のX−X断面を示す断面図である。
【0042】
図4に示されるように、ボデー1の先端部1bには、第1チップ座21、第2チップ座22及び第3チップ座23が設けられている。第1チップ座21及び第2チップ座22は、第1配置部の例示である。第3チップ座23は、第2配置部の例示である。第1チップ座21及び第2チップ座22と、第3チップ座23とは、軸Cの周方向に互いに間隔を空けて設けられている。
【0043】
第1チップ座21、第2チップ座22及び第3チップ座23は、互いに独立した凹部である。第1チップ座21は、先端部1b側と外周面1c側が開放され、第2チップ座22及び第3チップ座23は、先端部1b側のみが開放されている。第2チップ座22は、軸Cと交差する位置に設けられている。第1チップ座21、第2チップ座22、第3チップ座23は、それぞれ、第1切削インサート31、第2切削インサート32、第3切削インサート33の外形に沿うように形成されている。
【0044】
第1チップ座21、第2チップ座22、第3チップ座23は、底面211,221,231と、側壁面212,222,232と、を有している。底面211,221,231は、矢印Rで示される方向を向くように形成されている。底面211,221には、ねじ穴213,223が形成されている。同様に、第3チップ座23の底面231にも、不図示のねじ穴が形成されている。
【0045】
図4及び
図5に示されるように、第1切削インサート31は、正対して見た場合に概ね平行四辺形を呈する上面311を有している。また、
図4に示されるように、第1切削インサート31は、上面311と、上面311と対向する端面(以下「第1下面」という。)と、を接続する周側面313を有している。上面311と周側面313との交差部には、2つの切れ刃314が形成されている。
【0046】
第1切削インサート31には、上面311から第1下面まで貫通する貫通孔316が形成されている。第1切削インサート31は、第1下面が底面211と当接し、周側面313が側壁面212と当接することにより、第1チップ座21に配置される。第1切削インサート31は、貫通孔316を挿通してねじ穴213に螺入するねじ71により、第1チップ座21に着脱自在に取り付けられる。
【0047】
図5に示されるように、第1切削インサート31が第1チップ座21に取り付けられると、1つの切れ刃314がボデー1の先端部1bから露出する。これにより、切れ刃314のうち長さL1の部分(以下「切れ刃314の切削幅L1」ともいう。)が、切削に寄与するように配置される。このように配置された切れ刃314は、軸C側から外周面1c側へ向かうにしたがって、基端部1a(
図1及び
図2参照)に近づくように傾斜している。
【0048】
図4及び
図5に示されるように、第2切削インサート32は、正対して見た場合に概ね平行四辺形を呈する上面321を有している。また、
図4に示されるように、第2切削インサート32は、上面321と、上面321と対向する端面(以下「第2下面」という。)と、を接続する周側面323を有している。上面321と周側面323との交差部には、2つの切れ刃324が形成されている。
【0049】
第2切削インサート32には、上面321から第2下面まで貫通する貫通孔326が形成されている。第2切削インサート32は、第2下面が底面221と当接し、周側面323が側壁面222と当接することにより、第2チップ座22に配置される。第2切削インサート32は、貫通孔326を挿通してねじ穴223に螺入するねじ72により、第2チップ座22に着脱自在に取り付けられる。
【0050】
図5に示されるように、第2切削インサート32が第2チップ座22に取り付けられると、1つの切れ刃324がボデー1の先端部1bから露出する。これにより、切れ刃324のうち長さL2の部分(以下「切れ刃324の切削幅L2」ともいう。)が、切削に寄与するように配置される。このように配置された切れ刃324は、軸C側から外周面1c側へ向かうにしたがって、先端部1bから突出するように傾斜している。
【0051】
図7に示されるように、第3切削インサート33は、正対して見た場合に概ね平行四辺形を呈する上面331を有している。また、
図4に示されるように、第3切削インサート33は、上面331と、上面331と対向する下面332と、を接続する周側面333を有している。上面331と周側面333との交差部には、2つの切れ刃334が形成されている。
【0052】
第3切削インサート33には、上面331から下面332まで貫通する貫通孔336が形成されている。第3切削インサート33は、下面332が底面231と当接し、周側面333が側壁面232と当接することにより、第3チップ座23に配置される。第3切削インサート33は、貫通孔336を挿通してねじ穴に螺入するねじ73により、第3チップ座23に着脱自在に取り付けられる。
【0053】
図7に示されるように、第3切削インサート33が第3チップ座23に取り付けられると、切れ刃334がボデー1の先端部1bから露出する。これにより、切れ刃334のうち長さL3の部分(以下「切れ刃334の切削幅L3」ともいう。)が、切削に寄与するように配置される。このように配置された切れ刃334は、軸C側から外周面1c側へ向かうにしたがって、基端部1aに近づくように傾斜している。第3切削インサート33の切れ刃334の切削幅L3は、第1切削インサート31の切れ刃314の切削幅L1と、第2切削インサート32の切れ刃324の切削幅L2との和(つまり、L1+L2)よりも小さい。このため、切削時に、切れ刃314,324が被削材から受ける切削抵抗の和は、切れ刃334が被削材から受ける切削抵抗よりも大きい。このような切削抵抗の差異により、ボデー1は、軸Cから離間する方向に力を受ける。
【0054】
前述したように、ボデー1の外周面1cには、第1排出溝11及び第2排出溝12が形成されている。第1排出溝11及び第2排出溝12は、ボデー1の外周面1cから軸Cに向かって窪んでいる。
図4及び
図5に示されるように、第1排出溝11の一端11aは、ボデー1の外周面1cのうち、第1チップ座21及び第2チップ座22と対応する部位に形成されている。
図7に示されるように、第2排出溝12の一端12aは、ボデー1の外周面1cのうち、第3チップ座23と対応する部位に形成されている。
【0055】
図8に示されるように、第1排出溝11は、第1壁面111と第2壁面112とによって区画形成されている。また、
図4及び
図5に示されるように、第1排出溝11は、ボデー1の先端部1b側から基端部1a側に向かって、軸Cに沿って延伸している。つまり、第1排出溝11の延伸方向と軸Cとがなす角度は略0°である。
図4に示されるように、第1チップ座21及び第2チップ座22は、第2壁面112から、第2壁面112に略垂直な方向に窪んでいる。
【0056】
図8に示されるように、第1排出溝11の幅W1(すなわち、第1壁面111と第2壁面112との間の距離の最大値)は、第1壁面111と第2壁面112とが成す角度θ1によって決定される。角度θ1は、100°以上180°未満であることが好ましい。
【0057】
第2排出溝12は、第1壁面121と第2壁面122とによって区画形成されている。第2排出溝12の幅W2(すなわち、第1壁面121と第2壁面122との間の距離の最大値)は、第1壁面121と第2壁面122とが成す角度θ21によって決定される。角度θ21は、第1排出溝11の角度θ1よりも小さい。また、第2排出溝12の幅W2は、第1排出溝11の幅W1よりも小さい。
【0058】
図6及び
図7に示されるように、第2排出溝12は、直線部12Lと、螺旋部12Sと、を有している。直線部12Lは、ボデー1の先端部1b側から基端部1a側に向かって、軸Cに沿って延伸している。すなわち、直線部12Lは直線状に延伸している。
【0059】
螺旋部12Sは、直線部12Lの端部に接続され、軸Cを中心として螺旋状に延伸している。すなわち、
図6に示される、螺旋部12Sの延伸方向と軸Cとが成す角度θ22は、0°よりも大きい。角度θ22は、0°よりも大きい種々の値に設定することができる。
【0060】
第1排出溝11が軸Cに沿って直線状に延伸するのに対し、第2排出溝12の螺旋部12Sは螺旋状に延伸する。これにより、螺旋部12Sは、ボデー1の基端部1a側に向かうにしたがって第1排出溝11に漸次接近する。そして、第2排出溝12の他端12bは、第1排出溝11の途中に接続されている。具体的には、
図4及び
図5に示されるように、第2排出溝12の他端12bが、第1壁面111側から第1排出溝11に接続されている。したがって、先端部1b近傍のボデー1の断面には第1排出溝11及び第2排出溝12が現れるのに対し(
図9参照)、第2排出溝12の他端12bよりも基端部1a側におけるボデー1の断面には、第1排出溝11のみが現れる(
図10参照)。
【0061】
図4に示されるように、ボデー1の先端部1b近傍の外周面1cには、第1ガイドパッド座41及び第2ガイドパッド座42が設けられている。詳細には、外周面1cには、第1排出溝11と、第2排出溝12の直線部12Lと、の間に比較的広いスペースが形成されており、当該スペースに第1ガイドパッド座41及び第2ガイドパッド座42が設けられている。
【0062】
第1ガイドパッド座41及び第2ガイドパッド座42は、ボデー1の外周面1cから軸Cに向かって窪んでいる。第1ガイドパッド座41及び第2ガイドパッド座42の底面には、不図示のねじ穴が形成されている。
【0063】
第1ガイドパッド51は第1ガイドパッド座41に配置され、第2ガイドパッド52は第2ガイドパッド座42に配置される。第1ガイドパッド51は、その貫通孔511を挿通してねじ穴に螺入するねじ74により、第1ガイドパッド51に着脱自在に取り付けられる。第2ガイドパッド52は、その貫通孔521を挿通してねじ穴に螺入するねじ75により、第2ガイドパッド52に着脱自在に取り付けられる。
【0064】
図10に示されるように、ボデー1の内部には流路14が形成されている。流路14は、ボデー1の基端部1a側から先端部1b側にクーラントを流す。流路14は、その途中で
図9に示される第1流路141と第2流路142とに分岐している。
【0065】
図4に示されるように、ボデー1の先端部1bには、第1開口151、第2開口152、第1誘導溝161及び第2誘導溝162が形成されている。第1開口151は第1流路141と連通し、第2開口152は第2流路142と連通している。第1誘導溝161及び第2誘導溝162は、ボデー1の基端部1a側に向かって窪んでいる。第1誘導溝161は、第1開口151と第2排出溝12とを連通させるように延伸している。第2誘導溝162は、第2開口152と第1排出溝11とを連通させるように延伸している。
【0066】
次に、ガンドリル100による深穴加工について詳細に説明する。前述したように、ガンドリル100は、軸Cを中心として、
図1及び
図2に矢印Rで示される方向に回転する。ボデー1の先端部1bが被削材に押し付けられると、第1切削インサート31、第2切削インサート32、第3切削インサート33の切れ刃314,324,334が被削材を切削し、穴を形成する。この際、上面311,321,331はすくい面として機能し、周側面313,323,333は逃げ面として機能する。
【0067】
ボデー1を被削材に押圧し、先端部1bを被削材の穴に進入させることにより、穴の深さ寸法を伸長させることができる。前述したように、ボデー1は、切削抵抗の差異により、軸Cから離間する方向に力を受ける。このため、ボデー1が穴に進入すると、第1ガイドパッド51及び第2ガイドパッド52が穴の内側面に圧接する。これにより、ボデー1の変形が抑制され、穴の寸法精度が向上する。また、ボデー1の回転に伴い、第1ガイドパッド51及び第2ガイドパッド52が穴の内側面に対して摺動する。これにより、穴の内側面の加工痕が小さくなり、当該内側面が滑らかになる。
【0068】
切れ刃314,324,334による切削時、ボデー1の内部の流路14にはクーラントが流される。当該クーラントは、第1流路141と第2流路142に分流し、第1開口151と第2開口152から穴の内部に向けて吐出される。当該クーラントは、切削時の摩擦熱により昇温した切れ刃314,324,334や、被削材を冷却する。
【0069】
第1開口151から吐出されたクーラントの一部は、
図4に矢印F1で示されるように、第1誘導溝161を介して第2排出溝12の一端12a(
図6参照)に流入する。また、第2開口152から吐出されたクーラントの一部は、矢印F2で示されるように、第2誘導溝162を介して第1排出溝11の一端11aに流入する。
【0070】
第1排出溝11の一端11aに流入したクーラントは、第1排出溝11により案内され、
図5に矢印F3で示されるように、ボデー1の基端部1a側に向かって流れる。当該クーラントは、第1切削インサート31の切れ刃314、及び、第2切削インサート32の切れ刃324により生成された切りくずを押し流す。
【0071】
第2排出溝12の一端12aに流入したクーラントは、
図6に矢印F5で示されるように、まず直線部12Lにより案内され、ボデー1の基端部1a側に向かって流れる。当該クーラントは、第3切削インサート33の切れ刃334により生成された切りくずを押し流す。
【0072】
直線部12Lを通過したクーラントは、次に螺旋部12Sに流入する。当該クーラントは、
図6に矢印F6で示されるように、螺旋部12Sにより案内され、旋回しながらボデー1の基端部1a側に向かって流れる。そして、
図5に矢印F4で示されるように、第2排出溝12の他端12bから第1排出溝11に流入する。当該クーラントは、矢印F3で示されるように流れるクーラントと合流し、さらにボデー1の基端部1a側に向かって流れる。
【0073】
次に、ボデー1による作用とその効果について説明する。
【0074】
ボデー1の構成によれば、第3切削インサート33の切れ刃334により生成された切りくずは、第2排出溝12により案内され、第1排出溝11に進入する。当該切りくずは、第1切削インサート31、第2切削インサート32の切れ刃314,324により生成された切りくずとともに、第1排出溝11により案内され、穴から排出される。
【0075】
つまり、ボデー1の構成によれば、ボデー1のうち、第1排出溝11と第2排出溝12とが接続される部分から基端部1a側には第2排出溝12を形成することなく、第1チップ座21、第2チップ座22、第3チップ座23のそれぞれに配置された切れ刃314,324,334により生成された切りくずを、穴の外部に排出することができる。これにより、ボデー1の剛性の低下を抑制することが可能になる。
【0076】
また、ボデー1の外周面1cにおいて、第2排出溝12の他端12bが、第1排出溝11の途中に接続されている。これにより、第2排出溝12がボデー1の内部を貫通して第1排出溝11の途中に接続される形態と比べて、第2排出溝12における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。また、ボデー1の内部に、クーラントの流路14等を容易に形成することが可能になる。
【0077】
さらに、第1排出溝11は、軸Cに沿って延伸し、第2排出溝12は、螺旋状に延伸している。
【0078】
この構成によれば、軸Cが水平方向に沿うようにボデー1が配置された場合でも、切りくずは第1排出溝11によって水平方向に案内される。これにより、切りくずの無為な旋回を抑制し、切りくずをスムーズに案内して穴の外部に排出することが可能になる。
【0079】
軸Cに直交する方向からボデー1を見た場合に、第1排出溝11の延伸方向と軸Cとがなす角度(つまり、0°)は、第2排出溝12の延伸方向と軸とがなす角度θ22よりも小さい。
【0080】
この構成によれば、ボデー1の基端部1a側に向かうにしたがって第1排出溝11に漸次接近するように第2排出溝12を延伸させ、第2排出溝12を第1排出溝に接続させることが可能になる。
【0081】
第2排出溝12は、第3チップ座23から軸Cに沿って延伸する直線部12Lと、直線部12Lの端部に接続され螺旋状に延伸する螺旋部12Sと、を有している。
【0082】
この構成によれば、ボデー1の外周面1cのうち、第1排出溝11と、第2排出溝12の直線部12Lとの間の部位に、比較的広いスペースを確保することが可能になる。これにより、当該スペースを第1ガイドパッド51及び第2ガイドパッド52の取り付け等に利用することが可能になる。
【0083】
第3チップ座23に配置される切れ刃334の切削幅L3は、第1チップ座21及び第2チップ座22に配置される切れ刃314,324の切削幅L1+L2よりも小さい。
【0084】
この構成によれば、所定期間において、第3チップ座23に配置された切れ刃334により生成される切りくずの量は、第1チップ座21及び第2チップ座22に配置された切れ刃314,324により生成される切りくずの量よりも少なくなる。その結果、第2排出溝12における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。
【0085】
第1排出溝11の幅W1は、第2排出溝12の幅W2よりも大きい。
【0086】
前述したように、第1排出溝11のうち、第2排出溝12が接続される部分よりもボデー1の基端部1a側の部分では、第1チップ座21、第2チップ座22、第3チップ座23のそれぞれに配置された切れ刃314,324,334により生成された切りくずが案内される。このように多量の切りくずを案内する第1排出溝11の幅W1を大きくすることにより、第1排出溝11における切りくずの詰まりを抑制することが可能になる。
【0087】
[第2実施形態]
図11から
図15を参照しながら、第2実施形態に係るガンドリル100Aについて説明する。
図11は、ガンドリル100Aを示す斜視図である。
図12から
図15は、ガンドリル100Aを示す拡大図であり、ボデー1Aの先端部1bの近傍を示している。
【0088】
ガンドリル100Aは、第1実施形態に係るガンドリル100と同様に、深穴加工に用いられる穴あけ工具の例示である。ガンドリル100Aの第1排出溝17や第2排出溝18の形状は、ガンドリル100の第1排出溝11や第2排出溝12の形状と異なる。ガンドリル100Aの構成のうち、ガンドリル100の構成と同一の機能を有するものに同一の符号を付し、説明を適宜省略する。
【0089】
ガンドリル100Aは、ボデー1Aを備えている。ボデー1Aは、金属材料により形成された棒形状の部材である。ボデー1Aは、軸Cに沿って基端部1aから先端部1bまで延伸している。軸Cは略水平方向に延伸する仮想の直線であり、ボデー1Aの中心を貫通している。基端部1aと先端部1bとの間には、円柱面である外周面1cが延伸している。
【0090】
ボデー1Aの外周面1cには、第1排出溝17及び第2排出溝18が形成されている。第1排出溝17及び第2排出溝18は、ボデー1Aの外周面1cから軸Cに向かって窪んでいる。
図12に示されるように、第1排出溝17の一端17aは、ボデー1Aの外周面1cのうち、第1チップ座21及び第2チップ座22と対応する部位に形成されている。
図14に示されるように、第2排出溝18の一端18aは、ボデー1Aの外周面1cのうち、第3チップ座23と対応する部位に形成されている。
【0091】
図11に示されるように、第1排出溝17は、第1壁面171と第2壁面172とによって区画形成されている。また、
図15に示されるように、第1排出溝17は、螺旋部17Sと、直線部17Lと、を有している。螺旋部17Sは、ボデー1Aの先端部1bから、軸Cを中心として螺旋状に延伸している。すなわち、螺旋部17Sの延伸方向と軸Cとが成す角度θ7は、0°よりも大きい。角度θ7は、0°よりも大きい種々の値に設定することができる。直線部17Lは、螺旋部17Sの端部に接続され、軸Cに沿って延伸している。すなわち、直線部17Lは直線状に延伸している。
【0092】
図13に示されるように、第2排出溝18は、直線部18Lと、螺旋部18Sと、を有している。直線部18Lは、ボデー1Aの先端部1b側から基端部1a側に向かって、軸Cに沿って延伸している。すなわち、直線部18Lは直線状に延伸している。螺旋部18Sは、直線部18Lの端部に接続され、軸Cを中心として螺旋状に延伸している。すなわち、
図13に示される、螺旋部18Sの延伸方向と軸Cとが成す角度θ8は、0°よりも大きい。
【0093】
角度θ8は、前述した角度θ7(
図15参照)よりも大きい。これにより、第2排出溝18の螺旋部18Sは、ボデー1Aの基端部1a側に向かうにしたがって、第1排出溝17の螺旋部17Sに漸次接近する。そして、第2排出溝18の他端18bは、第1排出溝17の螺旋部17Sに接続されている。具体的には、
図15に示されるように、第2排出溝18の他端18bが、第1壁面171側から第1排出溝17に接続されている。
【0094】
次に、ガンドリル100Aによる深穴加工について詳細に説明する。ガンドリル100Aは、軸Cを中心として、
図11に矢印Rで示される方向に回転する。ボデー1Aの先端部1bが被削材に押し付けられると、第1切削インサート31、第2切削インサート32、第3切削インサート33の切れ刃314,324,334が被削材を切削し、穴を形成する。
【0095】
切れ刃314,324,334による切削時、
図11に示される第1開口151と第2開口152から、被削材の穴の内部に向けてクーラントが吐出される。当該クーラントは、切削時の摩擦熱により昇温した切れ刃314,324,334や、被削材を冷却する。
【0096】
ここで、ボデー1Aの先端部1bから基端部1aに向かう方向において、第1排出溝17の螺旋部17Sが旋回する方向は、ガンドリル100Aが回転する方向(つまり、
図11に矢印Rで示される方向)と逆である。このため、第1排出溝17の一端17aは、
図15に矢印F11で示されるように、ボデー1Aの回転に伴いクーラントを迎え入れるように流入させる。
【0097】
第1排出溝17の一端17aに流入したクーラントは、矢印F12で示されるように、まず螺旋部17Sにより案内され、ボデー1Aの基端部1a側に向かって流れる。当該クーラントは、第1切削インサート31の切れ刃314、及び、第2切削インサート32の切れ刃324により生成された切りくずを押し流す。
【0098】
この他、被削材の穴の内部に向けて吐出されたクーラントは、第2排出溝18の一端18aにも流入する。当該クーラントは、
図13に矢印F9で示されるように、まず直線部18Lにより案内され、ボデー1Aの基端部1a側に向かって流れる。当該クーラントは、第3切削インサート33の切れ刃334により生成された切りくずを押し流す。
【0099】
直線部18Lを通過したクーラントは、次に螺旋部18Sに流入する。当該クーラントは、
図13に矢印F10で示されるように、螺旋部18Sにより案内され、旋回しながらボデー1Aの基端部1a側に向かって流れる。そして、
図15に矢印F13で示されるように、第2排出溝18の他端18bから第1排出溝17の螺旋部17Sに流入する。当該クーラントは、矢印F12で示されるように流れるクーラントと合流し、矢印F14で示されるように、さらにボデー1Aの基端部1a側に向かって流れる。
【0100】
次に、ボデー1Aによる作用とその効果について説明する。
【0101】
この構成によれば、吐出されたクーラントの一部は、第1排出溝17の螺旋部17Sに流入する。螺旋部17Sは第1チップ座21及び第2チップ座22から螺旋状に延伸している。このため、ボデー1Aの回転に伴い、クーラントをスムーズに第1排出溝17に流入させることが可能になる。第1排出溝17の螺旋部17Sを通過したクーラントは、次に第1排出溝17の直線部17Lにより案内される。この結果、第1排出溝17に流入するクーラントの流速の低下を抑制しつつ、切りくずの無為な旋回を抑制することが可能になる。
【0102】
第2排出溝18の他端18bは、第1排出溝17の螺旋部17Sに接続されている。
【0103】
この構成によれば、第2排出溝18の他端18bが第1排出溝17の直線部17Lに接続されている形態と比べて、第2排出溝18から第1排出溝17に流入するクーラントの進行方向と、合流相手であるクーラント(つまり、第1排出溝17の螺旋部17Sを流れるクーラント)の進行方向と、が成す角度を小さくすることが可能になる。この結果、第2排出溝18を通過したクーラントを、第1排出溝17を流れるクーラントにスムーズに合流させることが可能になる。
【0104】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されず、適宜変更することができる。
【0105】
前述したボデー1,1Aには、第1配置部として第1チップ座21及び第2チップ座22が設けられ、第2配置部として第3チップ座23が設けられている。そして、それらに着脱自在に取り付けられる第1切削インサート31、第2切削インサート32、第3切削インサート33が、それぞれ切れ刃314,324,334を有している。しかしながら、本発明に係るボデーは、このような形態に限定されない。例えば、本発明に係る切れ刃は、ボデーと一体的に形成されていてもよい。