(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Na、Nb、Ba、TiおよびMgから成るペロブスカイト型金属酸化物を含む圧電材料であって、該圧電材料に含有されるNa、Nb、Ba、TiおよびMgの各原子のうち、Na原子が占める個数割合をa、Nb原子が占める個数割合をb、Ba原子が占める個数割合をc、Ti原子が占める個数割合をd、Mg原子が占める個数割合をeとするとき、個数割合a、b、c、dおよびeが次の関係式(1)を満たすことを特徴とする圧電材料。
関係式(1)
0.430≦a≦0.460、0.433≦b≦0.479、0.040≦c≦0.070、0.0125≦d≦0.0650、0.0015≦e≦0.0092、0.9×3e≦c−d≦1.1×3e、a+b+c+d+e=1
前記圧電材料に含まれるPbおよびKの含有量の合計が、Na、Nb、Ba、TiおよびMgの含有量の合計に対し、1000原子ppm未満である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の圧電材料。
Na、Nb、Ba、TiおよびMgの各原子数の合計を1としたとき、0.0005以上0.0050以下の原子数比でMnを含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧電材料。
請求項16に記載の塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動板を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けたことを特徴とする撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、新規な組成を有するNN−BT系圧電材料であって、良好な圧電特性を有する非鉛非カリウム圧電材料を提供する。なお、本発明の圧電材料は、誘電体としての特性を利用してコンデンサ、メモリ、およびセンサ等、圧電素子以外のさまざまな用途に利用することもできる。
【0013】
本発明の圧電材料は、Na、Nb、Ba、Ti、Mgから成るペロブスカイト型金属酸化物を含む圧電材料であって、該圧電材料に含有されるNa、Nb、Ba、Ti、Mgの各原子のうち、Na原子が占める個数割合をa、Nb原子が占める個数割合をb、Ba原子が占める個数割合をc、Ti原子が占める個数割合をd、Mg原子が占める個数割合をeとするとき、a、b、c、d、eが次の関係式を満たすことを特徴とする。
関係式(1):
0.430≦a≦0.460、0.433≦b≦0.479、0.040≦c≦0.070、0.0125≦d≦0.0650、0.0015≦e≦0.0092、0.9×3e≦c−d≦1.1×3e、a+b+c+d+e=1
【0014】
本発明においてペロブスカイト型金属酸化物とは、岩波理化学辞典 第5版(岩波書店1998年2月20日発行)に記載されているような、理想的には立方晶構造であるペロブスカイト型構造(ペロフスカイト構造とも言う)を持つ金属酸化物を指す。ペロブスカイト型構造を持つ金属酸化物は一般にABO
3の化学式で表現される。ペロブスカイト型金属酸化物において、元素A、Bの原子は各々イオンの形でAサイト、Bサイトと呼ばれる単位格子の特定の位置を占める。例えば、立方晶系の単位格子であれば、A元素の原子は立方体の頂点、B元素の原子は体心に位置する。O元素(酸素原子)は酸素の陰イオンとして立方体の面心位置を占める。Aサイト元素は12配位であり、Bサイト元素は6配位である。A元素、B元素、O元素の各原子がそれぞれ単位格子の対称位置から僅かに座標シフトすると、ペロブスカイト型構造の単位格子が歪み、正方晶、菱面体晶、斜方晶といった結晶系となる。
【0015】
本発明のペロブスカイト型金属酸化物において、Aサイトに位置する金属元素はNa(原子の個数割合=a)とBa(原子の個数割合=c)であり、Bサイトに位置する金属元素はTi(原子の個数割合=d)、Nb(原子の個数割合=b)及びMg(原子の個数割合=e)である。
【0016】
本発明の圧電材料は、主成分としてNa、Ba、Nb、Ti、Mgを同時に含有することで、圧電定数を大きくすることができる。本発明の圧電材料の組成を分析した際に、原子個数としての存在比の上位6元素は、Na、Ba、Nb、Ti、Mg、Oであることが好ましい。前記圧電材料は、Na、Ba、Nb、Ti、Mg,Oを総和で98.0原子%以上含むことが好ましい。
【0017】
本発明の圧電材料は、Na、Nb、Ba、Ti、Mgから成るペロブスカイト型金属酸化物を含む圧電材料であり、該圧電材料に含有されるNa、Nb、Ba、Ti、Mgの各原子のうち、Na原子が占める個数割合をa、Nb原子が占める個数割合をb、Ba原子が占める個数割合をc、Ti原子が占める個数割合をd、Mg原子が占める個数割合をeとするとき、a、b、c、d、eが次の関係式(1)を満たすものである。
関係式(1):
0.430≦a≦0.460、0.433≦b≦0.479、0.040≦c≦0.070、0.0125≦d≦0.0650、0.0015≦e≦0.0092、0.9×3e≦c−d≦1.1×3e、a+b+c+d+e=1
【0018】
前記Na原子が占める個数割合aの範囲は、0.430≦a≦0.460である。a値が0.430以上であることで十分なキュリー温度T
Cが得られ、デバイスとして用いた場合の使用温度に余裕ができる。a値が0.460以下であることで十分な密度の焼結体を得るための焼結温度が低くなり、圧電特性に寄与しないペロブスカイト相以外の異相が形成されにくくなるため、結果として圧電定数d
31が大きくなる。より好ましいaの範囲は、0.440≦a≦0.450である。
【0019】
前記Nb原子が占める個数割合bの範囲は、0.433≦b≦0.479である。
b値が0.433以上であることで、比誘電率ε
r、及び電気機械結合係数k
31を押し上げる効果がある正方晶相と斜方晶相との相転移温度T
toが−100℃より高くなって室温より大きく低下しないことにより、室温での比誘電率ε
r、及び電気機械結合係数k
31が大きくなるため、圧電定数d
31が大きくなる。また、b値が0.479以下であることで、正方晶相と斜方晶相との相転移温度T
toが120℃以下となり、やはり室温と相転移温度T
toとの温度差が開き過ぎないことにより、室温での比誘電率ε
r、及び電気機械結合係数k
31が大きくなるため、圧電定数d
31が大きくなる。より好ましいbの範囲は、0.436≦b≦0.477である。
【0020】
前記Ba原子が占める個数割合cの範囲は、0.040≦c≦0.070である。c値が0.040以上であることで、正方晶相と斜方晶相との相転移温度T
toが100℃以下となり、室温と相転移温度T
toとが開き過ぎないことにより、室温での比誘電率ε
r、及び電気機械結合係数k
31が大きくなるため、圧電定数d
31が大きくなる。また、c値が0.070以下であると、正方晶相と斜方晶相との相転移温度T
toが−100℃より高くなり、やはり室温と相転移温度T
toとが開き過ぎないことにより、室温での比誘電率ε
r、及び電気機械結合係数k
31が大きくなるため、圧電定数d
31が大きくなる。より好ましいcの範囲は、0.050≦c≦0.060である。
【0021】
前記Ti原子が占める個数割合dの範囲は、0.0125≦d≦0.0650である。d値が0.0125以上であると、十分な焼結体を得るために必要な焼結温度が低くなり、圧電特性に寄与しないペロブスカイト相以外の異相の発生が抑制されるため、圧電定数d
31が大きくなる。また、d値が0.0650以下であると、キュリー温度T
cが高くなり、デバイスとして使用する際、使用温度範囲に余裕ができるため好ましい。より好ましいdの範囲は、0.0150≦d≦0.0600である。
【0022】
前記Mg原子が占める個数割合eの範囲は、0.0015≦e≦0.0092である。e値が0.0015以上であることで本発明の特徴である圧電定数の向上効果が得られる。また、e値が0.0092以下であることで結晶粒が十分に成長し、大きな圧電定数が得られる。より好ましいeの範囲は、0.0033≦e≦0.0084である。
【0023】
各構成原子の個数割合a、b、c、d、eが、それぞれ0.430≦a≦0.460、0.433≦b≦0.479、0.040≦c≦0.070、0.0125≦d≦0.0650、0.0015≦e≦0.0092の範囲内にあり、かつ、0.9×3e≦c−d≦1.1×3e、a+b+c+d+e=1の関係を同時に満たすことで、Ba(個数割合c)に対するTi(個数割合d)の欠損分c−dを2価のMg(個数割合e)が3eで補填することができ、金属元素Ba、Mg、NbがBaMg
1/3Nb
2/3O
3として表わされる化合物としてNN−BTに固溶すると、このBaMg
1/3Nb
2/3O
3成分が粒子径(粒径)の成長を抑制することで粒子内のドメインが細かくなってドメイン密度が上がり、電気機械結合係数k
31及び比誘電率ε
rが大きくなる。その結果、電気機械結合係数k
31と比誘電率ε
rの関数である圧電定数d
31が大きくなる。
【0024】
さらに、前記個数割合a、bおよびeは、0.9×2e≦b−a≦1.1×2eの関係であることが好ましい。Nb(個数割合b)に対するNa(個数割合a)の欠損分b−aを2価のMg(個数割合e)が2eで補填することができるため、目的のペロブスカイト相以外の異相の析出を低減できる。このことにより、より大きな圧電定数d
31が得られる。
【0025】
そして、各構成原子の個数割合a、b、c、d、eが0.97≦(a+c)/(b+d+e)≦1.03の関係を満たすことが好ましい。(a+c)/(b+d+e)が0.97以上であることで目的のペロブスカイト相以外の異相の出現が抑制され、1.03以下であることで十分な焼結密度と抵抗率が得られる。
【0026】
圧電材料は上記元素に加えさらにMnを含むことができる。このときMnの含有量はNa、Nb、Ba、TiおよびMgの各原子数の合計を1としたとき、原子数比で0.0050以下であることが好ましく、より好ましくは0.0005以上0.0050以下、さらに好ましくは0.0006以上0.0030以下である。Mnは圧電材料の抵抗率を高くし、分極時の電圧が漏れなく印加されるようにするという効果を有し、適量の添加によりこの効果が発現する。分極時の電圧が漏れなく印加されることにより、圧電材料が潜在的に有する圧電素子としての性能を十分に発揮することができる。これは、例えば、圧電定数d
31や機械的品質係数Qmの増大、誘電正接の大幅低減等につながる。
【0027】
本発明の圧電材料の室温における電気抵抗率は200GΩcm以上(2×10
11Ωcm以上)であることが好ましい。
室温における電気抵抗率は、圧電材料に電極を付与した上で、例えば10Vの直流電圧を印加して、例えば20秒後のリーク電流値から計算することができる。
【0028】
本発明の圧電材料の室温における誘電正接は、0.02以下であることが好ましい。室温での誘電正接が0.02以下であると、本発明の圧電材料を用いた圧電素子の駆動時に圧電素子の発熱を、例えば50℃以下に、抑制することができる。より好ましい、室温における誘電正接は0.016以下である。室温における圧電材料の誘電正接は、圧電材料に電極を付与した上で、市販のインピーダンスアナライザを用いて、例えば周波数が1kHzにおいて計測することができる。
【0029】
本発明の圧電材料に含まれるPbおよびKの含有量の合計は、Na、Nb、Ba、Ti、Mgの含有量の合計に対し、1000原子ppm未満であると好ましい。
より好ましくは、Pbが500原子ppm未満であり、Kが500原子ppm未満である。更に好ましくは、PbおよびKの合計が500原子ppm未満である。
本発明の圧電材料に含まれるPbの量を抑制すると、圧電材料を水中や土壌中に放置した際に環境中に放出されるPbの影響を縮小することができる。
また、本発明の圧電材料に含まれるKの量を抑制すると、圧電材料の耐湿性および高速振動時の効率が高まる。
【0030】
前記圧電材料を構成する結晶粒の粒径(平均粒径)は、が1.0μm以上4.0μm以下であると、高い圧電定数と加工強度の両立の観点で好ましい。平均粒径を前記範囲にすることで、十分な圧電特性を確保しつつ、切断加工及び研磨加工時の機械的強度を得ることができる。本明細書において、粒径とは円相当径を意味し、平均粒径とは平均円相当径を意味する。円相当径とは、顕微鏡観察法において一般に言われる「投影面積円相当径」を表し、結晶粒の投影面積と同面積を有する真円の直径を表す。
【0031】
(圧電材料の製造方法)
本発明の圧電材料は、その構成成分と組成比、結晶構造に特徴がある。製造方法には特段の制限は無く、一般的な無機酸化物の合成手段で本発明の圧電材料を得ることができる。
【0032】
以下、好ましい製造方法の一例について説明する。
本発明の圧電材料の一態様である圧電セラミックスを得るためには、まず焼成前の成形体を作製する必要がある。ここで、セラミックスとは、基本成分が金属酸化物であり、熱処理によって焼き固められた結晶粒子の凝集体(バルク体とも言う)、いわゆる多結晶を指す。焼結後に加工されたものもセラミックスに含まれる。なお、前記成形体とは原料粉末を成形した固形物である。
【0033】
ニオブ酸ナトリウムを成分として含む結晶を焼結する際、Naが蒸発もしくは拡散して、焼結後の試料組成はNbに対してNa不足となることがある。つまりAサイトに欠陥が発生する。しかし、原料粉末秤量時に過剰のNa原料を秤量すると、焼結体の絶縁性が低下することがある。よって、加えられたMnの一部がAサイトを占有して欠陥を補うことが好ましい。また、Nbに対してNaが5原子%を超えない範囲で不足となるように意図的に原料を秤量してもよい。
【0034】
用いる原料粉末は純度の高いものの方が好ましい。原料粉末として用いることができる金属化合物の粉体としては、Mn化合物、Na化合物、Nb化合物、Ba化合物、Ti化合物およびMg化合物をあげることができる。
【0035】
使用可能なMn化合物としては、酸化マンガン、酢酸マンガンなどが挙げられる。使用可能なNa化合物としては、炭酸ナトリウム、ニオブ酸ナトリウムなどが挙げられる。使用可能なNb化合物としては、酸化ニオブ、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸マグネシウム酸バリウムなどが挙げられる。使用可能なBa化合物としては、酸化バリウム、炭酸バリウム、蓚酸バリウム、酢酸バリウム、硝酸バリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸マグネシウム酸バリウムなどが挙げられる。使用可能なTi化合物としては、酸化チタン、チタン酸バリウムなどが挙げられる。使用可能なMg化合物としては、酸化マグネシウム、ニオブ酸マグネシウム酸バリウムなどが挙げられる。
【0036】
また、予めBa化合物と、Mg化合物と、Nb化合物とを混合、焼成することで、主成分がBaMg
1/3Nb
2/3O
3粉末、あるいはBaMg
1/3Nb
2/3O
3単相粉末であるような原料粉末を使って製造すると、粒子成長が抑制され、その結果、粒子内部の圧電特性に寄与するドメインが微細化、高密度化することで、リラクサ効果として電気機械結合係数k
31、比誘電率ε
rが増大し圧電定数d
31がより大きくなる。
【0037】
成形方法としては、一軸加圧加工、冷間静水圧加工、温間静水圧加工、鋳込成形と押し出し成形を挙げることができる。成形体を作製する際には、造粒粉を用いることが好ましい。造粒粉を用いた成形体を焼結すると、焼結体の結晶粒の大きさの分布が均一になり易いという利点がある。
【0038】
圧電材料の原料粉を造粒する方法は特に限定されないが、造粒粉の粒径をより均一にできるという観点において、最も好ましい造粒方法はスプレードライ法である。
造粒する際に使用可能なバインダーの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、アクリル系樹脂が挙げられる。添加するバインダーの量は、前記圧電材料の原料粉に対して1重量部から10重量部が好ましく、成形体の密度が上がるという観点において2重量部から5重量部がより好ましい。
【0039】
前記成形体の焼結方法は特に限定されない。
焼結手段の例としては、電気炉による焼結、ガス炉による焼結、通電加熱法、マイクロ波焼結法、ミリ波焼結法、HIP(熱間等方圧プレス)などが挙げられる。電気炉およびガスによる焼結は、連続炉であってもバッチ炉であっても構わない。
【0040】
前記焼結手段における焼結温度は特に限定されないが、各化合物が反応し、充分に結晶成長する温度であることが好ましい。好ましい焼結温度としては、圧電材料の粒径を1.0μm以上4.0μm以下の範囲にするという観点で、1050℃以上1400℃以下であり、より好ましくは1100℃以上1300℃以下である。上記温度範囲で焼結した圧電材料は良好な絶縁性と圧電定数を示す。焼結処理により得られる圧電材料の特性を再現よく安定させるためには、焼結温度を上記範囲内で一定にして1時間以上48時間以下の焼結処理を行うとよい。また、二段階焼結法などの焼結方法を用いてもよいが、生産性を考慮すると急激な温度変化のない方法が好ましい。
【0041】
圧電材料の密度(測定密度)は例えばアルキメデス法で測定することができる。本発明では、圧電材料の組成と格子定数から求められる理論密度(ρ
calc.)に対する測定密度(ρ
meas.)の割合、つまり相対密度(ρ
calc./ρ
meas.)が92%以上100%以下、より好ましくは92%以上99.9%以下であると圧電材料として十分に高いと言える。
【0042】
焼結処理により得られた圧電材料を研磨加工した後に、キュリー温度以上の温度で熱処理することが好ましい。機械的に研磨加工されると、圧電材料の内部には残留応力が発生するが、キュリー温度以上で熱処理することにより、残留応力が緩和し、圧電材料の圧電特性がさらに良好になる。熱処理の具体的な時間は特に限定されないが、例えば、300℃以上500℃以下の温度を1時間以上24時間以下保持するような熱処理が好ましい。本発明は圧電材料に係るものであるが、セラミックス以外の粉末、単結晶、膜、スラリーなどのいずれの形態でも構わない。
【0043】
本発明の圧電材料を基板上に作成された膜として利用する際、前記圧電材料の厚みは200nm以上10μm以下、より好ましくは300nm以上3μm以下であることが望ましい。圧電材料の膜厚を200nm以上10μm以下とすることで圧電素子として十分な電気機械変換機能が得られるからである。
【0044】
前記膜の積層方法は特に制限されない。例えば、化学溶液堆積法(CSD法)、ゾルゲル法、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)、スパッタリング法、パルスレーザデポジション法(PLD法)、水熱合成法、エアロゾルデポジション法(AD法)などが挙げられる。このうち、もっとも好ましい積層方法は化学溶液堆積法またはスパッタリング法である。化学溶液堆積法またはスパッタリング法は、容易に成膜面積を大面積化できる。本発明の圧電材料に用いる基板は(001)面、(110)面または(111)面で切断・研磨された単結晶基板であることが好ましい。特定の結晶面で切断・研磨された単結晶基板を用いることで、その基板表面に設けられた圧電材料膜も同一方位に強く配向させることができる。
【0045】
(圧電素子)
次に、本発明の圧電素子について説明する。
図1は本発明の圧電素子の構成の一形態を示す概略図である。本発明の圧電素子は、第一の電極1、圧電材料部2および第二の電極3を少なくとも有する圧電素子であって、前記圧電材料部2を構成する圧電材料が本発明の圧電材料である。
【0046】
本発明に係る圧電材料は、それに対して少なくとも第一の電極と第二の電極を設けて圧電素子に構成することにより、その圧電特性を評価できる。前記第一の電極および第二の電極は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。
【0047】
前記第一の電極および第二の電極は、これらのうちの1種からなるものであっても、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また、第一の電極と第二の電極が、それぞれ異なる材料であっても良い。
前記第一の電極と第二の電極の製造方法は限定されず、金属ペーストの焼き付けにより形成しても良いし、スパッタ、蒸着法などにより形成してもよい。また第一の電極および第二の電極とも所望の形状にパターニングして用いても良い。
【0048】
(分極)
本発明の圧電素子は一定方向に分極軸が揃っているものであると、より好ましい。分極軸が一定方向に揃っていることで前記圧電素子の圧電定数は大きくなる。
本発明の圧電素子の分極方法は特に限定されない。分極処理は大気中で行ってもよいし、シリコーンオイル中で行ってもよい。分極をする際の温度は60℃から170℃の温度が好ましいが、素子を構成する圧電材料の組成によって最適な条件は多少異なる。分極処理をするために印加する電界は800V/mmから10.0kV/mmが好ましい。
【0049】
(共振−反共振法)
本発明の圧電素子の圧電定数および機械的品質係数は、市販のインピーダンスアナライザを用いて得られる共振周波数及び反共振周波数の測定結果から、電子情報技術産業協会規格(JEITA EM−4501)に基づいて、計算により求めることができる。以下、この方法を共振−反共振法と呼ぶ。
【0050】
(積層型の圧電素子)
次に、本発明の圧電素子の一実施形態である積層型の圧電素子(積層圧電素子)について説明する。
本発明の積層圧電素子は、本発明の圧電素子において、圧電材料部内に少なくとも1つの層状の内部電極を備え、本発明の圧電材料からなる層状の圧電材料と層状の少なくとも1つの内部電極とが交互に積層された積層構造を有する。
【0051】
図2は本発明の積層圧電素子の構成の各種形態を示す断面概略図である。
図2に示す積層圧電素子は、圧電材料層54、504と、第一の電極51、501、第二の電極53、503および内部電極55、505(505aおよび505b)を含む電極層とで構成されており、これらが交互に積層された積層圧電素子であって、前記圧電材料層54、504が上記の圧電材料よりなる。電極層は、内部電極や第一および第二の電極以外に外部電極(
図2(b)の506a、506b)等を含んでいても良い。
【0052】
図2(a)は2層の圧電材料層54と1層の内部電極55が交互に積層され、その積層構造体を第一の電極51と第二の電極53で狭持した積層圧電素子の構成を示している。
図2(b)のように圧電材料層と内部電極の数を増やしてもよく、その層数に限定はない。
図2(b)の積層圧電素子は、9層の圧電材料層504と8層の内部電極505(505aおよび505b)が交互に積層されている。その積層構造体は第一の電極501と第二の電極503で圧電材料層を挟持した構成であり、交互に形成された内部電極を短絡するための外部電極506aおよび外部電極506bを有する。
【0053】
内部電極55、505(505aおよび505b)および外部電極506a、506b、第一の電極51、501および第二の電極53、503の大きさや形状は必ずしも圧電材料層54、504と同一である必要はなく、また複数に分割されていてもよい。
【0054】
内部電極55、505(505aおよび505b)、外部電極506a、506b、第一の電極51、501および第二の電極53、503は、厚み5nmから10μm程度の導電層よりなる。その材料は特に限定されず、圧電素子に通常用いられているものであればよい。例えば、Ti、Pt、Ta、Ir、Sr、In、Sn、Au、Al、Fe、Cr、Ni、Pd、Ag、Cuなどの金属およびこれらの化合物を挙げることができる。内部電極55、505(505aおよび505b)および外部電極506a、506bは、これらのうちの1種からなるものであっても2種以上の混合物あるいは合金であってもよく、あるいはこれらの2種以上を積層してなるものであってもよい。また複数の電極が、それぞれ異なる材料であってもよい。
【0055】
内部電極55、505(505aおよび505b)はAgとPdを含み、前記Agの含有重量M1と前記Pdの含有重量M2との重量比M1/M2が1.5≦M1/M2≦9.0であることが好ましい。前記重量比M1/M2が1.5未満であると内部電極の耐熱性は高いがPd成分の増加により電極コストが増大するため望ましくない。一方で、前記重量比M1/M2が9.0よりも大きくなると、内部電極の耐熱性不足により、内部電極が島状になり面内で不均一になるので望ましくない。耐熱性とコストの観点から、より好ましくは、2.0≦M1/M2≦5.0である。
【0056】
電極材料のコストを重視する場合には、内部電極55、505(505aおよび505b)はNiおよびCuの少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。内部電極55、505にNiおよびCuの少なくともいずれか1種を用いる場合、本発明の積層圧電素子は還元雰囲気で焼成することが好ましい。
【0057】
図2(b)に示すように、内部電極505(505aおよび505b)を含む複数の電極は、駆動電圧の位相をそろえる目的で互いに短絡させても良い。例えば、内部電極505aと第一の電極501を外部電極506aで短絡させても良い。内部電極505bと第二の電極503を外部電極506bで短絡させても良い。このとき、内部電極505aと内部電極505bは交互に配置されていることが好ましい。また電極どうしの短絡の形態は限定されない。積層圧電素子の側面に短絡のための電極や配線を設けてもよいし、圧電材料層504を貫通するスルーホールを設け、その内側に導電材料を設けて電極どうしを短絡させてもよい。
【0058】
(積層圧電素子の製造方法)
本発明に係る積層型の圧電素子の製造方法は、特に限定されないが、以下にその作製方法を例示する。まず、少なくともMn、Na、Nb、Ba、TiおよびMgを含んだ金属化合物の粉体を分散させてスラリーを得る工程(A)と、前記スラリーを基材上に配置して成形体を得る工程(B)を実行する。その後に、前記成形体に電極を形成する工程(C)と前記電極が形成された成形体を焼結して、積層圧電素子を得る工程(D)を実行する。
【0059】
(電子機器)
本発明に係る電子機器は、前記本発明の圧電素子(または積層圧電素子)を備えたことを特徴とする。
【0060】
(電子機器の例1:液体吐出ヘッド、液体吐出装置)
図3(a)(b)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた液体吐出ヘッドと該液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の構成の一形態を模式的に示す概略図である。液体吐出ヘッドは、前記圧電素子または前記積層型の圧電素子を配した振動部を備えた液室と、前記液室と連通する吐出口を少なくとも有する。液体吐出装置は、被転写体の載置部と前記液体吐出ヘッドを備える。但し、各部材の形状や配置は
図3(a)(b)の例に限定されない。
【0061】
図3(a)に示すように、本発明の電子機器である液体吐出ヘッドは、本発明の圧電素子101を有する。圧電素子101は、第一の電極1011、圧電材料1012、第二の電極1013を少なくとも有する。圧電材料1012および第二の電極1013は、液体吐出ヘッドの吐出力を高める目的でパターニングされていてもよい。
【0062】
液体吐出ヘッドは、吐出口105、個別液室103、個別液室103と吐出口105をつなぐ連通孔106、液室隔壁104、共通液室107、振動板102、圧電素子101を有する。一般に、圧電材料1012は個別液室103の形状に沿った形状となる。
【0063】
本発明の電子機器の一例である液体吐出ヘッドに電気信号を入力し駆動させると、振動板102が圧電素子101の変形によって上下に振動し、個別液室103に格納された液体に圧力が加わる。その結果、吐出口105より液体が吐出される。液体吐出ヘッドは、種々の媒体へ印字を行うプリンタへの組み込みや電子デバイスの製造に用いることができる。
【0064】
次に前記液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置について説明する。
この液体吐出装置も本発明の電子機器の一例と言える。
図3(b)には、インクジェット記録装置としての液体吐出装置を例示した。
図3(b)の液体吐出装置は、外装部896の内部に各機構が組み込まれている。自動給送部897は被転写体としての記録紙を装置本体内へ自動給送する機能を有する。自動給送部897から送られた記録紙は、搬送部899によって所定の記録位置(図番無し)へ導かれ、記録動作の後に、再度搬送部899によって記録位置から排出部898へ導かれる。搬送部899が、被転写体の載置部である。前記液体吐出装置は、加えて、記録位置に搬送された記録紙に記録を行う記録部891と、記録部891に対する回復処理を行う回復部890を有する。記録部891には、前記液体吐出ヘッドを収納し、レール上を往復移送させるキャリッジ892が備えられている。
【0065】
このような液体吐出装置において、外部コンピュータからの指示に従って、キャリッジ892が前記液体吐出ヘッドを移送し、本発明の圧電素子に対する電圧印加に応じてインクが液体吐出ヘッドの吐出口105より放出されることで、印字が行われる。
上記例は、プリンタとして例示したが、本発明の液体吐出装置は、ファクシミリや複合機、複写機などのインクジェット記録装置等のプリンティング装置の他、産業用液体吐出装置、対象物に対する描画装置として使用することができる。加えてユーザーは用途に応じて所望の被転写体を選択することができる。
【0066】
(電子機器の例2:振動波モータ、光学機器)
図4(a)〜(e)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた振動波モータと該振動波モータを用いた光学機器の構成を模式的に示す概略図である。振動波モータは、前記圧電素子または前記積層圧電素子を配した振動体と、前記振動体と接触する移動体とを少なくとも有する。光学機器は、駆動部に前記振動波モータを備える。但し、各部材の形状や配置は
図4(a)〜(e)の例に限定されない。
【0067】
本発明の圧電素子が単板からなる振動波モータを、
図4(a)に示す。振動波モータは、振動体201、振動体201の摺動面に不図示の加圧バネによる加圧力で接触している移動体202(ロータとも言う)、移動体202と一体的に設けられた出力軸203を有する。前記振動体201は、金属の弾性体リング2011、本発明の圧電素子2012、圧電素子2012を弾性体リング2011に接着する有機系接着剤2013(エポキシ系、シアノアクリレート系など)で構成される。
【0068】
圧電素子に位相がπ/2の奇数倍異なる二相の交番電圧を印加すると、振動体201に屈曲進行波が発生し、振動体201の摺動面上の各点が楕円運動をする。ロータ202は振動体201から摩擦力を受け、屈曲進行波とは逆の方向へ回転する。不図示の被駆動体は、出力軸203と接合されており、ロータ202の回転力で駆動される。
【0069】
次に、積層構造を有した本発明の圧電素子(積層圧電素子)を含む振動波モータを
図4(b)に例示する。振動体204は、筒状の金属弾性体2041に挟まれた積層圧電素子2042よりなる。積層圧電素子2042は、前記積層型の素子であり、積層外面に第一の電極と第二の電極、積層内面に内部電極を有する。金属弾性体2041はボルトによって積層圧電素子2042を挟持固定し、振動体204を構成する。
【0070】
積層圧電素子2042に位相の異なる交番電圧を印加することにより、振動体204は互いに直交する2つの振動を励起する。この二つの振動は合成され、振動体204の先端部を駆動するための円振動を形成する。なお、振動体204の上部にはくびれた周溝が形成され、駆動のための振動の変位を大きくしている。
【0071】
移動体205(ロータとも言う)は、加圧用のバネ206により振動体204と加圧接触し、駆動のための摩擦力を得る。移動体205はベアリングによって回転可能に支持されている。
【0072】
次に前記振動波モータを用いた光学機器について説明する。
この光学機器も本発明の電子機器の一例と言える。
図4(c)(d)(e)には、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒としての光学機器を例示した。
図4(c)は当該交換レンズ鏡筒の構造の要部を示す断面図、
図4(d)は
図4(c)に示す構造の一部(固定筒の外周側の構造)をより詳細に示す拡大断面図、
図4(e)は当該交換レンズ鏡筒の全体構成の概略を示す分解斜視図である。
【0073】
カメラとの着脱マウント711には、固定筒712と、直進案内筒713と、前群レンズ701を保持した前群鏡筒714とが固定されている。これらは交換レンズ鏡筒の固定部材である。
【0074】
直進案内筒713には、フォーカスレンズ702用の光軸方向の直進案内溝713aが形成されている。フォーカスレンズ702を保持した後群鏡筒716には、径方向外方に突出するカムローラ717a、717bが軸ビス718により固定されており、このカムローラ717aがこの直進案内溝713aに嵌まっている。
【0075】
直進案内筒713の内周には、カム環715が回動自在に嵌まっている。直進案内筒713とカム環715とは、カム環715に固定されたローラ719が、直進案内筒713の周溝713bに嵌まることで、光軸方向への相対移動が規制されている。このカム環715には、フォーカスレンズ702用のカム溝715aが形成されていて、カム溝715aには、前述のカムローラ717bが同時に嵌まっている。
【0076】
固定筒712の外周側にはボールレース727により固定筒712に対して定位置回転可能に保持された回転伝達環720が配置されている。回転伝達環720には、回転伝達環720から放射状に延びた軸720fにコロ722が回転自由に保持されており、このコロ722の径大部722aがマニュアルフォーカス環724のマウント側端面724bと接触している。またコロ722の径小部722bは接合部材729と接触している。コロ722は回転伝達環720の外周に等間隔に6つ配置されており、それぞれのコロが上記の関係で構成されている。
【0077】
マニュアルフォーカス環724の内径部には低摩擦シート(ワッシャ部材)733が配置され、この低摩擦シートが固定筒712のマウント側端面712aとマニュアルフォーカス環724の前側端面724aとの間に挟持されている。また、低摩擦シート733の外径面はリング状とされマニュアルフォーカス環724の内径724cと径嵌合しており、更にマニュアルフォーカス環724の内径724cは固定筒712の外径部712bと径嵌合している。低摩擦シート733は、マニュアルフォーカス環724が固定筒712に対して光軸周りに相対回転する構成の回転環機構における摩擦を軽減する役割を果たす。
【0078】
なお、コロ722の径大部722aとマニュアルフォーカス環のマウント側端面724bとは、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、加圧力が付与された状態で接触している。また同じく、波ワッシャ726が振動波モータ725をレンズ前方に押圧する力により、コロ722の径小部722bと接合部材729の間も適度な加圧力が付与された状態で接触している。波ワッシャ726は、固定筒712に対してバヨネット結合したワッシャ732によりマウント方向への移動を規制されている。波ワッシャ726が発生するバネ力(付勢力)は、振動波モータ725、更にはコロ722に伝わり、マニュアルフォーカス環724が固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられる力ともなる。つまり、マニュアルフォーカス環724は、低摩擦シート733を介して固定筒712のマウント側端面712aに押し付けられた状態で組み込まれている。
【0079】
従って、不図示の制御部により振動波モータ725のロータ725cが固定筒712に固定されたステータ725bに対して回転駆動されると、接合部材729がコロ722の径小部722bと摩擦接触しているため、コロ722が軸720f中心周りに回転する。コロ722が軸720f回りに回転すると、結果として回転伝達環720が光軸周りに回転する。
【0080】
回転伝達環720には、フォーカスキー728が2つ互いに対向する位置に取り付けられており、フォーカスキー728がカム環715の先端に設けられた切り欠き部715bと嵌合している。従って、回転伝達環720が光軸周りに回転すると、その回転力がフォーカスキー728を介してカム環715に伝達される。カム環が光軸周りに回転させられると、カムローラ717aと直進案内溝713aにより回転規制された後群鏡筒716が、カムローラ717bによってカム環715のカム溝715aに沿って進退する。これにより、フォーカスレンズ702が駆動され、フォーカス動作が行われる。
【0081】
上記例は、前記振動波モータを用いた光学機器として、一眼レフカメラの交換レンズ鏡筒について説明したが、コンパクトカメラ、電子スチルカメラ等、カメラの種類を問わず、駆動部に振動波モータを有する光学機器に前記振動波モータを適用することができる。
【0082】
(電子機器の例3:振動装置、撮像装置)
図5(a)〜(d)は、本発明の電子機器の一例として、本発明の圧電素子を備えた振動装置と該振動装置を用いた撮像装置の構成を模式的に示す概略図である。
図5(a)(b)に示した振動装置は、本発明の圧電素子を振動板に配した振動体を少なくとも有しており、振動板の表面に付着した塵埃を除去する機能を有する塵埃除去装置である。
図5(c)(d)に示した撮像装置は、前記塵埃除去装置と撮像素子ユニットとを少なくとも有する撮像装置であって、前記塵埃除去装置の振動板を前記撮像素子ユニットの受光面側に設けている。
但し、各部材の形状や配置は
図5(a)〜(d)の例に限定されない。
【0083】
図5(a)(b)は、塵埃除去装置としての電子機器の一実施態様を示す概略図である。塵埃除去装置310は板状の圧電素子330と振動板320より構成される。
図5(a)は塵埃除去装置310を圧電素子330が設けられた側から見た図であり、
図5(b)は
図5(a)とは反対側から見た図である。圧電素子330は、本発明の積層型の圧電素子であっても良い。振動板320の材質は限定されないが、塵埃除去装置310を光学デバイスに用いる場合には透光性材料や光反射性材料を振動板320として用いることができ、振動板の透光部や光反射部が塵埃除去の対象となる。
【0084】
圧電素子330は、圧電材料331と第一の電極332と第二の電極333より構成され、第一の電極332と第二の電極333は圧電材料331の板面に対向して配置されている。積層型の圧電素子の場合、圧電材料331は圧電材料層と内部電極の交互構造をとり、内部電極を交互に第一の電極332または第二の電極333と短絡させることにより、圧電材料の層ごとに位相の異なる駆動波形を与える事が出来る。
図5(a)においては、第一の電極332が第二の電極333のある側に回りこんでいる様子が示されている。
【0085】
圧電素子330に外部より交番電圧を印加すると、圧電素子330と振動板320との間に応力が発生し、振動板に面外振動を発生させる。塵埃除去装置310は、この振動板320の面外振動により振動板320の表面に付着した塵埃等の異物を除去する装置である。面外振動とは、振動板を光軸方向つまり振動板の厚さ方向に変位させる弾性振動である。
【0086】
次に、前記塵埃除去装置を用いた撮像装置について説明する。この撮像装置も本発明の電子機器の一例と言える。
図5(c)(d)には、デジタル一眼レフカメラとしての撮像装置を例示した。
【0087】
図5(c)は、カメラ本体601を被写体側より見た正面側斜視図であって、撮影レンズユニットを外した状態を示す。
図5(d)は、塵埃除去装置と撮像ユニット400の周辺構造について説明するためのカメラ内部の概略構成を示す分解斜視図である。
【0088】
図5(c)に示すカメラ本体601内には、撮影レンズを通過した撮影光束が導かれるミラーボックス605が設けられており、ミラーボックス605内にメインミラー(クイックリターンミラー)606が配設されている。メインミラー606は、撮影光束をペンタダハミラー(不図示)の方向へ導くために撮影光軸に対して45°の角度に保持される状態と、撮像素子(不図示)の方向へ導くために撮影光束から退避した位置に保持される状態とを取り得る。
【0089】
図5(d)において、カメラ本体の骨格となる本体シャーシ300の被写体側には、被写体側から順にミラーボックス605、シャッタユニット200が配設される。また、本体シャーシ300の撮影者側には、撮像ユニット400が配設される。前記撮像ユニット400は、塵埃除去装置の振動板と撮像素子ユニットで構成される。また、塵埃除去装置の振動板は前記撮像素子ユニットの受光面と同一軸上に順に設けてある。撮像ユニット400は、撮影レンズユニットが取り付けられる基準となるマウント部602(
図5(c))の取付面に設置され、撮像素子ユニットの撮像面が撮像レンズユニットと所定の距離を空けて、且つ平行になるように調整されている。
【0090】
ここでは、撮像装置の例としてデジタル一眼レフカメラについて説明したが、例えばミラーボックス605を備えていないミラーレス型のデジタル一眼カメラのような撮影レンズユニット交換式カメラであってもよい。また、撮影レンズユニット交換式のビデオカメラや、複写機、ファクシミリ、スキャナ等の各種の撮像装置もしくは撮像装置を備える電子電気機器のうち、特に光学部品の表面に付着する塵埃の除去が必要な機器にも適用することができる。
【0091】
ここまで、本発明の電子機器の例として、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、振動波モータ、光学機器、振動装置、撮像装置の説明をしたが、電子機器の種類はこれらに限定されない。圧電素子から電力を取り出すことで、正圧電効果に起因する電気信号の検知やエネルギーの取り出しを行う電子機器や、圧電素子に電力を入力することで、逆圧電効果による変位を利用する電子機器の全般に、本発明の圧電素子は適用できる。例えば、圧電音響部品や該圧電音響部品を有する音声再生機器、音声録音機器、携帯電話、情報端末等も、本発明の電子機器に含まれる。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明の圧電材料、圧電素子および電子機器をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0093】
A.圧電材料の製造と圧電素子の作製
(実施例1)
Na、Ba、Nb、Ti、Mgを含有し、更にMnを含有する圧電セラミックスを製造した。
原料には、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO
3、純度99.5%以上)、チタン酸バリウム(BaTiO
3、純度99.8%以上)、炭酸バリウム(BaCO
3、純度99.9%以上)、酸化マグネシウム(MgO、純度99.9%)、酸化ニオブ(Nb
2O
5、純度99.9%)、酸化マンガン(Mn
3O
4、純度99.9%、モル量としてはMnO
4/3として計算)の粉末を用いた。
【0094】
仕込み組成として、ニオブ酸ナトリウムを0.880モル、チタン酸バリウムを0.080モル、炭酸バリウムを0.040モル、酸化マグネシウムを0.013モル、酸化ニオブを0.013モルの比になるように原料を秤量して混合した。混合した粉末を1000から1100℃の空気中で、5時間かけて仮焼した。仮焼粉を粉砕し、Na、Nb、Ba、TiおよびMgの合計原子数を1としたときに、Mnの原子数が0.0010となるように酸化マンガンを加え、更にバインダーを加えて造粒した。造粒粉を金型内に充填し、圧縮することで成形体を作製した。得られた成形体を空気中、最高温度1250℃で、8時間焼成することにより焼結体を得た。
【0095】
エックス線回折により、試料はほぼペロブスカイト構造の単相であることが確認できた。焼結体の組成を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)で評価したところ、Na、Ba、Nb、Ti、Mg、Mn、Oの原子数の和が成分原子の99.8%以上を占め、Na、Ba、Nb、Ti、Mgのいずれの原子も目的組成(a=0.440、b=0.453、c=0.060、d=0.040、e=0.0067)とほぼ同じ比率で焼結体に含まれていることが分かった。なお、焼結体に含まれるPbは100ppm未満、Kは200ppm未満であった。
【0096】
焼結体の表面を光学顕微鏡で観察し粒径を評価したところ、平均粒径は2.8μmであった。なお、結晶粒の観察には、主に偏光顕微鏡を用いたが、小さな結晶粒の粒径を特定する際には、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。これらの観察結果より円相当径を各結晶粒について算出し、その個数平均(すなわち平均円相当径)を平均粒径とした。
アルキメデス法により求めた圧電セラミックスの密度は理論密度の97%以上であった。なお一般に、アルキメデス法により求めた密度が理論密度の95%以上であれば、十分に結晶化が進んでいると判断できる。
【0097】
次に、上で製造した圧電セラミックスを用いて圧電素子を作製した。
まず、焼き上がりの円盤状の圧電セラミックスを厚さが約0.5mmになるように研磨した。そして、この研磨処理に起因する圧電セラミックス内部の応力と圧電セラミックス表面の有機成分を除去するために、400℃の空気雰囲気で30分間の熱処理を施した。熱処理後の圧電セラミックスの表裏両面にDCスパッタリング法で厚さ400nmの金(Au)電極を形成した。なお、電極と圧電セラミックスの間には、密着層として30nm厚のチタン(Ti)を成膜した。
【0098】
この電極付きの圧電セラミックスを特性評価に好適な、長さ10mm×幅2.5mm×厚さ0.5mmの矩形板状に切断加工して、の圧電素子を得た。なお、圧電セラミックスの機械強度は、研磨加工や切断加工を問題なく行える程度に高かった。
圧電素子の10V印加時の抵抗率は270ΩGcmであった。一般に、抵抗率が200ΩGcm以上であれば、分極処理時の電圧が十分に印加されて圧電特性を効率良く発揮できるといわれている。
【0099】
(実施例2〜22、比較例1〜25)
表1に示す目的組成になるように原料粉末を秤量して混合したことを除き、実施例1と同様にして圧電セラミックスを製造し、圧電素子を作製した。
【0100】
Na原子の個数割合aをNb原子の個数割合bから差し引いた値であるb−aの値がMg原子の個数割合eの2.2倍より大きい比較例16は、エックス線回折による評価からペロブスカイト相以外の異相の析出がみられた。また、b−aの値がMg原子の個数割合eの1.8倍より小さい比較例25でも同様に異相の析出がみられた。
【0101】
【表1】
【0102】
表2に、実施例1−22及び比較例1−25で製造した圧電セラミックスの相対密度、平均粒径、及び抵抗率を示す。
【0103】
また、
図6には、焼結体の表面を光学顕微鏡で観察した画像の例を示す。
図6(a)は実施例1、
図6(b)は比較例7で製造した圧電セラミックスの表面を示す画像である。これらの画像に基づき、実施例1の圧電セラミックスの平均粒径2.8μm及び比較例7の圧電セラミックスの平均粒径5.4μmという値が得られている。
【0104】
表2に示されるように、実施例1〜22で製造された圧電セラミックスの平均粒径はいずれも1.0μm〜4.0μmの範囲内であった。これに対し、比較例1〜6、14、15、24で製造された圧電セラミックスの平均粒径1.0μm未満であり、比較例7〜13、16〜23、25で製造された圧電セラミックスの平均粒径は4.0μmより大きかった。
【0105】
表2に示されるように、実施例1〜22で製造された圧電セラミックスの密度は、いずれも理論密度の95%以上であった。これに対し、比較例1〜6、13〜15、19、22、25で製造された圧電セラミックスの密度は、理論密度の95%より小さかった。
【0106】
表2に示されるように、圧電セラミックスに直流10Vを印加した時の抵抗率は、実施例1〜22では210ΩGcm以上であった。これに対し、比較例1〜15、17〜19、22、25で製造された圧電セラミックスの抵抗率は200ΩGcm未満と小さく、分極時に十分な電圧が印加できていないことが示唆された。
【0107】
【表2】
【0108】
B.圧電特性の評価
実施例1〜22及び比較例1−25で作製した圧電素子を用いて、それらの圧電素子を構成する圧電セラミックスの圧電特性を評価した。まず、評価対象となる圧電素子の分極軸を一定方向に揃える目的で、各圧電素子に対する分極処理を実施した。具体的には、圧電素子を150℃のオイル中に浸漬した状態で、7.0kVの電圧を30分間与えることにより、分極処理を行った。そうして分極処理を行った各圧電素子の圧電セラミックスについて、圧電定数d
31、機械的品質係数Q
m、誘電正接を、共振−反共振法により評価した。また、キュリー温度T
cは、静電容量が極大となる温度を測定し、その温度をキュリー温度T
cとした。
【0109】
表3に、実施例1〜22及び比較例1〜25で作製した圧電素子について、圧電セラミックスの圧電定数d
31、比誘電率ε
r、機械的品質係数Q
m、誘電損失、及びキュリー温度T
cを測定(評価)した結果を示す。
【0110】
圧電定数d
31は、実施例1〜22では実施例16の68pm/Vが最も小さく、他はそれ以上であった。これに対し、比較例1〜25では比較例18、19の60pm/Vが最も大きく、他はそれ以下であった。これらの多くは、表2で示した抵抗率が低いことから、分極時に印加した電圧の一部が漏れてしまい、十分に圧電素子に印加されずに圧電性能を引き出すことができなかったと考えられる。
【0111】
比誘電率ε
rは、実施例1〜22では実施例14の1190が最も小さく、他はそれ以上であった。実施例1〜22で製造した圧電セラミックスは、表2に示される相対密度と粒径の値からわかるように、目標の理論密度を満たしながら、且つ小粒径であることで、大きな誘電率が得られたと考えられる。これに対し、比較例1〜25、特に比較例8〜12、16〜25では、相対密度が小さいか、あるいは粒径の粗大化により、誘電率が小さくなってしまったと考えられる。
【0112】
これらの効果は
図7−1、
図7−2に示す静電容量の温度および周波数依存性にも表れている。
図7−1は比較例8のグラフであるが、測定周波数を1kHz、10kHz、100kHzと変えても、静電容量が最大になる温度(すなわちキュリー温度)に変化が無いことが分かる。これに対し、
図7−2の実施例1では、測定周波数を1kHz、10kHz、100kHzと上げていくにつれて、キュリー温度T
cが高温側へシフトしている。この現象は圧電体のリラクサ効果の特徴を表わしているものであり、本実施例もリラクサ効果によって圧電特性が向上したと考えられる。
【0113】
機械的品質係数Q
mは、実施例2,14,17の310を最大に、他は小さい値であった。比較例では表2に示す粒径が大きいものでは機械的品質係数Q
mが500を超える値を示すものもあった。
【0114】
BaとTiの個数割合c、dからなるc−dの値がMgの個数割合eの2.7倍より小さい比較例16〜25では、機械的品質係数Q
mは500以上と大きいが、圧電定数d
31は比較例18、19の60pm/Vを最高に、それ以下である。一般に機械的品質係数Q
mと圧電定数d
31とはトレードオフの関係にあると言われていることから、実施例は機械的品質係数Q
mを犠牲にして圧電定数d
31を向上させることができたとも言える。これまでは、機械的品質係数Q
mを意図的に増大することはできていたが、圧電定数d
31を意図的に向上することはできていなかった。本実施例はこのトレードオフの関係を使用して意図的に圧電定数d
31を向上させるものである。
【0115】
キュリー温度T
cは、実施例1〜22では、実施例19の113℃が最低値であり、他の実施例はそれ以上の温度であり、実施例11では270℃であった。これに対し、比較例1〜25では、a値とc値の大きい比較例13で100℃を下回る93℃であり、電子デバイスとして使用する際、使用温度や実装温度等で温度制約が厳しくなることが想定される。
【0116】
【表3】
【0117】
C.積層圧電素子の作製
(実施例23)
以下の要領で積層型の本発明の圧電素子を作成した。
実施例1におけるスプレードライ造粒前の900℃仮焼粉にPVBバインダーを加えて混合した後、ドクターブレード法によりシート形成して厚み50μmのグリーンシートを得た。
上記グリーンシートに内部電極用の導電ペーストを印刷した。導電ペーストには、Ag70%−Pd30%合金(Ag/Pd=2.33)ペーストを用いた。導電ペーストを塗布したグリーンシートを9枚積層して、その積層体を1200℃で5時間焼成して焼結体を得た。前記焼結体を10mm×2.5mmの大きさに切断した後にその側面を研磨し、内部電極を交互に短絡させる一対の外部電極(第一の電極と第二の電極)をAuスパッタにより形成し、
図2(b)のような積層圧電素子を作製した。
得られた積層圧電素子の断面を観察したところ、Ag−Pdよりなる内部電極と圧電材料層とが交互に形成されていた。
【0118】
積層圧電素子に分極処理を施した。具体的には、試料をオイルバス中で150℃に加熱し、第一の電極と第二の電極間に7kV/mmの電圧を30分間印加し、電圧を印加したままで室温まで冷却した。
得られた積層圧電素子の圧電特性を評価したところ、十分な絶縁性を有しており、実施例1の圧電材料と同等の圧電定数、キュリー温度、誘電正接を得ることができた。
【0119】
D.圧電素子を用いた電子機器の作製
(実施例24)
実施例1および実施例23の圧電素子を用いて、
図3(a)に示される液体吐出ヘッドを作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が確認された。
この液体吐出ヘッドを用いて、
図3(b)に示される液体吐出装置を作製した。入力した電気信号に追随したインクの吐出が記録媒体上に確認された。
【0120】
(実施例25)
実施例1および実施例23の圧電素子を用いて、
図4(a)または
図4(b)に示される振動波モータを作製した。交流電圧の印加に応じたモータの回転が確認された。
この振動波モータを用いて、
図4(c)(d)(e)に示される光学機器を作製した。交流電圧の印加に応じたオートフォーカス動作が確認された。
【0121】
(実施例26)
実施例1および実施例23の圧電素子を用いて、
図5(a)(b)に示される塵埃除去装置を作製した。プラスチック製ビーズを散布し、交流電圧を印加したところ、良好な塵埃除去率が確認された。
この塵埃除去装置を用いて、
図5(c)(d)に示される撮像装置を作製した。この撮像装置を通電動作させたところ、撮像ユニットの表面の塵を良好に除去し、塵欠陥の無い画像が得られた。