特許第6569950号(P6569950)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569950
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】コンクリート壁切断装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/08 20060101AFI20190826BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20190826BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20190826BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B28D1/08
   E04G23/08 D
   E01D19/10
   E01D24/00
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-85321(P2016-85321)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-193126(P2017-193126A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】516121833
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌克
(72)【発明者】
【氏名】高島 通男
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】平田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】日野 和徳
(72)【発明者】
【氏名】荒井 春美
【審査官】 豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−093651(JP,A)
【文献】 実公昭37−006302(JP,Y1)
【文献】 実開昭62−166005(JP,U)
【文献】 特開平3−49863(JP,A)
【文献】 特開平7−227833(JP,A)
【文献】 特開2009−241161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/08
E01D 19/10
E01D 24/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて所定の長さ毎に切断して解体撤去する際に用いるコンクリート壁切断装置であって、
横方向回転駆動機構及び縦方向回転駆動機構を備えることにより、横方向切断用ワイヤソーと縦方向切断用ワイヤソーとを無端状に同時に回転駆動させて、既設のコンクリート壁を、横方向及び縦方向に並行して切断することができるようになっており、
前記横方向回転駆動機構及び前記縦方向回転駆動機構は、駆動部の駆動によって、既設のコンクリート壁と垂直又は略垂直な方向に配置された回転駆動軸を中心に、同期して回転可能な横方向駆動プーリ又は縦方向駆動プーリを各々備えており、
前記横方向回転駆動機構は、前記横方向駆動プーリと、前記駆動回転軸と平行又は略平行な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の横方向テンションプーリを含む横方向テンション部と、既設のコンクリート壁を貫通して形成された一対のワイヤ挿通孔に巻回溝を対向させて各々配置される、横方向送出し又は引出しガイドプーリと、これらのプーリに前記横方向切断用ワイヤソーが無端状に巻回されるように案内する複数の横方向ガイドプーリとを含んで構成されており、
前記縦方向回転駆動機構は、前記縦方向駆動プーリと、前記駆動回転軸と垂直又は略垂直な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の縦方向テンションプーリを含む縦方向テンション部と、既設のコンクリート壁を貫通して形成された一対の前記ワイヤ挿通孔の一方に巻回溝を対向させて配置される、縦方向送出し又は引出しガイドプーリと、これらのプーリに前記縦方向切断用ワイヤソーが無端状に巻回されるように案内する複数の縦方向ガイドプーリとを含んで構成されているコンクリート壁切断装置。
【請求項2】
前記横方向送出し又は引出しガイドプーリは、回転軸の向きが可変となるように、回転連結部を介して回転可能に取り付けられている請求項1記載のコンクリート壁切断装置。
【請求項3】
前記横方向駆動プーリ及び前記縦方向駆動プーリは、何れか一方のみが回動可能なように前記駆動部に接続されている請求項1又は2項記載のコンクリート壁切断装置。
【請求項4】
前記縦方向駆動プーリは、既設のコンクリート壁に対して前記横方向駆動プーリの内側に配置されている請求項1〜3のいずれか1項記載のコンクリート壁切断装置。
【請求項5】
前記既設のコンクリート壁は、コンクリート床版の側縁部に沿って設置されたコンクリート壁高欄である請求項1〜4のいずれか1項記載のコンクリート壁切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁切断装置に関し、特に、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて切断して解体撤去する際に用いるコンクリート壁切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄は、一般に現場打ちコンクリートによって、コンクリート床版の側縁部に沿って形成されており、主として走行車両の運転者の視線を誘導したり、走行車両が道路の外側に逸脱するのを防止したりする機能を備えている。
【0003】
コンクリート製の壁高欄や、その他の既設のコンクリート壁は、構築された後、長年の経年劣化によって、品質が低下しているものもあることから、このような経年劣化した既設のコンクリート壁を、解体して撤去したり、改修したりする必要に迫られている。
【0004】
既設のコンクリート構造物を解体する方法として、ブレーカー等の破砕用の重機を用いて破砕し、撤去する方法が一般に知られているが、破砕用の重機を用いた方法では、破砕時の振動や衝撃によって、周囲の環境に影響を及ぼす恐れがあることから、近年、既設のコンクリート構造物を、ワイヤソーを用いて切断することで解体して撤去する工法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ワイヤソーを用いてコンクリート構造物を解体する工法では、例えばスチールワイヤーに切削用のダイヤモンドビースを数珠状に押し通して、一定の間隔で固着することにより形成された公知のワイヤソーを、切断対象となるコンクリート構造物に無端状に巻き付けて、高速回転させることによって、コンクリート構造物を切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−93651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の解体工法は、コンクリート構造物として、地中に埋設して構築されたいわゆるボックスカルバート形の地下構造物を、ワイヤソーを用いて高能率で解体できるようにするものであるが、解体されるコンクリート構造物が、延設方向に相当の長さに亘って連続して形成されているコンクリート壁である場合には、このような延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、効率良く解体できるようにするための新たな技術の開発が望まれている。
【0008】
特に、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁が、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄である場合には、道路を供用したままの状態で、且つ周囲の環境に極力影響を及ぼさない状態で、コンクリート壁を効率良く解体して行く必要がある。例えば、道路を供用したままの状態で施工できるように、ワイヤソーによる切断作業の作業領域は、幅員方向の側縁部に沿ってできるだけ狭い幅で設けることが望ましく、多量の水が排出されないようにすることが望ましい。また、一台の切断装置によってコンクリート壁を縦横に並行して同時に切断できるようにして、作業の効率化を図ると共に、工期を短縮できるようにすることが望ましい。
【0009】
本発明は、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて縦横に並行して同時に切断すること可能にして、効率良く解体することができると共に、特にコンクリート壁が、コンクリート壁高欄であって道路を供用したままの状態で切断作業を行う必要がある場合に、作業領域を狭い幅に留めて作業を行うことのできるコンクリート壁切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて所定の長さ毎に切断して解体撤去する際に用いるコンクリート壁切断装置であって、横方向回転駆動機構及び縦方向回転駆動機構を備えることにより、横方向切断用ワイヤソーと縦方向切断用ワイヤソーとを無端状に同時に回転駆動させて、既設のコンクリート壁を、横方向及び縦方向に並行して切断することができるようになっており、前記横方向回転駆動機構及び前記縦方向回転駆動機構は、駆動部の駆動によって、既設のコンクリート壁と垂直又は略垂直な方向に配置された回転駆動軸を中心に、同期して回転可能な横方向駆動プーリ又は縦方向駆動プーリを各々備えており、前記横方向回転駆動機構は、前記横方向駆動プーリと、前記駆動回転軸と平行又は略平行な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の横方向テンションプーリを含む横方向テンション部と、既設のコンクリート壁を貫通して形成された一対のワイヤ挿通孔に巻回溝を対向させて各々配置される、横方向送出し又は引出しガイドプーリと、これらのプーリに前記横方向切断用ワイヤソーが無端状に巻回されるように案内する複数の横方向ガイドプーリとを含んで構成されており、前記縦方向回転駆動機構は、前記縦方向駆動プーリと、前記駆動回転軸と垂直又は略垂直な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の縦方向テンションプーリを含む縦方向テンション部と、既設のコンクリート壁を貫通して形成された一対の前記ワイヤ挿通孔の一方に巻回溝を対向させて配置される、縦方向送出し又は引出しガイドプーリと、これらのプーリに前記縦方向切断用ワイヤソーが無端状に巻回されるように案内する複数の縦方向ガイドプーリとを含んで構成されているコンクリート壁切断装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のコンクリート壁切断装置は、前記横方向送出し又は引出しガイドプーリが、回転軸の向きが可変となるように、回転連結部を介して回転可能に取り付けられていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のコンクリート壁切断装置は、前記横方向駆動プーリ及び前記縦方向駆動プーリが、何れか一方のみが回動可能なように前記駆動部に接続されていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のコンクリート壁切断装置は、前記縦方向駆動プーリが、既設のコンクリート壁に対して前記横方向駆動プーリの内側に配置されていることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明のコンクリート壁切断装置は、前記既設のコンクリート壁が、コンクリート床版の側縁部に沿って設置されたコンクリート壁高欄であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンクリート壁切断装置によれば、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて縦横に並行して同時に切断すること可能にして、効率良く解体することができると共に、特にコンクリート壁が、コンクリート壁高欄であって道路を供用したままの状態で切断作業を行う必要がある場合に、作業領域を狭い幅に留めて作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁切断装置の構成を説明する略示平面図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁切断装置におけるワイヤソー及びプーリの配置を説明する略示斜視図である。
図3】縦方向回転駆動機構の構成を説明する、図1のA−Aに沿った略示断面図である。
図4】縦方向回転駆動機構の構成を説明する、(a)は図3のB−Bに沿った断面図、(b)は図3のC−Cに沿った略示断面図である。
図5】縦方向回転駆動機構におけるワイヤソー及びプーリの配置を説明する略斜視図である。
図6】横方向回転駆動機構の構成を説明する略示正面図である。
図7】横方向回転駆動機構におけるワイヤソー及びプーリの配置を説明する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁切断装置10は、図1に示すように、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄50を改修する工事において、このようなコンクリート製の壁高欄50を解体して撤去する際の切断装置として用いられる。すなわち、例えば首都高速道路等においては、コンクリート製の壁高欄50は、構築された後、50年以上が経過して経年劣化により老朽化しているものもあることから、このような老朽化したコンクリート製の壁高欄50を解体撤去して、好ましくはプレキャストコンクリート製の壁高欄と置き替えて改修する際に、経年劣化した既設の壁高欄50を、所定の長さ毎に切断して効率良く撤去できるようにするための装置として、本実施形態のコンクリート壁切断装置10が用いられる。
【0018】
また、本実施形態では、コンクリート壁切断装置10を用いることで、ブレーカー等の破砕用の重機を用いることなく、作業領域を狭い幅に留めて、車線を規制しながら道路を供用したままの状態でも、切断作業をコンパクトに行うことができるようなっており、且つ壁高欄50を、高さ方向に沿った縦方向H、及び底部に沿った横方向(延設方向)Lに、L字形状に縦横に並行して同時に切断することを可能にして(図2参照)、作業の効率化や工期の短縮化を図ることができるようになっている。
【0019】
そして、本実施形態のコンクリート壁切断装置10は、図1及び図2に示すように、延設方向(横方向L)に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、経年劣化により老朽化したコンクリート製の壁高欄50を、ワイヤソー21,31を用いて所定の長さ毎に切断して解体撤去する際に用いる切断装置であって、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30を備えることにより、横方向切断用ワイヤソー21と縦方向切断用ワイヤソー31とを無端状に同時に回転駆動させて、既設の壁高欄50を、横方向L及び縦方向Hに並行して切断することができるようになっている。横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30は、駆動部40の駆動によって、既設のコンクリート壁である壁高欄50と垂直又は略垂直な方向(幅方向W)に配置された回転駆動軸41を中心に、同期して回転可能な横方向駆動プーリ22又は縦方向駆動プーリ32を各々備えている。
【0020】
横方向回転駆動機構20は、横方向駆動プーリ22と、駆動回転軸41と平行又は略平行な回転軸23cを中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の横方向テンションプーリ23a,23bを含む横方向テンション部23と、既設のコンクリート製の壁高欄50を貫通して形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bに巻回溝24aを対向させて各々配置される、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24と、これらのプーリ23a,23b,24に横方向切断用ワイヤソー21が無端状に巻回されるように案内する複数の横方向ガイドプーリ25a,25b,25c,25d,25eとを含んで構成されている。
【0021】
縦方向回転駆動機構30は、縦方向駆動プーリ32と、駆動回転軸41と垂直又は略垂直な回転軸33cを中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の縦方向テンションプーリ33a,33bを含む縦方向テンション部33と、既設のコンクリート製の壁高欄50を貫通して形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bの一方(本実施形態では、ワイヤ挿通孔51b)に巻回溝34aを対向させて配置される、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34と、これらのプーリ33a,33b,34に縦方向切断用ワイヤソー31が無端状に巻回されるように案内する複数の縦方向ガイドプーリ35a,35b,35c,35d,35eとを含んで構成されている。
【0022】
本実施形態では、延設方向(横方向L)に連続して設置されている既設のコンクリート壁である壁高欄50は、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って、現場打ちコンクリートによって形成された、コンクリート製(鉄筋コンクリート製)の壁体状の高欄となっている。壁高欄50は、高さ(縦方向Hの長さ)が1000mm程度、幅(幅方向Wの長さ)が150mm程度の大きさの、縦長の矩形断面形状を備える壁本体部50aと、壁本体部50aの下部から内側(道路側)に突出して形成された、高さが350mm程度、幅が200mm程度の大きさの、矩形断面形状を備える地覆部50bとが、一体として形成された形状を備えている。壁高欄50は、例えば10m〜数10m程度の所定の延長の施工スパン毎に、コンクリートを打設すると共に、伸縮目地を介在させてこれらの複数の施工スパンの壁体を連設することにより、例えば数百m〜数キロmの相当の延長に亘って、延設方向に連続して設置されている。
【0023】
このようなコンクリート製の壁高欄50を解体して撤去する際に、例えば道路橋や高架道路等において、ブレーカー等の破砕用の重機を用いて破砕するのは、工事が大規模になると共に、車両交通に多大な影響を及ぼすことになるため困難である。本実施形態では、例えば1〜3m程度の所定の長さ(横方向Lの長さ)毎に、コンクリート壁切断装置10によって、ワイヤソー21,31を用いて壁高欄50を切断することで、作業領域をコンパクトに維持しながら、道路を供用したままの状態で、壁高欄50の解体撤去作業を効率良く行うことができるようなっている。
【0024】
また、本実施形態では、例えば1〜3m程度の所定の長さ毎にワイヤソー21,31を用いて壁高欄50を切断するために、壁高欄50の地覆部50bによる底部を幅方向Wに貫通して、例えば2m程度のピッチ(横方向Lの長さ)で、公知のコンクリート穿孔装置を用いて、複数のワイヤ挿通孔51が形成されている。これらの複数のワイヤ挿通孔51のうち、例えば隣接する一対のワイヤ挿通孔51a,51bを選択して、ワイヤソー21,31を挿通すると共に、コンクリート壁切断装置10の横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30によって、無端状に高速回転させることにより、壁高欄50を、高さ方向に沿った縦方向H及び底部に沿った横方向Lに、縦横に並行して、L字形状に同時に切断してゆくことができるようになっている(図2参照)。
【0025】
図3図5に示すように、本実施形態のコンクリート壁切断装置10を構成する縦方向回転駆動機構30は、縦方向駆動プーリ32と、少なくとも一対の縦方向テンションプーリ33a,33bを含む縦方向テンション部33と、巻回溝34aをワイヤ挿通孔51bに対向させて配置される縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34と、複数の縦方向ガイドプーリ35a,35b,35c,35dとを含んで構成されている。これらのプーリ32,33a,33b,34,35a,35b,35c,35d,35eは、例えば鋼製プレートや山形鋼や溝形鋼等の鋼材を組み付けて、例えば高さ(縦方向Hの長さ)1400mm、長さ(横方向Lの長さ)2500mm、幅(幅方向Wの長さ)1200mmの空間領域に納まる大きさに形成された支持架台45によって支持されて、ワイヤソー31を無端状に巻回させるのに適した所定の方向に回転軸を配置した状態で、回転可能に取り付けられている(図1参照)。
【0026】
縦方向駆動プーリ32は、例えばφ400mm程度の大きさのメインプーリとして設けられており、後述する横方向回転駆動機構20の横方向駆動プーリ22と共に、駆動部40の駆動モータ42と接続している。縦方向駆動プーリ32は、駆動部40の駆動モータ42の駆動によって、壁高欄50と垂直又は略垂直な幅方向Wに配置された回転駆動軸41を回転中心として、横方向駆動プーリ22と同期して回転できるようなっている。すなわち、回転駆動軸41は、公知の回転伝達機構43を介して、駆動モータ42の回転軸部42aと接続しており、駆動モータ42から伝達される回転駆動力によって、縦方向駆動プーリ32と横方向駆動プーリ22とを、同軸回転させることができるようになっている(図1参照)。
【0027】
また、本実施形態では、縦方向駆動プーリ32と横方向駆動プーリ22とは、例えば公知のクラッチ機構等を介して、回転駆動軸41に着脱可能に各々連結されていることによって、何れか一方のみの駆動プーリ32,22が回動可能なように、駆動部40の駆動モータ42に接続されている。これによって、既設のコンクリート製の壁高欄50を、必要に応じて、高さ方向に沿った縦方向Hにのみ、或いは底部に沿った横方向Lにのみ、切断してゆくことができるようになっている。
【0028】
さらに、本実施形態では、縦方向駆動プーリ32は、既設の壁高欄50に対して横方向駆動プーリ22の内側(壁高欄50側)に配置されている。これによって、横方向切断用ワイヤソー21と縦方向切断用ワイヤソー31とを、上方から見て互いに交差させることなく配置できるようにして、これらのワイヤソー21,31を、無端状に効率良く回転駆動させることが可能になる(図1参照)。
【0029】
さらにまた、本実施形態では、縦方向駆動プーリ32は、横方向駆動プーリ22と共に、壁高欄50と垂直又は略垂直な幅方向Wに配置された回転駆動軸41を中心に回転可能に取り付けられていることで、壁高欄50と平行又は略平行な面に沿って回転するようになっている。これによって、縦方向駆動プーリ32や横方向駆動プーリ22を壁高欄50と垂直又は略垂直な面に沿って回転させるために、作業領域の幅を広くする必要を生じる場合と比較して、縦方向駆動プーリ32や横方向駆動プーリ22の幅員方向の設置幅を狭くすることを可能にして、コンクリート壁切断装置10を、狭い幅に留めた作業領域において、コンパクトに配置することが可能になる。
【0030】
図3に示すように、縦方向テンション部33は、本実施形態では、少なくとも一対の縦方向テンションプーリ33a,33bとして、例えば3体重ねて配置された(図2参照)、φ200mm〜220mm程度の大きさの下部固定縦方向テンションプーリ33aと、2体重ねて配置された(図2参照)、φ200mm〜220mm程度の大きさの上部移動縦方向テンションプーリ33bとを含んで構成されている。これによって、縦方向切断用ワイヤソー31は、縦方向テンション部33において、2重に重なるように巻回されている(図1及び図2参照)。
【0031】
下部固定縦方向テンションプーリ33aは、例えば縦方向テンションボックス33dにおいて、回転軸33cを、駆動回転軸41と垂直又は略垂直な横方向Lに配置して、その高さ位置(縦方向Hの位置)を固定した状態で取り付けられていることで、壁高欄50と垂直又は略垂直な面に沿って回転する。
【0032】
上部移動縦方向テンションプーリ33bは、例えば縦方向テンションボックス33dにおいて、回転軸33eを、下部固定縦方向テンションプーリ33aの回転軸33cに対して僅かに傾けて配置(図1参照)して、例えば公知の油圧ジャッキの作用によって、その位置を上下に移動可能な状態で取り付けられている。上部移動縦方向テンションプーリ33bは、下部固定縦方向テンションプーリ33aと同様に、壁高欄50と垂直又は略垂直な面に沿って回転するとともに、回転軸33cが、下部固定縦方向テンションプーリ33aの回転軸33cに対して僅かに傾けて配置されていることで、巻回される縦方向切断用ワイヤソー31を、3体重ねて配置された下部固定縦方向テンションプーリ33aの、隣接する一方の下部固定縦方向テンションプーリ33aから他方の下部固定縦方向テンションプーリ33aに、安定した状態で送り出すことができるようになっている。
【0033】
また、上部移動縦方向テンションプーリ33bは、その位置を上下に移動可能な状態で取り付けられていることで、下部固定縦方向テンションプーリ33aに対して相対移動可能となっている。これによって、上部移動縦方向テンションプーリ33bと下部固定縦方向テンションプーリ33aとの間隔を広げたり、狭めたりすることによって、壁高欄50の縦方向Hの切断に伴って生じる縦方向切断用ワイヤソー31の緩みを吸収したり、無端状に回転駆動する縦方向切断用ワイヤソー31の張力を調整して、縦方向切断用ワイヤソー31による切削力を制御したりできるようになっている。
【0034】
本実施形態では、縦方向切断用ワイヤソー31は、縦方向テンション部33において、3体の下部固定縦方向テンションプーリ33a及び2体の上部移動縦方向テンションプーリ33bを介して、2重に重なるように巻回されていることで、上部移動縦方向テンションプーリ33bの移動によって、移動量よりも長い長さで縦方向切断用ワイヤソー31を引き込んだり、より大きな張力を縦方向切断用ワイヤソー31に、安定した状態で効率良く付与したりすることができるようになっている。
【0035】
縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34は、本実施形態では、例えばφ200mm〜220mm程度の大きさを有しており、縦方向切断用ワイヤソー31が巻回される外周面の巻回溝34aを、壁高欄50を縦方向Hに切断すべき位置に形成されたワイヤ挿通孔51bに対向させた状態で配置される。これによって、無端状に連続して回転駆動される縦方向切断用ワイヤソー31が、ワイヤ挿通孔51bからスムーズに引き出されたり、ワイヤ挿通孔51bにスムーズに送り出されたりするように、縦方向切断用ワイヤソー31を安定した状態でガイドすることが可能になる。
【0036】
また、本実施形態では、図3に示すように、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34は、回転連結部34cを中心に左右方向に回転可能に取り付けられていることで、回転軸34bの向きを左右方向で変換可能な変換式プーリとなっている。縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34が、変換式プーリとなっていることで、縦方向切断用ワイヤソー31による壁高欄50の切削の進行に伴って生じる、無端状に連続して回転する縦方向切断用ワイヤソー31の軌道の位置ずれを吸収して、より安定した状態で、壁高欄50を縦方向Hに切断してゆくことが可能になる。
【0037】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34は、巻回溝34aの最下端部が、ワイヤ挿通孔51bの天面部分の高さ位置よりも、下方に配置されるようになっている。これによって、無端状に連続回転して壁高欄50を切削する縦方向切断用ワイヤソー31が、ワイヤ挿通孔51bの天面部分における外側角部以外の部分に接触しないようにすることで、切削抵抗を少なくして、よりスムーズに壁高欄50を縦方向Hに切断してゆくことが可能になる。
【0038】
縦方向駆動プーリ32、縦方向テンション部33の下部固定縦方向テンションプーリ33aと上部移動縦方向テンションプーリ33b、及び縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34に縦方向切断用ワイヤソー31が無端状に巻回されるように案内する複数の縦方向ガイドプーリ35a,35b,35c,35d,35eは、例えばφ200mm〜220mm程度の大きさを有している。第1縦方向ガイドプーリ35aは、縦方向駆動プーリ32の駆動方向下流側に隣接して、回転軸を縦方向Hに配置した状態で、縦方向駆動プーリ32の上端部の高さ位置と同様の高さに配置されており、縦方向駆動プーリ32から壁高欄50の延設方向(横方向L)と略平行に送り出される縦方向切断用ワイヤソー31を、壁高欄50に向かうように方向変換させて、幅方向Wに送り出すことができるようになっている。
【0039】
第2縦方向ガイドプーリ35bは、第1縦方向ガイドプーリ35aの駆動方向下流側に隣接して、縦方向テンション部33の下部固定縦方向テンションプーリ33aの直下部分において、これの駆動方向上流側に配置され、回転軸を横方向Lに配置した状態で、第1縦方向ガイドプーリ35aから壁高欄50に向かうように送り出された縦方向切断用ワイヤソー31を、上方の縦方向テンション部33に向かうように方向変換させて、縦方向Hに送り出すことができるようになっている。
【0040】
第3縦方向ガイドプーリ35cは、縦方向テンション部33の下部固定縦方向テンションプーリ33aの直下部分において、これの駆動方向下流側に配置され、回転軸を横方向Lに配置した状態で、縦方向テンション部33から下方に向けて送り出された縦方向切断用ワイヤソー31を、壁高欄50に向かうように方向変換させて送り出すことができるようになっている。
【0041】
第4縦方向ガイドプーリ35dは、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34の駆動方向下流側に隣接して配置され、回転軸を横方向Lに配置した状態で、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34から上方に向けて送り出された縦方向切断用ワイヤソー31を、縦方向駆動プーリ32の下端部の高さ位置と同様の高さ位置において、壁高欄50から離れる側に向かうように方向変換させて、幅方向Wに送り出すことができるようになっている。
【0042】
第5縦方向ガイドプーリ35eは、第4縦方向ガイドプーリ35dの駆動方向下流側に隣接して配置され、回転軸を縦方向Hに配置した状態で、第4縦方向ガイドプーリ35dによって壁高欄50から離れる方向に向けて送り出された縦方向切断用ワイヤソー31を、縦方向駆動プーリ32の下端部の高さ位置と同様の高さ位置において、縦方向駆動プーリ32から壁高欄50の延設方向と略平行な横方向Lに向かうように方向変換させて、縦方向駆動プーリ32に向けて送り出すことができるようになっている。
【0043】
これらによって、図5に示すように、縦方向回転駆動機構30の縦方向切断ワイヤソー31を、壁高欄50の正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側に亘って、壁高欄50を縦方向Hに切断可能なように巻回した状態で、無端状に配置することができるようになっている。
【0044】
具体的には、駆動モータ42に接続された縦方向駆動プーリ32を起点に説明すると、駆動モータ42の近傍に配設された縦方向駆動プーリ32に案内されることで、縦方向切断用ワイヤソー31は、壁高欄50と平行又は略平行な横方向Lに向かって送り出される状態となり、縦方向駆動プーリ32の駆動方向下流側に位置する第1縦方向ガイドプーリ35aに案内されることで、横方向Lから壁高欄50に向かう幅方向Wに方向変換した状態になる。その後、縦方向切断用ワイヤソー31は、第1縦方向ガイドプーリ35aの駆動方向下流側に位置する第2縦方向ガイドプーリ35bにより縦方向テンション部33に案内されることで、縦方向テンション部33で張力が調整され、縦方向切断用ワイヤソー31による切削力が制御される。
【0045】
縦方向テンション部33の駆動方向下流側には、第3縦方向ガイドプーリ35cが配されており、縦方向切断用ワイヤソー31は、第3縦方向ガイドプーリ35cを介して壁高欄50の上端部から裏側に案内される。壁高欄50の裏側に案内された縦方向切断用ワイヤソー31は、壁高欄50の地覆部50bの底部に形成されたワイヤ挿通孔51bに挿通され、ワイヤ挿通孔51bの正面に位置する縦方向送出し又は引出ガイドプーリ34を介して正面側に引き戻される。このとき、縦方向送出し又は引出ガイドプーリ34が、回転軸の向きが可変となるように回転連結部34cを介して回転可能に取り付けられているので、ワイヤ挿通孔51bを挿通する縦方向切断用ワイヤソー31の位置に応じて可変することで、縦方向切断用ワイヤソー31を安定して引き戻すことができるようになっている。
【0046】
正面側に引き戻された縦方向切断用ワイヤソー31は、縦方向送出し又は引出ガイドプーリ34の搬送方向下流側に配された第4縦方向ガイドプーリ35dにより上方に案内されることで、縦方向駆動プーリ32の下端位置まで移動する。第4縦方向ガイドプーリ35dの搬送方向下流側には、第5縦方向ガイドプーリ35eが配されており、第5縦方向ガイドプーリ35eによって、縦方向切断用ワイヤソー31は、縦方向駆動プーリの下端位置に向けて横方向Lに方向変換される。縦方向切断用ワイヤソー31は、このような状態で、縦方向回転駆動機構30の各プーリに巻回され、壁高欄50を縦方向に切断可能な状態になっている。
【0047】
図6及び図7に示すように、本実施形態のコンクリート壁切断装置10を構成する横方向回転駆動機構20は、横方向駆動プーリ22と、少なくとも一対の横方向テンションプーリ23a,23bを含む横方向テンション部23と、巻回溝24aをワイヤ挿通孔51bに対向させて配置される横方向送出し又は引出しガイドプーリ24と、複数の横方向ガイドプーリ25a,25b,25c,25d,25eとを含んで構成されている。これらのプーリ22,23a,23b,24,25a,25b,25c,25d,25eは、縦方向回転駆動機構30が取り付けられた前述の支持架台45によって支持されて、横方向切断用ワイヤソー21を無端状に巻回させるのに適した所定の方向に回転軸を配した状態で、回転可能に取り付けられている。
【0048】
横方向駆動プーリ22は、例えばφ400mm程度の大きさのメインプーリとして設けられており、上述した縦方向回転駆動機構30の縦方向駆動プーリ32と共に、駆動部40の駆動モータ42と接続している。横方向駆動プーリ22は、駆動部40の駆動モータ42の駆動によって、壁高欄50と垂直又は略垂直な幅方向Wに配置された回転駆動軸41を回転中心として、縦方向駆動プーリ32と同期して回転できるようなっている。横方向駆動プーリ22は、回転駆動軸41を中心に回転可能に取り付けられていることで、壁高欄50と平行又は略平行な面に沿って回転するようになっている。これによって、横方向駆動プーリ22を壁高欄50と垂直又は略垂直な面に沿って回転させるために、作業領域の幅を広くする必要を生じる場合と比較して、横方向駆動プーリ22や縦方向駆動プーリ32の幅員方向の設置幅を狭くすることを可能にして、コンクリート壁切断装置10を、狭い幅に留めた作業領域において、コンパクトに配置することが可能になる。
【0049】
図6に示すように、横方向テンション部23は、本実施形態では、少なくとも一対の横方向テンションプーリ23a,23bとして、例えば4体重ねて配置された(図7参照)、φ200mm〜220mm程度の大きさの下部固定横方向テンションプーリ23aと、3体重ねて配置された(図7参照)、φ200mm〜220mm程度の大きさの上部移動横方向テンションプーリ23bとを含んで構成されている。本実施形態では、最も内側に配置された下部固定横方向テンションプーリ23aや上部移動横方向テンションプーリ23bを使用することなく余らせた状態で、横方向切断用ワイヤソー21は、横方向テンション部23において、2重に重なるように巻回されている(図1及び図2参照)。
【0050】
下部固定横方向テンションプーリ23aは、例えば横方向テンションボックス23dにおいて、回転軸23cを、駆動回転軸41と平行又は略平行な幅方向Wに配置して、その高さ位置(縦方向Hの位置)を固定した状態で取り付けられていることで、壁高欄50と平行又は略平行な面に沿って回転する。
【0051】
上部移動横方向テンションプーリ23bは、例えば横方向テンションボックス23dにおいて、回転軸33eを、下部固定横方向テンションプーリ23aの回転軸33cに対して僅かに傾けて配置(図1参照)して、例えば公知の油圧ジャッキの作用によって、その位置を上下に移動可能な状態で取り付けられている。上部移動横方向テンションプーリ23bは、下部固定横方向テンションプーリ23aと同様に、壁高欄50と平行又は略平行な面に沿って回転するとともに、回転軸23eが、下部固定横方向テンションプーリ23aの回転軸23cに対して僅かに傾けて配置されていることで、巻回される横方向切断用ワイヤソー21を、重ねて配置された下部固定横方向テンションプーリ23aの、隣接する一方の下部固定横方向テンションプーリ23aから他方の下部固定横方向テンションプーリ23aに、安定した状態で送り出すことができるようになっている。
【0052】
また、上部移動横方向テンションプーリ23bは、その位置を上下に移動可能な状態で取り付けられていることで、下部固定横方向テンションプーリ23aに対して相対移動可能となっている。これによって、上部移動横方向テンションプーリ23bと下部固定横方向テンションプーリ23aとの間隔を広げたり、狭めたりすることによって、壁高欄50の横方向の切断に伴って生じる横方向切断用ワイヤソー21の緩みを吸収したり、無端状に回転駆動する横方向切断用ワイヤソー21の張力を調整して、横方向切断用ワイヤソー21による切削力を制御したりできるようになっている。
【0053】
本実施形態では、横方向切断用ワイヤソー21は、横方向テンション部23において、下部固定横方向テンションプーリ23a及び上部移動横方向テンションプーリ23bを介して、2重に重なるように巻回されていることで、上部移動横方向テンションプーリ23bの移動によって、移動量よりも長い長さで横方向切断用ワイヤソー21を引き込んだり、より大きな張力を横方向切断用ワイヤソー21に、安定した状態で効率良く付与したりすることができるようになっている。
【0054】
横方向送出し又は引出しガイドプーリ24は、本実施形態では、例えばφ200mm〜220mm程度の大きさを有しており、横方向切断用ワイヤソー21が巻回される外周面の巻回溝24aを、壁高欄50を横方向Lに切断すべき長さとして、例えば2mの間隔をおいて壁高欄50の底部に形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bに各々対向させた状態で、一対配置される。これによって、無端状に連続して回転駆動される横方向切断用ワイヤソー31が、ワイヤ挿通孔51a,51bからスムーズに引き出されたり、ワイヤ挿通孔51a,51bにスムーズに送り出されたりするように、横方向切断用ワイヤソー21を安定した状態でガイドすることが可能になる。
【0055】
また、本実施形態では、図6に示すように、一対の横方向送出し又は引出しガイドプーリ24は、各々、回転連結部24cを介して左右方向に回転可能に取り付けられていることで、回転軸24bの向きを変換可能な変換式プーリとなっている。縦方向送出し又は引出しガイドプーリ24が、左右方向に回転可能な変換式プーリとなっていることで、横方向切断用ワイヤソー21による壁高欄50の切削の進行に伴って生じる、無端状に連続して回転する横方向切断用ワイヤソー21の軌道の位置ずれを吸収して、より安定した状態で、壁高欄50を横方向に切断してゆくことが可能になる。
【0056】
横方向駆動プーリ22、横方向テンション部23の下部固定横方向テンションプーリ23aと上部移動横方向テンションプーリ23b、及び横方向送出し又は引出しガイドプーリ24に横方向切断用ワイヤソー21が無端状に巻回されるように案内する複数の横方向ガイドプーリ25a,25b,25c,25d,25eは、例えばφ200mm〜220mm程度の大きさを有している。第1横方向ガイドプーリ25aは、横方向テンションボックス23dの駆動方向下流側に隣接して、回転軸を縦方向Hに配置した状態で、下部固定横方向テンションプーリ23aの下端部の高さ位置と同様の高さに配置されており、横方向駆動プーリ22から壁高欄50の延設方向(横方向L)と略平行に送り出される横方向切断用ワイヤソー21を、壁高欄50に向かうように方向変換させて、幅方向Wに送り出すことができるようになっている。
【0057】
第2横方向ガイドプーリ25bは、第1横方向ガイドプーリ25aに隣接して、これの駆動方向下流側に配置され、回転軸を横方向に配置した状態で、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24の駆動方向上流側に配置されている。第2横方向ガイドプーリ25bは、第1横方向ガイドプーリ25により幅方向Wに方向変換された横方向切断用ワイヤソー21を、下方に向かうように方向変換して、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24に送り出すことができるようになっている。
【0058】
第3横方向ガイドプーリ25cは、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24の直上部において、これの駆動方向下流側に配置され、回転軸を横にした状態で、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24から送り出された横方向切断用ワイヤソー21を、壁高欄50から離れる側に向かうように方向変換させて、幅方向Wに送り出すことができるようになっている。
【0059】
第4横方向ガイドプーリ25dは、第3横方向ガイドプーリ25dの幅方向Wに隣接して、これの駆動方向下流側に配置され、回転軸を縦方向Hに配置した状態で、第3横方向ガイドプーリ25cにより幅方向Wに送り出された横方向切断用ワイヤソー21を、横方向駆動プーリ22に向かうように方向変換させて、横方向Lに送り出すことができるようになっている。
【0060】
第5横方向ガイドプーリ25eは、第4横方向ガイドプーリ24d横方向Lに隣接して、これの駆動方向下流側に配置され、回転軸を横方向に配置した状態で、第4横方向ガイドプーリ24dから横方向Lに送り出された横方向切断用ワイヤソー21を、弛みの無い状態で、横方向駆動プーリ22に向けて送り出すことができるようになっている。
【0061】
これらによって、図7に示すように、横方向回転駆動機構20の横方向切断ワイヤソー21を、壁高欄50の底部に形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bを挿通させて、正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側に亘って、壁高欄50を横方向Yに切断可能なように巻回した状態で、無端状に配置することができるようになっている。
【0062】
具体的には、駆動モータ42に接続された横方向駆動プーリ22を起点に説明すると、駆動モータ42の近傍に配設された横方向駆動プーリ22に案内されることで、横方向切断用ワイヤソー21は、壁高欄50と平行又は略平行な横方向Lに向かって送り出される状態となる。横方向駆動プーリ22により送り出された横方向切断用ワイヤソー21は、横方向駆動プーリ22の駆動方向下流側に位置する横方向テンション部23に案内されることで、横方向テンション部23で張力が調整され、横方向切断用ワイヤソー21による切削力が制御される。
【0063】
横方向テンション部23の駆動方向下流側には、第1横方向ガイドプーリ25aが配されており、横方向切断用ワイヤソー11は、第1横方向ガイドプーリ25aにより、横方向Lにおいてワイヤ挿通孔51aが形成された位置まで案内される。その後、横方向切断用ワイヤソー11は、第1横方向ガイドプーリ25aに隣接して、これの駆動方向下流側に位置する第2横方向ガイドプーリ25bにより方向変換されて下方に向けて案内された後に、第2横方向ガイドプーリ25bの搬送方向下流側に位置する横方向送出し又は引出ガイドプーリ24によりワイヤ挿通孔51aに向けて幅方向Wに案内され、ワイヤ挿通孔51aを介して壁高欄50の裏側に挿通される。
【0064】
ワイヤ挿通孔51aに挿通されて壁高欄50の裏側に至った横方向切断用ワイヤソー11は、壁高欄50の裏側を経てもう一方のワイヤ挿通孔51bに挿通され、もう一方のワイヤ挿通孔51bの正面に位置する横方向送出し又は引出ガイドプーリ24により正面側に引き戻される。このとき、一対のワイヤ挿通孔51a,51bのそれぞれの正面に位置する横方向送出し又は引出ガイドプーリ24,24が、回転軸の向きが可変となるように回転連結部24cを介して回転可能に取り付けられているので、例えば切削の進行に伴って、一対のワイヤ挿通孔51a,51bのそれぞれに挿通された横方向切断用ワイヤソー21の位置に応じて、横方向送出し又は引出ガイドプーリ24,24が回転することで、横方向切断用ワイヤソー21を安定して引き戻すことができるようになっている。
【0065】
正面側に引き戻された横方向切断用ワイヤソー21は、横方向送出し又は引出ガイドプーリ24に隣接して、これの駆動方向下流側に位置して上方に配置された縦方向ガイドプーリ25cにより壁高欄50から離れる幅方向Wに案内され、第3縦方向ガイドプーリ25cに新設してこれの駆動方向下流側に位置する第4縦方向ガイドプーリ25dを介して横方向駆動プーリ22に向けて方向変換される。横方向駆動プーリ22に向けて方向変換された横方向切断用ワイヤソー21は、第4縦方向ガイドプーリ25dに隣接してこれの駆動方向下流側に位置する第5縦方向ガイドプーリ25eを経て、横方向駆動プーリ22の下端位置に向けて横方向Lに案内される。横方向切断用ワイヤソー31は、このような状態で横方向回転駆動機構20の各プーリに巻回され、壁高欄50を横方向に切断可能な状態になっている。
【0066】
上述のような構成を有するコンクリート壁切断装置10を用いて壁高欄50を切断撤去する場合には、切断撤去を行うに当たり、予め、切断撤去を行う壁高欄50の切断箇所を測定し、壁高欄50の地覆部50bに、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を挿通させるための複数のワイヤ挿通孔51を所定のピッチ毎に穿孔しておく。本実施形態では、例えば2m程度のピッチで、公知のコンクリート穿孔装置を用いて、複数のワイヤ挿通孔51を穿孔しておく。このとき、穿孔した複数のワイヤ挿通孔51の位置に基づいて、壁高欄50を切断する際にコンクリート切断装置10を配置する場所も位置決めし、マーキングしておく。本実施形態では、上述のワイヤ挿通孔51の穿孔間隔と同様に、例えば2m程度のピッチで行うと良い。
【0067】
次に、コンクリート壁切断装置10を搬入する。図1及び図2に示すように、コンクリート壁切断装置10の支持架台は、各プーリを支持するプーリ支持架台45aと、駆動モータ42、横方向駆動プーリ22及び縦方向駆動プーリ32を支持する駆動部支持架台45bとを有しており、まず、プーリ支持架台45aを予め位置決めした位置に設置し、固定する。駆動部支持架台45bには車輪が設けられており、固定された駆動部支持架台45bに対して、横方向Lに直列に位置するように配置して、これを接続する。なお、プーリ支持架台45aを設置する際には、プーリ支持架台45aの水平度及び垂直度を確認しながら設置する。またプーリ支持架台45aに支持される各プーリは、予めプーリ支持架台45aに支持された状態で搬入しても良いが、搬入後に現場にてプーリ支持架台45a組み込んでも良い。
【0068】
プーリ支持架台45a及び駆動部支持架台45bが設置されると、次に、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を、壁高欄50を含んだ状態で、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30に巻回する。横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31の巻回は、上述した巻回状態になるように行われる。このとき縦方向駆動プーリ32は、既設の壁高欄50に対して横方向駆動プーリ22の内側(壁高欄50側)に配置されており、横方向切断用ワイヤソー21と縦方向切断用ワイヤソー31とは、上方から見て互いに交差させることなく配置できるようなっている。そのため、横方向切断用ワイヤソー21を巻回した後に縦方向切断用ワイヤソー31を巻回する場合、又は縦方向切断用ワイヤソー31を巻回した後に横方向切断用ワイヤソー21を巻回する場合の何れの場合においても、これらのワイヤソー21,31を、無端状に、簡単かつ効率良く巻回させることができる。
【0069】
横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を巻回した後、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31と、一対のワイヤ挿通孔51a,51bとの接触箇所を確認する。そして、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30を駆動した際の、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31と、一対のワイヤ挿通孔51a,51bとの初期抵抗を減らすために、一対のワイヤ挿通孔51a,51bとの接触箇所で、例えば手作業によって、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を移動方向に複数回移動させて、接触箇所での抵抗を減らしておく。
【0070】
これらが終了すると、集塵機等の周辺機器を設置し、エアホース、集塵ホース及び電源コード等を接続する。次に、不図示の全体カバーを固定し、試運転を行う。試運転時は、各プーリの回転方向を確認することで、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31の移動方向を確認する。次に、不図示の周辺機器等の安全カバー等を設置し、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30の破断ライン上に安全柵や防護ネット等を設置する。
【0071】
これらが終了すると、コンクリート壁切断装置10の運転を開始する。まず、縦方向回転駆動機構30のみを所定時間駆動させ、壁高欄50を縦方向Hにならし切断する。次に、横方向回転駆動機構20のみを所定時間駆動させ、壁高欄を横方向Lにならし切断する。所定時間の縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20毎の駆動が終了すると、縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を同時に駆動させ、壁高欄50を縦方向H及び横方向Lに、L字形状に縦横に並行して同時に切断していく。
【0072】
壁高欄50を3分の2程度切断したら、縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を一旦停止させ、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31による切断によって形成される切断溝にクサビを打ち込む。その後、縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を、再度、同時に駆動させる。そして、壁高欄50の縦方向H及び横方向Lの何れか一方の切断が終了すると、縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を停止させ、終了した方向のワイヤソーを取り外す。切断が終了していない方の縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を、再度駆動し、壁高欄50の切断を完了させる。本実施形態では、公知のクラッチ機構を用いて、切断が終了していない方の縦方向回転駆動機構30又は横方向回転駆動機構20のみに駆動モータの駆動力を接続させ、切断が終了していない方の縦方向回転駆動機構30又は横方向回転駆動機構20を駆動させることができる。
【0073】
壁高欄50の切断が完了すると、周辺機器等の電源を停止し、コンクリート壁切断装置10の電源も一旦停止する。そして、安全柵や安全カバー等を取り外す。本実施形態では、1箇所の切断撤去が終了すると、好ましくは切断した壁高欄50と同じ間隔の壁高欄50を残して、次の壁高欄50の位置までコンクリート壁切断装置10を移動させ、上述と同様の切断撤去を行う。つまり、本実施形態では、好ましくは切断する壁高欄50と同じ長さの既設の壁高欄50を残しつつ、延設する壁高欄を切断撤去する。そして、撤去範囲における、1つ飛びの壁高欄50の切断撤去が終了したら、残った壁高欄を、順次、切断撤去していく。
【0074】
このように、1つ飛びで壁高欄50を撤去していくことで、例えば、撤去範囲の切断撤去作業が完了しない場合に、残ったか壁高欄どうしをガードレール等で繋げることが可能になり、切断撤去作業工程の中で、壁高欄がなくなる箇所が生じることを防止することができる。例えば、作業ができない状態が発生した場合においても、予め上述のガードレール等を設置する作業を行っておくことで、壁高欄がなくなる箇所が生じることを防止することができる。
【0075】
そして、本実施形態によれば、上述のような構成を有するコンクリート壁切断装置10を用いることで、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を高さ方向に沿った縦方向H、及び底部に沿った横方向(延設方向)Lに、L字形状に縦横に並行して同時に切断することが可能になり、効率良くコンクリート壁を解体することが可能になる。
【0076】
特に、コンクリート壁が壁高欄50であって、車線を規制しながら道路を供用した状態で切断作業を行う必要がある場所においても、作業領域を狭い幅に留めて作業を行うことが可能になるので、道路を供用したままの状態で作業を行うことが可能になる。また一台のコンクリート壁切断装置10によって、壁高欄50を縦横に並行して同時に切断できるので、作業の効率化を図ると共に、工期を短縮することが可能になる。
【0077】
更に、コンクリート壁切断装置10は、1台の駆動モータ42で横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30を駆動させることができるので、装置の小型化が可能になる。また、駆動モータ42が接続される横方向駆動プーリ22及び縦方向駆動プーリ32は、壁高欄50と平行又は略平行な面に沿って回転するように配置されると共に、壁高欄50に向かって縦方向切断用ワイヤソー31や横方向切断用ワイヤソー21を方向変換する、縦方向ガイドプーリ35a,35e及び横方向ガイドプーリ25a,25eを備えているので、幅方向Wの長さを短くすることが可能になり、作業領域を狭い幅の場所、例えば、高速道路の1車線の幅等に留めて、安全に、且つ効率良く作業することが可能になる。
【0078】
このように、本実施形態のコンクリート壁切断装置10によれば、ブレーカー等の破砕用の重機を用いることなく、作業領域を狭い幅に留めて作業を行うことができるので、周囲の環境に極力影響を及ぼさない状態で、コンクリート壁を効率良く解体することができる。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、横方向送出し又は引出しガイドプーリは、回転軸の向きが可変となるように回転可能に取り付けられている必要は必ずしも無く、縦方向駆動プーリは、既設のコンクリート壁に対して横方向駆動プーリの外側に配置されていても良い。本発明のコンクリート壁切断装置によって切断される既設のコンクリート壁は、コンクリート壁高欄以外の、延設方向に連続して設置されているその他の種々のコンクリート壁であっても良い。
【符号の説明】
【0080】
10 コンクリート壁切断装置
20 横方向回転駆動機構
21 横方向切断用ワイヤソー
22 横方向駆動プーリ
23a 下部固定横方向テンションプーリ
23b 上部移動横方向テンションプーリ
23c,23e 回転軸
25a 第1横方向ガイドプーリ
25b 第2横方向ガイドプーリ
25c 第3横方向ガイドプーリ
25d 第4横方向ガイドプーリ
25e 第5横方向ガイドプーリ
30 縦方向回転駆動機構
31 縦方向切断用ワイヤソー
32 縦方向駆動プーリ
33a 下部固定縦方向ガイドプーリ
33b 上部移動縦方向ガイドプーリ
33c,33e 回転軸
35a 第1縦方向ガイドプーリ
35b 第2縦方向ガイドプーリ
35c 第3縦方向ガイドプーリ
35d 第4縦方向ガイドプーリ
35e 第5縦方向ガイドプーリ
40 駆動部
41 駆動回転軸
42 駆動モータ
50 壁高欄
51a ワイヤ挿通孔
H 縦方向
L 横方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7