特許第6569951号(P6569951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569951
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】コンクリート壁の解体改修工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20190826BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20190826BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20190826BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20190826BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20190826BHJP
   B28D 1/08 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   E04G23/02 E
   E04G23/08 D
   E01D19/10
   E01D24/00
   E01D22/00 Z
   B28D1/08
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-85322(P2016-85322)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-193887(P2017-193887A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】516121833
【氏名又は名称】株式会社アクティブ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 宏一
(72)【発明者】
【氏名】小出 昌克
(72)【発明者】
【氏名】高島 通男
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】平田 誠之
(72)【発明者】
【氏名】日野 和徳
(72)【発明者】
【氏名】荒井 春美
【審査官】 西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−102528(JP,A)
【文献】 特開2015−071907(JP,A)
【文献】 米国特許第04604841(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/10
E04G 23/08
E04G 23/02
E01D 22/00
E01D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のコンクリート壁を、プレキャストコンクリート壁部材と置き替えて改修するコンクリート壁の解体改修工法であって、
既設のコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて所定のスパン毎に切断して撤去する切断撤去工程と、
既設のコンクリート壁が撤去された所定のスパン毎に、プレキャストコンクリート壁部材を各々設置する壁部材設置工程と、
設置されたプレキャストコンクリート壁部材を連結する連結工程とを含んで構成されており、
前記切断撤去工程は、連設される複数の前記プレキャストコンクリート壁部材の一つ置きの設置位置において、隣接する先行撤去箇所の間に残置部を残した状態で、前記プレキャストコンクリート壁部材が納まる所定のスパンで既設のコンクリート壁を間欠的に先行して切断撤去することにより、前記先行撤去箇所を形成する先行切断工程と、該先行切断工程で形成された前記先行撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材が設置された後に、隣接する前記先行撤去箇所の間に残置された前記残置部を切断撤去することにより、残置部撤去箇所を形成する残置部切断工程とからなり、
前記壁部材設置工程は、前記切断撤去工程の前記先行切断工程で撤去された前記先行撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材を設置する先行設置工程と、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で撤去された前記残置部撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材を設置する残置部設置工程とからなり、
前記連結工程では、前記壁部材設置工程により隣接して配置された、前記先行設置工程で設置された前記プレキャストコンクリート壁部材と前記残置部設置工程で設置された前記プレキャストコンクリート壁部材とを連結するコンクリート壁の解体改修工法。
【請求項2】
前記切断撤去工程の前記先行切断工程で複数の前記先行撤去箇所を形成し、形成された複数の前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置し、しかる後に、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で複数の前記残置部撤去箇所を、前記先行撤去箇所に設置された複数の前記プレキャストコンクリート壁部材の間の部分に形成し、形成された複数の前記残置部撤去箇所に、前記残置部設置工程で複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置して、複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を連設させる請求項1記載のコンクリート壁の解体改修工法。
【請求項3】
前記切断撤去工程の前記先行切断工程で前記先行撤去箇所を形成したら、形成された前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を設置し、前記先行切断工程で次の前記先行撤去箇所を形成したら、形成された次の前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を設置し、しかる後に、前記先行撤去箇所及び次の前記先行撤去箇所に設置された前記プレキャストコンクリート壁部材の間の部分において、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で形成された前記残置部撤去箇所に、前記残置部設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置し、これらの工程を繰り返すことによって、複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を連設させる請求項1記載のコンクリート壁の解体改修工法。
【請求項4】
前記切断撤去工程の前記先行切断工程は、前記ワイヤソーによって、既設のコンクリート壁を、縦方向及び横方向に同時に切断する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項記載のコンクリート壁の解体改修工法。
【請求項5】
前記既設のコンクリート壁は、コンクリート床版の側縁部に沿って設置されたコンクリート壁高欄である請求項1〜4のいずれか1項記載のコンクリート壁の解体改修工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁の解体改修工法に関し、特に、既設のコンクリート壁を、プレキャストコンクリート壁部材と置き替えて改修するコンクリート壁の解体改修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄は、一般に現場打ちコンクリートによって、コンクリート床版の側縁部に沿って形成さており、主として走行車両の運転者の視線を誘導したり、走行車両が道路の外側に逸脱するのを防止したりする機能を備えている。
【0003】
コンクリート製の壁高欄や、その他の既設のコンクリート壁は、構築された後、長年の経年劣化によって、品質が低下しているものもあることから、このような経年劣化した既設のコンクリート壁を、解体して改修する必要に迫られている。
【0004】
既設のコンクリート構造物を解体する方法として、ブレーカー等の破砕用の重機を用いて破砕し、撤去する方法が一般に知られているが、破砕用の重機を用いた方法では、破砕時の振動や衝撃によって、周囲の環境に影響を及ぼす恐れがあることから、近年、既設のコンクリート構造物を、ワイヤソーを用いて切断することで解体して撤去する工法が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ワイヤソーを用いてコンクリート構造物を解体する工法では、例えばスチールワイヤに切削用のダイヤモンドビーズを数珠状に押し通して、一定の間隔で固着することにより形成された公知のワイヤソーを、切断対象となるコンクリート構造物に無端状に巻きつけて、高速回転させることによって、コンクリート構造物を切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−93651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の解体工法は、コンクリート構造物として、地中に埋設して構築されたいわゆるボックスカルバート形の地下構造物を、ワイヤソーを用いて高能率で解体できるようにするものであるが、解体して改修されるコンクリート構造物が、延設方向に相当の長さに亘って連続して形成されている、コンクリート製の壁高欄等のコンクリート壁である場合には、このような延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、効率良く解体して改修できるようにするための新たな技術の開発が望まれている。
【0008】
特に、コンクリート壁が、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄である場合には、道路を供用したままの状態で、コンクリート壁を解体して改修する必要があるので、現場打ちコンクリートによるのではなく、予め工場等において製造されたプレキャストコンクリート壁部材を用いて改修するのが望ましいことから、プレキャストコンクリート壁部材の設置作業と組み合わせて、壁高欄としての機能を保持したまま、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、効率良く解体して改修できるようにするための新たな技術の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、ワイヤソーとプレキャストコンクリート壁部材とを用いて効率良く解体して改修してゆくことのできるコンクリート壁の解体改修工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、既設のコンクリート壁を、プレキャストコンクリート壁部材と置き替えて改修するコンクリート壁の解体改修工法であって、既設のコンクリート壁を、ワイヤソーを用いて所定のスパン毎に切断して撤去する切断撤去工程と、既設のコンクリート壁が撤去された所定のスパン毎に、プレキャストコンクリート壁部材を各々設置する壁部材設置工程と、設置されたプレキャストコンクリート壁部材を連結する連結工程とを含んで構成されており、前記切断撤去工程は、連設される複数の前記プレキャストコンクリート壁部材の一つ置きの設置位置において、隣接する先行撤去箇所の間に残置部を残した状態で、前記プレキャストコンクリート壁部材が納まる所定のスパンで既設のコンクリート壁を間欠的に先行して切断撤去することにより、前記先行撤去箇所を形成する先行切断工程と、該先行切断工程で形成された前記先行撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材が設置された後に、隣接する前記先行撤去箇所の間に残置された前記残置部を切断撤去することにより、残置部撤去箇所を形成する残置部切断工程とからなり、前記壁部材設置工程は、前記切断撤去工程の前記先行切断工程で撤去された前記先行撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材を設置する先行設置工程と、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で撤去された前記残置部撤去箇所に前記プレキャストコンクリート壁部材を設置する残置部設置工程とからなり、前記連結工程では、前記壁部材設置工程により隣接して配置された、前記先行設置工程で設置された前記プレキャストコンクリート壁部材と前記残置部設置工程で設置された前記プレキャストコンクリート壁部材とを連結するコンクリート壁の解体改修工法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のコンクリート壁の解体改修工法は、前記切断撤去工程の前記先行切断工程で複数の前記先行撤去箇所を形成し、形成された複数の前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置し、しかる後に、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で複数の前記残置部撤去箇所を、前記先行撤去箇所に設置された複数の前記プレキャストコンクリート壁部材の間の部分に形成し、形成された複数の前記残置部撤去箇所に、前記残置部設置工程で複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置して、複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を連設させることが好ましい。
【0012】
また、本発明のコンクリート壁の解体方法は、前記切断撤去工程の前記先行切断工程で前記先行撤去箇所を形成したら、形成された前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を設置し、前記先行切断工程で次の前記先行撤去箇所を形成したら、形成された次の前記先行撤去箇所に前記先行設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を設置し、しかる後に、前記先行撤去箇所及び次の前記先行撤去箇所に設置された前記プレキャストコンクリート壁部材の間の部分において、前記切断撤去工程の前記残置部切断工程で形成された前記残置部撤去箇所に、前記残置部設置工程で前記プレキャストコンクリート壁部材を各々設置し、これらの工程を繰り返すことによって、複数の前記プレキャストコンクリート壁部材を連設させることが好ましい。
【0013】
更に、本発明のコンクリート壁の解体改修工法方法は、前記切断撤去工程の前記先行切断工程が、前記ワイヤソーによって、既設のコンクリート壁を、縦方向及び横方向に同時に切断する工程を含んでいることが好ましい。
【0014】
更にまた、本発明のコンクリート壁の解体改修工法は、前記既設のコンクリート壁が、コンクリート床版の側縁部に沿って設置されたコンクリート壁高欄であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンクリート壁の解体方法によれば、延設方向に相当の長さに亘って連続するコンクリート壁を、ワイヤソーとプレキャストコンクリート壁部材とを用いて効率良く解体して改修してゆくことができる。また特に、コンクリート壁が、コンクリート壁高欄であって道路を供用したままの状態で解体して改修する作業を行う必要がある場合に、作業領域を狭い幅に留めて、交通への影響を抑制しながら作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁の解体工法を説明する、(a)は既設のコンクリート壁の平面図、(b)〜(e)は切断撤去工程の先行切断工程を説明する図である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁の解体工法を説明する、(a)は壁部材設置工程の先行設置工程を説明する図、(b)〜(e)は切断撤去工程の残置部切断工程を説明する図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁の解体工法を説明する、(a)及び(b)は壁部材設置工程の残置部設置工程を説明する図である。
図4】本発明の他の実施形態に係るコンクリート壁の解体工法を説明する、(a)は既設のコンクリート壁の平面図、(b)〜(e)は切断撤去工程の先行切断工程及び壁部材設置工程の先行設置工程を説明する図である。
図5】本発明の他の実施形態に係るコンクリート壁の解体工法を説明する、(a)〜(d)は、は切断撤去工程の先行切断工程及び残置部切断工程、並びに壁部材設置工程の先行設置工程及び残置部設置工程を説明する図である。
図6】本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁の解体工法に用いられるコンクリート壁切断装置の構成を説明する略示平面図である。
図7図6に示すコンクリート壁切断装置のワイヤソー及びプーリの配置を説明する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図3に示す本発明の好ましい一実施形態に係るコンクリート壁の解体改修工法は、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って設置されているコンクリート製の壁高欄50の解体改修工事において、このようなコンクリート製の壁高欄50を解体して改修する際の解体改修工法として用いられる。例えば首都高速道路等においては、コンクリート製の壁高欄50は、構築された後、50年以上が経過して経年劣化により老朽化しているものもあることから、このような老朽化したコンクリート製の壁高欄50を解体撤去して改修する際に、経年劣化したコンクリート製の壁高欄50を、所定の長さ毎に切断して効率良く撤去できるようにすると共に、プレキャストコンクリート壁部材62として、好ましくはプレキャストコンクリート製の壁高欄62と置き替えて、効率良く改修できるようにするための工法として、本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法が用いられる。
【0018】
本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法では、後述するコンクリート壁切断装置10を用いて、隣接する先行撤去箇所54の間に残置部53を残した状態で、コンクリート製の壁高欄50の先行撤去箇所54の部分を切断して撤去し(図1参照)、形成された先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62を各々設置する。しかる後に、先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート部材62の間の残置部53を切断して撤去し、形成された残置撤去箇所55にプレキャストコンクリート壁部材62を各々設置する(図2及び図3参照)ことで、経年劣化したコンクリート製の壁高欄50を、効率良く撤去して改修できるようになっている。
【0019】
そして、本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法は、図1図3に示すように、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁として、経年劣化により老朽化したコンクリート製の壁高欄50を、プレキャストコンクリート壁部材としてのプレキャストコンクリート製の壁高欄62と置き替えて改修する解体改修工法であって、既設の壁高欄50(52,53)を、例えば横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31(図6図7参照)を用いて所定のスパン毎に切断して撤去する切断撤去工程と、既設の壁高欄50(52,53)が撤去された所定のスパン毎に、プレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を各々設置する壁部材設置工程と、設置されたプレキャストコンクリート壁部材62を連結する連結工程とを含んで構成されている。
【0020】
切断撤去工程は、連設される複数のプレキャストコンクリート壁部材62の一つ置きの設置位置において、隣接する先行撤去箇所54の間に残置部53を残した状態で、プレキャストコンクリート壁部材62が納まる所定のスパンで既設のコンクリート壁50を間欠的に先行して切断撤去することにより、先行撤去箇所54を形成する先行切断工程(図1(b)〜(e)参照)と、該先行切断工程で形成された先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62が設置された後に、隣接する先行撤去箇所54,54の間に残置された残置部53を切断撤去することにより、残置部撤去箇所55を形成する残置部切断工程(図1(b)〜(e)参照)とからなっている。
【0021】
壁部材設置工程は、切断撤去工程の先行切断工程で撤去された先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62を設置する先行設置工程(図2(a)参照)と、切断撤去工程の残置部切断工程で撤去された残置部撤去箇所55にプレキャストコンクリート壁部材62を設置する残置部設置工程(図3(a)、(b)参照)とからなっている。
【0022】
連結工程では、壁部材設置工程により隣接して配置された、先行設置工程で設置されたプレキャストコンクリート壁部材62と残置部設置工程で設置されたプレキャストコンクリート壁部材62とを連結する図3(b)参照)。
【0023】
本実施形態では、延設方向に連続して設置されている既設のコンクリート壁である壁高欄50は、例えば道路橋や高架道路等におけるコンクリート床版の幅員方向の側縁部に沿って、現場打ちコンクリートによって形成された、コンクリート製(鉄筋コンクリート製)の壁体状の高欄となっている。壁高欄50は、高さが1000mm程度、幅が150mm程度の大きさの、縦長の矩形断面形状を備える壁本体部50aと、壁本体部50aの下部から内側(道路側)に突出して形成された、高さが350mm程度、幅が200mm程度の大きさの、矩形断面形状を備える地覆部50bとが、一体として形成された略L字断面形状を備えている(図7の断面線部分参照)。壁高欄50は、例えば10m〜数10m程度の所定の延長の施工スパン毎に、コンクリートを打設すると共に、目地部を介在させてこれらの複数の施工スパンの壁体を連設することにより、例えば数百m〜数キロmの相当の延長に亘って、延設方向に連続して設置されている。
【0024】
このようなコンクリート製の既設の壁高欄50を解体して撤去する際に、例えば道路橋や高架道路等において、ブレーカー等の破砕用の重機を用いて破砕するのは工事が大規模になると共に、車両交通に多大な影響を及ぼすため困難である。本実施形態では、例えば後述するコンクリート壁切断装置10を用いて、所定のスパン毎に残置部53を残した状態で既設の壁高欄50を切断し、残置部53に隣接する先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62を先行して設置した後、残置部53を撤去してプレキャストコンクリート壁部材62を後続して設置することで、作業領域をコンパクトに維持しながら、道路を供用したままの状態で、既設の壁高欄50を解体撤去して改修する作業を効率良く行うことができるようなっている。
【0025】
本実施形態では、プレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62は、予め工場等において、略L字形の断面形状を備える、いわゆるフロリダ型の壁高欄60として、壁本体部62aと地覆部62bとが一体となったプレキャストコンクリート製のコンクリート部材として製造される(図2図3参照)。プレキャストコンクリート壁部材62は、例えば、高さが1000mm程度、長さが2000mm程度の矩形の正面形状を有すると共に、厚さが150mm程度の縦長扁平な略直角台形状の壁本体部62aの下端部分から、地覆部62bを内側(道路側)に突出させることで、350mm程度の底面幅を有する、角部が面取りされた、既設の壁高欄50と略同様の略L字形の断面形状を備えるように形成されている。プレキャストコンクリート壁部材62は、コンクリート床版の側縁部に沿って、例えば、無収縮モルタル等による10mm程度の幅の目地部63を介在させた状態で(図3(b)参照)、長さ方向(延設方向)に複数連設されることで、コンクリート床版の側縁部に沿って連続して延設する一連の壁高欄60を構成する。プレキャストコンクリート壁部材62が複数連設配置された壁高欄60は、後述する連結工程において、例えば延設方向に貫通させて上部に埋設したシース管に、PC鋼線等を挿通することによって、延設方向に互いに連結しておくことが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、既設の壁高欄50を切断するコンクリート壁切断装置10は、図6に示すように、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30を備えており、横方向切断用ワイヤソー21と縦方向切断用ワイヤソー31とを無端状に同時に回転駆動させて、既設の壁高欄50を、高さ方向に沿った縦方向、及び底部に沿った横方向(延設方向)に、L字形状に縦横に並行して同時に切断することができるようになっている。
【0027】
横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30は、駆動部40の駆動によって、既設のコンクリート壁である壁高欄50と垂直又は略垂直な幅方向に配置された回転駆動軸41を中心に、同期して回転可能な横方向駆動プーリ22及び縦方向駆動プーリ32を各々備えている。
【0028】
横方向回転駆動機構20は、上述の横方向駆動プーリ22と、駆動回転軸41と平行又は略平行な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の横方向テンションプーリ23a,23bを含む横方向テンション部23と、既設の壁高欄50を貫通して形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bに対向させて各々配置される、横方向送出し又は引出しガイドプーリ24と、これらのプーリ23a,23b,24に横方向切断用ワイヤソー21が無端状に巻回されるように案内する複数の横方向ガイドプーリ25a,25b,25c,25d,25eとを含んで構成されている。図6及び図7に示すように、横方向回転駆動機構20は、これらによって、横方向切断ワイヤソー21を、既設の壁高欄50の底部に形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bを挿通させて、正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側に亘って、壁高欄50を横方向に巻回した状態にすることができるようになっている。
【0029】
縦方向回転駆動機構30は、上述の縦方向駆動プーリ32と、駆動回転軸41と垂直又は略垂直な回転軸を中心に回転する、相対移動可能な少なくとも一対の縦方向テンションプーリ33a,33bを含む縦方向テンション部33と、既設のコンクリート製の壁高欄50を貫通して形成されたワイヤ挿通孔51a,51b(本実施形態では、ワイヤ挿通孔51b)に対向させて配置される、縦方向送出し又は引出しガイドプーリ34と、これらのプーリ33a,33b,34に縦方向切断用ワイヤソー31が無端状に巻回されるように案内する複数の縦方向ガイドプーリ35a,35b,35c,35d,35eとを含んで構成されている。図6及び図7に示すように、縦方向回転駆動機構30は、これらによって、縦方向切断ワイヤソー31を、壁高欄50の正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側に亘って、壁高欄50を縦方向に巻回した状態にすることができるようになっている。
【0030】
これら横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30は、例えば鋼製プレートや山形鋼や溝形鋼等の鋼材を組み付けて、例えば高さ1400mm、長さ2500mm、幅1200mmの空間領域に納まる大きさに形成された支持架台45によって支持されている。そして、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30の各プーリは、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31でL字形状に縦横に並行して同時に壁高欄30を切断することができるように、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を無端状に巻回させるのに適した所定の方向に回転軸を配置した状態で、回転可能に取り付けられている(図7参照)。
【0031】
本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法は、上述のようなコンクリート壁切断装置10を用いて、切断撤去工程の先行切断工程で複数の先行撤去箇所54を形成し(図1(b)〜(e)参照)、形成された複数の先行撤去箇所54に先行設置工程で複数のプレキャストコンクリート壁部材62を各々設置し(図2(a)参照)、しかる後に、切断撤去工程の残置部切断工程で複数の残置部撤去箇所55を、先行撤去箇所54に設置された複数のプレキャストコンクリート壁部材62の間の部分に形成し(図2(b)〜(e)参照)、形成された複数の残置部撤去箇所55に、残置部設置工程で複数のプレキャストコンクリート壁部材62を各々設置して、複数のプレキャストコンクリート壁部材62を、例えば道路橋や高架道路等における幅員方向の側縁部に沿って連設させるようになっている(図3(a)及び(b)参照)。
【0032】
本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法を行うには、まず、解体改修作業の事前作業として、切断撤去を行う壁高欄50の地覆部50bに、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を挿通させるための複数のワイヤ挿通孔51を、所定のスパン毎に穿孔する。
【0033】
本実施形態では、前述したように長さLが1990mm程度のプレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を用いて壁高欄50の改修作業を行うため、図1(b)に示すように、先行して切断撤去される先行撤去部52の長さL1を2500mm、先行撤去部52に隣接する残置部53の長さL2を1500mmとし、先行撤去部52と残置部53とが交互に位置するそれぞれの境界を切断箇所として、ワイヤ挿通孔51bを形成する。また、先行撤去部52には、コンクリート切断装置10の大きさとの関係から、延設方向の略中央部において地覆部50bを貫通するワイヤ挿通孔51aを形成することが好ましい。ワイヤ挿通孔51a,51bは、公知のコンクリート穿孔装置を用いて穿孔することにより、容易に形成することができる。
【0034】
ワイヤ挿通孔51a,51bの穿孔が終了したら、壁高欄50の解体改修工法を実行する。まず、先行撤去する先行撤去部52の前にコンクリート壁切断装置10を固定する。本実施形態では、図1(b)に示すように、先行撤去部52と残置部53との境界に形成されたワイヤ挿通孔51bと、先行撤去部52の中央部分に形成されたワイヤ挿通孔51aとの間の部分に対向するようにコンクリート壁切断装置10を固定する。図6及び図7に示すように、コンクリート壁切断装置10の支持架台45は、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30の各プーリを支持するプーリ支持架台45aと、駆動モータ42、横方向駆動プーリ22及び縦方向駆動プーリ32等を支持する駆動部支持架台45bとを有している。
【0035】
支持架台45のプーリ支持架台45a及び駆動部支持架台45bを固定したら、次に、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を、先行撤去部52を含んだ状態で、横方向回転駆動機構20及び縦方向回転駆動機構30に巻回させる。横方向切断用ワイヤソー21は、先行撤去部52の底部に形成された一対のワイヤ挿通孔51a,51bに挿通させることで、先行撤去部52の正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側を経て、先行撤去部52を横方向に巻き込んだ状態となるように、横方向回転駆動機構20に巻回される。縦方向切断用ワイヤソー31は、挿通孔51bに挿通させることで、先行撤去部52の正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側を経て、先行撤去部52の上方から正面側に戻ることにより、先行撤去部52を縦方向に巻き込んだ状態となるように、縦方向回転駆動機構30に巻回される。
【0036】
横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を巻回したら、コンクリート切断装置10を駆動して、先行撤去部52を切断する。具体的には、縦方向回転駆動機構30のみを所定時間駆動させ、先行撤去部52を縦方向にならし切断する。次に、横方向回転駆動機構20のみを所定時間駆動させ、先行撤去部52を横方向にならし切断する。所定時間の縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20のならし切断が終了すると、縦方向回転駆動機構30及び横方向回転駆動機構20を同時に駆動させ、先行撤去部52を縦方向及び横方向に、L字形状に縦横に並行して同時に切断していく。このように、切断撤去工程の先行切断工程は、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31によって、既設の壁高欄50を、縦方向及び横方向に同時に切断する工程を含んでいる。
【0037】
先行撤去部52の切断が終了したら、切断した先行撤去部52の壁高欄50を、ユニック車等を用いて撤去し、先行撤去箇所54を形成する。なお、本実施形態では、ワイヤ挿通孔51aとワイヤ挿通孔51bとの間の部分で先行撤去部52を切断するので、先行撤去部52は半分ずつの切断となり、上述の作業を2回行うことで、1箇所の先行撤去部52が切断されることになる。
【0038】
1箇所の先行撤去部52における既設の壁高欄50の切断撤去が終了すると、図1(c)に示すように、先行撤去箇所54に隣接する残置部53を残した状態で、この残置部53に隣接する次の先行撤去部52の前にコンクリート切断装置10を移動させる。そして、上述と同様の方法で、次の先行撤去部52を切断撤去する。図1(d)に示すように、このような切断撤去作業を繰り返し行うことで、既設の壁高欄50は、図1(e)に示すように、複数の先行撤去箇所54の間に複数の残置部53を残した状態になる。即ち、プレキャストコンクリート壁部材62が納まる所定のスパンで既設の壁高欄50を間欠的に先行して切断撤去することにより、図1(e)に示すように、複数の先行撤去箇所54が形成される(切断撤去工程の先行撤去工程)。
【0039】
このように、各隣接する先行撤去箇所54の間に残置部53を残した状態で、先行撤去箇所54の壁高欄50を撤去することで、例えば、解体改修工事を途中で作業を中断する必要が生じた場合においても、隣接する残置部53の間に例えば仮設のガードレール等を設置することで、壁高欄50が撤去された先行撤去箇所54を塞いでおくことが可能になる。これによって、延設方向に連続する壁高欄50としての機能を保持させることが可能になる。
【0040】
隣接する先行撤去箇所54の間に残置部53を残した状態で、複数の先行撤去箇所54を形成したら、次に、図2(a)に示すように、複数の先行撤去箇所54のそれぞれに、プレキャストコンクリート部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を設置する(壁部材設置工程の先行設置工程)。プレキャストコンクリート部材62は、これの地覆部62bとコンクリート床版とをアンカーボルト等で接続することで、コンクリート床版に固定した状態で容易に設置することができる。なお、プレキャストコンクリート部材62のコンクリート床版への固定は、アンカーボルトによる固定に限らず、その他の公知の各種の固定手段を用いることができる。
【0041】
複数の先行撤去箇所54に、複数のプレキャストコンクリート部材62を各々固定したら、次に、複数の先行撤去箇所54に設置された複数のプレキャストコンクリート部材62の間の部分に残置された、複数の残置部53を切断撤去して、隣接するプレキャストコンクリート部材62の間の部分に複数の残置部撤去箇所55を形成する(切断撤去工程の残置部切断工程)。
【0042】
なお、本実施形態では、図2(b)に示すように、先行撤去箇所54を形成する場合と同様に、残置部53には、コンクリート切断装置10の大きさとの関係から、延設方向の略中央部に、地覆部50bを貫通するワイヤ挿通孔51cを形成して、残置部53に残置された壁高欄50をワイヤ挿通孔51cの左右両側に分けて切断することが好ましい。また、残置部53へのワイヤ挿通孔51cの形成は、先行撤去箇所54にワイヤ挿通孔51a,51bを形成する際に同時に行ってもよい。
【0043】
また、残置部53は、複数の先行撤去箇所54が先行して形成される際に、コンクリート壁切断装置10の縦方向切断機構30によって、両側の端部における縦方向の切断が既に行われていることから、残置部53の切断は、コンクリート壁切断装置10の横方向回転駆動機構20のみを用いて行うことができる。
【0044】
残置部53を切断して撤去するには、まず、撤去する箇所の残置部53に対向させてコンクリート壁切断装置10を固定する。
【0045】
コンクリート壁切断装置10を残置部53の前に固定したら、次に、横方向切断用ワイヤソー21を、残置部53を巻き込んだ状態で、横方向回転駆動機構20に巻回させる。横方向切断用ワイヤソー21は、残置部53の底部に形成されたワイヤ挿通孔51cに挿通されて、正面側(コンクリート壁切断装置10が位置する側)から裏側に亘って、残置部53の底部を横方向に掻き込んだ状態となるように、横方向回転駆動機構20に巻回される。
【0046】
横方向切断用ワイヤソー21を巻回したら、コンクリート切断装置10を駆動して、残置部53の底部を横方向に切断する(切断撤去工程の残置部切断工程)。残置部53の横方向の切断が終了したら、横方向回転駆動機構20を停止させ、横方向切断用ワイヤソー21を取り外す。
【0047】
残置部53の切断が終了したら、切断した残置部53を、ユニック車等を用いて撤去し、残置部撤去箇所55を形成する。なお、本実施形態では、残置部53の壁高欄50を、ワイヤ挿通孔51cの左右両側に分けて切断するので、各々の残置部撤去箇所55における残置部53の切断作業は、半分ずつ行われることとなり、各々の残置部53に対して上述の作業を2回行うことで、1箇所の残置部53が切断されることになる。
【0048】
1箇所の残置部53を切断撤去して残置部撤去箇所55を形成したら、図2(c)に示すように、形成した残置部撤去箇所55に隣接する先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート壁62を挟んで残置された、次の残置部53の既設の壁高欄50を撤去するために、次の残置部53の前に、コンクリート切断装置10を移動させる。そして、上述と同様の方法によって、次の残置部53を切断撤去する。図2(d)、(e)に示すように、引き続いて、同様の方法により残置部53の既設の壁高欄50を切断して撤去する作業を順次繰り返し行うことで、先行撤去箇所54に設置された複数のプレキャストコンクリート壁部材62が、各隣接するプレキャストコンクリート壁部材62の間に残置部撤去箇所55を各々介在させて、分断された状態で間欠的に連設配置されることになる。
【0049】
本実施形態では、残置部53における既設の壁高欄50が撤去された状態で、プレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62が、例えば道路橋や高架道路等におけるコンクリート床版の幅員方向の側縁部に沿って、分断された状態で間欠的に連設配置されている。これによって、例えば、解体改修工事を途中で作業を中断する必要が生じた場合においても、隣接するプレキャストコンクリート壁部材62の間に例えば仮設のガードレール等を設置することで、壁高欄50が撤去された残置部撤去箇所55を塞いでおくことが可能になり、これによって延設方向に連続する壁高欄としての機能を保持させることが可能になる。
【0050】
各隣接するプレキャストコンクリート壁部材62の間に残置された、残置部53における既設の壁高欄50を撤去して、複数の残置部撤去箇所55を形成したら、図3(a)及び(b)示すように、各々の残置部撤去箇所55に、プレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を設置する(壁部材設置工程の残置部設置工程)。これにより、複数のプレキャストコンクリート部材62が、例えば道路橋や高架道路等におけるコンクリート床版の幅員方向の側縁部に沿って連設して、既設の壁高欄50と置き換えられた状態で配置される。各々の残置部撤去箇所55に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62は、先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62と同様に、例えばこれの地覆部62bとコンクリート床版とをアンカーボルト等で接続することで、コンクリート床版に固定した状態で容易に取り付けることができる。
【0051】
複数のプレキャストコンクリート壁部材62をコンクリート床版の側縁部に沿って連設したら、各隣接して配置された、先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62と、残置部撤去箇所55に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62とを各々連結する(連結工程)。連結工程では、例えば特願2016−11994に記載された、隣接する一方のプレキャストコンクリート壁部材の連結端面に臨んで埋設固定された、雌ネジ孔を有するインサート部材と、隣接する他方のプレキャストコンクリート壁部材の連結端面に臨んで固定された、ボルト締着孔を有する締着プレートと、締着プレートの連結端面とは反対側の部分において、他方のプレキャストコンクリート壁部材の側面に開口して設けられた締着作業用凹部と、締着作業用凹部での作業により締着プレート側からインサート部材の雌ネジ孔に螺合されて、締着プレートに締着された締着ボルトと、締着ボルトの頭部又は締着プレートに形成された雌ネジ口部に先端雄ネジ部を螺合して、締着作業用凹部の内部に突出して取り付けられた凹部アンカー部材と、凹部アンカー部材に支持させて、締着作業用凹部に充填されて固化した充填固化材とを含んで構成される連結構造を用いて、各隣接して配置されたプレキャストコンクリート部材62を、各々連結することができる。
【0052】
また、上述のように、プレキャストコンクリート壁部材62が複数連設配置された壁高欄60は、例えば延設方向に貫通させて上部に埋設したシース管に、PC鋼線等を挿通することによって、延設方向に互いに連結しておくこともできる。
【0053】
ここで、本実施形態では、先行撤去部52の長さL1(図1(b)参照)を2500mm、残置部53の長さL2(図1(b)参照)を1500mmとし、プレキャストコンクリート壁部材62として、1990mm程度の長さL(図2(a)参照)のものを用いているので、複数のプレキャストコンクリート部材62が連設された状態においては、各プレキャストコンクリート部材62の間には、20mm程度の目地部63が形成される。先行設置工程で設置された複数のプレキャストコンクリート壁部材62と、残置部設置工程で設置された複数のプレキャストコンクリート壁部材62とは、目地部63に例えば無収縮モルタル等を充填することにより、縦方向の隙間をなくした状態で、延設方向に連続して設置されて、一連の壁高欄60を形成している。
【0054】
そして、上述の構成を備える本実施形態のコンクリート壁の解体改修工法によれば、既設の壁高欄50を、ワイヤソー21,31を用いて所定のスパン毎に切断して撤去する切断撤去工程と、既設の壁高欄50が撤去された所定のスパン毎に、プレキャストコンクリート製の壁高欄62を各々設置する壁部材設置工程と、設置されたプレキャストコンクリート製の壁高欄62を連結する連結工程とを含んで構成されており、切断撤去工程は、先行切断工程と残置部切断工程とからなり、壁部材設置工程は、先行設置工程と残置部設置工程とからなるので、所定のスパン毎に残置部53を残した状態で壁高欄50を切断し、残置部53に隣接する先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート製の壁高欄62を設置した後、残置部53を撤去してプレキャストコンクリート製の壁高欄62を設置することで、ブレーカー等の破砕用の重機を用いて既設のコンクリート壁を破砕して撤去する場合と比較して、作業領域をコンパクトに維持しながら、既設の壁高欄50を解体撤去して設置し直す作業を容易に行うことが可能になり、これによって、延設方向に相当の長さに亘って連続する既設の壁高欄50を、ワイヤソー21,31とプレキャストコンクリート製の壁高欄62とを用いて効率良く解体して改修してゆくことが可能になる。
【0055】
また特に、道路を供用したままの状態で、既設の壁高欄50を解体して改修する作業を行う必要がある場合でも、作業領域を狭い幅に留めて、交通への影響を抑制しながら作業を行うことが可能になる。
【0056】
図4及び図5は、本発明の好ましい他の実施形態に係るコンクリート壁の解体改修工法を示すものである。図4及び図5に示す他の実施形態のコンクリート壁の解体改修工法では、上述の切断撤去工程の先行切断工程で先行撤去箇所54を形成したら、形成された先行撤去箇所54に先行設置工程でプレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を設置し、先行切断工程で次の先行撤去箇所54を形成したら、形成された次の先行撤去箇所54に先行設置工程でプレキャストコンクリート製の壁高欄62を設置し、しかる後に、先行撤去箇所54及び次の先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート製の壁高欄62の間の部分において、切断撤去工程の残置部切断工程で形成された残置部撤去箇所56に、残置部設置工程でプレキャストコンクリート製の壁高欄62を各々設置し、これらの工程を繰り返すことによって、複数のプレキャストコンクリート製の壁高欄62を連設させるようになっている。
【0057】
すなわち、本発明の他の実施形態のコンクリート壁の解体改修工法を行うには、上述した実施形態の解体改修工法と同様に、解体改修作業の事前作業として、切断撤去を行う壁高欄50の地覆部50bに、横方向切断用ワイヤソー21及び縦方向切断用ワイヤソー31を挿通させるための複数のワイヤ挿通孔51を所定のスパン毎に穿孔する(図4(b)参照)。
【0058】
本他の実施形態では、上述した実施形態と同様に、長さLが1990mm程度のプレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)62を用いて壁高欄50の改修作業を行うため、先行して切断される先行撤去部52の長さL1を2500mm、先行撤去部52に隣接する残置部53の長さL2を1500mmとして、先行撤去部52と残置部53とが交互に位置するそれぞれの境界を切断箇所として、ワイヤ挿通孔51bを形成する。また、先行撤去部52には、コンクリート切断装置10の大きさとの関係から、延設方向の略中央部において地覆部50bを貫通するワイヤ挿通孔51aを形成する。
【0059】
ワイヤ挿通孔51a,51bの穿孔が終了したら、本他の実施形態の解体改修工法を実行する。すなわち、本他の実施形態の解体改修工法では、1箇所の先行撤去部52の部分の壁高欄50を切断撤去して、1箇所の先行撤去箇所54を形成したら、図4(d)に示すように、形成した先行撤去箇所54に隣接する残置部53を残した状態で、この残置部53に隣接する次の先行撤去部52の前にコンクリート切断装置10を移動させる。次の先行撤去部52の前にコンクリート切断装置10を移動させたら、図4(e)に示すように、先の先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62を設置する。
【0060】
また、先の先行撤去箇所54にプレキャストコンクリート壁部材62を設置する作業と並行して、図4(d)、(e)に示すように、コンクリート切断装置10を移動させた次の先行撤去箇所52を切断撤去し、次の先行撤去箇所54を形成する。本実施形態では、図4(e)に示すように、2台のコンクリート壁切断装置10を用いており、上述した次の先行撤去箇所54を形成して、更に次の先行撤去部52の前にコンクリート壁切断装置10を移動させたら、先の先行撤去箇所54に隣接する残置部53の前に、もう1台のコンクリート壁切断装置10を位置させる。そして、図5(a)に示すように、この残置部53を切断撤去し、残置部撤去箇所55を形成する。残置部撤去箇所55を形成したら、図5(b)に示すように、もう1台のコンクリート壁切断装置10を次の残置部53の前に移動させ、先の残置部撤去箇所55にプレキャストコンクリート壁62を設置する。
【0061】
図5(c)に示すように、これらの作業を繰り返し行うことで、図5(d)に示すように、複数のプレキャストコンクリート壁部材62が延設方向に連続して設置されて、一連の壁高欄60が形成される。各々のプレキャストコンクリート壁部材62は、上述した実施形態と同様に、地覆部62bとコンクリート床版とをアンカーボルト等で接続することで、コンクリート床版に固定されるようになっている。
【0062】
複数のプレキャストコンクリート部材62を延設方向に連続して設置したら、連結工程によって、上述した実施形態と同様の方法によって、各隣接して配置された、先行撤去箇所54に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62と、残置部撤去箇所55に設置されたプレキャストコンクリート壁部材62とを各々連結する(連結工程)。
【0063】
本他の実施形態の解体改修工法によっても、上述した実施形態と同様に、既設の壁高欄50を、ワイヤソー21,31を用いて所定のスパン毎に切断して撤去する切断撤去工程と、既設の壁高欄50が撤去された所定のスパン毎に、プレキャストコンクリート製の壁高欄62を各々設置する壁部材設置工程と、設置されたプレキャストコンクリート製の壁高欄62を連結する連結工程とを含んで構成されており、切断撤去工程は、先行切断工程と残置部切断工程とからなり、壁部材設置工程は、先行設置工程と残置部設置工程とからなるので、上述した実施形態の解体改修工法による作用効果と、同様の作用効果が奏される。
【0064】
なお、上述した他の実施形態では、先行撤去部52を切断するコンクリート壁切断装置10及び残置部53を切断するコンクリート壁切断装置10の、2台のコンクリート壁切断装置10を用いたが、1台のコンクリート壁切断装置10で先行撤去部52及び残置部53を切断してもよい。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば切断撤去工程の先行切断工程は、ワイヤソーによって、既設のコンクリート壁を、縦方向及び横方向に同時に切断する工程を含んでいなくても良く、本発明のコンクリート壁の解体改修工法により解体されて改修される既設のコンクリート壁は、コンクリート壁高欄以外の、延設方向に連続して設置されているその他の種々のコンクリート壁であっても良い。。
【符号の説明】
【0066】
10 コンクリート壁切断装置
20 横方向回転駆動機構
21 横方向切断用ワイヤソー
30 縦方向回転駆動機構
31 縦方向切断用ワイヤソー
45 支持架台
50 既設のコンクリート製の壁高欄(既設のコンクリート壁)
50a 壁本体部
50b 地覆部
51,51a,51b,51c ワイヤ挿通孔
52 先行撤去部
53 残置部
54 先行撤去箇所
55 残置部撤去箇所
60 プレキャストコンクリート壁部材による壁高欄
62 プレキャストコンクリート壁部材(プレキャストコンクリート製の壁高欄)
62a 壁本体部
62b 地覆部
63 目地部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7