(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記ハニカムコア材は、クラフト紙からなり、軽量化と強度を合わせ持った効果を奏するが、ハニカムコア材を敷き詰めた面に張るボードは、アルミ箔、クラフト紙と塩化ビニルを積層したものであり、単に軽さと耐久性を追求した構造であり、音響的には何ら考慮されていない。
また、特殊フェルト板と遮音板の組み合わせによるパネルは、一面側で主に高音域の吸音効果を他面側で遮音効果を奏するものであり、オフィスのパーテーションには最適であるが、その他の音響効果は考慮されていなかった。また、この場合、有効な吸音効果を発揮するためには、特殊フェルト板と遮音板との間の空気層が必須であるが、空気層は隙間であればよく、空気層それ自体で吸音効果は無かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこでこの発明では、遮音層を挟んでペーパーコア材などのコア材を積層したコア層の両面に吸音層を設けてコア材内に空気層を形成したことにより、各開口コアの間隙の空気層の効果に加えて、コア層の各開口コアを囲む隔壁の振動性能などにより、総合的な吸音性能の向上を図り、前記問題点を解決した。
【0006】
すなわち、この発明は、以下のように構成したことを特徴とする開口コアを有するコア材を使った吸音パネルである。
(1) 前記開口コアを、短筒状の隔壁で区画して厚さ方向に開口して形成する。
(2) 前記開口コアを、連続的または非連続的に多数形成して、第1コア材および第2コア材を形成する。
(3) 前記第1コア材と第2コア材とを、遮音層を挟んで積層してコア層を構成する。
(4) 繊維材料を圧縮
してなる繊維硬質板から吸音層を形成し、前記コア層の両面に前記吸音層を配置し、前記コア層の一面および他面で、前記吸音層を密着して重ねて固定する。
(5) さらに前記コア層と前記吸音層
との固定は、前記コア層の隔壁にのみ接着剤を塗布して前記吸音層の表面を接着剤で覆わないように固定
して形成した。
【0007】
また、前記において、以下のように構成したことを特徴とするコア材を使った吸音パネルである。
(1)開口コアの全部または一部内に、その開口コアの吸音特性を変更するために、吸音材を詰め、あるいは吸音効果の無い材料を詰めた。
【0008】
前記におけるコア材とは、主に紙製または紙に樹脂加工した材料を想定したいわゆる6角形のコアのペーパーハニカム、平行四辺形や長方形のコアのバイアスコア、円を基調にしたコア、直線と波を基調にしたコアなどを含む概念であり、区画された開口コアを連続的に多数形成されていれば、開口コアの形状に限定されない。また、加工し易さや隔壁の繊維質の隙間で吸音効果もあるなどから紙製が好ましいが、材質は任意であり、アルミや鋼などの金属、磁気・陶器などのセラミックス、その他樹脂製とすることもでき、この場合には隔壁の表面に細かい凹凸や多孔質の塗料などでコーティングすることが望ましい。
【0009】
また、前記における各層を固定しての積層とは、主に接着して積層する場合であるが、接着せずに、接着以外の何らかの手段で、コア材の少なくとも外周側で各層が互いに動かないようにすることも含む。
【0010】
また、前記における開口コアは一般に連続的に形成されているので、製造時にコア材として取り扱いが容易であるが、開口コアが一部または全部で連続しないコア材を採用することもできる。また、開口コアを、連続または非連続で、多数設ける場合、同一形状・構造の開口コアを使用しても、異なる形状・構造の開口コアを採用することもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、コア材と遮音材とからなるコア層の両面に、第1吸収層、第2吸収層を積層してパネルを構成したので、パネルの両側から、それぞれ、吸収層、空気層、遮音層を形成できるので、パネルのいずれの面を音源に向けても、吸音効果を発揮できる。また、両面から吸音性能を発揮できるパネルを簡易にかつ薄く構成できる。
【0012】
この場合、使用する材料にもよるが、フェルト系の特殊吸音材を使用した場合、まず吸収層で比較的高音域の音が吸収され、コア材の開口コア内の空気層を通過して、遮音層の内面で反射した音が再度、コア材のコア内の空気層を通過して、吸収層の内面側から再度吸収される。したがって、このパネルでは、音源の性質に応じて、高音域、あるいは低音域及び高音域の成分を吸収して、最適な音響空間を構成できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1) 帯状のクラフト材2、2を重ねて、一部を接着して積層した基材3を構成し(
図2(a))、基材3の両端3a、3aを引けば、縦横比が1:2の長方形の開口コア5、5を斜めに配置してなる(いわゆる、バイアスコア)第1ペーパーコア材4、第2ペーパーコア材4aを形成する(
図2(b))。この場合、クラフト材2、2が短い隔壁5a、5aを構成し、隔壁5a、5a内が開口コア5となる。一つ隔壁5aの両側に開口コア5が形成され、開口コア5、は連続して配置される。
【0016】
(2) クラフト紙(厚さt
11)から遮音材25を構成する。遮音材25は、音を反射する材料(透過機能が弱い材料)であれば、クラフト紙に限らず、アルミやステンレス、鋼などの金属板、樹脂板、石膏ボードなどを使用することもできる。
【0017】
(3) 厚さt
11の遮音材25の両面に、厚さt
10の第1ペーパーコア材4、厚さt
10の第2ペーパーコア材4aで挟んで(
図4(a))、それ
ぞれ互いに接着固定して、厚さt
1のペーパーコア層1を形成する(
図4(b))。ペーパーコア層1の高さをH、幅をD
1とする(
図1(d))。ここで、隔壁5aの端面と遮音材25の表面から音的に漏れないように接着されることが望ましい。
【0018】
(4) 繊維材料を圧縮して第1吸音層20、第2吸音層30を構成する。
例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂繊維と塩化ビニル繊維とを含む材料を圧縮して、フェルト状の板として、この板から吸音層20を形成する。 吸音層20は、厚さt
2、横D
1、縦Hで形成する。
また、吸音層20は、例えば、以下のようにして製造した材料を使用することもできる。天然繊維と化学繊維とからなるリサイクル繊維原料を解繊し、バインダー樹脂として、これにPET樹脂繊維を混合して原反を作り、この原反を50℃〜150℃程度に加熱し冷熱ロールを使用して、面重量0.5〜1.0kg/m
2、空気流れ抵抗値1000〜4000N・s/m
3の繊維硬質板を形成して、この繊維硬質板から第1吸音層20、第2吸音層30を構成する。
【0019】
(5) ペーパーコア層1の一面(第1ペーパーコア材4側)6に第1吸音層20の内面21を、他面(第2ペーパーコア材4a側)6aに第2吸音層30の内面31をそれぞれ密着させて接着して、各層が積層された一体のパネル40を構成する(
図1(b)〜(d)、
図5(a))。この場合、ペーパーコア層1、第1吸音層20、第2吸音層30で、各上縁8、23、33、下縁8a、23a、33a、両側縁7、22、32を揃えて積層する(
図1(d)。
この場合、通常ペーパーコア層1の一面6及び他面6aの板状の端面(すなわち、隔壁5a、5a)の端面)の全面に接着剤を塗布して、それぞれ第1吸音層20の内面21、第2遮音層30の内面31をそれぞれ接着して積層する。なお、この場合、第1吸音層20の両面21、21a、第2吸音層30の両面31、31aは空気を通す必要があるので、ペーパーコア材4、4aの隔壁5a、5aにのみ接着剤を塗布して、第1吸音層20、第2吸音層30と接着して、各吸音層20、30の表面を接着剤で覆わないようにする。
【0020】
(6) また、製造に当たって、ペーパーコア材4、4aは形状が安定しないが、予め遮音材25で固定して、ペーパーコア層1を形成した状態では、強度も有し安定した構造となるので、製造上、取り扱いが容易となる。
【0021】
(7) また、前記において、ペーパーコア材4、4aは、クラフト紙2を屈曲して、千鳥状に円筒が配列された構造とすることもできる(
図3)。この場合、円筒が隔壁5a、5aとして、隔壁5a、5a内に円状(水滴状)の開口コア5、5を有する(
図3)。
【0023】
(1) パネル40は、ペーパーコア層1の両面に板状の第1吸音層20、第2吸音層30を接着固定したので、単独でも自立して配置できるが、枠材42を設けることもできる。一般には、隣接するパネル40、40同士の接合、パネル40を壁や天井に取り付ける作業性を考慮して、木製、金属製又は硬質樹脂製で、断面コ字状の枠材42(縦枠材42a、横枠材42b)を四周に設ける(
図1(a)(b))。
また、パネル40の第1吸音層20の外面21a、第2遮音層30の外面31aをそれぞれ装飾布44、44で覆い、装飾布44の四周を枠材42とパネル40(吸音層20、遮音層30)との間に挟み込んである(
図1(a)(b))。
この場合、装飾布44としては、例えば繊維を編んだ織物製で、繊維の表面と裏面との間で空気を通す隙間(小透孔)が形成されることが必要である。また、装飾布44により、任意の材質、色や模様を形成できるので、設置スペースの好みに応じて、適宜選択して使用することもできる。
【0024】
(2) 以上のように形成した「枠42と装飾布44を取り付けた」パネル40、または「枠材42や装飾布44を使用しない」単独のパネル40は、両側の吸音層20、30のどちらか任意の方を音源に向けて使用する。
この場合、パネル40の両側に音源があってもいずれも吸音できるので、部屋の間仕切りや衝立、机の目隠しパーテーションなど様々な用途で使用できる。
【0025】
(3) 第1第2ペーパーコア材4、4aは同じ構造の材料で、同じ厚さt
10、t
10で構成したが、また、第1第2吸音層20、30は同じ構造の材料で構成したが、ペーパーコア材4、4aの構造や厚さ、吸音層20、30の材料、厚さt
2、t
3により吸収しやすい周波数特性や音量などに特徴を出せるので、予め音源の特徴が分かっている場合には、音源に応じて、第1第2ペーパーコア材4、4a、第1第2吸音層20、30の特徴を変えることもできる。また、適宜組み合わせて、最適な音響環境を実現できる。
【0026】
(4) これまで、出願人は「吸音層+空気層+遮音層」の構成で、吸音効果を確認しているが、ペーパーコア材および多孔ボード材(パンチングメタル)を使用することで、さらなる吸音効果を実現できた。これは、ペーパーコア材4、4aの隔壁5a、5aで囲まれた開口コア5が、一つの空気層を構成し、開口コア5による清流効果、隔壁5a、5aでの反射・吸収による減衰効果があるものと推定される。
【0027】
(5) また、以下のような寸法の試験体(パネル40。厚さ約24.5mm)を使用して、吸音試験をした。
ペーパーコア層1は、厚さt
11の遮音層25を、厚さt
10の第1パーパーコア材4、第2ペーパーコア材4aで挟んで積層した構造であり、以下の仕様とする。
厚さt
1≒14mm(
図1(d)、
図3(a)(b))
第1パーパーコア材4、第2ペーパーコア材4aともに、クラフト紙からなり
図3のように、クラフト紙2を屈曲して、千鳥状に円筒が配列され、隔壁5a、5a内に円状(水滴状)で径Dの開口コア5、5を有する構造とし、以下の仕様とする。
厚さt
10=6.5mm(
図4(a))
開口コア5の形状 D=12mm(
図3)
遮音層25は、クラフト紙からなり、以下の仕様とする。
厚さt
11=1.0mm(
図4(a))
また、第1吸音材20、第2吸音層30ともに、上記実施例のフェルト状の材質で、以下の仕様とした。
厚さt
2=厚さt
3=5.0mm(
図1(d))
以上のようなパネルを、残響室法吸音率(Alpha Cabin)を測定すると、
図9のグラフのような結果となった。1600Hz以上の周波数では0.80以上の吸音率を達成できた。しかし、それ以下の周波数ではやや物足りない結果であった。これは、パネル40の厚さを薄くすることを優先して、空気層(ペーパーコア材4、4aの厚さt
10)を小さくした点、遮音層25をペーパーコア材4、4aとの接着作業性からクラフト紙を採用した点が要因していると考えられる。よって、遮音層25を鋼製などの金属板を採用し、ペーパーコア材4、4aの厚さt
10を10mm程度とすれば、800Hz程度以上で、0.80以上の吸音率が期待される。また、本来同じであるはずの第1吸音層20側(第1ペーパーコア材4側)と、第2吸音層30側(第2ペーパーコア材4a側)とが、若干異なる吸音率となっており、これは、遮音層35の厚さ厚さt
11の不均一、ペーパーコア材4、4aの加工精度などがあり、さらにそれに伴い接着の不均一により生じていると考えられる。
【0029】
(1) 前記実施態様において、ペーパーコア層1と吸音層20、遮音層30とは密着したが(
図5(a))、ペーパーコア層1の他面6aと遮音層30の内面31とを密着して、かつペーパーコア層1の一面6と吸音層20の内面21との間に間隙15を形成することもできる(
図5(d))。また、ペーパーコア層1の一面6と吸音層20の内面21とを密着して、かつペーパーコア層1の他面6aと遮音層30の内面31との間に間隙14を形成することもできる(
図5(c))。さらに、ペーパーコア層1の一面6に間隙15、他面6aに間隙14を設けて、それぞれ、吸音層20の内面21、遮音層30の内面31を配置することもできる(
図5(b))。これらで、間隙14、15を形成する場合には、枠材42が必須となる(
図5)。
【0030】
(2) また、前記実施態様において、他の枠材42(縦枠材42a、横枠材42b)を使用することもできる(
図7、
図8)。
この場合、まず、パネル40の上面(ペーパーコア1の上面8、第1吸音層20の上面23、第2吸音層30の上面33)、下面(ペーパーコア1の上面8、第1吸音層20の上面23、第2吸音層30の上面33)に長さ方向(
図8(a)の奥行き方向、
図8(b)の左右方向)に、V字取付溝46を形成する。V字取付溝46は中心側(遮音材25側)が深く形成される(
図8(a))。
V字取付溝46と同一形状のV字切欠47を上下に形成した縦枠材42a、42aを、
パネル40の側面(ペーパーコア1の側面7、第1吸音層20の側面23、第2吸音層30の側面32)に接着などにより固定する。V字取付溝46およびV字切欠47に嵌挿できるV字取付突条48を形成した横枠材42b、42bをパネル40の上面および下面に接着などにより固定する。
また、上下の縦枠材42b、42bのV字取付突条48の端縁部は、横枠材42aのV字切欠47に接着などにより固定する。以上のようにして、縦枠材48a横枠材48b付きのパネル40が形成される(
図7)。このパネル40では、木口が見えず、簡易な枠材で見栄えの良いパネル40を構成できる。
また、この際、パネルの表面に装飾布44を被せ、装飾布44の周縁部を、縦枠42a、横枠42bとパネル40の間に挾み込めば、簡易な作業で容易に装飾布44を取り付けできる(
図7)。
また、パネル40のV字取付溝46を側面に形成することもでき、この場合には、縦枠材42bにV字取付切欠47を形成し、横枠材42aにV字取付突条48を形成する(図示していない)。
また、パネル40に形成したV字取付溝46は、上面で下に凸、下面で上に凸となり、横枠材42bを嵌挿でき、厚さ方向で中心側(遮音材25付近)が深ければ、V字に限らず、U字、凸字など他の形状とすることもできる(図示していない)。この場合には、取付溝46の形状にあわせて、縦枠材42aの取付切欠47、横枠材42bの取付突条48も対応させる。
【0031】
(3) また、前記実施態様において、吸音特性を変更するために、ペーパーコア材4、4aの全部または一部の開口コア5、5内に各種吸音材を詰め、あるいは吸音効果を低減させるために、吸音効果の無い材料を詰めて開口コア5、5の全部または一部を塞ぐこともできる(図示していない)。
【0032】
(4) また、前記実施態様において、ペーパーコア層1の所望の位置(例えば中央部分)に機能開口10を設けて、使用場所で強化したい吸音特性を設定して補助吸収音材12を選定して、この補助吸音材12を機能開口10に詰めることもできる(
図6)。この場合、機能開口10はペーパーコア層1を構成する第1ペーパーコア材4、第2ペーパーコア材4a、遮音材25の総てに共通の開口を形成したが、遮音材25の開口を省略して、かつ第1ペーパーコア材4および第2ペーパーコア材4aの両方または一方に開口を形成することもできる(図示していない)。
機能開口10を形成することにり、補助吸収材12として吸音効果を弱める材料を採用することもでき、パネル40を設置後の吸音特性の微調整も可能である。