特許第6569980号(P6569980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6569980ポンプ浚渫船用水底均し装置及びそれを使用した水底均し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569980
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ポンプ浚渫船用水底均し装置及びそれを使用した水底均し方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/88 20060101AFI20190826BHJP
   E02F 3/92 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   E02F3/88 K
   E02F3/92 H
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-173549(P2015-173549)
(22)【出願日】2015年9月3日
(65)【公開番号】特開2017-48623(P2017-48623A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2018年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089886
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 雅雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172096
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 理太
(72)【発明者】
【氏名】長尾 喬平
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−156246(JP,A)
【文献】 特開2013−091909(JP,A)
【文献】 特開2012−158928(JP,A)
【文献】 特開2012−092561(JP,A)
【文献】 特開2009−270343(JP,A)
【文献】 米国特許第04212121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/88
E02F 3/92
E02F 3/47
E02F 3/815
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浚渫船本体から先端側を水底部に向けて水中に挿入されるラダーと、該ラダーを旋回させる旋回手段と、該ラダー先端部に配置された掘削手段と、前記ラダー先端部に吸引口を開口させた排砂管路と、該排砂管路に接続された吸引ポンプとを備えたポンプ浚渫船にあって、掘削された水底部を均す為のポンプ浚渫船用水底均し装置において、
前記ラダーの側部に支持体を介して支持された均し具を備え、該均し具の土砂押圧面が前記ラダーの旋回方向に向けられていることを特徴とするポンプ浚渫船用水底均し装置。
【請求項2】
前記ラダーの先端位置を検知するラダー位置計測手段と、前記ラダー位置計測手段の検知結果に基づき、水底面に対する前記均し具の高さ及び傾斜角を調整する調節手段とを備えている請求項1に記載のポンプ浚渫船用水底均し装置。
【請求項3】
前記支持体は、前記ラダーの側面より外向きに張り出した形状に形成され、前記均し具が前記ラダー側面より距離を置いて支持されている請求項1又は2に記載のポンプ浚渫船用水底均し装置。
【請求項4】
浚渫船本体から水底部に向けて水中に挿入したラダーを旋回させつつ、ラダー先端部に配置された掘削手段で水底部を掘削し、その掘削した土砂を周囲の海水とともに排砂管路を通して除去するポンプ浚渫工程を前記浚渫船本体の移動毎に繰り返すに際し、
前記ラダーの側部に支持体を介して土砂押圧面を旋回方向に向けた均し具を取り付け、該均し具を水底部で前記ラダーの旋回に連動してラダー旋回方向に移動させ、既に前記ポンプ浚渫工程を終えた水底部を平坦に均す均し工程を前記ポンプ浚渫工程と同時に行うことを特徴とする水底均し方法。
【請求項5】
一対の前記均し具を前記ラダーの両側にそれぞれ高さを違えて支持させた請求項4に記載の水底均し方法。
【請求項6】
前記均し具を前記ラダーの側面より距離を置いて支持させ、前記掘削手段による掘削幅の外側まで水底部を均す請求項4又は5に記載の水底均し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ浚渫船によって港湾等の水底部を浚渫した際に、水底部を均一に均す為のポンプ浚渫船用水底均し装置及びそれを使用した水底均し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、港湾等の水底部を浚渫する方法としては、ポンプ浚渫船を使用した浚渫方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ポンプ浚渫船1は、図9図10に示すように、浚渫船本体2から先端側を水底部Aに向けて水中に挿入されるラダー3と、浚渫船本体2とともにラダー3を旋回させる旋回手段4と、ラダー3先端部に配置された掘削手段5と、ラダー3先端部に吸引口6aを開口させた排砂管路6と、排砂管路6に接続された吸引ポンプ7とを備えている。
【0004】
浚渫船本体2は、船尾部に上下方向に向けた杭状のスパット8,8を備え、一方のスパット8を水底部Aに打ち込み、それを支点としてラダー3とともに水平方向に旋回(スイング)できるとともに、旋回動作に合わせて一方のスパット8を軸に他方のスパット8を移動させる工程と、他方のスパット8を軸に一方のスパットを移動させる工程とを繰り返すこと(以下、スパットの打ち替えという)により前進できるようになっている。
【0005】
図中符号4aは、旋回手段4を構成する旋回用ワイヤであって、船首部に設けられた各ウインチ(図示せず)で旋回用ワイヤ4a,4aを繰り出し・巻き取り動作することにより、スパット8を支点としてラダー3を浚渫船本体2とともに水平方向に旋回(スイング)させるようになっている。
【0006】
ラダー3は、その基端部を浚渫船本体2の船首部に枢支軸3aを介して上下に回動可能に支持させ、その先端側が昇降手段9により上下動するようになっている。
【0007】
昇降手段9は、浚渫船本体2の船首部に設置された支柱10の上端部より繰り出されたラダー操作用ワイヤ11,11を備え、ラダー操作用ワイヤ11,11の先端をラダー3の先端部及び中央部にそれぞれ連結させ、浚渫船本体2上に搭載されたウインチ(図示せず)によりラダー操作用ワイヤ11,11を繰り出し・巻き取り動作することにより枢支軸3aを基軸としてラダー3の先端側を上下動させるようになっている。
【0008】
掘削手段5は、ラダー3先端部に回転自在に支持されたカッターを備え、このカッターを図示しない駆動モータにより回転させることにより水底部Aの土砂を掘削するようになっている。
【0009】
また、ラダー3内には、可撓性を有するホース等からなる排砂管路6が配管されており、排砂管路6の一方の端部が吸引口6aとしてラダー3先端部に配置され、掘削手段5により掘削された土砂がこの吸引口6aより周囲の水とともに排砂管路6を通して吸引ポンプ7により吸引されるようになっている。
【0010】
このポンプ浚渫船1による浚渫作業は、スパット8を水底部Aに打ち込み、このスパット8を軸に浚渫船本体2とともにラダー3を旋回させつつラダー3先端の掘削手段5により水底部Aの土砂を掘削し、その掘削した土砂を周囲の海水とともに排砂管路6を通して吸引ポンプ7により吸い上げ、ポンプ圧送により土捨て場に直接移送する作業(以下、ポンプ浚渫工程)をポンプ浚渫船1の移動毎に繰り返すようになっている。
【0011】
しかしながら、このようなポンプ浚渫船1による浚渫作業では、各ポンプ浚渫工程後にポンプ浚渫船1を移動させることで、ポンプ浚渫により形成された旋回方向に連続する溝状の浚渫溝の浚渫船移動方向手前側に凸部が生じ、ポンプ浚渫船の移動方向に不陸が生じる。
【0012】
そこで、従来では、図11に示すように、浚渫作業で生じる不陸を考慮し、設定された計画浚渫深度DTよりも余裕を持たせて掘削すること、即ち、余掘りをすることによって浚渫後の計画浚渫深度を確保していた。尚、図中符号D0は現地盤深度である。
【0013】
また、グラブバケット等を用いた浚渫工法で生じる不陸に対しては、浚渫船とは別個に作業船を用意し、この作業船下にH型鋼等からなる均し具を吊り下ろして着底させ、この均し具を作業船の移動とともに水底部を移動させることによって水底部を均一に仕上げる工法も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10―280468号公報
【特許文献2】特開2012−92561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、現在、浚渫土量に対して土捨て場が慢性的に不足している状況にあることから、浚渫土量を最小限に抑えるために余掘り量の低減が望まれているのに対し、上述の如き従来のポンプ浚渫船による浚渫作業では、浚渫後の水底面の不陸を考慮して実際の浚渫深度に目標浚渫深度より余裕を持たせたことにより、余計な部分の土砂までも余掘りせざるを得ないという問題があった。
【0016】
一方、上述した従来の均し作業は、ポンプ浚渫と同時進行で均し作業を行うことが出来ず、その為、ポンプ浚渫船とは別個に均し作業用の作業船を必要とし、浚渫作業と均し作業とを別の時間帯で行わなければならない為、その分、工期が長期化するとともに工費が嵩むという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、ポンプ浚渫船を使用した浚渫作業において、余掘り量の低減を図れ、且つ、効率的に水底部を均すことができるポンプ浚渫船用水底均し装置及びそれを使用した水底均し方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、浚渫船本体から先端側を水底部に向けて水中に挿入されるラダーと、該ラダーを旋回させる旋回手段と、該ラダー先端部に配置された掘削手段と、前記ラダー先端部に吸引口を開口させた排砂管路と、該排砂管路に接続された吸引ポンプとを備えたポンプ浚渫船にあって、掘削された水底部を均す為のポンプ浚渫船用水底均し装置において、前記ラダーの側部に支持体を介して支持された均し具を備え、該均し具の土砂押圧面が前記ラダーの旋回方向に向けられているポンプ浚渫船用水底均し装置にある。
【0019】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記ラダーの先端位置を検知するラダー位置計測手段と、前記ラダー位置計測手段の検知結果に基づき、水底面に対する前記均し具の高さ及び傾斜角を調整する調節手段とを備えていることにある。
【0020】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記支持体は、前記ラダーの側面より外向きに張り出した形状に形成され、前記均し具が前記ラダー側面より距離を置いて支持されていることにある。
【0021】
請求項4に記載の発明の特徴は、浚渫船本体から水底部に向けて水中に挿入したラダーを旋回させつつ、ラダー先端部に配置された掘削手段で水底部を掘削し、その掘削した土砂を周囲の海水とともに排砂管路を通して除去するポンプ浚渫工程を前記浚渫船本体の移動毎に繰り返すに際し、前記ラダーの側部に支持体を介して土砂押圧面を旋回方向に向けた均し具を取り付け、該均し具を水底部で前記ラダーの旋回に連動してラダー旋回方向に移動させ、既に前記ポンプ浚渫工程を終えた水底部を平坦に均す均し工程を前記ポンプ浚渫工程と同時に行う水底均し方法にある。
【0022】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項4の構成に加え、一対の前記均し具を前記ラダーの両側にそれぞれ高さを違えて支持させたことにある。
【0023】
請求項6に記載の発明の特徴は、請求項4又は5の構成に加え、前記均し具を前記ラダーの側面より距離を置いて支持させ、前記掘削手段による掘削幅の外側まで水底部を均すことにある。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るポンプ浚渫船用水底均し装置は、上述したように、浚渫船本体から先端側を水底部に向けて水中に挿入されるラダーと、該ラダーを旋回させる旋回手段と、該ラダー先端部に配置された掘削手段と、前記ラダー先端部に吸引口を開口させた排砂管路と、該排砂管路に接続された吸引ポンプとを備えたポンプ浚渫船にあって、掘削された水底部を均す為のポンプ浚渫船用水底均し装置において、前記ラダーの側部に支持体を介して支持された均し具を備え、該均し具の土砂押圧面が前記ラダーの旋回方向に向けられていることにより、ポンプ浚渫作業と同時に水底部の均し作業を行うことができる。
【0025】
また、本発明において、前記ラダーの先端位置を検知するラダー位置計測手段と、前記ラダー位置計測手段の検知結果に基づき、水底面に対する前記均し具の高さ及び傾斜角を調整する調節手段とを備えていることにより、潮位変動や波浪が発生し、ラダーの位置や傾斜角度に変動が生じた場合にあっても、均し具の高さを常に一定に維持することができ、高精度で計画した均し面を形成することができる。
【0026】
更に、本発明において、前記支持体は、前記ラダーの側面より外向きに張り出した形状に形成され、前記均し具が前記ラダー側面より距離を置いて支持されていることにより、均し具がラダー先端部より旋回方向中心側に位置していても、掘削手段による掘削幅よりも広い範囲を均すことができ、均し漏れがない。
【0027】
また、本発明に係る水底均し方法は、上述したように、浚渫船本体から水底部に向けて水中に挿入したラダーを旋回させつつ、ラダー先端部に配置された掘削手段で水底部を掘削し、その掘削した土砂を周囲の海水とともに排砂管路を通して除去するポンプ浚渫工程を前記浚渫船本体の移動毎に繰り返すに際し、前記ラダーの側部に支持体を介して土砂押圧面を旋回方向に向けた均し具を取り付け、該均し具を水底部で前記ラダーの旋回に連動してラダー旋回方向に移動させ、既に前記ポンプ浚渫工程を終えた水底部を平坦に均す均し工程を前記ポンプ浚渫工程と同時に行うことにより、ポンプ浚渫工法において、ポンプ浚渫作業と同時に均し作業を行うことができ、均しにより実際の浚渫面を平坦にすることで、余計な余掘りをする必要がなくなるので、大幅に余掘り量を低減することができる。
【0028】
また、本発明において、一対の前記均し具を前記ラダーの両側にそれぞれ高さを違えて支持させたことによって、旋回に伴い粗均しと仕上げ均しとを行うことができ、高精度で浚渫深度を管理することができる。
【0029】
更に、本発明において、前記均し具を前記ラダーの側面より距離を置いて支持させ、前記掘削手段による掘削幅の外側まで水底部を均すことにより、掘削手段による掘削幅よりも広い範囲を均すことができ、均し漏れがないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明に係る水底均し装置を備えたポンプ浚渫船の概略を示す部分拡大側面図である。
図2】同上の部分拡大平面図である。
図3図1中のラダー先端部を示す拡大側面図である。
図4】同上のラダー先端部を示す拡大正面図である。
図5】制御手段を示す概略図である。
図6】本発明に係る水底均し方法の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明に係る水底均し方法の浚渫工程及び均し工程の概略を説明する為の平面図である。
図8】本発明方法における水底部の状態を説明するための断面図である。
図9】従来のポンプ浚渫船の概略を示す側面図である。
図10】同上の概略平面図である。
図11】従来のポンプ浚渫船によって浚渫された水底部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明に係るポンプ浚渫船用水底均し装置の実施態様を図1図5に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述した従来例と同様の構成には同一符号を付して説明する。また、図中符号1はポンプ浚渫船、符号Aは水底部、符号Bは水面である。
【0032】
ポンプ浚渫船1は、図9図10に示す従来例と同様に、水上を移動可能な浚渫船本体2と、浚渫船本体2の船主側より水底部Aに向けて水中に挿入されたラダー3と、ラダー3を旋回動作させる旋回手段4と、ラダー3の先端部に配置されたカッター等の掘削手段5と、吸引口6aをラダー3先端部に開口させた排砂管路6と、排砂管路6に接続された吸引ポンプ7とを備え、浚渫船本体2とともにラダー3を旋回させつつラダー3先端の掘削手段5により水底の土砂を掘削し、その掘削した土砂を周囲の海水とともに排砂管路6を通して吸引ポンプ7により吸い上げ、ポンプ圧送により土捨て場に直接移送する作業をポンプ浚渫船1の移動毎に繰り返すようになっている。
【0033】
また、このポンプ浚渫船1には、水底均し装置20を具備し、浚渫作業と並行して浚渫作業を終えた部分の均し作業を同時に行えるようになっている。
【0034】
尚、図中符号21は、ポンプ浚渫船1の制御を行う制御室であり、制御室21内には制御装置22を構成するコンピュータ端末等が設置され、この制御装置22により水底均し装置20が自動制御できるようになっている。
【0035】
水底均し装置20は、図1〜4に示すように、ラダー3の側部に張り出した支持体23を介して支持させた均し具24a,24bを備え、この均し具24a,24bの土砂押圧面がラダー3の旋回方向に向けられ、ラダー3の旋回に伴って均し具24a,24bが水底部Aを移動し、ラダー3の旋回方向と平行に水底部Aを均すようになっている。
【0036】
また、水底均し装置20には、ラダー3先端部の位置を計測するラダー位置計測手段25と、ラダー位置計測手段25の計測結果に基づき均し具24a,24bの高さ及び傾斜角度を調整する調節手段とを備え、ラダー位置計測手段25の検知結果に基づいて制御装置22により調節手段が制御されるようになっている。
【0037】
支持体23は、ラダー3の側面に基端が固定された一対の支持部材26,26と、各支持部材26,26の先端に支持された滑車27と、浚渫船本体2上に設置された調節用ウインチ28,28より繰り出された支持ワイヤ29とを備え、滑車27を介して垂下させた支持ワイヤ29の下端に均し具24a,24bが連結され、支持体23を介して均し具24a,24bをラダー3の側部に支持させている。
【0038】
支持部材26は、一定の長さを有する棒状に形成され、ラダー3側面より外向きに突出し、均し具24a,24bがラダー側面より距離を置いて支持されるようにしている。
【0039】
各均し具24a,24bは、水平方向に向けた土砂押出し面を備えた形状に形成され、本実施例では、H型鋼をもって構成し、上下フランジ30,30間を連結するウェブ31が土砂押圧面を成している。
【0040】
また、均し具24a,24bの上面には、長手方向に間隔を置いて一対の連結具32,32が溶接等により固定され、この連結具32,32に支持ワイヤ29の先端が連結され、均し具24a,24bが支持体23を介して高さ及び傾斜角度を調節可能にラダー3の側部に支持されている。
【0041】
調節手段には、浚渫船本体2上に設置された調節用ウインチ28,28を使用し、調節用ウインチ28,28によって各支持ワイヤ29を繰り出し又は巻き取り動作することにより均し具24a,24bの水底面に対する高さ及び傾斜角度を調整できるようになっている。
【0042】
ラダー位置計測手段25には、ラダー3の位置制御に使用するものを兼用し、例えば、図5に示すように、ラダー3に設置された傾斜計33と、陸上に設置された潮位測定局から随時潮位計測データを受信する潮位受信機34とを備え、傾斜計33により計測された水平面に対するラダー3の傾斜角と、その際の潮位とをリアルタイムに制御装置22に出力するようになっている。
【0043】
次に、このようなポンプ浚渫船1及び水底均し装置20を使用した水底均し方法について図6図8に基づいて説明する。尚、図中符号D0は現水底地盤深度、符号40は本実施例のポンプ浚渫により形成される浚渫溝、符号41は従来工法のポンプ浚渫における浚渫溝である。
【0044】
先ず、事前準備として、計画浚渫深度DT、計画浚渫範囲Wを設定し、そのデータを、制御装置22を構成するコンピュータ機器に入力しておく。
【0045】
次に、ポンプ浚渫船1を所望の位置まで移動させ、その位置で一方のスパット8を水底部Aに向けて打ち込み、ポンプ浚渫船1の旋回基軸を確保する。
【0046】
そして、昇降手段9を動作させてラダー3を傾動させ、ラダー3の先端部を水底部Aに向けて水中に挿入し、ラダー3先端部の掘削手段5を水底部Aに降下させる。
【0047】
その際、計画浚渫深度DTに対するラダー3先端部の深度は、従来の浚渫作業における計画浚渫深度DTに対するラダー3先端部の深度に比べて浅い位置に設定し、余掘り量を大幅に低減した状態で行う。
【0048】
尚、ラダー3を傾動させる作業は、ラダー位置計測手段25によってラダー3先端部の実際の深さ及び位置を計測しつつ行い、制御装置22は、ラダー位置計測手段25による実際の計測データを基にラダー3を動作させ、ラダー3先端部の位置を計画浚渫深度DTに合わせて制御する。
【0049】
そして、この状態で掘削手段5及び吸引ポンプ7を動作させるとともに、旋回手段4により浚渫船本体2とともにラダー3を旋回させ、ポンプ浚渫工程を開始する。
【0050】
このポンプ浚渫工程は、図7に示すように、ラダー3の旋回(スイング)に伴い掘削手段5によって円弧状に水底部Aが掘削され、掘削手段5によって掘削された土砂を周囲の海水とともに排砂管路6を通して吸引ポンプ7により吸い上げ、ポンプ圧送により土捨て場に直接移送する。
【0051】
そして、ラダー3とともに掘削手段5を計画浚渫幅Wの端から端まで旋回させ、計画浚渫幅Wの端から端に亘って浚渫することにより、旋回方向に連続した浚渫溝40が形成される。
【0052】
その際、一方のスパット8を基軸としたポンプ浚渫船1(浚渫船本体2)の旋回(スイング)動作に伴い、他方のスパット8の位置が当該一方のスパット8の位置より前方に移動するので、その位置で他方のスパット8を水底部Aに打ちこみ、一方のスパット8を引き上げること、即ち、両スパット8,8を打ち替えることにより、ポンプ浚渫船1が一定距離前進する。
【0053】
しかる後、水底部Aに打ちこまれているスパット8をポンプ浚渫船1の旋回基軸とし、昇降手段9を動作させてラダー3を傾動させ、先端部を水底部Aに向けて水中に挿入し、ラダー3先端部の掘削手段5を水底部Aに降下させ、上記と同様にポンプ浚渫工程を行う。
【0054】
そして、ポンプ浚渫工程をポンプ浚渫船1の移動毎に繰り返すことにより、既に浚渫作業を終えた箇所の浚渫溝40の浚渫船移動方向手前側に新たな浚渫溝40が平行に形成されるとともに、互いにポンプ浚渫船1の移動方向で隣り合う浚渫溝40,40間に山形状の凸部43が形成され、図11に示すように、ポンプ浚渫船1の移動方向に凹凸が連なる不陸が生じる。
【0055】
尚、各ポンプ浚渫工程においては、計画浚渫深度DTに対するラダー3先端部の深度を、従来の浚渫作業における計画浚渫深度DTに対するラダー3先端部の深度に比べて浅い位置に設定したことによって、凸部43の頂部高さが設定された計画浚渫深度DTまで至らない場合がある。
【0056】
一方、各ポンプ浚渫工程の際には、均し具24a,24bを水底部Aでラダー3の旋回に連動してラダー3の旋回方向に移動させ、既にポンプ浚渫工程を終えた水底部Aを平坦に均す作業(均し工程)を同時に行う。
【0057】
均し工程は、先ず、昇降手段9を動作させてラダー3を傾動させ、ラダー3先端部の掘削手段5を水底部Aに降下させる際、ラダー位置計測手段25によって計測されたラダー3の傾斜角及び潮位に基づいて、各調節用ウインチ28,28を動作させ、各均し具24a,24bを着底させる。
【0058】
その際、各均し具24a,24bは、ラダー3の両側でそれぞれ高さを違えさせ、具体的には、旋回方向前方(本実施例では、図4中右側)の均し具24aを計画浚渫深度DTに合わせ、旋回方向後方(本実施例では、図4中左側)の均し具24bを計画浚渫深度DTよりやや深い位置D1(以下、均し面位置という)に合わせる。
【0059】
そして、ラダー3先端部及び各均し具24a,24bをそれぞれ所定の深度DT,D1に着底させた後、旋回手段4により浚渫船本体2とともにラダー3の旋回を開始する。
【0060】
ラダー位置計測手段25は、ラダー3の旋回中随時、傾斜計33によってラダー3の傾斜角を計測するとともに、潮位受信機34によって潮位データを受信し、ラダー3先端部の位置を検知するとともに、その計測データを制御装置22に出力する。
【0061】
そして、制御装置22は、ラダー位置計測手段25の計測結果に基づき、調節用ウインチ28,28によって支持ワイヤ29を繰り出し・巻き取りすることによって、各均し具24a,24bの高さ及び傾斜角を調節する。
【0062】
よって、各均し具24a,24bは、旋回中常に設定された浚渫深度及び傾斜角に維持され、図4図8に示すように、ラダー3の旋回に伴って、旋回方向前方の均し具24aの土砂押圧面(ウェブ31)で凸部上部43aの土砂を押しやり、押しやられた土砂が両側の浚渫溝40,40に移動し、旋回方向後方の均し具24bで残った部分43bの土砂を押しやりつつ、均し具24bの底面で平坦に整える。
【0063】
このように、均し具24a,24bの高さをラダー3の両側において高さを違え、粗均しと仕上げ均しを二段階で行うことによって、効率良く高精度で均し面を計画浚渫深度DTよりやや深めに整えることができる。
【0064】
そして、計画浚渫幅Wの端から端に亘ってラダー3を旋回させ、当該浚渫幅に亘ってラダー3先端部の掘削手段5によって掘削を行うとともに、ラダー3先端部より浚渫船移動方向手前側の既に浚渫工程を終えた部分を計画浚渫幅の端から端に亘って平坦に均す。
【0065】
その際、ラダー3が計画浚渫幅Wの端部まで移動した際、支持部材26,26がラダー3側面より外向きに突出し、均し具24a,24bがラダー側面より距離を置いて支持されているので、図7に示すように、外側の均し具24a,24bがラダー3先端部(掘削手段5)よりも外側まで移動でき、計画浚渫幅Wよりも広い範囲W2を均すことができ、浚渫作業を行った部分を漏れなく均すことができる。
【0066】
次に、計画浚渫幅Wの端から端まで浚渫作業及び均し作業が完了した後、ラダー3を一旦上昇させた後、両スパット8,8の打ち替えを利用してポンプ浚渫船1を一定距離前進させ、上記の浚渫工程及び均し工程をポンプ浚渫船1の移動毎に繰り返す。
【0067】
尚、各均し具24a,24bの高さは、各均し工程の旋回方向に合わせて逆転させ、図4中に示す旋回方向と逆方向に旋回する際には、旋回方向前方の均し具24bの深度を計画浚渫深度DTに合わせ、旋回方向後方の均し具24aの深度を均し面深度D1に合わせて調整する。
【0068】
このように構成された水底部の均し方法では、ポンプ浚渫工法において、浚渫作業と均し作業とを同時に行うことができ、均し作業を行うことで、従来に比べ余掘り量を大幅に低減することができる。
【0069】
尚、上述の実施例では、ラダー位置計測手段25をラダー3に設置された傾斜計33と、陸上に設置された潮位計測局から潮位データを受信する潮位受信機34とをもって構成した例について説明したが、ラダー位置計測手段25の構成は上記実施例に限定されず、例えば、水深を計測する水深計と、ラダー3先端部の位置を計測するためのGPS等のGNSS機器との組み合わせをもって構成してもよい。
【0070】
また、上述の実施例では、均し具24a,24bが支持ワイヤ29を介して支持され、支持ワイヤ29の繰り出し量で均し具24a,24bの高さ及び傾斜角を調節するようにした例について説明したが、均し具24a,24bの支持手段及び調節手段の態様は、これに限定されず、支持部材26,26に支持させた伸縮可能なシリンダ等の伸縮部材に均し具24a,24bを連結し、伸縮部材の伸縮によって均し具24a,24bを高さ及び傾斜角を調節するようにしてもよい。
【0071】
更に、上述の実施例では、均し具をラダー3の両側に設けた例について説明したが、何れか一方のみに設けてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ポンプ浚渫船
2 浚渫船本体
3 ラダー
4 旋回手段
5 掘削手段
6 排砂管路
7 吸引ポンプ
8 スパット
9 フレーム
10 ラダー操作用ワイヤ
20 水底均し装置
21 制御室
22 制御装置
23 支持体
24a,24b 均し具
25 ラダー位置計測手段
26 支持部材
27 滑車
28 調節用ウインチ
29 支持ワイヤ
30 フランジ
31 ウェブ
32 連結具
33 傾斜計
34 潮位受信機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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