(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6569994
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】蜂産物エキスの製造方法及び蜂産物エキス
(51)【国際特許分類】
A61K 35/64 20150101AFI20190826BHJP
A61K 35/644 20150101ALI20190826BHJP
A61K 36/18 20060101ALI20190826BHJP
A23L 21/20 20160101ALI20190826BHJP
A61P 3/02 20060101ALN20190826BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20190826BHJP
【FI】
A61K35/64
A61K35/644
A61K36/18
A23L21/20
!A61P3/02
!A23L33/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-68833(P2015-68833)
(22)【出願日】2015年3月30日
(65)【公開番号】特開2016-188184(P2016-188184A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】591190494
【氏名又は名称】株式会社富士見養蜂園
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(72)【発明者】
【氏名】角田 汎造
【審査官】
名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−146574(JP,A)
【文献】
特開2010−259346(JP,A)
【文献】
特開平10−179057(JP,A)
【文献】
特開2007−274971(JP,A)
【文献】
特開2007−244316(JP,A)
【文献】
特開2011−026240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂産物を液化ガスによって凍結して粉砕する凍結粉砕工程と、得られた粉砕物に水を加えて懸濁液を得る加水工程と、得られた懸濁液を超高圧ホモジナイザーで処理して前記蜂産物の内容成分を抽出する抽出工程とを含むことを特徴とする蜂産物エキスの製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程で得られた処理液から粗大粒子を除去し、シクロデキストリンを混合して、乾燥粉末化する粉末化工程を更に含む、請求項1記載の蜂産物エキスの製造方法。
【請求項3】
前記加水工程は、前記水として、飲料水をイオン交換樹脂に通してミネラルを除去し、次いで黒曜石に接触させて還元水とし、更にトルマリンに接触させて得られる活性還元水を加えて行う、請求項1又は2記載の蜂産物エキスの製造方法。
【請求項4】
前記抽出工程において、前記懸濁液を2000気圧以上の超高圧ホモジナイザーで処理する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の蜂産物エキスの製造方法。
【請求項5】
前記蜂産物が、花粉荷及び/又はプロポリスである、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蜂産物エキスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花粉荷やプロポリスなど蜂産物を原料とする蜂産物エキスの製造方法、及びその方法により製造する蜂産物エキスに関する。
【背景技術】
【0002】
蜜蜂は、花を訪れた際に体についた花粉を後脚の花粉バスケット(ポーレンバスケット)に集めて、蜜と練り混ぜて団子状にして巣に持ち帰り、自身や子孫の食糧として蓄える。この花粉団子は花粉荷と呼ばれ、蛋白質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンなど、栄養成分をバランスよく含み、蜂の主要な栄養源となっている。また、蜂が消化して代謝されることで女王蜂の主食であるローヤルゼリーとなる。
【0003】
プロポリスは、巣門や巣内の隙間に塗られた、別名蜂ヤニとも呼ばれる樹脂状の天然物であり、働き蜂が野外で集めた樹液、植物精油、植物線維、蜜蜂の唾液、蜜蝋などから構成されている。巣を構造上補強したり、巣内の腐敗を防止したり、微生物や昆虫など外敵から巣を防御したりするなどの役割を担っていると考えられている。また、プロポリスには、抗老化、抗肥満、抗アレルギー、抗風邪等の種々の生理活性に関する報告もある。
【0004】
従来、上記のような蜂産物をヒトや動物などに摂取するようにした、栄養補助食品や健康食品、飼料などが知られている。しかしながら、花粉は硬い外膜を有しており、また、プロポリスも樹脂状の天然物であり、それらに含まれる内容成分を有効に利用できるように調製することが困難であった。
【0005】
このような問題に関して、例えば、特許文献1には、蜜源花粉の殻壁を破砕精製して作られた精製花粉を発酵させて製造される消化吸収率を向上させた、ロイヤルゼリー様の発酵花粉栄養調整物、及びこれを乾燥して得られる粉末状の発酵花粉栄養調整物が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、親水性有機溶媒抽出プロポリスと、水抽出プロポリスと、超臨界抽出プロポリスとを含有するプロポリス組成物であって、超臨界抽出プロポリス1重量部に対して、親水性有機溶媒抽出プロポリスを1〜20重量部、及び水抽出プロポリスを0.5〜6重量部含有するプロポリス組成物が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、花粉粒を低温液化ガスに浸漬し、凍結させることにより低温ぜい性化し、この状態で衝撃式粉砕機により該花粉粒を破砕してその内容物質を抽出することが記載されている。
【0008】
また、特許文献4には、花粉と液体などとの流状物を高圧の下で超微粒化装置に流入させて該装置により前記花粉の殻を粉砕して微粒状の花粉成分と液体などとの流状物として流出させ、この流状物より液体などを除き、花粉成分として取出すことが記載されている。
【0009】
また、特許文献5には、蜜蜂花粉荷を洗浄・粉砕・殺菌して得られた微粒子状の花粉粒子を、還元性を有し、且つ活性水素を含む特性を有する電解還元水中に添加混入して攪拌混合し、混合液の調整を行って流状物とし、該流状物を超微粒子化装置に圧送して、前記電解還元水中の活性水素により超微粒子化工程中に発生する活性酸素を消去して、花粉成分を劣化させることなく、花粉全体を超微粒子化して殻を破砕することにより、前記超微粒子化した花粉粒子から花粉成分を抽出することが記載されている。
【0010】
また、特許文献6には、微粉末状のプロポリス粉末と、水道水、または天然水を電解して得られた、塩素を含まず、pH8〜10程度のアルカリ性で、酸化還元電位が200mV以下であって、且つ活性水素を含む特性を有する電解還元水とを混合した流状物を超微粉末化装置に投入して、前記電解還元水の作用により、プロポリスの有効成分を劣化させることなく、超微粉末化すると共に、プロポリス粉末中のプロポリスの有効成分を前記電解還元水中に抽出して、該流状物をそのまま飲料とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−30926号公報
【特許文献2】特開2003−61593号公報
【特許文献3】特開昭59−146574号公報
【特許文献4】特開2001−119号公報
【特許文献5】特開2007−37529号公報
【特許文献6】特開2007−244316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1のように花粉を麹菌、酵母、乳酸菌、ビタミン等を用いて発酵させる方法では、発酵により蜂産物の内容成分が変質してしまい、自然のまま抽出することができなかった。
【0013】
また、特許文献2のように親水性有機溶媒抽出と、水抽出と、超臨界抽出とを組み合わせた方法では、蜂産物の内容成分をまるごと抽出することは難しかった。また、有機性溶媒の除去や異なる抽出工程の作業が煩雑であった。
【0014】
また、特許文献3のように極低温下に衝撃粉砕することで、硬い外膜を有する花粉やプロポリスのような樹脂状物であっても効果的な粉砕を行うことが可能であるが、このような方法による粉砕だけでは、蜂産物の内容成分が粉砕片に内包されたままで、ヒト等の体内に有効に吸収利用される形態であるとはいい難かった。
【0015】
また、特許文献4〜6のように水等の溶媒に懸濁させた状態で高圧下に衝撃粉砕することで破砕と抽出とを一緒に行うことが可能であるが、破砕のためのエネルギーによって、蜂産物の内容成分の分解等の変質や劣化が避けられない方法であった。
【0016】
よって、本発明の目的は、花粉荷やプロポリスなど蜂産物の内容成分を、ヒト等の体内に有効に吸収利用される形態で、自然のまま余すところなく、豊富に含むエキスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、本発明は、蜂産物を液化ガスによって凍結して粉砕する凍結粉砕工程と、得られた粉砕物に水を加えて懸濁液を得る加水工程と、得られた懸濁液を超高圧ホモジナイザーで処理して前記蜂産物の内容成分を抽出する抽出工程とを含むことを特徴とする蜂産物エキスの製造方法を提供するものである。
【0018】
本発明によれば、蜂産物を液化ガスによって凍結して粉砕することにより、酸化などによる蜂産物の内容成分の変質や劣化を抑制しつつ、例えば硬い外膜を有する花粉やプロポリスのような樹脂状物などであっても効果的に破砕することができる。次いで、破砕物に水を加えて懸濁液とし、この懸濁液を超高圧ホモジナイザーで処理することにより、例えば花粉の外膜とその内容物との分離を促進したり、プロポリス成分の微細均質化を促進したりして、蜂産物の内容成分が、ヒト等の体内に有効に吸収利用される形態で、自然のまま余すところなく抽出され、これを豊富に含むエキスを得ることができる。
【0019】
本発明の蜂産物エキスの製造方法においては、前記抽出工程で得られた処理液から粗大粒子を除去し、シクロデキストリンを混合して、乾燥粉末化する粉末化工程を更に含むことが好ましい。これによれば、抽出工程で抽出した成分が、シクロデキストリンに包接されて、粉末化されることにより、その成分の変質や劣化を抑制すると共に、ヒト等の体内への吸収利用の効率を更に良好にすることができる。また、錠剤、カプセルなどに加工しやすい形態の粉末エキスを提供できる。
【0020】
また、前記加水工程は、前記水として、飲料水をイオン交換樹脂に通してミネラルを除去し、次いで黒曜石に接触させて還元水とし、更にトルマリンに接触させて得られる活性還元水を加えて行うことが好ましい。これによれば、その活性還元水の高い還元性によって、蜂産物の内容成分の変質や劣化を抑制しつつ、加水工程後の工程を行うことができる。また、その活性還元水は界面活性様の特性にも秀でているので、蜂産物の内容成分を抽出する効率を更に向上させることができる。
【0021】
また、前記抽出工程において、前記懸濁液を2000気圧以上の超高圧ホモジナイザーで処理することが好ましい。
【0022】
また、前記蜂産物が、花粉荷及び/又はプロポリスであることが好ましい。
【0023】
一方、本発明のもう一つは、上記の製造方法により製造されたものであることを特徴とする蜂産物エキスを提供するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、花粉荷やプロポリスなど蜂産物の内容成分を、ヒト等の体内に有効に吸収利用される形態で、自然のまま余すところなく、豊富に含むエキスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の蜂産物エキスの製造方法の一実施形態の工程図である。
【
図2】本発明の蜂産物エキスの製造方法の他の実施形態の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明が適用される蜂産物としては、例えば、花粉荷、プロポリス、蜂の子などが挙げられる。特に、従来、エキスの製造が困難であった花粉荷やプロポリスに好ましく適用される。花粉荷は、養蜂巣箱の巣門に働き蜂が脚を使って通らなければならない孔を有するフィルターを備え付けて、巣に帰還した働き蜂が脚につけていた花粉荷を落として、それを下部に備えた受け皿で回収することなどによって採集することができる。プロポリスは、養蜂巣箱で自然的に形成されたものをこそぎ取ったり、あるいは蜜蜂が嫌がるバーブ成分などを板に吹き付けて巣内に備えると、蜜蜂は巣を清潔に保つためにその板にプロポリスを塗りつけるので、これをこそぎ取ったりすることなどによって採集することができる。
【0027】
以下、本発明の蜂産物エキスの製造方法について、
図1の工程図を参照しつつ具体的に説明する。
【0028】
(1)凍結粉砕工程(S1)
原料は、必要に応じて、適宜、粗粉砕したり、水分調整したり、一般生菌数の検査を実施したりしたものなどを使用することができる。粗粉砕の大きさとしては、使用する装置によっても異なるが、典型的には0.1〜5ミリ角程度の大きさであり、より典型的には1〜3ミリ角程度の大きさである。凍結粉砕には、従来、当業者に周知の装置を使用することができる。その典型的な構成を述べると、液化ガス供給タンクと、原料ホッパーと、原料冷却器と、粉砕機と、篩と、を備えており、原料ホッパー原料を投入し、その原料が原料冷却器へと導入され、液化ガス供給タンクから供給される液化ガスに浸漬もしくは接触、あるいは間接的に接触することで、品温−180℃〜−50℃程度、より典型的には−130℃〜−50℃程度の凍結状態になる。液化ガスとしては液体窒素(沸点:−196℃)などが挙げられる。そして、その状態を保ちつつ粉砕機で粉砕すると、原料が低温脆性化しているので、例えば硬い外膜を有する花粉やプロポリスのような樹脂状物などであっても効果的に破砕することができる。粉砕の方式は、特に制限はなく、例えば、ジェットミルのような気流式粉砕機や、パワーミルのような衝撃式粉砕機などを用いることができる。粉砕後には、必要に応じて篩にかけて、所定の粒度のものを選別して、後の工程に使用する。なお、所定の粒径を超えたものは、再度原料ホッパーあるいは原料冷却器に戻して原料として再利用してもよい。粉砕物の粒度は、全体の85質量%以上が粒径1〜100μmの範囲に入るもの(例えば目開きが100μmの篩をスルーし、目開きが1μmの篩にオンするもの)であることが好ましく、全体の85質量%以上が粒径10〜75μmの範囲に入るもの(例えば目開きが75μmの篩をスルーし、目開きが10μmの篩にオンするもの)であることがより好ましく、全体の95質量%以上が粒径1〜100μmの範囲に入るもの(例えば目開きが100μmの篩をスルーし、目開きが1μmの篩にオンするもの)であることが更により好ましく、全体の95質量%以上が粒径10〜75μmの範囲に入るもの(例えば目開きが75μmの篩をスルーし、目開きが10μmの篩にオンするもの)であることが最も好ましい。粉砕物の粒度がその範囲を超えると、後の工程において超高圧ホモジナイザーで処理するときに粉砕物の更なる破砕が起こり、その破砕のときに生じるエネルギーにより蜂産物の内容成分の変質や劣化につながるので、好ましくない。また、粉砕物の粒度がその範囲未満であると、粉砕に無駄に時間とエネルギーを費やすだけであり、後の工程において超高圧ホモジナイザーで処理するときの抽出効率が向上しないので、好ましくない。なお、粉砕物は、後の工程を施すまでは、凍結した状態で保管することが好ましい。これによれば、蜂産物の内容成分の変質や劣化を抑制することができる。
【0029】
(2)加水工程(S2)
凍結粉砕工程(S1)で得られた粉砕物に水を加えて懸濁液を得る。水の添加量としては粉砕物100gに対して400〜1000mL程度であることが好ましく、500〜800mL程度であることがより好ましい。水の添加量が上記範囲以外であると、蜂産物の内容物を抽出する効率が悪くなる傾向となるので、好ましくない。
【0030】
添加する水としては、飲料水をイオン交換樹脂に通してミネラルを除去し、次いで黒曜石に接触させて還元水とし、更にトルマリンに接触させて得られる活性還元水を用いることが好ましい。より具体的には、以下に説明する樹脂タンク、黒曜石カートリッジ、トルマリン分散セラミックカートリッジの順で通液することなどにより得られる、pH7±0.5、酸化還元電位+250〜−250mVの活性還元水を用いることが好ましい。
【0031】
<樹脂タンク>
イオン交換樹脂に通してミネラルを除去する方法は、従来、当業者に周知の方法により行うことができる。例えば、スルホン化したスチレンビニルベンゼン球状共重合物などの強酸性カチオン樹脂を、およそ30L容のタンクに入れて飲料水を通液し、飲料水中に含まれる陽イオンである鉄分、銅、カルシウム、マグネシウムなどを樹脂に吸着させて、陽イオン交換樹脂からはナトリウムを放出させ、水を軟水とすることができる。イオン交換樹脂の種類や樹脂の容量などは、適宜、当業者周知の範囲のものを設定すればよい。
【0032】
<黒曜石カートリッジ>
黒曜石(obsidian)を適当な大きさに砕き、その黒曜石を水の流通孔を有する保持容器に入れたうえ、あるいは直接カートリッジに入れて、上記樹脂タンクに通した水を接触させる。これにより、黒曜石の表面からは、随時水中に電子が供給されて、水を還元水とすることができる。また、水中の塩素をイオン化して無臭化することができる。更に、黒曜石が放射する遠赤外線の作用によって、水のクラスター構造を切断し、単分散化することができる。
【0033】
<トルマリン分散セラミックカートリッジ>
トルマリン(tourmaline)を数mmの厚みを持つように粉砕加工し、その10質量部を、玄武岩より抽出された絶縁性セラミック90質量部と混合し、約800〜1100℃にて処理を施すことにより、トルマリンを10質量%含有する直径3mm程度のセラミック球体を得ることができる。なお、絶縁性セラミックは、トルマリンどうしがお互いに接近しすぎて、反対符号の電極どうしが打ち消し合うことがないようにする目的で使用され、その種類に特に制限はなく、適宜、当業者周知の範囲のものを使用すればよい。このトルマリン分散セラミック球体を、水の流通孔を有する保持容器に入れたうえ、あるいは直接カートリッジに入れて、上記黒曜石カートリッジに通した水を下から上へと通過させ、その勢いを利用してセラミックが最適条件で撹拌されるようにする。これにより多くの水分子と接触させることができる。トルマリン分散セラミック球体の表面電界は10〜20πmの領域に限定されるが、その範囲内では強力な静電界を呈し、これを通過する、好ましくは単分散化された水に水酸基を付与して、ヒドロキシルマイナスイオン(H
3O
2−)を形成させることができる。また、有害金属類が含まれていれば、電着現象により、セラミック球体の表面部に吸着させて水中から除去することができる。
【0034】
このようにして得られた活性還元水は、水分子が単分散化し、ヒドロキシルマイナスイオン(H
3O
2−)を形成しているので、高い還元性を有し、且つ、界面活性様の特性にも秀でている。よって、その活性還元水の高い還元性によって、蜂産物の内容成分の変質や劣化を抑制しつつ、加水工程後の工程を行うことができる。また、その活性還元水の界面活性様の特性により、蜂産物の内容成分を抽出する効率を更に向上させることができる。
【0035】
(3)抽出工程(S3)
加水工程(S2)で得られた懸濁液を超高圧ホモジナイザーで処理して蜂産物の内容成分を抽出する。
【0036】
超高圧ホモジナイザーでの処理は、例えば、特許第4592474号公報、特許第4966834号、特許第5165691号などに開示されている高圧化均質化装置などの手段によって行うことができる。この装置は、原料を液体中に懸濁させてピストン/シリンダー機構により高圧にし、それを小径のオリフィスに高速度に通過させることにより微細均質化する装置である。この装置によれば、原料を含む懸濁液を2000気圧以上の超高圧に処することができ、その高圧状態から小径のオリフィスを高速度に通過させることにより、そのときに生じる高圧力差によって、原料に含まれる成分にあまり負荷を与えずに、したがって、変性や劣化抑制しつつ、原料を平均粒径10ミクロン以下レベルに微細均質化することができる。よって、蜂産物の内容成分の変質や劣化を抑制しつつ、例えば花粉の外膜とその内容物との分離を促進したり、プロポリス成分の微細均質化を促進したりして、蜂産物の内容成分を抽出することができる。
【0037】
上記のようにして得られた蜂産物エキスは、適宜適当な乾燥手段によって濃縮したり、乾燥したり、粉末化したりすることができる。また、適宜常法によって、生体用として許容される基材や担体と組み合わせて、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、粉末、顆粒、カプセル剤、ゼリー状剤、クリーム状剤、泡状剤、軟膏等の形態とすることができる。
【0038】
一方、
図2には、本発明の蜂産物エキスの製造方法の他の実施形態の工程図を示す。この実施形態においては、上記
図1に説明した実施形態において、更に、その抽出工程(S3)で得られた処理液から粗大粒子を除去し、シクロデキストリンを混合して、乾燥粉末化する工程を含む。以下これを粉末化工程(S4)とし、具体的に説明する。
【0039】
(4)粉末化工程(S4)
凍結粉砕工程(S1)〜抽出工程(S3)を経た処理液中には、それら工程で処理しきれなかったか、あるいはそれらの工程中に生じた、粗大粒子が残留している。本発明においては、その粗大粒子を、フィルター等によって除去することが好ましい。これによれば、品質の安定性を向上することができる。フィルター等の目開きの大きさに特に制限はなく、例えば孔径25〜250μmパス程度のものを用いることができる。また、異なる孔径のフィルターを用意し、初回孔径150μmパス、2回目孔径50μmパスなど、2段階あるいはそれ以上の段階に分けてフィルターにかけることが好ましい。これによれば、フィルターの目詰まりが防がれ、効率的に粗大粒子を除去することができる。また、濾過の際に、フィルター上に残る処理液成分に摩擦によるせん断力を与えながら、濾過を行うことが好ましい。これによれば、フィルターの目詰まりが防がれ、効率的に粗大粒子を除去することができる。
【0040】
また、凍結粉砕工程(S1)〜抽出工程(S3)を経た処理液中には、それら工程で抽出された成分のうち不安定に存在しているものが少なくない。よって、本発明においては、抽出工程(S3)で得られた処理液にシクロデキストリンを混合することが好ましい。これによれば、不安定に存在している成分をシクロデキストリンで包接して安定化することができる。また、ヒト等の体内への吸収利用の効率を更に良好にすることができる。このときシクロデキストリンの配合割合としては、特に制限はないが、抽出工程(S3)で得られた処理液の乾燥固形分100質量部に対して、30〜80質量部添加することが好ましく、40〜60質量部添加することがより好ましい。シクロデキストリンとしては、重合度が6であるα−シクロデキストリンや、重合度が7であるβ−シクロデキストリンや、重合度が8であるγ−シクロデキストリンなどが挙げられる。また、メチル化、マルトシル化、ヒドロキシプロピル化、ヒドロキシブチル化などの置換基が導入された誘導体であってもよい。なお、シクロデキストリンは、上記粗大粒子との非特異的な結合を排除するため、上記粗大粒子の除去を行った後に混合することが好ましい。これによれば、包接の効率を向上することができる。また、シクロデキストリンを混合してから適当な孔径のフィルターを通して、更に、粗大粒子を除去してもよい。
【0041】
粉末化工程(S4)においては、上記のようにして、抽出工程(S3)で得られた処理液から粗大粒子を除去し、シクロデキストリンを混合して、それを乾燥粉末化する。乾燥粉末化することによって、保存安定性が良く、他の素材と配合する場合にも調合しやすい素材とすることができる。乾燥粉末化の方法に特に制限はなく、従来、当業者に周知の方法で行うことができる。例えば、熱風乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。なかでも、熱変性が少ないという理由から凍結乾燥が好ましい。
【0042】
乾燥粉末化後には、篩にかけ、整粒することが好ましい。例えば、全体の80質量%以上がJIS規格による標準篩を用いて60メッシュ(目開き250μm)をパスする粉末の形態に調製することが好ましく、全体の90質量%以上がJIS規格による標準篩を用いて60メッシュ(目開き250μm)をパスする粉末の形態に調製することがより好ましい。
【0043】
本発明の方法により製造された蜂産物エキスは、花粉荷やプロポリスなど蜂産物の内容成分を、ヒト等の体内に有効に吸収利用される形態で、自然のまま余すところなく、豊富に含むエキスであるので、生体への様々な有益な効果が期待できる。よって、例えば、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、食品添加物、医薬品、医薬部外品、動物用健康食品、動物用機能性食品、動物用栄養補助食品、動物用サプリメント、飼料添加物、動物用医薬品、動物用医薬部外品、など各種の製品形態で、あるいはそれら製品と組み合わせて使用される素材として、好適である。
【実施例】
【0044】
実施例1
花粉荷12kgを、液体窒素により凍結し、衝撃式粉砕機により、粒径が1〜100μmとなるように粉砕した。
【0045】
この粉砕物に、前述した方法により、飲料水をイオン交換樹脂に通してミネラルを除去し、次いで黒曜石に接触させて還元水とし、更にトルマリンに接触させて得られる活性還元水72Lを添加混合し、この混合液を、超高圧ホモジナイザーにかけて、処理圧力240MPaにて微細均質化(乳化)した。
【0046】
こうして得られた処理液を凍結乾燥により乾燥粉末化して、6kgの花粉荷エキスを得た。
【0047】
この花粉荷エキスは、均一な微粉状でなめらかな食感と良好な風味であった。
【0048】
実施例2
実施例1における超高圧ホモジナイザーによる処理液を、孔径150μmのフィルターで濾過し、更にその濾液を孔径50μmのフィルターに濾過して、粗大粒子を除去した濾液を得た。
【0049】
この濾液12L(固形分濃度14質量%)に、α−シクロデキストリンを6kg添加混合し、凍結乾燥して、7.7kgの花粉荷エキスを得た。
【0050】
この花粉荷エキスは、均一な微粉状でなめらかな食感と良好な風味であった。
【0051】
実施例3
プロポリス12kgを、液体窒素により凍結し、衝撃式粉砕機により、粒径が1〜100μmとなるように粉砕した。
【0052】
この粉砕物に、前述した方法により、飲料水をイオン交換樹脂に通してミネラルを除去し、次いで黒曜石に接触させて還元水とし、更にトルマリンに接触させて得られる活性還元水72Lを添加混合し、この混合液を、超高圧ホモジナイザーにかけて、処理圧力240MPaにて微細均質化(乳化)した。
【0053】
こうして得られた処理液を凍結乾燥により乾燥粉末化して、6kgのプロポリスエキスを得た。
【0054】
このプロポリスエキスは、均一な微粉状でなめらかな食感と良好な風味であった。また、食べたときの刺激性が少なく飲みやすかった。
【0055】
実施例4
実施例3における超高圧ホモジナイザーによる処理液を、孔径150μmのフィルターで濾過し、更にその濾液を孔径50μmのフィルターに濾過して、粗大粒子を除去した濾液を得た。
【0056】
この濾液12L(固形分濃度14質量%)に、α−シクロデキストリンを6kg添加混合し、凍結乾燥して、7.7kgのプロポリスエキスを得た。
【0057】
このプロポリスエキスは、均一な微粉状でなめらかな食感と良好な風味であった。また、食べたときの刺激性が少なく飲みやすかった。
【符号の説明】
【0058】
S1 凍結粉砕工程
S2 加水工程
S3 抽出工程
S4 粉末化工程