特許第6570005号(P6570005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570005
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】回転要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 1/08 20060101AFI20190826BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20190826BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F16D1/08
   B62D1/20
   F16D1/06 210
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-138048(P2015-138048)
(22)【出願日】2015年7月9日
(65)【公開番号】特開2017-20563(P2017-20563A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000167222
【氏名又は名称】光洋機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 太捷
(72)【発明者】
【氏名】小山 剛司
(72)【発明者】
【氏名】山村 太希
【審査官】 中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−061014(JP,A)
【文献】 特開2009−210012(JP,A)
【文献】 特開2003−191125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00− 9/10
B62D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの間に軸方向スリットを形成する一対の周方向端部を有し、回転軸とセレーション嵌合される円筒状の嵌合部を含む回転要素の製造方法であって、
製造段階の嵌合部が前記軸方向スリットに向く所定の径方向に偏平な楕円状に弾性変形するように前記製造段階の嵌合部をクランプ治具によりクランプするクランプ工程と、
前記クランプ治具によりクランプされて前記楕円状に弾性変形した状態の前記製造段階の嵌合部の内周面に、前記所定の径方向に短径を有する断面楕円状の工具を用いて、雌セレーションを楕円状の配列で加工する雌セレーション加工工程と、
前記雌セレーションの配列が楕円状から真円状に変更されるように、前記クランプ治具によるクランプを解放するクランプ解放工程と、を含む回転要素の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記クランプ治具によりクランプされた前記製造段階の嵌合部の内周面のなす楕円の長径と短径との差分は、前記工具のなす楕円の長径と短径との差分と等しくされている回転要素の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記クランプ治具によりクランプされた前記製造段階の嵌合部の内周面のなす楕円の長径と短径との差分の誤差量よりも、前記工具のなす楕円の長径と短径との差分が大きくされている回転要素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転要素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雄シャフトと雌シャフトの結合構造において、雄セレーションまたは雌セレーションとの結合部に、しまり嵌めになる部分、すきま嵌めになる部分とを円周上の交互に配置する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
また、回転軸と自在継手のヨークの結合部において、雄セレーション部の山部の頂部の周方向に関する形状を部分円弧状ないし直線状とし、この頂部に、軸方向に亙り凹凸部を設ける技術が提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−21594号公報
【特許文献2】特開2013−133898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、回転軸を結合するための嵌合部に対して、雌セレーションを加工するときは、嵌合部が所定のクランプ力でクランプされた状態にある。
しかしながら、クランプ力が及ぼされた状態の嵌合部は、クランプ方向に偏平となるように楕円状に変形している。このように楕円状に変形した嵌合部の内周面に対して、外周の加工歯が真円状に配列されたブローチ等を用いて雌セレーションを加工した後、クランプを解除すると変形が元に戻り、雌セレーションが真円状の配列ではなくなる。
【0005】
このように嵌合部の内周面に真円状の配列ではない雌セレーションに対して、回転軸の外周面に真円状に配列された雄セレーションを噛み合わせた場合、歯当たりが悪くなり、耐久性の低下を招く。
本発明の目的は、嵌合部の内周面に真円状に配列された雌セレーションを得ることができて耐久性に優れた回転要素の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、互いの間に軸方向スリット(24)を形成する一対の周方向端部(25,26)を有し、回転軸(5)とセレーション嵌合される円筒状の嵌合部(21)を含む回転要素(1)の製造方法であって、製造段階の嵌合部が前記軸方向スリットに向く所定の径方向(R1)に偏平な楕円状に弾性変形するように前記製造段階の嵌合部をクランプ治具(30)によりクランプするクランプ工程と、前記クランプ治具によりクランプされて前記楕円状に弾性変形した状態の前記製造段階の嵌合部の内周面(21b)に、前記所定の径方向に短径を有する断面楕円状の工具(40)を用いて、雌セレーション(27)を楕円状の配列で加工する雌セレーション加工工程と、前記雌セレーションの配列が楕円状から真円状に変更されるように、前記クランプ治具によるクランプを解放するクランプ解放工程と、を含む回転要素の製造方法を提供する。
【0007】
請求項2のように、前記クランプ治具によりクランプされた前記製造段階の嵌合部の内周面の断面のなす楕円の長径(L1)と短径(S1)との差分(Δ1B=L1−S1)は、前記工具のなす楕円の長径(L2)と短径(S2)との差分(Δ2=L2−S2)と等しくされていてもよい(Δ1B=Δ2)。
請求項3のように、前記クランプ治具によりクランプされた前記製造段階の嵌合部の内周面のなす楕円の長径と短径との差分の誤差量(E2)よりも、前記工具の断面のなす楕円の長径と短径との差分が大きくされていてもよい(E2<Δ2)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る回転要素の製造方法では、所定の径方向に偏平になるようにクランプされた製造段階の嵌合部の内周面に、前記所定の径方向に短径を有する断面楕円状の工具を用いて、雌セレーションを楕円状の配列で加工した後、クランプを解放すると、真円状に配列された雌セレーションを得ることができる。このため、雌セレーションを雄セレーションと噛み合わせたときの歯当たりを良好にして、回転要素の耐久性を向上することができる。
【0010】
請求項2の発明では、製造段階の嵌合部がクランプされたときの楕円の偏平度合(長径と短径との差分)に一致する偏平度合を有する楕円状の工具で、雌セレーションが楕円状の配列で加工される。このため、クランプ解放後に、より真円に近い配列の雌セレーションを得ることができる。
請求項3の発明では、製造段階の嵌合部がクランプされたときの偏平度合は、一定の誤差量でばらつく傾向にある。これに対して、前記誤差量よりも大きな偏平度合を有する楕円状の工具で、雌セレーションが加工される。このため、クランプの解放後に、より真円に近い配列の雌セレーションを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る回転要素の製造方法の工程図である。(a)はクランプ工程を示し、(b)は下孔加工工程を示し、(c)は雌セレーション加工工程を示し、(d)は雌セレーション加工工程で用いられる工具の模式的断面図を示し、(e)はクランプ解放工程を示している。
図2】第1実施形態に係る製造方法により製造された回転要素としての自在継手ヨークの斜視図である。
図3】第1実施形態において、(a)は、回転要素の耐久回数と耐久回数の達成に必要な製造後の嵌合部の偏平度合(差分Δ1Aに相当)との関係を示すグラフ図である。(b)は、クランプ治具によるクランプ力とクランプされたときの製造段階の嵌合部の偏平度合(差分Δ1Bに相当)との関係を示すグラフ図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る回転要素と回転軸の結合構造の概略側面図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るステアリング装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
図2は、本発明の第1実施形態に係る製造方法により製造された回転要素としての自在継手ヨーク20の斜視図である。
図2に示すように、回転要素としての自在継手ヨーク20は、軸方向Xに延びる嵌合部21と、嵌合部21から延設された一対の締付板22,23とを備えている。嵌合部21は、断面C字形の円筒状をなし、軸方向Xに延びている。すなわち、嵌合部21は、互いの間に軸方向Xに延びる軸方向スリット24を区画する一対の周方向端部25,26を含む。
【0014】
嵌合部21は、外周面21aおよび内周面21bを備えている。嵌合部21の内周面21bには、真円状に配列された雌セレーション27が形成されている。図示していないが、嵌合部21には、外周面に雄セレーションが真円状に配列された回転軸が挿入される。嵌合部21の縮径により、嵌合部21によって、前記回転軸が嵌合固定される。
嵌合部21は、軸方向スリット24を貫く第1径方向R1と、第1径方向R1と直交する第2径方向R2とを有している。
【0015】
一対の締付板22,23は、嵌合部21の一対の周方向端部25,26から、第1径方向R1に平行に延びている。一方の締付板22には、ボルト挿通孔28が形成されている。他方の締付板23には、ねじ孔29が形成されている。ボルト挿通孔28の中心軸線C1とねじ孔29の中心軸線C2とは、同一軸線上に配置されている。
図示しない締付ボルトが、ボルト挿通孔28を挿通してねじ孔29にねじ込まれることにより、一対の締付板22,23が互いに近づけられる。その結果、嵌合部21が弾性的に縮径されて、前記回転軸が嵌合部21内に嵌合固定されるようになっている。
【0016】
嵌合部21の軸方向Xの一端部(前記回転軸が連結される側とは反対側の端部)から、軸方向Xに延びる一対のアーム70が延設されている。アーム70には、十字軸(図示せず)の一対の軸部が連結される。
図1(a)〜(e)は、本発明の第1実施形態に係る回転要素の製造方法の工程図である。
【0017】
図1(a)〜(e)に示すように、本製造方法は、クランプ工程[図1(a)参照]と、下孔加工工程[図1(b)参照]と、雌セレーション加工工程[図1(c)、(d)参照]と、クランプ解放工程[図1(e)参照]と、を順次に含んでいる。
クランプ工程では、図1(a)に示すように、製造段階の自在継手ヨーク20Mにおける製造段階の嵌合部21Mが、第1径方向R1に偏平になるようにクランプ治具30によりクランプ力Fでクランプされる。このとき、クランプ治具30の第1クランプ31と第2クランプ32との間で、製造段階の嵌合部21Mと一対の締付板22,23とが、一括してクランプされる。
【0018】
すなわち、クランプ治具30は、一対の締付板22,23の先端部を押圧する第1クランプ31と、一対の締付板22,23とは反対側(第1径方向R1に対向する側)で嵌合部21Mの外周面21aを受けるベース側の第2クランプ32とを備えている。
クランプ治具30によるクランプ力が、製造段階の嵌合部21Mに対して第1径方向R1に及ぼされることによって、製造段階の嵌合部21Mは、第1径方向R1に偏平となる楕円状に弾性変形する。なお、第1クランプ31として、一対の締付板22,23を各々押圧する一対の部材を別体で設けることも可能である。
【0019】
図1(b)に示すように、下孔加工工程では、製造段階の嵌合部21Mの内周面21bに対して、工具としてのドリル40を用いて、雌セレーションを加工するための真円状の下孔Uが加工される。
図1(c)に示すように、雌セレーション加工工程では、下孔Uが加工された製造段階の嵌合部21Mの内周面21bに、図1(d)に示すように、第1径方向R1に短径S2を有し第2径方向R2に長径L2を有するする断面楕円状の工具としてのブローチ50を用いて、楕円状に配列された雌セレーション27が加工される。
【0020】
図1(a)を参照して、クランプ工程でのクランプ力が大きいほど、クランプ工程でクランプされた製造段階の嵌合部21Mの内周面21bのなす楕円の長径L1と短径S1との差分Δ1B(Δ1B=L1−S1)は大きくなる。本実施形態では、楕円の長径と短径との差分を、楕円の偏平度合と言うこととする。
図1(c)を参照して、雌セレーション加工工程では、製造段階の嵌合部21Mがクランプされて楕円状に変形した状態で、断面楕円状のブローチ50により雌セレーション加工が行われる。このため、ブローチ50の断面のなす楕円の偏平度合が、クランプされた状態の製造段階の嵌合部21Mの偏平度合と等しくされていることが好ましい。。
【0021】
そこで、本実施形態では、図1(c)に示すように、工具としてのブローチ50のなす楕円の長径L2と短径S2との差分Δ2(Δ2=L2−S2。偏平度合)が、クランプ工程でクランプされた製造段階の嵌合部21Mの内周面21bのなす楕円の長径L1と短径S1との差分Δ1B(偏平度合)と等しくされている(すなわち、式Δ1B=Δ2が成立する)。
【0022】
図1(e)に示すクランプ解放工程では、クランプ治具30によるクランプが解放される。クランプ力が除去されることで、楕円状に弾性変形していた嵌合部21Mが、真円状の嵌合部21に戻る。これに伴って、嵌合部21の内周面21bにおいて、真円状に配列された雌セレーション27が得られる。
本実施形態では、第1径方向R1(所定の径方向)に偏平になるようにクランプされた製造段階の嵌合部21Mの内周面21bに、第1径方向R1向に短径S2を有する断面楕円状の工具としてのブローチ50を用いて、楕円状に配列された雌セレーション27を加工する。その後、クランプを解除することで、真円状に配列された雌セレーション27を得ることができる。
【0023】
このため、雌セレーション27を相手方の雄セレーション(図示せず)と噛み合わせたときの歯当たりを良好にして、回転要素(自在継手ヨーク20)の耐久性を向上することができる。耐久性が向上するため、可及的に雌セレーション27や相手方の雄セレーションの寸法精度を緩くすることが可能となる。
特に、製造段階の嵌合部21Mがクランプされたときの偏平度合(差分Δ1Bに相当)に一致する偏平度合(差分Δ2に相当)を有する断面楕円状のブローチ50で、楕円状配列の雌セレーション27が加工される。このため、クランプの解放後に、より真円に近い配列の雌セレーション27を得ることができる。
【0024】
図3(a)は、製造後の回転要素(自在継手ヨーク20)の嵌合部21の偏平度合(差分Δ1Aに相当)と、当該回転要素(自在継手ヨーク20)が回転軸と結合された状態で所定の往復回転トルクが負荷されたときの耐久回数Nとの関係を示すグラフ図である。
図3(a)に示すように、製造後の嵌合部21の偏平度合(差分Δ1A)が大きくなるほど、耐久回数Nが次第に低下する傾向にある。例えば、図3(a)に示される特性線に照らしてみた場合、目標耐久回数N1の達成には、製造後の嵌合部21の偏平度合(差分Δ1A)を値E1以下とすることが必要となる(Δ1A≦E1)。
【0025】
次いで、図3(b)は、クランプ治具30によるクランプ力Fとクランプされたときの製造段階でクランプ時の嵌合部21Mの偏平度合(差分Δ1Bに相当)との関係を示している。
図3(b)に示すように、回転要素である自在継手ヨーク20の各部の寸法精度のばらつき等の影響で、クランプ治具30によるクランプ力Fは、誤差量F2(ばらつき量)の範囲内でばらつく。このため、クランプされたときの製造段階の嵌合部21Mの偏平度合(差分Δ1Bに相当)が、誤差量E2の範囲内でばらつく傾向にある。
【0026】
このため、製造後の嵌合部21の偏平度合(差分Δ1A)が、図3(b)で示される製造段階でクランプ時の嵌合部21Mの偏平度合(差分Δ1B)の誤差量E2に略等しい誤差量で、ばらつきを生じることなる。
したがって、製造後の嵌合部21の偏平度合Δ1Aを値E1以下とするためには、製造段階の嵌合部21Mの偏平度合Δ1Bの誤差量E2が、値E1以下よりも小さくされていることが好ましい(E2<E1)。逆に言うと、値E1は、誤差量E2よりも大きくされていることが好ましい。
【0027】
可及的に、製造段階の嵌合部21Mの偏平度合Δ1Bの誤差量E2よりも、ブローチ50のなす楕円の偏平度合(差分Δ2に相当)が、大きくされていることが好ましい(E2<Δ2)。
その場合、製造段階の嵌合部21Mがクランプされたときの偏平度合(差分Δ1B)の誤差量E2を考慮した偏平度合を有する楕円状のブローチ50で、楕円状配列の雌セレーション27が加工されることになる。このため、クランプの解放後に、より真円に近い配列の雌セレーション27を得ることができる。具体的には、クランプ解放後の嵌合部21の偏平度合(差分Δ1A)が、目標耐久回数N1を達成するための値E1以下となる(Δ1A≦E1)。
(第2実施形態、第3実施形態)
第1実施形態に係る製造方法により製造された自在継手ヨーク20は、概略図である図4に示されるような、第2実施形態に係る回転要素と回転軸の結合構造Pに適用される。また、結合構造Pは、模式図である図5に示されるような第3実施形態に係るステアリング装置1に適用される。
【0028】
図5に示すように、ステアリング装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2が一端(軸方向上端)に連結されたステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に対して第1自在継手4、インターミディエイトシャフト5および第2自在継手6を順次に介して連結された転舵機構Aとを備える。
転舵機構Aは、操舵部材2の操舵に連動して転舵輪11を転舵する例えばラックアンドピニオン機構である。転舵機構Aは、第2自在継手6を介してインターミディエイトシャフト5に連結された入力シャフトとしてのピニオンシャフト7と、出力シャフトとしてのラックシャフト8とを備える。ピニオンシャフト7に設けられたピニオン7aとラックシャフト8に設けられたラック8aとが、噛み合わされている。
【0029】
操舵部材2の回転は、ステアリングシャフト3、第1自在継手4、インターミディエイトシャフト5および第2自在継手6を順次に介して、転舵機構Aに伝達される。
ラックシャフト8は、車体に固定されるハウジング9内に、軸受(例えば滑り軸受であるラックブッシュ12等)を介して、軸方向W1に沿って直線往復動可能に支持されている。ラックシャフト8の両端部は、ハウジング9の両側へ突出し、ラックシャフト8の各端部には、それぞれタイロッド10が結合されている。各タイロッド10は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪11に連結されている。
【0030】
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、ラックシャフト8の軸方向W1の運動に変換される。これにより、転舵輪11の転舵が達成される。
図4に示すように、第2自在継手6は、第1自在継手ヨーク61(第1実施形態の製造方法により製造された自在継手ヨーク20に相当)と、第2自在継手ヨーク62と、十字軸63とを備えている。十字軸63は、第1自在継手ヨーク61と第2自在継手ヨーク62とを連結する。
【0031】
第1自在継手ヨーク61の嵌合部21には、インターミディエイトシャフト5の端部5aが連結されている。すなわち、回転要素と回転軸の結合構造Pは、回転要素としての第1自在継手ヨーク61と、回転軸としてのインターミディエイトシャフト5との結合構造に適用されている。インターミディエイトシャフト5の端部5aの外周には、嵌合部21の雌セレーション27と噛み合う雄セレーションMSが形成されている。
【0032】
嵌合部21のボルト挿通孔28には、締付ボルトBのねじ軸Baが挿通されている。ねじ軸Baは、図示しないねじ孔(図2におけるねじ孔29に相当)にねじ込まれている。第2自在継手ヨーク62には、ピニオンシャフト7の端部7bが固定されている。
結合構造Pおよびステアリング装置1では、雄セレーションMSと雌セレーション27の歯当たりが良くなり耐久性が向上する。
【0033】
本発明の回転要素の製造方法は、自在継手ヨーク20に限らず、内周面に雌セレーションが形成された嵌合部を有するその他の回転要素の製造方法に適用することができる。また、本発明の回転要素と回転軸の結合構造Pは、ステアリング装置1の第1自在継手4における自在継手ヨークとステアリングシャフト3との結合構造や、ステアリング装置1の第2自在継手6における第2自在継手ヨーク62とピニオンシャフト7との結合構造に適用されてもよい。
【0034】
その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0035】
1…ステアリング装置、2…操舵部材、3…ステアリングシャフト、4…第1自在継手、5…インターミディエイトシャフト、6…第2自在継手、7…ピニオンシャフト、8…ラックシャフト、20…自在継手ヨーク、20M…製造段階の自在継手ヨーク、21…嵌合部、21M…製造段階の嵌合部、21b…内周面、22,23…締付板、24…軸方向スリット、25,26…周方向端部、27…雌セレーション、28…ボルト挿通孔、29…ねじ孔、30…クランプ治具、40…ドリル、50…ブローチ(工具)、61…第1自在継手、62…第2自在継手ヨーク、63…十字軸、A…転舵機構、E1…設定値、E2…誤差量、L1,L2…長径、MS…雄セレーション、P…結合構造、R1…第1径方向、R2…第2径方向、S1,S2…短径、U…下孔、X…軸方向、Δ1A,D1B,Δ2…差分(偏平度合)
図1
図2
図3
図4
図5