特許第6570016号(P6570016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6570016
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   C23C14/34 C
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-73483(P2018-73483)
(22)【出願日】2018年4月5日
【審査請求日】2018年7月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年10月24日〜28日に幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2−1)において開催されたIPF Japan 国際プラスチックフェア(2017)に出展
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515094431
【氏名又は名称】株式会社クラフト
(73)【特許権者】
【識別番号】509094159
【氏名又は名称】株式会社プロスタッフ
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】丹下 康彦
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−084496(JP,A)
【文献】 特開2002−173771(JP,A)
【文献】 特開平05−112867(JP,A)
【文献】 特開2018−040057(JP,A)
【文献】 特開平02−194172(JP,A)
【文献】 特開2004−156144(JP,A)
【文献】 特公昭62−057377(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが設置される薄膜形成室内を真空にするとともに不活性ガスを導入し、この不活性ガス原子をイオン化して、前記薄膜形成室内に設置された成膜材料を含むターゲットの表面に衝突させることにより、前記成膜材料の粒子を弾き出し、この弾き出された成膜材料の粒子をワークの表面に付着させて薄膜を形成するスパッタリング装置であって、前記ターゲットが前記薄膜形成室内に複数設置され、かつ、これらのターゲットをワークの上方および側方に対峙させて設置することにより、前記弾き出された成膜材料の粒子の付着量を前記ワークの下方に行くにしたがい減少させて、前記ワークにグラデーションを有する薄膜を形成するように構成されていることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記複数のターゲットが同一の成膜材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記複数のターゲットが異なる成膜材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記薄膜形成室が複数設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記複数の薄膜形成室間に、前記ワークを前記複数の薄膜形成室間を移送する移送機構が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記薄膜形成室が、下方が開口された筒状の反応筒と、この反応筒の軸線方向に往復動可能に設けられ、前記ワークが載置されるとともに前記開口を開閉する開閉プレートとによって構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記薄膜形成室が複数設けられ、各薄膜形成室が、下方が開口された筒状の反応筒と、この反応筒の軸線方向に往復動可能に設けられ、前記ワークが載置されるとともに前記開口を開閉する開閉プレートとによって構成され、これらの開閉プレートに、これらの開閉プレートが前記各薄膜形成室を開放する位置に位置させられた状態において、各開閉プレートを異なる前記薄膜形成室の開口に対峙させるように移動させる移送機構が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のスパッタリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの表面に薄膜を形成する際に用いられるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークの表面に薄膜を形成する装置として、たとえば、特許文献1に示されるように、真空中に不活性ガス(主に、Ar)を導入し、ターゲット(プレート状の成膜材料)にマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させて前記不活性ガス原子をイオン化し、この不活性ガスイオンを高速でターゲットの表面に衝突させて激しく叩き、ターゲットを構成する成膜材料の粒子(原子・分子)を激しく弾き出し、この弾き出された成膜材料の粒子を勢いよく基材・基板(ワーク)の表面に付着・堆積させ薄膜を形成するスパッタリング装置が知られている。
【0003】
そして、特許文献1に示されるような従来のスパッタリング装置にあっては、単一のターゲットを用い、前記ワーク回りの成膜材料の粒子の分布を極力均一化し、前記ワーク表面に均一な薄膜を形成することが殆どである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−40057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークの種類によっては、ワーク表面の意匠的な効果を高める等を目的として、スパッタリングによって形成される薄膜に変化をつけることが要求される場合がある。
【0006】
本発明は、前述した要求を実現すべくなされたもので、スパッタリングが行なわれる薄膜形成室内における成膜材料の粒子分布を調整することにより、ワークに形成される薄膜に変化を与えることのできるスパッタリング装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスパッタリング装置は、前述した課題を解決するために、ワークが設置される薄膜形成室内を真空にするとともに不活性ガスを導入し、この不活性ガス原子をイオン化して、前記薄膜形成室内に設置された成膜材料を含むターゲットの表面に衝突させることにより、前記成膜材料の粒子を弾き出し、この弾き出された成膜材料の粒子をワークの表面に付着させて薄膜を形成するスパッタリング装置であって、前記ターゲットが前記薄膜形成室内に複数設置されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成とすることにより、スパッタリング時に、複数設置されたターゲットのそれぞれから成膜材料の粒子が放出される。
【0009】
ここで、前記複数のターゲットの、前記成膜形成室に対する設置位置は当然異なることから、複数のターゲット間の間隔が狭い場所と広い場所とで、前記成膜材料の粒子の分布に差が生じる。
【0010】
この成膜材料の粒子の分布形態は前記ワークに対しても同様であり、これによって、前記ワークへの成膜材料の粒子の付着形態が、前記ワークの部位のよって異なる。
【0011】
この結果、前記ワークに形成される薄膜の形態に変化をつけて、このワークの意匠的な効果を高めることができる。
【0012】
前記複数のターゲットを、前記イオン化された原子が衝突させられる面が、前記ワークに対して異なる方向から対峙するように設置することが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、複数のターゲットから放出される成膜材料の粒子を交差させることにより、複数のターゲット間が狭い部分における成膜材料の粒子の濃度を効果的に高めて、形成される薄膜の形態の変化を大きくすることができる。
【0014】
前記複数のターゲットは同一の成膜材料によって形成することができ、また、異なる成膜材料によって形成することができる。
【0015】
前者の場合には、成膜材料の粒子分布の差によるワークの意匠的な変化を付与し、後者の場合には、異なる成膜材料の粒子の混ざり具合による意匠的変化を付与することができる。
【0016】
前記薄膜形成室は複数設けることができる。
このような構成とすることにより、複数のワークへのスパッタリングを同時に行なうことができる。
【0017】
あるいは、複数の薄膜形成室に、それぞれ、異なる成膜材料のターゲットを設置することにより、異なる種類のスパッタリングを同時に行なうことができる。
【0018】
また、前記複数の薄膜形成室間に、前記ワークを前記複数の薄膜形成室間を移送する移送機構を設けておくことができる。
【0019】
このような構成とすることにより、一つのワークに複数のスパッタリングを施すことが可能となる。
これによって、形成される薄膜により多彩な変化を付与することができる。
【0020】
そして、前記薄膜形成室を、下方が開口された筒状の反応筒と、この反応筒の軸線方向に往復動可能に設けられ、前記ワークが載置されるとともに前記開口を開閉する開閉プレートとによって構成することができる。
【0021】
このような構成とすることにより、前記ワークの前記薄膜形成室内への出し入れを簡便に行なうことができる。
【0022】
また、前記薄膜形成室を複数設けた場合、前記複数の開閉プレートに、これらの開閉プレートが前記各薄膜形成室を開放する位置に位置させられた状態において、各開閉プレートを異なる前記薄膜形成室の開口に対峙させるように移動させる移送機構を設けることができる。
【0023】
このような構成とすることにより、一つのワークに対して多種類のスパッタリングを施す際に、前記ワークを、異なる薄膜形成室へ入れ替える操作を簡便なものとすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のスパッタリング装置によれば、ワークの異なる部位間においてスパッタリングによる薄膜成膜材料の粒子の付着形態を異ならせることができる。
この結果、前記ワークの表面から得られる視覚的効果に変化を持たせて、意匠的な効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態を示す正面図である。
図2】本発明の一実施形態を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態を示すもので、作用を説明するための正面図である。
図4】本発明の一実施形態を示す要部の縦断面図である。
図5】本発明の一実施形態を示すもので、作用を説明するための要部の縦断面図である。
図6】本発明の一実施形態を示すもので、作用を説明するための正面図である。
図7】本発明の一実施形態を示すもので、作用を説明するための正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
これらの図において、符号1は、本発明のスパッタリング装置を示す。
【0027】
本実施形態のスパッタリング装置1は、ワークWが設置される薄膜形成室R内を真空にするとともに不活性ガスを導入し、この不活性ガス原子をイオン化して、前記薄膜形成室R内に設置された成膜材料を含むターゲットT(図4参照)の表面に衝突させることにより、前記成膜材料の粒子Mを弾き出し、この弾き出された成膜材料の粒子MをワークWの表面に付着させて薄膜Fを形成するスパッタリング装置であって、前記ターゲットTが前記薄膜形成室R内に複数(T1・T2)設置されている。
【0028】
前記スパッタリング装置1は、直方体状に枠組みされた基体2を備え、この基体2の上半部には、この基体2の上端開口を気密覆って設けられた上板3と、この上板3の下方に間隔を置いて配置され、前記基体2の中間部を気密に遮蔽する底板5と、これらの上板3と底板5間を気密に覆う側板4が設けられ、これらの上板3、底板5、および、側板4によって前記基体の上半部に真空室Aが形成され、この真空室Aには図示しない真空形成装置が接続されている。
【0029】
前記底板5の下部には、上下方向に伸縮する複数(本実施形態においては4本)のピストン6が装着されており、これらのピストンロッド6aが、前記底板5を気密に貫通して前記真空室Aへ突出させられている。
【0030】
前記薄膜形成室Rは、本実施形態では、前記上板3の略中心回りに90°の間隔で3箇所に設けられており、各薄膜形成室Rは、下方が開口された反応筒7と、この反応筒7の軸線方向に往復動可能に設けられ、前記ワークWが載置されるとともに前記開口を開閉する開閉プレート8とによって構成されている。
【0031】
前記反応筒7は、図4に詳述するように、前記上板3に、この上板3を上下に貫通した貫通孔を気密に覆うように固定されている。
【0032】
そして、前記上板3の下面には、前記反応筒7の中心線と同軸に設けられ、かつ、この中心線を回転中心として回転自在なリングギヤ9が装着されている。
【0033】
また、前記リングギヤ9の下部には、環状の当接リング10が同軸上に一体に固着されている。
この当接リング10には、前記反応筒7と前記真空室Aとを連通させる貫通孔Cが形成されており、この貫通孔Cによって前記反応筒7の気圧が前記真空室Aの気圧に保持されるようになっている。
【0034】
そして、前記当接リング10の下面周縁部には、前記開閉プレート8の上面周縁部が当接させられるようになっているとともに、この開閉プレート8の当接部位に前記当接リング10との当接時の衝撃を吸収する環状のパッキン11が装着されている。
【0035】
前記反応筒7の側部で、前記上板3上には、この上板3を上下方向に沿って気密に貫通する駆動軸12aを備えたモーター12が装着されている。
【0036】
そして、前記駆動軸12aの下端部には、前記リングギヤ9に噛合させられたドライブギヤ13が固着されている。
【0037】
これによって、前記モーター12の回転により、前記リングギヤ9および当接リング10が、前記反応筒7の中心軸線回りに回転させられるようになっている。
【0038】
前記底板5の上部中央には、図1に示すように、センターギヤ14が回転自在に装着されており、このセンターギヤ14の上部には、このセンターギヤ14とともに回転するセンタープレート15が装着されている。
【0039】
そして、前記センタープレート15には、前述した複数のピストン6のピストンロッド6aが、上下方向に相対動可能に貫通させられており、それぞれのピストンロッド6aの先端部が前記センタープレート15の上方に上昇させられた位置と、前記センタープレート15の下方へ下降させられた位置との2位置間で昇降させられるようになっている。
【0040】
そして、前記底板5の上面には、前記センターギヤ14に噛合させられたドライブギヤ16が回転自在に装着され、また、前記底板5の下方には、前記ドライブギヤ16を回転駆動する駆動軸(図示略)を備えたモーター17が装着されている。
ここで、前記駆動軸は、前記底板5を気密状態を保持した状態で貫通させられている。
【0041】
これによって、前記モーター17によって前記ドライブギヤ16が回転させられると、前記センターギヤ14、および、前記センタープレート15が一体的に回転させられるようになっている。
【0042】
このような前記センタープレート15の回転は、前記各ピストンロッド6aの先端が、前記センタープレート15の下方まで下降させられた状態で行われるようになっている。
【0043】
一方、前記ピストン6は、その中心線が前記反応筒7の中心線と一致するように設置されており、そのピストンロッド6aの先端に、前記開閉プレート8が、同一軸線上に、かつ、この軸線回りに回動自在に装着されている。
【0044】
また、前記ピストンロッド6aは、前記開閉プレート8の下部に、上下方向に離間可能に嵌合させられている。
【0045】
そして、前記ピストンロッド6aの下降に伴い、前記開閉プレート8が前記センタープレート15の上面に当接させられてこのセンタープレート15上に保持され、さらなる前記ピストンロッド6aの下降により、このピストンロッド6aの先端が前記開閉プレート8から離脱させられて、前記センタープレート15の下方に位置させられるようになっている。
【0046】
この状態において前記センタープレート15が回転させられることにより、前記開閉プレート8が前記センタープレート15の回転中心周りに旋回移動させられるようになっている。
【0047】
また、前記ピストン6は、前記複数の薄膜形成室R毎に設けられており、それぞれの前記開閉プレート8を、前記薄膜形成室Rの下部開口を閉塞する位置と、前記センタープレート15上に載置される位置との間で昇降させるようになっている。
【0048】
そして、前記開閉プレート8は、前記ピストン6によって前記上板3の貫通孔に装着されている前記当接リング10の下端に、前記パッキン11を介して全周に亙って密着させられるようになっている。
【0049】
また、前記開閉プレート8は、前記当接リング10の下端に当接させられて前記薄膜形成室Rの下部開口を閉塞した状態において、前記当接リング10と一体的に回転させられるようになっている。
【0050】
さらに、前記センタープレート15には上方へ向かって延びる複数のガイド軸19が一体に突設されている。
【0051】
また、前記複数のガイド軸19の上端部は、前記各開閉プレート8が通過させられる複数の開口D(図4および図5参照)を備えた連結プレート20によって連結されて、その間隔や姿勢が保持されている。
【0052】
前記連結プレート20に形成されている前記開口Dは、前記ピストン6の伸縮動作に伴う前記各開閉プレート8の、前記当接リング10への当接位置から前記センタープレート15上に載置させられる位置までの移動を可能としている。
【0053】
一方、前記ターゲットT(T1・T2)は、図4に示すように、前記反応筒7の側壁と上壁に、その一面を前記薄膜形成室R内に露出させた状態で装着されている。
【0054】
さらに、前記各開閉プレート8の上面中央部には、前記ワークWが装着されるワーク支持具21が突設されている。
【0055】
また、本実施形態においては、前記上板3の前記薄膜形成室Rが設けられていない部位に、ワーク搬入出機構22が設けられている。
【0056】
このワーク搬入出機構22は、前記上板3上に設置された支持枠23に装着されたピストン24を備えている。
【0057】
このピストン24は、そのピストンロッド24aを前記上板3に向けた状態で装着されている。
【0058】
そして、前記ピストンロッド24aの下端には、下部が開口された筒状のカバー25が一体に装着され、このカバー25は、前記ピストンロッド24aの伸縮動作によって最下降位置まで下降させられた状態において、下端が、前記上板3に気密に当接させられて、この上板3に形成されている貫通孔を閉塞し、最上昇位置において、前記上板3の上方に、前記ワークWの出し入れが可能な間隔を形成するように昇降させられるようになっている。
【0059】
そして、前記カバー25の下方には、前記ピストン6および開閉プレート8が、前記薄膜形成室Rと同様に対峙させられている。
【0060】
前記カバー25に対峙させられる前記開閉プレート8は、前記上板3へ向けて上昇させられてこの上板3の下面に当接させられるようになされ、この状態において、前記上板3に前記カバー25に対応して形成されている貫通孔を、前記パッキン11を利用して下方から気密に閉塞するようになっている。
【0061】
このような前記開閉プレート8によって前記貫通孔を閉塞した状態で、前記カバー25を上昇させることにより、ワークWの取り付けや取り出しを行う際における、前記真空室Aの気密性を確保することができる。
【0062】
このように構成された本実施形態のスパッタリング装置1は、各ピストン6を伸張させて前記開閉プレート8を前記上板3の下部に当接させることにより、前記上板3に前記各反応筒7および前記カバー25に対応して形成されている各貫通孔を閉塞した状態とする。
【0063】
ここで、前記カバー25に対応して形成されている前記上板3の貫通孔は、前記開閉プレート8によって気密に閉塞され、前記カバー25と前記真空室Aとの連通が遮蔽されている。
【0064】
これより、図3に示すように、前記カバー25を上昇させて、その開閉プレート8の上方に設けられているワーク支持具21を露出させたのちに、このワーク支持具21にワークWを装着する。
【0065】
ついで、前記カバー25を下降させて前記上板3に当接させることにより、前記ワークWを覆うとともに、前記上板3に形成されている貫通孔を上方から機密に閉塞する。
【0066】
ついで、全てのピストン6を作動させて、前記ピストンロッド6aの先端部を前記センタープレート15の下方まで下降させる。
【0067】
これによって、図6に示すように、全開閉プレート8が前記センタープレート15上に載置された後に、これらの開閉プレート8から前記各ピストンロッド6aが離間させられる。
【0068】
これより、前記モーター17によってドライブギヤ16を回転させると、このドライブギヤ16が噛合させられている前記センターギヤ14が回転させられ、かつ、このセンターギヤ14とともに、前記連結プレート20、および、前記センタープレート15が回転させられ、この前記センタープレート15上の前記開閉プレート8が、この前記センタープレート15の回転軸周りに旋回移動させられる。
【0069】
このような回転を、前記カバー25から引き出された前記ワークWが、図6に矢印で示すように、隣接する前記薄膜形成室Rの反応筒7の下部開口と対峙する位置まで継続する。
【0070】
これより、前記各開閉プレート8を上昇させて、前記ワークWを前記反応筒7内に挿入するとともに、図4に示すように、この反応筒7の下部開口に前記開閉プレート8を当接させる。
【0071】
本実施形態においては、このようなワークWの移送を行なう前記ピストン6やモーター17等の構成によって、前記ワークWの移送機構が構成されている。
【0072】
そして、前記ワークWの搬入動作が行われる際には、前記真空室A内が真空に保持されており、これとともに、前記各反応筒7内も同様に真空に保持されている。
【0073】
このように、前記薄膜形成室RにワークWが供給された前記反応筒7においてスパッタリングを開始して、前記ワークWの表面に薄膜Fを形成することができる。
【0074】
このようにスパッタリングが開始されると、図4に矢印で示すように、薄膜形成用の粒子Mが前記側壁のターゲットT1から略水平方向に放出され、上壁のターゲットT2から薄膜形成用の粒子Mが略垂直方向に放出され、これらの粒子が前記ワークWの表面に付着して薄膜が形成される。
【0075】
ここで、前記モーター12によって前記開閉プレート8とともに前記ワークWを回転させることにより、前記ワークWに形成される薄膜Fを周方向において均一にすることができる。
【0076】
また、略水平方向に放出される粒子Mに、その上方から略垂直方向の粒子が混入させられるが、略垂直方向から放出された粒子Mは、前記ワークWにその上部から付着し、前記ワークWの下方に行くにしたがい漸次減少する。
【0077】
これによって、前記薄膜Fにグラデーションをつけて意匠的効果を高めることができる。
【0078】
さらに、前述したように、一つの薄膜形成室Rにおいてスパッタリングを施したワークWを、隣接するつぎの薄膜形成室Rへ送り込んで同様のスパッタリングを施すことができる。
【0079】
このような操作により、形成され得る薄膜Fの厚みを変化させることにより、前述したグラデーション効果を調整することができる。
【0080】
なお、前記実施形態は一例であって、要求される薄膜形態等の変更等に基づき種々変更可能である。
【0081】
たとえば、前記複数設けるターゲットTの種類を異ならせることにより、形成される薄膜Fの形態を調整することも可能である。
【0082】
また、各薄膜形成室Rに設置する複数のターゲットTを同一とし、ワークWを各薄膜形成室Rの全てに装填した後に、各薄膜形成室Rにおいて同時にスパッタリングを開始することもできる。
これによって、多数のワークWに同時に薄膜を形成することができる。
【0083】
また、前述した移送機構やワーク搬入出機構22を省略することも可能である。
【0084】
さらに、前記薄膜形成室Rを複数設けることにより、それぞれの薄膜形成室Rにおいて異なる材料のターゲット(たとえば、金属・酸化物・窒化物)を用い、各薄膜形成室Rにおけるスパッタリングの条件を変えることにより、多種類のスパッタリングを同時に扱うことができる。
ただし、この場合には、各薄膜形成室Rのそれぞれに未処理のワークWを供給しておくことが必要となる。
【符号の説明】
【0085】
1 スパッタリング装置
2 基体
3 上板
4 側板
5 底板
6 ピストン
6a ピストンロッド
7 反応筒
8 開閉プレート
9 リングギヤ
10 当接リング
11 パッキン
12 モーター
12a 駆動軸
13 ドライブギヤ
14 センターギヤ
15 センタープレート
16 ドライブギヤ
17 モーター
19 ガイド軸
20 連結プレート
21 ワーク支持具
22 ワーク搬入出機構
23 支持枠
24 ピストン
24a ピストンロッド
25 カバー
A 真空室
C 貫通孔
D 開口
M 粒子
F 薄膜
W ワーク
R 薄膜形成室
T(T1・T2) ターゲット

【要約】
【課題】スパッタリングが行なわれる薄膜形成室内における成膜材料の粒子分布を調整することにより、ワークに形成される薄膜に変化を与えることのできるスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】ワークWが設置される薄膜形成室内を真空にするとともに不活性ガスを導入し、この不活性ガス原子をイオン化して、前記薄膜形成室内に設置された成膜材料を含むターゲットTの表面に衝突させることにより、前記成膜材料の粒子Mを弾き出し、この弾き出された成膜材料の粒子をワークの表面に付着させて薄膜Fを形成するスパッタリング装置であって、前記ターゲットが前記薄膜形成室内に複数(T1・T2)設置されていることを特徴とする。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7