(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570044
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】エレベータ遠隔監視装置、エレベータ遠隔診断運転方法及びエレベータ遠隔監視プログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-155215(P2017-155215)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-34799(P2019-34799A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2017年8月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】丸山 朋哉
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−282935(JP,A)
【文献】
特開2002−012378(JP,A)
【文献】
特開平06−156903(JP,A)
【文献】
特開2012−162331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔監視センターシステムから遠隔診断開始時刻が指定されると、指定された時刻に遠隔診断を実施するようにエレベータ制御装置に指示するエレベータ遠隔監視装置であって、
現在の時刻と前記遠隔監視センターシステムにより指定された遠隔診断開始時刻とを比較して遠隔診断の開始を判定する遠隔診断開始判定部と、
前記エレベータ制御装置から遠隔診断結果及び運転状態を受信する遠隔診断結果及び運転状態受信部と、
前記遠隔診断結果及び運転状態受信部から前記遠隔診断結果及び運転状態を入力し、遠隔診断結果に基づき、利用者による呼び発生に起因して遠隔診断が失敗したか、又は運転状態によって、遠隔診断の時間帯が建物としてエレベータを利用する時間帯かを判定して前記遠隔診断開始時刻を変更する遠隔診断開始時刻変更機能部と、
前記遠隔診断開始時刻変更機能部を介して、前記エレベータ制御装置から受信した遠隔診断結果に基づき、利用者の呼び発生に起因して遠隔診断が中断したかの分析と、運転状態によって、遠隔診断の時間帯が建物としてエレベータを利用する時間かの分析を行って、その分析結果に基づき、エレベータの運行傾向を学習する学習データ機能部と、を備え、
前記遠隔診断開始時刻変更機能部は、前記学習データ機能部で学習されたエレベータの運行傾向を使用して遠隔診断可能な日時の判定をする高精度判定機能を備える、
ことを特徴とするエレベータ遠隔監視装置。
【請求項2】
遠隔監視センターシステムが、エレベータ遠隔監視装置に対して遠隔診断開始時刻を指定し、前記エレベータ遠隔監視装置は、指定された時刻に遠隔診断を実施するようにエレベータ制御装置に指示するエレベータ遠隔診断運転方法であって、
前記エレベータ遠隔監視装置は、
現在の時刻と前記遠隔監視センターシステムにより指定された遠隔診断開始時刻とを比較して遠隔診断の開始を判定し、
前記エレベータ制御装置から遠隔診断結果及び運転状態を受信し、
受信した遠隔診断結果に基づき、利用者による呼び発生に起因して遠隔診断が失敗したか、又は受信した運転状態によって、遠隔診断の時間帯が建物としてエレベータを利用する時間帯かを判定して前記遠隔診断開始時刻を変更し、
前記エレベータ制御装置から受信した遠隔診断結果に基づき、利用者の呼び発生に起因して遠隔診断が中断したかの分析と、運転状態によって、遠隔診断の時間帯が建物としてエレベータを利用する時間かの分析を行って、その分析結果に基づき、エレベータの運行傾向を学習し、
学習したエレベータの運行傾向を使用して遠隔診断可能な日時の判定をする、
ことを特徴とするエレベータ遠隔診断運転方法。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベータ遠隔監視装置をコンピュータで構成するためのエレベータ遠隔監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ遠隔監視装置、エレベータ遠隔診断運転方法及びエレベータ遠隔監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの遠隔診断は、エレベータが設置されている物件に対して、通信ネットワークを介して遠隔監視センターから遠隔自動診断運転信号を送信する。エレベータ側では、遠隔自動診断運転信号を受診すると、エレベータ制御装置内の、予め設定されたスケジュールを持つ診断プログラムを起動させてエレベータの自動運転を実施する。エレベータの遠隔診断運転は、遠隔診断開始条件が揃った時点でエレベータを最下階まで移動させた後、最上階へ向けて運転することで実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3224920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、予め設定されたスケジュールに沿って遠隔診断を実施しようとする際、お客様の意向やエレベータの状況によって、エレベータ自体が遠隔診断を禁止する運転モードになっている場合がある。また、遠隔診断運転中にエレベータ利用者からの呼びが発生して遠隔診断運転が中止する場合がある。
【0005】
しかし、従来のエレベータには、予め設定されたスケジュールに沿って遠隔診断運転ができなかった場合には、再度、初めから診断運転をやり直すリトライ機能しか搭載されていなかった。リトライに失敗した際には、遠隔監視センターシステムから手動にて再度別の日時で遠隔診断を行うようにしていた。このため、エレベータの運転状態と利用状況を確認し、自動で遠隔診断スケジュールを変更するシステムは採用されていないのが現状である。
【0006】
上記事情に鑑み本発明の実施形態は、エレベータの運転状態を確認して、確実な遠隔診断の実施を支援することで、エレベータ利用者の利便性を損なうことなく、エレベータの無駄な診断運転を極力低減させることのできるエレベータ遠隔監視装置、エレベータ遠隔診断運転方法及びエレベータ遠隔監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための態様は、遠隔監視センターシステムから遠隔診断開始時刻が指定されると、指定された時刻に遠隔診断を実施するようにエレベータ制御装置に指示するエレベータ遠隔監視装置であって、現在の時刻と前記遠隔監視センターシステムにより指定された遠隔診断開始時刻とを比較して遠隔診断の開始を判定する遠隔診断開始判定部と、前記エレベータ制御装置から遠隔診断結果及び運転状態を受信する遠隔診断結果及び運転状態受信部と、前記遠隔診断結果及び運転状態受信部から前記遠隔診断結果及び運転状態を入力し、遠隔診断結果に基づき、利用者による呼び発生に起因して遠隔診断が失敗したか、又は運転状態によって、遠隔診断の時間帯が建物としてエレベータを利用する時間帯かを判定して前記遠隔診断開始時刻を変更する遠隔診断開始時刻変更機能部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の構成を示すブロック図。
【
図2A】本発明の第1実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【
図2B】本発明の第1実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【
図3】本発明の第2実施形態の構成を示すブロック図。
【
図4A】本発明の第2実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【
図4B】本発明の第1実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
図1に示すように、遠隔診断を実施する遠隔診断システムは、エレベータ側に設けられたエレベータ制御装置1及びエレベータ遠隔監視装置2と、エレベータ遠隔監視装置2と通信回線で接接続された遠隔監視センターシステム3とを備える。
【0010】
エレベータ制御装置1は、エレベータ制御装置としてエレベータの運転を制御する機能を有しており、遠隔診断実施部4と、遠隔診断結果/運転状態保存部5とを備えている。本実施形態におけるエレベータの診断運転方法は、エレベータ制御装置1の制御下で実施される。また、本実施形態におけるエレベータの診断運転プログラムは、エレベータ制御装置として機能するエレベータ制御装置1にインストールされることにより実施される。
【0011】
次に、第1実施形態の処理手順を
図2A、
図2Bを参照して説明する。
【0012】
遠隔監視センターシステム3の遠隔診断スケジュール日時指定部9は、遠隔診断運転の実施に先立って、遠隔診断開始時刻をエレベータ遠隔監視装置2の遠隔診断開始時刻部7に送信する(S101)。遠隔診断開始時刻部7は、遠隔診断スケジュール日時指定部9から受信した遠隔診断開始時刻を保存する(S102)。
【0013】
エレベータ制御装置1は、実施時刻が到来すると、遠隔診断運転を実施し、その遠隔診断結果及び運転状態保存部5をエレベータ遠隔監視装置2の遠隔診断結果及び運転状態受信部10へ送信する(S103)。遠隔診断結果及び運転状態受信部10は、エレベータ制御装置1から受信した遠隔診断結果及び運転状態を遠隔診断開始時刻変更機能部6へ送信する(S104)。
【0014】
遠隔診断開始時刻変更機能部6は、遠隔診断結果及び運転状態受信部10を介して、エレベータ制御装置1から受信した遠隔診断結果を基にエレベータ利用者の呼び発生に起因して遠隔診断が失敗しなかったかどうかを判断する(S105)。
【0015】
遠隔診断開始時刻変更機能部6は、遠隔診断結果及び運転状態受信部10を介して、エレベータ制御装置1から受信した運転状態を基に遠隔診断の時間が建物として利用している時間ではないかを判断する(S106)。
【0016】
遠隔診断開始時刻変更機能部6は、ステップS105、S106の処理に基づき、遠隔診断運転可能な時間帯を変更時刻として遠隔診断開始時刻部7へ送信する(S107)。
【0017】
遠隔診断開始時刻部7は、遠隔診断開始時刻変更機能部6から受信した変更時刻を新しい遠隔監視時刻として保存する(S108)。
【0018】
遠隔診断開始判定機能部8は、遠隔診断開始時刻部7にて保存された遠隔診断開始時刻と、現在の時刻を確認し、日時が一致しているか判定する(S109)。
【0019】
遠隔診断開始判定機能部8は、ステップS109の処理において、現在の日時が遠隔診断開始時刻と一致したと判断された場合には、エレベータ制御装置1の遠隔診断実施部4に向けて遠隔診断開始指令を送信する(S110)。
【0020】
遠隔診断実施部4は、受信した遠隔診断開始指令に基づいて遠隔診断を実施して、結果を遠隔診断結果及び運転状態保存部5に保存する(S111)。
【0021】
エレベータ制御装置1は、遠隔診断結果及び運転状態保存部5から遠隔診断結果及び運転状態を遠隔診断結果及び運転状態受信部10へ送信する(S112)。
【0022】
遠隔診断結果及び運転状態受信部10は、エレベータ制御装置1から受信した遠隔診断結果及び運転状態を遠隔診断開始時刻変更機能部6へ送信する(S113)。
【0023】
遠隔診断開始時刻変更機能部6は、遠隔診断結果及び運転状態受信部10を介して、エレベータ制御装置1から受信した遠隔診断結果及び運転状態保存部5を基に遠隔診断が実施できたか判定する(S114)。ステップS114において、遠隔診断が実施できなかった場合には、ステップS104に戻る。
【0024】
このように、第1実施形態によれば、予め設定していたスケジュールに沿って遠隔診断運転を実施する際、遠隔診断結果とエレベータの運転状態から、より最適な遠隔診断開始時刻を自動で判定・変更することができ、手動での遠隔診断日時の変更が不要となるという効果を奏する。
【0025】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて学習データ機能部11を追加したものである。
【0026】
学習データ機能部11は、過去における遠隔診断運転の実績データを蓄積してその運転状況から運行傾向を学習し、運行傾向に基づいて隔診断開始時刻変更部6に対して時刻変更を促すようにしている。
【0027】
図4は、
図2の形態にて実施する処理のフローで、
図4のS201〜S203は、
図3のS101〜S103と同じである。
【0028】
遠隔診断結果及び運転状態受信部10は、エレベータ制御装置1の遠隔診断結果及び運転状態保存部5から遠隔診断結果及び運転状態を受信して学習データ機能部(11)へ送信する(S204)。
【0029】
学習データ機能部11は、遠隔診断結果を基に一般客の利用により遠隔診断が中断されたかの分析と、運転状態から遠隔診断の時間帯が建物として利用している時間かの分析をする(S205)。
【0030】
学習データ機能部11は、ステップS205の分析結果に基づき、遠隔診断の運転傾向を算出する(S206)。
【0031】
学習データ機能部11は、算出した運行傾向を学習する
(S207)。学習データ機能部11は、学習した運行傾向を遠隔診断開始時刻変更機能部6に送信する(S208)。
【0032】
遠隔診断開始時刻変更機能部6は、学習データ機能部11から受信した運行傾向を基に遠隔診断可能な時間帯を算出し、変更時刻として遠隔診断開始時刻部7へ送信する(S209)。
【0033】
そして、遠隔診断開始時刻部7は、受信した変更時刻を新しい遠隔診断開始時刻として保存する(S210)。以下、
図4BのステップS211〜S216の処理は、
図2BのS109〜S114と同じであるので、その説明は省略する。
【0034】
このように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、学習データ機能を実装することで、常に遠隔診断結果及び運転状態を分析し、運行傾向として学習することができる。その結果、遠隔診断開始時刻を特定する際に運転傾向を用いることで、より高い精度で最適な遠隔診断開始時刻を特定でき、遠隔診断運転自体の失敗を低減することができるという効果を奏する。
【0035】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
1…エレベータ制御装置、2…エレベータ遠隔監視装置、3…遠隔監視センターシステム、4…遠隔診断実施部、5…遠隔診断結果及び運転状態保存部、6…遠隔診断開始時刻変更機能部、7…遠隔診断開始時刻部、8…遠隔診断開始判定機能部、9…遠隔診断スケジュール日時指定部、10…遠隔診断結果及び運転状態受信部、11…学習データ機能部。