特許第6570057号(P6570057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6570057木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570057
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   E04B2/56 622B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-139452(P2015-139452)
(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公開番号】特開2017-20263(P2017-20263A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】301012243
【氏名又は名称】丸天星工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】大石 千壽
(72)【発明者】
【氏名】川村 右介
(72)【発明者】
【氏名】中根 康晴
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−052523(JP,A)
【文献】 実開平03−040402(JP,U)
【文献】 特開平11−107509(JP,A)
【文献】 特開2003−301542(JP,A)
【文献】 特開2008−265156(JP,A)
【文献】 米国特許第05165212(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04B 1/10
E04F 13/08
B27D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造建築物の土台、柱、梁から成る骨組と、前記骨組の内側面に連なって幅方向のほぼ中心に形成された保持溝と、前記保持溝の底部間の距離に対して幅寸法が小さくなるように設定され、前記保持溝に差し込まれて保持される板材を有する木造建築物の壁構造において、前記板材は耐力壁を構成する構造用材であり、しかも内面が内装を構成するもので、前記板材の外面から前記保持溝の内面に雄ネジが傾斜姿勢でねじ込まれて、前記板材の内面が前記保持溝の内面に圧接させられていることを特徴とする木造建築物の壁構造。
【請求項2】
請求項1に記載した木造建築物の壁構造において、板材には雄ネジを挿入するための下孔が形成されていることを特徴とする木造建築物の壁構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載した木造建築物の壁構造において、板材は連設されて複数配置され、前記板材の端面どうしが接合しており、且つ前記端面どうしが連結材を介して連結されていることを特徴とする木造建築物の壁構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した木造建築物の壁構造において、板材は無垢材を、その繊維方向が互い違いになるように複数枚重ね合わせて接着したものであることを特徴とする木造建築物の壁構造。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかの木造建築物の壁構造を構築する方法において、木造建築物の土台、柱、梁等の骨組に互いに対向して形成された保持溝に差し込まれて保持される板材を有する木造建築物の壁構造において、前記板材は耐力壁を構成する構造用材であり、しかも内面が内装を構成するもので、前記板材の外面から前記保持溝の内面に雄ネジを傾斜姿勢でねじ込み、前記板材の内面を前記保持溝の内面に圧接させることを特徴とする木造建築物の壁構造を構築する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造の構築方法に係り、特に板材が耐力壁を構成する構造用材であり、その内面が内装を構成する木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造の構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造建築物においては土台、柱、梁から成る骨組に構造用合板を打ち付けて耐力壁を構成し、この構造用合板に重ねて内装を施工する。すなわち、特許文献1に示されているように構造用合板と内装材は別部材によって構成されている。
ところで、板材には3枚の無垢材を、その繊維方向が互い違いになるように重ね合わせて接着した無垢材積層板など、構造用合板と内装材を兼ねることができるものがある。
この板材を骨組に保持させる方法として、柱の互いに対向する部分に上下方向へ延びる保持溝を形成し、この保持溝に板材を差し込んで保持する構法(以下、落し込み構法という。)がある。この落し込み構法では板材が構造用合板と内装材を兼ねるように用いられるため、板材を骨組に対し強固に固定すると共に、内側(部屋内)から見て板材と保持溝の内側面との間に隙間がないように施工する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−173331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、落し込み構法において板材を保持溝に差し込むためには、板材と保持溝の内側面との間に多少の隙間を必要とする。従って、板材を保持溝に差し込んだだけでは、板材と保持溝の内側面との間に隙間ができる状態に仕上がってしまい内装の外観が損なわれるという問題がある。
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、落し込み構法において、板材と骨組とを強固に連結できると共に、板材と保持溝の内側面との間に隙間がない状態に仕上ることができ良好な内装の外観を得ることが可能な木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造の構築方法の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、木造建築物の土台、柱、梁から成る骨組と、前記骨組の内側面に連なって幅方向のほぼ中心に形成された保持溝と、前記保持溝の底部間の距離に対して幅寸法が小さくなるように設定され、前記保持溝に差し込まれて保持される板材を有する木造建築物の壁構造において、前記板材は耐力壁を構成する構造用材であり、しかも内面が内装を構成するもので、前記板材の外面から前記保持溝の内面に雄ネジが傾斜姿勢でねじ込まれて、前記板材の内面が前記保持溝の内面に圧接させられていることを特徴とする木造建築物の壁構造である。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載した木造建築物の壁構造において、板材には雄ネジを挿入するための下孔が形成されていることを特徴とする木造建築物の壁構造である。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した木造建築物の壁構造において、板材は連設されて複数配置され、前記板材の端面どうしが接合しており、且つ前記端面どうしが連結材を介して連結されていることを特徴とする木造建築物の壁構造である。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した木造建築物の壁構造において、板材は無垢材を、その繊維方向が互い違いになるように複数枚重ね合わせて接着したものであることを特徴とする木造建築物の壁構造である。
【0009】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかの木造建築物の壁構造を構築する方法において、木造建築物の土台、柱、梁等の骨組に互いに対向して形成された保持溝に差し込まれて保持される板材を有する木造建築物の壁構造において、前記板材は耐力壁を構成する構造用材であり、しかも内面が内装を構成するもので、前記板材の外面から前記保持溝の内面に雄ネジを傾斜姿勢でねじ込み、前記板材の内面を前記保持溝の内面に圧接させることを特徴とする木造建築物の壁構造を構築する方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の木造建築物の壁構造、当該木造建築物の壁構造を構築する方法では、板材と骨組とを強固に連結できると共に、板材と保持溝の内側面との間に隙間がない状態に仕上ることができ良好な内装の外観を得ることが可能となる。しかも、木造建築物の壁構造を構築するための作業も比較的簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る木造建築物の壁構造の斜視図である。
図2図1の木造建築物の壁構造の構築方法を説明するための斜視図である。
図3図1の木造建築物の壁構造の背面図である。
図4図1の木造建築物の壁構造の柱に板材を取り付ける作業を説明するための部分平面図である。
図5図1の木造建築物の壁構造の柱に板材を取り付ける作業を説明するための部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る木造建築物の壁構造1を図面にしたがって説明する。
符号2は骨組を示し、この骨組2は土台3、柱5及び梁9によって構成されている。
土台3の上面には左右方向へ延びる保持溝3aが形成されている。土台3には一対の柱5が互いに間隔を開けて対向して立設されている。説明の便宜上一対の柱5を示したが、実際の建築物では左右方向へ更に多くの柱5が互いに間隔を開けて並設される。以下の説明では一対の柱5を対象とする。
柱5の互いに対向する部分には上下方向へ延びる保持溝5aが形成されている。また、梁9の下面にも左右方向へ延びる保持溝9aが形成されている。
【0013】
保持溝3a、5a、9aはいずれも各部材の幅方向のほぼ中心に形成されており、これらの保持溝3a、5a、9aは連なっている。
保持溝3a、5a、9aの深さ寸法は10mm〜35mmの範囲で設定し、幅寸法は31mm〜50mmの範囲で設定する。板材11の厚さ寸法が30mmである場合は、保持溝3a、5a、9aの深さ寸法は20mm、幅寸法は33mmが推奨される。
【0014】
また、互いに対向する柱5の保持溝5aの底面間の距離に対し板材11の幅寸法は1mm〜10mm小さくなるように設定し、6mm小さくすることが推奨される。このように保持溝5aの底面間の距離に対し板材11の幅寸法を設定することで、板材11を保持溝5aにスムーズに差し込むことができる。
【0015】
符号11は板材を示し、この板材11は3枚の無垢材を、その繊維方向が互い違いになるように重ね合わせて接着した無垢材積層板である。従って、板材11はいずれの方向に対しても高い剛性を有している。また、後述するように板材11の内装を構成する内面11a側には美しい木目をもつ無垢材が使用されている。
図3に示すように板材11の縁部には等間隔を開けて下孔13が形成されている。この下孔13は板材11の外面11bの端部から内面11aの角部近傍へ貫通するように傾斜している。
【0016】
図2に示すように、柱5の保持溝5aには上下方向へ3枚の板材11が保持されるが、最下段の板材11の上端面にはダボ穴11cが形成され、真中の段の板材11の上下の端面にはダボ穴11cが形成されており、更に最上段の板材11の下端面にはダボ穴11cが形成されている。これらのダボ穴11cは複数形成され互いに等間隔に配置されている。ダボ穴11cには後述するように連結材としてのダボ15が挿入される。
【0017】
次にこの木造建築物の壁構造1の構築方法を説明する。
図2に示すように板材11を一対の保持溝5aに上方から差し込み、そのまま下降させて板材11の下端部を土台3の保持溝3aに差し込む。最下段の板材11の上端面のダボ穴11cにはダボ15の下半部を差し込んで嵌合させ固定しておく。ダボ15の上半部はダボ穴11cから突出した状態となっている。
更に板材11を保持溝5aに差し込んで下降させ、この板材11の下端面に形成されたダボ穴11cに下段の板材11の上端面から突出するダボ15を差し込む(図3参照)。中段の板材11の下端面に形成されたダボ穴11cと下段の板材11の上端面から突出するダボ15も嵌合させて固定する。
【0018】
上記と同様にして、最上段の板材11を保持溝5aに差し込み、この板材11の下端面に形成されたダボ穴11cに中段の板材11の上端面から突出するダボ15を差し込む。この場合もダボ穴11cとダボ15とを嵌合させて固定する。
これより、下段、中段、上段の板材11の端面どうしが接合して、ぴったり合わさる状態となる。
【0019】
そして、図4に示すように板材11の左端部の下孔13に外面11bから雄ネジ17を挿入して、図5に示すように柱5の保持溝5aの内面5bに傾斜姿勢でねじ込む。これにより、板材11の内面11aが保持溝5aの内面5bに圧接させられる。
これと同様に板材11の左右の端部に形成されたすべての下孔13にそれぞれ雄ネジ17を差し込み、保持溝5aの内面5bに傾斜姿勢でねじ込む。従って、雄ネジ17は上下方向に複数個配置されることになる。
【0020】
また、板材11を土台3の保持溝3aと梁9の保持溝9aに雄ネジ17によって固定する作業は、図4図5に示した板材11を柱5の保持溝5aに雄ネジ17によって固定する作業と同様であるので、図4図5の括弧内に土台3、梁9に関する符号を記載して説明に用いるものとする。
板材11の外面11bの下端部の下孔13に外面11bから雄ネジ17を挿入して、土台3の保持溝3aの内面3bに傾斜姿勢でねじ込む。
そして、柱5の上端面に梁9を備えて、板材11の外面11bの上端部の下孔13に外面11bから雄ネジ17を挿入して、梁9の保持溝9aの内面9bに傾斜姿勢でねじ込む。
板材11の内面11aが土台3の保持溝3aの内面3bに圧接させられ、板材11の内面11aが梁9の保持溝9aの内面9bに圧接させられる。
【0021】
このように、板材11と保持溝3a、5a、9aの内側面3b、5b、9bとの間に隙間がない状態に仕上ることができ、しかも内面11a側には雄ネジ17は一切露出しないので、良好な内装の外観を得ることが可能となる。
しかも、板材11は保持溝5a、更に保持溝3a、9aに保持されて、雄ネジ17によって柱5、土台3及び梁9に強固に連結されるので、板材11と骨組2が一体構造となる。従って、頑丈な壁構造を得ることが可能となる。因みに4倍〜5倍の壁倍率を得ることができると想定される。これにより、建築物の壁が比較的少なくても高い耐震性を得ることが可能となり、間取りやデザインの自由度を向上させることができるようになる。
【0022】
更に、板材11どうしがダボ15を介して連結されることで、板材11の水平方向のずれを確実に防止することができる。
また、木造建築物の壁構造1を構築するための作業も比較的簡単である。すなわち、本発明では、木製の受け材や接ぎ材等の補助材を使用することなく、強固な木造建築物の壁構造を構築することができるので、構築の手間を軽減でき、作業効率を大幅に向上させることができる。
なお、本木造建築物の壁構造1では補助材を使用していないので、板材11の外面側に突起物がなく、断熱材や配線等の設置を容易に行うことができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、上記実施例ではダボを用いて板材どうしを上下方向において連結したが、本発明はこれに限定されず、ダボを用いない構成としてもよい。
また、板材を上下方向に三段連ねる構成としたが、本発明はこれに限定されず、三段より少なく、または多い段としてもよい。
上記実施の形態では板材として無垢材積層板を用いたが、本発明はこれに限定されず、合板、パーティクルボード等を使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の木造建築物の壁構造は、建築業において利用可能性を有し、板材と骨組とを強固に連結できると共に、板材と保持溝の内側面との間に隙間がない状態に仕上ることができ良好な内装の外観を得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1…木造建築物の壁構造 2…骨組
3…土台 3a…土台の保持溝
3b…土台の保持溝の内面 5…柱
5a…柱の保持溝 5b…柱の保持溝の内面
9…梁 9a…梁の保持溝
9b…梁の保持溝の内面 11…板材
11a…板材の内面 11b…板材の外面
11c…ダボ穴 13…下孔
15…ダボ 17…雄ネジ
図1
図2
図3
図4
図5