【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ゲートパルス発生回路100’を含むインパルス電流発生装置やパルス電磁石電源装置等の従来のパルス電源装置は、サイリスタのアノード側に設けられた主コンデンサと、サイリスタのカソード側に設けられた負荷コイルと、負荷コイルに並列に設けられたサージ吸収回路とを備え、サイリスタがオン状態のときに主コンデンサに蓄積された電力を負荷コイルに供給する。
【0009】
図6(A)に、サイリスタのアノード−カソード間を流れるサイリスタ電流itと、サイリスタ電流itのうち負荷コイルに供給される負荷コイル電流iLと、サイリスタのオン状態を保持するのに必要なサイリスタ保持電流値ihとの関係を示す。
図6(A)において、時間t
1は、サイリスタ電流itがサイリスタ保持電流値ihを下回る期間の開始時点であり、時間t
2は、上記期間の終了時点である。
【0010】
図6(B)に、パルストランスの二次側に生じるパルストランス電圧vt
1,vt
2と、サイリスタのゲートに供給されるゲートパルス電流ig
1,ig
2(初期大電流ig
1および持続小電流ig
2)との関係を示す。
【0011】
サイリスタが点弧した直後はサージ吸収回路に立ち上がりの早いサイリスタ電流itを流す必要があること、およびサイリスタのゲートが加熱により破壊してしまうのを防ぐ必要があることから、電流値の大きいゲートパルス電流(初期大電流ig
1)をサイリスタのゲートに供給する必要がある。そして、負荷コイルのインダクタンスが大きく、負荷コイルに流れる負荷コイル電流iLの立ち上がりが遅い場合には、負荷コイル電流iLがサイリスタ保持電流値ihに達するまで1[ms]以上の比較的長い時間を要することから、持続時間の長いゲートパルス電流(持続小電流ig
2)を必要とする。
【0012】
しかしながら、ゲートパルス発生回路100’では、初期大電流ig
1に対応する第1コンデンサ114および第2コンデンサ124の放電電流と、持続小電流ig
2に対応する第2コンデンサ124の放電電流とが連続してパルストランスに供給されるので、
図6(B)に示すように、初期大電流ig
1と持続小電流ig
2とが連続した形になり、パルストランス電圧vt
1,vt
2も連続した形になる。これにより、パルストランスが連続的に一方向に励磁され、パルストランスの磁束が一方向にのみ増加するので、パルストランスが比較的短時間で飽和してしまう。
【0013】
パルストランスが飽和すると、2次側のパルストランス電圧が生じなくなり、サイリスタにゲートパルス電流を供給することができなくなる。サイリスタ電流itがサイリスタ保持電流値ihを下回る期間(時間t
1〜t
2)に、サイリスタへのゲートパルス電流(持続小電流ig
2)の供給が停止してしまうと、サイリスタの消弧が生じてしまう。一方、パルストランスの鉄心断面積を増やす方法によりパルストランスの飽和を遅らせることができるが、この方法では、パルストランスが大型化してしまう。
【0014】
なお、パルストランスの巻数を増やす方法によりパルストランスの飽和を遅らせることもできるが、パルストランスの巻数を増やすとゲートパルス電流(初期大電流ig
1)の立ち上がりが遅くなる。サージ吸収回路に立ち上がりの早いサイリスタ電流itを流す必要があるパルス電源装置においては、ゲートパルス電流(初期大電流ig
1)の立ち上がりも約2[μs]以下にする必要があるので、この方法は適用できない。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、パルストランスを大型化させることなくサイリスタの消弧を防ぐことが可能なゲートパルス発生回路およびパルス電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明に係るゲートパルス発生回路は、
パルストランスを介して、前記パルストランスの2次側に接続されたサイリスタのゲートにゲートパルス電流を供給するゲートパルス発生回路であって、
前記パルストランスに第1電流を出力する第1ゲートドライブ回路と、
前記パルストランスに前記第1電流よりも低い第2電流を出力する第2ゲートドライブ回路と、
前記第1ゲートドライブ回路が前記第1電流を出力するタイミングおよび前記第2ゲートドライブ回路が前記第2電流を出力するタイミングを制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記サイリスタが点弧してから前記サイリスタのアノード−カソード間を流れるサイリスタ電流が増加する第1期間に、前記第1ゲートドライブ回路に前記第1電流を出力させることで、前記パルストランスの2次側に第1電圧を発生させ、
前記第1期間終了後の前記サイリスタ電流がサイリスタ保持電流値を下回る前の第2期間に、前記第1ゲートドライブ回路に前記第1電流の出力を停止させることで、前記パルストランスの2次側に前記第1電圧と逆極性の逆電圧を発生させ、
前記第2期間終了後の前記サイリスタ電流が前記サイリスタ保持電流値を下回る期間を含む第3期間に、前記第2ゲートドライブ回路に前記第2電流を出力させることで、前記パルストランスの2次側に前記第1電圧と同極性で前記第1電圧よりも低い第2電圧を発生させる
ことを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、第1ゲートドライブ回路に第1電流を出力させる第1期間と第2ゲートドライブ回路に前記第2電流を出力させる第3期間の間において、電流停止期間(第2期間)を設けてパルストランスの2次側に逆電圧を発生させるので、パルストランスが連続的に一方向に励磁されるのを防ぐことができる。その結果、パルストランスを大型化させることなく、パルストランスの飽和を遅らせることができる。
【0018】
上記ゲートパルス発生回路では、例えば、
前記第1ゲートドライブ回路は、
第1コンデンサと、
前記制御回路の制御下でオン状態とオフ状態とが切り替わり、オン状態のときに前記第1コンデンサの放電電流を前記第1電流として出力する第1スイッチ回路と、を備え、
前記第2ゲートドライブ回路は、
第2コンデンサと、
前記制御回路の制御下でオン状態とオフ状態とが切り替わり、オン状態のときに前記第2コンデンサの放電電流を前記第2電流として出力する第2スイッチ回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1期間に前記第1スイッチ回路をオン状態にさせる第1制御回路と、
前記第3期間に前記第2スイッチ回路をオン状態にさせる第2制御回路と、を備えた構成にすることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係るパルス電源装置は、
サイリスタと、前記サイリスタのアノード側に設けられた主コンデンサと、前記サイリスタのカソード側に設けられた負荷コイルと、前記負荷コイルに並列に設けられたサージ吸収回路とを備え、前記サイリスタがオン状態のときに前記主コンデンサに蓄積された電力を前記負荷コイルに供給する電源回路と、
パルストランスを備え、前記パルストランスの2次巻線の一端が前記サイリスタのゲートに接続されたサイリスタゲート回路と、
前記パルストランスの1次側に接続されたゲートパルス発生回路と、
を含むパルス電源装置であって、
前記ゲートパルス発生回路は、
前記パルストランスに第1電流を出力する第1ゲートドライブ回路と、
前記パルストランスに前記第1電流よりも低い第2電流を出力する第2ゲートドライブ回路と、
前記第1ゲートドライブ回路が前記第1電流を出力するタイミングおよび前記第2ゲートドライブ回路が前記第2電流を出力するタイミングを制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、
前記サイリスタが点弧してから前記サイリスタのアノード−カソード間を流れるサイリスタ電流が増加する第1期間に、前記第1ゲートドライブ回路に前記第1電流を出力させることで、前記パルストランスの2次側に第1電圧を発生させ、
前記第1期間終了後の前記サイリスタ電流がサイリスタ保持電流値を下回る前の第2期間に、前記第1ゲートドライブ回路に前記第1電流の出力を停止させることで、前記パルストランスの2次側に前記第1電圧と逆極性の逆電圧を発生させ、
前記第2期間終了後の前記サイリスタ電流が前記サイリスタ保持電流値を下回る期間を含む第3期間に、前記第2ゲートドライブ回路に前記第2電流を出力させることで、前記パルストランスの2次側に前記第1電圧と同極性で前記第1電圧よりも低い第2電圧を発生させる
ことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1ゲートドライブ回路に第1電流を出力させる第1期間と第2ゲートドライブ回路に前記第2電流を出力させる第3期間の間において、電流停止期間(第2期間)を設けてパルストランスの2次側に逆電圧を発生させるので、パルストランスが連続的に一方向に励磁されるのを防ぐことができる。その結果、パルストランスを大型化させることなく、パルストランスの飽和を遅らせることができる。
【0021】
上記パルス電源装置では、例えば、
前記第1ゲートドライブ回路は、
第1コンデンサと、
前記制御回路の制御下でオン状態とオフ状態とが切り替わり、オン状態のときに前記第1コンデンサの放電電流を前記第1電流として出力する第1スイッチ回路と、を備え、
前記第2ゲートドライブ回路は、
第2コンデンサと、
前記制御回路の制御下でオン状態とオフ状態とが切り替わり、オン状態のときに前記第2コンデンサの放電電流を前記第2電流として出力する第2スイッチ回路と、を備え、
前記制御回路は、
前記第1期間に前記第1スイッチ回路をオン状態にさせる第1制御回路と、
前記第3期間に前記第2スイッチ回路をオン状態にさせる第2制御回路と、を備えた構成にすることができる。
【0022】
上記パルス電源装置では、
前記サイリスタゲート回路は、前記パルストランスの2次巻線の一端と前記サイリスタのゲートとを接続する配線に介装されたダイオードを備え、
前記ダイオードは、アノードが前記パルストランスの2次巻線の一端側に接続され、カソードが前記サイリスタのゲート側に接続されている
ことが好ましい。