【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業研究成果最適プログラム シーズ育成タイプ「人工核酸によるバイオマーカー簡易検出センサの技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
ZAYATS, Maya et al.,Label-Free and Reagentless Aptamer-Based Sensors for Small Molecules,J.AM.CHEM.SOC.,American Chemical Society,2006年,Vol.128,No.42,pp.13666-13667
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(iii)の一本鎖型核酸センサにおいて、前記立体形成領域(D)、前記ステム形成領域(SD)、前記結合領域(A)および前記ステム形成領域(SA)が、下記(1)、(2)、(3)または(4)の順序で連結されている、請求項4記載の検出デバイス:
(1) 前記結合領域(A)、前記ステム形成領域(SD)、前記立体形成領域(D)および前記ステム形成領域(SA)の順序;
(2) 前記ステム形成領域(SA)、前記立体形成領域(D)、前記ステム形成領域(SD)および前記結合領域(A)の順序;
(3) 前記立体形成領域(D)、前記ステム形成領域(SA)、前記結合領域(A)および前記ステム形成領域(SD)の順序;
(4) 前記ステム形成領域(SD)、前記結合領域(A)、前記ステム形成領域(SA)および前記立体形成領域(D)の順序。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<検出デバイス>
本発明の検出デバイス(以下、「デバイス」ともいう。)は、前述のように、核酸センサ(以下、「センサ」ともいう。)が配置されたトランジスタを含み、前記核酸センサは、所定の立体構造(以下、「所定の構造」ともいう。)を形成する立体形成領域(D)とターゲットに結合する結合領域(A)とを有し、前記ターゲット非存在下、前記立体形成領域(D)は、前記立体構造の形成が阻害され、前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成し、前記立体構造の形成時において、前記トランジスタのデバイ長の範囲における前記核酸センサを構成するヌクレオチド残基の数が、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加または減少することを特徴とする。
【0012】
前記トランジスタに配置されたセンサは、後述するように、前記ターゲットの存在下、すなわち、前記所定の構造の形成時において、前記デバイ長の範囲におけるセンサを構成するヌクレオチド残基の数(以下、「デバイ長のヌクレオチド数」ともいう。)を増加または減少させる。また、前記センサを構成するヌクレオチド残基は、例えば、負の電荷を有す。このため、前記ターゲット存在下において、前記デバイ長の範囲における電荷は、例えば、前記デバイ長のヌクレオチド数の増加または減少に対応するように、前記ターゲット非存在下よりも減少または増加する。したがって、本発明の検出デバイスでは、例えば、前記ターゲットの電荷によらず、前記ターゲットの存在により前記デバイ長の範囲における電荷が、増加または減少するため、電荷をほとんど有さない、または有さないターゲットについても分析可能である。なお、前記センサを構成するヌクレオチド残基は、塩基、糖骨格、およびリン酸基を有することから、前記ヌクレオチド残基の数は、例えば、「塩基の数」、「糖骨格の数」、「リン酸基の数」等ということもできる。
【0013】
以下、前記各領域を核酸領域ともいう。本発明において、後述する一本鎖型核酸センサは、例えば、一本鎖センサということもでき、二本鎖型核酸センサは、例えば、二本鎖センサということもできる。また、前記立体形成領域(D)について、所定の構造の形成が阻害されることを、スイッチ−OFF(またはturn−OFF)、所定の構造が形成されることを、スイッチ−ON(またはturn−ON)ともいう。
【0014】
前記立体形成領域(D)は、所定の構造を形成する核酸領域である。前記所定の構造は、特に制限されず、例えば、核酸分子が形成する高次構造があげられ、具体的に、二次構造、三次構造、四次構造等があげられる。前記所定の構造の具体例としては、例えば、ステム構造、ヘアピンループ構造、バルジループ構造、G−カルテット構造、i-motif構造、シュードノット構造等があげられる。具体例として、前記立体形成領域(D)は、例えば、G−カルテット構造を形成するG形成領域(G)であり、前記所定の構造は、G−カルテット構造である。前記立体形成領域(D)において形成される前記所定の構造の数は、特に制限されず、例えば、1〜10個である。前記立体形成領域(D)の配列は、前記所定の構造を形成する配列であればよい。前記立体形成領域(D)は、例えば、前記ターゲット非存在下、前記所定の構造以外の立体構造(以下、「他の立体構造」ともいう。)を形成してもよい。この場合、前記核酸センサは、例えば、前記ターゲット非存在下、前記立体形成領域(D)が、他の立体構造を形成し、前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記立体形成領域(D)が、前記所定の立体構造を形成してもよい。前記他の立体構造は、例えば、前記所定の構造とは異なる立体構造である。前記他の立体構造の具体例は、例えば、前記所定の構造の具体例を援用できる。
【0015】
前記G−カルテット(G−tetradともいう)は、一般に、G(グアニン)が四量体となった面の構造として知られている。前記G形成領域(G)は、例えば、複数の塩基Gを有し、その領域内で、複数の塩基GによるG−カルテット構造を形成する領域である。前記G−カルテット構造は、例えば、パラレル型およびアンチパラレル型のいずれでもよく、好ましくは、パラレル型である。本発明のセンサにおいて、前記G形成領域(G)において形成されるG−カルテット構造の個数は、特に制限されず、例えば、1面でも、2面以上の複数でもよいが、前記G形成領域(G)は、G−カルテットが複数面重なった、グアニン四重鎖(またはG−quadruplexという)構造を形成することが好ましい。前記G形成領域(G)の配列は、前記G−カルテット構造を形成する配列であればよく、より好ましくは、グアニン四重鎖構造を形成する配列である。
【0016】
前記G形成領域(G)の配列は、例えば、前記G−カルテット構造を形成する公知の核酸分子の配列を使用できる。前記公知の核酸分子としては、例えば、下記論文(1)〜(4)等の核酸分子が例示できる。
(1)Travascioら, Chem. Biol., 1998年, vol.5, p.505-517
(2)Chengら, Biochemistry, 2009年, vol.48, p.7817-7823
(3)Tellerら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.9114-9119
(4)Taoら, Anal. Chem., 2009年, vol.81, p.2144-2149
【0017】
前記所定の立体構造がi-motif構造である場合、前記立体形成領域(D)の配列は、例えば、前記i-motif構造を形成する公知の核酸分子の配列を使用できる。前記公知の核酸分子としては、例えば、下記論文(5)等の核酸分子が例示できる。
(5)Patrycja Bielecka et al., “Fluorescent Sensor for PH Monitoring Based on an i-Motif- - Switching Aptamer Containing a Tricyclic Cytosine Analogue (tC)”, 2015, Molecules, vol.20, pp.18511-18525
【0018】
前記所定の立体構造がシュードノット構造である場合、前記立体形成領域(D)の配列は、例えば、前記シュードノット構造を形成する公知の核酸分子の配列を使用できる。前記公知の核酸分子としては、例えば、下記論文(6)等の核酸分子が例示できる。
(6)Calliste Reiling et al., “Loop Contributions to the Folding Thermodynamics of DNA Straight Hairpin Loops and Pseudoknots”, 2015, J. Phys. Chem. B, vol.119, pp.1939-1946
【0019】
前記立体形成領域(D)は、例えば、一本鎖型でもよいし、二本鎖型でもよい。前記一本鎖型は、例えば、一本鎖の立体形成領域(D)内で、所定の構造を形成でき、前記二本鎖型は、例えば、第1領域(D1)と第2領域(D2)とからなり、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、所定の構造を形成できる。後者の二本鎖型は、例えば、前記第1領域と、前記第2領域とが、間接的に連結された構造があげられ、具体的には、後述する核酸センサ(iv)において説明する。
【0020】
前記一本鎖型の立体形成領域(D)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、11塩基長、13塩基長、15塩基長であり、上限は、例えば、60塩基長、36塩基長、18塩基長である。
【0021】
前記二本鎖型の立体形成領域(D)において、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、両者は同じであっても異なってもよい。前記第1領域(D1)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。
【0022】
本発明において、ターゲットは、特に制限されず、任意のターゲットが選択できる。そして、前記任意のターゲットに応じて、前記ターゲットに結合する結合核酸分子を、前記結合領域(A)として使用すればよい。
【0023】
前記ターゲットは、特に制限されず、例えば、低分子化合物、微生物、ウイルス、食物アレルゲン、農薬、カビ毒、抗体等が例示できる。前記低分子化合物は、例えば、メラミン、抗生物質、農薬、環境ホルモン等があげられる。前記微生物は、例えば、サルモネラ菌、リステリア菌、大腸菌、カビ等があげられ、前記ウイルスは、例えば、ノロウイルス等があげられる。
【0024】
前記結合領域(A)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、12塩基長、15塩基長、18塩基長であり、上限は、例えば、140塩基長、80塩基長、60塩基長であり、その範囲は、例えば、12〜140塩基長、15〜80塩基長、18〜60塩基長である。
【0025】
本発明において、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、例えば、両者間でアニーリングが生じ得る配列であることを意味する。前記アニーリングは、例えば、ステム形成ともいう。本発明において、相補的とは、例えば、2種類の配列をアラインメントした際の相補性が、例えば、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上であり、好ましくは100%、すなわち完全相補である。また、核酸センサ内において、ある配列に対して他の配列が相補的であるとは、一方の5’側から3’側に向かう配列と、他方の3’側から5’側に向かう配列とを対比させた際に、互いの塩基が相補的であることを意味する。
【0026】
本発明において、前記センサは、例えば、下記(I)および(II)のセンサがあげられる。本発明において、前記トランジスタに配置されるセンサは、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0027】
以下、センサの一例として、前記(I)および(II)のセンサのそれぞれを、以下に説明する。以下のセンサにおいて、前記所定の立体構造は、例えば、G−カルテット構造が好ましい。なお、特に示さない限り、各センサの記載を、それぞれ援用できる。また、下記(I)および(II)のセンサの説明において、「立体構造」は、「所定の立体構造」を意味する。
【0028】
1.核酸センサ(I)
前記核酸センサ(I)は、例えば、第1鎖(ss1)と第2鎖(ss2)とから構成される二本鎖型核酸センサであり、
前記第1鎖(ss1)は、前記立体形成領域(D)および前記結合領域(A)をこの順序で有し、
前記第2鎖(ss2)は、ステム形成領域(S
D)およびステム形成領域(S
A)をこの順序で有し、
前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、
前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)に対して相補的な配列を有し、
前記ターゲット非存在下、前記立体形成領域(D)は、前記立体構造の形成が阻害され、且つ前記第2鎖(ss2)とハイブリダイズし、
前記ターゲット存在下、前記第1鎖(ss1)の前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成し、且つ前記第2鎖(ss2)から解離し、
前記立体構造の形成時において、前記トランジスタのデバイ長の範囲における前記核酸センサを構成するヌクレオチド残基の数が、前記立体構造の形成の阻害時よりも減少する二本鎖型核酸センサである。
【0029】
前記核酸センサ(I)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0030】
図1に示すように、前記センサ(I)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が減少すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。一般的に、核酸配列は、形成し得る構造の間で熱力学的に揺らいでおり、相対的に安定性の高いものの存在比率が高くなると考えられている。そして、アプタマー等の結合核酸分子(結合領域)は、一般的に、ターゲット存在下では、ターゲットとの接触によって、より安定な構造に変化して、前記ターゲットに結合することが知られている。また、G−カルテット構造等の核酸配列の前記立体構造も、一般的に、相対的に安定性の高いものの存在比率が高くなると考えられている。そして、
図1(A)に示すように、前記センサ(I)は、ターゲット非存在下では、前記第1鎖(ss1)の前記立体形成領域(D)と前記第2鎖(ss2)の前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングすることで、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。また、前記第1鎖(ss1)の前記結合領域(A)と前記第2鎖(ss2)の前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングすることで、前記結合領域(A)において、ターゲットと結合するためのより安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。他方、前記センサ(I)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とのアニーリングが解除され、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化する。これに伴い、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが解除され、前記立体形成領域(D)の領域内で前記立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、
図1(B)に示すように、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とのアニーリング、および前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが解除されることで、前記第1鎖(ss1)が、前記第2鎖(ss2)から解離し、この結果、前記第1鎖(ss1)は、前記トランジスタのデバイ長の範囲外へと移動可能となる。このため、前記センサ(I)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも減少するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。なお、
図1では、前記第2鎖(ss2)が、前記トランジスタに配置されている例をあげて説明したが、後述するように、前記第1鎖(ss1)が、前記トランジスタに配置されてもよい。
【0031】
前記センサ(I)は、前述のように、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)を含み、前記ターゲット存在下、前記第1鎖(ss1)または前記第2鎖(ss2)が解離し、例えば、前記トランジスタのデバイ長の範囲外へと移動する。このため、前記ターゲットが電荷を有する場合においても、前記ターゲット存在下において、前記デバイ長の範囲における電荷が、解離した前記第1鎖(ss1)または前記第2鎖(ss2)の数に応じて変動する。このため、前記センサ(I)は、例えば、前記ターゲットの電荷の影響が低減されるため、汎用性に優れる。
【0032】
前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、その全部または一部が、前記立体形成領域(D)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。また、前記ステム形成領域(S
A)は、例えば、その全部または一部が、前記結合領域(A)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。
【0033】
前記センサ(I)において、前記各領域の順序は、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングし、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングする順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(1) ss1 5’− A−D −3’
ss2 3’− S
A−S
D −5’
(2) ss1 5’− D−A −3’
ss2 3’− S
D−S
A −5’
【0034】
前記(1)において、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)の5’側領域と相補的であることが好ましい。前記(2)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の5’側領域と相補的であることが好ましい。
【0035】
前記センサ(I)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、介在リンカー領域を介して結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0036】
前記センサ(I)は、例えば、前記第1鎖(ss1)における前記結合領域(A)と前記立体形成領域(D)との間、および、前記第2鎖(ss2)における前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)との間に、前記介在リンカー領域を有することが好ましい。前記第1鎖(ss1)における介在リンカー領域(L
1)と、前記第2鎖(ss2)における介在リンカー領域(L
2)とは、互いに非相補的な配列であることが好ましい。
【0037】
具体例として、前記(1)および(2)が、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)に前記介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記結合領域(A)と前記立体形成領域(D)とを連結する介在リンカー領域を(L
1)、前記ステム形成領域(S
D)と前記ステム形成領域(S
A)とを連結する介在リンカー領域を(L
2)で示す。前記センサ(I)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
1)および(L
2)の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。
(1’) ss1 5’− A−L
1−D −3’
ss2 3’− S
A−L
2−S
D −5’
(2’) ss1 5’− D−L
1−A −3’
ss2 3’− S
D−L
2−S
A −5’
【0038】
前記(1’)および(2’)の形態は、例えば、以下のように、立体構造の形成がON−OFFされる。ターゲット非存在下において、例えば、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、これら2つのステムの間で、前記介在リンカー領域(L
1)と前記介在リンカー領域(L
2)が、内部ループを形成して、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成を阻害する。そして、前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、それぞれのステム形成が解除され、前記立体形成領域(D)において、前記立体構造が形成される。
【0039】
前記センサ(I)において、前記ステム形成領域(S
A)および前記ステム形成領域(S
D)の長さは、特に制限されない。前記ステム形成領域(S
A)の長さは、例えば、1〜60塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成領域(S
D)の長さは、例えば、1〜30塩基長、0〜10塩基長、1〜10塩基長、0〜7塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成領域(S
A)と前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、同じ長さでもよいし、前者が長くてもよいし、後者が長くてもよい。
【0040】
前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、それぞれ、例えば、0〜30塩基長、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、例えば、同じでも、異なってもよい。後者の場合、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さの差は、特に制限されず、例えば、1〜10塩基長、1または2塩基長、1塩基長である。
【0041】
前記センサ(I)において、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の長さは、特に制限されない。前記第1鎖(ss1)の長さは、例えば、40〜200塩基長、42〜100塩基長、45〜60塩基長である。前記第2鎖(ss2)の長さは、例えば、4〜120塩基長、5〜25塩基長、10〜15塩基長である。
【0042】
前記センサ(I)は、例えば、前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)との間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが連結している場合、前記センサ(I)は、例えば、一本鎖型核酸センサということができ、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)は、それぞれ、第1領域および第2領域ということができる。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、介在リンカー領域を介して結合していることを意味し、具体的には、一方の領域の3’末端と前記介在リンカー領域の5’末端とが直接結合し、前記介在リンカー領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。前記介在リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、1〜60塩基長である。
【0043】
前記第1領域、前記第2領域および前記介在リンカー領域の順序は、例えば、前記第1領域、前記介在リンカー領域、および前記第2領域が、5’側からこの順序で連結してもよいし、3’側からこの順序で連結してもよく、好ましくは前者である。
【0044】
前記センサ(I)は、例えば、前記第1鎖(ss1)または前記第2鎖(ss2)の一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0045】
前記センサ(I)は、例えば、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の前記一方の末端または両端に、さらに、リンカー領域が付加されてもよい。前記末端に付加されたリンカー領域を、以下、付加リンカー領域ともいう。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、1〜60塩基長である。この場合、前記センサ(I)は、例えば、前記第1鎖(ss1)または前記第2鎖(ss2)の一方の末端が、付加リンカー領域を介して、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0046】
前記センサ(I)において、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の一方が、前記トランジスタに配置され、他方の鎖を試薬として含んでもよい。この場合、前記トランジスタに配置される鎖は、好ましくは、前記第2鎖(ss2)であり、前記試薬として含む鎖は、好ましくは、前記第1鎖(ss1)である。
【0047】
前記センサ(I)において、前記第1鎖(ss1)および前記第2鎖(ss2)の一方が、前記トランジスタに配置され、他方の鎖を試薬として含む場合、前記センサ(I)は、例えば、前記試薬の存在下、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が減少すると推定される。なお、一例として、前記第2鎖(ss2)が前記トランジスタに配置される場合を例にあげて説明するが、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記センサ(I)において、ターゲット非存在下では、前記結合領域(A)は、ターゲットと結合するためのより安定な構造を形成せず、また、前記ステム形成領域(S
A)が、前記結合領域(A)に対してアニーリングすることで、前記結合領域(A)において前記安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。また、これに伴い、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が阻害され(スイッチ−OFF)、前記ステム形成領域(S
D)が、前記立体形成領域(D)に対してアニーリングする。このため、前記センサ(I)において、ターゲット非存在下では、前記第1鎖(ss1)と前記第2鎖(ss2)とが、ハイブリダイズする。他方、前記センサ(I)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、前記ステム形成領域(S
A)が、前記結合領域(A)に対してアニーリングしない。また、これに伴い、前記ステム形成領域(S
D)が、前記立体形成領域(D)に対してアニーリングせず、前記立体形成領域(D)の領域内で前記立体構造が形成される(スイッチ−ON)。そして、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とのアニーリング、および前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが形成されないことで、前記第1鎖(ss1)が、前記第2鎖(ss2)にハイブリダイズせず、前記第1鎖(ss1)は、前記トランジスタのデバイ長の範囲外へと移動可能となる。このため、前記センサ(I)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも減少するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。なお、前記第2鎖(ss2)が、前記トランジスタに配置されている例をあげて説明したが、前記第1鎖(ss1)が、前記トランジスタに配置されてもよい。
【0048】
2.核酸センサ(II)
前記核酸センサ(II)は、例えば、前記立体形成領域(D)および前記結合領域(A)を有する一本鎖型核酸センサであり、
前記ターゲット非存在下、前記立体形成領域(D)は、前記立体構造の形成が阻害され、
前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成し、
前記立体構造の形成時において、前記トランジスタのデバイ長の範囲における前記核酸センサを構成するヌクレオチド残基の数が、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加する一本鎖型核酸センサである。
【0049】
図2に示すように、前記センサ(II)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。
図2(A)に示すように、前記センサ(II)は、ターゲット非存在下では、前記分子内で、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。他方、前記センサ(II)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)が、ターゲットと結合するためのより安定な構造に変化する。これに伴い、前記立体形成領域(D)の領域内で前記立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、
図2(B)に示すように、前記結合領域(A)が、前記安定な立体構造に変化し、また、前記立体形成領域(D)が立体構造を形成することにより、前記センサ(II)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(II)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0050】
具体的に、前記センサ(II)は、例えば、下記(i)〜(iv)および(v)からなる群から選択された少なくとも1つのセンサである。前記センサ(II)は、例えば、1種類のセンサを含んでもよいし、2種類以上のセンサを含んでもよい。
【0051】
2−1.核酸センサ(i)
前記センサ(i)は、例えば、前記立体形成領域(D)、ブロッキング領域(B)、および前記結合領域(A)をこの順序で有し、
前記ブロッキング領域(B)が、前記立体形成領域(D)における部分領域(Dp)に対して相補的であり、
前記結合領域(A)における前記ブロッキング領域(B)側の末端領域(Ab)が、前記立体形成領域(D)における前記部分領域(Dp)の隣接領域(Df)に相補的であり、且つ、前記結合領域(A)における前記ブロッキング領域(B)側とは反対側の末端領域(Af)に相補的である一本鎖型核酸センサである。
【0052】
前記センサ(i)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0053】
前記センサ(i)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。前記センサ(i)において、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)が、前記ブロッキング領域(B)と相補的であり、且つ、前記立体形成領域(D)における隣接領域(Df)が、前記結合領域(A)の前記末端領域(Ab)と相補的であるため、これらの相補関係において、ステム形成が可能である。このため、前記ターゲットの非存在下では、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)と前記ブロッキング領域(B)とのステム形成および前記立体形成領域(D)の隣接領域(Df)と前記結合領域(A)の前記末端領域(Ab)とのステム形成が生じる。前者のステム形成により、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が阻害され(スイッチ−OFF)、後者のステム形成により、前記結合領域(A)において、ターゲットと結合するためのより安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。他方、前記ターゲットの存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触により、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化する。これに伴い、前記結合領域(A)におけるステム形成が解除され、前記安定な構造に変化した前記結合領域(A)に、前記ターゲットが結合する。そして、前記結合領域(A)におけるステム形成の解除に伴う前記結合領域(A)の前記構造変化により、前記立体形成領域(D)のステム形成も解除され、前記立体形成領域(D)がより安定な構造に変化し、結果的に、前記立体形成領域(D)の領域内で立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、且つ、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成することにより、前記センサ(i)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(i)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0054】
前記センサ(i)は、さらに、安定化領域(S)を有してもよく、この場合、前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、前記結合領域(A)、および前記安定化領域(S)が、この順序で連結されていることが好ましい。以下、前記センサ(i)として、前記安定化領域(S)を有する一本鎖型核酸センサの形態を示す場合、前記安定化領域(S)は、任意であり、含まない形態でもよい。
【0055】
前記安定化領域(S)は、例えば、前記結合領域(A)がターゲットと結合する際の構造を安定化するための配列である。前記安定化領域(S)は、例えば、前記ブロッキング領域(B)に相補的またはその一部に相補的であり、具体的には、前記ブロッキング領域(B)における前記結合領域(A)側の末端領域(Ba)に相補的であることが好ましい。この場合、例えば、ターゲット存在下、前記結合領域(A)の前記安定な構造が形成された際、前記結合領域(A)に連結する前記安定化領域(S)と、前記結合領域(A)に連結する前記ブロッキング領域(B)の末端領域(Ba)との間でも、ステムが形成される。前記結合領域(A)に連結する領域において、このようなステムが形成されることによって、ターゲットと結合する前記結合領域(A)の前記安定な構造が、より安定化される。
【0056】
前記センサ(i)において、前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、および前記結合領域(A)、ならびに任意の前記安定化領域(S)の順序は、特に制限されず、例えば、5’側からこの順序で連結してもよいし、3’側からこの順序で連結してもよく、好ましくは前者である。
【0057】
前記センサ(i)において、前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、および前記結合領域(A)、ならびに任意で前記安定化領域(S)は、例えば、それぞれの間が、スペーサー配列が介在することにより間接的に連結してもよいが、前記スペーサー配列が介在することなく直接的に連結していることが好ましい。
【0058】
前記立体形成領域(D)は、前述のように、前記ブロッキング領域(B)に相補的な配列を有し、且つ、前記結合領域(A)の一部にも相補的な配列を有する。また、前記ブロッキング領域(B)は、前述のように、前記立体形成領域(D)の一部と相補的であり、また、前記安定化領域(S)を有する場合は、前記安定化領域(S)にも相補的である。
【0059】
前記ブロッキング領域(B)の配列および長さは、特に制限されず、例えば、前記立体形成領域(D)の配列および長さ等に応じて、適宜設定できる。
【0060】
前記ブロッキング領域(B)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、1塩基長、2塩基長、3塩基長であり、上限は、例えば、20塩基長、15塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、1〜20塩基長、2〜15塩基長、3〜10塩基長である。
【0061】
これに対して、前記立体形成領域(D)の前記部分領域(Dp)の長さは、例えば、下限は、例えば、1塩基長、2塩基長、3塩基長であり、上限は、例えば、20塩基長、15塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、1〜20塩基長、2〜15塩基長、3〜10塩基長である。前記ブロッキング領域(B)の長さと前記立体形成領域(D)の前記部分領域(Dp)の長さは、例えば、同じであることが好ましい。
【0062】
前記センサ(i)において、前記立体形成領域(D)における前記部分領域(Dp)の位置、すなわち、前記立体形成領域(D)における前記ブロッキング領域(B)のアニール領域は、特に制限されない。前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、および前記結合領域(A)、ならびに任意で前記安定化領域(S)が、この順序で連結している場合、前記部分領域(Dp)は、例えば、以下の条件で設定できる。
【0063】
前記立体形成領域(D)における前記部分領域(Dp)の隣接領域であって、前記部分領域(Dp)のブロッキング領域(B)側末端と前記ブロッキング領域(B)における前記立体形成領域(D)側末端との間の領域(Db)の長さの下限は、例えば、3塩基長、4塩基長、5塩基長であり、その上限は、例えば、40塩基長、30塩基長、20塩基長であり、その範囲は、例えば、3〜40塩基長、4〜30塩基長、5〜20塩基長である。
【0064】
前記立体形成領域(D)における前記部分領域(Dp)の隣接領域であって、前記ブロッキング領域(B)側とは反対側の領域(Df)の長さの下限は、例えば、0塩基長、1塩基長、2塩基長であり、その上限は、例えば、40塩基長、30塩基長、20塩基長であり、その範囲は、例えば、0〜40塩基長、1〜30塩基長、2〜20塩基長である。
【0065】
前記結合領域(A)における前記ブロッキング領域(B)側の末端領域(Ab)は、前述のように、前記立体形成領域(D)の隣接領域(Df)に相補的である。ここで、前記結合領域(A)の末端領域(Ab)は、前記立体形成領域(D)の隣接領域(Df)の全領域に対して相補的でもよいし、前記隣接領域(Df)の部分領域に対して相補的でもよい。後者の場合、前記結合領域(A)の末端領域(Ab)は、前記隣接領域(Df)における、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)側の末端領域に対して相補的であることが好ましい。
【0066】
前記立体形成領域(D)の隣接領域(Df)に相補的な、前記結合領域(A)における末端領域(Ab)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、1塩基長であり、上限は、例えば、20塩基長、8塩基長、3塩基長であり、その範囲は、例えば、1〜20塩基長、1〜8塩基長、1〜3塩基長である。
【0067】
前記安定化領域(S)は、前述のように、例えば、ブロッキング領域(B)に相補的またはその一部に相補的であり、具体的には、前記ブロッキング領域(B)における前記結合領域(A)側の末端領域(Ba)に相補的であることが好ましい。
【0068】
前記安定化領域(S)の配列および長さは、特に制限されず、例えば、前記ブロッキング領域(B)の配列および長さ、前記結合領域(A)の配列および長さ等に応じて適宜決定できる。前記安定化領域(S)の長さの下限は、例えば、0塩基長、1塩基長であり、その上限は、例えば、10塩基長、5塩基長、3塩基長であり、その範囲は、例えば、0〜10塩基長、1〜5塩基長、1〜3塩基長である。これに対して、例えば、前記安定化領域(S)が前記ブロッキング領域(B)の全体と相補的な場合、前記ブロッキング領域(B)は、前記安定化領域(S)と同じ長さであり、例えば、前記安定化領域(S)が前記ブロッキング領域(B)の一部と相補的な場合、前記ブロッキング領域(B)の一部、例えば、前記末端領域(Ba)は、前記安定化領域(S)と同じ長さである。
【0069】
前記センサ(i)の全長の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、25塩基長、35塩基長、40塩基長であり、上限は、例えば、200塩基長、120塩基長、80塩基長であり、その範囲は、例えば、25〜200塩基長、35〜120塩基長、40〜80塩基長である。
【0070】
前記センサ(i)は、例えば、一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0071】
前記核酸センサ(i)は、例えば、一方の末端または両端に、さらに、前記付加リンカー領域が付加されてもよい。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。この場合、前記センサ(i)は、例えば、一方の末端が、前記付加リンカー領域を介して、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0072】
2−2.核酸センサ(ii)
前記センサ(ii)は、例えば、前記立体形成領域(D)、ブロッキング領域(B)、前記結合領域(A)、および安定化領域(S)をこの順序で有し、
前記ブロッキング領域(B)が、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)に対して相補的であり、
前記ブロッキング領域(B)の前記結合領域(A)側の末端領域(Ba)が、前記安定化領域(S)に対して相補的である一本鎖型核酸センサである。
【0073】
前記センサ(ii)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0074】
前記センサ(ii)において、前記結合領域(A)は、それ単独では、ターゲットとの結合に必要な分子内アニーリングが形成されない配列であることが好ましい。そして、前記センサ(ii)は、ターゲット存在下、前記結合領域(A)に隣接する前記ブロッキング領域(B)の末端領域(Ba)と前記安定化領域(S)とのアニーリングによって、前記結合領域(A)と前記末端領域(Ba)と前記安定化領域(S)との全体から、前記ターゲットと結合するための安定な構造が形成されることが好ましい。
【0075】
前記センサ(ii)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、前記ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記センサ(ii)において、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)が、前記ブロッキング領域(B)と相補的であるため、この相補関係において、ステム形成が可能である。このため、前記ターゲットの非存在下では、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)と前記ブロッキング領域(B)とのステム形成が生じる。このステム形成により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。また、前記結合領域(A)は、それ単独ではターゲットとの結合に必要な分子内アニーリングが形成されない配列であるため、ターゲットと結合するためのより安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。他方、前記ターゲットの存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触により、前記結合領域(A)が前記安定な構造に変化する。これに伴い、前記ブロッキング領域(B)と前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)とのステム形成が解除され、新たに、前記ブロッキング領域(B)の末端領域(Ba)と前記安定化領域(S)とのアニーリングにより、ステムが形成され、このステムが、前記結合領域(A)がターゲットに結合するために必要な分子内アニーリングの役目を担い、前記ステムと前記結合領域(A)との全体から、前記安定な構造が形成され、前記結合領域(A)に前記ターゲットが結合する。そして、前記ブロッキング領域(B)と前記立体形成領域(D)とのステム形成の解除により、新たに前記立体形成領域(D)が分子内アニーリングによって立体構造を形成する(スイッチ−ON)。また、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、且つ、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成することにより、前記センサ(ii)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(ii)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0076】
前記センサ(ii)において、前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、前記結合領域(A)、および前記安定化領域(S)の順序は、特に制限されず、例えば、5’側からこの順序で連結してもよいし、3’側からこの順序で連結してもよく、好ましくは前者である。
【0077】
前記センサ(ii)において、特に示さない限り、前記センサ(i)の記載を援用できる。前記センサ(ii)において、前記立体形成領域(D)、前記ブロッキング領域(B)、および前記安定化領域(S)は、例えば、前記センサ(i)と同様である。
【0078】
前記ブロッキング領域(B)は、前述のように、前記立体形成領域(D)と前記安定化領域(S)のそれぞれに対して、相補的な配列を有している。具体的には、前記ブロッキング領域(B)は、前記立体形成領域(D)の部分領域(Dp)に相補的であり、前記ブロッキング領域(B)の前記結合領域(A)側の末端領域(Ba)は、前記安定化領域(S)に対しても相補的である。
【0079】
前記ブロッキング領域(B)において、前記安定化領域(S)と相補的な末端領域(Ba)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、1塩基長であり、上限は、例えば、15塩基長、10塩基長、3塩基長であり、その範囲は、例えば、1〜10塩基長、1〜5塩基長、1〜3塩基長である。
【0080】
前記センサ(ii)の全長の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、25塩基長、35塩基長、40塩基長であり、上限は、例えば、200塩基長、120塩基長、80塩基長であり、その範囲は、例えば、25〜200塩基長、35〜120塩基長、40〜80塩基長である。
【0081】
前記センサ(ii)は、例えば、一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0082】
前記核酸センサ(ii)は、例えば、一方の末端または両端に、さらに、前記付加リンカー領域が付加されてもよい。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。この場合、前記センサ(ii)は、例えば、一方の末端が、前記付加リンカー領域を介して、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0083】
2−3.核酸センサ(iii)
前記センサ(iii)は、例えば、前記立体形成領域(D)、ステム形成領域(S
D)、前記結合領域(A)およびステム形成領域(S
A)を有し、
前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)に対して相補的な配列を有し、
前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)に対して相補的な配列を有する一本鎖型核酸センサである。
【0084】
前記センサ(iii)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0085】
前記センサ(iii)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記センサ(iii)は、前記ターゲット非存在下では、前記分子内で、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングすることで、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。また、前記分子内で、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングすることで、前記結合領域(A)は、ターゲットと結合するためのより安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。他方、前記ターゲット存在下では、前記センサ(iii)は、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とのアニーリングが解除され、前記結合領域(A)の構造が、前記安定な構造に変化する。これに伴い、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とのアニーリングが解除され、前記立体形成領域(D)の領域内で前記立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、且つ、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成することにより、前記センサ(iii)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(iii)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0086】
前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、その全部または一部が、前記立体形成領域(D)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。また、前記ステム形成領域(S
A)は、例えば、その全部または一部が、前記結合領域(A)の一部に対して相補的な配列であることが好ましい。
【0087】
前記センサ(iii)において、前記各領域の順序は、前記分子内で、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)とがアニーリングし、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)とがアニーリングする順序であればよい。具体例としては、以下の順序が例示できる。
(1) 5’− A−S
D−D−S
A −3’
(2) 5’− S
A−D−S
D−A −3’
(3) 5’− D−S
A−A−S
D −3’
(4) 5’− S
D−A−S
A−D −3’
【0088】
前記(1)−(4)の形態は、例えば、以下のように、立体構造の形成がON−OFFされる。前記ターゲット非存在下、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成を阻害する。そして、前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記立体形成領域(D)において、前記立体構造が形成される。
【0089】
前記(1)および(3)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)の3’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の3’側領域と相補的であることが好ましい。前記(2)および(4)において、前記ステム形成領域(S
D)は、前記立体形成領域(D)の5’側領域と相補的であり、前記ステム形成領域(S
A)は、前記結合領域(A)の5’側領域と相補的であることが好ましい。
【0090】
前記センサ(iii)は、例えば、前記各領域間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域を介して結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0091】
前記センサ(iii)は、例えば、前記介在リンカー領域として、互いに非相補的な2つの介在リンカー領域を有することが好ましい。前記2つの介在リンカー領域の位置は、特に制限されない。
【0092】
具体例として、前記(1)−(4)が、さらに2つの介在リンカー領域を有する形態について、例えば、以下の順序が例示できる。以下の例示において、前記結合領域(A)に連結する介在リンカー領域を(L
1)、前記立体形成領域(D)に連結する介在リンカー領域を(L
2)で示す。前記センサ(iii)は、例えば、介在リンカー領域として、例えば、(L
1)および(L
2)の両方を有してもよいし、いずれか一方のみを有してもよい。
(1’) 5’− A−L
1−S
D−D−L
2−S
A −3’
(2’) 5’− S
A−L
2−D−S
D−L
1−A −3’
(3’) 5’− D−L
2−S
A−A−L
1−S
D −3’
(4’) 5’− S
D−L
1−A−S
A−L
2−D −3’
【0093】
前記(1’)−(4’)の形態は、例えば、以下のように、立体構造の形成がON−OFFされる。前記ターゲット非存在下、例えば、前記結合領域(A)と前記ステム形成領域(S
A)、前記立体形成領域(D)と前記ステム形成領域(S
D)が、それぞれステムを形成し、これら2つのステムの間で、前記介在リンカー領域(L
1)と前記介在リンカー領域(L
2)が、内部ループを形成して、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成を阻害する。そして、前記ターゲット存在下、前記結合領域(A)へのターゲットの接触により、前記それぞれのステム形成が解除され、前記立体形成領域(D)において、立体構造が形成される。
【0094】
前記センサ(iii)において、前記ステム形成領域(S
A)および前記ステム形成領域(S
D)の長さは、特に制限されない。前記ステム形成領域(S
A)の長さは、例えば、1〜60塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成領域(S
D)の長さは、例えば、1〜30塩基長、0〜10塩基長、1〜10塩基長、0〜7塩基長、1〜7塩基長である。前記ステム形成領域(S
A)と前記ステム形成領域(S
D)は、例えば、同じ長さでもよいし、前者が長くてもよいし、後者が長くてもよい。
【0095】
前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、特に制限されない。前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、それぞれ、例えば、0〜30塩基長、1〜30塩基長、1〜15塩基長、1〜6塩基長である。また、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さは、例えば、同じでも、異なってもよい。後者の場合、前記介在リンカー領域(L
1)および(L
2)の長さの差は、特に制限されず、例えば、1〜10塩基長、1または2塩基長、1塩基長である。
【0096】
前記センサ(iii)の長さは、特に制限されない。前記センサ(iii)の長さは、例えば、40〜120塩基長、45〜100塩基長、50〜80塩基長である。
【0097】
前記センサ(iii)は、例えば、一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0098】
前記核酸センサ(iii)は、例えば、一方の末端または両端に、さらに、前記付加リンカー領域が付加されてもよい。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。この場合、前記センサ(iii)は、例えば、一方の末端が、前記付加リンカー領域を介して、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0099】
2−4.核酸センサ(iv)
前記センサ(iv)は、例えば、前記立体形成領域(D)および前記結合領域(A)を有し、
前記立体形成領域(D)が、第1領域(D1)と第2領域(D2)とを含み、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とにより立体構造を形成する領域であり、
前記結合領域(A)の一方の末端側に前記第1領域(D1)を有し、前記結合領域(A)の他方の末端側に前記第2領域(D2)を有する一本鎖型核酸センサである。
【0100】
前記センサ(iv)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記二本鎖型(以下、「スプリット型」ともいう。)である。前記スプリット型の立体形成領域(D)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを含み、両者が一対となり立体構造を形成する分子である。前記センサ(iv)において、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)は、それぞれ、前記立体構造を形成する配列であればよく、より好ましくは、グアニン四重鎖構造を形成する配列である。
【0101】
前記センサ(iv)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記センサ(iv)は、前述のように、一対となって立体構造を形成する前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、前記結合領域(A)を介して、それぞれ離れて配置されている。このように、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが距離を置いて配置されているため、前記ターゲット非存在下では、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。他方、前記センサ(iv)は、ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)の構造が、ステムループ構造を有する、ターゲットと結合するためのより安定な構造に変化する。この前記結合領域(A)の構造変化に伴い、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが接近し、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間で、立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、且つ、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成することにより、前記センサ(iv)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(iv)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0102】
前記センサ(iv)は、前述のように、前記立体形成領域(D)として、二本鎖型を使用し、前記結合領域(A)を介して、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを配置している。このため、例えば、アプタマーの種類ごとに条件設定を行う必要がなく、前記結合領域(A)として所望のアプタマーをセットできることから、汎用性に優れる。
【0103】
前記センサ(iv)において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)は、前記結合領域(A)を介して配置されていればよく、いずれが前記結合領域(A)の5’側または3’側に配置されてもよい。以下、特に説明しない限り、便宜上、前記結合領域(A)の5’側に前記第1領域(D1)、前記結合領域(A)の3’側に前記第2領域(D2)が配置されている例を示す。
【0104】
前記センサ(iv)は、例えば、前記第1領域(D1)と前記結合領域(A)との間が、直接的または間接的に連結してもよいし、前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、前記介在リンカー領域を介して結合していることを意味し、具体的には、一方の領域の3’末端と前記介在リンカー領域の5’末端とが直接結合し、前記介在リンカー領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味する。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。
【0105】
前記センサ(iv)は、前述のように、前記第1領域(D1)と前記結合領域(A)との間に前記介在リンカー領域(第1リンカー領域(L
1))を有し、前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間に前記介在リンカー領域(第2リンカー領域(L
2))を有することが好ましい。前記第1リンカー領域(L
1)および前記第2リンカー領域(L
2)は、いずれか一方でもよく、両方を有することが好ましい。前記第1リンカー領域(L
1)と前記第2リンカー領域(L
2)の両方を有する場合、それぞれの長さは、同じ長さでもよいし、異なってもよい。
【0106】
前記リンカー領域の長さは、特に制限されず、その下限は、例えば、1、3、5、7、9塩基長であり、その上限は、例えば、20、15、10塩基長である。
【0107】
また、前記第1リンカー領域(L
1)の5’側からの塩基配列と前記第2リンカー領域(L
2)の3’側からの塩基配列とは、例えば、互いに非相補的であることが好ましい。この場合、前記第1リンカー領域(L
1)の5’側からの塩基配列と前記第2リンカー領域(L
2)の3’側からの塩基配列は、アライメントした状態で、前記センサ(iv)の分子内で内部ループを形成する領域ともいえる。このように、前記第1領域(D1)および前記第2領域(D2)と前記結合領域(A)との間に、非相補的な前記第1リンカー領域(L
1)と前記第2リンカー領域(L
2)を有することで、例えば、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との距離を十分に保つことができる。このため、例えば、前記ターゲット非存在下における、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とによる立体構造の形成を、十分に抑制し、ターゲット非存在下での、立体構造の形成に基づくバックグラウンドを十分に低下することができる。
【0108】
前記センサ(iv)が、例えば、「D1−W−D2」で表され、前記介在リンカー領域として、前記第1リンカー領域(L
1)のみを有する場合、前記式におけるWは、例えば、5’側から、第1リンカー領域(L
1)と前記結合領域(A)とをこの順序で有し、前記第2リンカー領域(L
2)のみを有する場合、前記式におけるWは、例えば、5’側から、前記結合領域(A)と第2リンカー領域(L
2)とをこの順序で有し、前記第1リンカー領域(L
1)と前記第2リンカー領域(L
2)の両方を有する場合、前記式におけるWは、例えば、5’側から、前記第1リンカー領域(L
1)と前記結合領域(A)と前記第2リンカー領域(L
2)とをこの順序で有する。この場合、D1−W−D2で表されるセンサ(iv)は、それぞれ、例えば、D1−L
1−A−D2、D1−A−L
2−D2またはD1−L
1−A−L
2−D2と表すことができる。
【0109】
前記センサ(iv)は、例えば、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、それぞれ、前記結合領域(A)の位置とは反対側の末端に、互いに相補的な配列を有することが好ましい。具体的には、例えば、前記第1領域(D1)が前記結合領域(A)の5’側に配置されている場合、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とは、前記第1領域(D1)の5’末端と前記第2領域(D2)の3’末端に、互いに相補的な配列を有することが好ましい。また、例えば、前記第1領域(D1)が前記結合領域(A)の3’側に配置されている場合、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とは、前記第1領域(D1)の3’末端と前記第2領域(D2)の5’末端に、互いに相補的な配列を有することが好ましい。このように、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、それぞれの末端における前記相補的な配列を有することで、前記配列間で、分子内アニーリングによりステム構造の形成が可能となる。このため、例えば、前記ターゲット存在下、ターゲットの接触による前記結合領域(A)の構造変化に伴い、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが接近した際、前記配列間でのステム構造の形成によって、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との立体構造の形成がより容易になる。
【0110】
前記センサ(iv)は、例えば、前述のように、D1−W−D2で表すことができ、具体的には、下記式(I)で表すことができる。
【化1】
【0111】
前記式(I)中、
5’側の配列(N)
n1-GGG-(N)
n2-(N)
n3-が、前記第1領域(D1)の配列(d1)であり、
3’側の配列-(N)
m3-(N)
m2-GGG-(N)
m1が、前記第2領域(D2)の配列(d2)であり、
Wが、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との間の領域であって、前記結合領域(A)を含み、
Nは、塩基を示し、n1、n2およびn3ならびにm1、m2およびm3は、それぞれ塩基Nの繰り返し個数を示す。
【0112】
前記式(I)は、前記センサ(iv)において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とを分子内アライメントした状態を示すが、これは、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)との配列の関係を示すための模式図であって、本発明において、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とが、この状態を取ることを限定するものではない。
【0113】
前記第1領域(D1)の配列(d1)および前記第2領域(D2)の配列(d2)は、例えば、(N)
n1と(N)
m1とが、下記条件(1)を満たし、(N)
n2と(N)
m2とが、下記条件(2)を満たし、(N)
n3と(N)
m3とが、下記条件(3)を満たすことが好ましい。
【0114】
条件(1)
(N)
n1および(N)
m1は、(N)
n1の5’側からの塩基配列と(N)
m1の3’側からの塩基配列とが、互いに相補的であり、n1およびm1は、同じ0または正の整数である。
条件(2)
(N)
n2および(N)
m2は、(N)
n2の5’側からの塩基配列と(N)
m2の3’側からの塩基配列とが、互いに非相補的であり、n2およびm2は、それぞれ、正の整数であり、同じでも異なってもよい。
条件(3)
(N)
n3および(N)
m3は、n3およびm3が、それぞれ、3または4であり、同じでも異なってもよく、3つの塩基Gを有し、n3またはm3が4の場合、(N)
n3および(N)
m3は、2番目または3番目の塩基がG以外の塩基Hである。
【0115】
前記条件(1)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の5’末端の(N)
n1と3’末端の(N)
m1との条件である。前記条件(1)において、前記(N)
n1の5’側からの塩基配列と前記(N)
m1の3’側からの塩基配列とは、互いに相補的であり、同じ長さである。(N)
n1と(N)
m1とは、同じ長さの相補的な配列であるため、アライメントした状態で、ステムを形成するステム領域ともいえる。
【0116】
n1およびm1は、同じ0または正の整数であればよく、例えば、それぞれ、0、1〜10であり、好ましくは、1、2または3である。
【0117】
前記条件(2)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の(N)
n2と(N)
m2との条件である。前記条件(2)において、前記(N)
n2の塩基配列と前記(N)
m2の塩基配列とは、互いに非相補的であり、n2およびm2は、同じ長さでも異なる長さでもよい。(N)
n2と(N)
m2とは、非相補的な配列であるため、アライメントした状態で、内部ループを形成する領域ともいえる。
【0118】
n2およびm2は、正の整数であり、例えば、それぞれ、1〜10であり、好ましくは、1または2である。n2とm2とは、同じでも異なってもよく、例えば、n2=m2、n2>m2、n2<m2のいずれでもよく、好ましくはn2>m2、n2<m2である。
【0119】
前記条件(3)は、前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)とをアライメントした場合の(N)
n3と(N)
m3との条件である。前記条件(3)において、前記(N)
n3の塩基配列と前記(N)
m3の塩基配列とは、それぞれ、3つの塩基Gを有する3塩基長または4塩基長の配列であり、同じでも異なってもよい。n3またはm3が4の場合、(N)
n3および(N)
m3は、2番目または3番目の塩基がG以外の塩基Hである。3つのGを有する(N)
n3および(N)
m3は、(N)
n1と(N)
n2との間のGGGおよび(N)
m1と(N)
m2との間のGGGとともに、G−カルテット構造を形成するG形成領域(G)である。
【0120】
n3およびm3は、例えば、n3=m3、n3>m3、n3<m3のいずれでもよく、好ましくはn3>m3、n3<m3である。
【0121】
G以外の塩基である前記塩基Hは、例えば、A、C、TまたはUがあげられ、好ましくは、A、CまたはTである。
【0122】
前記条件(3)は、具体例として、下記条件(3−1)、(3−2)または(3−3)があげられる。
条件(3−1)
(N)
n3および(N)
m3のうち、一方の5’側からの配列がGHGGであり、他方の5’側からの配列がGGGである。
条件(3−2)
(N)
n3および(N)
m3のうち、一方の5’側からの配列がGGHGであり、他方の5’側からの配列がGGGである。
条件(3−3)
(N)
n3および(N)
m3の両方の配列がGGGである。
【0123】
前記第1領域(D1)の長さは、特に制限されず、下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第2領域(D2)の長さは、特に制限されず、その下限は、例えば、7塩基長、8塩基長、10塩基長であり、その上限は、例えば、30塩基長、20塩基長、10塩基長であり、その範囲は、例えば、7〜30塩基長、7〜20塩基長、7〜10塩基長である。前記第1領域(D1)と前記第2領域(D2)の長さは、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0124】
前記センサ(iv)の長さは、特に制限されない。前記センサ(iv)の長さの下限は、例えば、25塩基長、30塩基長、35塩基長であり、その上限は、例えば、200塩基長、100塩基長、80塩基長であり、その範囲は、例えば、25〜200塩基長、30〜100塩基長、35〜80塩基長である。
【0125】
前記センサ(iv)は、例えば、一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0126】
前記センサ(iv)は、例えば、一方の末端または両端に、さらに、前記付加リンカー領域が付加されてもよい。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。この場合、前記センサ(iv)は、例えば、一方の末端が、前記付加リンカー領域を介して、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0127】
2−5.核酸センサ(v)
前記センサ(v)は、前記立体形成領域(D)および前記結合領域(A)をこの順序で有し、
前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)とが、互いに相補的な配列を有する一本鎖型核酸センサである。
【0128】
前記センサ(v)において、前記立体形成領域(D)は、例えば、前記一本鎖型である。
【0129】
前記センサ(v)は、例えば、以下のようなメカニズムに基づいて、ターゲットの存否により、前記立体形成領域(D)の立体構造の形成が、ON−OFFに制御され、これにより、前記トランジスタのデバイ長の範囲において、前記センサを構成するヌクレオチド残基の数が増加すると推定される。なお、本発明は、このメカニズムには制限されない。前記センサ(v)は、前記ターゲット非存在下では、前記分子内で、前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)とがアニーリングすることで、前記立体形成領域(D)の前記立体構造の形成が阻害される(スイッチ−OFF)。また、前記分子内で、前記結合領域(A)と前記立体形成領域(D)とがアニーリングすることで、前記結合領域(A)は、ターゲットと結合するためのより安定な構造の形成がブロックされ、ターゲットと結合していない状態の構造が維持される。他方、前記センサ(v)は、前記ターゲット存在下では、前記結合領域(A)への前記ターゲットの接触によって、前記結合領域(A)の構造が、前記安定な構造に変化する。これに伴い、前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)との領域内アニーリングが解除され、前記立体形成領域(D)の領域内で前記立体構造が形成される(スイッチ−ON)。また、前記結合領域(A)が、前記安定な構造に変化し、且つ、前記立体形成領域(D)が前記立体構造を形成することにより、前記センサ(v)が、例えば、前記トランジスタ側に収縮する。このため、前記センサ(v)によれば、前記ターゲット存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記デバイ長のヌクレオチド数が、前記ターゲット非存在下、すなわち、前記立体構造の形成の阻害時よりも増加するため、定性または定量等のターゲット分析が可能となる。
【0130】
前記センサ(v)において、前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)とは、前記立体形成領域(D)の5’側からの配列と、前記結合領域(A)の3’側からの配列とが、互いに相補的な配列を有することが好ましい。前記立体形成領域(D)における相補配列および前記結合領域(A)における相補配列は、それぞれステム形成領域(S)ということもでき、また、前者の前記立体形成領域(D)における相補配列は、前記結合領域(A)に対するステム形成領域(S
A)、後者の前記結合領域(A)における相補配列は、前記立体形成領域(D)に対するステム形成領域(S
D)ということもできる。前記立体形成領域(D)は、例えば、その一部が、前記相補配列、すなわち前記ステム形成領域(S
A)であり、前記結合領域(A)は、例えば、その一部が、前記相補配列、すなわち前記ステム形成領域(S
D)であることが好ましい。前記立体形成領域(D)における前記相補配列の位置、前記結合領域(A)における前記相補配列の位置は、それぞれ、特に制限されない。
【0131】
前記センサ(v)において、前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)との間における各相補配列の長さは、特に制限されない。前記各相補配列の長さは、例えば、1〜30塩基長、1〜10塩基長、1〜7塩基長である。
【0132】
前記センサ(v)は、例えば、前記立体形成領域(D)と前記結合領域(A)との間が、直接的または間接的に連結してもよい。前記直接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが直接結合していることを意味し、前記間接的な連結は、例えば、一方の領域の3’末端と他方の領域の5’末端とが、リンカー領域を介して結合していることを意味する。
【0133】
前記領域間を連結するリンカー領域を、以下、介在リンカー領域ともいう。前記介在リンカー領域は、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、好ましくは前者である。前記介在リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、0〜20塩基長、1〜10塩基長、1〜6塩基長である。
【0134】
前記センサ(v)の長さは、特に制限されない。前記センサ(v)の長さは、例えば、40〜120塩基長、45〜100塩基長、50〜80塩基長である。
【0135】
前記センサ(v)は、例えば、一方の末端が、前記トランジスタに連結されてもよい。
【0136】
前記センサ(v)は、例えば、一方の末端または両端に、さらに、前記付加リンカー領域が付加されてもよい。前記付加リンカー領域の長さは、特に制限されず、例えば、前述の説明を援用できる。この場合、前記センサ(v)は、例えば、一方の末端が、前記付加リンカー領域を介して、前記前記トランジスタに連結されてもよい。
【0137】
本発明において、前記センサは、ヌクレオチド残基を含む分子であり、例えば、ヌクレオチド残基のみからなる分子でもよいし、ヌクレオチド残基を含む分子でもよい。前記ヌクレオチドは、例えば、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドおよびそれらの誘導体である。具体的に、前記センサは、例えば、デオキシリボヌクレオチドおよび/またはその誘導体を含むDNAでもよいし、リボヌクレオチドおよび/またはその誘導体を含むRNAでもよいし、前者と後者とを含むキメラ(DNA/RNA)でもよい。前記センサは、好ましくは、DNAである。
【0138】
前記ヌクレオチドは、塩基として、例えば、天然塩基(非人工塩基)および非天然塩基(人工塩基)のいずれを含んでもよい。前記天然塩基は、例えば、A、C、G、T、Uおよびこれらの修飾塩基があげられる。前記修飾は、例えば、メチル化、フルオロ化、アミノ化、チオ化等があげられる。前記非天然塩基は、例えば、2’−フルオロピリミジン、2’−O−メチルピリミジン等があげられ、具体例としては、2’−フルオロウラシル、2’−アミノウラシル、2’−O−メチルウラシル、2’−チオウラシル等があげられる。前記ヌクレオチドは、例えば、修飾されたヌクレオチドでもよく、前記修飾ヌクレオチドは、例えば、2’−メチル化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−メチル化−シトシンヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−フルオロ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−アミノ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−アミノ化−シトシンヌクレオチド残基、2’−チオ化−ウラシルヌクレオチド残基、2’−チオ化−シトシンヌクレオチド残基等があげられる。前記センサは、例えば、PNA(ペプチド核酸)、LNA(Locked Nucleic Acid)等の非ヌクレオチドを含んでもよい。
【0139】
前記センサは、前記トランジスタに配置されている。前記センサは、例えば、前記トランジスタに、直接的に固定化してもよいし、間接的に固定化してもよい。前者の場合、例えば、前記センサの末端において、前記センサを前記トランジスタに固定化することが好ましい。後者の場合、例えば、前記センサを、固定化用のリンカーを介して、前記トランジスタに固定化してもよい。前記リンカーは、例えば、核酸配列でもよいし、非核酸配列でもよく、前述の付加リンカー領域等があげられる。前記トランジスタに前記センサが固定化されている場合、前記センサの配置部は、前記トランジスタにおける検出部ということもできる。
【0140】
前記固定化方法は、特に制限されず、例えば、化学的結合による連結が例示できる。具体例としては、例えば、前記トランジスタおよび前記センサのいずれか一方に、ストレプトアビジンまたはアビジンを結合させ、他方に、ビオチンを結合させ、前者と後者との結合を利用して固定化する方法があげられる。
【0141】
前記固定化方法は、例えば、この他に、公知の核酸固定化方法が採用できる。前記方法は、例えば、フォトリソグラフィーを利用する方法があげられ、具体例として、米国特許5,424,186号明細書等を参照できる。また、前記固定化方法は、例えば、前記トランジスタ上で前記センサを合成する方法があげられる。この方法は、例えば、いわゆるスポット法があげられ、具体例として、米国特許5,807,522号明細書、特表平10−503841号公報等を参照できる。
【0142】
本発明において、前記トランジスタは、特に制限されず、例えば、前記デバイ長の範囲における電荷の変化を検出できるトランジスタがあげられ、具体例として、電界効果トランジスタがあげられる。前記電界効果トランジスタは、例えば、公知の電界効果トランジスタが使用でき、具体例として、特開2011−247795号公報、国際公開第2014/024598号等を参照できる。
【0143】
本発明において、前記トランジスタは、例えば、基板、ソース電極、ドレイン電極、および検出部を含み、前記ソース電極、前記ドレイン電極、および前記検出部は、前記基板上に配置され、前記検出部は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に配置され、前記核酸センサは、前記検出部に配置される。
【0144】
前記基板、前記ソース電極、前記ドレイン電極等は、前述の公知の電界効果トランジスタの構成を参照できる。また、前記トランジスタは、例えば、前記電界効果トランジスタの種類に応じて、ゲート電極、参照電極、絶縁膜層等の他の構成を含んでもよい。前記他の構成は、例えば、前述の公知の電界効果トランジスタの構成を参照できる。
【0145】
本発明のデバイスは、例えば、複数のトランジスタを備えてもよい。この場合、各トランジスタが、例えば、前述のような検出部を備えることが好ましい。本発明のセンサにおいて、1つの検出部に配置するセンサの数は、特に制限されない。
【0146】
本発明において、前記デバイ長は、前記トランジスタが、電荷を測定可能な距離を意味し、より具体的には、前記トランジスタの検出部が、電荷を測定可能な距離を意味する。前記デバイ長は、特に制限されず、一般的なデバイ長の算出式で算出でき、例えば、下記式(1)により算出できる。
【0147】
δ=(εε
0kT/2q2I)
1/2 ・・・(1)
δ:デバイ長
ε:比誘電率
ε
0:真空の誘電率
k:ボルツマン定数
T:絶対温度
q:電荷
I:イオン強度
【0148】
本発明の検出デバイスの使用方法は、特に制限されず、以下のように、本発明のターゲットの検出方法に使用できる。
【0149】
<ターゲットの検出方法>
本発明のターゲットの検出方法は、前述のように、前記本発明の検出デバイスに試料を接触させる接触工程、および前記検出デバイスのデバイ長の範囲における核酸センサを構成するヌクレオチド残基の数の増加または減少を検出することによって、前記試料中のターゲットを検出する検出工程を含むことを特徴とする。本発明の検出方法は、前記本発明の検出デバイスを使用することが特徴であり、その他の構成および条件は、特に制限されない。本発明の検出方法は、例えば、前記本発明の検出デバイスの説明を援用できる。本発明の検出方法において、前記検出は、ターゲットの有無の検出(例えば、定性分析)でもよいし、ターゲットの量の検出(例えば、定量分析)でもよく、例えば、分析方法ということもできる。
【0150】
前記試料は、特に制限されない。前記試料は、例えば、ターゲットを含む試料、およびターゲットを含有するか否かが不明な試料のいずれでもよい。前記試料は、例えば、液体試料が好ましい。被検体が、例えば、液体の場合、前記被検体をそのまま試料として使用してもよいし、溶媒に混合した希釈液を試料として使用してもよい。被検体が、例えば、固体、粉末等の場合は、溶媒に混合した混合液、または、溶媒に懸濁した懸濁液等を、試料として使用してもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液等があげられる。前記被検体は、例えば、生体、土壌、海水、川水、下水、飲食品、浄水、空気中等から採取した検体があげられる。
【0151】
前記接触工程は、前記本発明の検出デバイスに試料を接触させる工程である。前記接触は、例えば、前記検出デバイスにおける前記トランジスタに、前記試料を接触させることで実施でき、具体的には、前記トランジスタの検出部に、前記試料を接触させることで実施できる。前記接触工程における接触条件(温度、時間)等は、特に制限されない。
【0152】
前記検出デバイスが前記試薬を含む場合、前記接触工程は、例えば、前記検出デバイスに前記試料と前記試薬とを接触させてもよいし、前記試料と試薬とを予め混合し、前記デバイスに得られた混合物を接触させてもよい。後者の場合、本発明の検出方法は、例えば、前記試料と前記試薬とを混合する混合工程、および前記検出デバイスに得られた混合物を接触させる接触工程を含む。前記混合は、特に制限されず、公知の混合方法により実施でき、例えば、前記試料に前記試薬を接触させることで実施できる。前記混合工程における混合条件(温度、時間)等は、特に制限されない。前記試薬は、例えば、前述の前記第1鎖(ss1)または前記第2鎖(ss2)を含む試薬があげられる。
【0153】
前記検出工程は、前記検出デバイスのデバイ長の範囲における核酸センサを構成するヌクレオチド残基の数の増加または減少を検出することによって、前記試料中のターゲットを検出する。前記ターゲットの存在下、すなわち、前記立体構造の形成時において、前記センサは、前述のように、前記デバイ長のヌクレオチド数を増加または減少させる。また、前記センサを構成するヌクレオチド残基は、例えば、負の電荷を有する。このため、前記ターゲット存在下において、前記デバイ長の範囲における電荷は、前記ターゲット非存在下よりも増加または減少する。したがって、前記検出工程は、例えば、前記検出デバイスを用いて、デバイ長の範囲における電荷の増加または減少を検出することにより、前記デバイ長のヌクレオチド数の増加または減少、すなわち、前記試料中のターゲットを検出できる。そこで、前記検出工程は、例えば、前記検出デバイスを用いて、前記検出デバイスのデバイ長の範囲における電荷を測定する電荷測定工程と、前記電荷(測定電荷)および基準電荷に基づき、前記デバイ長の範囲における前記ヌクレオチド残基の数の増加または減少を検出し、前記ターゲットを検出するターゲット検出工程とを含んでもよい。
【0154】
前記測定工程において、前記電荷の測定は、例えば、電気シグナルの測定があげられる。前記電気シグナルの測定は、例えば、前記検出デバイスのトランジスタにより測定できる。前記電気シグナルは、例えば、電圧、電流等があげられる。
【0155】
前記ターゲット検出工程において、前記基準電荷は、例えば、前記ターゲット非存在下における前記デバイ長の範囲における電荷があげられる。そして、前記基準電荷と比較して、前記測定電荷が増加または減少しているかを検出することにより、例えば、前記試料中のターゲットの有無を分析(定性)でき、また、前記基準電荷と前記測定電荷との電荷の差を検出することによって、例えば、前記試料中のターゲットの量を分析(定量)できる。具体的に、前記ターゲットの存在により、前記デバイ長における前記ヌクレオチド残基の数が増加する場合、前記電荷が前記基準電荷より有意に低い場合、前記ターゲット有りと分析でき、前記基準電荷と同じ、または前記基準電荷より有意に高い場合、前記ターゲット無しと分析できる。前記ターゲットの存在により、前記デバイ長における前記ヌクレオチド残基の数が減少する場合、前記電荷が前記基準電荷より有意に高い場合、前記ターゲット有りと分析でき、前記基準電荷と同じ、または前記基準電荷より有意に低い場合、前記ターゲット無しと分析できる。
【0156】
前記ターゲット検出工程において、前記基準電荷は、前記ターゲット量と前記測定電荷との相関関係を示す検量線でもよい。この場合、前記ターゲット検出工程では、例えば、前記測定電荷に基づき、前記試料中の前記ターゲット量を算出できる。
【0157】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0158】
この出願は、2015年10月30日に出願された日本出願特願2015−214649を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。