(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステータ又はロータのスロットに挿入される一対のスロット挿入部とこれらを連結する渡り部とを有するコイルセグメントの第1スロット挿入部が、前記ステータ又はロータの周方向に対応する第1の方向に略等間隔に複数のコイルセグメント分それぞれ挿入される第1受容部を備える内側部材と、
前記複数のコイルセグメントの各々の、前記第1スロット挿入部と異なる第2スロット挿入部を、前記第1の方向に略等間隔にそれぞれ挿入される第2受容部を備え、回転により前記各第2スロット挿入部を前記内側部材へ寄るように変位させる外側部材と、
前記外側部材の回転時に前記各第1スロット挿入部を前記コイルセグメントの回動軸となるように保持する保持部材と、
前記外側部材の回転に伴う前記各第2スロット挿入部と前記保持部材との干渉を回避するように前記保持部材を移動させる機構とを備えることを特徴とするコイル形成装置。
前記保持部材は前記第1スロット挿入部の長手方向に沿って移動可能であり、且つ前記第1スロット挿入部の前記長手方向の長さを超えて移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のコイル形成装置。
前記内側部材が、前記スロットの数に対応して放射状に配置され前記ステータ又はロータの径方向に対応する第2の方向に移動可能に配置された複数の内側可動部材を備え、
前記外側部材が、前記各内側可動部材に対向して放射状に配置され前記第2の方向に移動可能に且つ前記第1の方向に一体として回転可能に配置された複数の外側可動部材を備え、
前記各第1スロット挿入部は前記各内側可動部材の間に形成される前記第1受容部に挿入され、前記各第2スロット挿入部は前記各外側可動部材の間に形成される前記第2受容部に挿入されることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル形成装置。
前記保持部材が、それぞれ前記各第1スロット挿入部を挿通するための複数の挿通孔であって前記第1の方向に略等間隔に配列された挿通孔を有し、該第1スロット挿入部の長手方向に沿って移動可能であり、前記保持部材の移動によって前記各第1スロット挿入部が前記各挿通孔から抜けることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコイル形成装置。
前記保持部材が円板状であり、且つ、それぞれ半円形の2つの部分に分割されており、その各部分を、前記コイルセグメントの回動軸と直交する方向に沿って前記コイル形成装置から着脱可能であることを特徴とする請求項5に記載のコイル形成装置。
前記各外側可動部材が前記第1の方向に一体として回転することにより、前記各外側可動部材が、前記各内側可動部材の間に挿入されている前記各第1スロット挿入部を、前記内側部材の中心方向に向かって押し込むことを特徴とする請求項3に記載のコイル形成装置。
ステータ又はロータのスロットに挿入される一対のスロット挿入部とこれらを連結する渡り部とを有する複数のコイルセグメントの各第1スロット挿入部を、前記ステータ又はロータの周方向に対応する第1の方向に略等間隔に複数配置して保持部材で保持し、該各第1スロット挿入部を回動軸として前記複数のコイルセグメントを各コイルセグメントが重なるように同一方向に回動させ、1つのコイルセグメントの前記第1スロット挿入部に、他のコイルセグメントの、前記第1スロット挿入部と異なる第2スロット挿入部を重ねることにより、1度に2層のコイルセグメント層を形成するコイル形成方法であって、
前記各第2スロット挿入部を前記各第1スロット挿入部に重ねる際に、前記保持部材と前記各第2スロット挿入部とが干渉しないように、前記保持部材を移動させることを特徴とするコイル形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手法は、上記のように、2個目以降の導体セグメントが投入される毎に内周側に移動した全ての導体セグメントを持ち上げる工程が必要であるため、持ち上げ動作の回数が非常に多く面倒であった。即ち、コイル形成に必要な導体セグメントのほぼ全数に近い数の持ち上げ動作が必要となり、コイル組み立て工程の作業能率を低下させていた。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、コイル組み立て作業の能率向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、コイルセグメントを配置する時点で渡り部(クランク形状部)の干渉を回避できるようにコイルセグメントの一方のスロット挿入部(第1スロット挿入部)を回動軸として保持する部材を設け、この部材を所定のタイミングで移動させて他方のスロット挿入部(第2スロット挿入部)との干渉を避けることができるようにした。
【0008】
具体的には、本発明のコイル形成装置は、ステータ又はロータのスロットに挿入される一対のスロット挿入部とこれらを連結する渡り部とを有するコイルセグメントの第1スロット挿入部が、前記ステータ又はロータの周方向に対応する第1の方向に略等間隔に複数のコイルセグメント分それぞれ挿入される第1受容部を備える内側部材と、前記複数のコイルセグメントの各々の、前記第1スロット挿入部と異なる第2スロット挿入部を、前記第1の方向に略等間隔にそれぞれ挿入される第2受容部を備え、回転により前記各第2スロット挿入部を前記内側部材へ寄るように変位させる外側部材と、前記外側部材の回転時に前記各第1スロット挿入部を前記コイルセグメントの回動軸となるように保持する保持部材と、前記外側部材の回転に伴う前記各第2スロット挿入部と前記保持部材との干渉を回避するように前記保持部材を移動させる機構とを備えるものである。
【0009】
このようなコイル形成装置において、前記保持部材は前記第1スロット挿入部の長手方向に沿って移動可能であり、且つ前記第1スロット挿入部の前記長手方向の長さを超えて移動可能である構成としてもよい。
【0010】
さらに、前記内側部材が、前記スロットの数に対応して放射状に配置され前記ステータ又はロータの径方向に対応する第2の方向に移動可能に配置された複数の内側可動部材を備え、前記外側部材が、前記各内側可動部材に対向して放射状に配置され前記第2の方向に移動可能に且つ前記第1の方向に一体として回転可能に配置された複数の外側可動部材を備え、前記各第1スロット挿入部は前記各内側可動部材の間に形成される前記第1受容部に挿入され、前記各第2スロット挿入部は前記各外側可動部材の間に形成される前記第2受容部に挿入される構成としてもよい。
【0011】
また、前記保持部材が、それぞれ前記各第1スロット挿入部を挿通するための複数の挿通孔であって前記第1の方向に略等間隔に配列された挿通孔を有し、該第1スロット挿入部の長手方向に沿って移動可能であり、前記保持部材の移動によって前記各第1スロット挿入部が前記各挿通孔から抜ける構成としてもよい。
【0012】
また、前記保持部材が前記コイルセグメントの層の径の違いに応じて交換可能である構成としてもよい。
【0013】
また、前記保持部材が円板状であり、且つ、それぞれ半円形の2つの部分に分割されており、その各部分を前記コイルセグメントの回動軸と直交する方向に沿って前記コイル形成装置から着脱可能である構成としてもよい。
【0014】
また、前記各外側可動部材が前記第1の方向に一体として回転することにより、前記各外側可動部材が、前記各内側可動部材の間に挿入されている前記各第1スロット挿入部を、前記内側部材の中心方向に向かって押し込む構成としてもよい。
【0015】
また、本発明のコイル形成方法は、ステータ又はロータのスロットに挿入される一対のスロット挿入部とこれらを連結する渡り部とを有する複数のコイルセグメントの各第1スロット挿入部を、前記ステータ又はロータの周方向に対応する第1の方向に略等間隔に複数配置して保持部材で保持し、該各第1スロット挿入部を回動軸として前記複数のコイルセグメントを各コイルセグメントが重なるように同一方向に回動させ、1つのコイルセグメントの前記第1スロット挿入部に他のコイルセグメントの、前記第1スロット挿入部と異なる第2スロット挿入部を重ねることにより、1度に2層のコイルセグメント層を形成するコイル形成方法であって、前記各第2スロット挿入部を前記各第1スロット挿入部に重ねる際に、前記保持部材と前記各第2スロット挿入部とが干渉しないように、前記保持部材を移動させるものである。
【0016】
このようなコイル形成方法において、前記各コイルセグメントの第2スロット挿入部を、放射状に配置され前記第1の方向に一体として回転可能に配置された複数の外側可動部材の間にそれぞれ挿入した状態で前記回動を行い、前記回動の前に、前記複数のコイルセグメントのうち少なくとも1つを、該少なくとも1つのコイルセグメントの渡り部が前記外側可動部材に載って支持されるように前記ステータ又はロータの径方向に対応する第2の方向に対して斜めに配置するとよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コイル組み立て作業の能率向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル形成装置の概要平面図である。
【
図3A】
図1のコイル形成装置における保持部材を示す平面図である。
【
図4A】
図1のコイル形成装置における円形ブロックを示す平面図である。
【
図5A】
図1のコイル形成装置における天板を示す平面図である。
【
図6A】
図1のコイル形成装置における底板を示す平面図である。
【
図7】
図1のコイル形成装置におけるコイルセグメントの挿入位置を示す要部斜視図である。
【
図8】
図1のコイル形成装置におけるコイルセグメントの配置状態を示す要部拡大平面図である。
【
図9】
図1のコイル形成装置におけるコイルセグメントの配置状態を示す全体平面図である。
【
図10】
図1のコイル形成装置におけるコイルセグメントの配置状態を示す全体斜視図である。
【
図11】
図8の状態から外側ロッドを一体に回転させた状態を示す要部拡大平面図である。
【
図12】
図11の状態から外側ロッドの回転をさらに進行させた状態を示す要部拡大平面図である。
【
図13】
図1のコイル形成装置における保持部材を下降させた状態を示す、
図2と対応する図である。
【
図14】
図12の状態から外側ロッドの回転をさらに進行させて1層目と2層目のコイル形成が完了した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図15】
図14の状態から外側ロッドと内側ロッドを径方向に移動させて3層目と4層目におけるコイルセグメントのスロット挿入部の挿入隙間を形成した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図16】
図15の状態から3層目と4層目のコイルセグメントを配置した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図17】
図16の状態から外側ロッドを一体に回転させた状態を示す要部拡大平面図である。
【
図18】
図17の状態から外側ロッドの回転をさらに進行させた状態を示す要部拡大平面図である。
【
図19】
図18の状態から外側ロッドの回転をさらに進行させて3層目と4層目のコイル形成が完了した状態を示す要部拡大平面図である。
【
図20A】
図19の状態におけるA部の拡大水平断面図で、3層目と4層目のコイル形成が完了した際の状態を示す図である。
【
図20B】
図20Aの状態から外側ロッドを半ピッチ回転させて3層目と4層目を押し込んだ状態を示す図である。
【
図20C】
図20Bの状態から次の層のスロット挿入部を挿入する隙間を形成した状態を示す図である。
【
図21】コイル形成装置により形成されたコイルが挿入されるスロットを備えたステータのコアを示す斜視図である。
【
図22A】回転電機の製造装置を示す概要平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係るコイル形成装置1の平面図で、
図2は
図1のII−II線での拡大断面図である。ただし、
図1では後述の天板17を除いた状態を示している。
図2に示すように、コイル形成装置1は、ベース3と、ベース3の中央に垂直に固定された支柱5と、支柱5に一体に固定された支持リング7と、支持リング7の上方から支柱5に挿通されて4本のボルト9で支持リング7に固定された円形ブロック11と、円形ブロック11の外周部に周方向に等間隔に形成され、径方向の外側が開口された複数の収容溝11aと、各収容溝11aに収容されて径方向に移動可能に設けられた内側可動部材としての複数の内側ロッド13と、円形ブロック11の下面に固定されて各収容溝11aの下面を覆う円板状の底板15と、円形ブロック11の上面に固定されて各収容溝11aの上面を覆う円板状の天板17と、底板15の下面に配置され、コイルセグメント18の一方のスロット挿入部を保持(拘束)する円板状の保持部材19と、支柱5の下部にベアリング部材21を介して回転自在に支持された円板状のベースプレート23と、ベースプレート23の周縁に90°間隔で配置され、下面側からボルト25で固定された4本の支持軸27と、これらの支持軸27の上面にネジ孔29aを介して固定され、上面側に周方向に略等間隔に凹部29b(
図1参照)が形成されたリング部材29と、リング部材29の凹部29bに外側端部を収容されて固定ネジ31で固定された外側可動部材としての複数の外側ロッド33等を有している。以上のうち円形ブロック11及び複数の内側ロッド13が内側部材を構成し、リング部材29及び外側ロッド33が外側部材を構成する。
【0021】
図2に示すように、外面を絶縁材で被覆した導体を曲げ加工して形成されるコイルセグメント18は、直線状に延びるスロット挿入部18a,18bと、これらを連結する渡り部18cとを有するU字状の形状である。渡り部18cは、スロット挿入部18a,18bの異なる層への配置(レーンチェンジ)を可能とするクランク形状(屈曲形状)を有している。層とは、複数のコイルセグメントのスロット挿入部が形成する周方向の列であり、コアの径方向に並ぶスロット挿入部の数が層数となる(
図20A〜
図20CのL1,L2,L3,L4参照)。
【0022】
全体として円板状の保持部材19は、
図3A及び
図3Bに示すように、半円形の分割プレート19A,19Bを突き合わせることにより構成されており、全体として中央にベアリング部材21の外径よりも大きい径の挿通孔19aと、4本の長ボルト35の下端部が螺合されて固定されるネジ孔19bと、外周縁に周方向に略等間隔に形成され、コイルセグメント18の一方のスロット挿入部(第1スロット挿入部)18aが挿通される複数の挿通孔19cとを有している。2層分のコイルを形成した後に次の2層を形成する場合には長ボルト35から保持部材19を取り外して交換しなければならないが、保持部材19は2分割された構成であるので、各分割プレート19A,19Bをコイル形成装置1に対して支柱5の軸と略直交する方向(挿通孔19cに挿通されたスロット挿入部18aの長手方向と略直交する方向でもある)に引き出して取り外し、新たな分割プレート19A,19Bを同方向から挿入して容易に交換することができる。この交換は、後述のように、保持部材19を、
図2に示す状態よりも下降(支柱5に沿って底板15から離れる方向に移動)させた状態で行う。保持部材19は、2分割に限らず、3分割以上の構成としてもよい。
【0023】
この保持部材19は、円形ブロック11に対しては固定されていない。保持部材19は長ボルト35に対して固定されているが、長ボルト35は、円形ブロック11との関係では挿通孔11d(
図4A及び
図4B参照)に挿通されるのみで、円形ブロック11に対しては固定されておらず、同様に長ボルト35は天板17及び底板15にも固定されていない。
また、
図2において、長ボルト35は不図示の支持機構で下方に落下しないように支持されている。換言すれば、上記支持機構は保持部材19が落下しないように、即ち、コイルセグメント18の一方のスロット挿入部18aを保持した状態を維持するように長ボルト35を支持している。
【0024】
円形ブロック11は、
図4A及び
図4Bに示すように、内側ロッド13を収容する複数の収容溝11aと、支柱5を挿通するための挿通孔11bと、ボルト9を挿通するための挿通孔11cと、長ボルト35を挿通するための挿通孔11dと、底板15と天板17とを固定するためのネジ孔11eとを有している。収容溝11aは5°間隔で72個形成されている。従って、各収容溝11aに収容された内側ロッド13も5°間隔で72個放射状に設けられており、収容溝11a内を径方向に移動可能に収容されている。収容溝11aは径方向に放射状に突出する突縁11fによって区画される空間である。
【0025】
天板17は、
図5A及び
図5Bに示すように、支柱5を挿通するための挿通孔17aと、長ボルト35を挿通するための挿通孔17bと、天板17を円形ブロック11に固定するためのネジを挿通する挿通孔17cと、外周縁に周方向(コイル形成装置1により形成されるコイルを挿入するステータ又はロータ(
図21参照)の周方向に対応する第1の方向)に略等間隔に形成された複数のネジ孔17dとを有している。
図2に示すように、各ネジ孔17dには固定ネジ37が螺合されており、固定ネジ37で内側ロッド13の上面を押圧することにより、内側ロッド13は径方向(上記ステータ又はロータの径方向に対応する第2の方向)の任意の位置で固定される。即ち、固定ネジ37は内側ロッド13の位置調整部材として機能する。
図1に示すように、各外側ロッド33には長穴33aが形成されており、径方向の固定位置を調整できるようになっている。各外側ロッド33は各内側ロッド13に対向して配置されており、従って外側ロッド33も5°間隔で72個放射状に設けられている。本実施形態では5°間隔で内側ロッド13及び外側ロッド33を放射状に配置しているが、配置間隔(配置角度)はこれに限定されない。
【0026】
各内側ロッド13の下面を支持する支持部材である底板15は、
図6A及び
図6Bに示すように、支柱5を挿通するための挿通孔15aと、長ボルト35を挿通するための挿通孔15bと、底板15を円形ブロック11に固定するためのネジを挿通する挿通孔15cとを有している。
【0027】
上記構成のコイル形成装置1におけるコイルセグメント18の配置について説明する。コイルセグメント18は、
図7に示すように、一方のスロット挿入部18aが円周方向における隣接する内側ロッド13間に形成される第1受容部である隙間39に挿入され、且つ、保持部材19の挿通孔19cに挿通される。即ち、一方のスロット挿入部18aは保持部材19の挿通孔19cに挿通されることによりその位置を拘束され、コイルセグメント18の回動時の回動軸となる。一方のスロット挿入部18aが挿入される隙間39の径方向内側は突縁11fで区画されている。なお、
図7では内側ロッド13と外側ロッド33との関係を分かり易くするために、円形ブロック11の高さを大きく表示している(
図10において同じ)。実際には、
図2に表れるように、内側ロッド13及び外側ロッド33は、円形ブロック11と同程度の高さを有する。
【0028】
コイルセグメント18の他方のスロット挿入部(第2スロット挿入部)18bは、
図8に示すように、円周方向における隣接する外側ロッド33間に形成される第2受容部である隙間41に挿入される。本実施形態では、コイルを電源に接続するために3種類の異形のコイルセグメント18A,18B,18Cが配置されている。本実施形態では渡り部18cの幅が最も小さいコイルセグメント18Bは6本配置され、その跨ぎ角(コイルを形成した状態(
図14の状態)においてスロット挿入部18a,18bが配置される隙間39間の角度)は25°である。コイルセグメント18Aは60本配置され、その跨ぎ角は30°である。渡り部18cの幅が最も大きいコイルセグメント18Cはコイルセグメント18Bの上から6本配置され、その跨ぎ角は35°である。これらの跨ぎ角を有するように配置された各コイルセグメント18A,18B,18Cが回動したときに密接に重なって2層を形成するように、配置当初から外側ロッド33間の隙間41へのスロット挿入部18bの挿入位置がコイルセグメントの種類毎に設定されている。
【0029】
即ち、
図8に示すように、コイルセグメント18Aのスロット挿入部18bは、スロット挿入部18aを挿入した隙間39から見て円周方向に時計回りに1つずれた位置の隙間41に挿入し、コイルセグメント18Bのスロット挿入部18bは、スロット挿入部18aを挿入した隙間39と対向する隙間41に挿入し、コイルセグメント18Cのスロット挿入部18bは、スロット挿入部18aを挿入した隙間39から見て円周方向に時計回りに2つずれた位置の隙間41に挿入している。なお、スロット挿入部18aとスロット挿入部18bとを、それぞれ円周方向にn個ずれた位置の隙間に挿入する配置を、「n個飛び」と呼ぶことにする。
【0030】
図8に示した配置の他、コイルセグメント18Aを2個飛び、コイルセグメント18Bを1個飛び、コイルセグメント18Cを3個飛びとしてもよい。このようにすれば、コイルセグメント18A,18B,18Cの全てが径方向に対して斜めに配置され、全てのコイルセグメントの渡り部18cが外側ロッド33の上面で支持されることになる。
図9は
図8で部分的に示した各コイルセグメント18A,18B,18Cの配置状態を示す全体平面図、
図10は全体斜視図である。
なお、
図8〜
図10の例では、「n個飛び」における「ずれ」の方向は時計回りであるが、コイルセグメントの形状によっては反時計回りの「ずれ」を採用することも可能である。
【0031】
次に、
図8〜
図10に示した状態から各外側ロッド33を一体に支持するリング部材29を時計回り(コイルセグメントの渡り部18cが湾曲している方向)に回転させると、
図11に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cはスロット挿入部18aを回動軸として、スロット挿入部18bを外側ロッド33で押されながら変位し、内側ロッド13側へ寄るように回動する。即ち、スロット挿入部18bは、該スロット挿入部18bが挿入された隙間41を構成する外側ロッド33のうち回転方向後方側の外側ロッド33の回転方向前方側の側面で押圧されながら、且つ該側面を滑りながら変位する。コイルセグメントの回動が進行すると、
図12に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cの径方向での重なり度(密接度)が高まるが、
図7から明らかなように、各コイルセグメント18A,18B,18Cのスロット挿入部18bが保持部材19の外周面19dに当接するため、それ以上の密接状態は得られない。
【0032】
ここで、保持部材19に固定された4本の長ボルト35を支持している支持機構が動作して長ボルト35を解放すると、
図13に示すように、保持部材19は下降(落下)し、スロット挿入部18bの回動域から退避すると共に、スロット挿入部18aを解放する。これにより、スロット挿入部18bと保持部材19との干渉は解消(回避)され、リング部材29の更なる回転が可能となる。最終的に
図14に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cが密接に重なった2層のコイルセグメント層W1が形成される。この状態では、各コイルセグメント18A,18B,18Cの一方のスロット挿入部18aは、他のコイルセグメントの他方のスロット挿入部18bと重なる(
図20A〜
図20CのL1及びL2参照)。逆に言えば、このような重なりができるように各コイルセグメントの跨ぎ角及び配置を定める。保持部材19を下降させるタイミングは、他方のスロット挿入部18bが保持部材19の外周面に当接したタイミングでもよく、当接する直前のタイミングでもよい。
【0033】
従来では、コイルセグメントを斜めではなく径方向に沿って配置することが行われているが、この場合、跨ぎ角が異なるコイルセグメントを同時に配置することはできない。このため、他方のスロット挿入部を所定量回転変位させてから次の種類のコイルセグメントを径方向に沿って配置する動作を異形のコイルセグメント毎に繰り返さなければならず、面倒であった。本実施形態の如く、最初から跨ぎ角の違いを吸収できるように斜めに配置すれば、跨ぎ角が異なるコイルセグメントを一度に配置することができ、コイルセグメントの配置作業の効率化を図れる。
【0034】
次に、3層目及び4層目を形成する動作について説明する。
図14から明らかなように、最初の2層が形成された状態では円周方向における内側ロッド13間には隙間39は存在せず、次の層を形成するためのコイルセグメント18の配置ができない。このため、
図15に示すように、固定ネジ31を緩めて各外側ロッド33を径方向外側にずらすと共に、固定ネジ37を緩めて各内側ロッド13を径方向外側にずらして内側ロッド13間に隙間39を新たに形成する。
図15において、符号mは内側ロッド13の径方向への移動量を示す。外側ロッド33も同様の移動量となる。
【0035】
また、内側ロッド13及び外側ロッド33の位置調整の前又は後に、1層目及び2層目の形成に用いた保持部材19を長ボルト35から取り外し、3層目及び4層目に適した径の保持部材19に交換する。交換後、長ボルト35を
図2に示す上限位置(保持部材19が底板15に当接又は近接する位置)に移動させ、不図示の支持機構で支持する。
以上の後、
図16に示すように、
図7〜
図10の場合と同様に各コイルセグメント18A,18B,18Cの一方のスロット挿入部18aを新たに形成された隙間39及び保持部材19の挿通孔19cに挿入し、外側ロッド33間の隙間41に他方のスロット挿入部18bを挿入して全てのコイルセグメント18を配置する。
【0036】
図16に示す状態からリング部材29を時計回り方向に回転させると、
図17に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cはスロット挿入部18aを回動軸として、スロット挿入部18bを外側ロッド33で押されながら変位し、内側ロッド13側へ寄るように回動する。回動が進行すると、
図18に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cの径方向での密接度が高まるが、各コイルセグメント18A,18B,18Cのスロット挿入部18bが交換後の保持部材19の外周面に当接するため、それ以上の密接状態は得られない。
【0037】
ここで、保持部材19に固定された4本の長ボルト35を支持している支持機構が動作して長ボルト35を解放すると、保持部材19は下降し、スロット挿入部18bの回動域から退避すると共に、スロット挿入部18aを解放する。これにより、スロット挿入部18bと保持部材19との干渉は解消され、リング部材29の更なる回転が可能となり、最終的に
図19に示すように、各コイルセグメント18A,18B,18Cが密接に重なった2層のコイルセグメント層W2が最初に形成された2層のコイルセグメント層W1に隣接して形成される。上記の動作を繰り返すことにより複数層を容易に形成することができる。
【0038】
上記のように、一方のスロット挿入部18aを保持部材19で保持して回動軸とすることにより、各コイルセグメント18A,18B,18Cをその渡り部18cが他のコイルセグメントの下に入り込んだ状態で配置することができ、特許文献1のように渡り部を入り込ませるための持ち上げ動作も不要となる。また、保持部材19の、スロット挿入部18bとの干渉を解消するための移動は、2層分の全てのコイルセグメントの配置が終わった後に一括で行うことができ、1つのコイルセグメントの配置毎に行う必要がないので、効率的である。
【0039】
図20Aに示すように、3層目と4層目のコイルセグメントの層形成が終了した段階では3層目と4層目は若干周方向にずれ、且つ、内側ロッド13の外端よりも外側ロッド33側へ突出している。この状態を改善するためには、
図20Bに示すように、例えば各外側ロッド33が周方向に半ピッチ(P/2)ずれるようにリング部材29を回動させるとよい。このようにすれば、外側ロッド33の先端面によって4層目L4が円形ブロック11の中心方向に向かって内側ロッド13側へ押し込まれ、3層目L3及び4層目L4を、先の1層目L1及び2層目L2と共に内側ロッド13の隙間39に整列した状態で収容することができる。この状態で3層目及び4層目の下方の外周面をリング状部材で拘束すれば、次の層(5層目、6層目)を形成する場合に3層目、4層目が乱れることを防止できる。この外側ロッド33によるコイルセグメントの押し込み及びリング状部材による拘束は、1層目と2層目のコイルセグメントの層形成が終わった段階や5層目以降のコイルセグメントの層形成が終わった段階においても同様に実施し、同様な効果を得ることができる。
【0040】
また、
図20Cに示すように、3層目及び4層目のコイルセグメントの層形成が終わった時点で、
図20Bの状態のまま外側ロッド33と内側ロッド13を径方向外側に移動させて5層目及び6層目の一方のスロット挿入部18aを挿入するための隙間39を形成すれば、四方を全て区画された隙間39を形成することができ、隙間39の径方向外側が開放されている場合(
図15参照)に比べて挿入が容易且つ確実となる。同様に四方を全て区画された隙間39を形成することは、1層目及び2層目のコイルセグメントの層形成が終わった段階や5層目以降のコイルセグメントの層形成が終わった段階でも同様に実施し、同様の効果を得ることができる。
【0041】
所望の層数のコイル形成(組み立て)が終了すると、不図示の移動機構によりコイル形成装置1が
図21に示すステータのコア70の上方に位置付けられ、且つ、スロット70aにスロット挿入部の下端部が挿入された状態での位置決めがなされる。
図20Cの状態で隣接する内側ロッド13の間の1箇所の隙間39に配置されている各層のスロット挿入部が、1つのスロット70aに挿入され、各隙間39に配置されているスロット挿入部が、対応するスロット70aに挿入される。その後、全ての内側ロッド13が内側へ移動されるとともに全ての外側ロッド33が外側へ移動され、これにより組み立てられた(編み込まれた)コイルグメント18の各層からなるコイルが解放されてスロット70aへ矢印Aで示す方向に落とし込まれ、挿入が完了する。従来では、編み込んだコイルをコイル形成装置から一旦引き抜いてコアのスロットに挿入することが行われているが、本実施形態の構成によれば引き抜き工程が不要で、引き抜き過程で層が乱れる心配もなく編み込んだ状態のままでスロットに落とし込むことができる利点を有している。ここではステータのコアへの挿入例を示したが、ロータのコアについても同様に実施することができる。
【0042】
本実施形態において、多数の内側ロッド13と外側ロッド33の位置を手動で調整する構成としても、カム溝やサーボモータ等を用いて全ての内側ロッド13と外側ロッド33を同時に移動させる構成としてもよい。また、保持部材19の各分割プレート19A,19Bを、支柱5の軸方向と略直交する方向からそれぞれ自動的に挿入して交換する構成としてもよい。また、コイルセグメント18もロボット等により自動的に配置する構成としてもよい。即ち、本発明の技術思想に基づき、コイルセグメント18の配置、各外側ロッド33の一体的な回転(上述の例ではリング部材29の回転によって実現したが他の手段を用いてもよい)、保持部材19の昇降及び交換、隙間39の形成のための内側ロッド13と外側ロッド33の位置調整等を自動化することにより、所望の層数のセグメントコイルを自動で形成する装置を構築することができる。
【0043】
以下に、
図22A及び
図22Bを参照して、上記のコイル形成装置1を組み込んだ回転電機の製造装置100、即ち、線材の供給からコイル形成(コイル組み立て)までを自動的に行うシステムの一実施形態について説明する。
【0044】
回転電機の製造装置100は、コイルセグメント成形装置50と、コイルセグメント成形装置50で成形されたコイルセグメントを回転電機の周方向に沿って円環状に配列されたスロットに対応させてアセンブルするコイル形成装置1とを備えている。コイルセグメント成形装置50は、線材供給部51と、線材供給部51から供給された所定長さの直線状の線材を平面(本実施形態では図中のxy平面)内で所定の形状(この例ではU字形状)に曲げ加工する1次曲げ部52と、1次曲げ部52で曲げ加工されたコイルセグメント(1次曲げ成形体)をこのコイルセグメントのスロット挿入方向及び上述の平面と垂直な平面(本実施形態では図中のyz平面)内において曲げ加工すると共に、渡り部18cに該当する部分にクランク形状を付与する2次曲げ部53とを備えている。
【0045】
線材供給部51は、ボビン55と、供給方向転換部56と、矯正搬送部57と、剥離部58と、切断部59とを備えている。ボビン55には、表面が絶縁層で被覆された平角線である線材54が巻かれている。供給方向転換部56は、ボビン55から線材54を引き出して供給方向を変える。矯正搬送部57は、線材54の広幅のフラットワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対57aと、線材54の狭幅のエッジワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対57bとを備え、線材54の長手方向の歪みを矯正する。剥離部58は、歪みが矯正された線材54の所定の長さ毎に設けた剥離領域における絶縁層(被膜)を剥離する線材の被膜剥離装置である。切断部59は、剥離部58を通過した線材54を上記剥離領域の位置で切断する。
剥離部58は、切削部材によって剥離領域(絶縁層を剥離すべき部位)を削って絶縁層を剥離する機械的な剥離方式のものを採用することができる。切断部59は、各剥離領域の中央部で線材54を切断する。従って、切断部59によって切断された線材54は、所定長さであって両端部において絶縁層が除去されたものとなる。
【0046】
1次曲げ部52は、切断部59による切断後の線材54をそれぞれU字曲げ加工して1字曲げ成形体28を形成する。U字形状の1次曲げ成形体28は、1次曲げ部52と2次曲げ部53との間に配置された移送機構60によって2次曲げ部53へ移送される。移送機構60はエアシリンダによる1対のチャック部(図示無し)を備えており、この1対のチャック部は1次曲げ成形体28の両脚部(1対のスロット挿入部18a,18bに相当)が曲げによって旋回してくる範囲にチャック片が開放された状態で待機している。チャック部が1次曲げ成形体28の両脚部を把持すると、移送機構60は上昇して1次曲げ部52から1次曲げ成形体28を外し、2次曲げ部53へ移送する。移送機構60で移送された1次曲げ成形体28はその両脚部の端部が把持部材61で把持される。1次曲げ成形体28を把持部材61に受け渡した移送機構60が退避してスペース的にコイルエンド部(渡り部18cに相当)側が開放された状態で、このコイルエンド部に対して2次曲げ部53による段差形状(クランク形状)の曲げを含む曲げ加工がなされる。
【0047】
2次曲げ部53による曲げ加工を終えた2次曲げ成形体(コイルセグメント18)は、順次不図示のロボットによって、コイル形成装置1に、
図7等を用いて説明したようにスロット挿入部18a,18bをそれぞれ間隙39,41に挿入するように配置する。全周への配置が完了すると、複数の外側ロッド33を一体的に回転させることにより、各コイルセグメント18を回動させる。
次に、コイルセグメント18のスロット挿入部18bが保持部材19の外面に当接するタイミングで、不図示の支持機構が長ボルト35を解放して、あるいは長ボルト35を下降させて保持部材19を下降させ、保持部材19と他方のスロット挿入部18bとの干渉を解消した状態で最終的な締めを行う。
【0048】
なお、
図22A及び
図22Bに示す構成では、線材供給部51の供給方向転換部56、矯正搬送部57、剥離部58及び切断部59と、1次曲げ部52とが
図22Aにて横方向に一列状に配置され、2次曲げ部53が1次曲げ部52に対して
図22Aにて下側に配置され、コイル形成装置1が2次曲げ部53に対して
図22Aにて左側に配置されている。しかし、これら供給方向転換部56、矯正搬送部57、剥離部58、切断部59、1次曲げ部52、2次曲げ部53及びコイル形成装置1が
図22Aにて横方向に一列状に配置されていても良い。即ち、コイルセグメントの成形部とコイル形成装置(コイルの組立部)との相対的な配置位置(レイアウト)の制限はない。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。上述した本発明の構成は、一部のみ取り出して実施することもできるし、以上の説明の中で述べた変形は、相互に矛盾しない限り任意に組み合わせて適用可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
円形ブロック(11)の外周縁に周方向に等間隔に複数の収容溝(11a)を形成し、これらの収容溝(11a)に内側ロッド(13)を収容して放射状に且つ径方向に沿って移動可能に配置する。各内側ロッド(13)に対向するように外側ロッド(33)を放射状に且つ径方向に沿って移動可能に配置する。コイルセグメント(18)の一方のスロット挿入部(18a)を内側ロッド(13)間の隙間(39)に挿入するとともに保持部材(19)の挿通孔(19c)に挿通し、他方のスロット挿入部(18b)を外側ロッド(33)間の隙間(41)に挿入する。その後、外側ロッド(33)全体を回転させてコイルセグメント(18)をスロット挿入部(18a)を軸として回動させ、スロット挿入部(18b)が保持部材(19)の外周面に当接するタイミングで保持部材(19)を下降させ、スロット挿入部(18b)と保持部材(19)とが干渉しない状態で外側ロッド(33)全体を更に回転させてコイルセグメントを密接させる。これらの構成により、コイル組み立て作業の能率向上を図る。