(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルロースナノ繊維は、0.5〜10質量%の水混合液にしたα−セルロース含有率60〜99質量%のパルプである多糖に対し、50〜400MPa程度の高圧水を衝突させることによって得られた請求項3又は請求項4に記載の複合樹脂組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からバイオマス材料が注目されており、自動車、OA・電気電子分野向け材料として天然由来の有機充填材やバイオポリマーとの複合材料が、使用され始めている。また、剛性等の機械的強度や耐熱性を向上させる目的で、樹脂組成にガラス繊維等の無機充填剤を配合する方法が検討されている。しかしこれらの無機充填剤は、大量に加える必要があるため、成形品の比重が増大し、さらに焼却又は廃棄時にゴミとなる残留物が増加して環境に負荷がかかる等の問題がある。
【0003】
特許文献1には、芳香族ポリカーボネート樹脂に脂肪族ポリエステルと天然由来の有機充填材を配合して機械特性及び難燃性に優れた樹脂組成物とするために、天然由来の有機充填材としてジュート繊維やレーヨン繊維を用いて樹脂組成物と複合化した技術が開示されている。しかし、特許文献1で得られる樹脂組成物は、衝撃強度の低下が大きかったり、成形外観が不十分であったりし、また着色が大きく、成形時の熱安定性も十分ではない。
【0004】
特許文献2には、(A)ポリカーボネート樹脂99〜60質量%及び(B)平均繊維径が5〜50μmであり、平均繊維長が0.03〜1.5mmであるセルロース繊維1〜40質量%からなる樹脂混合物100質量部に対し、(C)テルペン系化合物を1〜10質量部含むポリカーボネート樹脂組成物であり、バイオマス材料の利用により環境特性に優れ、かつ低比重にして高剛性で成形外観に優れ、さらに熱安定性が良好で、難燃性が付与された樹脂組成物が開示された。しかし、この樹脂組成物は低比重であるとはするもののその比重(g/cm3)は何れの実施例も1.20を超えるものであり、水よりも比重が大きく、構成材料の軽量化という課題に充分に応えるものではなかった。
【0005】
特許文献3には、セルロースと、分散剤とを含む組成物であって、該分散剤が樹脂親和性セグメントAとセルロース親和性セグメントBとを有し、ブロック共重合体構造又はグラジエント共重合体構造を有するものであることを特徴とする組成物製造技術が開示されているが、オレフィン系樹脂を組合せる場合、無水マレイン酸変性樹脂を併用しており単独で分散できていない上に10μm以上の凝集物が多数存在する。また、セルロースは化学修飾を施されており、未修飾のセルロースを用いることができない。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。強度レベルにおいても弾性率は向上するものの衝撃強度が著しく低下するものである。
【0006】
水酸基を有する親水性ナノ繊維の前記水酸基を親水性有機溶媒で溶媒和させ、溶融したプラスチックと混合することを特徴とする親水性ナノ繊維複合材料の製造技術が開示されているが、低級脂肪族アルコールで溶媒和し溶媒置換する必要があり含水状態のナノ繊維を直接用いることが出来ない。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。
【0007】
分散媒中で、セルロースナノ繊維と樹脂との両方が均一に分散している分散液、並びに樹脂中でセルロースナノ繊維が均一に含有する樹脂組成物を開示しているとされているが、マイクロレベルの凝集物が部数に存在し、且つセルロースナノ繊維はビーズミルで調製されており重合度を低下させるものである。また、マレイン酸変性樹脂を併用している。さらにテルペン系樹脂は利用されていない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[(A)セルロースナノ繊維]
本発明において、バイオマス材料として特定の平均繊維径及び平均繊維長を有するセルロースナノ繊維を用いることにより、セルロースの凝集性が抑制され、衝撃強度の低下を抑えることができる。さらに(A)セルロースナノ繊維は、ガラス繊維等の無機繊維に比べ低い比重でありながら剛性を向上させることができるので、剛性の高い低比重の樹脂組成物とすることができる。セルロースナノ繊維としては例えば、木材繊維、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維、葉繊維等の天然の植物を含む多糖由来のセルロースナノ繊維が挙げられ、これらセルロースナノ繊維は一種を単独で又は二種以上を混合して用いてもよい。また多糖としてはα−セルロース含有率60%〜99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α−セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすくなって繊維同士の絡み合いを抑えることができ、α−セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、溶融時の熱安定性が高く、衝撃強度の低下を引き起こすことがないほか、着色抑制効果が良好であり、本発明の効果をより優れたものとすることができる。さらに、99質量%以上のものを用いた場合、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
【0014】
本発明におけるセルロースナノ繊維は、平均太さ10〜200nmであり、多糖を高圧水流にて解繊してなる。平均太さは日本電子株式会社の電界放出形走査電子顕微鏡JSM−7001FTTLSによって測定した。平均太さ10〜200nmのレベルまで解繊することで流動性があり衝撃強度の低下が少なく、低比重にして高剛性で成形外観に優れた樹脂組成物を得ることができる。平均太さ10nm未満では脱水性が悪化するため固形分濃度を上げることが難しくなり好ましくない。平均太さ200nmを超える場合には、解繊が進んでいない数10μmの繊維幅のものが含まれることになり流動性が著しく低下し、且つ分散性が悪化することとなり好ましくない。
【0015】
多糖の高圧水流による解繊は、0.5〜10質量%の水混合液にした多糖に対し、50〜400MPa程度の高圧水を衝突させて行う。これは例えば
図1に示すセルロースナノ繊維の製造装置1を用いて行うことができる。セルロースナノ繊維の製造装置1は、一のチャンバー2に対して多糖スラリを供給可能に配置される第1の液状媒体供給経路であるところの多糖スラリ供給経路3と、例えば水である非多糖スラリを一のチャンバー2を介して循環させる第2の液状媒体供給経路4とよりなる。一のチャンバー2内には第2の液状媒体供給経路4の非多糖スラリを多糖スラリ供給経路3からの多糖スラリ供給方向と交差する方向にオリフィス噴射するオリフィス噴射部5を備える。多糖スラリ供給経路3は、多糖スラリを一のチャンバー2を介して循環可能にされる。
【0016】
多糖スラリ供給経路3と第2の液状媒体供給経路4とは一のチャンバー2内に相互の交差部6を有する。多糖スラリ供給経路3は多糖スラリ供給部であり多糖スラリを貯留するタンク7、ポンプ8を循環路9に配置してなり、一方、第2の液状媒体供給経路4はタンク10、ポンプ11、熱交換器12、プランジャ13を循環路である液状媒体供給経路4に配置してなる。
【0017】
なお非多糖スラリは、例えば水であり、当初タンク10に収納され、その後セルロースナノ繊維の製造装置1の作動に伴い交差部6を通過してタンク10に収納されたナノ微細化された多糖を操業の度合いに応じた濃度で含むことになった状態のものをも、包括的に指称する。
【0018】
図2に示すようにチャンバー2を貫通する態様で多糖スラリ供給経路3の循環路9が配置され、これと交差する方向に非多糖スラリをオリフィス噴射して循環路9を貫通させることができるように第2の液状媒体供給経路4のプランジャ13に接続されるオリフィス噴射部5のオリフィス噴射口14がチャンバー2内側において開口する。チャンバー2のオリフィス噴射口14と対向する位置にチャンバー2の排出口15が設けられ、このチャンバー2の排出口15に第2の液状媒体供給経路4の循環路が接続されて、第2の液状媒体供給経路4が構成される。
【0019】
一方、多糖スラリ供給経路3の循環路9は例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成され、その循環路9のチャンバー2への入り側にはチャンバー2方向にのみ開弁される一方向弁16が取りつけられる。さらに循環路9のチャンバー2からの出側にはチャンバー2からの排出方向にのみ開弁される一方向弁17が取りつけられる。加えてチャンバー2と一方向弁17の間の循環路9にはエア吸入弁18が取りつけられ、このエア吸入弁18は外部から循環路9へエアを吸入する方向にのみ開弁される。
【0020】
以上のセルロースナノ繊維の製造装置によれば以下のようにしてセルロースナノ繊維が製造される。非多糖スラリーをチャンバー2を介して第2の液状媒体供給経路4を循環させる。具体的にはポンプ11を用いてタンク10内の非多糖スラリを熱交換器12、プランジャ13を通過させて液状媒体供給経路4内を循環させる。一方、多糖スラリーをチャンバー2を介して多糖スラリ供給経路3内を循環させる。具体的にはポンプ8を用いてタンク7内の多糖スラリをビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9内を循環させる。
【0021】
これにより、多糖スラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通する多糖スラリに対して第2の液状媒体供給経路4を循環する非多糖スラリがオリフィス噴射される。具体的にはプランジャ13に接続されるオリフィス噴射口14にプランジャ13から高圧水が供給され、これがオリフィス噴射口14から循環路9に向けて50〜400MPa程度の高圧でオリフィス噴射される。
【0022】
その結果、例えばビニルホース、ゴムホース等を用いて形成された循環路9に予め形成された貫通孔26a、bを通過して、循環路9と交差する方向に循環路9内側を通過した非多糖スラリが循環路9内を循環する多糖スラリを巻き込みながらチャンバー2の排出口15に向けて排出され、第2の液状媒体供給経路4に流入する。これによって、非多糖スラリが第2の液状媒体供給経路4内を再度循環する。以上のプロセスを反復する過程で多糖スラリ供給経路3内を循環してチャンバー2内を流通する多糖スラリ及び第2の液状媒体供給経路4を循環する非多糖スラリ中の多糖が徐々に解繊されて、用途に応じた解繊度合いの均一性の高いセルロースナノ繊維が得られる。
【0023】
その他に多糖を高圧水流にて解繊してセルロースナノ繊維とする手法としては特開2012−36518に記載された破砕型ホモバルブシートを備えたホモジナイザーで原料繊維を溶媒に分散させた分散液を処理するホモジナイズ処理法がある。
図3に示されるようにこのホモジナイズ処理法によれば高圧でホモジナイザー内を圧送される原料繊維101が、狭い間隙である小径オリフィス102を通過する際に、小径オリフィス102の壁面(特にインパクトリング103の壁面)と衝突することにより、剪断応力又は切断作用を受けて分割され、均一な繊維径を有するミクロフィブリル化が行われる。
【0024】
さらに多糖を高圧水流にて解繊してセルロースナノ繊維とする手法としては特開2005−270891に記載された水中対向衝突法がある。これは、水に懸濁した天然セルロース繊維をチャンバー(
図4:107)内で相対する二つのノズル(
図4:108a,108b)に導入し、これらのノズルから一点に向かって噴射、衝突させる手法である(
図4)。この手法によれば、天然微結晶セルロース繊維(例えば、フナセル)の懸濁水を対向衝突させ、その表面をナノフィブリル化させて引き剥がし、キャリアーである水との親和性を向上させることによって、最終的には溶解に近い状態に至らせることが可能となる。
図4に示される装置は液体循環型となっており、タンク(
図4:109)、プランジャ(
図4:110)、対向する二つのノズル(
図4:108a,108b)、必要に応じて熱交換器(
図4:111)を備え、水中に分散させた微粒子を二つのノズルに導入し高圧下で合い対するノズル(
図4:108a,108b)から噴射して水中で対向衝突させる。この手法では天然セルロース繊維の他には水しか使用せず、繊維間の相互作用のみを解裂させることによってナノ微細化を行うためセルロース分子の構造変化がなく、解裂に伴う重合度低下を最小限にした状態でセルロースナノ繊維を得ることが可能となる。
【0025】
以上の様にして得るセルロースナノ繊維は、水分散状態における固形分濃度が20%以上とすることによって分散剤との馴染みが改善し、凝集物を生成しにくい。そのためポリオレフィン樹脂に対して効率的に分散することができる。固形分濃度が20%未満である場合には、構造の一部に疎水性を有する分散剤との相溶性が悪く、セルロースナノ繊維同士で凝集物を生成しやすいため、その凝集物がポリオレフィン中での分散性の悪化要因となる。さらに、混練時の樹脂温度の低下により混練時の不均一なせん断力を招く結果となり、そのため混練過程での均一分散の障害となっており好ましくない。さらには、混練装置の温度上昇を妨げるため熱エネルギーのロスを招くことになる。
【0026】
(A)セルロースナノ繊維と(B)ポリオレフィン樹脂からなる樹脂混合物において、各成分の含有量は(A)成分1〜60質量%及び(B)成分99〜40質量%である。(A)成分が1質量%未満であると弾性率等の機械特性の向上効果が十分に発揮されず、60質量%を超えると衝撃強度等の機械特性が大きく低下する。樹脂混合物中の(A)成分の含有量は、好ましくは2〜30質量%であり、さらに好ましくは3〜25質量%である。
【0027】
[(B)ポリオレフィン樹脂]
本発明の(B)ポリオレフィン系樹脂は、本発明の複合樹脂組成物を成形することによって得られる成形品の剛性や耐衝撃性などの機械物性、成形加工性、耐溶剤性、耐熱性などの特性を発現する本発明の複合樹脂組成物の主成分である。
【0028】
係るポリオレフィン系樹脂は、上記の特性発現の点で、炭素数2〜6のα−オレフィンから選択される1種以上のモノマーを単独重合又は共重合して得られるポリオレフィン系樹脂である。しかし、上記特性発現を妨げない範囲で、炭素数7以上のα−オレフィンをコモノマーとして使用することもできる。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンの共重合体、2種以上の炭素数2〜6のα−オレフィンの共重合体やアイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0030】
共重合体としては、ランダム又はブロックのいずれの共重合体であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の種々のポリオレフィン系樹脂の混合物を用いることもできる。ポリオレフィン系樹脂のうち、プロピレンを主原料とするポリプロピレン系樹脂は、剛性や耐衝撃性、耐溶剤性、耐熱性に優れるため、本発明の複合樹脂組成物に特に好適に使用することができる。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレンとエチレン及び/又は上記α―オレフィンとの共重合体から構成されるブロック共重合体やランダム共重合体、極性官能基を有する変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0032】
オレフィン系樹脂の中でも、樹脂組成物とした場合の補強効果を得ることができ且つ柔軟性を有し、安価であるという利点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、バイオポリエチレン等のポリエチレン系樹脂(PE)、ポリプロピレン系樹脂(PP)
等を用いるとよい。また、塩化ビニル樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ビニルエーテル樹脂等の樹脂を用いてもよい。
【0033】
更に、(B)成分として、上記のポリオレフィン系樹脂に、次に例示するようなゴムを配合してなるポリマーアロイを用いてもよい。このようなゴムとしては、具体例として、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、エチレン−ブテン−1共重合ゴム、エチレン−ヘキセン共重合ゴム、エチレン−オクテン共重合ゴム、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、部分水添スチレン−イソプレンブロック共重合ゴム、ポリウレタンゴム、スチレングラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン/アクリロニトリル−グラフト−エチレン−プロピレン共重合ゴムがなど挙げられる。ポリマーアロイ中のゴムの含量は、ポリオレフィン系樹脂の特性に新たな特性を付加するという観点から、50質量%以下であることが好ましい。
【0034】
[(C)金属塩]
金属塩を入れることによって、金属イオンがCNFの水酸基に配位し、水素結合を阻害することで乾燥時におけるCNFの強固な凝集を防ぐことができる。本発明で用いられる金属塩としては硫酸ナトリウム(Na2SO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩化カルシウム(CaCl2 )、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、臭化カリウム(KBr)、臭化リチウム(LiBr)、塩化ナトリウム(NaCl)等がある。金属塩は多価の金属イオンを遊離することが望ましい。1価より2価、2価より3価の金属イオンが好ましい。例えば、三価の陽イオンであるアルミニウムイオンが最もよく、二価の陽イオンであるカルシウムイオンはアルミニウムイオンに比して使用量が多く必要であるが、同様の効果がある。3価のアルミニウム塩としては硫酸アルミニウムと酢酸アルミニウム、アルミン酸ソーダ等がある。係る金属塩はセルロースナノ繊維含有量に対して0.1〜10質量%の比率で加える。セルロースナノ繊維含有量に対して0.1質量%未満である場合には、セルロースナノ繊維の樹脂中における分散が不十分となる。硫酸アルミニウムの場合、セルロースナノ繊維含有量に対して10質量%を超える場合には、遊離硫酸イオン等の存在で強度の低下が懸念される。なお含水セルロースナノ繊維への金属塩の添加にあたっては、3価の金属塩として働くPH域に調整することができる。また金属塩に含まれる金属イオンの対イオンである陰イオン(例えば、硫酸アルミニウムにおける硫酸イオン)が複合樹脂に対し悪影響を与える事が懸念される場合には、(陽イオンはナノセルロース表面に配位しているため)水洗により陰イオンの濃度を低下する事が出来る。
【0035】
[(D)ロジンエマルジョンサイズ剤]
(B)アルミニウムイオン等の多価の陽イオンであれば、ナノセルロース表面水酸基に配位し、さらに表面電化をカチオン性にするため、ロジンエマルジョンサイズ剤と配位が可能となり、ナノセルロースに疎水性を付与することができる。ロジンエマルジョンサイズ剤は、ロジン類を乳化し、水中油型のコロイド分散液にしたものである。粒子の大きさは0.3〜0.5μmであり外観は乳白色である。ロジンエマルジョンサイズ剤は金属塩と共に含水セルロースナノ繊維に添加することによってセルロースナノ繊維に疎水化を付与し、樹脂との密着性を向上することができる。
【0036】
[(E)平均太さ10〜200nmであり、多糖を高圧水流にて解繊してなるセルロースナノ繊維を誘導体化した誘導体化CNF]
ナノセルロース繊維表面の水酸基を、例えばラウリル化などでエステル化する事により、ナノセルロース間の水素結合を阻害し、同時に疎水性を付与する事が出来る。含有量は1〜10質量%である。1質量%未満であると弾性率等の機械特性の向上効果が十分に発揮されず、10質量%を超えると衝撃強度等が大きく低下する上、過剰に費用がかかる。
【0037】
[凝集抑制処理]
凝集抑制処理を行う事で、ポリオレフィンとの混練をせずとも、ポリオレフィン粒子表面に分散・混合させた状態で乾燥する事が出来る。
【0038】
[分散処理]
分散処理とは、凝集抑制処理ナノセルロース分散液に、ポリオレフィン粉末を加え撹拌する。あるいは、膨潤状態の凝集抑制処理ナノセルロースをポリオレフィン粉末と機械的に混合処理を行うことである。
【0039】
[添加剤]
本発明の
複合樹脂組成物は、その物性を損なわない限りにおいてその混合時、成形時に他の樹脂、添加剤、例えば、相溶化剤、界面活性剤、でんぷん類、多糖類、ゼラチン、ニカワ、天然たんぱく質、タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末、顔料、染料、強化剤、充填剤、耐熱剤、酸化抑制剤、耐候剤、滑剤、離型剤、結晶核剤、着色剤、香料、レベリング剤、可塑剤、流動性改良剤、導電剤、帯電抑制剤等、紫外線吸収剤、紫外線分散剤、消臭剤を添加することができる。
【0040】
任意の添加剤の含有割合としては、本発明の効果が損なわれない範囲で適宜含有されても良いが、例えば、樹脂組成物中10質量%程度以下が好ましく、5質量%程度以下がより好ましい。
【0041】
[
複合樹脂組成物]
本発明の
複合樹脂組成物の製造方法としては、従来から公知の方法で各成分を溶融混練する方法が挙げられる。例えば、各成分をタンブルミキサーやヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサーで代表される高速ミキサーで分散混合した後、押出機、バンバリーミキサー、ロール等で溶融混練する方法が適宜選択される。
【0042】
本発明の
複合樹脂組成物を用いた成形方法には特に制限はなく、射出成形、射出圧縮成形、押出し成形、中空成形体等の成形法を適用することができる。本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いた成形品は、前記の性状を有することから、例えば、OA機器、情報・通信機器、自動車部品又は建材分野等で好適に用いることができる。
【0043】
本発明は、樹脂にバイオマス材料としてセルロースナノ繊維を配合することによって、衝撃強度の低下が少なく、かつ高剛性にして低比重、すなわち、比剛性(MPa)を大きくすることができ、さらに、表面荒れ等が低減されて成形外観に優れ、さらにアルミニウム塩を配合することによって、セルロースナノ繊維の分散性が向上した樹脂組成物である。
【0044】
本発明の
複合樹脂組成物は、以下の実施例に記載する性能評価において、得られる成形品の引張弾性率(MPa)、引張伸び(%)が概ね以下の性能を満足し、かつ成形外観に優れているという特徴を有している。
【実施例】
【0045】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1,2及び比較例1,2]
実施例及び比較例において用いた各成分及び性能評価方法を次に示す。
(A)成分:セルロースナノ繊維
広葉樹の漂白パルプを水中対向衝突法(ACC)によりセルロースナノ繊維に調整した。
(B)ポリオレフィン樹脂として中密度ポリエチレン(Lupolen製3621MRM)を用いた。
(C)無機塩添加
1Lビーカーに1%CNFを入れ、攪拌機 (700rpm程度)で撹拌し、その固形分CNFに対し 1% 硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)を添加した。その添加と共に凝集が起こり粘度が上がり、攪拌機回転数を700から900rpmに上げて撹拌しながら、混分散させた。その後脱水し、硫酸根除去の目的で洗浄するため水で希釈し、脱水、希釈を数回繰り返した。固形分濃度12%程度とした。(D)ロジンエマルジョンサイズ剤添加実施例2として硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)に加えて酸性ロジンサイズ剤を添加し、撹拌した。その後脱水し、硫酸根除去の目的で洗浄するため水で希釈し、脱水、希釈を数回繰り返した。固形分濃度12%程度とした。
なお比較例1,2では以上の(C)、(D)のみ行わなかった点以外は実施例と同様とした。
1. 成形方法
複合化には、東洋精機(株)製 二軸押出機 ラボプラストミルを用いた。スクリュー径はφ25 mm L/D:30である。物性評価の試験片を得るために、日精樹脂工業製 小型射出成形機 NPX7−1Fを使用し、ダンベル試験片1BA、短冊形試験片を作製した。
なお比較例1と比較例2とは、比較例1では混合方法が手混ぜであったのに対し比較例2ではヘンシェルミキサーを用い、また比較例2では二軸混錬機のスクリューコマ位置を変更、混練温度を変更した点で相違する。これらについては比較例2と実施例とは同様にした。
2.評価方法
複合化によって得られた
複合樹脂組成物の強度物性は、三点曲げ試験、引張試験を行った。いずれも(株)島津製作所製 Ez−LXを用い、三点曲げ試験速度2.0mm/min、引張試験速度 10mm/minとして実施した。その結果を
図6、
図7に示す。セルロースナノ繊維を10%配合した比較例のPE複合樹脂の物性はベース樹脂であるPEに対し、曲げ弾性率で141%、曲げ最大応力で126%、引張弾性率で207%、引張最大応力で108%まで向上した。これに対し、実施例では比較例よりもさらに引張最大応力の向上が得られた。
【0046】
[実施例3]
ナノセルロースは微細化される事により、高い比表面積を保持しており、同時に表面に露出した水酸基の影響で極めて高い親水性を有しており、水素結合による凝集性が強い。従って、その高い親水性によってポリオレフィンなどの疎水性の高い樹脂中では凝集を生じてしまい、十分にその強度特性が発揮できていないという現状がある。よって、その問題点を解決するためにナノセルロース繊維の表面をエステル化する事により疎水性を付与し、ポリオレフィン中での分散性を向上させることで、ポリオレフィンに対する補強機能を向上させることを目的として検討を行った。
【0047】
セルロースナノファイバー(CNF)は、水中対向衝突法により作成した。またより微細化を進行させたナノファイバー(CNFfine)も準備した。誘導体化セルロースナノファイバーはラウリル化し(LauCNFおよびLauCNFfine)、ラウリル化による水酸基の置換度は0.45(±0.01)とした。
【0048】
含水CNFあるいは含アセトン誘導体化CNFは、中密度ポリエチレン(Lupolen性3621MRM、PE)にたいし、セルロース部が5%あるいは10%となるように前混合した。含水CNFの前混合は、手捏ね、あるいは、流動式混合器(FMミキサー)などを用いてもよい。含アセトン誘導体化CNFの前混合は、アセトンにPEと共に懸濁し、これを良く撹拌した後にアセトンを溜去させてもよいし、含水CNFと同様に流動式混合器を用いて前混合してもよい。
【0049】
前混合は、PEと(誘導体化)CNFが均一に混合されれば良いが、一旦CNFが乾燥してしまうと、強固な凝集体を形成し、再分散が極めて困難になってしまう為、二軸押出混練によってもCNFの凝集物が多量に生じ、強度に悪影響を与えるため、(誘導体化)CNFの乾燥は避けなければならない。
【0050】
前混合したPEとの混合物は、二軸押出機(東洋精機、ラボプラストミル)に供した。スクリュー系はΦ25mm、有効長(スクリュー長さLと直径D比)を30とした。得られた複合樹脂ペレットは、小型射出成型機(日精樹脂工業、NPX7−1F)を用いて、ダンベル試験片1BAおよび短冊形試験片を作成した。試験片は、温度23度、湿度50%で4日間以上調質し、機械特性の分析に供した。島津製作所製Ez−LXを用いて引張強度試験(10mm/min)はダンベル試験片1BAを用い、曲げ強度試験(2mm/min)は短冊形試験片を用いて測定した。
【0051】
CNFあるいは誘導体化CNFとPEの複合樹脂の引張強度を
図8に、曲げ強度を
図9に示した。PEにCNFを10%配合した複合樹脂(PE+10%CNF)とCNFfineを10%配合した複合樹脂(PE+10%CNFfine)をt検定により統計的に比較した結果、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力でPE+10%CNFの方が有意(p<0.05)に高強度であったが、引張弾性率、引張および曲げ最大ひずみでは有意差は観察されなかった。一方で、PEにCNFを5%配合した複合樹脂(PE+5%CNF)およびPE+10%CNFを比較した場合、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力において、有意にPE+10%CNFの方が高い強度を示し、引張ひずみのみでPE+5%CNFの方が有意に高い値を示した。よって、誘導体化しないCNFとPEの複合樹脂では、PE+10%CNFが最も良好な機械強度特性を示すことが明らかとなり、CNF比率は高いほうが良く、またナノセルロース繊維は微細化を進行させすぎると強度が低下する傾向があると予測した。
【0052】
PE+5%および10%CNFと、PEにLauCNFをCNF部が5%となるように配合した複合樹脂(PE−5%LauCNF)の強度を比較すると、PE+5%LauCNFがPE+10%CNF複合樹脂よりも、引張弾性率、最大引張応力、最大曲げひずみで有意に高い強度特性を示し、PE+10%CNFが最大引張ひずみ、曲げ弾性率、最大曲げ弾性率で有意に高い伸びを示した。PE+5%CNFと比較すると、引張弾性率、最大引張応力、曲げ弾性率、最大曲げ応力でPE+5%LauCNFの方が有意に良好な特性を示した。また、最大引張ひずみに関してのみPE+5%CNFの方が良好な値を示した。PE+10%CNFfineとPE+5%LauCNFfineの場合では、最大引張応力、最大曲げ応力でPE+5%LauCNFfineが高い強度を示し、有意差はない(p=0.07)ものの、引張弾性率はLauCNFfineの方が高い傾向が見られた。また、最大引張ひずみに関しては、PE+5%CNFfineの方が有意に良好な伸びを示した。また、PE+5%LauCNFとPE+5%LauCNFfineを比較すると、最大引張および曲げ応力のみ有意差が観察され、LauCNFの方が高強度であり、誘導体化しない場合と同様に微細化によって強度が低下する傾向が見られた。
【0053】
以上の結果から、CNF配合時とLauCNFを5%配合した複合樹脂の強度を比較した結果、CNFをラウリル化する事によるPEに対する補強効果は、曲げ弾性率は同等以上、引張弾性率、最大引張および曲げ応力は2倍以上となる事が示された。一方で最大引張ひずみはラウリル化によって低下し、強く硬い特性が付与される事が示唆された。また、原料であるCNFの強度がLauCNFの強度にも影響を及ぼすことが明らかとなった
。