(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記顔料をその樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で混入して形成した着色マトリックス樹脂を、前記強化繊維群に含浸させて形成した請求項1に記載の着色プリプレグ。
前記顔料を、液状を呈するエポキシ樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で混入させてシート状に形成した着色マトリックス樹脂シート材を、高温状態で一方向に引き揃えた炭素繊維群に重ね合わせ、含浸させて形成した請求項1に記載の着色プリプレグ。
単一色を有する一方の顔料にその一方の顔料とは異なる色を有する他方の顔料とを加えて、その合わせた顔料を上記した割合に混入させて着色マトリックス樹脂を形成する請求項2又は3のいずれか一項に記載の着色プリプレグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(1)マトリックス樹脂のみに着色する場合であっても、強化繊維も固有の色を有しているので、マトリックス樹脂に所望の着色を施したとしても、強化繊維の色によって所望のマトリックス樹脂の着色が薄められ、或いは、濁されて、繊維強化樹脂材(プリプレグ)などの成形品とした場合に、十分な発色性が得られない場合がある。
【0005】
したがって、強化繊維の固有の色を薄めるために、或いは、隠す目的で隠蔽材を着色材とともに混入する方法を採るもの(特開平3−119038号公報)があるが、この場合には隠蔽材と着色材とが干渉し、十分な発色性が得られない。
そこで、特許文献1のように、隠蔽材を含む層を下層に、着色材を含む層を上層にし、その間に隔離層を設け、着色材層においては、強化繊維としては透明性の高いものを使用するといった対策を必要としていた。
【0006】
(2)一方、強化繊維の表面に他の色を施すことも可能であるが、強化繊維の種類によっては、着色できない若しくは着色すると問題となるものもある。例えば、炭素繊維やアラミド繊維等は着色が困難な繊維種である。
【0007】
(3)このような難点を排除すべく、一般的には、塗装や印刷で対応している。しかしこの場合には、専用の塗装装置及びそれらを施す工程を必要とし、製作効率の悪い面があるとともに、塗装厚として十分なものを必要とするので着色繊維強化複合材用基材が重くなり、軽量化の要請がある場合に十分でない面がある。
【0008】
しかも、そのような専用の塗装装置及びそれらを施す工程が必要となるので、相当数の工程が必要とされ、製造ロッド数の大きなものでなければ、製造コスト面で不利となる虞がある。
【0009】
(4)以上のような点を考慮して、本出願人によって特許文献3に記載の発明のように、着色したシートをプリプレグに重ねるといったやり方もあるが、製造工程面、及び、製造コスト面で更なる改善を必要としていた。
【0010】
本発明の目的は、従来の欠点を解消し、繊維強化樹脂材本来の性能及び特徴を損なうことなく、容易に、発色性が高く、難着色性の強化繊維種を採用した場合にも採用可能な着色プリプレグを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、強化繊維固有の発色性を抑制し樹脂自体に発色性を付与する顔料を混入させたマトリックス樹脂を強化繊維群に含浸させて形成したプリプレグにおいて、
前記マトリックス樹脂に混入された前記顔料が、強化繊維群の表面側から含浸し、その一部が強化繊維に捉えられ、残部が裏面側に移動して強化繊維群内に分布し、表面側半分における顔料の混入密度が裏面側半分における混入密度より大である着色プリプレグであって、
前記顔料は、表面に発色層を備えたガラス基板からなるガラスフレーク、又は、表面に発色層を備えたメタル基板からなるメタルフレークで、かつ、光干渉性発色を有する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用〕
つまり、顔料の密度において表面側半分が裏面側半分より高い状態にあるので、その表面側半分を表示面に使用すれば、着色プリプレグとして発色性の高いものにできる。
【0013】
〔効果〕
したがって、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明性なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる。
また、マトリックス樹脂に対する顔料の割合が同一のものであっても、表面側半分に集積させることができるので、より高い割合で混入させたものと同様の発色性を発揮させることができ、少ない顔料で有効な発色機能を付与することができる。
【0015】
〔作用〕
つまり、顔料の密度において表面側が裏面側より高い状態にあるので、その表面側を表示面に使用すれば、着色プリプレグとして発色性の高いものにできる。
また、反対に密度の薄い側を表示面として使用すれば、反対側に向けて密度が濃くなり、それによって、色合いとして深みが出てくる。
【0016】
〔効果〕
したがって、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明性なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる。
また、マトリックス樹脂に対する顔料の割合が同一のものであっても、表面側から裏面側に掛けて集積度を変化させることができるので、均一に分散させたものに比べると、裏表を任意に選定して使用することができる。
【0018】
〔作用〕
つまり、ガラスフレーク自体は透明であり、強い光沢感と透明感を得ることができ、発色層を形成するコーティング材を変更調整することにより、多様な発色をするもので、マトリックス樹脂を鮮やかに発色させることができる。
また、メタルフレークは発色層により多様な発色をし、マトリックス樹脂の発色性を担保するものである。
【0019】
〔効果〕
したがって、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明性なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる。
ガラスフレーク、又は、メタルフレークの採用によって、光干渉性を利用した発色等を得ることができるので、多様な発色性を持つ着色マトリックス樹脂からなる着色プリプレグを得ることができる。
【0020】
〔構成〕
請求項
2に係る発明の特徴構成は、前記顔料をその樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で混入して形成した着色マトリックス樹脂を、前記強化繊維群に含浸させて形成した
点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0021】
〔作用〕
つまり、マトリックス樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で顔料を混入することによって、強化繊維が固有の色を有するものであっても、強化繊維の色とは異なる発色を呈する着色プリプレグを得ることができた。
【0022】
〔効果〕
したがって、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明性なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる。
【0024】
〔作用効果〕
固形分が解けた液状を呈するマトリックス樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で顔料を混入することによって、強化繊維が固有の色を有するものであっても、強化繊維の色とは異なる発色を呈する着色プリプレグを得ることができた。
【0025】
一方、顔料の混入割合を、17%を越える割合に設定すると、顔料と樹脂との混合が均一にならず、また、団子状になり十分な流動性が得られず、強化繊維との重ね合わせが上手く行かない虞もあった。
そこで、樹脂の粘性を高めて十分な流動性を得ることによって、樹脂と顔料との撹拌混合を良好に行うことができた。
【0026】
顔料を樹脂に予め混入させて着色マトリックス樹脂を形成し、その着色マトリックス樹脂を、高温において液状タイプのものに形成する。
着色マトリックス樹脂の液材をその強化繊維群の引き揃え方向に対して直交する表面側からから流し込むことによって、前記着色マトリックス樹脂を含浸させて、着色プリプレグを製造する。
このように、着色マトリックス樹脂を液状にして、強化繊維群の引き揃え方向に対して直交する表面側から流し込み方法を採ることによって、顔料の密度において表面側が裏面側より高い状態にある着色プリプレグを製造しやすくなった。
したがって、その表面側を表示面に使用すれば、着色プリプレグとして発色性の高いものにできる。
【0027】
その結果、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明性なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる。
【0028】
〔構成〕
請求項
3に係る発明の特徴構成は、前記顔料を、液状を呈するエポキシ樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で混入させてシート状に形成した着色マトリックス樹脂シート材を、高温状態で一方向に引き揃えた炭素繊維群に重ね合わせ、含浸させて形成した点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0029】
〔作用効果〕
つまり、固形分が解けた液状を呈するマトリックス樹脂に対して0.04%〜17%体積比の割合で顔料を混入することによって、強化繊維が固有の色を有するものであっても、強化繊維の色とは異なる発色を呈する着色プリプレグを得ることができた。
【0030】
一方、顔料の混入割合を17%以上に設定すると、顔料と樹脂との混合が均一にならず、また、団子状になり十分な流動性が得られず、強化繊維との重ね合わせが上手く行かない虞もあった。
そこで、樹脂の粘性を高めて十分な流動性を得ることによって、樹脂と顔料との撹拌混合を良好に行うことができた。
【0031】
顔料を樹脂に予め混入させて着色マトリックス樹脂を形成し、その着色マトリックス樹脂を、高温において接着性を発現するホットメルトタイプのシートに形成する。
着色マトリックス樹脂シート材を強化繊維群に重ね合わせ、高温を掛けて含浸させ(例えばラミネート法等を採用する)、着色プリプレグを製造する。
【0032】
したがって、隠蔽材を含む層と発色材を含む層とを隔離層を介して重ね合わせるといった複雑な構成を採る必要もなく、かつ、強化繊維として透明なものが必要になるといった製造上の制約もなく、マトリックス樹脂や強化繊維固有の色にも阻害されずに、高い発色性を得ることができるとともに、難着色性の強化樹脂にも拘らず容易に所望の発色を得ることができる
【0033】
〔構成〕
請求項
4に係る発明の特徴構成は、単一色を有する一方の顔料にその一方の顔料とは異なる色を有する他方の顔料とを加えて、その合わせた顔料を上記した割合に混入させて着色マトリックス樹脂を形成する点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0034】
〔作用効果〕
つまり、色の異なる顔料を混合させてマトリックス樹脂に含浸させて作り出したプリプレグは、単一色に比べて、強化繊維色に対する隠蔽能が高く、高い発色性・装飾性を示す。
【0035】
〔構成〕
請求項
5に係る発明の特徴構成は、請求項1〜
4のうちいずれか一項に記載の着色プリ プレグからなる管状体である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0036】
〔作用効果〕
つまり、発色性の高い着色プリプレグを成形し、管状体を得ることができるので、管状体として表面塗装を最小限のものにでき、それだけ、塗装による重量増を抑制し、塗装工程の短縮化を図ることができる。
【0037】
〔構成〕
請求項
6に係る発明の特徴構成は、請求項1〜
4のうちいずれか一項に記載の着色プリ プレグに塗装を施してある管状体である点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0038】
〔作用効果〕
つまり、発色性の高い着色プリプレグではあるが、その表面に塗装を施すことによって、更に、多様な装飾を施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
〔第1実施形態〕
自転車フレーム、ゴルフシャフトや釣り竿等としての管状体、或いは、衣服や履物等に使用される着色プリプレグについて説明する。
着色プリプレグは、強化繊維を一方向に引き揃えた強化繊維束に発色要素を含むマトリックス樹脂を含浸させて形成したものである。
ここに、強化繊維としては、炭素繊維が好ましいが、ガラス繊維、アルミナ繊維、アラミド繊維等が挙げられ、これらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
【0040】
炭素繊維の諸元を示すと、引張弾性率が100〜800GPa、引張強度は2000〜7000MPaであることが好ましい。強化繊維引き揃えシートを構成する繊維径は5μ〜12μで、フィラメント数は、500〜24000本であることが好ましく、より好ましくは、1000〜6000本である。
【0041】
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂の硬化物か熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。強化繊維束として炭素繊維を採用した場合には、接着性の観点よりエポキシ樹脂が最適である。
以上のように、選択された強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸させて、着色繊維強化複合体が製造される。
【0042】
本発明の実施形態に係るマトリックス樹脂の製造は、一般的な製造方法が採られている。つまり、次のような工程で行われる。ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、及び、その他の組成物等をニーダー、又は、プラネタリーミキサー等の撹拌装置に投入する。80〜160℃で加熱して撹拌混合したものに、硬化剤等を混入させて60℃近くまで降温し、所望のエポキシ樹脂成形物を得る。
【0043】
エポキシ樹脂としては、上記したビスフェノールA型エポキシ樹脂以外に、例えば、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びテトラキス(ヒドロキシフェニル)エタンベースなどのポリフェニルベースエポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、複素芳香環(例えば、トリアジン環など)を含有するエポキシ樹脂などの芳香族エポキシ樹脂;脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂などの非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
硬化剤としては、例えば、芳香族アミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼンなど)、芳香族酸無水物(例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸など)、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、複素芳香環含有アミン(例えば、トリアジン環含有アミンなど)などの芳香族硬化剤;脂肪族アミン類(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミンなど)、脂環族アミン類(イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、これらの変性品など)、ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミンなどの非芳香族硬化剤が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
〔強化繊維群の別実施構造〕
(1)強化繊維群として一方向に炭素繊維等を引き揃える配列について説明したが、強化繊維を平面的に異なる方向に配列して交差させ編み込んだ、所謂クロスシートを採用してもよい。
(2)または、強化繊維を配列せずに自由に向きを設定しランダムに絡み合わせてある、所謂不織布を採用してもよい。不織布を作成する一般的な製造工程は、フリースを作成する第1段階と、フリースを結合する第2段階からなる。
(a)第1段階のフリース形成法としては、乾式法(例えばエアレイド方式)がある。強化繊維を短く裁断し、空気流中において流動させながら、シート状に形成する。
(b)第2段階のフリース結合法としては、ニードルパンチ法やステッチボンド法等が使用できる。シート状に形成したフリースに対して返しのある針を突き刺して機械的に結合させて、不織布とする。
(c)不織布としては、強化繊維を4軸方向に配置したものを、何層も重ね合わせたものも含む。
【0046】
使用可能な顔料としては、天然色素と合成色素(合成染料、合成顔料)とがあるが、主として合成色素が使用され、代表的にはアゾ染料、シアニン色素等が用いられる。また、合成顔料としては、酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム等の無機顔料、アゾ顔料、キナクリドン系、ジオキサジン系等の有機顔料を挙げることができる。
顔料としては、その組成から、無機顔料と有機顔料の2種類がある。そして、更に、無機顔料には、鉱物の加工品である天然無機顔料と、化学的に合成された合成無機顔料がある。また、有機顔料には、植物から採った不溶性を示す染料前駆体をそのまま顔料として使用するものと、植物や動物から抽出される染料をレーキ化させたものが古くからある。現在工業的に使われているものの大半は石油工業によって成立する合成有機顔料である。
【0047】
ここでは、無機顔料であるガラスフレーク、メタルフレークを使用する形態について説明する。
ガラスフレークは薄板状のガラス基板に金属を薄くコーティングしたもの、又は、ガラス基板に酸化鉄等をコーティングしたものである。このようなコーティング材料及びコーティング厚によって発色が異なってくる。
【0048】
ガラス基板にコーティングされた層は光の干渉を利用して発色し、特有の発色を示す。このコーティング層を発色層と称する。
【0049】
その製法は次のようなものである。
(1)溶融ガラスを薄く延ばし、透明でフラットなフレークを作る。
(2)次に、種々の金属や金属酸化物をコーティングします。
【0050】
ここで、使用するガラスフレークは日本板硝子製の商品名メタシャイン(光輝性無機顔料である)と称されるもので、下記のようなものがある。
(1)TiO
2をコーティングしたもので、高い透明性と虹彩色を呈する(コードNo1020RS/RY/RR/RG)。長方形状を呈しており、基板比重が約2.5、基板厚みが1μ、長寸法(平均粒径を表す)が20μである。その他、長寸法としては、30〜120μまでの寸法をとるものもある。
酸化チタンTiO
2及びガラス基板は透明であり、かつ、酸化チタンのコーティング層が光干渉性に起因する高い発色性を示し、塗料として有用である。
因みに、品種NoのRS/RY/RR/RGは、夫々、シルバー、イエロー、レッド、ブルーの発色を呈するもので、コーティング層の厚みを変えて光の干渉に関係する光路差を調整してある。
【0051】
(2)Agを厚さ20〜60μにコーティングしたもので、可視光反射率の高い銀によってシルバー色を呈する(コードNo5480PS)。長方形状を呈しており、基板比重が約2.5、基板厚みが5μ、長寸法が480μである。基板厚みが1μ、長寸法が25μから230μまで揃えられてある。
【0052】
(3)Fe
2O
3を厚さ70〜110μにコーティングしたもので、下記の発色を呈する(コードNo1030TY/TZ/TP/TA)。長方形状を呈しており、基板比重が約2.5、基板厚みが1μ、長寸法が30μである。その他、長寸法としては、80μの寸法をとるものもある。
因みに、品種NoのTY/TZ/TP/TAは、夫々、ゴールド、ブロンズ、カッパ―、ラセットの発色を呈するものである。
【0053】
ガラスフレークとともに、メタルフレークも使用される。
ここで、使用するメタルフレークはNEO社製の商品名エルジーと称されるもので、下記のようなものがある。
メタルフレークも同様に薄板状のアルミ等のメタル基板にNiやFe
2O
3などの金属を薄くコーティングしたものであり、形状、その他の諸元はガラスフレークと変わらない。
【0054】
上記したメタルフレーク(エルジー)は真空蒸着法で製造した金属粉であり、金属薄膜の保護層がメタル基板を取囲み、これに着色を施している物である。粒径は赤色・青色共に110〜120μmとなっている。
【0055】
その他、使用可能な合成有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ顔料と多環顔料とがあり、夫々、次のような顔料がある。アゾ顔料には、中黄色を呈するベンジジンイエローの透明タイプ、青味赤を呈するブリリアントカーミン6B等、多環顔料には、フタロシアニン顔料で代表され、
(a) 黄 :イソイドリノン、キノフタロン、イソインドリン、アントラキノン、アントロン、キサンテン
(b) 橙 :ジケトピロロピロール、ペリレン、アントラキノン(アントロン)、ぺリノン、キナクリドン、インジゴイド
(c) 赤 :アントラキノン、キナクリドン、ジケトピロロピロール、ペリレン、ぺリノン、インジゴイド
(d)紫(菫):ジオキサジン、キナクリドン、ペリレン、インジゴイド、アントラキノン(アントロン)、キサンテン
(e) 青 :フタロシアニン、アントラキノン、インジゴイド
(f) 緑 :フタロシアニン、アゾメチン、ペリレン
等が挙げられる。
【0056】
無機顔料としては、合成無機顔料が使用され、合成酸化鉄赤、カドミウム黄、ニッケルチタン黄、ストロンチュウム黄、含水酸化クロム、酸化クロム、アルミ酸コバルト、合成ウルトラマリン青等がある。
(a)赤色顔料:鉛丹、酸化鉄赤
(b)黄色顔料:黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)
(c)青色顔料:ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)
【0057】
次に、樹脂と顔料とを混合する工程について説明する。
顔料の混入時期としては、樹脂成分が溶融し容易に撹拌できる温度(80℃〜160℃)になれば、混入時期に制限はない。樹脂と顔料とは、夫々、一つずつのものを選定して混合することも考えられるが、単一種類の樹脂に対して、複数種類の顔料を混合してもよい。複数種類の中には、同一種のものであっても、色が異なるものも含めて考える。
【0058】
混合濃度に関わる、樹脂と顔料との体積比は、0.04%〜17%、望ましくは、2%〜5%である。樹脂の流動性の大小及び樹脂、顔料の比重によって、樹脂と顔料との可能な混合割合が異なってくるが、顔料の樹脂に対する混合割合としては、17%を越えても発色性に顕著な差はない。却って、混合割合が多くなると、樹脂と顔料との融合が上手くいかず、塊状物ができることがあるので、樹脂の粘性と顔料との重量割合には、相関関係がある。
上記のように、樹脂と顔料とが混合されると、その混合物により固定の着色シート材が形成される。
なお、顔料の発色性を評価すると、樹脂と顔料との重量割合において、割合が大きい程、発色性が良好であると言える。
顔料の形状としては特に限定はないが、幅が5μ〜25μ、長さが50μ〜150μ相当の平板状であることが望ましい。
【0059】
次に、繊維強化着色樹脂材(着色プリプレグ)の製造工程について説明する。
(1)炭素繊維を一方向に引き揃えてベルト状に整列させて、所定位置に送り込む。一方、前記したガラスフレーク等の顔料を混合したマトリックス樹脂を、加熱処理して液状化させて、タンク等に収納する。
(2)ベルト状に引き揃えた炭素繊維群をマトリックス樹脂供給部まで送り込みながら、液状化したマトリックス樹脂を移動する炭素繊維群に向けて流し込む。
(3)そうすると、炭素繊維群の表面に流し込まれたマトリックス樹脂は、搬送される間に、炭素繊維群の間を擦り抜け、炭素繊維群の裏面に染み出してくる。
(4)これによって、炭素繊維群にマトリックス樹脂を含浸させることができ、プリプレグが作成される。
(5)ところで、マトリックス樹脂内に混入されているガラスフレークは炭素繊維群内に沈み込んでいく際に、炭素繊維に沈降を阻害されて、炭素繊維群の裏面に到達する前に、徐々に炭素繊維に捉えられる。このことによって、プリプレグの厚み方向において、表面側の方が滞留するガラスフレークの量が多く、密度が高くなる。
(6)そのガラスフレークの密度は、プリプレグの厚み方向において裏面側の半分に比べて表面側の半分の方が高くなっているが、或る一定の割合でガラスフレークが炭素繊維に捉えられると、裏面から表面に掛けて密度が徐々に高くなる。
【0060】
上記のような製造方法以外に、一般的に採用されているホットメルト法を採用してもよい。つまり、この場合はマトリックス樹脂を液状にして滴下するのではなく、マトリクス樹脂も帯状に形成する方法を採る。
【0061】
その方法は以下の通りである。
炭素繊維を一方向に引き揃えて帯状にして配列するとともに、その上側に上側エポキシ樹脂シートを重合わせ、下側に下側エポキシ樹脂シートを重合わせ、これらの積層物を第1フィードロールによって後工程に搬送する。上下一対の第1フィードロールによって搬送される積層物は、熱盤によって加熱され、上下一対の加熱加圧ロールによって駆動搬送される。
【0062】
加熱加圧ロールで送られる積層物に対してカバーフィルム又はスクリームクロス等のカバー材が重ね合されて、上下一対の第2フィードロールによって、巻き取りロールに送られ、巻き取りロールによってプリプレグとして巻き取られる。
【0063】
樹脂シートを強化繊維群に対して下側にのみ配置する場合には、上側樹脂シートの代わりに工程紙を強化繊維群の上側から供給して、上側工程紙、強化繊維群、及び、下側樹脂シートを第1フィードロールによって重ね合わせて積層物として熱盤に供給搬送する。工程紙は、加熱加圧ロールの搬送作用を受けた後、搬送下手側において巻き取られる。これによってプリプレグが製造される。
【0064】
〔実施例〕
1.樹脂に顔料を混入させる工程
(1)樹脂としては、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂を一種又は複数種混合して、使用する。
(2)発色性を付与する顔料としては、無機顔料としてのガラスフレークであるメタシャイン(ガラス)、パール、無機顔料としてのアルミフレークであるエルジー(アルミ)等を適宜選択して使用する。
(3)これらを後記するように、所定の体積比で撹拌機に投入し、撹拌が容易な120℃に昇温して撹拌を行う。
(4)樹脂成分の溶融と、顔料の拡散が均一になったことを確認し、撹拌を継続しながら80℃以下まで降温して、所定量の硬化剤及び硬化促進剤を加え、顔料が均一に分散させて、樹脂と顔料との混合物を得る。
(5)混合物を得ると、上記したように、この混合物を加熱して液状の着色マトリックス樹脂に調整する。または、その混合物よりリバースロールコーター製法により固形の着色マトリックス樹脂シートを得る。
【0065】
2.着色樹脂と強化繊維群とからプリプレグを形成する工程
(6)次に、炭素繊維を一方向に引き揃え、液状の着色マトリックス樹脂を滴下することによって、着色プレプレグを得る。又は、着色マトリックス樹脂シートと重ね合わせて、加熱加圧することで炭素繊維中に樹脂を含浸させて、着色プリプレグを得る。
【0066】
〔着色プリプレグの評価〕
以上のところから、発色性の評価を行った。本件では、メタルフレーク(アルミメタリック:商品名エルジーNEO)、ガラスフレーク(商品名:メタシャイン)、パールを使用したテスト結果を下記に記す。
【0067】
(1)試料1〜3については、エポキシ樹脂(比重1.22g/cm
3)に対して、単一色のガラスフレーク(商品名:メタシャイン)(比重2.54g/cm
3)を、濃度0.1wt%、5.0wt%、30.0wt%の割合で混合したものを使用した。
【0068】
(2)試料4〜6については、エポキシ樹脂(比重1.22g/cm
3)に対して、単一色のパール(比重3.00g/cm
3)を、濃度0.1wt%、5.0wt%、30.0wt%の割合で混合したものを使用した。
(3)試料7〜9については、エポキシ樹脂(比重1.22g/cm
3)に対して、単一色のアルミメタルフレーク(商品名:エルジーNEO)(比重2.70g/cm
3)を、濃度0.1wt%、5.0wt%、30.0wt%の割合で混合したものを使用した。
【0069】
(4)試料10については、エポキシ樹脂(比重1.22g/cm
3)に対して、青色と赤色のアルミメタルフレーク(商品名:エルジーNEO)(比重2.70g/cm
3)を、濃度5.01wt%の割合で混合したものを使用した。
【0071】
次に、顔料としてのガラスフレーク、又は、メタルフレークの種類による発色状態の違い、又は、着色プリプレグに対して更に塗装を施す形態について説明する。
(1)ガラスフレークとして前記したものを使用する。つまり、日本板硝子製のAgを厚さ20〜60μにコーティングしたもので、シルバー色を呈するものを使用する。
この場合には、所謂モノトーンであり、やや、着色プリプレグとして単独で用いるならば、物足りなさを感ずることがあれば、更に、次の顔料を混合する。
つまり、日本板硝子製のFe
2O
3を厚さ70〜110μにコーティングしたもので、ブロンズ色を呈するものを使用する。このブロンズ色のガラスフレークを混合することによって、色合いに深みが付加されて、塗装をすることなく、優れた色彩感を発揮する。
(2)但し、シルバー色を呈するガラスフレークを混入させた着色プリプレグはモノトーンであるので、これに装飾を施すことが可能であり、かつ、一層、鮮やかな色彩のものを得ることができる。
したがって、シルバー色を呈するガラスフレークを混入させた着色プリプレグで釣り竿用ロッドを製作した後に、所望のカラークリア塗装を施すことができる。
(3)また、メタルフレークを使用したものも良好な発色状態を示す。アルミフレークを混入させた着色マトリックス樹脂で着色プリプレグを形成する。この着色プリプレグで釣り竿用ロッドを製作する。この場合にも(1)で述べたように、クリアー塗装等を必要としない位、発色性は高い。
【0072】
〔別実施構造〕
(1)前記した製造過程で作られる着色プリプレグとしては、横幅が略1mを呈する長幅のシートについて説明したが、横幅が1mm〜15mm位の短幅シート、所謂、プリプレグテープと呼ばれるものであってもよい。
【0073】
(2)着色プリプレグを製造する方法として、強化繊維群を挟んで上下に樹脂シートを配置し、それらを重合する形態を採ったが、樹脂シートは、上下一方だけに配置し、上側樹脂シート又は下側樹脂シートと強化繊維群を重合する製造方法を採ってもよい。
【0074】
(3)上記プリプレグにおいて、スクリームクロスを使用する形態を記載しているが、例えば、釣り竿等に上記プリプレグを使用する場合に、潰れ破壊等に対する強度が要求されない場合には、スクリームクロスを使用する必要はない。
【0075】
(4)着色プリプレグを製造する方法としては、浸漬法で行ってもよい。つまり、浸漬用タンク内に、着色した樹脂材を溶融状態で貯留し、その浸漬用タンク内に強化繊維群を浸し、樹脂材を強化繊維群に十分付着させた状態で引き上げる方法を採ってもよい。強化繊維群を帯状に形成すれば、順次、浸漬させることができ、連続工程が行える。
【0076】
(5)着色プリプレグとしては、釣り竿等の筒状のものだけでなく、シューズや衣服等にも適用できる。