(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570108
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】スポーツウエア又はインナーウエア
(51)【国際特許分類】
A41B 9/12 20060101AFI20190826BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20190826BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
A41B9/12 C
D04B1/00 B
D04B1/00 A
A41D13/00 115
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-63478(P2015-63478)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-183427(P2016-183427A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】592197315
【氏名又は名称】ユニチカトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】冨路本 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】田中 潤
【審査官】
長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−063896(JP,A)
【文献】
特開2011−226026(JP,A)
【文献】
特開2010−236131(JP,A)
【文献】
特開2007−177365(JP,A)
【文献】
特開昭52−105035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 9/00−9/16
A41D 13/00 − 13/12
D04B 1/00 − 1/28
21/00 − 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層及び裏面層からなるダブル丸編地で構成されており、
前記裏面層のウエール列数は前記表面層のウエール列数より少なくなっており、
前記裏面層のニードルループのうち、その一部が数コースに亙る大ニードルループとなっており、
該大ニードルループ中にタックループが入り込んでおり、
前記裏面層が肌側となることを特徴とするスポーツウエア又はインナーウエア。
【請求項2】
裏面層のウエール列は、表面層のウエール列に対して1ウエール置きに飛ばして形成されている請求項1記載のスポーツウエア又はインナーウエア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発汗した際に肌にべたつきにくく、肌離れ性のよいスポーツウエア又はインナーウエアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
マラソンやサッカー等の長時間の運動を伴うスポーツを行うと、大量の発汗によって着衣が濡れ、肌に密着してベタツキ感が生じる。このベタツキ感は不快であると共に競技にも悪影響を及ぼす。したがって、マラソンやサッカー等のスポーツ選手によって、大量の発汗時においても、ベタツキ感の生じないスポーツウエアが求められている。また、一般に着用する肌着等のインナーウエアにおいても、ベタツキ感が生じにくいことは望ましいことである。
【0003】
従来より、ベタツキ感の生じにくいスポーツウエアやインナーウエアの素材として、布帛表面の比表面積比を特定範囲とし、布帛表裏の拡散面積比を特定値以上とし、肌への濡れ戻り率を特定値以下とし、かつ、接触冷感性を特定値以下とした布帛を用いることが提案されている(特許文献1、請求項1及び段落0007)。しかしながら、かかる提案は、布帛の特性を提案しているにすぎず、具体的態様を開示するものではない。特許文献1の実施例を参照すると、異形断面の糸を用いてダブル丸編地を得、表面の比表面積比を特定範囲とし、表面と裏面でウエール方向のループ数を異ならせて表裏の拡散面積比を特定値以上とすることが開示されているにすぎない。
【0004】
【特許文献1】特開2011−26727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、ベタツキ感の生じにくいスポーツウエアやインナーウエア(以下、両者をまとめて「スポーツウエア等」という。)を開発すべく研究を進めていたところ、ベタツキ感の一つの原因が布帛の肌離れ性にあることが判明した。すなわち、布帛が汗によって肌に密着して、離れにくいと、ベタツキ感を強く感じるのである。したがって、本発明の課題は、大量に発汗したときにも、肌離れ性の良好なスポーツウエア等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す特定構造の丸編地を採用することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、表面層及び裏面層からなるダブル丸編地で構成されており、前記裏面層のウエール列数は前記表面層のウエール列数より少なくなっており、前記裏面層のニードルループのうち、その一部が数コースに亙る大ニードルループとなっており、該大ニードルループ中にタックループが入り込んでおり、前記裏面層が肌側となることを特徴とするスポーツウエア等に関するものである。
【0007】
本発明に係るスポーツウエア等は、表面層及び裏面層からなるダブル丸編地で構成されている。かかるダブル丸編地は、ダブル丸編機で編成されるものである。ダブル丸編地を編成するのに使用する糸としては、従来公知のものが用いられ、一般的にポリエステルマルチフィラメント糸やポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸が用いられる。マルチフィラメント糸を構成する各繊維の横断面は円形であってもその他の異形の形状であってもよく、その繊度も0.1〜2.3デシテックス程度である。なお、本発明でいう表面層とは、スポーツウエア等の外側に位置する層のことであり、裏面層とはスポーツウエア等の肌側に位置する層のことである。
【0008】
本発明は、裏面層のウエール列数を表面層のウエール列数より少なくしている。具体的に、表面層のウエール列数:裏面層のウエール列数=1:0.75〜0.25とするのが好ましく、特に、表面層のウエール列数:裏面層のウエール列数=1:0.5とするのがより好ましい。裏面層のウエール列数を少なくすることにより、裏面層に凹凸が生じる。したがって、凸部又は凹部の占有面積は、凸部の占有面積:凹部の占有面積=100:75〜25(%)となる。凹凸の高低差は0.1〜1.0mm程度である。かかる凹凸によって、肌との接触面積が少なくなり、肌離れ性が良好となる。
【0009】
裏面層のウエール数を少なくする態様としては、たとえば、表面層のウエール列数が8列あるとき、裏面層のウエール列を2ウエールづつ飛ばして4列設ける態様が挙げられる(
図1)。また、表面層のウエール列数が8列あるとき、裏面層のウエール列を1ウエールごとに飛ばして4列設ける態様が挙げられる(
図2)。なお、
図1及び
図2において、黒色の縦長長方形が表面層のウエール列であり、薄墨色の縦長長方形が裏面層のウエール列である。
【0010】
裏面層のウエール列が設けられていない箇所は、ウエール方向に走行するニードルループが不存在となっており、縦筋状の溝となっている。縦筋状の溝を形成するには、ウエール列が設けられていない箇所を連続して2列以上配置する必要がある。すなわち、少なくとも
図1に示した態様で裏面層のウエール列を設ける必要がある。たとえば、
図2に示したように、裏面層のウエール列が設けられていない箇所を1列にすると、明瞭な縦筋状の溝が形成されにくい。
【0011】
裏面層のニードルループのうち、一部が数コースに亙る大ニードルループとなっている。一部というのは、ウエール方向に形成されたニードルループ数のうち、30〜70%程度のことであるが、一般的に50%すなわち半数が大ニードルループとなっているのが好ましい。数コースというのは、2コース以上ということであるが、一般的に2〜4コース程度であり、2コースであるのが最も好ましい。この大ニードルループによって小さな孔が設けられ、通気性があって汗の蒸散に寄与するのである。大ニードルループの大きさは、0.01mm
2〜0.5mm
2程度であり、その個数は100個/2.54cm
2程度である。
【0012】
2コースに亙る大ニードルループが半数設けられている例は、
図3に示したとおりである。
薄墨色の円が通常のニードルループであり、
薄墨色の縦長楕円が大ニードルループである。
図3に示し
たとおり、大ニードルループ中
にタックループが入り込んでい
る。
なお、山印がタックループである。
【0013】
以上の構成を持つダブル丸編地は、そのままで又は従来公知の吸水加工を施して、スポーツウエア等の素材とする。かかるダブル丸編地は、大ニードルループによって通気孔が設けられており、通気度は80〜150cm
3/cm
2・sec程度となっている。なお、通気度は、JIS L1018 8. 33. 1(フラジール法)に準拠して測定したものである。また、ダブル丸編地の目付は100〜200g/m
2程度である。そして、表面層を外側に裏面層を肌側にし、かつ、ウエール方向を身長方向として縫製し、本発明に係るスポーツウエア等が得られるのである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るスポーツウエア等は、裏面層に設けられた大ニードルループが通気孔となり、汗を肌から蒸散させやすい。これに加えて、本発明においては、裏面層のウエール列数が表面層のウエール列数よりも少ないので、肌に当たる裏面層に凹凸が生じて、肌との接触面積が少なくなり、肌離れ性が良好となる。以上の結果、本発明に係るスポーツウエア等は、肌離れ性が良好でベタツキ感が少ないという効果を奏する。
【実施例】
【0015】
実施例
[糸の準備]
表面層のニードルループ形成用糸及び表裏面を繋ぐタックループ形成用糸として、84デシテックス/36フィラメントのセミダルポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸(捲縮率60%)を準備した。
裏面層のニードルループ形成用糸として、84デシテックス/72フィラメントのフルダルポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸(捲縮率40%)を準備した。
裏面層のニードルループ形成用糸として、56デシテックス/36フィラメントのフルダルポリエステルマルチフィラメント糸(捲縮率0%)を準備した。
【0016】
前記糸を、福原精機製ダブル丸編機(LPJ型、釜径33インチ、針密度28G)に供給し、図
4の編組織でダブル丸編地を編成した。すなわち、図
4中、給糸口F1、F3、F5、F7に上記仮撚加工糸(捲縮率60%)を導入し、F4、F8に仮撚加工糸(捲縮率40%)を導入し、F2、F6にマルチフィラメント糸(捲縮率0%)を導入した。この編組織は、表面層のウエール列数:裏面層のウエール列数=1:0.5であって、裏面層のウエール列は、表面層のウエール列に対して、1ウエールごとに飛ばして設けられたもの(
図2の態様)であり、裏面層の各ウエール列には、2コースに亙る一つの大ニードルループと1コースのニードルループ二つとが、ウエール方向(たて方向)に交互に並んでおり、かつ、コース方向(よこ方向)に千鳥状に設けられたもの(図
3の態様)である。得られたダブル丸編地を液流染色機を用い、80℃で30分間の条件で精練処理を行った。その後、
下記染色液を用いて、130℃で30分間の条件で、染色及び吸水加工を行い、続いて仕上セットを行い、目付150g/m
2で通気度130cm
3/cm
2・secの丸編地を得た。
[染色液]
分散染料 1.0%o.m.f
(ダイスター社製、Dinix Blue UN−SE)
酢酸 0.2cc/l
分散均染剤(日華化学社製、ニッカサンソルト) 0.5g/l
吸水加工剤(高松油脂株式会社製、SR1800) 2.0%o.m.f
【0017】
仕上セット後のダブル丸編地は、裏面層に約0.3mm深さの凹凸が形成されていた。また、裏面層には約0.3mm
2の大きさの通気孔が形成されていた。このダブル丸編地を用い、ウエール方向を身長方向として、スポーツウエアを縫製した。このスポーツウエアの着用試験を行ったところ、肌離れ性が良好で、ベタツキ感の少ないものであった。
【0018】
実施例で得られたダブル丸編地に、以下の方法で引き上げ荷重を測定した。ダブル丸編地を10cm角の正方形に裁断し、その重心の表面のみに(すなわち、丸編地の重心の裏面には至らないように)縫い針を用いて、糸[ポリエステルミシン糸(株式会社クラレ製、クラレエステル「クラフテル20/4000m(商品名)」)]を通した。その後、縫い針から糸を外し、糸の両端を結んで全長約10cmの輪を作った。さらに、この糸の輪にゼムクリップを用いて輪ゴム(共和社製、「オーバンドNo.16(商品名)」)を直列に繋いだ。丸編地の裏面(肌側となる面)が、厚さ5mmで20cm角のアクリル板に当接するようにして、丸編地をアクリル板上に載置した。そして、この丸編地に3mlの水を丸編地中央部に付与した後、そのままの状態で1分間放置した。その後、輪ゴムを引張試験機[株式会社島津製作所製の「オートグラフ(型番:AGS−5kNX)」]の上把持部で把持して、垂直方向に引き上げ速度500mm/分で引き上げて、引き上げ荷重を読み取った。この測定を5回行い、5回の引き上げ荷重の平均値を求めた。この結果は、以下のとおりであった。
・実施例で得られたダブル丸編地・・・7.6cN
【0019】
引き上げ荷重が低ければ低いほど、肌離れ性がより良好になるが、本発明者らの検討によれば、引き上げ荷重が8.0cN以下であると、肌離れ性が良好でベタツキ感が少ないと感じ取れることがわかった。実施例に係るダブル丸編地は、引き上げ荷重が8.0cN以下となっており、肌離れ性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に用いる丸編地のウエール列の配置状態の一例を示した模式図である。
【
図2】本発明に用いる丸編地のウエール列の配置状態の他の例を示した模式図である。
【
図3】本発明に用いる丸編地の裏面層のニードルループ及び大ニードルループの配置状態の一例を示した模式図である。