【実施例1】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態では、
図1のフロー構成に示すような外熱式連続稼動の水素製造試験装置Pを設計・製作し、各種諸条件における実験を行った。すなわち、本装置Pは、
図1に示すように、水酸化カルシウムCa(OH)
2を投入する第1定量供給ホッパ1、脱水汚泥を投入する第2定量供給ホッパ2、水酸化ニッケルNi(OH)
2を投入する第3定量供給ホッパ3、と各定量供給ホッパ1,2,3から水酸化カルシウム、脱水汚泥、水酸化ニッケル各々が充填される二軸混練スクリュー4(混合手段)、該二軸混練スクリュー4から入口シール5及び窒素投入機6を介して、前記水酸化カルシウム、脱水汚泥、水酸化ニッケル各々が投入されて加熱処理するためのジャケット・シェル構造の外熱炉7(加熱処理手段)とを備えている。
【0022】
外熱炉7は、外気とLPGによって熱風を発生させる熱風発生炉8に接続され、更に、外熱炉7は、散水スプレー式で、且つ、冷却水循環式の凝縮器9(減温除湿手段)及び排気ファン10に接続されている。また、外熱炉7は、出口シール11を介して、燃焼後の処理物をサンプルとして回収する。前記凝縮器9は、炭化炉排気ダンパ14及び水エゼクタ15を介して、排気と排水が可能な循環水槽13に接続され、また、凝縮器9は、生成ガスの排気と分析を同時に行うための調整ポンプ12に接続されている。
【0023】
<処理物の流れ>
原料となる水酸化カルシウム、脱水汚泥、水酸化ニッケルは、それぞれの定量供給ホッパ1,2,3に充填され、不図示の切出し機にて実験条件のモル比率になる重量となって切出され、二軸混練スクリュー4に充填される。原料は二軸混練スクリュー4にて順に運ばれ、ピンスクリュー部分4aにて解砕・混練され、良く混練された状態で外熱炉へ供給される。外熱炉7へ供給された原料は当該外熱炉7のジャケットの熱風と熱交換して昇温され、反応が進み水素ガス(H
2)・メタンガス(CH
4)・一酸化炭素(CO)・二酸化炭素(CO
2)・酸素(O
2)等の各種ガスを発生させる。処理後、サンプルは処理品として回収される。
【0024】
<熱源ガスの流れ>
供給される熱風は熱風発生炉8に外気が取込まれ、LPGにより所定の温度まで昇温される。昇温後、外熱炉7のジャケットに供給され、外熱炉7のシェルと熱交換し、温度の下がった熱風が排気ファン10により排気される。
【0025】
<生成ガスの流れ>
外熱炉7内で反応により生成したガスは多量の水蒸気を含んでいるため、凝縮器9で減温除湿後、水エゼクター15により吸引され水を潜った後、大気解放される。また、生成ガスの一部を調整ポンプ12で吸出し分析計へ導入し、連続的にガス分析を行う。
【0026】
<生成物の評価>
図2には、水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの混合量が水素発生量に与える影響が示されている。水酸化カルシウムの混合量において、水酸化ニッケルの混合量を0molから、0.1mol、1molと増加させると、水素発生量も増加する。また、水酸化ニッケルを入れない0molの時は、水酸化カルシウムの混合比を増加させると水素発生量は単調に増加する。一方、水酸化ニッケルを0.1molと1mol混合したときは、水酸化カルシウムが各々1mol、3molで水素の発生量が単位当たり38g/kg、74g/kgと最大になり、水酸化ニッケルの混合量に対して、最適な水酸化カルシウムの混合量が存在することが解った。
【0027】
<乾燥汚泥を使用した場合の生成物の評価>
図3に示すように、出口堰を設けたことにより、滞留量が増えたため、機内での処理時間が延び、発生ガス量に大幅な改善が見られた。すなわち、加熱処理温度700〜850℃、合計供給量12kg/hの時、堰無では、発生ガス量7.0L/min、単位当たりの水素発生量が12.9g/kg、水素ガス濃度61.35vol%であったのに対して、堰有では、発生ガス量23.1L/min、単位当たりの水素発生量が42.7g/kg、水素ガス濃度61.37vol%であった。よって、以後の試験は堰を付けて行った。また、ガス中の水素濃度には大きな差が見られなかったので、ガス中の水素濃度は処理温度に依存すると考えられる。
【0028】
<各原料の配合比率の影響の明確化>
処理温度を700〜850℃とし、汚泥を1molとした時の配合比率と合計供給量を変化させて試験を行った。その結果、
図4に示すように、水酸化カルシウムが1mol、又は、水酸化ニッケルが0.01molの時は水素発生量が大幅に下がっており、水酸化カルシウムが2mol程度、水酸化ニッケルは0.5mol程度必要だということが判明した。しかし、単位当たりの水素発生量としてはまだ低く、更なる操作が必要である。
【0029】
<原料への水添加の影響の明確化>
基礎試験では水の添加により、水素発生量が2.5倍程度になるという結果があったことから、本試験機に置いても、二軸混練スクリュー4の混練部の手前、又は、側近(例えばピンスクリュー部分4a)に水滴下装置(
図1参照)を設け、定量供給を行った。
【0030】
図5(a)に水添加の影響の明確化の実験条件を示す。すなわち、その条件とは、加熱処理温度が700〜850℃、汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2:0.5(モル比率)、合計供給量が12kg/h、堰有、水供給量が1.25kg/h(水添加率50%)及び0.6kg/h(水添加率25%)である。
【0031】
その結果、
図5(b)に示すように、時刻14:20より汚泥無水分重量の50%に相当する1.25kg/hの水を供給し変化を見たが、急激な水分蒸発量の増加のためか、機内の圧力バランスを崩し、リーク空気が増えた。そのため、分析計入口排気流量の増加が見られたが、それに伴い酸素濃度の上昇を招き、分析計で危険域のガスをサンプリングしたため、窒素パージを繰り返すこととなった。その後、時刻15:43に水の供給量を汚泥無水分重量の25%に相当する0.6kg/hに下げたが、崩れた圧力バランスは復旧できなかった。水を供給したことによる圧力バランスの変化は蒸発水分量の増加に伴い増加する必要供給熱量に試験機の供給熱量が対応できていない可能性があるため、供給量を半分に下げ、
図6(a)に示す水添加の影響の明確化実験条件にて試験を行った。すなわち、その条件とは、加熱処理温度が700〜850℃、汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2:0.5(モル比率)、合計供給量が6kg/h、堰有、水供給量が0.16kg/h(水添加率15%)及び0.52kg/h(水添加率50%)である。
【0032】
その結果、
図6(b)に示すように、時刻13:23より汚泥無水分重量の15%に相当する0.16kg/hの水を供給し変化を見たが、一時的に排気流量は上がったが、水素濃度が下がり、時刻16:00頃には変化が収まり、未供給時と同程度の分析入口排気流量及び水素濃度となった。よって、時刻16:14より水の供給量を汚泥無水分重量の50%に相当する0.52kg/hに上げたが、同じく一時的に流量の増加及び水素濃度の低下が起こった。その後、圧力バランスを崩し、暫く窒素パージによるハンチングを起こした後、持ち直したが、未供給時と同程度の数値で収まった。
【0033】
これにより、連続式の反応においては水の供給による水素発生量の増加は確認できなかった。これは、常に供給される脱水汚泥より発生する多量の蒸気が基礎研究での水滴下に相当する効果を発揮しており、それ以上の水の供給は反応に寄与しないためと考えられる。
【0034】
<連続式における反応の最適化>
上記した原料への水添加の影響の明確化において、反応に必要な熱量が当初想定していた熱量より多く必要としている可能性が見受けられた。よって、本実施形態においては、加熱処理温度700〜850℃、合計供給量6kg/h、堰有を基準とし、基礎研究にてランニングコストに関して最も安価な触媒使用量の配合比率は、汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2:0.5(モル比率)と示されたので、これを基に最適化を行った。
【0035】
汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2:0.5(モル比率)の時、二酸化炭素濃度が高い結果となったので、反応を促進させるために、水酸化カルシウムを2.5molの配合比率になるように切出し量を調整した。しかし、汚泥の切出し量に変動があり、供給量が増えてしまったため、
図7に記載されたように、汚泥が増えた時の配合比率で最適化を行った。この時、反応が促進され、水素濃度の上昇が見られた。すなわち、汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2.2:0.45(モル比率)で、合計供給量6.82kg/h、発生ガス量14.1L/minの時、単位当たりの水素発生量が43.3g/kg、水素ガス濃度66.2vol%となった。また、汚泥供給量が増えたために発生ガス量が増えたことも考えられるが、水素発生量が増加しているので、反応が促進されたといえる。
【0036】
次に、水酸化カルシウムを3.0molの配合比率になるように切出し量を調整したが、上記と同様に汚泥の供給量が増えていたため、低い比率となった。しかしながら、配合比率を上げたことにより、二酸化炭の濃度の減少は見られたが、水素発生量に関しては微減しており、この範囲で発生のピークがあると考えられる。これは基礎研究に用いられた固定層反応器の傾向が、連続試験機で同様に確認されたので、今後も固定層反応器と同様の結果を実機へと繋げて行くことが可能であるという証左が得られた。この結果により、得られた配合比率と水素発生量を基に実用プラントの設計を行うことが可能となる。
【0037】
<連続試験からの主な結論>
本実施形態では、処理温度700〜850℃、配合比率が汚泥:水酸化カルシウム:水酸化ニッケル=1:2.2:0.45(モル比率)の時、水素発生量43.3g/kgの結果が得られた。但し、小型試験機のため、外乱(リーク空気等)による影響が大きく、外気の流入により窒素濃度が上がり、水素濃度が下がった。このため、上記した水素製造試験装置Pにおいて、外乱の影響を抑えるために装置P全体のシール性の更なる改良を行うことにより、高効率で高純度な水素を製造する実用プラントの導入(連続稼動による水素製造装置の製造)が可能となる。
【0038】
<実用プラントの導入効果検討からの結論>
従来の化石燃料からの副生水素を地域のバイオマス資源である下水汚泥から製造した水素に転換することは、エネルギー・セキュリティや地域のエネルギーの自立や雇用創出の点から重要である。因みに、弘前市から採取した下水汚泥は、炭素44.62%、水素6.69%、窒素4.80%、酸素30.10%、硫黄0.49%、の固形分の組成に、含水率が75.1%というようにセルロースの組成に近い分子量であることから、これを基準として水酸化カルシウムと水酸化ニッケルの混合比率を決定することが可能である。
【0039】
ここで、
図8において、製造コスト1=(水酸化カルシウムと水酸化ニッケル原料購入費用+投入一次エネルギーコスト)/水素回収量、製造コスト2=(水酸化カルシウムと水酸化ニッケル原料購入+投入一次エネルギーコスト+50tプラントの運転管理費・修繕費・焼去灰処分費・減価償去費(35年均等))/水素回収量、エネルギー収支=(水素の高位発熱量×水素回収量)/投入一次エネルギー、エネルギー回収率=(水素の高位発熱量×水素回収量)/(下水汚泥の有機成分のもつエネルギー+投入一次エネルギー)、下水汚泥処理コスト1=(水酸化カルシウムと水酸化ニッケル原料購入+投入一次エネルギーコスト)/処理する下水汚泥量、下水汚泥処理コスト2=(水酸化カルシウムと水酸化ニッケル原料購入+投入一次エネルギーコスト+50t/日プラントの運転管理費・修繕費・焼去灰処分費・減価償却費(35年均等))/処理する下水汚泥量、である。