(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
  例えば自動車の製造工程においては、車体に対する塗装工程の後に、塗装面の表面状態を検査し、塗装面にブツなどの塗装欠陥を検出した場合、当該欠陥が許容され得るか否かを判定する検査工程が設けられている。
【0003】
  この種の検査工程では、従来、作業者の目視により塗装欠陥を特定し、然る後、スケール等で実際に上記欠陥の寸法を測定し、測定値を判定基準と比較することで、上記欠陥の許否を判定するようにしている。
【0004】
  しかしながら、この方法だと、正確に寸法を読み取るのに長時間を要するため、作業効率が決して良好であるとはいえなかった。また、手作業による採寸だと、作業者によって読取り値のばらつきが大きく、十分な測定精度を確保しているとは言い難い状況であった。
【0005】
  ここで、例えば特許文献1には、検査面としての塗装面に光を照射して、塗装面で反射した光をカメラで受光して画像を作成すると共に、作成した画像の明度並び色調について所定の解析を行うことにより、塗装面上の欠陥の有無並びにその欠陥の種別を判別するための方法が提案されている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  しかしながら、特許文献1に記載の方法では、カメラと塗装面との距離を正確に保ちながら撮影を行うことは難しいため、たとえ特許文献1に記載の構成を利用したとしても、塗装欠陥の寸法を正確に測定することは難しい。また、光源とカメラ、及び解析装置を用いて自動的に塗装欠陥を検出してその寸法を測定する場合には、検査対象となる塗装面を広範囲にわたって漏れなく走査する必要が生じる。そのため、車両のように大型なワークの表面を検査対象とする場合には、検査を短時間で終わらせることは難しい。また、上述の構成で車両の塗装面を全面にわたって検査するためには広範囲を高速に移動可能なロボットアームが必要になるため、必然的に設備コストの高騰を招く。
【0008】
  上述した問題は何も車両の塗装面を検査する場合に限ったことではなく、車両以外の塗装面に生じた塗装欠陥、あるいは塗装面以外のワーク表面に生じた何らかの不具合を検査する場合にも同様に起こり得る。
【0009】
  以上の事情に鑑み、本発明により解決すべき課題は、高精度かつ短時間に不具合の許否を判定する方法を低コストに提供することにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0010】
  前記課題の解決は、本発明に係る不具合の許否判定方法によって達成される。すなわち、この判定方法は、ワーク表面の不具合が許容され得るものであるか否かを判定するための方法であって、不具合を囲むように枠状体をワーク表面に取付ける取付け工程と、枠状体の全体が映り込むようにワーク表面を撮影装置で撮影する撮影工程と、撮影で得た画像中の枠状体で囲まれた領域を解析装置で解析することで、不具合の寸法を算出する寸法算出工程、及び寸法算出工程で得た不具合の寸法に基づき、不具合が許容され得るものであるか否かを判定する許否判定工程とを具備する点をもって特徴付けられる。
【0011】
  このように、本発明では、ワーク表面の不具合を囲むように枠状体を取付け、ワーク表面を撮影して得た画像中の枠状体で囲まれた領域を解析装置で解析するようにしたので、当該画像の解析範囲を枠状体で囲まれたワーク表面の一部(不具合が存在する小領域)に限定して、不具合の寸法算出のための解析を確実に実施しつつ、解析に要する時間を短縮することができる。従って、車体の如き大型のワークが検査対象となる場合においても、その表面の検査を効率よく短時間で行うことができ、例えばライン上の全数検査にも対応することが可能となる。また、不具合を囲むように枠状体をワーク表面に取付けて、かつこの枠状体の全体が映り込むように撮影することで、撮影により得た画像中の枠状体の形状やサイズに基づき、上記画像中のワーク表面の傾きや距離を容易にかつ正確に補正することができる。従って、不具合の寸法を精度よく測定することができ、信頼性の高い不具合の許否判定を行うことが可能となる。加えて、上述の方法によれば、枠状体の全体が映り込むようにさえ撮影できればよいので、例えば作業者が向きや距離などを気にすることなく撮影装置を手にとって適当に撮影することができる。よって、ロボットアームのような高価な移動手段を省略して、検査に必要な設備を比較的低コストに構築することが可能となる。
【0012】
  また、本発明に係る許否判定方法は、撮影装置と解析装置、及び画像表示部とを具備した携帯型情報端末を用いて、ワーク表面の撮影及び前記不具合の寸法算出を行うものであってもよい。
【0013】
  このように、撮影装置と解析装置、及び画像表示部として、携帯型情報端末(携帯電話やスマートフォン、タブレット、ノートパソコン、ウェアラブルコンピュータなどがその代表例)を用いることで、不具合を検出した作業者がその場で、不具合の撮影から寸法算出、及び許否判定までの一連の処理を全て行うことができる。よって、例えばライン上で検査を行い、迅速に手直しの要否を判断することが可能となる。これにより、生産性(検査速度)の更なる向上が見込まれる。また、枠状体で囲まれた領域を解析範囲とすることで、携帯型情報端末が通常有する解析能力であっても、実用に足る精度及び速度で解析及び検査を行うことが可能となる。
【0014】
  また、上記構成の携帯型情報端末を用いて撮影及び解析を行う場合、本発明に係る許否判定方法は、携帯型情報端末の画像表示部に、撮影装置を介して取得したワーク表面の映像を表示し、映像中の枠状体に囲まれた領域にタッチすることで撮影を行うものであってもよい。
【0015】
  このように撮影を行うようにすれば、例えばタッチした箇所にフォーカス(焦点)を合わせた状態で撮影することができる。そのため、枠状体で囲まれた領域内の不具合又はその近傍をタッチすることで、画像中の不具合が表示された部分における画質を高めて、解析精度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0016】
  また、本発明に係る許否判定方法は、画像表示部に、撮影装置で撮影して得たワーク表面の画像を表示し、画像中の枠状体で囲まれた領域にタッチすることで、タッチした箇所から解析装置による画像の解析を開始するものであってもよい。
【0017】
  このように、撮影して得た画像につき、画像表示部にタッチした箇所から解析を開始するようにすれば、作業者が目視で画像中の不具合にタッチすることで、不具合が表示されている部分を優先して解析することができる。従って、不具合の寸法を算出するのに要する時間を更に短縮することが可能となる。
【0018】
  あるいは、携帯型情報端末の画像表示部に、撮影装置を介して取得したワーク表面の映像を表示し、映像中の枠状体に囲まれた領域にタッチすることで撮影を行う場合、本発明に係る許否判定方法は、映像中の枠状体で囲まれた領域にタッチすることで、撮影を行うと共にタッチした箇所から解析装置による画像の解析を開始するものであってもよい。
【0019】
  このように、画像表示部へのタッチ操作で、ワーク表面の撮影と、撮影して得た画像の解析を開始するようにすれば、撮影動作と解析開始動作を一回の操作(タッチ操作)で済ませることができるので、更なる作業時間の短縮化が可能となる。もちろん、この場合も、作業者が目視で映像中の不具合にタッチすることで、撮影して得た画像のうち不具合が表示されている部分から優先して解析することができる。従って、これによっても、不具合の寸法を算出するのに要する時間を短縮することが可能となる。
 
【発明の効果】
【0020】
  以上のように、本発明によれば、高精度かつ短時間に不具合の許否を判定する方法を低コストに提供することが可能となる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0022】
  以下、本発明の一実施形態に係る不具合の許否判定方法を
図1〜
図9に基づき説明する。
 
【0023】
  図1は、本発明の一実施形態に係る許否判定方法のフローチャートを示している。
図1に示すように、この許否判定方法は、ワーク表面の不具合を検出する不具合検出工程S1 と、ワーク表面に枠状体を取付ける取付け工程S2と、ワーク表面を撮影する撮影工程S3と、不具合の寸法を算出する寸法算出工程S4、及び不具合の許否を判定する許否判定工程S5とを具備する。
 
【0024】
  このうち、撮影工程S3は、本実施形態では、ワーク表面の映像を画像表示部に表示する映像表示ステップS31と、画像表示部に映像として表示されたワーク表面を撮影する撮影ステップS32とを有する。
 
【0025】
  また、寸法算出工程S4は、本実施形態では、撮影して得たワーク表面の画像の傾きを補正する傾き補正ステップS41と、ワーク表面の画像のサイズを補正するサイズ補正ステップS42と、画像中の不具合を検出する不具合検出ステップS43と、不具合の実際の寸法を算出する実寸法算出ステップS44とを有する。
 
【0026】
  ここで、検査対象となるワークは、本実施形態では
図4に示すように、塗装工程を終えた車体1であり、その表面、すなわち塗装面2がワーク表面となる。
 
【0027】
  また、本実施形態では、
図6に示すように、車体1の塗装面2を撮影するための撮影装置11と、撮影して得た画像を解析するための解析装置12、及び画像表示部13を一体的に有する携帯型情報端末10を作業者が手に持って上述した一連の工程、特に撮影工程S3及び寸法算出工程S4を行うものとする。以下、各工程S1〜S5を順に説明する。
 
【0028】
(S1)不具合検出工程
  まず、
図4に示すように、ライン5上の車体1の塗装面2における不具合3を検出する。本実施形態では、作業者(図示は省略)が目視により塗装面2の不具合3を検出する。
 
【0029】
(S2)取付け工程
  塗装面2の不具合3を検出した後、検出した不具合3を囲むように枠状体4を塗装面2に取付ける(
図5を参照)。本実施形態では、目視により不具合3を検出した作業者が枠状体4の取付けを行う。なお、この際、枠状体4の取付け位置は、不具合3が枠状体4で囲まれるように、言い換えると、塗装面2のうち枠状体4で囲まれた領域2aに不具合3が存在する限りにおいて任意である。また、枠状体4の取付け姿勢についても同様に任意である。
 
【0030】
(S3)撮影工程
  このようにして塗装面2に枠状体4を取付けた後、枠状体4の全体が映り込むように塗装面2を撮影装置11で撮影する。本実施形態では、まず撮影装置11を撮影対象となる塗装面2に向けて、携帯型情報端末10の画像表示部13に、撮影すべき塗装面2の映像を表示する(映像表示ステップS31)。この際、枠状体4の全体が画像表示部13に表示されるように上記映像を表示することで、画像表示部13に、枠状体4と、枠状体4で囲まれた領域2a中の不具合3の双方が表示された状態となる(
図6を参照)。
 
【0031】
  このように画像表示部13に枠状体4と不具合3を表示した状態で、撮影装置11による塗装面2の撮影を行う(撮影ステップS32)。これにより、直前のステップS31で画像表示部13に表示した映像を画像(静止画像)として取得する。すなわち、枠状体4の全体及び不具合3が映り込んだ塗装面2の画像を取得する(
図6を参照)。なお、撮影装置11による撮影操作の種別は特に制限されない。例えば携帯型情報端末10の本体操作ボタンの押圧動作により撮影を行ってもよい。本実施形態では、携帯型情報端末10の画像表示部13を作業者の指でタッチすることで(
図6中、二点鎖線で示す動作)撮影を行うものとする。この場合、画像表示部13としてはタッチパネルとして機能し得るものが望ましい。また、この際、
図6に示すように、画像表示部13のうち枠状体4で囲まれた領域2aが表示された箇所をタッチしてもよく、枠状体4で囲まれた領域2aのうち不具合3が表示された箇所をタッチしてもよい。なお、本明細書でいうタッチ動作には、シングルタップ、ダブルタップ、ロングタップ、ドラッグ、フリック、ピンチアウトなどタッチパネルにおける公知の操作態様が含まれる。
 
【0032】
(S4)寸法算出工程
  上述のようにして、塗装面2の不具合3及び枠状体4を含む画像を取得した後、当該不具合3の寸法を算出する。本実施形態では、まず撮影して得た塗装面2の画像(
図6)に対して傾き補正を施す(傾き補正ステップS41)。この補正は、枠状体4の画像中の形状を本来の形状(例えば
図5に示す形状)に戻すように、画像全体の傾きを補正する。これにより、撮影した方向に関係なく、塗装面2の撮影箇所を正面から見た場合の画像が得られる(
図7を参照)。この際、枠状体4に囲まれた領域2aに存在する不具合3の形状もそれを正面から見た場合の形状に補正される。
 
【0033】
  次に、必要に応じて、画像のサイズを補正する(サイズ補正ステップS42)。この補正は、例えば枠状体4の画像中のサイズ(縦寸法又は横寸法)が実際のサイズとして画像表示部13に表示されるよう、画像を拡大又は縮小(通常は拡大)する。これにより、画像表示部13に、枠状体4及び不具合3が実際のサイズに対応した大きさとなって表示される(
図8を参照)。以上の画像に対する補正は何れも解析装置12により実施される。
 
【0034】
  このようにして画像の補正を行った後、画像中の不具合3を検出する(不具合検出ステップS43)。正確には、解析装置12により画像中の不具合3の輪郭を検出する。この検出方法には種々の画像処理手法が適用でき、例えば画像の明度につき所定のしきい値で二値化を施すことで、不具合3の輪郭を検出可能としている。なお、この際、解析装置12は、検出した不具合3の輪郭を、予め記憶されている複数の種類の不具合の代表的な輪郭と比較し、形状的に最も近い種類の不具合を上記検出した不具合3の種類として登録することも可能である。不具合3の種類によって、後述する許否判定工程S5で用いる寸法基準が異なるためである。
 
【0035】
  このようにして画像中の不具合3(の輪郭)を取得した後、不具合3の実際の寸法を算出する(実寸法算出ステップS44)。この際、寸法の算出は、同じ画像中に映り込んだ枠状体4の実際の寸法に基づいて行われる。すなわち枠状体4の実際の寸法に、画像中における不具合3の寸法と枠状体4の寸法との比率を乗じた値を、不具合3の実際の寸法として取得する。なお、この際、取得すべき(算出すべき)不具合3の寸法は、不具合3の種類によっても異なり、例えば
図6等に示す円形状(だ円形状)の不具合3であれば、この不具合3に外接する仮想円(
図9中、二点鎖線で示す円)の直径dをもって、当該不具合3の寸法(代表寸法)とする。
 
【0036】
(S5)許否判定工程
  以上のように不具合3の寸法を算出、取得した後、取得した寸法が許容され得るものであるか否かを判定する。この場合、許容され得るか否かの寸法基準は、不具合3の種類に応じて予め所定の値に設定されており、寸法算出工程S4で算出した寸法の大きさが例えば上記寸法基準よりも大きい場合には、当該不具合3は許容され得るものと判定される。あるいは、算出した寸法の大きさが上記寸法基準以下の場合には、当該不具合3は許容され得ないものと判定され、手直し等の工程に送られる。なお、上述した寸法基準は、任意の値に設定変更が可能である。
 
【0037】
  また、上述した撮影後の一連の工程(寸法算出工程S4と許否判定工程S5)は、例えばこれら一連の工程に対応するプログラムを解析装置12に入力しておき、撮影工程S3で取得した画像に対して自動的に上述した一連の工程S4,S5を解析装置12により実施することが可能である。
 
【0038】
  このように、本発明では、塗装面2の不具合3を囲むように枠状体4を取付け、塗装面2を撮影して得た画像中の枠状体4で囲まれた領域2aを解析装置12で解析するようにしたので、当該画像の解析範囲を枠状体4で囲まれた塗装面2の一部(不具合3が存在する小領域)に限定して、不具合3の寸法算出のための解析を確実に実施しつつ、解析に要する時間を短縮することができる。従って、車体1の如き大型のワークが検査対象となる場合においても、その表面となる塗装面2の検査を効率よく短時間で行うことができ、例えばライン上の全数検査にも対応することが可能となる。また、不具合3を囲むように枠状体4を塗装面2に取付けて、かつこの枠状体4の全体が映り込むように撮影することで、撮影により得た画像中の枠状体4の形状やサイズに基づき、上記画像中の塗装面2の傾きや距離を容易にかつ正確に補正することができる。従って、不具合3の寸法を精度よく測定することができ、信頼性の高い不具合3の許否判定を行うことが可能となる。加えて、上述の方法によれば、枠状体4の全体が映り込むようにさえ撮影できればよいので、例えば作業者が向きや距離などを気にすることなく撮影装置11を手にとって適当に撮影することができる。よって、ロボットアームのような高価な移動手段を省略して、検査に必要な設備を比較的低コストに構築することが可能となる。
 
【0039】
  特に、本実施形態のように、撮影装置11と解析装置12、及び画像表示部13とを具備した携帯型情報端末10を用いて、塗装面2の撮影及び不具合3の寸法算出を行うようにすれば、不具合3を検出した作業者がその場で、不具合3の撮影(工程S3)から寸法の算出(工程S4)、及び許否判定(工程S5)までの一連の処理を全て行うことができる。よって、例えばライン上で検査を行い、迅速に手直しの要否を判断することが可能となる。これにより、生産性(検査速度)の更なる向上が見込まれる。
 
【0040】
  以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
 
【0041】
  例えば、上記実施形態では、撮影操作の一例として、携帯型情報端末10の画像表示部13に、撮影装置11を介して取得した塗装面2の映像を表示し、映像中の枠状体4に囲まれた領域2aにタッチすることで撮影を行う操作(
図6中、二点鎖線で示す操作)を例示したが、この場合、タッチした箇所にフォーカス(焦点)を合わせることも可能である。このようにすれば、例えば
図6に示すように枠状体4で囲まれた領域2a中の不具合3を指でタッチすることで、画像中の解析すべき不具合3が表示された部分における画質を高めて、その後の解析精度の更なる向上を図ることが可能となる。
 
【0042】
  また、上記実施形態では、撮影工程S3で取得した画像に対する寸法算出工程S4及び許否判定工程S5を、解析装置12により自動的に実施する場合を例示したが、もちろんその一部を作業者が行うことも可能である。
 
【0043】
  例えば、上記実施形態では、撮影工程S3で得た画像に対して解析装置12で解析を行い、上記画像中の不具合3の輪郭を解析装置12で自動的に検出する場合を例示したが、この検出に係る処理の一部を作業者が代行することも可能である。すなわち、
図6等に示すように枠状体4の全体を含む画像を取得した後、画像表示部13に表示された画像中の不具合3を作業者が指でタッチして、タッチした箇所から画像の解析を開始するようにしてもよい。このように画像の解析を開始すれば、枠状体4で囲まれた領域2aのうち明らかに不具合3が存在しない領域の解析を行う無駄を省いて、効率よく不具合3の輪郭を検出することが可能となる。従って、不具合3の寸法を算出するのに要する時間を更に短縮することが可能となる。
 
【0044】
  なお、この際、画像解析を開始するためのタッチ操作を、画像撮影を行うためのタッチ操作と兼ねるようにしてもよい。すなわち、画像表示部13へのタッチ操作で、塗装面2の撮影と、撮影して得た画像解析をタッチした箇所から開始するようにすれば、撮影と解析開始動作を一回の操作(タッチ操作)で済ませることができる。これにより、更なる作業時間の短縮化が可能となる。
 
【0045】
  もちろん、不具合3の種類、状態によっては、解析により画像中から不具合3の輪郭を検出することが非常に難しい場合も考えられるため、例えば解析装置12による不具合3の輪郭の自動検出が的確に行われなかった場合には、
図9に示すように、画像中の不具合3の輪郭上の複数点を作業者が指でタッチするようにしてもよい。この場合、予め指でタッチした位置や回数に基づいて、不具合3の代表的な実寸法を算出するのがよい。
 
【0046】
  また、寸法算出工程S4に関し、上記実施形態では、撮影により得た画像の傾きを補正した後(工程S41)に、画像のサイズを補正し(工程S42)、然る後、画像中から不具合3を検出する(工程S43)ようにしているが、もちろんこの順序に限る必要はない。例えば撮影して得た画像に対してそのサイズを補正した後、画像の傾きの補正するようにしてもよい。あるいは、必要に応じて、画像のサイズ補正ステップS42等を省略することも可能である。
 
【0047】
  もちろん、画像を取得した後の処理に限らず、画像取得時(すなわち撮影時)に、取得すべき画像の調整を行うようにしてもよい。すなわち、撮影装置11で塗装面2を撮影する際、枠状体4で囲まれた領域2aのサイズが、撮影により取得すべき画像のサイズと等しくなるよう、画像を枠状体4で囲まれた領域2aに限定して取得してもよい。取得すべき画像の形状と枠状体4の形状とが異なる場合には、例えば枠状体4の縦寸法又は横寸法の何れか一方を取得すべき画像の縦方向サイズ又は横方向サイズに合わせるようにしてもよい。
 
【0048】
  また、許否判定工程S5に関し、作業者が選択すべき項目として、不具合3の種類、ワーク表面の種類(塗装面2の種類、あるいは車体1等のワークの種類)、及び検査ゾーン(例えばワークが車体1の場合、ドアパネル、フード、ルーフなど何れの部位か)を画像表示部13上で選択し、判定基準(寸法基準)を決定するようにしても構わない。これによっても、許否判定に要する時間を短縮することが可能となる。
 
【0049】
  また、枠状体4の形状に関し、上記実施形態では、正方形状をなすものを例示したが、もちろん枠状体4は、不具合3を囲むように塗装面2に取付け可能な限りにおいて任意の形状を採ることが可能である。例えば正方形以外の四角形や多角形でもよく、あるいは円形であってもよい。
 
【0050】
  また、以上の説明では、撮影装置11で撮影して得た画像を、撮影装置11を具備した携帯型情報端末10の画像表示部13に表示する場合を例示したが、もちろんこれ以外の形態を採るようにしてもよい。例えば撮影装置11で撮影して得た画像を、ネットワークを通じて、撮影装置11(作業者)から離れた位置にあるパソコンなどの情報端末に送って、当該情報端末の前の作業者が画像を確認して解析により寸法測定(工程S4)及び許否判定(工程S5)を実施することも可能である。
 
【0051】
  なお、想定される塗装面2上の不具合3としては、塗料ブツの他、ほこりブツや、シーラーブツ、スパッタブツ、シーラーブツ、塗料の垂れ、塗料の弾き、スケ等が挙げられる。もちろん、上記以外の種類の不具合3であっても本発明を適用することは可能である。
 
【0052】
  また、以上の説明では、本発明に係る許否判定方法として、画像中の不具合3の寸法を算出し(工程S4)、然る後、算出した不具合3の寸法に基づき、不具合3が許容され得るものであるか否かを判定する場合を例示したが、これ以外の態様で不具合3の許否を判定することも可能である。例えば、不具合3の色調や明度などの寸法以外の特性を示す客観的情報を取得し、取得した客観的情報に基づき、不具合3の許否を判定することも考えられる。この場合も、例えば、枠状体4による形状補正及び距離補正効果が期待できるだけでなく、枠状体4で囲まれた領域2aに焦点を合わせて撮影できる(画像を取得できる)ことで、不具合3を含む可能性の高い領域の画質を向上させてまたは画質の乱れを極力抑えて、精度よく色調などの不具合3の特性に関する客観的情報を取得することが可能となる。よって、許否判定結果の信頼性を高めることが可能となる。
 
【0053】
  また、以上の説明では、車体1の塗装面2を検査対象とした場合を例示したが、もちろんこれ以外のワーク表面を本発明の検査対象とすることも可能である。また、この際、検査対象となるワーク表面は塗装面2には限られない。塗装欠陥以外の不具合3を検査対象とし、その寸法を算出した後、算出寸法に基づき許否の判定を行うことも可能である。