(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基紙の一方の面のみに、無機顔料とバインダーとを含有するインク受容層を備えるインクジェット記録用紙であって、前記インク受容層には、無機顔料100質量部に対して30〜55質量部のバインダーを含有し、前記バインダー中の10〜55質量%がポリビニルアルコールであり、前記ポリビニルアルコールとして、部分けん化型ポリビニルアルコールと完全けん化型ポリビニルアルコールとを質量比で1:20〜1:3の割合で含み、当該ポリビニルアルコールの平均重合度が800〜1300であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
前記バインダーには、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョンの群から選択される1種類以上が含まれることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録用紙。
基紙の一方の面のみに、無機顔料とバインダーとを含有する塗工液を塗工してインク受容層を設けるインクジェット記録用紙の製造方法であって、前記塗工液には、無機顔料100質量部に対して30〜55質量部のバインダーを含有し、前記バインダー中の10〜55質量%がポリビニルアルコールであり、前記ポリビニルアルコールとして、部分けん化型ポリビニルアルコールと完全けん化型ポリビニルアルコールとを質量比で1:20〜1:3の割合で含み、当該ポリビニルアルコールの平均重合度が800〜1300であることを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
前記バインダーには、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョンの群から選択される1種類以上が含まれることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一つに記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
【背景技術】
【0002】
水性インクジェットプリンターに適するインクジェット記録用紙に求められる特性は、インク吸収速度が速い、印字濃度が高い、滲みが少なくドット再現性が良好であることなどが挙げられる。そのため、インクジェット記録用紙は、合成非晶質シリカなどの比表面積の大きい顔料と水溶性バインダーを主成分とするインク吸収性に富んだインク受容層を有している。
【0003】
インクジェット記録用紙は、巻取の形態かもしくは、平版に断裁し山積みされた形態で倉庫内に保管される。保管状況や包装形態にもよるが、保管中にインクジェット記録用紙同士が貼り付き、ブロッキングを引き起こすことがある。このようなブロッキングが発生すると、印刷機へ供給する際などに給紙不良を引き起こす場合がある。
【0004】
インクジェット記録用紙のブロッキングを改善する方法として、インク受容層の層厚より3〜60μm大きい平均粒子径を有する顔料を含有させたインクジェット記録媒体(例えば、特許文献1を参照。)、インク受容層中の蛍光染料とバインダー部数を適正の範囲に限定したンクジェット記録媒体(例えば、特許文献2を参照。)が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2で開示されたインクジェット記録媒体は、インクジェット印刷時に滲みが発生しやすく、必ずしもインクジェット記録適性を満足するものではなかった。
【0006】
また、インクジェット記録用紙においては、インク受容層を基紙の両面に設ける場合と、片面にのみ設ける場合が有る。インクジェット記録用葉書用紙など支持体の片面にのみインク受容層を設けたインクジェット記録用紙は、インク受容層を設けた面(以降、「表面」と記載することがある)の反対面(以降、「裏面」と記載することがある)にオフセット印刷などによるプレ印刷を行うことも多い。この場合、用紙が印刷機内で搬送される際に、インク受容層が、紙押さえ板や紙押さえロール、搬送ベルト等で擦られる。インク受容層の強度が低い場合、このような擦過により脱落物が生じ、脱落物は最終的にオフセット印刷インキを用紙に転写するためのブランケットへ堆積し、堆積が進むとオフセット印刷に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、インク受容層中のバインダーを増すことによりインク受容層の強度を高め、擦過による脱落物の減少を図ることが考えられる。しかし、インク受容層中のバインダーを増加させると前述のブロッキングが発生し易くなる。また、インクジェット記録用紙として必要な特性であるインク吸収性が妨げられ、滲みが発生し易くなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0017】
本発明に用いる基紙は、木材パルプを主成分とする。木材パルプとしては、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)若しくはNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ、GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)若しくはCGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ、DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ、又はケナフ、バガス、竹若しくはコットンなどの非木材パルプを用いることが可能である。これらのパルプは、単独又は任意の割合で混合して使用することができる。また、本発明の目的とする効果を損なわない範囲において、合成繊維を更に配合することができる。環境保全の観点から、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Totally Chlorine Free)パルプ、DIP、植林木から得られるパルプを用いることが好ましい。
【0018】
木材パルプは、離解機及び叩解機を使用して叩解することにより適切な叩解度(フリーネス)を有するパルプスラリーとする。フリーネスは、350〜580mlが好ましく、380〜550mlがより好ましい。350ml未満では透気性が悪化し、インクジェットインクの吸収性が妨げられ、滲み易くなる場合がある。580mlを超えると基紙の強度が不足し、裏面のオフセット印刷によるプレ印刷時に紙剥け、粉落ちなどの問題が発生する場合がある。したがって、本発明において使用されるパルプとしては、例えば、パルプ中80〜100質量%のLBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)を含有する380〜550mlCSFのECFパルプなどである。
【0019】
パルプスラリーには、紙力増強剤を配合することが好ましい。紙力増強剤を配合することによって、インクジェット記録用紙の裏面にオフセット印刷を施した際に、紙剥けや粉落ちが発生するのを抑制することができる。ここで、紙力増強剤としては、従来公知の紙力増強剤を使用することが可能である。例えば、澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤、湿潤紙力増強剤などが例示でき、単独又は併用して用いられる。本発明においては、澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤が好ましい。澱粉系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤は、基紙の透気性を妨げにくいため、インクジェット印刷におけるインクジェットインクの吸収性が良好となる。澱粉系紙力増強剤は、例えば、カチオン化澱粉、両性澱粉、グラフト化澱粉、アルファ化澱粉である。
【0020】
パルプスラリーへの紙力増強剤の配合量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、0.2〜2.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.3〜1.5質量部である。さらに好ましくは0.4〜1.0質量部である。0.2質量部未満では基紙の強度が不足し、裏面のオフセット印刷によるプレ印刷時に紙剥け、粉落ちなどの問題が発生する場合がある。2.0質量部を超えると、抄紙工程に汚れが発生し、紙面に夾雑物、穴などの欠点が発生する場合がある。
【0021】
また、パルプスラリーへは填料を配合することができる。填料としては、従来公知の填料を使用することが可能であり、例えば、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、焼成カオリン、酸化チタン、水酸化アルミニウム、ホワイトカーボンなどが挙げられ、これらを単独または併用して用いることができる。紙中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、2〜20質量部であることが好ましい。より好ましくは、3〜17質量部である。2質量部未満では白色度向上、不透明度向上の効果が得られにくい。20質量部を超えると基紙の強度が不足し、裏面にオフセット印刷を施した際に、紙剥けや粉落ちが発生する場合がある。
【0022】
また、パルプスラリーには、内添サイズ剤、嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、硫酸バンド、カチオン化剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤などの公知の添加剤を、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適宜添加することが可能である。例えば、サイズ剤としてロジンサイズ剤を、パルプの乾燥質量100質量部に対して、0.05〜1.0質量部、また、硫酸バンドを、パルプの乾燥質量100質量部に対して、0.5〜3.0質量部含有させることができる。
【0023】
このようにしてパルプスラリーに各種製紙薬品等を添加して調製した紙料を用いて基紙を抄紙する。抄紙は、抄紙機を用いて行うことができる。抄紙機としては、特に限定されるものではなく、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置を用いることができる。抄紙方式は、特に限定されず、酸性抄紙又は中性抄紙のいずれかを選択できる。
【0024】
基紙の坪量は、特に限定されないが、40〜500g/m
2であることが好ましく、より好ましくは、50〜450g/m
2である。
【0025】
基紙の片面または両面には、紙力増強剤を塗布することが好ましい。前記基紙のインク受容層を設ける面とは反対の面に、紙力増強剤を塗布してもよい。紙力増強剤を塗布することで基紙の表面強度が向上し、インクジェット記録用紙の裏面にオフセット印刷を施した際に、紙剥けや粉落ちが発生するのを抑制することができる。ここで、紙力増強剤としては、従来公知の紙力増強剤を使用することが可能であり、例えば、澱粉系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤、ポリアミドエポキシ系紙力増強剤などが例示でき、単独または併用して用いることができる。本発明では、澱粉系紙力増強剤、ポリビニルアルコール系紙力増強剤、ポリアクリルアミド系紙力増強剤が好ましい。基紙への紙力増強剤の塗布量としては、固形分換算で、基紙の片面当り、0.05〜1.3g/m
2であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.5g/m
2である。
【0026】
上記方法で得られた基紙の片面に無機顔料とバインダーとを含有する塗工液を塗工後、乾燥してインク受容層を設ける。インク受容層は単層であっても2層以上を積層させてもよい。
【0027】
インク受容層用の塗工液に含有させる無機顔料としては、特に限定するものではなく、非晶質シリカ、非晶質アルミナ、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、タルク、酸化亜鉛、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、珪藻土、擬ベーマイトなどのインクジェット記録用紙の塗工層に汎用される無機顔料を例示でき、これらを単独又は併用して用いることができる。これらの中でも合成非晶質シリカ、合成非晶質アルミナ、水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。より好ましくは、合成非晶質シリカと水酸化アルミニウムの併用である。インク吸収性に優れたインク受容層とすることができ、より優れたインクジェット記録適性付与することができる。
【0028】
また、インク受容層用の塗工液には、バインダーを含有させる。バインダーは無機顔料100質量部に対して30〜55質量部含有させる。好ましくは40〜50質量部である。バインダーの含有量が無機顔料100質量部に対して30質量部未満となると、インク受容層強度を満足できず、印刷の際に擦過によるインク受容層の脱落が生じやすくなる。一方、55質量部を超えると、滲みやブロッキングの問題が生じやすくなる。
【0029】
本発明においては、前記バインダー中の10〜55質量%をポリビニルアルコールとする。好ましくは20〜50質量%であり、より好ましくは25〜40質量%である。10質量%未満では滲みが生じやすくなる。逆に、55質量%を超えるとインク受容層強度を満足できず、印刷の際に擦過によるインク受容層の脱落が生じやすくなる。
【0030】
更に、本発明においては、バインダーとして使用するポリビニルアルコールとして、部分けん化ポリビニルアルコール(以下、部分けん化PVAと記載することがある)と完全けん化ポリビニルアルコール(以下、完全けん化PVAと記載することがある)とを併用し、その配合比率を、質量比で、部分けん化PVA:完全けん化PVA=1:20〜1:3の範囲とする。好ましくは1:15〜1:4の範囲とする。このような範囲で部分けん化PVAと完全けん化PVAとを混合して含有させることにより、滲みを抑制しつつインク受容層の強度を向上させることができる。部分けん化PVAの配合比率が上記範囲より小さくなると、滲みが生じる。逆に、部分けん化PVAの配合比率が上記範囲より大きくなるとブロッキングの問題が生じる。
【0031】
本発明における部分けん化PVAとは、けん化度が85mol%以上89mol%未満のポリビニルアルコールを意味し、完全けん化PVAとは、けん化度が98mol%以上のポリビニルアルコールを意味する。
【0032】
さらに、本発明においては、上記のように2種類以上のポリビニルアルコールを配合するが、その平均重合度は相加平均により求める。ここで、バインダーとして使用する2種類以上のポリビニルアルコールの平均重合度を800〜1300とする。好ましくは1000〜1250である。このような構成とすることにより、インク受容層がインクを速やかに吸収することができ、滲みを防止することができる。また、インク受容層の強度を向上させるとともに、ブロッキングの発生を抑制する。ポリビニルアルコールの平均重合度が800未満となると、インク受容層強度を満足できない。逆に1300を超えると、滲みが生じる。個々のポリビニルアルコールの平均重合度としては、2種類以上のポリビニルアルコールの相加平均による平均重合度が上記の範囲となればよいが、例えば、400〜2000である。
【0033】
本発明においては、インク受容層用の塗工液中に、バインダーとしてポリビニルアルコール以外の水系樹脂(水溶性・水分散)を含有させる。ここで、水系樹脂としては特に限定するものではないが、インク受容層の強度の向上に寄与するものが好ましい。例えば、エチレン−酢酸ビニル樹脂エマルジョン(以下、EVAと記載することがある)、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ポリエステル系樹脂エマルジョン、スチレンブタジエンラテックス、アクリロニトリルブタジエンラテックスが例示でき、単独又は併用して用いる。これらの中でも、EVA、アクリル系樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョンが好ましい。これらのバインダーを使用する場合、上記のバインダーおよびポリビニルアルコールの含有量の範囲を逸脱しなければ良いが、例えば、無機顔料100質量部に対して、EVAを10〜35質量%、アクリル系樹脂エマルジョンまたはウレタン樹脂エマルジョンについては、3〜10質量%の量で使用すればよい。
【0034】
また、インク受容層には、必要に応じて各種助剤、例えば、インク定着剤、消泡剤、分散剤、蛍光増白剤、着色染料、着色顔料、粘度調整剤、防腐剤、耐水化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保水剤、架橋剤、pH調整剤、導電処理剤、内部ゲル化剤、光沢付与剤、金属塩などを適宜配合してもよい。
【0035】
インク受理層は基紙の一方の面にインク受理層用の塗工液を塗工し、乾燥することによって設けることができる。インク受理層用の塗工液の塗布方法としては、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ショートドェルコーター、カーテンコーター、コンマコーター、ブレードコーター、スプレーコーター、グラビアコーター、ダイスコーター、チャンプレックスコーター、メータリングブレード式のサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、シムサイザーなど公知の塗工機の中から適宜選択して、オンマシン又はオフマシンで使用して行うことが出来る。
【0036】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受理層の塗工量は、固形分換算で7〜13g/m
2が好ましい。更に好ましくは8〜12g/m
2である。7g/m
2未満では基紙表面を十分に覆うことができない場合があり、インクジェット印刷でのドット再現性、印刷濃度を満足できないおそれがある。13g/m
2を超える場合は、インクジェット受容層の強度が低下し、ブランケットへのインク受容層構成物の堆積の問題が発生する場合が有る。
【0037】
基紙にインク受理層を設けた後、記録用紙の表面と裏面の平滑性を制御する目的で、本発明の目的とする効果を損なわない範囲で適宜カレンダー処理を行うことが可能である。カレンダー処理装置としては、ハードニップカレンダー、ソフトカレンダー、スーパーカレンダー、メタルベルトカレンダー、ラスタープレスなどが用いられる。
【0038】
本実施形態に係るインクジェット記録用紙は、インクジェット適性を有し、裏面にオフセット印刷によるプレ印刷用として適している。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0040】
(実施例1)
(基紙の作製)
パルプとしてECF漂白したLBKP100部をフリーネス500mlに叩解してパルプスラリーとし、このパルプスラリーに、内添紙力増強剤としてカチオン化澱粉(ネオタック30T:日本食品加工社製)1部と、填料としてタルク(タルクN80:日本タルク社製)5部と、サイズ剤としてロジンサイズ剤(サイズパインE:荒川化学工業)0.2部、硫酸バンド1部とを添加し、紙料を調製した。この紙料を長網多筒式抄紙機で抄紙して坪量147.6g/m
2の原紙を作製した。次いで、ゲートロール装置にて、表面紙力増強剤としてリン酸エステル化澱粉(MS4600:日本食品化工社製)の12%液を、両面で乾燥塗布量が2.4g/m
2となるように塗布し、乾燥し、坪量150.0g/m
2の基紙を作製した。
【0041】
(インク受理層用の塗工液の調製)
顔料として合成非晶質シリカ(ミズカシルP−50:水澤化学工業製)100部、pH調整剤としてギ酸0.5部を添加し、コーレス分散機を用いて水分散し、固形分濃度が20%の顔料スラリーを調整した。この顔料スラリーに、バインダーとして部分けん化PVA(PVA―217:クラレ製 平均重合度1700)2部、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)6部、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)6部、及びEVA(EVA AD−92:昭和電工製)28部、ウレタン樹脂エマルジョン(JK−870:明成化学工業製)4部、インク定着剤としてカチオン性樹脂(SR−1001:住友化学製)10部を添加、撹拌し、更に水を加えて、固形分濃度が18%の塗工液を調整した。
【0042】
(インクジェット記録用紙の作製)
前記塗工液を塗工量が固形分換算で12g/m
2になるようにエアーナイフコーターを用いて前記基紙の片面に塗工、乾燥した。その後、カレンダー処理としてハードニップカレンダー処理を行い、坪量が162.0g/m
2のインクジェット記録用紙を作製した。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、部分けん化PVA(PVA―217:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を1部に変更し、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を7部に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を8部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0044】
(実施例3)
実施例1において、部分けん化PVA(PVA―217:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0045】
(実施例4)
実施例1において、EVA(EVA AD−92:昭和電工製)の添加量を12部に変更し、ウレタン樹脂エマルジョン(JK−870:明成化学工業製)の添加量を8部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0046】
(実施例5)
実施例1において、EVA(EVA AD−92:昭和電工製)の添加量を0部(無添加)に変更し、ウレタン樹脂エマルジョン(JK−870:明成化学工業製)の添加量を8部に変更し、更にアクリルシリコン樹脂エマルジョン(アクアブリッド908:ダイセルファインケム製)8部を添加した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0047】
(実施例6)
実施例1において、EVA(EVA AD−92:昭和電工製)の添加量を12部に変更し、ウレタン樹脂エマルジョン(JK−870:明成化学工業製)の添加量を0部(無添加)に変更し、更にアクリルシリコン樹脂エマルジョン(アクアブリッド908:ダイセルファインケム製)8部を添加した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0048】
(実施例7)
実施例1において、EVA(EVA AD−92:昭和電工製)の添加量を32部に変更し、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を5部に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0049】
(比較例1)
実施例1において、EVA(EVA AD−92:昭和電工製)の添加量を40部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0050】
(比較例2)
実施例1において、部分けん化PVA(PVA―217:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を0部(無添加)に変更し、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を7部に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を7部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0051】
(比較例3)
実施例1において、部分けん化PVA(PVA―217:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を3.5部に変更し、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を5部に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0052】
(比較例4)
実施例1において、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を8部に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を4部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0053】
(比較例5)
実施例1において、完全けん化PVA1(PVA−117:クラレ製 平均重合度1700)の添加量を0部(無添加)に変更し、完全けん化PVA2(PVA−105:クラレ製 平均重合度500)の添加量を12部に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。
【0054】
各実施例及び比較例で得られたインクジェット記録用紙について、次に示す評価法に基づいて試験を行った。結果を表1に示す。
【0055】
(1)インクの滲み評価
以下のインクジェットプリンターを用いて白抜き文字の印字を行い、インクの滲み具合を目視で以下のように評価した。
プリンター:EP−807A(エプソン社製)
◎:滲みが全くなく、良好である(実用レベル)。
○:滲みが僅かに発生するが、良好である(実用レベル)。
△:滲みが多少発生する(実用上下限レベル)。
×:滲みが著しく発生する(実用上不可レベル)。
【0056】
(2)耐ブロッキング性評価
オフセット印刷機として、三菱重工印刷紙工機械社製「三菱DAIYA(A倍6色機)」を使用し、インクジェット記録用紙の裏面に、墨インキにて1色印刷を8000枚/時の印刷速度で4000枚印刷し、ブロッキングによるフィーダー部での給紙不良回数を評価した。
◎:給紙不良発生無く、良好である(実用レベル)。
○:給紙不良が1回発生(実用レベル)。
△:給紙不良が2回発生(実用下限レべル)。
×:給紙不良が3回以上発生(実用上不可レベル)。
【0057】
(3)インク受容層強度(擦過性)評価
オフセット印刷機として、三菱重工印刷紙工機械社製「三菱DAIYA(A倍6色機)」を使用し、インクジェット記録用紙の裏面に、墨インキにて1色印刷を8000枚/時の印刷速度で4000枚印刷し、印刷工程内での擦過による塗工層の脱落物がブランケットに付着する程度により評価した。
◎:ブランケットに塗工層の脱落物の転移がほとんど無く、良好である(実用レベル)。
○:ブランケットに塗工層の脱落物の転移が多少あるが、画線部の抜けはほとんど無く、良好である(実用レベル)。
△:ブランケットに塗工層の脱落物の転移があり、画線部の抜けが多少有る(実用上下限レベル)。
×:ブランケットに塗工層の脱落物の転移が多量にあり、画線部の抜けも多い(実用上不可レベル)。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
表1、2から明らかなように、実施例1〜7で得られたインクジェット記録用紙は、インクの滲み評価、耐ブロッキング性評価、インク受容層強度(擦過性)評価の何れもが実用範囲のものであった。
【0061】
これに対して比較例1で得られたインクジェット記録用紙は、バインダーの配合量は多すぎるため、インクの滲み評価と耐ブロッキング性評価に劣るものであった。また、比較例2で得られたインクジェット記録用紙は、部分けん化PVAを配合しなかったため、インクの滲み評価に劣るものであった。また、比較例3で得られたインクジェット記録用紙は、完全けん化PVAに対する部分けん化PVAの配合割合が大きすぎるため、耐ブロッキング性評価に劣るものであった。また、比較例4で得られたインクジェット記録用紙は、ポリビニルアルコールの平均重合度が高くなりすぎ、インクの滲み評価に劣るものであった。また、比較例5で得られたインクジェット記録用紙は、ポリビニルアルコールの平均重合度が低くなりすぎ、インク受容層強度(擦過性)評価に劣るものであった。