(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570159
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】全反射光学部材およびこれを備えた全反射測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/552 20140101AFI20190826BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20190826BHJP
G02B 21/06 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
G01N21/552
G02B5/04
G02B21/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-513571(P2019-513571)
(86)(22)【出願日】2018年4月11日
(86)【国際出願番号】JP2018015153
(87)【国際公開番号】WO2018193924
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2017-82586(P2017-82586)
(32)【優先日】2017年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232689
【氏名又は名称】日本分光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(74)【代理人】
【識別番号】100188260
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 愼二
(72)【発明者】
【氏名】小勝負 純
(72)【発明者】
【氏名】曽我 順顕
(72)【発明者】
【氏名】杉山 周巳
【審査官】
小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−111474(JP,A)
【文献】
特開平1−321342(JP,A)
【文献】
特開昭56−140304(JP,A)
【文献】
米国特許第5835231(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − G01N 21/01
G01N 21/17 − G01N 21/61
G02B 5/04
G02B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の光学部材からなり、表裏いずれかの面の中心から外れた位置に設けられた測定光の導入部および導出部を有する全反射光学部材であって、
前記光学部材の表裏の面を除いた外周には、複数の平面部がそれぞれ前記表裏の面に直角に形成されており、
前記導入部は、前記光学部材の内部に導入された測定光が前記表裏の面のいずれか一方に向けて全反射の入射角で入射するように、設けられ、前記表裏の面は、前記測定光を交互に全反射させながら進行するように設けられ、
前記複数の平面部は、順番に、前記光学部材の内部を進行する前記測定光を異なる方向へ反射させるように設けられ、
前記複数の平面部のうち、2番目以降に前記測定光を反射させる前記平面部は、この平面部を反射した測定光の光路が、1つ前の順番で前記測定光を反射させた他の前記平面部に向かって進行する前記測定光の光路と交差するように、設けられ、
前記導出部は、前記複数の平面部を反射した測定光を外部に導出させることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項2】
請求項1記載の全反射光学部材において、
前記複数の平面部同士の角度は、いずれの平面部に対しても前記測定光が同じ入射角で入射するように、設定されていることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の全反射光学部材において、
前記複数の平面部は、前記測定光を反射させた前記平面部から次に前記測定光を反射させる他の前記平面部までの区間の光路長がどの区間においても同じになるように、設けられていることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項4】
板状の光学部材からなり、表裏いずれかの面の中心から外れた位置に設けられた測定光の導入部および導出部を有する全反射光学部材であって、
前記光学部材の表裏の面を除いた外周には、複数の平面部がそれぞれ前記表裏の面に直角に形成されており、
前記導入部は、前記光学部材の内部に導入された測定光が前記表裏の面のいずれか一方に向けて全反射の入射角で入射するように、設けられ、前記表裏の面は、前記測定光を交互に全反射させながら進行するように設けられ、
前記複数の平面部は、順番に、前記光学部材の内部を進行する前記測定光を異なる方向へ反射させて、当該複数の平面部を順番に反射する前記測定光の光路軌跡が星形正多角形を描くように設けられ、
前記導出部は、前記複数の平面部を反射した測定光を外部に導出させることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項5】
請求項4記載の全反射光学部材において、
前記星形正多角形は、星形正五角形、星形正七角形、星形正八角形または星形正九角形であることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の全反射光学部材において、
該全反射光学部材の全表面のうち、少なくとも、前記表裏のいずれかの面と、測定光の前記導入部と、測定光の前記導出部とを除いた表面には、金属膜が形成されていることを特徴とする全反射光学部材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の全反射光学部材と、
前記全反射光学部材の前記表裏の面の少なくとも一方の面に試料を接触させるように該光学部材を保持するホルダーと、
測定光を発生させて前記全反射光学部材の前記導入部へと導く測定光発生手段と、
前記全反射光学部材の前記導出部からの前記測定光を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする全反射測定装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2017年4月19日付け出願の日本国特許出願2017−082586号の優先権を主張しており、ここに折り込まれるものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は全反射光学部材(全反射プリズムとも呼ぶ。)および全反射測定装置に関し、特に、全反射光学部材の小型化と感度向上化に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、試料の各種光学的データを得るために、試料からの反射光あるいは透過光を測定するフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)等の分析装置が知られている。ところで、FTIRにおいては、一般的手法である反射光測定あるいは透過光測定が困難な試料に対し、全反射測定法が適用される。いわゆるATR法である。
【0004】
全反射測定法では、試料上に該試料よりも大きい屈折率を有する全反射プリズムを載せて、又は、その全反射プリズム上に試料を載せて、集光レンズによりプリズムに測定光を入射させる。そして、プリズムから試料への入射角を臨界角よりも大きくすると、入射光は試料とプリズムの境界面で全反射する。この境界面では光がプリズム内から試料内にわずかに進入する(潜り込むとも言われる)。そして、再びプリズム側に返ってきた光が全反射光になる。試料に進入した光の一部が試料に吸収されると、境界面で全反射した光はその分だけ減少する。これをレンズにより集光し、試料とプリズムの境界面における全反射光の特性を解析すると、試料の光学的情報が得られる。従って、高分子膜、半導体、あるいは著しく強い光吸収を示すような試料の表面分析が、試料にプリズムを接触させるという簡単な手順で行なえる。
【0005】
試料の微小部位を分析する際には、この全反射測定法がふさわしい。FTIRの構成に反射系または透過系の顕微光学構成が組み合わされた赤外顕微分光装置などを用いて、例えば、その顕微光学構成に全反射プリズムを保持したカセグレン式の対物鏡を採用したものがある。
【0006】
<1回反射法、および、多重反射法>
全反射プリズムと試料の接触面において測定光を1回だけ全反射させる測定を1回反射法と呼ぶ。1回反射法に用いる全反射プリズムは、試料との接触面を狭くすることができるので、微小な試料の分析に適する。しかし、1回の全反射ではピーク強度が十分に得られない場合があり、ピークがノイズに埋もれやすいという傾向がある。
【0007】
一方、測定光の進行方向に沿って、測定光を複数回全反射させる測定を多重反射法と呼ぶ。1回反射法よりも大きなピーク強度が得られ、高感度測定が可能になる。しかし、従来の多重反射法に用いられている全反射プリズムは、広い接触面を必要とするものばかりだった。そのため、試料についても、プリズムの接触面と同等以上の大きさのものが必要になっていた。なお、特許文献1および2には、いずれも台形型の全反射プリズムであって、プリズム内を測定光が多重反射しながら往復するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−111474号公報
【特許文献2】特開平11−241991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来の多重反射法に用いるには、試料との接触面積が大きい全反射光学部材が必要であって、測定対象の試料自体も大きいものが必要となり、従来の多重反射法では、小さい試料を測定できないという課題があった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、多重反射法に使用可能な全反射光学部材であって、試料との接触面積が小さい全反射光学部材およびこれを備えた全反射測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る全反射光学部材は、板状の光学部材における表裏の面に直角に形成された平面部を有し、この平面部によって光学部材の内部を多重反射しながら進行する測定光が異なる進行方向へ反射するという点に特徴がある。平面部を反射した測定光は、引き続き光学部材の内部を全反射しながら進行する。光学部材の表裏の面の少なくとも一方を試料との接触面にする場合に、その接触面が従来の光学部材よりも狭くなっても、狭くなった接触面での測定光の全反射回数を十分に確保することができる。または、このような平面部が複数箇所に設けられて、それぞれの平面部で測定光が反射して、測定光の進行方向が複数回変化すれば、狭い接触面での全反射回数を多く確保することができる。
【0012】
すなわち、本発明に係る全反射光学部材は、
板状の光学部材からなり、表裏いずれかの面の中心から外れた位置に設けられた測定光の導入部および導出部を有する全反射光学部材(全反射プリズムとも呼ぶ。)であって、
前記光学部材の表裏の面を除いた外周には、少なくとも1つの平面部が前記表裏の面に直角に形成され、
前記導入部は、前記光学部材の内部に導入された測定光が前記表裏の面のいずれか一方に向けて全反射の入射角で入射するように、設けられ、
前記表裏の面は、前記測定光を交互に全反射させながら進行させるように設けられ、
前記平面部は、前記光学部材の内部を進行する前記測定光を異なる方向へ反射させるように設けられ、
前記導出部は、前記平面部を反射した測定光を外部に導出させることを特徴とする。
このような構成にすることで、
図1の例のように、たとえ平面部4Dが1つの場合であっても、光学部材の表の面FSおよび裏の面BSの間を全反射しながら進行する測定光の進行方向が1回変化することで、限られた接触面を2次元的に有効に利用することができて、測定光の全反射の回数を確保することができる。なお、
図1(B)は、同図(A)の板状の光学部材の平面図であり、導入部4Aから導出部4Eまでの測定光の内部ルートが矢印付きの直線で示されている。
【0013】
<測定光の進行方向を複数回変化させるもの>
また、本発明に係る全反射光学部材は、
板状の光学部材からなり、表裏いずれかの面の中心から外れた位置に設けられた測定光の導入部および導出部を有する全反射光学部材であって
前記光学部材の表裏の面を除いた外周には、複数の平面部がそれぞれ前記表裏の面に直角に形成されており、
前記導入部は、前記光学部材の内部に導入された測定光が前記表裏の面のいずれか一方に向けて全反射の入射角で入射するように、設けられ、
前記表裏の面は、前記測定光を交互に全反射させながら進行するように設けられ、
前記複数の平面部は、順番に、前記光学部材の内部を進行する前記測定光を異なる方向へ反射させるように設けられ、
前記導出部は、前記複数の平面部を反射した測定光を外部に導出させることを特徴とする。
このような構成にすることで、
図2の例のように、光学部材の内部を全反射しながら進行する測定光の進行方向が、複数の平面部での反射によってその都度変化する。よって、測定光の全反射の回数が確保されて、試料との接触面をより一層有効に利用することができる。
【0014】
<光路同士が交差するもの>
ここで、前記複数の平面部のうち、2番目以降に前記測定光を反射させる前記平面部は、この平面部を反射した測定光の光路が、1つ前の順番で前記測定光を反射させた他の前記平面部に向かって進行する前記測定光の光路と交差するように、設けられていることが好ましい。
このような構成によって、
図3の例のように、平面部4Gを反射した測定光の光路が、これよりも先に平面部4Dに向かって通過した光路と交わる。従って、限られた広さの接触面であっても比較的長い光路を確保することができる。
【0015】
<入射角θまたは光路長さがどこも同じになるもの>
また、
図4の例のように、前記複数の平面部同士の角度は、いずれの平面部に対しても前記測定光が同じ入射角θで入射するように、設定されていることが好ましい。
また、
図5の例のように、前記複数の平面部は、前記測定光を反射させた前記平面部から次に前記測定光を反射させる他の前記平面部までの区間の光路長がどの区間においても同じになるように、設けられていることが好ましい。
ここで、一例として、各平面部での入射角θが同じで、かつ、各区間の光路長が同じである全反射光学部材を
図6に示す。
【0016】
<光路の軌跡が星形正多角形になるもの>
また、前記複数の平面部は、当該複数の平面部を順番に反射する前記測定光の光路軌跡が星形正多角形、特に、星形正五角形、星形正七角形、星形正八角形または星形正九角形を描くように、設けられていることが好ましい。
このように形成された全反射光学部材であれば、光学部材の外形が統一されるとともに、測定光の通過ルートをユーザーが認識しやすくなるため、ユーザーが全反射光学部材を扱いやすいという効果がある。
【0017】
ここで、前記全反射光学部材において、該全反射光学部材の全ての表面のうち、少なくとも、前記表裏のいずれかの面と、測定光の前記導入部と、測定光の前記導出部とを除いた表面には、金属膜が形成されていることが好ましい。
このように全反射光学部材において、試料との接触部および赤外光の入出射部を除くプリズム表面を金属膜で覆うことで、赤外光をプリズム内で効率よく多重反射させることができる。
【0018】
本発明に係る全反射測定装置は、
前記全反射光学部材と、
前記全反射光学部材の前記表裏の面の少なくとも一方の面に試料を接触させるように該光学部材を保持するホルダーと、
測定光を発生させて前記全反射光学部材の前記導入部へと導く測定光発生手段と、
前記全反射光学部材の前記導出部からの前記測定光を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の全反射光学部材(全反射プリズム)の構成によれば、全反射プリズムの表裏の面に直角に形成された1ないし複数の平面部によって、光学部材の内部を多重反射しながら進行する測定光が異なる進行方向へ反射するから、試料との接触面が従来の光学部材よりも狭くなっても、その接触面を2次元的に有効に利用することができて、接触面での測定光の全反射回数が十分に確保される。従って、このような全反射プリズムを用いれば、小さい試料に対しても従来の多重反射法と同レベル以上の高感度で表面分析をすることができて、目的にかなった全反射プリズムおよび全反射測定装置を提供することができる。
【0020】
また、以上の構成の全反射プリズムであれば、特許文献1および2の従来の台形型プリズムと比べて、プリズムの厚さに対する代表的長さの比率が小さくなるため、その分だけ全反射プリズムの機械的強度が高まる。その結果、全反射プリズムが割れにくくなる等、耐久性が向上するとともに、全反射プリズムを保持するホルダー形状の自由度も高まる。
さらに、全反射プリズムへの導入光学系を小さく、コンパクトに設計することができるため、測定装置本体に対する付属品(アタッチメント)の小型化が図れる。その結果、測定装置を持ち運びやすくなり、省資源化を図ることも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一態様として1の平面部を有する全反射光学部材を説明する図。
【
図2】本発明の一態様として2の平面部を有する全反射光学部材を説明する図。
【
図3】本発明の一態様として交わる光路を形成する全反射光学部材を説明する図。
【
図4】本発明の一態様としてどの平面部に対しても同じ入射角を形成する全反射光学部材を説明する図である。
【
図5】本発明の一態様としてどの区間においても同じ長さの光路を形成する全反射光学部材を説明する図である。
【
図6】本発明の一態様としてどの平面部に対しても同じ入射角を形成し、どの区間においても同じ長さの光路を形成する全反射光学部材を説明する図である。
【
図7】本発明の第一実施形態にかかる全反射プリズムを示す平面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態にかかる全反射プリズムを示す平面図である。
【
図11】本発明の第三実施形態にかかる全反射プリズムを示す平面図である。
【
図12】
図11の全反射プリズムの変形例を示す平面図である。
【
図13】
図11の全反射プリズムの他の変形例を示す平面図である。
【
図14】本発明の一実施形態にかかる全反射測定装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明を行う。
図7に本発明の第一実施形態にかかる全反射光学部材(以下、全反射プリズムと呼ぶ。)1の構成を示す。全反射プリズム1は、例えば正五角形のような正多角形型の板状の結晶質材料で構成されている。材料としては、屈折率の高いダイヤモンド、ZnSe、Geなどを用いる。
【0023】
図7のように平面視でみたプリズム1の全体形状は円形である。例えば、正五角形のプリズムと、その外周の5つの平面部1A〜1Eに設けられた5つの円弧状部材と、を組み合わせて形成されたものでもよい。または、組合せではなく一体形成されたプリズムでもよい。例えば、板状の光学部材の表面(接触面)側の外形を正五角形にして、裏面(支持面)側の外形を円形にしたものでもよい。ここでの説明は、後者の一体形成のプリズムの場合について述べる。
【0024】
正五角形のプリズムの5つの平面部1A〜1Eは、それぞれプリズムの表裏の面に対して直角である。平面部1Aの付近の裏面には、後述する測定光の導入部が設けられ、平面部1Dの付近の裏面には、後述する測定光の導出部が設けられている。
【0025】
図7中の矢視Aの断面形状を
図8に示す。
図8のように、プリズム1の平面部1Aの付近の裏面BSには、直角三角形の断面を有する角柱形状の導入部が形成されている。このように、導入部4Aは、裏面BSの中心から外れた位置に設けられ、外部からの測定光をプリズム内部に導入する。測定光は、導入部4Aからプリズム内部に進入して、表面FSに向けて臨界角以上の入射角で進む。これによって、測定光は、プリズム1の表裏の面FS,BSを交互に全反射しながら直線状に進行する。導入部4Aの向きは、プリズム内を進行する測定光が、平面部1Bと平行になるように設けられている。
【0026】
導入部4Aからの測定光は、やがて別の平面部1Cに達し、この平面部1Cを全反射して異なる方向へ進行する。平面部1Cを全反射した測定光は、再び、プリズムの表裏の面FS,BSを交互に全反射しながら直線状に進行する。プリズムが正五角形であるため、平面部1Cへの入射角θは18度であり、その反射後の進行方向は平面部1Dと平行になる。
【0027】
導入部4Aからの測定光は、複数の平面部を1C→1E→1Bの順番でそれぞれ異なる方向へ全反射して、星形正五角形の光路軌跡を描きながらプリズム内を進行する。最後に、測定光は、平面部1Dの付近の裏面BSに形成された導出部からプリズムの外部に出る。プリズムが正五角形であるため、いずれの平面部への入射角も同じであり、また、測定光を全反射させた平面部から次に測定光を全反射させる他の平面部までの区間の光路長は、いずれの区間においても同じである。導出部については、平面部1Dの付近において導入部と同様に、直角三角形の断面を有する角柱形状に設けられている。
【0028】
図9に本発明の第二実施形態にかかる全反射プリズム2の構成を示す。上記の正五角形のプリズム1との違いは、外形が線対称の五角形である点と、導入部および導出部の形状が異なる点であり、その他の構成は共通する。このプリズム2では、上記の正五角形のプリズム1の平面部1Aおよび1Dに相当する部分が、導入部および導出部を形成するために拡張されている。
図9の2Aで示す拡張部分の輪郭は、隣接する平面部2Bと直角になっている。そして、拡張部分2Aには
図10の断面図に示すように、プリズム2の表の面に対して傾斜した傾斜平面部2A’が形成されている。この傾斜平面部2A’には、赤外光をプリズム2内で効率よく多重反射させることができるように、金属膜が形成されている。
図9のハッチングを付けて示す領域が、金属膜の蒸着領域である。また、
図10に示すように、測定光の導入部は、金属膜を有する傾斜平面部2A’をプリズムの裏面に向けて直角に投影した領域に形成されている。つまり、測定光の導入部は、プリズムの裏面の一部の領域に形成されている。
【0029】
同様に、
図9の拡張部分2Dの輪郭は、隣接する平面部2Cと直角になっている。ここに、プリズム2の表の面に対して傾斜した傾斜平面部が形成され、金属膜を有している(
図9のハッチングを付けて示す領域)。なお、測定光の導出部は、拡張部分2Dに形成された傾斜平面部をプリズムの裏面に向けて直角に投影した領域に形成されている。
【0030】
金属膜の形成領域を、
図9の例では、プリズム2の2箇所の傾斜平面部とした。これに限られず、金属膜をプリズムの平面部(例えば、
図9の平面部2B,2C,2E)に形成してもよい。或いは、プリズムの表裏の面のうち、試料と接触させない面に金属膜を形成してもよい。
図10の例で、試料との接触部がプリズム2の表の面FSである場合、プリズム2の裏面BSのうちの測定光の導入部および導出部の領域を除く部分に金属膜を形成してもよい。このように、全反射プリズムにおいて、該全反射プリズムの全ての表面のうち、少なくとも、表裏のいずれかの面と、測定光の導入部および導出部とを除いた表面に、金属膜を形成することによって、赤外光をプリズム2内で効率よく多重反射させることができる。
【0031】
測定光は、プリズム2の裏面BSに直交する向きで、裏面BSからプリズム内部に進入し、その内部において傾斜平面部2A’で反射する。傾斜平面部2A’を反射した測定光は、プリズム2の裏面BSに対して臨界角以上の入射角で進むようになっている。このように形成された測定光の導入部から内部に進入した測定光は、プリズム2の表裏の面FS,BSを交互に全反射を繰り返しながら平面部2Bに平行に直線状に進行し、上述と同様に複数の平面部2C,2E,2Bを順番に全反射して星形正五角形の光路軌跡を描く。そして、測定光は、拡張部分2Dに形成された傾斜平面部で反射した後、プリズム2の裏面BSに直交する向きで進み、裏面BSからプリズム外部に出る。このように、測定光はプリズム2の裏面BSに対して直角に入射し、かつ、裏面BSから直角に出射することになる。
【0032】
図11から
図13に本発明の第三実施形態にかかる全反射プリズムの構成を示す。
図11の正七角形のプリズム3では、測定光が星形正七角形の光路軌跡を描く。また、
図12と13は、正七角形のプリズム3において、実用的な測定光の導入部と導出部の構成を設けたものを示している。導入部と導出部については、
図8に例示した角柱形状の部材を採用してもよいし、
図10に例示した傾斜平面部を利用するものを採用してもよい。ここでは、便宜的に、導入部を4A,5Aの符号で、導出部を4E,5Fの符号で示した。
図12と13の全反射プリズムの違いは、各平面部に対する測定光の入射角が異なっている点にあり、
図12の場合は平面部を反射した測定光が3つ隣りの他の平面部に向けて進行する。
図12の平面部4Dから反時計回りに3つ隣りの平面部は、平面部4Gである。
図13の場合は平面部を反射した測定光が2つ隣りの他の平面部に向けて進行する。
図13の平面部5Cから反時計回りに2つ隣りの平面部は、平面部5Eである。また、
図12では、プリズム4に進入した測定光が平面部4Fに平行に進行するように、傾斜平面部の向きが設定されている。
図13では、プリズム5に進入した測定光が平面部5Bに平行に進行するように、傾斜平面部の向きが設定されている。
【0033】
以上のように各実施形態の全反射プリズムは、いずれも測定光が一筆書きの星形正多角形の光路軌跡を描くように形成されている。これ以外にも、測定光が星形正八角形や星形正九角形などの光路軌跡を描くように形成された多角形の全反射プリズムが考えられる。実用的なものとしては、星形正五角形から星形正九角形程度の多角形のものが好ましい。
【0034】
これらの実施形態の全反射プリズムによって、全反射回数を最大50回もしくはそれ以上にすることができて、非常に反射回数の多い、高感度な全反射プリズムが得られる。小さなプリズム面積で多重反射が可能になるため、微量試料の高感度測定が可能になる。
また、プリズムの表裏の面のいずれか一方を試料との接触面として、他方をプリズム支持面とする場合、そのプリズム支持面を直接支持する支持構造を用いて、全反射プリズムを保持することができる。
図7の全反射プリズム1のように円形外形にすれば、プリズムホルダー6との密閉性を容易に保つことができる。全反射プリズム1とプリズムホルダー6との位置関係を
図8に示した。
図8のハッチングで示した部材がプリズムホルダー6である。
また、プリズム面積が小さいこと、および、プリズム支持面での直接支持が可能な構造となることから、試料の押付圧力を大きくすることができる。液体だけでなく、固体や粉体試料の測定も可能になる。
【0035】
また、これらの実施形態の全反射プリズムであれば、特許文献1および2の従来の台形型プリズムと比べて、プリズムの厚さに対する代表的長さの比率が小さくなるため、その分だけ全反射プリズムの機械的強度が高まる。その結果、全反射プリズムが割れにくくなる等、耐久性が向上するとともに、全反射プリズムを保持するプリズムホルダー形状の自由度も高まる。
さらに、全反射プリズムへの導入光学系を小さく、コンパクトに設計することができるため、測定装置本体に対する付属品(アタッチメント)の小型化が図れる。その結果、測定装置を持ち運びやすくなり、省資源化を図ることも容易になる。
なお、全反射プリズムとしては、外周の一部において測定光の反射に影響の少ない部分を曲面で形成したようなものであっても、同様の効果が得られる。
【0036】
図14に本実施形態の全反射プリズム1を適用した全反射測定装置の一例を示す。全反射測定装置は、測定光発生手段7と、測定光発生手段7からの測定光を
図7のような全反射プリズム1に集光させる入射側集光手段8と、プリズムホルダー6と、全反射プリズム1からの測定光を集光させる出射側集光手段9と、その測定光を検出する検出手段10と、ケース11とを備えている。
図14に示す全反射プリズム1は、厚さが約0.5mmで、直径が約3mm前後の微小プリズムであり、プリズムホルダー6に保持された状態で、その表の面に試料が載るようになっている。入射側の集光手段8は、微小プリズムの導入部に向けて適切な断面積の測定光を集光させるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の全反射光学部材は、FTIRやCDなどのスペクトル測定装置に幅広く適用させることができる。
【符号の説明】
【0038】
1,2,3,4,5 全反射プリズム(全反射光学部材)
1A〜1E 平面部
2A,2D 拡張部分
2B,2C,2E 平面部
2A’ 傾斜平面部
3A〜3G 平面部
4A,5A 測定光の導入部
4B〜4D,4F,4G 平面部
4E,5F 測定光の導出部
5B〜5E,5G 平面部