特許第6570186号(P6570186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6570186グリセリルグルコシド含有組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570186
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】グリセリルグルコシド含有組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20190826BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20190826BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20190826BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61K8/34
   A61K8/365
   A61K8/19
   A61Q19/00
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-511855(P2016-511855)
(86)(22)【出願日】2015年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2015059816
(87)【国際公開番号】WO2015152103
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72755(P2014-72755)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119378
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】大倉 彰太
(72)【発明者】
【氏名】長井 敦史
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/061802(WO,A1)
【文献】 特開2012−082408(JP,A)
【文献】 特開2010−115169(JP,A)
【文献】 特開2010−013453(JP,A)
【文献】 特開2004−229668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
28.34〜55.08質量%のグリセリルグルコシド;
44.89〜71.50質量%のグリセリン;
0.02〜0.48質量%のグルコン酸;ならびに
220〜798ppmの金属イオン;
を含有し、
不可避不純物としての含有を除いてグルコースが含まれないことを特徴とするグリセリルグルコシド含有組成物。
【請求項2】
金属イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンである請求項1記載の組成物。
【請求項3】
グリセリンとグルコースとを脱水縮合反応に供してグリセリルグルコシドを得る工程(1)と;
工程(1)の生成物中に残存し得るグルコースの全量を、酸化反応に供してグルコン酸に変換する工程(2)と;
を有し、
上記工程(1)または(2)において金属イオンが加えられる、
請求項1記載のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法
【請求項4】
金属イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
工程(2)の生成物に、さらに金属イオンを加える工程(3)をさらに有する請求項3又は4記載の製造方法。
【請求項6】
工程(3)において加える金属イオンがMgイオンである請求項5記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2014年3月31日に日本で出願された特願2014−72755に基づく優先権の利益を主張し、参照することによりその内容をこの明細書に包含する。
本発明はグリセリルグルコシド含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリルグルコシドは、グリセリンと1分子以上のグルコースがα−又はβ−グルコシド結合したものであり、甘味料等として食品に利用されている他、保湿性を有するため、保湿剤として化粧料等に配合されている。
【0003】
従来技術として、特許文献1には配糖体の製造方法が記載されている。しかし、かかる製造方法により得られる糖組成物については、保湿性能が十分でないばかりか、変色しやすく保存安定性に劣るといった問題点があった。また、特許文献2には、グリセリルグルコシドの保湿性向上のため、無機金属塩または糖アルコールを組み合わせることにより、保湿効果が増加もしくは相乗的に向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−188584号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0130223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題を鑑みて、本発明は、保湿性能に優れ、好ましくは着色が抑制されたグリセリルグルコシド含有組成物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下の内容の本発明を完成した。
[1]グリセリルグルコシド;グリセリン;ならびに、ソルビトール又はグルコン酸;を含有するグリセリルグルコシド含有組成物。
[2]さらに100ppm以上の金属イオンを含有する[1]の組成物。
[3]金属イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンである[2]の組成物。
[4]グリセリルグルコシドとグリセリンとの合計量に占めるグリセリンの重量割合が20質量%以上である[1]〜[3]の組成物。
[5]グリセリンとグルコースとを脱水縮合反応に供してグリセリルグルコシドを得る工程(1)と;工程(1)の生成物中に残存し得るグルコースの全量を、(2A)酸化反応に供してグルコン酸に変換するか、あるいは、(2B)水素添加反応に供してソルビトールに変換する、工程(2)と;を有するグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
[6]上記工程(1)または(2)において金属イオンが加えられ、製造されるグリセリルグルコシド含有組成物が100ppm以上の金属イオンを含有する、[5]の製造方法。
[7]金属イオンがアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンである、[6]の製造方法。
[8]工程(2)の生成物に、さらに金属イオンを加える工程(3)をさらに有する[5]〜[7]の製造方法。
[9]工程(3)において加える金属イオンがMgイオンである[8]の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物及び本発明の製法により製造された組成物は、ソルビトール又はグルコン酸、好ましくは金属イオン、中でもアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンによる保湿効果が加わることにより、グリセリルグルコシドによる保湿性をさらに向上させることができる。さらに、製造工程中で残存グルコースをソルビトール又はグルコン酸に変化させることで、組成物が着色しにくくなる。本願発明の製造方法によれば、そのような保湿性と保存安定性(着色しにくさ)とが両立したグリセリルグルコシド含有組成物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、本発明の製造方法を説明する。
本発明の製造方法は、主として2つの工程(1)・(2)を有する。工程(1)はグリセリンとグルコースとを脱水縮合反応に供してグリセリルグルコシドを得る工程である。
【0009】
グリセリンとグルコースとの脱水縮合反応それ自体については、上述の特許文献1その他の先行技術等を適宜参照することができる。例えば、後述の実施例に記載するように、グリセリンとグルコースとを所定の比率で混合してから減圧下で酸性状態にて加熱することなどが挙げられる。グリセリンとグルコースとの混合比率は1モルのグルコースに対して、グリセリンが、通常は、1〜10モル、好ましくは1〜7.5モル、より好ましくは1〜5モルである。
【0010】
脱水縮合反応には好ましくは酸触媒が用いられ、酸触媒としては特に限定はなく、硫酸、トルエンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等が例示される。脱水縮合反応においては酸触媒の代わりに、あるいは、酸触媒と共に、酸型イオン交換樹脂を用いてもよい。
【0011】
酸触媒又は酸型イオン交換樹脂の使用量は触媒活性が発揮される範囲であれば特に限定なく、グルコースに対して、具体的な使用量は、例えば0.0001〜50質量%、好ましくは0.01〜30質量%程度である。
【0012】
グリセリンとグルコースの脱水縮合反応は、反応温度は通常は80〜120℃、好ましくは90〜110℃で、通常は1〜36時間、好ましくは3〜20時間程度行う。この脱水縮合反応は好ましくは減圧条件下で行われ、具体的には、好ましくは2〜100Torrの圧力が挙げられる。この脱水縮合反応において、過剰のグリセリンを用いた場合や、その他の溶媒を用いた場合には、必要に応じこれらを留去する。溶媒の留去は常法によって行えばよく、例えば、単蒸留、溶媒の沸点が高い場合などは薄膜蒸留等の方法、その他にも陽イオン交換樹脂や活性炭、ゲル濾過等によるクロマトグラムによる分離精製の方法が挙げられ、未反応のグリセリンの一部またはその他の溶媒の全部または一部を留去することができる。
【0013】
上述の工程(1)では、グリセリルグルコシドが主として生成するが、未反応のグルコースが少量残存することが普通である。具体的には、工程(1)の生成物にはグルコースが、通常は0.001〜10質量%程度含まれている。本発明では、工程(1)の段階ではそのような未反応のグルコースの残存を許容する点が重要な特徴の一つである。
【0014】
なお、工程(1)の生成物については、これに、水等の溶媒を加えて、90質量%(固形物換算)、より好ましくは80質量%(固形分換算)のグリセリルグルコシド含有組成物としてもよい。また、常法にしたがって活性炭処理を行って脱色することもできる。
【0015】
本発明において、グリセリルグルコシドは、グリセリンと1分子以上のグルコースがα−又はβ−グルコシド結合したものである。通常は、グリセリンと1〜3分子のグルコースが結合する。具体例として、下記化学式(1)で表される(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、化学式(2)で表される(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、化学式(3)で表される2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、化学式(4)で表される(2R)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、化学式(5)で表される(2S)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、化学式(6)で表される2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールなどが挙げられる。これらは単独で得てもよいし、2種以上の混合物として得てもよい。化学式(1)〜(6)はグリセリンと1分子のグルコースとが結合したものであり、上述したように、本発明においては、グリセリルグルコシドは、これら化合物にさらにグルコースが結合したものであってもよい。
【0016】
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0017】
上述のように、本発明の工程(1)ではグルコースの残存を許容している。残存し得るグルコースの全量は工程(2)によってソルビトール又はグルコン酸へと変換される。「残存し得るグルコースの全量」とは、工程(1)の生成物にグルコースが残存する場合にはその全量という趣旨である。よって、例えば、工程(1)においてグルコースが仮に残存しない場合においても、以下に述べる工程(2)の具体的操作を行うのであれば、そのような製造もまた本発明の製造方法の実施であると評価すべきである。
【0018】
工程(2)は、酸化反応に供する工程(2A)と水素添加反応(還元反応)に供する工程(2B)とから選択することができる。
【0019】
工程(2A)、すなわち、グルコースを酸化反応に供してグルコン酸に変換する場合には、具体的な酸化反応の実施については有機化学における酸化反応の従来技術等を適宜参照してもよいし、後述の実施例を参照してもよい。通常は、塩基性条件下で常圧にて加熱することなどが挙げられる。工程(2A)は、工程(1)からそのまま引続いて行ってもよい。塩基性条件を得るために、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等を加えることができる。塩基性条件の具体的なpHは例えば8〜12である。加熱温度は例えば60〜100℃である。加熱時間は例えば1〜10時間である。工程(2A)により、グルコースは酸化されてグルコン酸が得られる。
【0020】
工程(2B)、すなわち、グルコースを水素添加反応に供してソルビトールに変換する場合には、具体的な水素添加反応(還元反応)の実施については、従来技術等を適宜参照することができ、後述の実施例を参照してもよい。通常は、水素雰囲気下において中性又は弱酸性条件で触媒とともに高圧で加熱することなどが挙げられる。工程(2B)は、工程(1)からそのまま引続いて行ってもよい。中性又は弱酸性条件を得るために、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等を加えることができる。中性又は弱酸性条件の具体的なpHは例えば5〜7である。加熱温度は例えば100〜150℃である。加熱時の圧力は例えば4〜6MPaである。加熱時間は例えば3〜7時間である。触媒は水素添加反応に通常用いられるものを特に限定なく用いることができ、ニッケル/ケイソウ土触媒などが例示される。工程(2A)により、グルコースは還元されてソルビトールが得られる。
【0021】
好適態様によれば、上述の工程(1)および工程(2)の少なくとも一方において、金属イオン、より好ましくは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが添加される。例えば、工程(2)、つまり、工程(2A)または工程(2B)において、pHの調整のために金属イオンの水酸化物等を加えることにより、金属イオンが添加されたと評価することができる。アルカリ金属イオンとしては、Naイオン、Kイオンなどが挙げられ、アルカリ土類金属イオンとしては、Caイオン、Mgイオンなどが挙げられる。アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン以外の金属イオンとしては、Cuイオン、Znイオン、Coイオン、Feイオン、Mnイオン等が非限定的に挙げられる。これら、金属イオンは最終的な生成物としてのグリセリルグルコシド含有組成物に好ましくは100ppm以上、より好ましくは200ppm以上含有される。
【0022】
本発明では、上述の工程(1)、工程(2)に次いで、さらに、工程(3)として金属イオンを加えてもよい。これにより、最終生成物にはより多くの金属イオンが含まれることになり、キレート効果等により保湿性のさらなる向上が期待される。ここで、工程(3)において加えるイオンは好ましくはアルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンであり、より好ましくはMgイオンである。アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオン以外の金属イオンとしては、上記工程(1)・(2)の少なくとも一方において添加し得る金属イオンとして例示したものがそのまま挙げられる。
【0023】
工程(3)における金属イオンの添加は、添加すべき金属の有機酸塩または無機酸塩を添加することが好ましい。有機酸の中でも、キレート形成能力のある有機カルボン酸を用いることが好ましく挙げられる。有機カルボン酸としては、グルコン酸、ステアリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等が挙げられ、これらの中でも、グルコン酸が特に好ましく挙げられる。無機酸としては、硫酸、塩酸等が挙げられる。有機酸又は無機酸は1種類又は2種類以上混合させて用いてもよい。また、金属(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム)よりも有機酸又は無機酸を過剰に含有させることで、水や化粧品成分等に含まれる金属分と化粧品などに含まれる脂肪酸との鹸化を好ましく抑えることができる。
【0024】
好適には、上記のようにして、本発明のグリセリルグルコシド含有組成物(以下、単に「本発明の組成物」とも表記する。)が得られる。
本発明の組成物は、(A)グリセリルグルコシドと、(B)グリセリンと、(C)ソルビトール又はグルコン酸と、好ましくは(D)所定量の金属イオンと、を含有する。本発明の組成物は上記の製造方法によって好適に得られるが、その製造方法に限定されない。
【0025】
(A)成分であるグリセリルグルコシドは、グリセリンと1分子以上のグルコースがα−又はβ−グルコシド結合したものであり、具体例等は上述のとおりである。(B)成分のグリセリンはCHOHCHOHCHOHで表される化合物である。(C)成分としては、ソルビトール又はグルコン酸のいずれか片方が含まれていればよく、両者が含まれていてもよい。好適には、(D)成分として、100ppm以上の金属イオンが含まれ、この金属イオンは有機酸又は無機酸との塩のかたちで組成物中に溶解していてもよい。金属イオンの例示・好適例等は上述のとおりである。なお、(C)成分と(D)成分とのキレート効果による保湿性の更なる向上の観点から、(C)成分はグルコン酸であることが好ましい。
【0026】
本発明の組成物における(A)・(B)・(C)の各成分は、液体クロマトグラフィー(LC)によって、その存在と含有割合を求めることができる。具体的な測定例は実施例の欄に記載する。(A)成分と(B)成分との合計量に占める(B)成分の割合は、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは60〜80質量%である。組成物全量に占める(A)成分の含有割合は例えば20〜80質量%、好ましくは40〜60質量%であり、(B)成分の含有割合は例えば80〜20質量%、好ましくは40〜60質量%であり、(C)成分の含有割合は例えば0.0001〜30質量%、好ましくは0.01〜10質量%である。
【0027】
本発明の組成物における(D)成分の含有割合はJIS K 0067に順じて、測定試料を灰化させる前後の質量を秤り取ることにより算出される。具体的な手順は実施例の欄に詳述する。(D)成分の含有割合は好ましくは100ppm以上であり、より好ましくは200ppm以上であり、上限は特に制限は無く、例えば4000ppm、好ましくは2000ppm程度が挙げられる。
【0028】
(D)成分としてナトリウムイオンなどのアルカリ金属イオンやマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンを用いることができる。アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンが含まれていることでより高い保湿性及び着色が抑制されたグリセリルグルコシド組成物が得られる。アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが併用される場合、アルカリ土類金属イオンに対するアルカリ金属イオンの質量割合は、好ましくは10/90〜60/40である。
【0029】
本発明の組成物にはグルコースが含まれないことが好ましい。グルコースの存在と含有割合は、上述の液体クロマトグラフィー(LC)によって評価することができる。当該評価における検出下限は概ね0.005質量%である。本発明の組成物に含まれていてもよいグルコースは例えば0.01質量%以下、より好ましくはLCによる検出下限以下であり、不可避不純物としての含有を除いてグルコースが含まれないことと、あるいは、0.005質量%未満、と表現することもできる。
【0030】
本発明の組成物は、優れた着色抑制効果と保湿性とが両立する。
着色の度合いは、例えば、ハーゼン色数(APHA)で評価される値を用いることができる。ハーゼン色数は、無色から褐色まで段階を付けた比色管(ハーゼン標準液)と測定物を比較することにより、着色度合を測定することもできるし、APHA測定器を用いて測定することもできる。この値が大きくなるほど、無色から黄色、褐色、濃褐色となる。本発明のグリセリルグルコシド含有組成物のハーゼン色数(APHA)は、100以下が好ましく、60以下がより好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
保湿性の評価は以下の実施例に記載する。
【0031】
本発明の組成物は種々の用途に使用することができ、特に、皮膚外用剤の原料として好適に使用できる。ここで、皮膚外用剤とは、薬事法等による厳格な定義によるものではなく、「皮膚に付けるための物質」を広く包含する概念であり、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料等などを特に限定無く含む。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明について更に詳細を加えるが、本発明がこれら実施例に限定されるわけではない。
【0033】
[実施例1、4、5、9、参考例2、3、6〜8、比較例1]
下記記載の所定量のグリセリンとグルコースとの混合物に0.7重量部の2N硫酸水溶液を加え、100℃、6torrの減圧条件下に所定時間供した。これによりグリセリンとグルコースとの脱水縮合反応を生ぜしめた。得られた生成物に98重量部の水を加えた後、3.5重量部の4質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10に調整した後に、80℃で所定時間加熱攪拌した。これにより、上記脱水縮合反応において反応不十分であったグルコースが酸化してグルコン酸が得られる。その後、得られた反応生成物を活性炭で脱色し、水を留去して、目的のグリセリルグルコシド含有組成物を得た。各実施例、参考例、比較例における合成条件を表1にまとめる。
【0034】
【表1】
【0035】
なお、実施例9では、実施例1の組成物に対して水酸化マグネシウム0.056重量部および4質量%グルコン酸水溶液13.5重量部を添加し、60℃にて2時間加熱攪拌後に、水を留去することによりグリセリルグルコシド含有組成物を得た。また、比較例1では、上述の脱水縮合反応の終了時点で得られた反応生成物を目的のグリセリルグルコシド含有組成物であるとみなした。つまり、比較例1では、水酸化ナトリウム水溶液の添加も、その後の加熱処理も行わなかった。
【0036】
参考例10〜17]
下記記載の所定量のグリセリンとグルコースとの混合物に0.7重量部の2N硫酸水溶液を加え、100℃、6torrの減圧条件下に所定時間供した。これによりグリセリンとグルコースとの脱水縮合反応を生ぜしめた。得られた生成物に98重量部の水を加えた後、1.0重量部の4質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを6.0に調整した。その後、ニッケル/ケイソウ土触媒(日揮化学(株)社製、N−113)を用いて水素添加反応(5MPa、130℃)に供した。これにより、上記脱水縮合反応において反応不十分であったグルコースがソルビトールへと還元される。得られた混合液をろ過し、次いで、イオン交換樹脂((三菱化学(株)社製、ダイヤイオンPK216)に付し、4質量%水酸化ナトリウム水溶液1.0部を加えた後水を留去して、目的のグリセリルグルコシド含有組成物を得た。各参考例における合成条件を表2にまとめる。
【0037】
【表2】
【0038】
[実施例18〜21]
下記記載の所定量のグリセリンとグルコースとの混合物に0.7重量部の2N硫酸水溶液を加え、100℃、6torrの減圧条件下に所定時間供した。これによりグリセリンとグルコースとの脱水縮合反応を生ぜしめた。得られた生成物に98重量部の水を加えた後、0.024重量部の水酸化マグネシウム及び0.5重量部の4質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整した後に、80℃で所定時間加熱攪拌した。これにより、上記脱水縮合反応において反応不十分であったグルコースが酸化してグルコン酸が得られる。その後、得られた反応生成物を活性炭で脱色し、水を留去して、実施例18のグリセリルグルコシド含有組成物を得た。マグネシウムイオンをさらに付与するため、所定量の水酸化マグネシウムおよび4質量%グルコン酸水溶液を添加し、60℃にて2時間加熱攪拌後に、水を留去することにより、実施例19〜21のグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
各実施例における合成条件は以下のとおりである。水酸化マグネシウム及び4質量%グルコン酸水溶液は添加した総量を記載する。
【0039】
【表3】
【0040】
得られた各グリセリルグルコシド含有組成物の組成を行った。組成分析は下記条件による液体クロマトグラフィー(LC)により行った。
(液体クロマトグラフィー(LC)の測定条件)
カラム:Shim−Pack SCR−101N(島津GLC)
検出器:RI
カラム温度:75℃
溶離液:超純水
流量:0.6mL/min
インジェクション量:20μL
さらに、各グリセリルグルコシド含有組成物を蒸発皿に5g精秤し、ガスバーナーで炭化するまで加熱し、さらに電気炉にて550℃で4時間加熱することで完全に灰化させた。残存した灰の量を測定することで、各グリセリルグルコシド含有組成物中のNa量を算出した。なお、実施例9に関しては、高周波プラズマ発光分析装置(島津社製、ICP−7510)を用いてMgの量を測定し、Mg量を取り除いた値をNa量とした。
【0041】
組成分析の結果は以下のとおりである。
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
<評価>
各実施例・参考例・比較例のグリセリルグルコシド含有組成物について、以下の方法により着色度合い、保湿性を評価した。
(ハーゼン色数の評価方法)
ハーゼン色数の測定は、APHA測定器(日本電色製:COH−400)を用いて測定した。各組成物の80%水溶液を調製し、調製直後(初期)および耐久性試験(40℃で100時間及び720時間保存)後のハーゼン色数を測定し、着色度合いを調べた。グリセリルグルコシド含有組成物の初期のハーゼン色数(APHA)は、100以下が好ましく、60以下がより好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。該組成物の試験後(720時間保存)のハーゼン色数は、200以下が好ましく、80以下がより好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、15以下が特に好ましい。
【0044】
(保湿性の評価方法)
(1)官能試験
各組成物の10質量%水溶液を調製し、20〜40歳の男性50名および女性50名の合計100名の被験者の前腕部に塗布し、塗布後30分間経過したときに、皮膚に対する保湿性を以下の評価基準に基づいて被験者に評価してもらい、その得点を合計した後、合計点を人数の100で除することにより、平均点を求めた。保湿性の評価(平均点)は8.0以上が好ましく、9.0以上であることがより好ましく、9.5以上であることがさらに好ましく、10であることが特に好ましく挙げられる。
<皮膚に対する保湿性の評価基準>
10点:塗布前よりも肌がしっとりする。
5点:塗布前よりも肌がややしっとりする。
0点:塗布前と変わらない。

(2)水分保持率試験
各グリセリルグルコシド含有組成物の10質量%水溶液(以下、「水溶液」と略記する。)をそれぞれ50g調整し、50mlのカップに入れる。ロックウール片(50×50×40mm)の重量(該重量をWとする)を測定する。前記カップに入った水溶液にロックウール片を浸すことで、ロックウール片に水溶液を吸収させる。24時間経過後にロックウール片を取り出し、該ロックウール片の重量(該重量をW24とする)を測定する。下記水分保持率の計算式により算出して、保湿性を評価する。
水分保持率(%)=(W24−W)÷50×100
水分保持率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく挙げられ、98%以上であることが特に好ましく挙げられる。
【0045】
結果は以下のとおりである。
【表6】
【0046】
一般的には、グリセリルグルコシドが保湿作用をもつと評価されるため、保湿性を向上させるためには、グリセリルグルコシドの含有比率を高める必要があるとされてきた。しかし、比較例1と、比較例1と組成が近似する実施例1、参考例10とを比較したとき、実施例1、参考例10ではグリセリルグルコシドの量が比較例1よりやや少ないにもかかわらず、保湿性は逆に比較例1よりも高かった。ソルビトール又はグルコン酸、ならびにNaイオンによる保湿効果により、グリセリルグルコシドのみによる保湿性をさらに向上させていることが示唆される。また、全実施例において着色が顕著に抑制された。従来、グルコースの量が多いと着色しやすいとされており(例えば比較例1参照)、本発明におけるこのような着色の顕著な抑制は、グルコースを着色し難いソルビトール又はグルコン酸に変化させた効果であると考えられる。
【0047】
実施例1、4、5、9、18〜21、参考例2、3、6〜8と、実施例10〜17とを比較したとき、実施例1、4、5、9、18〜21、参考例2、3、6〜8の方が、着色しにくく、保湿性に優れていることが示唆される。このことよりグルコースをグルコン酸に変化させた方が、着色しにくく、かつ、保湿性に優れるグリセリルグルコシド含有組成物が得られることがわかる。グルコン酸はグリセリルグルコシド含有組成物のpHの変化を防ぐことができるため、該効果が得られると考えられる。
【0048】
また、実施例18〜21からわかるように、ナトリウムイオンとマグネシウムイオンを併用したグリセリルグルコシド含有組成物は、特に着色しにくく、かつ、優れた保湿性能を有することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のグリセリルグルコシド含有組成物は、着色しにくく保存安定性に優れ、かつ、優れた保湿性能を有するものであるため、保湿剤等として化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤の原料として好適に使用できる。