特許第6570190号(P6570190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570190
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】ウオータベッド型マッサージ装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 9/00 20060101AFI20190826BHJP
   A61H 23/04 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   A61H9/00
   A61H23/04
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-87049(P2017-87049)
(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公開番号】特開2018-183415(P2018-183415A)
(43)【公開日】2018年11月22日
【審査請求日】2018年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114190
【氏名又は名称】ミナト医科学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193415
【弁理士】
【氏名又は名称】道端 裕行
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田所 克俊
【審査官】 村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−154909(JP,A)
【文献】 特開2006−212100(JP,A)
【文献】 特開2013−244177(JP,A)
【文献】 特開平10−015508(JP,A)
【文献】 特開2003−325628(JP,A)
【文献】 米国特許第04757808(US,A)
【文献】 特開2008−023147(JP,A)
【文献】 特開2017−169604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 9/00
A61H 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、前記水槽の上面に伸縮自在に張られた搭載膜と、前記搭載膜上のユーザに対して水圧を施すノズルと、前記ノズルを搭載する台車ユニットと、前記台車ユニットを前記水槽の長手方向に移動可能とする水平軸とを備え、前記ノズルは、前記水槽の短手方向に左右に配され、前記台車ユニット上で回転する回転ノズルと、前記台車ユニット上で固定された中央固定ノズルを有し、前記回転ノズルは、左右の回転ノズルに、夫々の噴流口を有し、その噴流口を前記台車ユニット上の回転軸から所定の距離を離して付すとともに、前記中央固定ノズルは、2つの噴流口を有し、人体の多裂筋をマッサージすべく、前記回転ノズルの中央付近に固定され、且つ、前記2つの噴流口の間隔を平均的な人体の左右の多裂筋の間隔相当としてなるウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項2】
前記左右の回転ノズルは、前記水槽の長手方向に2組有するとともに、前記頭部側の回転ノズルの回転軸から噴流口までの距離を前記足部側の回転ノズルの同距離より小さくしてなる請求項1記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項3】
前記中央固定ノズルを、前記水槽の長手方向に2組有する回転ノズルの中央付近に設けてなる請求項2記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項4】
前記左右の回転ノズルは、逆位相に同じ回転角速度で回転するとともに、前記頭部側左右の回転ノズルの噴流口間の最接近距離を足部側の同距離より大きくしてなる請求項2または3に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項5】
前記足部側の回転ノズルの回転角速度は、頭部側の同回転角速度と異なるものとしてなる請求項2〜4のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項6】
前記中央固定ノズルは、前記回転ノズルと同時使用する際に、その噴流圧を前記回転ノズルの噴流圧より大きくしてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項7】
前記中央固定ノズルの噴流口の直径を、前記回転ノズルの噴流口の直径より小さくしてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項8】
前記中央固定ノズルの噴流口と足部側の回転ノズルの噴流口との最近接距離を、足部側の左右の回転ノズルの噴流口の間の距離と同等以下としてなる請求項2〜のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項9】
前記頭部側の回転ノズルの直径と前記足部側の同直径を相違させるとともに、前記中央固定ノズルを、4ノズルの中央で、且つ、回転ノズルの直径が小さい側に寄せて配置してなる請求項2〜のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項10】
前記回転ノズルの回転角速度は、前記中央固定ノズルから噴流する場合と噴流しない場合で、異なるものとしてなる請求項1〜のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項11】
ユーザの上半身をマッサージする際に、前半工程における前記中央固定ノズルの使用頻度を、後半工程の同使用頻度に比べて多くしてなる請求項1〜1のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。
【請求項12】
ユーザの上半身をマッサージする際に、前記回転ノズルの駆動前に前記中央固定ノズルのみを駆動する期間を所定時間以上設けてなる請求項1〜1のいずれか1項に記載のウオータベッド型マッサージ装置。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許は、ウオータベッド型のマッサージ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウオータベッド型のマッサージ装置は、回転式のノズルを備え、当該回転ノズルを身長方向に沿って、上下に移動させることで、背中から脹脛まで、回転ノズルから噴き出される噴流の水圧で刺激を与えるものが一般的であった。
たとえば、特開2013-240553号に開示されるのは、図18に示すように、4つの回転ノズル30を備え、当該回転ノズル30を回転させることで、背中から脹脛までマッサージするものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-240553号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該従来技術の方式は、4つのノズルを備え、広い範囲でマッサージできる点では優れているが、腰痛等を患うユーザにとっては、必ずしも最適なマッサージを行うものではなかった。具体的には、4つのノズルについては、噴流の強さや、回転範囲等を変更でき、ユーザに必要な箇所を噴流によって押圧可能であるが、各ノズルによる噴流の組み合わせや、ユーザの押圧箇所の順番については、必ずしも、腰痛治療等を前提とした最適なものでは無かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、特に腰痛患者等、特定の疾患を患うユーザに対して、最適なマッサージを行うことを目的とする。そのために、本発明のウオータベッド型マッサージ装置は、水槽と、前記水槽の上面に伸縮自在に張られた搭載膜と、前記搭載膜上のユーザに対して水圧を施すノズルと、前記ノズルを搭載する台車ユニットと、前記台車ユニットを前記水槽の長手方向に移動可能とする水平軸とを備え、前記ノズルは、前記水槽の短手方向に左右に配され、前記台車ユニット上で回転する回転ノズルと、前記台車ユニット上で固定された中央固定ノズルを有し、前記回転ノズルは、左右の回転ノズルに、夫々の噴流口を有し、その噴流口を前記台車ユニット上の回転軸から所定の距離を離して付すとともに、前記中央固定ノズルは、2つの噴流口を有し、人体の多裂筋をマッサージすべく、前記回転ノズルの中央付近に固定され、且つ、前記2つの噴流口の間隔を平均的な人体の左右の多裂筋の間隔相当としてなるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、腰痛患者等に対して、深層筋である多裂筋等を中央固定ノズルを用いて解しつつ、その表層にある広背筋等を回転ノズルで解すことで、より効果的にマッサージ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るウオータベッド型マッサージ装置の全体構成を示した図(搭載膜及び装置側面のカバーを外した状態)
図2図2は、同ウオータベッド型マッサージ装置を用いてユーザをマッサージする様子を示した図
図3図3は、同ウオータベッド型マッサージ装置のノズル周辺の斜視図
図4図4は、同ウオータベッド型マッサージ装置の固定中央ノズルの斜視図
図5図5は、同ウオータベッド型マッサージ装置のノズルの上面図
図6図6は、同ウオータベッド型マッサージ装置の側面から見た概念図
図7図7は、同ウオータベッド型マッサージ装置のノズルの動きを上面から示した概念図
図8図8は、同ウオータベッド型マッサージ装置のマッサージパターンによるマッサージ部を示した図
図9図9は、同ウオータベッド型マッサージ装置の別のマッサージパターンによるマッサージ部を示した図
図10図10は、同ウオータベッド型マッサージ装置の更に別のマッサージパターンによるマッサージ部を示した図
図11図11は、本発明の第2の実施形態に係る同ウオータベッド型マッサージ装置の全体構成を示した図(搭載膜及び装置側面のカバーを外した状態)
図12図12は、同ウオータベッド型マッサージ装置に係る足部の動きを示した図
図13図13は、同ウオータベッド型マッサージ装置に係る踝固定部の主要構成図
図14図14は、同ウオータベッド型マッサージ装置に係る踝固定部の足パットを示した図
図15図15は、同ウオータベッド型マッサージ装置に係る踝固定部を用いたユーザの様子を示した図
図16図16は、本発明の第3の実施形態に係るウオータベッド型マッサージ装置のマグネットカップリングの取り付け状態を水槽の内側から示した図
図17図17は、同ウオータベッド型マッサージ装置のマグネットカップリングの取り付け状態を水槽の外側から示した図(搭載膜及び装置側面のカバーを外した状態)
図18図18は、従来のウオータベッド型マッサージ装置を示した概念図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態について、図1〜9を参照しながら説明する。本実施の形態では、合計4つの回転ノズルが配される。頭部側の回転ノズルの組1、足部側の回転ノズルの組2が、各々、歯車4を用いて連動して回転する(図3参照)。各回転ノズルの組(以後、「左右のノズル」という。)は、歯車4により、逆位相に同じ回転角速度で回転する。
【0009】
本実施形態では、足部側の回転ノズル2の歯車の谷位置までの直径は170mmであり、噴流口15から、回転軸までの距離は、55mmである(図5参照)。また、足部側の左右の回転ノズルの噴流口間の最接近距離は、65mmである(図5に示す噴流口15の状況)。同様に、頭部側の回転ノズル1の同直径は120mmであり、噴流口14から、回転軸までの距離は、35mmである。また、左右のノズルは、直接的には歯車4で接しておらず、その歯車の山位置の間の最短距離は、50mmである。頭部側の左右の回転ノズル1の噴流口間の最接近距離は、100mmである。また、回転ノズル1、2の中央付近に、中央固定ノズル3を設ける。この中央固定ノズル3は、2つの噴流口13を有する。その2つの噴流口間13の距離は、25mmである。
【0010】
以上の回転ノズル1、2と中央固定ノズル3は、台車ユニット5の上に搭載される。当該台車ユニット5は、水槽6内を身長方向に移動可能である(図6参照)。具体的には、水槽6の両端に、水平軸7の回転駆動部8と軸受け19を各々設け、回転駆動部8により水平軸7を回転させることで、ノズルを搭載した台車ユニット5を身長方向に移動する(以下、「縦移動」という)。水槽6の上面には、伸縮自在な搭載膜9が張ってあり、ノズルの噴流口からの水圧で上方に突出するように伸びる。当該水圧により、搭載膜9の上に仰向けに寝ているユーザをマッサージする。
【0011】
また、水槽6の水をノズルに送り込むポンプ10を備える(図6参照)。当該ポンプ10から送り込まれる水流は、水流ホース11を介して、各ノズルに供給される。回転ノズルの回転に要する駆動力は、水流ホース11から供給される水圧を利用しても良いが、回転ノズルの回転角速度を自由に制御するためには、独自の回転駆動モータ(図示せず)を有することが望ましい。また、水流ホース11は、各ノズルに対応して個々に設けていれば、ノズル毎に、異なる水圧でマッサージ可能だが、左右の回転ノズルの噴流口からの水圧は同一とする方が望ましいので、左右の回転ノズルには、同一の水流ホース11を分岐した水を供給する構造が望ましい。
【0012】
また、搭載膜9の上に寝ているユーザの身長を検出するセンサー(図示せず)を有する。身長センサーには、接触式や光学式など、様々な方式が採用可能だが、本実施形態では、ユーザの足部を固定する踝固定部12を備え、足の位置を確定するとともに、水槽の頭部側に頭部位置を検出するための赤外線センサー(図示せず)を取り付け、頭部位置を検出することで、背中や腰の位置を推測する。ユーザが寝た場合の搭載膜9の凹みの大きさ等を検出して、腰部や背中の位置を検出することも可能である。
【0013】
また、複数のマッサージパターンを記憶する記憶装置(図示せず)を備える。ユーザの好みやマッサージする箇所に応じて、記憶装置に記憶された複数のパターンから最適方法を選択する。たとえば、腰や脚を主体的にマッサージしたり、噴流圧の強さを変えたり、マッサージ時間を変えることができる。ユーザが個々に選択することも可能であるが、ユーザからの大まかな指示に従い、自動的に最適なマッサージパターンを選択することも可能である。
本実施形態では、回転ノズル1、2の中心軸は台車ユニット5上で固定されており、回転ノズル1、2の外周に配された歯車4を係合することで、全ての回転ノズル1、2を同時に回転させることができる。頭部側の回転ノズル1と足部側の回転ノズル2では、その直径が異なるため、頭部側の回転ノズル1の回転角速度が大きくなり、足部側の回転ノズル2に比べて速く回転する。
【0014】
中央固定ノズル3は、回転ノズル1、2の中央付近にあり、台車ユニット5の上で固定される。中央固定ノズル3の2つの噴流口13の間の距離は、平均的な人の左右の多裂筋の距離を想定して設けている。本実施形態では、この2つの噴流口13の間の距離は25mmで固定しているが、別途、駆動装置を設けて、ユーザごとに、その距離を変えることにより、更に最適なマッサージが可能である。
また、回転ノズル1、2の回転により、その噴流口14、15と中央固定ノズル3の噴流口13は、離れたり近づいたりするが、最接近する際の両者間の距離を、足部側の回転ノズル2の噴流口間の最接近時の距離(本実施形態では65mm)と同等か、それ以下とする。本実施形態では、60mmとする。中央固定ノズル3の2つの噴流口13の間の距離は近いため、ユーザによっては、一か所をマッサージしていると錯覚しやすい。回転ノズル1、2の噴流口14、15と中央固定ノズルの噴流口13の間の距離を、足部側の回転ノズル2の噴流口の最接近距離と同等レベルとすることで、マッサージ箇所が、集中したり、離散したりする感覚を適度に与えることができる。
【0015】
中央固定ノズル3は、頭部側と足部側の回転ノズル1、2の中央付近にあり、やや頭部側の回転ノズル1の側に寄せて配置される。頭部側の回転ノズル1は、足部側の回転ノズル2に比べて、回転径が小さく、回転角速度が大きい。そのため、足部側の回転ノズル2に比べて、同じ箇所を高頻度に繰り返してマッサージできる。頭部側の回転ノズルの左右の噴流口14の間の距離を首の幅程度の距離(本実施形態では100mm)とすることで、頭部付近をマッサージする際に、左右の僧帽筋や肩甲挙筋を重点的にマッサージすることができる。
【0016】
頭部側の回転ノズルのマッサージ範囲は、回転径が小さい分だけ、足部側の回転ノズル2の同範囲より狭くなる。そのため、頭部側の左右の回転ノズルを、中央部を空けて外側に離して配置する。同時に、その中央付近に中央固定ノズル3を配置することで、回転ノズルによるマッサージ範囲の狭さをカバーする。本実施形態では、頭部側の左右の回転ノズル1は、直接的には歯車で接しておらず、その歯車の山位置の間の最短距離は、50mmであり、噴流口間の最接近距離は、100mmである。また、頭部側の回転ノズル1の噴流口14と、中央固定ノズル3の噴流口13との間の最接近距離は、55mmに設定している。
【0017】
また、中央固定ノズル3は、頭部側と足部側の回転ノズル1、2の中央付近に設けているため、その噴流時の組み合わせにより、固定ノズル1と回転ノズル1、2の位置を有効に活用できる。具体的には、中央固定ノズル3と足部側の回転ノズル2のみを用いた場合、人体の背骨周辺の筋肉(多裂筋など)をマッサージしながら、そのやや足部側の筋肉(広背筋など)を回転ノズルによって広範囲にマッサージできる。同様に、頭部側の回転ノズル1と中央固定ノズル3を組み合わせれば、多裂筋をマッサージしながら、回転ノズル1によって僧帽筋等を広範囲にマッサージできる。
【0018】
また、慢性腰痛患者では、多裂筋が萎縮している場合が多い。多裂筋が萎縮すると脊椎の安定性が低下する。筋緊張が高い場合は、適切に筋収縮を得られないため、多裂筋のコンディションを整えることが腰痛患者に対して重要となる。特に、下位腰椎では、多裂筋の筋比率が高いため、その役割は重要である。脊椎障害の多くは下位腰椎に起こる可能性があり、多裂筋の萎縮と腰痛は密接に関係すると考えられる。ここで、多裂筋は深層筋であり、これをマッサージする際、その表層を広背筋と最長筋が覆っている。効果的に多裂筋をマッサージするため、腰椎の横突起周辺を中央固定ノズル3による噴流で押圧する。腰痛患者を効果的にマッサージする場合、その前半工程では、中央固定ノズル3の活用頻度を上げ(図8a参照)、多裂筋を重点的にほぐす。
【0019】
マッサージ行程が中盤に進むに連れて、多裂筋から、その周りの筋肉(広背筋等)にマッサージの重点を移す。そのため、中央固定ノズル3からの噴流頻度等が低くなり、徐々に回転ノズル1、2からの噴流頻度が上がる(図8b、図8c参照)。当該、割合の変化については、ユーザが選択したマッサージパターンや噴流の強さに応じて変更する。
また、本実施形態では、回転ノズル1、2の回転角速度は、中央固定ノズル3で多裂筋等をほぐす場合には、その回転角速度を抑え、中央固定ノズル3からの噴流が無い場合とは異なる動きとする。
【0020】
従来例のように、中央固定ノズルが無い構造であっても、図18に示す回転ノズル30の回転を止めて、ノズルを中央付近に位置させておけば、多裂筋付近を積極的に噴流することができる。
しかしながら、この場合には、回転ノズル30の2つの噴流口の間の最短距離を25mm程度まで、かなり近接させる必要がある。そのため、噴流口が、回転ノズルの最外周に近い位置に設置されることとなり、回転ノズル30を回転させてマッサージする場合の押圧範囲が過度に広範囲に分散する等の課題が生ずる。また、回転ノズル30の回転を止めて使用する際には、広背筋等を同時にマッサージすることができない。
【0021】
また、本実施形態では、中央固定ノズル3と回転ノズル1、2では、噴流口の径が異なる。中央固定ノズル3の噴流口13は、回転ノズル1、2の噴流口14、15より小さく構成され、その噴流は、回転ノズルの噴流と比べて、スポット的である。具体的には、本実施形態では、中央固定ノズル3の噴流口13の直径は7mmであり、回転ノズル1、2の噴流口14、15の直径11mmより小さい。当該構成により、多裂筋に対して、よりスポット的に噴流を当てることができる。また、中央固定ノズル3と回転ノズル1、2への給水に際して、同一の水流ホースからの分岐を利用する場合は、その噴流口の直径比分だけ、噴流圧を上げることが出来る。
【0022】
中央固定ノズル3と回転ノズル1、2を用いて上半身をマッサージする場合について、その一例を、図9を参照しながら説明する。当該マッサージ方法は、個人差もあるが、次ぎの方法等が効果的な方法の一つに挙げられる。まず、腰の中心部分をほぐすために、大臀筋の仙骨付近を中央固定ノズル3と、回転ノズル1、2を用いてマッサージする(図9a参照)。このとき、回転ノズル1、2は、仙骨付近を刺激するように、回転ノズル1、2の内側半周を往復する。次に、大臀筋の仙骨と反対側の箇所や小臀筋(仙骨とは離れたところ)を刺激するために、中央固定ノズル3からの噴流を止め(あるいは頻度を下げ)、回転ノズル1、2の外側半周を往復する(図9b参照)。この際、台車ユニット5を身長方向に縦移動させることで、その範囲を身長方向に広げることができる。また、頭部側の回転ノズル1を用いれば、よりスポット的に小さめの円周範囲で繰り返して刺激できるが、足部側の回転ノズルを用いても良い。その後、臀部全体を刺激する(図9c参照)。この際、足部側の回転ノズル2も用いてマッサージする。頭部側の回転ノズル1の同時使用を排除しない。
【0023】
その後、仙骨付近から11・12肋骨の付け根までの範囲(腰上部)を重点的にマッサージする。この際、背骨中央から3〜4cm外側を刺激する(図9d参照)。腰上部の次ぎは、仙骨から頚椎付近までの背骨中央付近の多裂筋を刺激する(図9e参照)。回転ノズルからの噴流を止めて、中央固定ノズルからの噴流を重点的に用いる。台車ユニットを身長方向に縦移動することで、多裂筋を頚椎付近から仙骨付近まで満遍なく刺激するが、特に、仙骨から腰上部間を重点的に往復させる。その後、回転ノズル1、2の内側1/4周分(90度)程度を往復させた噴流を加えることで、背骨中央付近から、徐々にその周辺にマッサージ範囲を広げ、次の段階に繋げる。
次の段階は、下肋骨から上肋骨の移動しながら、肋骨に沿う形で、内側から外側にノズルを動かす(図9f、図9g参照)。頭部側の3つの肋骨は真横方向に付いているが、その下の肋骨は、斜め下向きについているので、その形状に応じた回転ノズルの動かし方が望ましい。このとき、中央固定ノズル3からの噴流は、停止しても良い。
(実施の形態2)
【0024】
次に、脚部のマッサージの一例について、図10を参照しながら説明する。両脚の内側(図10a参照)をマッサージするには、中央固定ノズルを用いることができる。一方、大腿二等筋や下腿三頭筋の両脚の外側を積極的に刺激する場合には、回転ノズル1、2を外側の特定位相で回転を止めた状態で、台車ユニット5を縦移動する。
【0025】
中央固定ノズル3は、大臀筋や半腱様筋、下腿三頭筋等、両脚の後側で、内側にある筋肉のマッサージに効果的である。ただし、骨盤が歪んで上が開いていると、爪先を左右に広げながら、その両脚の前方部が大きく左右に開き易い(図12b参照)。また、左右の脚の間隔も人によるバラツキが大きい。そのため、そのままでは、特定の脚の筋肉を狙ってマッサージすることが難しい。
【0026】
そのため、足を効果的に固定する。従来構成でも、足を固定するものはあった。しかしながら、従来構成のものは、両足の中足骨や楔状骨付近を両側から抑えて固定するため、人によっては、圧迫感を伴う場合があった。本実施形態では、脚の裏内側の筋肉を中央固定ノズル3で効果的にマッサージするために、その対象となる箇所を搭載膜9の中央固定ノズル3の上方に当接することを主目的とする。そのため、従来技術のように、足の中足骨や楔状骨付近を両側から抑える必要は無い。本実施形態では、踝固定部12を設け、両足の左右の爪先を大きく開かせないために、その足底面に垂直方向の横壁面の踝に対応する箇所の最大高さを、爪先に対応する同高さの1.5倍以上とする(図13参照)。
【0027】
当該構成によって、ユーザが、踝固定部12に爪先側から入れ易く、且つ、治療時に抜け難くなる。なお、踝固定部12の内側には、図14に示すように、パッドを搭載する。当該パッドは、踝固定部の縦壁面と相似形として、足を挟んで両横壁面に配置する。
なお、本実施形態では、踝固定部12の上部に、操作部17を配置する。当該位置であれば、操作する人が、腰を屈ませずに、操作できる場合が多い。また、踝固定部12の足底面に垂直に立てた横壁面について、踝に対応する箇所の最大高さを、足底面の幅より大きくすることで、そのホルダー性を良くする。
(実施の形態3)
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る水平軸7の取付け構造について、図16、17を参照しながら説明する。水平軸7は、ノズルを搭載した台車ユニット5を身長方向に縦移動するため、水槽6の両側に回転駆動部8と軸受け19を設ける(図7参照)。回転駆動部8で水平軸7を回転させることで、その回転方向に応じて、台車ユニット5を意図する方向に移動させることができる。
従来技術では、回転駆動部に、歯車機構を用いた。しなしながら、ウオータベッド型のマッサージパターンは複雑多様化している。特に、本実施形態では、中央固定ノズル3を用いて、多裂筋や半腱様筋、下腿三頭筋等をマッサージするため、台車ユニット5を何度も上下に往復させる必要がある。そのため、従来の歯車機構では、バックラッシュによる振動が頻発する可能性がある。当該振動は、ウオータベッド上に寝ているユーザに伝わる場合がある。特に、台車ユニット5の動きを反対方向に切り替える場合には、噴流ノズルからの噴流を停止する場合もあり、振動に気づきやすい。そのため、マッサージパターンの複雑化と相まって、その振動音の低減は重要である。本実施形態では、回転駆動部8にマグネットカップリングを用いることで、水平軸7の上で縦移動する台車ユニット5の反転動作時の振動を低減できる。
【0029】
また、マグネットカップリングを用いる場合、磁気的な影響が外部に出ないように、その周囲をシールドしている。さらに、その磁気的影響を排除するために、その取り付け位置は、搭載膜9から100mm以上、できれば、150mm以上、下側に配することが望ましい。できるだけ人体から離すことで、不慮の事態を回避できる。
また、水平軸7と水槽6の熱膨張係数の違いから、水槽6に設けた軸受け19の位置が微妙にずれる場合がある。このずれは、水平軸7の回転時に、微妙なノイズ音を発生させる場合がある。当該状況でも、カップリング側は、磁気結合しているため、水平軸7と離れる虞が少なく安定している。そのため、マグネットカップリング(回転駆動部8)側の方が、軸受け19の側よりノイズ音が少なくなるので、マグネットカップリング(回転駆動部8)を頭部側に配することが望ましい。
【0030】
また、ポンプ10で供給する水流を台車ユニット5のノズルに供給するために、給水ホース11を水槽6の内側に配置するが、給水ホース11には、その強度を高めるために、表面近くに金網を配する場合がある。当該給水ホース11の金網にマグネットカップリング(回転駆動部8)の磁気が影響する場合がある。そのため、台車ユニット5の周囲に給水ホース11を引き回す場合は、マグネットカップリング(回転駆動部8)の反対側に引き回すことが望ましい。
また、操作部17は、ユーザのウオータベッドへの乗降時の便宜性を考慮して、製品の横側を避けて、頭部側か足部側に置く場合が多い。製造工程(水平軸7の取付け時)において、水平軸7に取り付けた回転駆動部8(マグネットカップリング)が、操作部17の電子機器に影響しないように、できるだけ操作部17と近接しないように、その反対側に配置することが望ましい。本実施形態では、踝固定部12の上部に操作部17を設けるため、マグネットカップリング(回転駆動部8)を頭部側に配置する。
【符号の説明】
【0031】
1 頭部側の回転ノズル
2 足部側の回転ノズル
3 中央固定ノズル
4 歯車
5 台車ユニット
6 水槽
7 水平軸
8 マグネットカップリング
9 搭載膜
10 ポンプ
11 給水ホース
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