(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6570206
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】積層造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/153 20170101AFI20190826BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20190826BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20190826BHJP
B29C 64/364 20170101ALI20190826BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20190826BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20190826BHJP
【FI】
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/364
B29C64/232
B29C64/245
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-181262(P2018-181262)
(22)【出願日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年11月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 秀二
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 強史
【審査官】
田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−109373(JP,A)
【文献】
特表平7−507508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/153
B29C 64/232
B29C 64/245
B29C 64/364
B33Y 10/00
B33Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブルと、
前記テーブルを囲繞し前記テーブルとともに材料粉体を保持する粉体保持壁と、
直線運動を出力する直動装置と、前記直線運動を前記テーブルに伝達し前記テーブルを垂直1軸方向に移動させる案内装置と、を含むテーブル駆動機構と、
前記テーブルの下方に設けられ前記テーブルと前記粉体保持壁の間から落下した前記材料粉体を貯留するバケットと、
前記テーブルと前記バケット間の前記テーブル駆動機構を囲繞するカバーと、を備え、
前記直動装置は、前記垂直1軸方向に延びるねじ軸と、前記ねじ軸に螺合するナットと、前記ねじ軸を回転させるモータと、を有する送りねじであり、
前記案内装置は、前記ねじ軸が挿通され前記ナットが固定され前記テーブルに固定されたポストと、前記ポストが挿通されるブッシュと、前記ポストと前記ブッシュ間に配置される転動体を保持するリテーナと、を有するガイド装置であり、
前記ねじ軸および前記ナットと、前記ポストおよび前記ブッシュとは、前記垂直1軸方向に沿って配置される、積層造形装置。
【請求項2】
前記テーブル上に所望の三次元造形物を所定厚で分割してなる複数の分割層毎に前記材料粉体が均一に撒布され材料粉体層が形成される、請求項1に記載の積層造形装置。
【請求項3】
前記テーブルの周縁に設けられ前記テーブルの移動時に前記粉体保持壁に摺動するシールをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の積層造形装置。
【請求項4】
前記バケットは、
前記テーブル駆動機構を囲繞する内側面と、
前記粉体保持壁に固定される外側面と、
前記内側面と前記外側面とを接続する底面と、を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項5】
前記バケットは、貯留した前記材料粉体が確認可能な透明窓を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項6】
前記バケットは、貯留した前記材料粉体の排出のために開閉または脱着可能な扉を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項7】
前記カバー内と前記カバー外の雰囲気を均圧にする均圧機構をさらに備える、請求項1から請求項6に記載の積層造形装置。
【請求項8】
前記均圧機構は前記カバー内および前記カバー外の雰囲気が流通可能な貫通孔であり、
前記均圧機構に設けられ前記材料粉体の通過を防止するフィルタをさらに備える、請求項7に記載の積層造形装置。
【請求項9】
前記均圧機構は、前記バケットに設けられる、請求項7または請求項8に記載の積層造形装置。
【請求項10】
前記カバーは、上端が前記テーブルに固定され、下端が前記バケットに固定される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項11】
前記カバーは、前記テーブルの移動に応じて伸縮可能である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【請求項12】
前記カバーは、蛇腹形状を有する、請求項11に記載の積層造形装置。
【請求項13】
前記カバー内に、前期テーブルの移動に応じて屈曲可能であり配線または配管を支持案内する収容部材が設けられる、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所望の三次元造形物を造形する積層造形法として、粉末積層造形方式と呼ばれる方式が知られている。本方式によれば、造形テーブル上に材料粉体を均一に撒布して材料粉体層を形成し、材料粉体層の所定箇所にレーザ光を照射して焼結させることによって焼結層を形成し、この焼結層の上に材料粉体を均一に撒布して新たな材料粉体層を形成し、その新たな材料粉体層にレーザ光を照射して焼結させることによって下の焼結層と接合した新たな焼結層を形成し、そしてこれらを繰り返すことによって、複数の焼結層を積層して一体となる焼結体からなる所望の三次元造形物を形成する。但し、レーザ光に代えて電子ビームを照射してもよいし、焼結層に代えて溶融層を形成してもよい。
【0003】
造形テーブルは、所望の三次元造形物が形成可能な領域である造形領域に、上下移動可能に構成される。材料粉体層の形成にあたり、造形テーブルは材料粉体層1層分の厚みだけ下降され、造形領域に供給された材料粉体がブレード等によって均されて所望の厚みの材料粉体層が形成される。
【0004】
材料粉体の供給にあたり、例えば、造形領域上を水平方向に移動可能なリコータヘッドが設けられ、リコータヘッドに貯留された材料粉体が造形領域に吐出される(特許文献1)。また、他の方法では、上下移動可能な材料テーブルを有し材料粉体を貯留する材料供給槽が設けられ、材料テーブルを上昇させることで所望量の材料粉体を計量して、当該材料粉体をブレード等で造形領域まで移送する(特許文献2)。以下、造形テーブルおよび材料テーブルを含んで単にテーブルという。
【0005】
テーブルの下には、テーブルを上下に移動させるテーブル駆動機構が設けられる。従来のテーブル駆動機構は、例えば、テーブル下に設けられるスライドベースと、ねじ軸とねじ軸に螺合するナットとねじ軸を回転させるモータを含む送りねじを支持するガイドベースとを備え、ナットはスライドベースの側面に固定される(特許文献3)。このように構成することで、高精度なテーブルの位置合わせを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5841650号公報
【特許文献2】特許第4996672号公報
【特許文献3】特許第6063081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
テーブルが上下移動する都合上、テーブルと、テーブルを囲繞する粉体保持壁の間には、僅かな隙間が存在する。そのため、当該隙間から材料粉体が漏出して積層造形装置内部に侵入する可能性がある。特に、材料粉体がテーブル駆動機構に悪影響を及ぼし、故障や精度低下を引き起こす可能性がある。
【0008】
従来のテーブル駆動機構においては、スライドベース等の案内装置と送りねじ等の直動装置が側面で接していた。また、ガイドベースを積層造形装置本体に固定する必要があった。そのため、テーブル駆動機構が比較的大型となり、テーブル駆動機構の直動装置と案内装置の両方をカバーで防塵しようとすると、機械の大型化を招く、カバー形状が複雑になるなどして、実現が設計上困難であった。また、たとえテーブル駆動機構を防塵できたとしても、積層造形装置内部に材料粉体が散乱する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、テーブルと粉体保持壁の間から積層造形装置内部に侵入した材料粉体からテーブル駆動機構を保護するとともに、侵入した材料粉体を回収することのできる積層造形装置を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、テーブルと、テーブルを囲繞しテーブルとともに材料粉体を保持する粉体保持壁と、直線運動を出力する直動装置と直線運動をテーブルに伝達しテーブルを垂直1軸方向に移動させる案内装置とを含むテーブル駆動機構と、テーブルの下方に設けられテーブルと粉体保持壁の間から落下した材料粉体を貯留するバケットと、テーブルとバケット間のテーブル駆動機構を囲繞するカバーと、を備え、
直動装置は、垂直1軸方向に延びるねじ軸と、ねじ軸に螺合するナットと、ねじ軸を回転させるモータと、を有する送りねじであり、案内装置は、ねじ軸が挿通されナットが固定されテーブルに固定されたポストと、ポストが挿通されるブッシュと、ポストとブッシュ間に配置される転動体を保持するリテーナと、を有するガイド装置であり、ねじ軸およびナットと、ポストおよびブッシュとは、垂直1軸方向に沿って配置される、積層造形装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る積層造形装置においては、侵入した材料粉体はバケットによって回収される。また、テーブル駆動機構は、カバーによって防塵される。ここで、カバー内の直動装置および案内装置は、テーブルの移動方向である垂直1軸に沿って配置されているので、カバーをよりコンパクトで簡易な形状に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の積層造形装置の概略構成図である。
【
図3】テーブル駆動機構の拡大図であり、テーブルが上限位置にある状態を示す。
【
図4】テーブル駆動機構の拡大図であり、テーブルが下限位置にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
図1に示すように、本発明の積層造形装置1は、チャンバ11と、材料粉体層形成装置2と、レーザ照射装置3と、を備える。
【0015】
所要の造形領域Rを覆うチャンバ11には不図示の不活性ガス供給装置により清浄な不活性ガスが供給され、材料粉体層93の焼結時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスがチャンバ11から排出される。このようにして、チャンバ11内には所定濃度の不活性ガスが充満され、材料粉体層93および焼結層95の変質を防止している。好ましくは、チャンバ11から排出された不活性ガスは、不図示のヒュームコレクタによってヒュームが除去され、チャンバ11内に返送される。なお、不活性ガスとは使用する材料粉体と実質的に反応しないガスをいい、例えば窒素またはアルゴンである。
【0016】
図1に示すように、チャンバ11内の造形室13には、造形領域Rに対して所望の三次元造形物を所定高さで分割してなる複数の分割層毎に材料粉体層93を形成する材料粉体層形成装置2が設けられる。材料粉体層形成装置2は、積層造形装置1の基台であるベッド15上に配置され造形領域Rを有するベース台21と、ベース台21上に配置され矢印Bで示す水平1軸方向であるB軸方向に往復移動するリコータヘッド23とを含む。リコータヘッド23の両側面にはそれぞれブレードが設けられる。リコータヘッド23は、材料供給装置25から材料粉体が供給され、内部に収容した材料粉体を底面から排出しながら往復移動し、ブレードは排出された材料粉体を平坦化して材料粉体層93を形成する。
【0017】
造形領域Rには、テーブル駆動機構5により、矢印Uで示す垂直1軸方向であるU軸方向に移動可能なテーブル41が設けられる。本実施形態におけるテーブル41は、いわゆる造形テーブルであり、テーブル41上に所望の三次元造形物を所定厚で分割してなる複数の分割層毎に材料粉体が均一に撒布され材料粉体層93が形成される。すなわち、テーブル41の高さを材料粉体層93の所定厚分下げ、リコータヘッド23をB軸方向に移動させることによって、所望の厚みの材料粉体層93が形成される。積層造形装置1の使用時には、通常はテーブル41上に造形プレート91が配置され、その上に1層目の材料粉体層93が形成される。なお、造形領域Rは積層造形物が形成可能な領域であり、造形領域Rに材料粉体層93が形成される。
【0018】
好ましくは、テーブル41内部には、テーブル41を所望の温度に調整可能に構成された温度調整装置43が設けられる。具体的な構成例として、
図2に示すように、テーブル41は、天板41aおよび3つの支持板41b,41c,41dを備え、天板41aと支持板41bとの間に加熱器43aが、支持板41cと支持板41dとの間に冷却器43bが設けられる。加熱器43aは、例えば、電熱器または熱媒体が流通される管路である。冷却器43bは、例えば、熱媒体が流通される管路である。テーブル駆動機構5の熱変位を防止するため、温度調整装置43とテーブル駆動機構5との間に一定の温度に保たれた恒温部が設けられてもよい。以上のように構成することで、材料粉体層93や焼結層95を所望の温度にコントロールすることが可能である。
【0019】
テーブル41の周りには、粉体保持壁45が設けられる。粉体保持壁45とテーブル41とによって囲まれる粉体保持空間Sには、材料粉体が保持される。
図3および
図4に示すように、テーブル41と粉体保持壁45は直接接触しておらず、テーブル41の周縁に配置されたシール47が粉体保持壁45に接触している。テーブル41がU軸方向に移動する際はシール47が粉体保持壁45に摺動される。このような構成によって、粉体保持空間Sからテーブル41下方に漏れ出す材料粉体の量を少量に抑えることができる。
【0020】
図3および
図4に示すように、テーブル41の下方には、テーブル駆動機構5、バケット6およびカバー7が設けられる。テーブル駆動機構5は、直線運動を出力する直動装置51と、直線運動をテーブル41に伝達しテーブル41をU軸方向に移動させる案内装置53と、を含む。バケット6は、テーブル41と粉体保持壁45の間から落下した材料粉体を貯留する。カバー7は、テーブル41とバケット6間においてテーブル駆動機構5を囲繞し、漏出した材料粉体がテーブル駆動機構5に進入することを防ぐ。ここで、少なくともカバー7内における直動装置51および案内装置53は、U軸方向に沿って直線上に配置される。そのため、テーブル駆動装置5をテーブル41の略中心軸上に省スペースで設けることができ、容易にテーブル41とバケット6間におけるテーブル駆動装置5全体をカバー7で覆うことが可能となる。
【0021】
直動装置51は、例えば、U軸方向に延びるねじ軸511と、ねじ軸511に螺合するナット513と、ねじ軸511を回転させるモータ515と、を有する送りねじである。より好ましくは、直動装置51はボールねじであり、ねじ軸511とナット513間に収容されたボールを介してナット513が移動する。
【0022】
案内装置53は、例えば、ポスト531と、ブッシュ533と、リテーナ535と、を有するガイド装置である。ポスト531にはねじ軸511が挿通され下端側にナット513が固定される。また、ポスト531の上端側はテーブル41に固定される。ブッシュ533にはポスト531が挿通され、下端側は積層造形装置1の機械構造物、ここではベッド15に固定される。
図5に示すように、リテーナ535はポスト531とブッシュ533間に配置される転動体537を保持する。転動体537としては、高い剛性を得ることができるニードルローラが望ましい。なお、
図5においてはブッシュ533を一部切断して案内装置53の内部構造を表示している。
【0023】
図3、
図4および
図6に示すように、バケット6は中央が貫通し、上部が開口した箱状形状を有する。換言すれば、バケット6は、テーブル駆動機構5を囲繞する内側面と、粉体保持壁45に固定される外側面と、内側面と外側面とを接続する底面と、を含んで構成される。バケット6には、貯留した材料粉体が確認可能な透明窓61が設けられる。なお、ここでいう透明とは、バケット6内部の材料粉体が確認可能な程度に透過性があるものを指し、いわゆる半透明も含まれる。また、バケット6には、貯留した材料粉体の排出のために開閉または脱着可能な扉63が設けられる。このようなバケット6によれば、積層造形装置1の作業者は、バケット6に落下した材料粉体の貯留量を透明窓61で確認し、必要に応じて扉63を開放または取り外し、材料粉体を回収することができる。実施形態のバケット6では、扉63は対向する一対の外側面に1つずつ設けられ、透明窓61は扉63が設けられた外側面とは異なる一対の外側面に2つずつ設けられているが、透明窓61および扉63の位置および個数は任意に設計可能である。なお、バケット6から材料粉体を回収するには、例えば吸引ノズルが用いられる。また、扉63近辺に材料粉体が貯留されるよう、バケット6の底面は少なくとも一部が傾斜して設けられてもよい。このようにすれば材料粉体の回収が容易になる。
【0024】
好ましくは、バケット6内には所定濃度の不活性ガスが充満されることが望ましい。実施形態においては、造形室13内に満たされる不活性ガスがテーブル41と粉体保持壁45間の隙間を通ってバケット6へと供給される。但し、バケット6に不活性ガスの供給口を設け、直接不図示の不活性ガス供給装置から不活性ガスを供給してもよい。不活性ガスにより材料粉体の変質が防止されるので、バケット6から回収した材料粉体を再利用できる。
【0025】
実施形態のバケット6では、材料粉体の貯留量の確認は透明窓61を介して作業者の目視で行ったが、例えばセンサによって貯留量が所定量に達したことを検知できるよう構成してもよい。また、バケット6からの材料粉体の回収は自動化してもよい。例えば、センサで貯留量が所定量に達したことを検知したとき、吸引ノズル等で材料粉体を回収するよう構成されてもよい。回収した材料粉体は材料供給装置25に返送されるよう構成されてもよい。
【0026】
カバー7は、例えば蛇腹形状を有し、テーブル41の移動に応じて伸縮可能に構成される。また、カバー7の上端側はテーブル41に固定され、下端側はバケット6に固定される。
【0027】
以上のようなカバー7によれば、テーブル41を移動させたときにカバー7内の雰囲気が圧縮または膨張される。そのため、カバー7内とカバー7外の雰囲気を均圧にする均圧機構65をさらに備えることが望ましい。均圧機構65は、例えば、カバー7内およびカバー7外の雰囲気が流通可能な貫通孔である。均圧機構65が貫通孔であるとき、材料粉体が貫通孔を通過するのを防ぐため、均圧機構65にはフィルタ67が設けられる。実施形態の均圧機構65は、
図6に示すようにバケット6に4つ設けられるが、均圧機構65の位置および個数は任意に設計可能である。
【0028】
なお、カバー7にはテーブル駆動機構5のほか、テーブル41またはテーブル41近辺に接続される、配管または配線が収納されてもよい。配管または配線としては、温度調整装置43の電熱器に電力を供給する配線、温度調整装置43の管路と接続され熱媒体を供排出する配管、またはテーブル41の上限位置または下限位置を検出する不図示のリミットスイッチの配線が例示される。これらの配管または配線は、カバー7内に設けられた、テーブル41の移動に応じて屈曲可能な収容部材8によって支持案内される。
【0029】
チャンバ11の上方にはレーザ照射装置3が設けられ、レーザ照射装置3から出力されたレーザ光Lは、チャンバ11に設けられたウインドウ17を透過して造形領域Rに形成された材料粉体層93の所定の照射領域に照射され、焼結層95を形成する。照射領域Rは、造形領域内に存在する焼結層95が形成される領域であり、所望の三次元造形物の輪郭形状で囲繞される領域とおおよそ一致する。レーザ照射装置3は、例えば
図7に示すように、レーザ光Lを生成するレーザ光源31と、レーザ光源31より出力されたレーザ光Lを平行光に変換するコリメータ33と、レーザ光源31より出力されたレーザ光Lを集光し所望のスポット径に調整するフォーカス制御ユニット35と、レーザ光Lを造形領域Rにおいて二次元走査可能とする一対のガルバノミラーであるX軸ガルバノミラー37およびY軸ガルバノミラー39と、を備える。X軸ガルバノミラー37およびY軸ガルバノミラー39は、不図示の制御装置から入力される回転角度制御信号の大きさに応じて回転角度が制御され、それぞれX軸,Y軸方向にレーザ光Lを走査させる。レーザ光Lは、材料粉体を焼結可能なものであればその種類は限定されず、例えば、CO
2レーザ、ファイバレーザ、YAGレーザである。ウインドウ17は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。例えば、レーザ光Lがファイバレーザ又はYAGレーザの場合、ウインドウ17は石英ガラスで構成可能である。
【0030】
ウインドウ17を覆うように汚染防止装置19が設けられる。汚染防止装置19は、供給された不活性ガスをウインドウ17下に充満させ、また不活性ガスを下方に向かって噴出させるように構成されている。こうして、レーザ光の経路からヒュームを排除するとともに、ヒュームによるウインドウ17の汚染を防止する。
【0031】
積層造形装置1は、切削装置をさらに備え、造形途中または造形後に焼結層95に対し切削加工を行ってもよい。例えば、切削装置は、エンドミル等の切削工具を回転させるスピンドルヘッドと、スピンドルヘッドが設けられ所望の位置に移動可能な加工ヘッドを有する。このような切削装置によれば、所定数の焼結層95を形成する度に、焼結層95の端面に対して切削加工を行うことができる。または、切削装置は、バイト等の切削工具を保持する旋回機構と、旋回機構が設けられた加工ヘッドを有する。このような切削装置によれば、造形後の積層造形物のテーブルに平行な面とテーブルに垂直で互いに垂直な2つの面に対して形削りを行い、2次加工を行う上での基準面を形成することができる。
【0032】
以上の通り、本発明の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態で示した各技術的特徴は、技術的に矛盾が生じない範囲で互いに組み合わせ可能である。これら実施形態および変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0033】
例えば、実施形態の積層造形装置1ではレーザ光Lによって焼結層95を形成したが、レーザ光Lに代えて電子ビームを照射してもよいし、焼結層95に代えて溶融層を形成してもよい。
【0034】
また、前述のとおり、本願発明における「テーブル」は、造形テーブルだけではなく材料テーブルも含まれる。すなわち、材料粉体層の形成にあたり、リコータヘッドに代えて、上下移動可能な材料テーブルを有し材料粉体を貯留する材料供給槽を設け、材料テーブルを上昇させることで所望量の材料粉体を計量して、当該材料粉体をブレード等で造形領域まで移送するよう構成される積層造形装置においては、造形テーブルと材料テーブルの少なくとも一方に本願発明が適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 積層造形装置
5 テーブル駆動機構
6 バケット
7 カバー
8 収容部材
41 テーブル
45 粉体保持壁
47 シール
51 直動装置
53 案内装置
61 透明窓
63 扉
65 均圧機構
67 フィルタ
93 材料粉体層
511 ねじ軸
513 ナット
515 モータ
531 ポスト
533 ブッシュ
535 リテーナ
537 転動体
【要約】 (修正有)
【課題】テーブルと粉体保持壁の間から積層造形装置内部に侵入した材料粉体からテーブル駆動機構を保護するとともに、侵入した材料粉体を回収することができる、積層造形装置の提供。
【解決手段】テーブル41と、テーブル41を囲繞しテーブル41とともに材料粉体を保持する粉体保持壁45と、直線運動を出力する直動装置51と、直線運動をテーブル41に伝達しテーブル41を垂直1軸方向に移動させる案内装置53と、を含むテーブル駆動機構5と、テーブル41の下方に設けられテーブル41と粉体保持壁45の間から落下した材料粉体を貯留するバケット6と、テーブル41とバケット6間のテーブル駆動機構5を囲繞するカバー7と、を備え、カバー7内の直動装置51および案内装置53は、垂直1軸方向に沿って配置される、積層造形装置が提供される。
【選択図】
図3