(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
噴射剤用充填空間と、各々独立した2つの原液用充填空間とを有し、当該2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備え、
当該二重構造容器における噴射剤用充填空間には、圧縮ガスよりなる噴射剤が充填され、
当該二重構造容器における第1の原液用充填空間内には、第1の原液組成物が充填され、当該二重構造容器における第2の原液用充填空間内には、第2の原液組成物が充填されており、
前記第1の原液組成物は、第1の媒体中に当該第1の媒体に溶解する第1の成分が含有された液状のものであり、
前記第2の原液組成物は、第2の媒体中に当該第2の媒体に溶解する第2成分が含有された、前記第1の原液組成物と混和しない液状のものであり、
前記第1の原液組成物および前記第2の原液組成物のいずれにも、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを乳化するための界面活性剤が含有されず、
前記第1の原液組成物および前記第2の原液組成物は、いずれも温度20℃における粘度が1〜1000mPa・sのものであり、
前記吐出機構は、第1の原液組成物および第2の原液組成物を微小液滴に分割して霧状に吐出させる機能を有するものであることを特徴とする2液混合型エアゾール製品。
前記吐出機構から吐出される第1の原液組成物および第2の原液組成物の混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の2液混合型エアゾール製品。
前記非油溶性成分が、美白成分、抗酸化成分、抗シワ成分、皮膜形成成分、保湿成分、殺菌成分、紫外線吸収成分、清涼化成分、収斂成分、温感成分、抗炎症成分、角層剥離成分、鎮痒成分、育毛成分および消臭成分からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の2液混合型エアゾール製品。
前記油溶性成分が、美白成分、抗酸化成分、抗シワ成分、皮膜形成成分、保湿成分、殺菌成分、紫外線吸収成分、清涼化成分、収斂成分、温感成分、抗炎症成分、角層剥離成分、鎮痒成分、育毛成分および消臭成分からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の2液混合型エアゾール製品。
前記吐出機構が、吐出される第1の原液組成物および第2の原液組成物を通過させながら微小液滴に分割する旋回通路を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の2液混合型エアゾール製品。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の2液混合型エアゾール製品は、噴射剤用充填空間と、各々独立した2つの原液用充填空間とを有し、当該2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に霧状に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器を備えている。この二重構造容器においては、噴射剤用充填空間内に圧縮ガスよりなる噴射剤が充填されており、それと共に、第1の原液用充填空間内に第1の原液組成物が充填され、第2の原液用充填空間内に第2の原液組成物が充填されている。
この本発明の2液混合型エアゾール製品においては、第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々から同時に吐出される第1の原液組成物および第2の原液組成物は、吐出機構によって微小液滴に分割されて霧状とされる。すなわち、本発明の2液混合型エアゾール製品は、第1の原液組成物と第2の原液組成物との混合物が霧状の吐出物として得られるものである。
【0017】
本発明の2液混合型エアゾール製品において、第1の原液組成物は、第1の媒体中に当該第1の媒体に溶解する第1の成分が含有された液状のものであり、一方、第2の原液組成物は、第2の媒体中に当該第2の媒体に溶解する第2の成分が含有された、第1の原液組成物と混和しない液状のものである。すなわち、第1の原液組成物と第2の原液組成物とは、互いに混和しないものであり、2種類の液体(具体的には、第1の媒体および第2の媒体)を、各液体に溶解する有効成分の媒体として用いたものである。
そして、第1の原液組成物を組成する第1の媒体および第1の成分、および第2の原液組成物を組成する第2の媒体および第2の成分は、本発明の2液混合型エアゾール製品の使用用途などに応じて適宜に選択される。
【0018】
本発明の2液混合型エアゾール製品における第1の原液組成物および第2の原液組成物の好ましい具体例としては、下記の(1)〜(3)の例が挙げられる。
(1)第1の具体例は、第1の原液組成物が、水を主成分とする第1の媒体中に水溶性成分よりなる第1の成分が含有されたものであり、第2の原液組成物が、水と混和しない油性媒体よりなる第2の媒体中に油溶性成分よりなる第2の成分が含有されたものである。
(2)第2の具体例は、第1の原液組成物が、アルコールを主成分とする第1の媒体中にアルコール溶性成分よりなる第1の成分が含有されたものであり、第2の原液組成物が、当該第1の媒体を構成するアルコールと混和しない油性媒体よりなる第2の媒体中に油溶性成分よりなる第2の成分が含有されたものである。
(3)第3の具体例は、第1の原液組成物が、油性媒体よりなる第1の媒体中に油溶性成分よりなる第1の成分が含有されたものであり、第2の原液組成物が、当該第1の媒体を構成する油性媒体と混和しない油性媒体よりなる第2の媒体中に油溶性成分よりなる第2の成分が含有されたものである。ここに、第1の成分を構成する油溶性成分は、第1の媒体を構成する油性媒体には溶解するものの、第2の媒体を構成する油性媒体には溶解しないものであり、一方、第2の成分を構成する油溶性成分は、第2の媒体を構成する油性媒体には溶解するものの、第1の媒体を構成する油性媒体には溶解しないものである。
【0019】
また、本発明の2液混合型エアゾール製品は、前記の(1)〜(3)に限定されるものではなく、その他のものであってもよい。例えば、本発明の2液混合型エアゾール製品は、第1の原液組成物と第2の原液組成物とが混和しないものであれば、当該第1の原液組成物を構成する第1の媒体と当該第2の原液組成物を構成する第2の媒体とは混和するものであってもよい。
【0020】
以下、第1の原液組成物および第2の原液組成物としては、第1の原液組成物が非油性媒体(具体的には、水およびアルコール)よりなる第1の媒体中に非油溶性成分(具体的には、水溶性成分およびアルコール溶性成分)よりなる第1の成分が含有された液状のものであり、第2の原液組成物が水またはアルコールと混和しない油性媒体(具体的には、液状油)よりなる第2の媒体中に油溶性成分よりなる第2の成分が含有された液状のものである場合について、詳細に説明する。
【0021】
(第1の原液組成物)
第1の原液組成物は、水を主成分とし、必要に応じてアルコールなどが含有された第1の媒体中に水溶性成分よりなる第1の成分が含有された液状のもの、またはアルコールを主成分とし、必要に応じて水などが含有された第1の媒体中にアルコール溶性成分よりなる第1の成分が含有された液状のものである。
【0022】
第1の原液組成物における第1の媒体を構成する水としては、精製水あるいはイオン交換水などが用いられる。
また、第1の媒体を構成するアルコールとしては、エタノールなどが用いられる。
【0023】
第1の媒体の含有割合は、第1の原液組成物100質量%において80.0〜99.9質量%であることが好ましい。
第1の媒体の含有割合が過大である場合には、第1の成分を十分な割合で含有させることができなくなるおそれがある。
一方、第1の媒体の含有割合が過小である場合には、吐出物が霧状になり難くなる。また、特に人体用として適用する場合においては、良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0024】
第1の原液組成物の必須成分である第1の成分は、有効成分を構成し、適用が目的とされるものである。
ここに、第1の成分は、必ずしも2液混合型エアゾール製品の用途との関係における有効成分でなくてもよく、例えば主たる有効成分に対する助剤、副次的な有効成分であってもよい。
【0025】
第1の原液組成物において、非油溶性成分よりなる第1の成分は、美白成分、抗酸化成分、抗シワ成分、皮膜形成成分、保湿成分、殺菌成分、紫外線吸収成分、清涼化成分、収斂成分、温感成分、抗炎症成分、角層剥離成分、鎮痒成分、育毛成分および消臭成分からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0026】
美白成分としては、例えばアルブチン、トラネキサム酸、コウジ酸、ハイドロキノン、ビタミンCおよびビタミンC誘導体などが挙げられる。
抗酸化成分としては、例えばポリフェノールなどが挙げられる。
抗シワ成分としては、例えばグリセリンおよびヒアルロン酸などが挙げられる。
皮膜形成成としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびカチオン化セルロースなどが挙げられる。
保湿成分としては、例えばアミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、グリセリンおよびポリエチレングリコールなどが挙げられる。
殺菌成分としては、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジンおよびヒノキチオールなどが挙げられる。
紫外線吸収成分としては、例えばフェニルベンズイミダゾールスルホン酸などが挙げられる。
収斂成分としては、例えばクエン酸、コハク酸、タンニン酸、ハマメリス水およびアロエ、スルホ石炭酸亜鉛などが挙げられる。
抗炎症成分としては、例えばグリチルリチン酸ジカリウム、アロエ抽出液およびシソ抽出液などが挙げられる。
角層剥離成分としては、例えばサリチル酸、乳酸、硫黄およびレゾルシンなどが挙げられる。
鎮痒成分としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミンおよびマレイン酸クロルフェニラミンなどが挙げられる。
育毛成分としては、例えばセンブリエキス、アデノシン、パントテン酸カルシウムおよびアセチルパントテニルエチルエーテルなどが挙げられる。
消臭成分としては、例えば緑茶エキスおよびミョウバンなどが挙げられる。
【0027】
第1の成分の含有割合は、第1の原液組成物100質量%において0.1〜20質量%であることが好ましい。
第1の成分の含有割合が過大である場合には、第1の成分が第1の原液組成物中において十分に溶解されなくなるおそれがある。
一方、第1の成分の含有割合が過小である場合には、第1の成分に係る効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0028】
第1の原液組成物には、必須成分である、第1の媒体(非油性媒体)および第1の成分(非油溶性成分)の他、必要に応じて任意成分が含有されていてもよい。
任意成分としては、例えば防腐剤、色素および香料などが挙げられる。また、任意成分として界面活性剤を用いることもできる。
【0029】
以上のような必須成分および任意成分により構成される第1の原液組成物は、温度20℃における粘度が1〜1000mPa・sとされ、好ましくは1〜500mPa・sである。
【0030】
第1の原液組成物の粘度が過大である場合には、第1の原液組成物を霧状に吐出することが困難となる。また、第2の原液組成物の吐出量との関係における所期の吐出量が得られなくなるおそれがある。
【0031】
(第2の原液組成物)
第2の原液組成物は、第1の原液組成物における第1の媒体を構成する非油性媒体と混和しない液状油よりなる第2の媒体中に、油溶性成分よりなる第2の成分が含有された液状のものである。
【0032】
第2の原液組成物の必須成分である第2媒体を構成する油性媒体としては、常温において液状の液状油が用いられる。
この第2媒体を構成する液状油は、炭化水素化合物、エステル化合物、シリコン化合物、油脂および高級アルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
炭化水素化合物としては、例えばケロシン、軽油、ミネラルオイル、スクワラン、流動パラフィンおよび軽質イソパラフィンなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えばミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチルヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、リノール酸エチル、サリチル酸ブチルオクチル、エチルヘキサン酸セチル、オリーブ脂肪酸エチル(オレイン酸エチル)等の脂肪酸エステル;トリエチルヘキサノイン、モノカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等の多価アルコール脂肪酸エステル;アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の多塩基酸エステルなどが挙げられる。
シリコン化合物としては、例えばジメチコン、シクロペンタシロキサンおよびカプリリルメチコンなどが挙げられる。
油脂としては、例えば白樺油、ローズヒップオイル、ホホバ油、大風子油、ひまわり油、グレープシードオイル、アボカドオイル、ヘーゼルナッツオイル、山茶花油、ブロッコリーシードオイル、ババスオイル、バオバブオイル、巴豆油、オリーブ油、コーヒー豆油、ひまし油、糠油、パーム油、パーム核油、桐油、モモ核油、チェリー油、グランベリーシードオイル、ナンヨウアブラギリ油、ショートニング、サラダ油、白絞油、紫蘇油、ペカンナッツオイル、ピスタチオオイル、荏油、榧油、杏仁油、アケビ油、コーン油、烏臼油、マカダミアナッツオイル、亜麻仁油、ヤシ油、シーバクソン、綿実油、麻実油、葡萄油、けし油、からし油、椿油、小麦胚芽油、月見草油、ピーナッツオイル、パンプキンシードオイル、ローレルオイル、紅花油、アルガンオイル、メドウフォーム油、マルーラナッツオイル、ざくろ種油、ココナッツオイル、ニーム油、大豆油、キウイフルーツシードオイル、モンゴンゴオイル、胡桃油等の植物油脂;ラノリン、馬油、ミンクオイル、スクワレン等の動物性油脂などが挙げられる。
高級アルコールとしては、例えばヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノールおよびオレイルアルコールなどが挙げられる。
【0034】
第2の媒体の含有割合は、第2の原液組成物100質量%において40.0〜99.9質量%であることが好ましい。
第2の媒体の含有割合が過大である場合には、第2の成分を十分な割合で含有させることができなくなるおそれがある。また、特に人体用として適用する場合においては、吐出物がベタツキ感を有するものとなって良好な使用感を得られなくなるおそれがある。
一方、第2の媒体の含有割合が過小である場合には、第2の成分を第2の原液組成物中において十分に溶解させることができなくなるおそれがある。
【0035】
第2の原液組成物の必須成分である第2の成分は、非油性媒体に不溶性の物質であり、有効成分を構成し、適用が目的とされるものである。
ここに、第2の成分は、必ずしも2液混合型エアゾール製品の用途との関係における有効成分でなくてもよく、例えば主たる有効成分に対する助剤、副次的な有効成分であってもよい。
【0036】
第2の原液組成物において、油溶性成分よりなる第2の成分は、美白成分、抗酸化成分、抗シワ成分、皮膜形成成分、保湿成分、殺菌成分、紫外線吸収成分、清涼化成分、収斂成分、温感成分、抗炎症成分、角層剥離成分、鎮痒成分、育毛成分および消臭成分からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0037】
抗酸化成分としては、例えばアスタキサンチンおよびビタミンEなどが挙げられる。
抗シワ成分としては、例えばレチノールおよびレチノイン酸などが挙げられる。
皮膜形成成分としては、例えばニトロセルロース、高分子シリコーンおよびシリコーンレジンなどが挙げられる。
保湿成分としては、例えばワセリンなどが挙げられる。
殺菌成分としては、例えばピロクトンオラミンおよびイソプロピルメチルフェノールなどが挙げられる。
紫外線吸収成分としては、例えばメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、オクトクリレン、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシジベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンおよびメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールなどが挙げられる。
清涼化成分としては、例えばメントール、乳酸メンチル、ハッカ油、ペパーミント油、カンフル、チモールおよびサリチル酸メチルなどが挙げられる。
温感成分としては、例えばカプサイシンなどが挙げられる。
抗炎症成分としては、例えばグリチルレチン酸およびアズレンなどが挙げられる。
鎮痒成分としては、例えばカンフルおよびメントールなどが挙げられる。
【0038】
第2の成分の含有割合は、第2の原液組成物100質量%において0.1〜60質量%であることが好ましい。
【0039】
第2の成分の含有割合が過大である場合には、第2の成分が第2の原液組成物中において十分に溶解されなくなるおそれがある。
一方、第2の成分の含有割合が過小である場合には、第2の成分に係る効果が十分に得られなくなるおそれがある。
【0040】
第2の原液組成物には、必須成分である、第2の媒体(液状油)および第2の成分(油溶性成分)の他、必要に応じて任意成分が含有されていてもよい。
任意成分としては、例えばエタノール等のアルコールなどが挙げられる。また、任意成分として、界面活性剤を用いることもできる。
【0041】
以上のような必須成分および任意成分により構成される第2の原液組成物は、温度20℃における粘度が1〜1000mPa・sとされ、好ましくは1〜500mPa・sである。
【0042】
第2の原液組成物の粘度が過大である場合には、第2の原液組成物を霧状に吐出することが困難となる。また、第1の原液組成物の吐出量との関係における所期の吐出量が得られなくなるおそれがある。
【0043】
(噴射剤)
噴射剤としては、圧縮ガスが用いられる。
圧縮ガスとしては、例えば亜酸化窒素ガス、窒素ガス、炭酸ガスまたはこれらの混合ガスなどが挙げられる。
この噴射剤は、第1の原液組成物と第2の原液組成物とが同時に吐出されることに伴って、噴射剤用充填空間から二重構造容器の外部に吐出されることはない。
【0044】
また、噴射剤は、二重構造容器に充填されたときの圧力が25℃で0.3〜1.2MPaとなるように封入されていることが好ましい。
噴射剤の充填圧力(製品内圧)が過大である場合および過小である場合には、いずれの場合においても良好な噴射状態を得ることができなくなるおそれがある。
【0045】
(二重構造容器)
本発明の2液混合型エアゾール製品を構成する二重構造容器は、噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間と共に、第1の原液組成物を充填するための第1の原液用充填空間と、第2の原液組成物を充填するための第2の原液用充填空間とを有しており、これらの第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々から、第1の原液組成物および第2の原液組成物を同時に霧状に吐出させるための吐出機構が設けられてなる構成のものである。
本発明に係る二重構造容器の具体例としては、例えば
図1および
図2によって示される下記の容器が挙げられる。
【0046】
図1は、本発明の2液混合型エアゾール製品において用いられる二重構造容器の構成の一例を示す説明図であり、
図2は、
図1の二重構造容器におけるアクチュエータの断面を示す断面図である。
この二重構造容器10は、エアゾール用バルブ12が設けられている金属製の耐圧容器11を備えている。この耐圧容器11の内部には、第1の原液組成物を充填するための第1の原液用充填空間を区画する、例えばアルミラミネートフィルムよりなる第1の内袋15Aと、第2の原液組成物を充填するための第2の原液用充填空間を区画する、例えばアルミラミネートフィルムよりなる第2の内袋15Bが設けられていると共に、耐圧容器11、第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々の間の間隙によって噴射剤を充填するための噴射剤用充填空間が形成されている。また、エアゾール用バルブ12には、第1のハウジング13A内および第2のハウジング13B内の各々において上下方向に移動可能に配置された、内部にステム通路を有する第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが設けられており、これらの第1のステム14Aおよび第2のステム14Bの上端には、共通のアクチュエータ21が設けられている。
図の例において、16Aは、エアゾール用バルブ12を構成する第1のハウジング13Aの下端において第1のステム14Aのステム通路に連通し、第1の内袋15A内を耐圧容器11の底部に向かって伸びる第1のディップチューブである。また16Bは、エアゾール用バルブ12を構成する第2のハウジング13Bの下端において第2のステム14Bのステム通路に連通し、第2の内袋15B内を耐圧容器11の底部に向かって伸びる第2のディップチューブである。
図1においては、耐圧容器11およびアクチュエータ21の内部に位置する構成要素を破線にて示す。
【0047】
そして、共通のアクチュエータ21には、第1のステム14Aのステム通路に連通する第1のアクチュエータ通路22Aと、第2のステム14Bのステム通路に連通する第2のアクチュエータ通路22Bと、これらの第1のアクチュエータ通路22Aおよび第2のアクチュエータ通路22Bと一端において連通し、他端において噴口形成部材24の吐出口24Aと連通するL字状の混合用空間23が設けられている。この混合用空間23には、第1の原液組成物および第2の原液組成物を通過させながら微小液滴に分割する機能を有する旋回通路23Aが設けられている。
このように、第1の原液用充填空間を形成する第1の内袋15Aに係る第1のステム14Aと、第2の原液用充填空間を形成する第2の内袋15Bに係る第2のステム14Bとに共通のアクチュエータ21を設けることにより、第1の内袋15A内に充填される第1の原液組成物と、第2の内袋15B内に充填される第2の原液組成物とを、それぞれ第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bから同時に霧状に吐出させるための吐出機構が形成されている。
【0048】
このような構成の二重構造容器10は、耐圧容器11内において、第1の内袋15A内に第1の原液組成物が充填され、また第2の内袋15B内に第2の原液組成物が充填されると共に、当該耐圧容器11、第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々の間の間隙よりなる噴射剤用充填空間に噴射剤が充填されることにより、耐圧容器11内が噴射剤によって常に加圧された状態とされる。そのため、アクチュエータ21を作動(押下操作)することにより、噴射剤の圧力によって第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bが収縮することに伴って当該第1の内袋15Aおよび第2の内袋15Bの各々から第1の原液組成物および第2の原液組成物が同時に吐出され、当該アクチュエータ21の吐出口24Aから、第1の原液組成物と第2の原液組成物との混合物が霧状に吐出されることとなる。
【0049】
具体的には、第1の原液組成物、第2の原液組成物および噴射剤が充填された二重構造容器10においては、アクチュエータ21が押下操作されない非作動時には、第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが上方に押し上げられて当該第1のステム14Aおよび第2のステム14Bのステム通路が耐圧容器11の内部と遮断された状態とされる。一方、アクチュエータ21が押下操作された作動時には、第1のステム14Aおよび第2のステム14Bが押し下げられて当該第1のステム14Aおよび第2のステム14Bのステム通路が同時に耐圧容器11の内部と連通された状態とされる。そして、耐圧容器11内における、第1の内袋15A内の第1の原液組成物および第2の内袋15B内の第2の原液組成物は、各々、第1のディップチューブ16Aおよび第2のディップチューブ16Bにより形成される液体用流路を流通して同時に吐出される。このようにして同時に吐出された第1の原液組成物と第2の原液組成物とは、各々、エアゾール用バルブ12における第1のステム14Aおよび第2のステム14Bに係るステム通路、アクチュエータ21における第1のアクチュエータ通路22Aおよび第2のアクチュエータ通路22Bを介して、混合用空間23に至り、この混合用空間23において混合され、更に旋回通路23Aを通過する過程において、微小液滴に分割され、吐出口24Aから霧状に吐出される。
【0050】
以上のような構成を有する二重構造容器においては、吐出機構により、第1の原液用充填空間に充填されている第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間に充填されている第2の原液組成物とを同時に霧状に吐出させることができると共に、第1の原液用充填空間からの第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間からの第2の原液組成物の吐出量とを適切な量比、具体的には略同量となるように調整することができる。
【0051】
本発明の2液混合型エアゾール製品においては、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物との混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が0.8:1.2〜1.2:0.8であることが好ましい。
すなわち、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量および第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量のそれぞれが、当該第1の原液組成物の吐出量と第2の原液組成物の吐出量との平均値に対して±20%以内の範囲内にあることが好ましい。
ここに、混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)は、例えば第1の原液組成物の温度20℃における粘度を1〜1000mPa・sとし、第2の原液組成物の温度20℃における粘度を1〜1000mPa・sとすることにより、上記の範囲内とすることができる。
【0052】
混合比(第1の原液組成物の質量:第2の原液組成物の質量)が上記の範囲外である場合には、第1の原液用充填空間から吐出される第1の原液組成物の吐出量と、第2の原液用充填空間から吐出される第2の原液組成物の吐出量との差が大きくなる。そのため、吐出物に、所期の作用効果、および人体に適用した場合における良好な使用感が得られなくなるおそれがある。
【0053】
以上のような本発明の2液混合型エアゾール製品は、二重構造器内における第1の原液用充填空間および第2の原液用充填空間の各々に第1の原液組成物および第2の原液組成物を充填すると共に、噴射剤用充填空間に噴射剤を充填することによって製造される。
【0054】
而して、本発明の2液混合型エアゾール製品においては、2つの原液用充填空間に充填された内容物を同時に霧状に吐出させるための吐出機構が設けられてなる二重構造容器が備えられている。また、2つの原液用充填空間の一方には、特定の粘度の第1の原液組成物が充填され、他方には、当該第1の原液組成物と混和しない、特定の粘度の第2の原液組成物が充填されている。
そのため、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを乳化するための界面活性剤が必要とされず、また第1の原液組成物および第2の原液組成物の各々においては、処方設計に大きな自由度が得られ、優れた処方安定性が得られる。
その上、二重構造容器における2つの原液用充填空間の各々から第1の原液組成物と第2の原液組成物とを同時に適切な量で吐出させることができることから、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを常に一定の量比で混合することができ、一方の原液組成物の吐出量が他方の原液組成物の吐出量に比して過剰となることがない。また、適用箇所に対して、吐出物を薄く均一に適用することができる。その結果、単に吐出機構を作動させる、具体的には例えばアクチュエータを1回押下操作(1プッシュ)することのみによって第1の原液組成物および第2の原液組成物を吐出させることにより、常に、適用箇所に対して、所期の作用効果の得られる、すなわち所期の組成を有する吐出物を、所期の量で適用することができる。
従って、本発明の2液混合型エアゾール製品によれば、優れた処方安定性が得られ、また第1の原液組成物と第2の原液組成物とが所期の割合で混合された混合物を、適用箇所に対して所期の適用量で均一に適用することが容易にできる。しかも、界面活性剤の配合に起因するベタツキ感の発生を防止または抑制することができるため、人体に適用した場合において、良好な使用感を得ることができる。
この本発明の2液混合型エアゾール製品においては、処方安定性等の観点から同一原液中において組み合わせて用いることが難しいとされている有効成分を、弊害を伴わずに併用することができる。具体的には、ビタミンC(水溶性成分)とビタミンE(油溶性成分)とを組み合わせて用いることができ、またアロエエキス(水溶性成分)とメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(油溶性成分)とを組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、本発明の2液混合型エアゾール製品においては、第1の原液組成物および第2の原液組成物の噴射剤として不燃性の圧縮ガスが用いられていることから、使用環境によらずに高い安全性が得られ、またエアゾール容器を廃棄する際において爆発事故が発生するおそれがない。
また、適用に際して、第1の原液組成物および第2の原液組成物の各々が容器外の空気に曝されることがないことから、長期間にわたる保存安定性を得ることができる。
【0056】
また、本発明の2液混合型エアゾール製品においては、吐出物として霧状のものが得られることから、適用箇所などにおいて、第1の原液組成物と第2の原液組成物とを混合する必要がなく、適用された吐出物を塗り広げたりする必要もないことから、容易に適用することができる。
【0057】
このような本発明の2液混合型エアゾール製品は、人体用品、日用品および食品などの様々な用途に用いることができるが、人体に適用されたときに良好な使用感が発揮されるため、特に人体用として好適に用いることができる。
人体用としては、例えば美白剤、美容剤、日焼け止め剤、化粧下地剤、皮膚保護剤、保湿剤、ヘアスタイリング剤、ヘアワックス剤、ヘアトリートメント剤、育毛剤、マッサージング剤、シェービング剤などとして用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0059】
〔実施例1:美容剤として用いられる2液混合型エアゾール製品の製造〕
<第1の原液組成物の調製>
下記の各成分を混合することにより、第1の原液組成物を調製した。
得られた第1の原液組成物について、BM型回転粘度計(ローターNo.1,60rpm,1分後)を用いて温度20℃における粘度を測定したところ、50mPa・sであった。
【0060】
(第1の原液組成物の組成)
水:93.96質量%
ヒアルロン酸ナトリウム:0.01質量%
ビタミンC誘導体(アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム):0.40質量%
1,3−ブチレングリコール:5.00質量%
フェノキシエタノール:0.30質量%
クエン酸:0.02質量%
クエン酸ナトリウム:0.01質量%
「ローズマリー抽出液BG−J」(丸善製薬社製):0.10質量%
「カミツレ抽出液BG−J」(丸善製薬社製):0.10質量%
「シャクヤク抽出液BG−JC」(丸善製薬社製):0.10質量%
合計:100.00質量%
【0061】
<第2の原液組成物の調製>
下記の各成分を混合することにより、第2の原液組成物を調製した。
得られた油性原液組成物について、BM型回転粘度計(ローターNo.2,60rpm,1分後)を用いて温度20℃における粘度を測定したところ、100mPa・sであった。
【0062】
(第2の原液組成物の組成)
ミネラルオイル:76.30質量%
ビタミンE(酢酸トコフェロール):0.20質量%
ジメチコン:2.00質量%
シクロペンタシロキサン:20.00質量%
ホホバ油:0.50質量%
オリーブ油:0.50質量%
スクワラン:0.50質量%
合計:100.00質量%
【0063】
<2液混合型エアゾール製品の作製>
図1および
図2に示す構成の二重構造容器を用意し、当該二重構造容器の第1の原液用充填空間内(第1の内袋内)に第1の原液組成物を充填し、第2の原液用充填空間内(第2の内袋内)に第2の原液組成物を充填すると共に、噴射剤用充填空間内に噴射剤として窒素ガスを、当該二重構造容器内における製品内圧が25℃で0.7MPaとなるように充填することにより、美容剤として用いられる2液混合型エアゾール製品を作製した。この2液混合型エアゾール製品において、第1の原液組成物は、第1の媒体が水を含有し、水溶性成分よりなる第1の成分として、ビタミンC誘導体(美白成分)が含有された水性美容剤用液状化粧料である。一方、第2の原液組成物は、第2の媒体がミネラルオイルおよびシクロペンタシロキサンを含有し、油溶性成分よりなる第2成分として、ビタミンEが含有された油性美容剤用液状化粧料である。
【0064】
〔実施例2:日焼け止め剤として用いられる2液混合型エアゾール製品の製造〕
<第1の原液組成物の調製>
下記の各成分を混合することにより、第1の原液組成物を調製した。
得られた第1の原液組成物について、BM型回転粘度計(ローターNo.1,60rpm,1分後)を用いて温度20℃における粘度を測定したところ、50mPa・sであった。
【0065】
(第1の原液組成物の組成)
精製水:97.7質量%
グリセリン:2.00質量%
アロエエキス:0.1質量%
メチルパラベン:0.2質量%
合計:100.0質量%
【0066】
<第2の原液組成物の調製>
下記の各成分を混合することにより、第2の原液組成物を調製した。
得られた第2の原液組成物について、BM型回転粘度計(ローターNo.1,60rpm,1分後)を用いて温度20℃における粘度を測定したところ、80mPa・sであった。
【0067】
(第2の原液組成物の組成)
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル:10.0質量%
パルミチン酸エチルヘキシル:10.0質量%
カプリリルメチコン:5.0質量%
シクロペンタシロキサン:35.0質量%
エタノール:40.0質量%
合計:100.0質量%
【0068】
<エアゾール製品の作製>
図1および
図2に示す構成の二重構造容器を用意し、当該二重構造容器の第1の原液用充填空間内(第1の内袋内)に第1の原液組成物を充填し、第2の原液用充填空間内(第2の内袋内)に第2の原液組成物を充填すると共に、噴射剤用充填空間内に噴射剤として窒素ガスを、当該二重構造容器内における製品内圧が25℃で0.7MPaとなるように充填することにより、日焼け止め剤として用いられる2液混合型エアゾール製品を作製した。この2液混合型エアゾール製品において、第1の原液組成物は、第1の媒体が水を含有し、水溶性成分よりなる第1の成分として、アロエエキス(抗炎症成分)が含有された水性化粧水用液状化粧料である。一方、第2の原液組成物は、第2の媒体としてパルミチン酸エチルヘキシルおよびカプリリルメチコンとシクロペンタシロキサンを含有し、油溶性成分よりなる第2の成分として、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(紫外線吸収成分)が含有された油性日焼け止め剤用液状化粧料である。
【0069】
実施例1および実施例2に係る2液混合型エアゾール製品は、作製直後に肌に適用したところ、ベタツキ感が生じることのない良好な使用感が得られるものであることが確認された。
また、実施例1および実施例2に係る2液混合型エアゾール製品は、温度45℃の環境条件下において、1ヶ月間にわたって長期間保存した後においても第1の成分(水溶性成分)および第2の成分(油溶性成分)に由来の機能(作用効果)の得られる霧状の吐出物が得られることが確認された。