(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、圧縮機から放出される熱を簡易な構成で効率良く蓄熱することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る蓄熱装置は、冷凍サイクルの圧縮機に取り付けられて、当該圧縮機から放出される熱を蓄熱する蓄熱槽と、前記圧縮機及び前記蓄熱槽の間に介在して、前記圧縮機から放出される熱を前記蓄熱槽に伝える伝熱部材とを具備し、前記蓄熱槽が、前記圧縮機の外側周面における周方向の一部に沿った形状をなす第1伝熱面と、前記第1伝熱面の周方向端部に連続して形成されるとともに、前記第1伝熱面を前記圧縮機の外側周面に対向させた状態で、前記圧縮機の外側周面との間に空間を形成する第2伝熱面とを有し、前記伝熱部材が、前記空間に装着されることを特徴とするものである。
【0008】
このような蓄熱装置であれば、第1伝熱面が圧縮機の外側周面における周方向の一部に沿った形状をなしているので、第1伝熱面と圧縮機の外側周面とを隙間なく接触させることができる。
また、圧縮機の外側周面と第2伝熱面との間に形成された空間に伝熱部材を装着することにより、この伝熱部材を介して圧縮機から前記空間に放出される熱を第2伝熱面に伝えることができる。
このように、上述した蓄熱装置であれば、伝熱部材を前記空間に装着することで、圧縮機の外側周面と蓄熱槽の第1伝熱面とを接触させるとともに、圧縮機の外側周面のうち第1伝熱面に接触していない面から放出される熱を伝熱部材を介して第2伝熱面に伝えることができ、圧縮機から放出される熱を簡易な構成で効率良く蓄熱することができる。
なお、第2伝熱面が、第1伝熱面の周方向端部における一方にのみ連続して形成されている場合は、蓄熱槽をコンパクト化することができるので、室外機内内の機械室の空間が少ない機種にも蓄熱槽を搭載することが可能となる。
【0009】
前記第2伝熱面が、前記第1伝熱面の周方向両端部それぞれに連続して形成されており、前記2つの第2伝熱面の離間距離が、前記圧縮機の幅寸法よりも大きいことが好ましい。
これならば、第2伝熱面が、第1伝熱面の周方向両端部それぞれから形成されているので、蓄熱槽の伝熱面積を大きくするとともに蓄熱槽の容積を大きくすることができ、より多くの熱量を蓄熱することができる。
また、2つの第2伝熱面の離間距離が圧縮機の幅寸法よりも大きいので、蓄熱槽を水平方向にスライド移動させて圧縮機に取り付けることができ、作業性を向上させることができる。
【0010】
前記第1伝熱面が、前記圧縮機の外側周面における周方向に沿った半周分以下に接触することが好ましい。
これならば、蓄熱槽を水平方向にスライド移動させて圧縮機に取り付けることができ、圧縮機と第1伝熱面との密着性を担保しつつ、第1伝熱面と圧縮機の外側周面との接触面積をより大きくすることができる。
【0011】
前記伝熱部材が、前記圧縮機の外側周面に対向する圧縮機側対向面と、前記2つの第2伝熱面それぞれに対向する2つの蓄熱槽対向面とを有しており、前記圧縮機対向面が、前記圧縮機の外側周面のうち、前記蓄熱槽を前記圧縮機に取り付けた状態において前記2つの第2伝熱面に挟まれた面に沿った形状をなしていることが好ましい。
これならば、圧縮機対向面が、圧縮機の外側周面のうち第1伝熱面に接触していない面から放出される熱を受け、この熱を蓄熱槽対向面を介して第2伝熱面に伝えるので、より多くの熱量を蓄熱槽に蓄熱することができる。
【0012】
前記圧縮機へ冷媒を流入させる流入管にアキュムレータが取り付けられており、前記伝熱部材を前記空間に装着した状態において、前記伝熱部材が、前記アキュムレータと非接触であることが好ましい。
これならば、伝熱部材からアキュムレータへの放熱を抑制することができ、短時間で多くの熱量を蓄熱することが可能になる。
【0013】
前記伝熱部材が、複数の伝熱要素を有し、前記複数の伝熱要素が、前記各第2伝熱面と前記圧縮機の外側周面との間それぞれに形成される前記空間に装着されるものが好ましい。
このような構成であれば、伝熱に寄与しない部分については熱伝導率の高い金属を使用する必要がないため、圧縮機から放出される熱を効果的に蓄熱しつつ、伝熱部材の材料費を抑えることができる。
【0014】
伝熱部材が圧縮機に対して位置ずれし、これらの間に隙間が形成されてしまうことを防ぐためには、前記伝熱部材が、前記複数の伝熱要素を前記圧縮機に対して位置決めする位置決め機構を有していることが好ましい。
【0015】
前記位置決め機構が、互いに異なる前記空間に装着される複数の伝熱要素を互いに連結する連結部材であり、前記連結部材が、前記圧縮機の外側周面に設けられた取付部に係合して取り付けられることにより、前記複数の伝熱要素が前記圧縮機に対して位置決めされることが好ましい。
これならば、複数の伝熱要素を、対応する各空間に装着されるように予め位置決めしておくことができ、蓄熱装置を容易に組み立てることができる。
また、このような構成であれば、蓄熱装置の製造工程において、作業者が連結部材を取付部に係合させることにより、蓄熱槽よりも先に伝熱部材を圧縮機に対して取り付けることができる。これにより、蓄熱槽を取り付ける際に、伝熱部材をガイドとして機能させることができ、組み立て時の作業性を向上させることができる。
【0016】
前記複数の伝熱要素それぞれが、複数のボルトによって前記連結部材に固定されている構成が好ましい。
仮に、各伝熱要素が連結部材に対して回転してしまうと、各伝熱要素を対応する各空間に装着しにくくなってしまうところ、上述した構成であれば、各伝熱要素がボルトにより固定されているので、各伝熱要素が連結部材に対して回転することを防ぐことができる。
【0017】
前記連結部材が、前記ボルトを通すための複数の貫通孔を有しており、少なくとも1つの前記貫通孔が長穴形状をなすことが好ましい。
これならば、長穴形状をなす貫通孔に沿って伝熱要素を動かし、該伝熱要素の位置調整を行うことができる。これにより、例えば、製造時の公差が不適切なことなどにより、伝熱要素間の距離が設計値と異なったとしても、伝熱要素の位置を調整することで、各伝熱要素を対応する各空間に確実に装着することができ、製造時の公差によらず、蓄熱槽及び圧縮機に対する伝熱部材の密着性を確保することが可能となる。
【0018】
連結部材を取付部に取り付けるための具体的な実施態様としては、前記連結部材が、その外面から外側に突出した突出部と、前記突出部の下側に形成された切り欠き部とを有しており、前記切り欠き部が前記取付部に係合することにより、前記連結部材が前記圧縮機に対して位置決めされる構成が挙げられる。
上述した構成であれば、切り欠き部を取付部に係合させる際に、突出部が取付部に当接して、連結部材を取付部に取り付ける際の位置ずれを防止することができる。
なお、前記突出部と前記取付部の当接面には、弾性部材が介在してもよい。弾性部材を介在することで、組み立て工程での連結部材位置の微調整が容易にできる。
【0019】
前記圧縮機の外側周面にアキュムレータを保持するアキュムレータ保持部が設けられており、前記アキュムレータ保持部が、前記取付部であることが好ましい。
これならば、既設のアキュムレータ保持部を、連結部材を取り付けるための取付部として兼用することができ、連結部材を取り付けるために専用の取付部を新たに設ける必要がない。
【0020】
前記連結部材を前記圧縮機側に向かって押さえつける固定部材をさらに具備することが好ましい。
このような構成であれば、蓄熱槽及び圧縮機に対して伝熱部材が押し当てられるので、蓄熱槽及び圧縮機に対する伝熱部材の密着性を確保することができ、長期の使用期間に亘って伝熱性能を担保することが可能となる。
【0021】
前記連結部材に前記突出部が上下一対設けられており、前記固定部材が、前記外面における前記上側突出部及び前記下側突出部との間に接触して、前記連結部材を前記圧縮機側に向かって押さえつけることが好ましい。
このような構成であれば、固定部材が圧縮機の外面における上下一対の突出部の間に接触しているので、固定部材がずれることを防ぎ、連結部材を確実に押さえつけることができる。また、連結部材は、上下一対の突出部の間にある固定部材によって、上下方向の移動が規制されるので、例えば落下等の衝撃により伝熱部材に上下方向の力が加わったとしても、伝熱部材が上下方向にずれることを防止することができる。
【0022】
前記伝熱部材の具体的実施態様としては、50[W/(m・K)]以上の熱伝導率を有する金属が挙げられる。
このような熱伝導率を有する金属により構成される伝熱部材は、圧縮機を構成する材料よりも熱を伝えやすく、前記第2伝熱面との接触面が圧縮機表面温度と略同一温度になるため、熱伝導率の低い伝熱部材より多くの熱を熱蓄熱槽に伝えることができる。
【0023】
圧縮機から放出される熱を蓄熱槽に伝えつつ、伝熱部材の材料費を削減するためには、前記伝熱部材が、前記2つの蓄熱槽対向面の一方側から他方側に沿って形成された薄肉部を有していること好ましい。
【0024】
前記蓄熱槽内に設けられた蓄熱熱交換器をさらに具備し、前記蓄熱熱交換器を構成する管の一部が、前記伝熱部材の内部を通り抜けているものが好ましい。
これならば、蓄熱槽に蓄熱された熱では冷媒が十分に加熱されない場合であっても、蓄熱槽よりも高温である伝熱部材と冷媒との間で熱交換することができ、冷媒を完全に気化させることができる。これにより、液体を含んだ冷媒が圧縮機に流れ込む恐れが少なく、圧縮機の効率が低下することを防止できる。
【0025】
また、本発明に係る蓄熱装置は、冷凍サイクルの圧縮機に取り付けられて、当該圧縮機から放出される熱を蓄熱する蓄熱槽を具備する蓄熱装置であって、前記蓄熱槽が、前記圧縮機の外側周面における周方向の一部に沿った形状をなす第1伝熱面と、前記第1伝熱面の周方向端部に連続して形成されるとともに、前記第1伝熱面を前記圧縮機の外側周面に対向させた状態で、前記圧縮機の外側周面との間に空間を形成する第2伝熱面とを有し、前記空間に装着されるとともに、前記圧縮機の熱容量をするための補助熱容量部材をさらに具備することを特徴とするものである。
【0026】
このような蓄熱装置であれば、圧縮機のサイズが小さい場合であっても、補助熱容量部材が圧縮機の外側周面と第2伝熱面との間に形成された空間に装着されるので、圧縮機の熱容量が補助熱容量部材の熱容量分だけ増大したようになる。これにより、蓄熱槽を小型化することなく圧縮機に取り付けることで、圧縮機及び補助熱容量部材から放出される多くの熱量を効率良く蓄熱することができる。
また、第1伝熱面が圧縮機の外側周面における周方向の一部に沿った形状をなしているので、第1伝熱面と圧縮機の外側周面とを隙間なく接触させることができ、圧縮機から放出される熱を簡易な構成で効率良く蓄熱することができる。
【0027】
前記補助熱容量部材としては、1.0×10
−5[m
2/s]以上の熱拡散率を有しているものが好ましい。
このような構成ならば、補助熱容量部材が、蓄熱材や蓄熱槽壁よりも短時間で、圧縮機とほぼ同じ温度まで加熱されるので、より効率良く蓄熱することができる。
【0028】
上述した蓄熱装置を具備する空気調和機も本発明の1つである。
このような空気調和機であれば、上述した作用効果を得るこができる。
【発明の効果】
【0029】
このように構成した本発明によれば、圧縮機から放出される熱を簡易な構成で効率良く蓄熱することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
以下に本発明に係る空気調和機の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0032】
本実施形態に係る空気調和機100は、
図1に示すように、室内ユニット10と、室外ユニット20と、室内ユニット10及び室外ユニット20に冷媒を流通させる冷凍サイクル200(以下、冷媒回路200ともいう)とを備える。
【0033】
室内ユニット10には、減圧手段11と、この減圧手段11に接続された室内熱交換器12と、室内送風機13とが設けられている。
なお、前記減圧手段11は、必ずしも設ける必要はない。
【0034】
室外ユニット20には、四方弁21と、アキュムレータ22と、圧縮機23と、室外熱交換器24と、分配器25と、膨張弁26と、室外送風機27とが設けられている。
【0035】
冷媒回路200は、四方弁21における4つのポートの開閉を制御することにより、冷媒の流れを反転させ、冷房運転と暖房運転とを切り換え可能に構成されている。具体的に、四方弁21は、冷房運転を行う場合は、圧縮機23から吐出された冷媒を、室外熱交換器24に導入するようにし、暖房運転を行う場合は、圧縮機23から吐出された冷媒を、室内熱交換器12に導入するように構成されている。
【0036】
本実施形態では、
図1に示すように、一端が圧縮機23から冷媒を吐出する吐出管231に接続され、他端が室外熱交換器24の伝熱管241に接続されたバイパス管30が設けられている。
なお、本実施形態では、複数の伝熱管241が補助分配器251に接続されており、バイパス管30の他端が前記補助分配器251を介して伝熱管241に接続されている。
【0037】
前記バイパス管30には開閉弁SVが設けられており、例えば図示しない制御部が前記開閉弁SVを制御して、バイパス管30を開状態又は閉状態に切り替えるように構成されている。
より詳細に前記制御部は、例えば、室外熱交換器24に設けられた図示しない温度センサからの温度信号を受け付けるとともに、室外熱交換器24の温度が所定の温度以下になった場合に、前記開閉弁SVに制御信号を送信して、バイパス管30を閉状態から開状態に切り替える。これにより、圧縮機23から吐出された冷媒がバイパス管30に流れて室外熱交換器24に流入し、該室外熱交換器24の除霜が行われる。
【0038】
なお、本実施形態の空気調和機100は、室外熱交換器24が複数の熱交換要素24a、24bに分割されており、各熱交換要素24a、24bそれぞれに対応したバイパス管30及び開閉弁SVが設けられている。
これにより、一方の熱交換要素24aを除霜している間に、他方の熱交換要素24bを用いて暖房運転を継続することが可能となる。
【0039】
ここで、本実施形態の空気調和機100は、
図1〜
図3に示すように、圧縮機23から放出される熱を蓄熱する蓄熱装置300をさらに具備している。
【0040】
前記蓄熱装置300を説明する前に、圧縮機23について補足する。
圧縮機23は、
図2及び
図3に示すように、圧縮機23に冷媒を流入する流入管232と、圧縮機から冷媒を吐出する吐出管231とが接続された筒状をなすものであり、ここでは、外側周面233に前記流入管232が接続されるとともに、上面234に前記吐出管231が接続された概略円筒形状をなすものである。
なお、本実施形態では、前記流入管232にアキュムレータ22が取り付けられている。
【0041】
以下、前記蓄熱装置300について詳述する。
【0042】
本実施形態の蓄熱装置300は、
図2及び
図3に示すように、圧縮機23に取り付けられる蓄熱槽40と、蓄熱槽40内に設けられた蓄熱熱交換器50と、圧縮機23及び蓄熱槽40の間に介在する伝熱部材60とを具備してなる。
【0043】
蓄熱槽40は、圧縮機23の周囲に設けられ、図示しない液体などの蓄熱材を収容するとともに圧縮機23から放出される熱を蓄熱するものであり、ここでは、軽量化及び低コスト化を図るべく、例えば樹脂などにより形成されている。
【0044】
具体的にこの蓄熱槽40は、特に
図3に示すように、圧縮機23の外側周面233における周方向の一部に沿った形状をなす第1伝熱面411を有する第1要素41と、前記第1伝熱面411に連続して形成された第2伝熱面421を有し、第1要素41の周方向端部41zから一体的に形成された第2要素42とからなる。
【0045】
より詳細には、第1要素41は、部分円筒形状をなし、その内側周面の径寸法が圧縮機23の外側周面233の径寸法と略一致するように構成されている。また、本実施形態では、第1要素41の高さ寸法は、圧縮機23の高さ寸法より大きく設定されている。
第2要素42は、平板状をなし、その高さ寸法が前記第1要素41の高さ寸法と略一致するように構成されるとともに、前記第1要素の上端から下端に亘って設けられている。これにより、本実施形態の蓄熱槽40は、圧縮機23の高さ寸法よりも大きく構成される。
【0046】
本実施形態では、第1要素41が半円筒形状をなすとともに、第2要素42が第1要素41の周方向両端部41zそれぞれから接線方向に沿って延びるように形成されており、これにより、本実施形態の蓄熱槽40は、上方から視て略U字形状をなす。
なお、第1要素41に関して言い換えれば、本実施形態の第1要素41は、蓄熱槽40を圧縮機23に取り付けた状態において、圧縮機23の中心軸Cを中心として周方向両端部41zのなす角度θが略180度となるように構成されている。
【0047】
以下、上述した第1伝熱面411及び第2伝熱面421について、
図3を参照しながら説明する。
【0048】
前記第1伝熱面411は、第1要素41の内側周面に設定された曲面であり、蓄熱槽40を圧縮機23に取り付けた状態において、圧縮機23の外側周面233における周方向の一部と接触するように構成されている。
ここでは、上述したように第1要素41は半円筒形状をなしているので、前記第1伝熱面411は、圧縮機23の外側周面233における半周分と接触する。
上述した第1伝熱面411と圧縮機23の外側周面233との間には、放熱グリスまたは放熱シートのような弾力性のある材料が備えられており、これにより、第1伝熱面411と圧縮機23の外側周面233との間の接触熱抵抗を低減する構成となっている。
【0049】
前記第2伝熱面421は、各第2要素42の面板部に設定された平面であり、前記第1伝熱面411の周方向両端から連続して形成されている。
これら各第2伝熱面421は、蓄熱槽40を圧縮機23に取り付けた状態において、圧縮機23の外側周面233との間に空間Sを形成し、外側周面233と接触しないように構成されている。
ここでは、各第2伝熱面421は、上述した第2要素42と同様に、第1伝熱面411の周方向端部41zから接線方向に沿って延びており、これら2つの第2伝熱面421の離間距離は、圧縮機23の幅寸法(本実施形態では、圧縮機23の外側周面233の径寸法)よりも大きく設定されている。これにより、各第2要素42の間には、蓄熱槽40を水平方向にスライド移動させて圧縮機23に取り付けるための取付口Oが形成される。
なお、前記取付口Oは、2つの第2伝熱面421それぞれの自由端部の一方から他方に亘って形成された領域である。
【0050】
蓄熱熱交換器50は、
図2及び
図4に示すように、蓄熱槽40の槽内に設けられ、管状部材により構成されるとともに、その内部を流れる冷媒と蓄熱槽40内に収容された蓄熱材との間で熱交換させるものである。
【0051】
具体的にこのものは、例えば両端が開口した銅管を、蓄熱槽40内を蛇行するように曲げて形成したものであり、冷媒が一端開口5x1から流入して、他端開口5x2から流出するように構成されている。
ここでは、前記蓄熱熱交換器50は、第1要素41内及び第2要素42内を通り抜けるように配置されている。より詳細には、両端開口5x1、5x2が蓄熱槽40の上方に位置しており、一端開口5x1から流入した冷媒が、蓄熱槽40の下方に向かって流れ、そこから上方に向かって蛇行して、他端開口5x2から流出するように構成されている。
【0052】
本実施形態では、
図1に示すように、一端開口5x1は、室内熱交換器12と膨張弁26との間から分岐するとともに、開閉弁V1が設けられた第1蓄熱用配管3L1に接続されている、また、他端開口5x2は、室外熱交換器24と四方弁21との間に合流するとともに、逆止弁V2が設けられた第2蓄熱用配管3L2に接続されている。
【0053】
上述した構成により、例えば、図示しない制御部が前記開閉弁V1に制御信号を送信して、第1蓄熱用配管3L1を閉状態から開状態に切り替えることにより、室内熱交換器12から室外熱交換器24に流れる冷媒の一部が蓄熱熱交換器50に流入する。
蓄熱熱交換器50に流入した冷媒は、蓄熱槽40に蓄熱された熱によって加熱され、他端開口5x2から流出するとともに室外熱交換器24を通過した冷媒と合流して四方弁21、アキュムレータ22及び圧縮機23へと順次流れ込む。
【0054】
このように、室内熱交換器12から流出した冷媒を蓄熱熱交換器50内で加熱してから圧縮機23に流入させた場合、前記冷媒を途中で加熱することなく圧縮機23に流入させる場合に比べて、圧縮機23から吐出される冷媒の温度がより高温になる。つまり、本実施形態では、蓄熱槽40により蓄熱された熱量に応じて、圧縮機23から吐出される冷媒の温度を高温にすることができる。
これにより、圧縮機23から吐出される冷媒の温度を高温にした分、暖房運転時には暖房能力を向上させることができ、除霜運転時には除霜時間を短くすることができるうえ、除霜運転中も連続して暖房運転を行う場合には、その暖房能力を向上させることができる。
【0055】
しかして、本実施形態の蓄熱装置300は、伝熱部材60が、圧縮機23の外側周面233と第2伝熱面421との間に形成された空間Sに装着される。
【0056】
この伝熱部材60は、圧縮機23から放出される熱を蓄熱槽40に伝えるものであり、本実施形態では、圧縮機23から放出される熱のうち、特に圧縮機23の外側周面233において蓄熱槽40が接触していない面から放出される熱を、蓄熱槽40に伝えるものである。
【0057】
より詳細にこのものは、
図2及び
図3に示すように、圧縮機23の外側周面233に対向する圧縮機対向面61と、蓄熱槽40の第2要素42に対向する蓄熱槽対向面62とを有し、圧縮機対向面61を介して圧縮機23から受けた熱を、蓄熱槽対向面62を介して蓄熱槽40に与えるように構成されている。
【0058】
具体的に本実施形態の伝熱部材60は、例えば金属からなるブロック体形状をなすものであり、各第2伝熱面421に対向する2つの蓄熱槽対向面62が、互いに平行に形成され、前記圧縮機対向面61が、前記2つの蓄熱槽対向面62の一方から他方に亘って形成されている。つまり、本実施形態の伝熱部材60は、前記空間Sに装着された状態において、第2伝熱面421の一方側から他方側に亘って設けられている。
なお、前記金属としては、圧縮機を構成する材料と同等またはより大きい熱伝導率を有するものが好ましい。より具体的には、例えば50[W/(m・K)]以上の熱伝導率を有するものが好ましく、このような材料としては、アルミニウム、鉄、炭素鋼、クロム鋼、タングステン鋼、マンガン鋼、銅、アルミ青銅、黄銅、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウムなどが挙げられる。これらの中でも、加工性や材料費や重量の観点から、特にアルミニウムが好ましい。
【0059】
前記圧縮機対向面61は、圧縮機23の外側周面233のうち、2つの第2伝熱面421の間に介在する面に沿った形状をなしている。
これにより、本実施形態の圧縮機対向面61は、蓄熱槽40を圧縮機23に取り付けた状態において、圧縮機23の外側周面233のうち、第1伝熱面411が接触していない面に接触する。
上述した構成により、伝熱部材60及び蓄熱槽40は、圧縮機23の外側周面233におけるほぼ全周を囲うことになる。
【0060】
前記2つの蓄熱槽対向面62は、その離間距離が2つの第2伝熱面421の離間距離より僅かに小さく設定されており、各蓄熱槽対向面62の長さ寸法は、第2伝熱面421の長さ寸法よりも小さく設定されている。蓄熱槽対向面62と第2伝熱面421との間には、放熱グリスまたは放熱シートのような弾力性のある材料が備えられることにより、蓄熱槽対向面62と第2伝熱面421との間の接触熱抵抗を低減する構成となっている。
また、本実施形態では、圧縮機対向面61と反対側に位置し、各蓄熱槽対向面62の間に形成された背面63が平面状をなしている。
これにより、本実施形態の伝熱部材60は、前記空間Sに装着された状態において、上述した取付口Oと圧縮機23との間に収容され、アキュムレータ22と接触しないように構成されている。
【0061】
なお、本実施形態の伝熱部材60は、底面から上方に向かって切り欠かれた溝部6xが形成されており、圧縮機23の外側周面233に接続された流入管232が前記溝部6xを通り抜けるように構成されている。
これにより、前記伝熱部材60は、上方から前記流入管232に向かって取り付けられて位置決めされ、その状態で圧縮機23に向かって水平方向にスライド移動させることで、空間Sに装着され、蓄熱槽40との間で圧縮機23を挟み込む。
【0062】
続いて、本実施形態の蓄熱装置100を圧縮機23に取り付けた状態における暖房運転時又は除霜運転時の熱の流れについて
図5を参照して説明する。
【0063】
まず、暖房運転時において、圧縮機23から放出される熱を蓄熱槽40で蓄熱する場合を考える。
この場合、蓄熱熱交換器50につながる第1蓄熱用配管3L1の開閉弁V1は閉じられている。この状態において、圧縮機23で発生した熱は、圧縮機23の外側周面233に接触する第1伝熱面411を介して蓄熱槽40に伝熱されるとともに、伝熱部材60を流れて第2伝熱面422を介して蓄熱槽40に伝熱される。
このように、本実施形態の蓄熱装置100は、圧縮機23で発生した熱を、2つの経路で蓄熱槽40に伝えることができ、蓄熱速度を大きくすることで、蓄熱時間を短くすることができる。
【0064】
次に、除霜運転時において蓄熱槽40に蓄熱された熱を放熱する場合を考える。
この場合、前記第1蓄熱用配管3L1の開閉弁V1は開かれる。この状態において、蓄熱熱交換器50の一端開口5x1には、前記第1蓄熱用配管3L1から二相の低温冷媒が流入し、この冷媒と蓄熱槽40に収容された蓄熱部材との間で熱交換が行われる。そして、前記蓄熱材との間で熱交換して気化した冷媒が、蓄熱熱交換器50の他端開口5x2から第2蓄熱用配管3L2へと流れ出る。
本実施形態では、上述した放熱時における熱の流れは、蓄熱時における熱の流れと共通となる。これは、蓄熱槽40よりも圧縮機23の方が常に高温であることに起因する。
【0065】
このように構成された本実施形態に係る空気調和機100によれば、伝熱部材60を圧縮機23の外側周面233と蓄熱槽40の第2伝熱面421との間に形成された空間Sに装着することにより、伝熱部材60と蓄熱槽40とで圧縮機23の外側周面233におけるほぼ全周を挟み込むことができる。
これにより、圧縮機23の外側周面233を第1伝熱面411に接触させることで伝熱効率を向上させるとともに、圧縮機23の外側周面233のうち蓄熱槽40に接触していない面から放出される熱を伝熱部材60を介して蓄熱槽40に伝えることができ、簡易な構成で圧縮機23から放出される熱を短時間で効率良く蓄熱することができる。
【0066】
上述したように、圧縮機23から放出される熱を蓄熱槽40に蓄熱することができるので、その熱を利用して蓄熱熱交換器50に流れる冷媒を高温に加熱することが可能となり、エネルギーを有効活用できるうえ、空気調和機100の暖房能力や除霜効率を向上させることできる。
【0067】
また、蓄熱槽40は、水平方向にスライド移動させることで圧縮機23に取り付けることができ、伝熱部材60は、水平方向にスライド移動させることで圧縮機23の外側周面233と第2伝熱面421との間の空間Sに装着することができるので、蓄熱装置300を組み立てる際の作業性が良い。
【0068】
さらに、第2伝熱面421が互いに平行に形成されているので、第2伝熱面421の一方から他方に亘って設けられる伝熱部材60のサイズが不必要に大きくならず、伝熱部材60によって圧縮機23から放出される熱を蓄熱槽40に伝えつつ、伝熱部材60の材料費を抑えることができる。
【0069】
加えて、蓄熱槽40は、第1要素41と第1要素41から連続して形成された第2要素42とから構成されているので、蓄熱槽40が複数に分割されている構成に比べて、製造コストを安くすることができるうえ、蓄熱槽40の性能に関しても信頼性が損なわれにくい。
【0070】
<第1実施形態の変形例>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0071】
例えば、前記実施形態の空気調和機は、伝熱部材が、第2伝熱面の一方側から他方側に亘って形成されていたが、伝熱に寄与しない部分には熱伝導率の高い金属を使用する必要性が低いことから、
図6〜8に示すように、伝熱部材60が、圧縮機23の外側周面233と各第2伝熱面421との間に形成された空間Sそれぞれに装着される2つの伝熱要素60a、60bを有する構成であっても良い。
これならば、伝熱部材60の材料費を抑えつつ、圧縮機23から放出される熱を効果的に蓄熱することができる。
【0072】
上述した構成において、作業性をより向上させるためには、
図6〜8に示すように、2つの伝熱要素60a、60bを互いに連結する連結部材64をさらに有しているものが好ましい。
前記連結部材64について詳述すると、このものは、特に
図8に示すように、各伝熱要素60a、60bがボルトbにより固定されるものであり、例えば平板部材を屈曲させてなり、平板状の中央部641と、中央部641から屈曲した両端部642とからなる。
より詳細にこの連結部材64は、両端部642にボルトbを通すための貫通孔が形成されており、当該両端部642の内面が、伝熱要素60a、60bが固定される固定面となる。
このような構成であれば、各伝熱要素60a、60bを、各空間Sに装着できるように予め位置決めしておくことができ、蓄熱装置300の組み立て性を向上させることができる。
また、各伝熱要素60a、60bが固定面に対して回転してしまうと、組み立て時に各伝熱要素60a、60bが異なった傾きとなり、対応する空間Sにうまく装着できない恐れがあるところ、上述したように、各伝熱要素60a、60bがボルトbにより固定されている構成であれば、各伝熱要素60a、60bが固定面に対して回転することを防ぐことができ、伝熱部材60を容易に且つ確実に取り付けることが可能となる。
【0073】
ここで、例えば製造時の公差が不適切なことなどにより、伝熱要素60a、60b間の距離が設計値と異なった場合、各伝熱要素60a、60bを対応する空間Sに装着できなくなる恐れがある。
そこで、連結部材60の構成としては、例えば
図9に示すように、一方の端部642に形成された貫通孔Hが長穴形状をなすものが好ましい。具体的にここでは、一方の端部642にボルトbに対応した複数の貫通孔Hが形成されており、各貫通孔Hが長穴形状をなしている。なお、貫通孔Hは、必ずしもボルトbの数に対応して設けられている必要はなく、例えばコの字状をなす1つの貫通孔Hに2つ或いはそれ以上のボルトbが挿通されるようにしても良い。
このような構成であれば、一方の端部642に固定される伝熱要素60bを長穴形状をなす貫通孔Hに沿って動かすことができるので、当該伝熱要素60bの位置調整を行うことできる。これにより、製造時の公差によらず、各伝熱要素60a、60bを確実に空間Sに装着することができ、蓄熱槽40及び圧縮機23に対する伝熱部材60の密着性を担保することできる。
【0074】
また、上述した連結部材64を圧縮機23に対して取り付ける際の作業性を向上させるためには、
図10に示すように、圧縮機23の外側周面233に上述した連結部材64が係合して取り付けられる取付部235が設けられていることが好ましい。
この場合、連結部材64は、各伝熱要素60a、60bを圧縮機23に対して位置決めする位置決め機構としての機能を発揮する。この連結部材64としては、例えば
図9に示すように、連結部材64の中央部641に切り欠き部64Hが形成されており、この切り欠き部64Hと前記取付部235とがガタ無く係合することで、圧縮機23に対する伝熱部材60の位置決めを行えるように構成されたものが挙げられる。具体的にこの切り欠き部64Hは、前記中央部641の下側を切り欠いて形成したものであり、前記取付部235と係合する形状をなしている。
上述した構成であれば、圧縮機23に対して蓄熱槽40を取り付ける前に、伝熱部材60を圧縮機23に対して位置決めすることができ、製造工程において作業者は一人で伝熱部材60を取り付けることができる。そのうえ、蓄熱槽40よりも先に伝熱部材60を取り付けることにより、当該伝熱部材60が蓄熱槽40を取り付ける際にガイドとして機能し、作業性をより向上させることができる。
また、不測の衝撃等により伝熱部材60に下向きの力が加わったとしても、切り欠き部64Hと取付部235とが係合しているので、伝熱部材60の位置ずれを防止することができる。
さらに、切り欠き部64Hと取付部235とがガタ無く係合することで、連結部材64を圧縮機23に対して位置決めすることができるので、これにより、各伝熱要素60a、60bの圧縮機23に対する前後、左右、上下の方向に沿った位置を決めることができる。
【0075】
さらに、上述した取付部235は、
図10に示すように、アキュムレータ22を保持するアキュムレータ保持部であることが好ましい。
これならば、既設のアキュムレータ保持部を、伝熱部材60を取り付けるための取付部235として兼用することができる。
【0076】
加えて、
図11(a)及び(b)に示すように、伝熱部材60が空間Sに装着された状態において、例えばバンドなどの固定部材Bが、伝熱部材60及び蓄熱槽40を所定の位置に固定するように構成しても良い。
より具体的には、
図11(a)及び(b)に示すように、固定部材Bは、各第2要素42の端面それぞれに設けられた取手部Tに取り付けられて、第2要素42の一方から他方に架け渡されるとともに、伝熱部材60を圧縮機23に向かって押圧して固定する。
この構成により、固定部材Bが連結部材64を介して伝熱部材60を圧縮機23に押し当てて、圧縮機23から放出される熱を伝熱部材60を介して確実に蓄熱槽40に伝えることができる。
また、固定部材Bが伝熱部材60を押さえつけることにより、圧縮機23及び蓄熱槽40と伝熱部材60との密着性を確保することができ、長期の使用期間において、伝熱部材60の良好な伝熱性能を担保することが可能となる。
さらに、固定部材Bは、連結部材64を押さえると同時に蓄熱槽40を固定するので、固定部材Bによって、伝熱部材60と蓄熱槽40とで圧縮機を両側から挟み込むことができ、連結部材64を押さえつける力が強すぎて蓄熱槽40と圧縮機23との間に不要な隙間が生じる恐れがない。
【0077】
上述した固定部材Bを用いた構成において、作業性をより向上させるためには、
図9に示すように、連結部材64が、外面64aから外側に突出する突出部643を有していることが好ましい。
より詳細には、中央部641の外面64aにおける上側及び下側それぞれに突出部643が形成されており前記外面64aにおける上側突出部643と下側突出部643との間に上述した固定部材Bが接触するように構成されている。
このような構成であれば、固定部材Bが上側突出部643と下側突出部643との間に接触していることにより、伝熱部材60の高さ方向の位置決めを行うことができる。
これにより、例えば蓄熱装置300を搭載した空気調和機100が落下した場合、落下の衝撃によって伝熱部材60に上下方向の力が加わったとしても、上述した構成であれば、上側突出部643と下側突出部643との間に上述した固定部材Bが接触しているので、上下方向の位置ずれを防止することができる。
なお、上述した構成では、中央部641の上側及び下側の両方に突出部643が形成されているが、
図12に示すように、1つの突出部643が切り欠き部64Hの上部に形成されていても良い。これならば、切り欠き部64Hを上述した取付部235に係合させる際に、突出部643が取付部235に当接して、連結部材64の位置ずれを防止することができる。
【0078】
そのうえ、連結部材64は、平板部材を屈曲させたものに限られず、例えば
図13に示すように、中央部641が湾曲した形状をなすものであっても良い。
より具体的には、この中央部641は、圧縮機23の外側周面233に沿った形状をなす構成が好ましい。
このような構成であれば、湾曲した中央部641の内面を圧縮機23の外側周面233に密着させることができるので、連結部材64が圧縮機23からの熱を受け取るとともに、この熱を伝熱部材60に伝えて、伝熱部材60の伝熱を補助することができる。
【0079】
また、伝熱部材60の材料費を抑えつつ、圧縮機23から放出される熱を効果的に蓄熱槽40に伝えるための構成としては、
図14に示すように、伝熱部材60が、2つの蓄熱槽対向面62の一方側から他方側に沿って形成された薄肉部65を有しているものが挙げられる。
具体的にこの伝熱部材60は、複数の薄肉部65を有しており、ここでは、前記薄肉部が、伝熱部材60の背面63から圧縮機対向面61に向かって一部を切り欠いて形成されている。
なお、薄肉部は、例えば、蓄熱槽対向面の一方側から他方側に沿って、伝熱部材の内部に細孔を形成することにより構成しても良い。
【0080】
さらに、伝熱部材は、
図15に示すように、厚み方向に貫通して形成された貫通孔6x2を有しており、この貫通孔6x2から例えば圧縮機23の外側周面233に設けられたターミナルやターミナルに接続された配線などを外側に出せるように構成しても良い。
【0081】
また、前記実施形態では、伝熱部材は、圧縮機の外側周面における周方向に沿った一部に接触するものであったが、圧縮機の上面や底面に接触するように構成されていても良い。
この場合の具体的実施態様としては、伝熱部材が、圧縮機の上面に接触する上壁部を有するものや、圧縮機の底面に接触する底壁部を有するものが挙げられる。
これにより、圧縮機から放出される熱を、より効率良く蓄熱槽に伝えることができる。
【0082】
加えて、伝熱部材は、例えば、圧縮機の上面や外側周面、又は、蓄熱槽の内周面に形成された凹凸などに係合して、圧縮機に対して位置決めされるように構成されていても良い。
これならば、圧縮機と伝熱部材との間に隙間が生じにくくなり、圧縮機から放出される熱をより効率良く蓄熱槽に伝えることができる。
【0083】
そのうえ、前記実施形態では、伝熱部材が、空間Sに装着された状態において、アキュムレータと接触しないように構成されているが、伝熱部材とアキュムレータとの間に断熱部材を設けても良い。
これならば、伝熱部材からアキュムレータへ放熱することによる熱損失を低減することができる。
【0084】
前記実施形態の蓄熱熱交換器は、蓄熱槽の第1要素内及び第2要素内に亘って設けられていたが、
図16に示すように、蓄熱熱交換器50の他端開口5x2が伝熱部材60の上方に位置し、蓄熱熱交換器50を構成する管状部材の一部が、伝熱部材60の内部を通過するように構成されていても良い。
これにより、蓄熱材と冷媒との熱交換が不十分であったとしても、蓄熱槽40よりも高温である伝熱部材60と冷媒との間で熱交換することができ、冷媒を完全に気化させてから圧縮機23に流入させることができ、圧縮機の故障を未然に防ぐことができる。
【0085】
さらに、前記実施形態では、第2伝熱面が第1伝熱面の周方向両端部に連続して形成されていたが、
図17示すように、第2伝熱面421は、第1伝熱面411の一方の周方向端部から連続して形成されていても良い。すなわち、本発明に係る蓄熱槽40は、上方から視て略J字形状をなすものであってもよい。
この構成であれば、蓄熱槽40をコンパクト化することができるので、室外機が設けられている機械室の空間が少ない機種にも蓄熱槽40を搭載することが可能となる。
なお、この場合、連結部材64は、
図9に示すように、中央部641の外面64aから一方の端部642の内面(つまり、一方の固定面)までの距離と、中央部641の外面64aから他方の端部642の内面(つまり、他方の固定面)までの距離とが互いに異なるように設定されているものが好ましい。
このような構成であれば、上述したような非対称な形状をなす種々の蓄熱槽40と圧縮機23との間に形成される空間Sに対して、確実に各伝熱要素60a、60bを装着することができるようになる。
【0086】
加えて、前記実施形態では、蓄熱槽を圧縮機に取り付けた状態において、圧縮機の中心軸を中心として第1伝熱面の周方向両端部のなす角度が略180度となるように構成されていたが、前記なす角度が180度より小さくなるように構成しても良い。
これならば、第1伝熱面の面積が小さくなるものの、蓄熱槽を圧縮機に取り付ける作業性の点では有利である。
【0087】
また、前記実施形態の冷媒回路は、蓄熱槽から流出した冷媒が、四方弁を介して圧縮機に流入するように構成されていたが、蓄熱槽から流出した冷媒が、例えばバイパス管を介して室外熱交換器に流れるように構成しても良い。
【0088】
そのうえ、前記実施形態の蓄熱装置は、空気調和機の冷凍サイクルに用いられる圧縮機に取り付けられていたが、例えば給湯器など、その他の冷凍サイクルに用いられる圧縮機に取り付けられても構わない。
【0089】
ここで、上述した連結部材64や固定部材Bを用いて蓄熱装置300を組み立てる方法について
図18、19を参照しながら説明する。
【0090】
まず、
図18の上段に示すように、2つの伝熱要素60a、60bを連結部材64に図示しないボルト等により固定して、これらの伝熱要素60a、60bを互いに連結させる。
なお、各伝熱要素60a、60bは、上部及び下部それぞれに連結部材64を取り付けることができるように構成されているが、ここでは、まず各伝熱要素60a、60bの上部にのみ第1の連結部材64を取り付ける。
【0091】
次に、
図18の下段に示すように、アキュムレータ22を圧縮機23の外側周面233に設けられたアキュムレータ保持部、つまり取付部235に取り付ける。具体的には、例えば、アキュムレータ22の外周面に当該アキュムレータ22を取り付けるための取付用バンド221が設けられており、この取付用バンド221に形成された小穴に前記取付部235に設けられた突起を嵌め合わせる。
【0092】
そして、上述した連結部材64に形成された切り欠き部64Hを、前記取付部235に係合させるとともに、伝熱部材60の上下方向の位置決めを行う。具体的には、連結部材64を圧縮機23の上方から降ろし、前記取付部235に前記切り欠き部64Hを嵌め合わせる。なお、このとき、各伝熱要素60a、60bの圧縮機対向面61には、予め図示しない放熱シートが貼り付けられていることが好ましい。もちろん、放熱シートの代わりに放熱グリスを用いても構わない。
【0093】
その後、各伝熱要素60a、60bの下部に上述した第1の連結部材64とは別の第2の連結部材64を取り付ける。
【0094】
続いて、
図19に示すように、蓄熱槽40を圧縮機23に対して取り付ける。具体的には、蓄熱槽40と伝熱部材60とによって圧縮機23を挟み込むように、蓄熱槽40を圧縮機23に対して伝熱部材60の反対側から水平方向に沿ってスライドさせる。なお、このとき、蓄熱槽40は、圧縮機23の図示しない脚部に対して位置決めされる。
ここで、各伝熱要素60a、60bは、蓄熱槽40をスライドさせる際のガイドとして機能して、蓄熱槽40の第1伝熱面411が圧縮機23の外側周面233に接触し、その結果、各伝熱要素60a、60bが圧縮機23と蓄熱槽40との間に形成された空間Sに装着されることになる。
【0095】
この状態において、蓄熱槽40及び伝熱部材60を複数の固定部材Bによって圧縮機23に対して固定する。具体的には、
図19に示すように、少なくとも1つの固定部材Bを連結部材64の外面64aにおける上側突出部643及び下側突出部643の間に接触させて、連結部材64を圧縮機側に向かって押さえつけるようにしている。
なお、ここでは、3つの固定部材Bを用いている。第1の固定部材Bは、蓄熱槽40の各第2要素42の端面に設けられた取手部Tに架け渡され、連結部材64に接触するとともにアキュムレータ22の外周面に周回されている。第2の固定部材Bは、前記取手部Tに架け渡され、アキュムレータ22の外周面に周回されている。第3の固定部材Bは、連結部材64に接触するとともに蓄熱槽40の外周面に周回されている。
【0096】
最後に、上述したように蓄熱槽40及び伝熱部材60を圧縮機23に対して固定した状態において、蓄熱槽40に図示しない蓄熱材を導入するとともに蓄熱熱交換器50を入れ、図示しない蓋部材で蓄熱槽40を閉塞することにより蓄熱装置300が組み立てられる。
【0097】
上述した組み立て方法によれば、連結部材64を圧縮機23に設けられた取付部235に上方から係合させるだけで、作業者は一人で容易に伝熱部材60を圧縮機23に対して位置決めすることができる。
【0098】
また、蓄熱槽40よりも先に連結部材64を位置決めするので、蓄熱槽40を圧縮機23に対して取り付ける際に、各伝熱要素60a、60bをガイドとして機能させることができ、作業性を向上させることができる。
【0099】
さらに、固定部材Bによって連結部材64を圧縮機側に押さえつけることで、蓄熱槽40及び圧縮機23に対して伝熱部材60を押し当てているので、蓄熱槽40及び圧縮機23に対する伝熱部材60の密着性を確保することができ、長期の使用期間に亘って伝熱部材60の伝熱性能を担保することが可能となる。
【0100】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0101】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る空気調和機の第2実施形態について説明する。
【0102】
第2実施形態の空気調和機は、前記第1実施形態における伝熱部材を補助熱容量部材に代えたものであり、以下では、第2実施形態の補助熱容量部材を中心に、第1実施形態との違いが分かるように説明する。
なお、第2実施形態における補助熱容量部材の具体的実施態様は、前記第1実施形態で参照した各図面の符号60に示すものである。
【0103】
第2実施形態に係る補助熱容量部材は、蓄熱槽や蓄熱熱交換器とともに蓄熱装置を構成するものであり、圧縮機及び蓄熱槽の間に介在して、圧縮機の熱容量を拡大するためのものである。
【0104】
ここで、第1実施形態における伝熱部材は、熱伝導率が高い材料からなるものであったが、前記補助熱容量部材は、圧縮機から放出される熱によって効率良く加熱されるべく、体積あたりの熱容量が大きく、かつ、熱拡散率が大きいものが好ましい。
具体的にこのものは、金属からなる中実のブロック体形状をなすものであり、例えば蓄熱部材たる不凍液よりも大きい熱拡散率を有している。より好ましくは、前記不凍液の100倍以上の熱拡散率を有するものが良い。
このような材料としては、例えば熱拡散率が1.0×10
−5[m
2/s]以上の金属が挙げられ、具体的には、アルミニウム、鉄、炭素鋼、クロム鋼、タングステン鋼、マンガン鋼、銅、アルミ青銅、黄銅、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウムなどである。
これらの金属のうち、体積あたりの熱容量及び熱拡散率の観点では、銅が適切であるが、加工性や材料費や重さを考慮するとアルミニウムが好ましい。
【0105】
このように構成された第2実施形態に係る空気調和機によれば、圧縮機から放出される熱の一部が補助熱容量部材に伝わって補助熱容量部材の温度を上昇させ、補助熱容量部材が圧縮機とほぼ同じ温度まで上昇する。これにより、圧縮機の見かけ上の熱容量が、圧縮機自体の熱容量と補助熱容量部材の熱容量と合わせた熱容量となる。
かかる補助熱容量部材を具備する蓄熱槽であれば、圧縮機のサイズが小さい場合であっても、蓄熱槽を小型化することなく圧縮機及び補助熱容量部材に取り付けることで、圧縮機及び補助熱容量部材から放出される熱を効率良く蓄熱することができる。
【0106】
また、補助熱容量部材が、1.0×10
−5[m
2/s]以上の熱拡散率を有する金属からなるので、補助熱容量部材を短時間で圧縮機とほぼ同じ温度まで加熱することができ、これにより、蓄熱槽の蓄熱が不十分な場合に、補助熱容量部材から蓄熱槽に熱が流れるようになり、効率良く蓄熱することが可能となる。
【0107】
さらに、圧縮機から補助熱容量部材に伝熱させることができるので、特に小型の圧縮機を用いた場合、高負荷時における圧縮機の過剰な昇温を防止することができ、高負荷時においても圧縮機を適切な温度範囲で運転することが可能となる。
【0108】
<第2実施形態の変形例>
補助熱容量部材は、複数の材料を複合させたものであってもよい。
より詳細には、前記補助熱容量部材が、熱伝導率や熱拡散率が大きい材料と、熱容量や比熱が大きい材料とを複合したものが好ましく、具体的には、例えば、熱伝導率の高いアルミニウムと、熱容量の大きい水とを複合させたものが挙げられる。
なお、具体的な構成としては、例えば、アルミニウムからなる周壁部に水を収容させたものなどが挙げられる。
【0109】
なお、本発明は前記第2実施形態に限られず、例えば前記第1実施形態の変形例のように、補助熱容量部材の構成、蓄熱槽の配置や形状、蓄熱熱交換器の形状などに関して、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。