【実施例1】
【0021】
図1は、実施例1に係る警備の概要についての説明図である。まず、本実施例に係る警備では、来場者である歩行者の速度を算定する。具体的には、
図1(a)に示すように、同一の歩行者が経路の始点Poの近傍に所在した時刻と、経路の終点Pdの近傍に所在した時刻とを取得することで、歩行者がこの経路上を移動して通過するために要した時間(通過時間)を移動時間として算定する。この移動時間で経路の長さを除算し、速度の値を求めても良いが、本実施例では移動時間をそのまま使用する構成で説明を行なう。
【0022】
複数の歩行者について移動時間を算定したならば、
図1(b)に示すように移動時間の分布が生成される。
図1(b)に示した移動時間分布では、横軸が移動時間であり、縦軸が歩行者数に対応する頻度である。この移動時間分布から、歩行者の移動時間の平均、分散、中央値、最頻値等をもとめることができる。
図1(b)では、歩行者の移動時間の最頻値がM(t1)である。
【0023】
ここで、経路の状況に応じて移動時間は変動する。例えば、歩行者の数が増えて経路が混雑すれば、歩行者の移動時間は長くなる。このような状況に応じた移動時間の変動は、移動時間分布にも影響する。
【0024】
図1(c)は、
図1(b)に示した移動時間分布を時刻t1に生成した後、さらに複数の歩行者の移動時間を算定し、時刻t2に生成した分布を示している。
図1(c)に示した移動時間分布の形状は、
図1(b)に示した移動時間分布の形状から変化しており、移動時間の最頻値はM(t2)となっている。
【0025】
このように、経路の状況によって生じる移動時間の変動は、移動時間分布の形状の変化としてあらわれるのであるが、経路の状況の変化が通常の範囲内であれば、移動時間分布の推移は緩やかである。
【0026】
しかし、経路上で不測の事態が発生した場合には、移動時間分布の変化は急激なものとなる。例えば、経路上に不審人物が現れ、歩行者の通行が著しく阻害されたならば、移動時間分布の最頻値は短時間で大きく増大する。
【0027】
図1(d)は、経路上で不測の事態が発生した場合の移動時間分布の推移を示している。
図1(d)における移動時間分布の最頻値M(t2a)は、
図1(b)に示した最頻値M(t1)よりも非常に大きな値となっている。
【0028】
このように、不側の事態の発生時には通常時に比して移動時間分布の推移が急激になることから、移動時間分布の最頻値の変化を監視し、移動時間分布の最頻値の変化量が閾値を超えた場合に不測の事態が発生したと検知することができる。
【0029】
また、頻度値が所定値を超えるピークが分離して複数存在する場合にも、不測の事態が発生したと検知することができる。例えば、上述のように不審者が現れた場合には、不審者よりも始点Poに近い歩行者は通行を阻害されて移動時間が長くなるのに対し、不審者よりも終点Pdに近い歩行者は不審者から遠ざかって速やかに経路を通過しようとして移動時間が短くなる。この結果、不審者よりも始点Poに近い歩行者と終点Pdに近い歩行者とが異なる移動時間のピークを形成するのである。
【0030】
図1(e)に示す移動時間分布では、頻度値がピークとなる2つの移動時間であって、
図1(b)での最頻値M(t1)よりも小さい移動時間M(t2b)と、
図1(b)での最頻値M(t1)よりも大きい移動時間M(t2b’)とが現れた状態を示している。
【0031】
このように、実施例1に係る警備では、経路を通過する複数の歩行者の移動時間を算定して移動時間分布を生成し、移動時間分布の形状や変化によって不測の事態を検知することができる。そして、不測の事態を検知したならば、警報を発することで警備員に対して不測の事態の発生を通知し、事態の収拾にあたらせることができる。
【0032】
次に、本実施例に係る警備システムのシステム構成について説明する。
図2は、警備システムのシステム構成を示す図である。
図2に示すように、経路の始点Poと終点Pdにはそれぞれ警備員を配置し、警備員には携帯端末を携行させる。始点Poに配置された警備員が携行する携帯端末が警備員端末Tg1であり、終点Pdに配置された警備員が携行する携帯端末が警備員端末Tg2である。
【0033】
始点Po近傍の歩行者が携帯端末Tu1を携行しており、この携帯端末Tu1に無線LANルータ機能がある場合、例えば携帯電話端末のテザリング機能がオンである場合には、携帯端末Tu1は、自アクセスポイントの識別名であるSSID(Service Set Identifier)を周囲に送信する。
【0034】
このため、携帯端末Tu1が警備員端末Tg1と通信可能な距離に存在すると、警備員端末Tg1は携帯端末Tu1のSSIDを受信することができる。警備員端末Tg1は、受信したSSIDを受信の時刻に関連付けて管理装置10に送信する。
【0035】
同様に、終点Pd近傍の歩行者が携帯端末Tu2を携行しており、この
携帯端末Tu2に無線LANルータ機能がある場合には、携帯端末Tu2は、自アクセスポイントのSSIDを周囲に送信する。そして、警備員端末Tg2は携帯端末Tu2のSSIDを受信したならば、受信したSSIDを受信の時刻に関連付けて管理装置10に送信する。
【0036】
なお、SSIDを受信して時刻と関連付け、管理装置10に送信する処理は、例えば警備員端末Tg1,Tg2上で動作するアプリケーションプログラムによって実現可能である。
【0037】
管理装置10は、警備員端末Tg1から受信したSSIDに関連付けられていた時刻を始点Poの通過時刻とし、警備員端末Tg2から受信したSSIDに関連付けられていた時刻を終点Pdの通過時刻として管理する。そして、同一のSSIDについて始点と終点の通過時刻が得られたならば、その差分を移動時間として算定する。
【0038】
管理装置10は、このようにして移動時間を算定して蓄積し、蓄積した移動時間から移動時間分布を生成する。移動時間分布の生成は、所定の間隔で定期的に行なうこととすればよい。
【0039】
管理装置10は、生成した移動時間分布の形状や変化によって不測の事態を検知する。そして、不測の事態を検知したならば、警報を発することで警備員に対して不測の事態の発生を通知し、事態の収拾にあたらせる。例えば、警備員の詰所で待機中の警備員を異常が発生した経路に派遣することで、発生した異常の内容を確認させ、対処を行なわせることができる。
【0040】
次に、
図2に示した管理装置10の内部構成について説明する。
図3は、
図2に示した管理装置10の内部構成を示す構成図である。
図3に示すように、管理装置10は、表示部11及び入力部12と接続され、通信部13、記憶部14及び制御部15を有する。
【0041】
表示部11は、液晶パネルやディスプレイ装置等である。入力部12は、キーボードやマウス等である。通信部13は、通信回線を介して警備員端末Tg1,Tg2等とデータ通信するためのインタフェース部である。
【0042】
記憶部14は、ハードディスク装置や不揮発性メモリ等の記憶デバイスであり、警備員データ14a、移動時間データ14b及び分布データ14cを記憶する。警備員データ14aは、警備員を管理する為のデータであり、警備員の識別情報、該警備員が携行する警備員端末の識別情報、警備員の現在位置、現在の状況などを対応付けている。移動時間データ14bは、歩行者の移動時間を示すデータであり、歩行者の携帯端末から取得したSSID、始点Poの通過時刻、終点Pdの通過時刻、移動時間を対応付けている。分布データ14cは、移動時間データ14bから生成した分布についてのデータである。
【0043】
制御部15は、管理装置10を全体制御する制御部であり、警備状態管理部15a、移動時間算定部15b、分布生成部15c、異常検知部15d及び警報処理部15eを有する。実際には、これらの機能部に対応するプログラムを図示しないROMや不揮発性メモリに記憶しておき、これらのプログラムをCPU(Central Processing Unit)にロードして実行することにより、警備状態管理部15a、移動時間算定部15b、分布生成部15c、異常検知部15d及び警報処理部15eにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0044】
警備状態管理部15aは、警備対象のエリアや経路を設定し、警備員を配置し、各警備員の状態を管理するとともに、警備対象のエリアや警備の状態を管理する処理部である。警備状態管理部15aは、警備員の状態が変化した場合には、警備員データ14aを更新する。
【0045】
移動時間算定部15bは、警備員端末から受信したSSID及び時刻により移動時間データ14bを更新し、移動時間を算定する処理部である。具体的には、移動時間算定部15bは、警備員端末Tg1からSSID及び時刻を受信したならば、受信した時刻を該SSIDの始点Poの通過時刻とする。また、移動時間算定部15bは、警備員端末Tg2からSSID及び時刻を受信したならば、受信した時刻を該SSIDの終点Pdの通過時刻とする。そして、移動時間算定部15bは、始点と終点の通過時刻が得られたSSIDについて、通過時刻の差分を算定し、該SSIDの移動時間とする。
【0046】
分布生成部15cは、移動時間算定部15bにより算定され、移動時間データ14bに蓄積された移動時間から移動時間分布を生成する処理部である。分布生成部15cは、生成した移動時間分布について最頻値などの各種パラメータを算定し、分布データ14cに格納する。
【0047】
異常検知部15dは、分布生成部15cにより生成され、分布データ14cに格納された移動時間分布に基づいて、異常の検知を行なう処理部である。異常検知部15dは、移動時間分布の形状と変化から異常を検知する。
【0048】
一例として、異常検知部15dは、移動時間分布において頻度値が所定値を超えるピークが分離して複数存在する場合に、異常が発生したと判定する。なお、イベントの種類などによっては、通常時に複数のピークが存在する場合がある。例えば、経路上にイベント会場の入口があり、歩行者がイベント会場に入るか否かを選択する場合には、イベント会場に入った歩行者の移動時間と、イベント会場に入らなかった歩行者の移動時間とが大きく異なる。この結果、移動時間分布では、イベント会場に入った歩行者に対応するピークと、イベント会場に入らなかった歩行者に対応するピークの2つのピークがあらわれる。このように、通常の状態において2つのピークが出現する場合には、移動時間分布に3以上のピークが現れた場合に異常が発生したと検知することになる。
【0049】
また、異常検知部15dは、移動時間分布の最頻値の変化を監視し、移動時間分布の最頻値の変化量が閾値を超えた場合に異常が発生したと検知する。なお、ここでは最頻値の変化を監視する場合を示したが、平均値、分散、中央値など、他のパラメータの変化を監視して異常を検知することも可能である。
【0050】
警報処理部15eは、異常検知部15dにより異常が検知された場合に、警報を発する処理部である。この警報としては、表示部11への表示出力や、所定のスピーカによる音声出力を用いることができる。また、警報先は、管理装置10のオペレータであってもよいし、警備員の詰所等、他の場所に設けた端末に対して行ってもよい。警報処理部15eが警報処理を行なうことで、警備員に不測の事態の発生を通知し、事態の収拾にあたらせることができる。
【0051】
次に、管理装置10の記憶部14が記憶するデータについて説明する。
図4は、管理装置10の記憶部14が記憶するデータの説明図である。
図4(a)に示す警備員データ14aは、警備員の識別情報である警備員IDに対し、該警備員が携行する警備員端末の識別情報である端末ID、配置場所、状態等を対応付けている。配置場所は、始点Poや終点Pdを含み、該警備員の現在位置を示す。状態には、警備中、移動中、待機中、トラブル対処中など該警備員の現在の状態が示されている。
【0052】
警備員端末からSSID及び時刻を受信した場合には、送信元の警備員端末の端末IDに基づいて警備員データ14aを参照することで、どの警備員が携行しているか、現在地や状態が特定可能である。
【0053】
図4(a)では、警備員ID「G0001」の警備員が端末ID「Tg0001」の警備員端末を携行し、配置場所「P1」にて警備中であることが示されている。
【0054】
図4(b)に示す移動時間データ14bは、SSID、始点Poの通過時刻、終点Pdの通過時刻及び移動時間を対応付けたデータである。
図4(b)では、SSIDが「user00x」である携帯端末が始点Poを10時5分40秒に通過し、終点Pdを10時12分10秒に通過し、移動時間が390秒であったことが示されている。
【0055】
図4(c)に示す分布データ14cは、分布ID、生成時刻、平均値、分散値、最頻値等を対応付けたデータである。分布IDは、移動時間分布を識別するための識別情報であり、生成時刻は移動時間分布が生成された時刻である。そして、平均値、分散値、最頻値等は、移動時間分布の特徴を示すパラメータである。
図4(c)では、分布ID「C0001」の移動時間分布が10時15分00秒に生成され、移動時間の平均値は411秒、分散120秒、最頻値は408秒であることが示されている。
【0056】
なお、複数の経路が存在する場合には、経路を定義するデータを設けるともに、移動時間データ14b及び分布データ14cを経路毎に設ける。
図5は、複数の経路についての説明図である。
【0057】
図5(a)では、地点P1〜P7が存在し、地点間に経路が張られている。具体的には、P1とP2、P2とP3、P1とP4、P4とP3、P1とP5、P5とP2、P2とP6、P6とP7、P7とP3のそれぞれの組合せについて、それぞれ経路が存在する。
【0058】
図5(b)は、経路の定義データであり、地点P1〜P7から始点Poと終点Pdとを選択することで経路を一意に特定し、経路IDを付与している。具体的には、経路ID「R1」の経路は、始点Poとして地点P1が選択され、終点Pdとして地点P2が選択されている。同様に、経路ID「R2」の経路は、始点Poとして地点P2が選択され、終点Pdとして地点P3が選択されている。
【0059】
このように複数の経路を管理し、各経路の移動時間が算定されれば、経路の効率的な選択が可能となる。例えば、地点P1から地点P2に移動する場合に、経路R1の移動時間と、地点P5を経由する経路の移動時間の合計とを比較すれば、地点P2により早く到達できる経路を選択可能となる。
【0060】
次に、警備員端末の処理動作について説明する。
図6は、警備員端末の処理動作を示すフローチャートである。
図6に示す処理動作は、警備員端末により繰り返し実行される。また、この処理動作は、警備員端末上で動作するアプリケーションによって実現される。
【0061】
処理が開始されると、警備員端末は、まず、SSIDを検知したか否かを判定する(ステップS101)。SSIDを検知しなければ(ステップS101;No)、警備員端末は、そのまま処理を終了する。
【0062】
SSIDを検知したならば(ステップS101;Yes)、警備員端末は、検知したSSIDに時刻情報と自装置の端末IDとを対応付け(ステップS102)、管理装置10に送信して(ステップS103)、処理を終了する。
【0063】
次に、管理装置10の処理動作について説明する。
図7は、管理装置10の処理動作を示すフローチャートである。管理装置10の移動時間算定部15bは、まず、警備員端末から受信したSSID及び時刻を移動時間データ14bに登録して蓄積する(ステップS201)。そして、移動時間算定部15bは、始点と終点の通過時刻が得られたSSIDについて、通過時刻の差分を算定し、該SSIDの移動時間とする(ステップS202)。
【0064】
分布生成部15cは、移動時間算定部15bにより算定され、移動時間データ14bに蓄積された移動時間から移動時間分布を生成する(ステップS203)。異常検知部15dは、分布生成部15cにより生成された移動時間分布の形状に異常があるか否かを判定する(ステップS204)。このステップでは、頻度値が所定値を超えるピークが分離して複数存在するか否か等が判定される。
【0065】
移動時間分布の形状に異常が無いならば(ステップS204;No)、異常検知部15dは、同一経路について以前に生成した移動時間分布からの変化を検証し(ステップS205)、分布の変化に異常があるか否かを判定する(ステップS206)。このステップでは、移動時間分布の最頻値の変化量が閾値を超えるか否か等が判定される。
【0066】
移動時間分布の変化に異常が無いならば(ステップS206;No)、異常検知部15dはそのまま処理を終了する。分布の形状に異常がある場合(ステップS204;Yes)又は分布の変化に異常がある場合(ステップS206;Yes)には、警報処理部15eが警報を出力して(ステップS207)、処理を終了する。
【0067】
上述してきたように、実施例1に係る警備システムでは、経路を通過する複数の歩行者の移動時間を算定して移動時間分布を生成し、移動時間分布の形状や変化によって不測の事態を検知して警報を発するので、不測の事態の発生を効率良く検知するとともに、不測の事態に早急に対応することができる。
【実施例2】
【0068】
実施例1では、歩行者の移動時間を算定し、移動時間の分布から異常を検知する構成について説明したが、イベントによっては歩行者の移動時間に影響を与える場合がある。そこで、本実施例2では、イベントのスケジュールを用いて異常の検知精度を向上する構成について説明する。また、本実施例では、異常の検知結果の利用例についても説明する。
【0069】
図8は、実施例2に係る異常の検知についての説明図である。まず、実施例1と同様に歩行者の移動時間を算定して蓄積し、
図8(a)に示すように移動時間分布を生成する。
図8(a)では、時刻t1における歩行者の移動時間の最頻値がM(t1)である。
【0070】
その後、実施例2に係る異常の検知では、
図8(b)に示すように、イベントのスケジュールに基づいて移動時間の変動を予測する。例えば、イベントとしてコンサートを開催するケースでは、コンサートの終了後には観客が歩行者となって経路上に出るため、混雑が生じて移動時間が長くなると考えられる。そして、移動時間がどれだけ長くなるかは、コンサート中の歩行者、すなわち観客ではない歩行者の移動時間と、観客の人数とを用いて予測される。
図8(b)では、時刻t2における移動時間の最頻値は、イベントによる影響を受けてM’(t2)となることが予測されている。
【0071】
実施例2に係る異常の検知では、
図8(c)に示すように、時刻t2における移動時間分布を生成し、移動時間分布から算定した最頻値M(t2)と、予測した最頻値M’(t2)との差が閾値を超えた場合に不測の事態が発生したと検知する。
【0072】
このように、実施例2に係る警備では、歩行者の移動時間分布とイベントのスケジュールとを用いて不測の事態を検知するので、イベントによって生じた混雑などを異常として誤検知することがなく、検知精度を向上することができる。なお、イベントなどによって移動速度に変化があると予測したにも関わらず、かかる変化が生じないケースについても、実施例2に係る警備では異常として検知可能である。
【0073】
図9は、実施例2に係る管理装置110の内部構成を示す構成図である。
図9に示した管理装置110は、記憶部14にイベントデータ114dをさらに記憶し、制御部15にイベント管理部115f及び警備員配置調整部115gをさらに備える点が実施例1の管理装置10と異なる。また、異常検知部115dの動作が、実施例1に示した異常検知部15dと異なる。その他の構成及び動作は、実施例1に示した管理装置10と同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
イベントデータ114dは、イベント会場にて開催されるイベントについてのデータである。イベントデータ114dには、イベントの開始時刻、終了時刻、客数など、経路の状態の変化を予測するための各種データが含まれる。また、近隣の交通機関についての情報、例えば駅における列車の発着時刻なども経路の状況に影響を与える一種のイベントとして登録してもよい。
【0075】
イベント管理部115fは、イベントデータ114dにイベントを登録し、イベントデータ114dに基づいて移動時間の変化量を予測する処理部である。異常検知部115dは、イベント管理部115fによる予測結果を用いて異常の検知を行なう。
【0076】
具体的には、異常検知部115dは、移動時間分布から算定した最頻値とイベント管理部115fにより予測された最頻値との差が閾値以上となった場合に、異常が発生したと検知する。
【0077】
警備員配置調整部115gは、移動時間算定部15bにより算定された移動時間に基づいて、警備員配置を調整する処理部である。警備員配置調整部115gは、警備対象のエリア内において、どの地点で異常が発生したとしても、規定時間内に警備員が駆けつけられるよう警備員の配置を調整する。
【0078】
具体的には、警備員配置調整部115gは、各経路の移動時間と警備員の現在の配置とを照らし合わせることで、警備対象エリアの各地点に警備員が到達するまでの所要時間を算定する。そして、所要時間が規定時間を超える地点が存在するならば、所要時間に余裕のある他の警備員の配置を変更し、現在の警備員の人員で最適な配置となるよう調整を行なう。かかる調整により警備員の配置が変更となったならば、警備状態管理部15aを介して各警備員に配置の変更を伝達する。
【0079】
このように、移動時間に基づいて警備員の配置を調整することにより、警備の死角を排除し異常に対する迅速な対応が可能となる。すなわち、経路の移動時間の算定は、従来は経験則に基づいて行なわれていた警備員の配置を定量的に評価する指標として用いることができ、警備の質の向上に寄与する。
【0080】
上述してきたように、実施例2に係る警備システムでは、経路を通過する複数の歩行者の移動時間を算定して移動時間分布を生成し、移動時間分布とイベントのスケジュールとを用いて不測の事態を検知するので、イベントによって生じた混雑などを異常として誤検知することがなく、不測の事態の発生を効率良く検知することができる。また、算定した移動時間に基づいて警備員の配置を調節することにより、不測の事態に早急に対応することができる。
【0081】
なお、上記実施例1及び2では、歩行者が携行する携帯端末からSSIDを取得して移動時間の算定に用いる構成について説明した。かかる構成では、歩行者に対してテザリング機能をオンにするよう呼びかけることが好適である。全ての歩行者の携帯端末からSSIDを取得する必要はなく、歩行者の中にSSIDを提供する携帯端末を携行する人物がいれば移動時間の算定は可能であるが、SSIDを提供する携帯端末が多ければその分安定して移動時間を算定することができ、また移動時間のサンプル数が多いほど移動時間分布を精度良く求めることができるからである。
【0082】
また、歩行者が携行する携帯端末を無線通信により識別できれば本発明に係る移動時間の算定が可能であるため、SSIDの利用に限定されるものではない。例えば、警備員端末側に無線LANルータ機能を持たせるとともに、警備員端末経由で接続可能なサーバにイベントに関する情報等のコンテンツを用意して、歩行者が警備員端末経由で無線LANにアクセスするよう動機付けをおこなってもよい。この場合には、歩行者が無線LANにクライアントとして接続するので、歩行者の携帯端末のMACアドレスを時刻と対応付けて管理装置に送信すればよい。
【0083】
また、歩行者が携行する携帯端末と警備員端末とをBLUETOOTH(登録商標)等の通信規格で通信させ、歩行者が携行する携帯端末の識別情報を取得することもできる。この場合には、ペアリングの完了までを行なう必要はなく、ペアリングを試行する段階で送受信される携帯端末の識別情報を時刻と対応付けて管理装置に送信すればよい。
【0084】
また、上記実施例1及び2では、歩行者が携行する携帯端末からの識別情報の取得に警備員端末を用いている。このため、警備員を移動させることで移動時間の算定対象となる経路を柔軟に変更可能である。例えば、イベント会場での入場口と退場口が異なる場合や、メインの経路が使用不能となって代替経路の移動時間を算定する必要が生じた場合であっても、即座に対応可能である。
【0085】
なお、上記実施例1及び2では、歩行者が携行する携帯端末からの識別情報の取得に警備員端末を用いる場合を例に説明を行なったが、経路上に固定の通信設備を配置し、固定の通信設備が歩行者の携帯端末の識別情報を取得する構成としてもよい。
【0086】
また、上記実施例1及び2に示した移動時間分布の形状の評価はあくまで一例であり、任意の手法を用いて移動時間分布からの異常の検知を行なうことができる。例えば、移動時間分布における頻度値の分離を大津の判別分析法により判別し、異常の検知に用いてもよい。
【0087】
また、移動時間の算定結果は、実施例1及び2に限定されず、任意に利用することができる。例えば、警備員が通行の整理を行なった結果、歩行者の移動時間がどのように変化したかをリアルタイムで計測することで、通行の整理の結果を定量的に評価できる。また、評価結果を警備員にフィードバックすることもできる。
【0088】
また、移動時間の算定は、移動方向ごとにリアルタイムに行なうことができるので、移動方向を利用した警備員の配置が可能である。例えば、一の道路においてイベント会場に向かう方向では移動時間が長く、イベント会場から帰る方向では移動時間が短いならば、イベント会場に向かう人の誘導に警備員を割り当てることができる。そして、イベント会場に向かう方向と帰る方向の双方で移動時間が長ければ、現場で事故発生などにより滞留が発生している可能性があるため、複数の警備員を急行させるなどの対処が可能である。