特許第6570276号(P6570276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570276
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】膜分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/08 20060101AFI20190826BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20190826BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20190826BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B01D63/08
   B01D63/00 510
   C02F1/44 A
   C02F3/12 S
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-50106(P2015-50106)
(22)【出願日】2015年3月13日
(65)【公開番号】特開2016-168546(P2016-168546A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−029952(JP,A)
【文献】 特開2001−062471(JP,A)
【文献】 特開2011−104502(JP,A)
【文献】 特開2014−138941(JP,A)
【文献】 特開平09−047762(JP,A)
【文献】 特開2008−073676(JP,A)
【文献】 特開2002−011469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00 − 71/82
C02F 1/44
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成され、膜エレメントの濾板と一体に形成されていることを特徴とする膜分離装置。
【請求項2】
平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成され、膜エレメントと別体に形成されていることを特徴とする膜分離装置。
【請求項3】
平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成されており、厚さ方向において対向する一対の鉛直な前後両面と、前後両面の下端間に形成された水平な下端面とを有することを特徴とする膜分離装置。
【請求項4】
し渣接触抑制部は分離膜の下部と濾板との接合部から30mm以上の下方領域に備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の膜分離装置。
【請求項5】
し渣接触抑制部は分離膜の下辺端部から30mm以上の下方領域に備えられていることを特徴とする請求項4に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離活性汚泥処理に用いられる膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の膜分離装置としては、図11に示すように、容器内に複数の平膜モジュール101が備えられ、平膜モジュール101の下方に曝気装置が設置されているものがある。平膜モジュール101は、平板状のスペーサ102と、スペーサ102の両側に張り付けられた膜103とを有している。これら平膜モジュール101のうち、互いに隣り合う平膜モジュール101の取付高さに高低差104をつけて、交互に下端部の位置を異ならせている。
【0003】
これによると、曝気装置から気泡を放出することにより、平膜モジュール101の下方から上方へ流れる上向流105が発生する。この状態で濾過を続けると、原液中に混在している毛髪や紙の断片等のし渣106が平膜モジュール101の下端部に絡まって次第に大きく成長する。
【0004】
これに対して、互いに隣り合う平膜モジュール101の取付高さに高低差104をつけているため、原液通路107の流入口として機能している平膜モジュール101の下端部同士の間隔が付着したし渣106によって閉塞されるのを防止することができる。
【0005】
尚、上記のような膜分離装置は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−198144
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記の従来形式では、図12に示すように、平膜モジュール101の下端部に付着したし渣106が次第に大きく成長し、曝気時に平膜モジュール101が矢印で示した方向に振動した際、成長したし渣106が隣りの平膜モジュール101の膜103に接触し、し渣106と膜103とが擦れ合って膜103が損傷するといった問題がある。
【0008】
本発明は、付着して成長したし渣が分離膜に当接して分離膜が損傷するのを防止することができる膜分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本第1発明は、平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成され、膜エレメントの濾板と一体に形成されているものである。
【0010】
これによると、膜エレメントの下方から上方へ流れる上向流を発生させ、この状態で濾過運転を行っている際、被処理液中のし渣が膜エレメントの下方からし渣接触抑制部で捕捉されたとしても、捕捉されたし渣が分離膜の下部と濾板との接合部よりも上方の領域(有効濾過領域)における分離膜に付着して成長するのを防止することができる。これにより、上記接合部よりも上方の領域において、し渣と分離膜とが擦れ合うのを防止することができ、分離膜の損傷を防止することができる。
【0012】
、上向流は膜エレメントの下方から開口部を通って上方へ流れる。この際、開口部を通過する被処理液中のし渣がし渣接触抑制部で捕捉されたとしても、し渣が分離膜の下部と濾板との接合部よりも上方の領域における分離膜に付着して成長するのを防止することができる。
【0013】
本第2発明は、平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成され、膜エレメントと別体に形成されているものである。
本第3発明は、平板状の濾板に分離膜を備えた複数の膜エレメントが、ケース内に収容されて、膜面同士を対向させた状態で所定間隔をあけて配列されている膜分離装置であって、
ケース内に、膜エレメントの幅方向における一側部を下方から支持する一方の支持部と、他側部を下方から支持する他方の支持部とが設けられ、
一方の支持部と他方の支持部との間に開口部が形成され、
分離膜は周縁部に沿って濾板に接合され、
分離膜の下部と濾板との接合部よりも下方に、長方形の板状のし渣接触抑制部が備えられ、
し渣接触抑制部は、し渣接触抑制部に捕捉された被処理液中のし渣が接合部よりも上部の分離膜に接触するのを抑制するものであり、開口部の全幅にわたり形成されており、厚さ方向において対向する一対の鉛直な前後両面と、前後両面の下端間に形成された水平な下端面とを有するものである。
これによると、し渣接触抑制部は水平な下端面を有するため、被処理液中のし渣は、膜エレメントの下方からし渣接触抑制部の下端面に絡まり易く、確実にし渣接触抑制部に捕捉される。
【0014】
本第発明における膜分離装置は、し渣接触抑制部は分離膜の下部と濾板との接合部から30mm以上の下方領域に備えられているものである。
【0015】
これによると、膜エレメントの下方から上方へ流れる上向流を発生させ、この状態で濾過運転を行っている際、被処理液中のし渣は膜エレメントの下方からし渣接触抑制部に捕捉される。ここで、し渣接触抑制部は分離膜の下部と濾板との接合部から30mm以上の下方領域に備えられているため、し渣接触抑制部の下端から上記接合部までの距離が少なくとも30mmは確保され、膜エレメントよりも前段に設けられたスクリーン等で除去されずに被処理液中に残った多くのし渣は、し渣接触抑制部の下端から上記接合部までの領域内(有効濾過領域外の領域)に捕捉される。
【0016】
本第発明における膜分離装置は、し渣接触抑制部は分離膜の下辺端部から30mm以上の下方領域に備えられているものである。
これによると、し渣接触抑制部は分離膜の下辺端部から30mm以上の下方領域に備えられているため、し渣接触抑制部の下端から分離膜の下辺端部までの距離が30mm以上確保され、膜エレメントよりも前段に設けられたスクリーン等で除去されずに被処理液中に残った多くのし渣は、し渣接触抑制部の下端から分離膜の下辺端部までの領域内に捕捉される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、成長したし渣が膜エレメントの分離膜に当接して分離膜が損傷するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態における膜分離装置の一部切欠き斜視図である。
図2】同、膜分離装置に備えられる膜エレメント単品の正面図である。
図3】同、膜分離装置に備えられる複数の配列された膜エレメントの側面図である。
図4】同、膜分離装置のケース内に収容された膜エレメントの正面図である。
図5】同、膜分離装置のケース内に収容されて配列された複数の膜エレメントの側面図である。
図6】参考として挙げた従来の膜エレメントの下部正面図である。
図7】本発明の第3の実施の形態における膜エレメントの下部正面図である。
図8】本発明の第4の実施の形態における膜分離装置のケース内に収容された膜エレメントの正面図である。
図9】同、膜エレメント単品の正面図である。
図10】本発明の第5の実施の形態における膜分離装置のケース内に収容された膜エレメントの正面図である。
図11】従来の複数の配列された平膜モジュールの側面図である。
図12】同、複数の配列された平膜モジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1に示すように、1は膜分離活性汚泥処理に用いられる膜分離装置であり、この膜分離装置1は処理槽(図示省略)内に浸漬されて設置されている。膜分離装置1は、ケース3と、ケース3内に収容された複数の平板状の膜エレメント4と、膜エレメント4の下方に設置された散気装置5とを有している。
【0023】
ケース3は、上下両端部が開放されており、上部の膜ケース7と、下部の散気ケース8とに分割形成されている。尚、膜ケース7は、膜エレメント4を膜ケース7内から上方に出し入れできるように、構成されている。散気装置5は散気ケース8内に設置されている。
【0024】
図2図3に示すように、膜エレメント4は、樹脂製の四角平板状の濾板9と、濾板9の両面に設けられた分離膜10とを有し、膜面同士を対向させた状態で所定間隔Aをあけて配列されている。分離膜10は、周縁部に沿って、超音波溶着又は熱溶着或いはレーザ溶着等により濾板9に接合されている。これにより、分離膜10の周縁部よりも内側に、四角枠状の接合部19(溶着部)が形成される。尚、接合部19で囲まれた領域は有効濾過領域33であり、この有効濾過領域33内において、被処理液25が分離膜10を透過して透過液11が得られる。
【0025】
濾板9と分離膜10との間および濾板9の内部には、透過液11が流れる透過液流路(図示省略)が形成され、透過液流路に連通する透過液取出口12が濾板9の上端部に設けられている。尚、透過液取出口12には透過液取出管路29が接続され、透過液取出管路29には透過液11を吸引する吸引ポンプ(図示省略)が設けられている。
【0026】
図4に示すように、ケース3内には、膜エレメント4の幅方向Wにおける一側部を下方から支持する一方の支持部14aと、他側部を下方から支持する他方の支持部14bと、一側部の浮上りを防止する一方の押え部15aと、他側部の浮上りを防止する他方の押え部15bとが設けられている。
【0027】
図5に示すように、両支持部14a,14bは複数の凹凸部17,18を有する櫛歯状の部材であり、同様に、両押え部15a,15bは複数の凹凸部20,21を有する櫛歯状の部材である。各膜エレメント4は凹部17,20に挿入されて保持されている。また、図4に示すように、一方の支持部14aと他方の支持部14bとの間には開口部22(図8参照)が形成されている。尚、膜ケース7内と散気ケース8内とは開口部22を介して上下方向に連通している。
【0028】
分離膜10の下部と濾板9との接合部19a(以下、下部接合部19aと記載)から40mmの下方領域24には、被処理液25中のし渣26を捕捉するし渣接触抑制部27が備えられている。
【0029】
し渣接触抑制部27は、濾板9と一体であり、図4に示すように開口部22の全幅にわたり形成され、上方から開口部22に挿入可能であり、図3に示すように厚さ方向Tにおいて対向する一対の鉛直な前後両面27a,27bと、前後両面27a,27bの下端間に形成された水平な下端面27cとを有している。尚、図4に示すように、膜エレメント4の両側部が下方から両支持部14a,14bによって支持されている関係上、図2に示すように、し渣接触抑制部27の幅寸法Bは濾板9の幅寸法Cよりも小さくなる。
【0030】
以下、上記構成における作用を説明する。
濾過運転時、散気装置5から気泡を噴出することにより、下から上へ流れる上向流32がケース3内に発生する。この上向流32は、図4に示すように、散気ケース8内から開口部22を通って、各膜エレメント4間を流れる。この際、吸引ポンプを作動して、分離膜10の二次側に吸引圧(負圧)を作用させることにより、上向流32の一部は、分離膜10を透過し、透過液11として透過液取出口12から透過液取出管路29を通って系外へ取り出される。
【0031】
このような濾過運転時において、図3および図4の仮想線で示すように、開口部22を流れる被処理液25中に含まれる毛髪や紙の断片等のし渣26が、膜エレメント4の下方からし渣接触抑制部27に付着して捕捉されることがある。ここで、図2に示すように、し渣接触抑制部27の下端から下部接合部19aまでの距離Dが40mmに確保され、し渣接触抑制部27に捕捉されるし渣26のほとんどは、し渣接触抑制部27の下端から下部接合部19aまでの領域24内に捕捉される。これにより、下部接合部19aよりも上方の有効濾過領域33において、し渣26と分離膜10とが擦れ合うのを防止することができ、有効濾過領域33における分離膜10の損傷を防止することができる。
【0032】
また、図3に示すように、し渣接触抑制部27は水平な下端面27cを有するため、被処理液25中のし渣26が膜エレメント4の下方からし渣接触抑制部27の下端面27cに絡まった際、下端面27cの分だけ、し渣26がし渣接触抑制部27の前面27a又は後面27bに接触する長さが短くなり、し渣接触抑制部27の機能をより発揮できるため好ましい。
【0033】
尚、図2に示すように、し渣26が分離膜10の下部接合部19aよりも下方へはみ出した部分10a(以下、下方はみ出し部分10aと記載)に付着し、し渣26と分離膜10の下方はみ出し部分10aとが擦れ合って、万一、分離膜10の下方はみ出し部分10aが損傷しても、下方はみ出し部分10aは有効濾過領域33の外側であるため、濾過されていない被処理液25が分離膜10の二次側の透過液11に混入することはなく、透過液11の清浄度に悪影響を及ぼすことはない。このようなことから、し渣26が分離膜10の下方はみ出し部分10aに付着することを許容しても差し支えはないと考えられる。
【0034】
また、参考に、下記表1に、従来の膜エレメントの分離膜の損傷位置の調査結果を示す。尚、図6に示すように、従来の膜エレメント60には、第1の実施の形態に記載したようなし渣接触抑制部27が備えられておらず、濾板9の下端から下部接合部19aまでの距離K1が17mm、濾板9の下端から分離膜10の下辺端部までの距離K2が10mmに設定されている。下記表1は、膜分離装置よりも前段で、スクリーン等でし渣を除去してもなおし渣の影響の大きな水処理施設において、従来の膜エレメント60を400枚調査して、分離膜10がし渣26によって損傷した枚数を示している。
【0035】
【表1】
これによると、分離膜10が損傷した計10枚の膜エレメント60のうち、9枚(すなわち90%)については、分離膜10の損傷位置が濾板9の下端から上方へ30mmの領域K3内に存在している。
【0036】
このような調査結果に基づいて、上記第1の実施の形態では、図2に示すように、し渣接触抑制部27を下部接合部19aから40mmの下方領域24に形成することにより、し渣接触抑制部27に捕捉されたし渣26のほとんどが分離膜10の有効濾過領域33内に付着することを防止することができる。
【0037】
尚、もしも、し渣26が分離膜10の有効濾過領域33内に付着した場合、吸引圧によってし渣26が分離膜10の一次側表面に吸着してしまうため、し渣26の成長が早く、し渣26が短期間で大きくなり分離膜10が損傷し易くなる。
【0038】
上記第1の実施の形態では、し渣接触抑制部27を下部接合部19aから40mmの下方領域24にわたって設けたが、40mmに限定されるものではなく、下部接合部19aからし渣接触抑制部27の下端までの距離Dを30mm以上(すなわち少なくとも30mm)確保すればよい。
【0039】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、図2に示すように、し渣接触抑制部27を下部接合部19aから40mmの下方領域24に設けたが、第2の実施の形態では、し渣接触抑制部27を分離膜10の下辺端部10bから30mm又はそれ以上の下方領域24に設けている。
【0040】
これによると、分離膜10の下辺端部10bからし渣接触抑制部27の下端までの距離が少なくとも30mm確保されるため、ほとんどのし渣26はし渣接触抑制部27の下端から分離膜10の下辺端部10bまでの領域内に捕捉される。これにより、し渣26が分離膜10の有効濾過領域33のみならず下方はみ出し部分10aにも付着するのを防止することができる。
【0041】
(第3の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、図2に示すように、し渣接触抑制部27を濾板9と一体に形成しているが、第3の実施の形態では、図7に示すように、し渣接触抑制部材40(し渣接触抑制部に相当)を、アタッチメントとして、濾板9とは別に製作し、ねじ41等の締結具を用いて、濾板9の下辺端部に取り付けてもよい。
【0042】
(第4の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、図4に示すように、膜エレメント4をケース3内に収容した状態で、し渣接触抑制部27が開口部22に挿入されているが、第4の実施の形態では、図8図9に示すように、し渣接触抑制部27を開口部22に挿入せず、分離膜10の下部接合部19aから濾板9の下端までの下方領域24を30mm以上に設定し、この下方領域24をし渣接触抑制部27として利用してもよい。
【0043】
(第5の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、図2に示すように、し渣接触抑制部27を、濾板9と一体に形成しているが、別体に形成してもよい。例えば、第5の実施の形態では、図10に示すように、し渣接触抑制部27を、ケース3の両側板部45間に設け、濾板9の直下に配置してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 膜分離装置
3 ケース
4 膜エレメント
9 濾板
10 分離膜
14a,14b 支持部
19a 下部接合部
22 開口部
24 下方領域
25 被処理液
26 し渣
27 し渣接触抑制部
27a 前面
27b 後面
27c 下端面
40 し渣接触抑制部材
A 所定間隔
T 厚さ方向
W 幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12