(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570293
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】盤用冷却装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
H05K7/20 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-77332(P2015-77332)
(22)【出願日】2015年4月6日
(65)【公開番号】特開2016-197673(P2016-197673A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴徳
【審査官】
三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−232575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
F25B 19/00−30/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱側と吸熱側とに、それぞれ熱交換部及びファンを備えた盤用冷却装置であって、
放熱側または吸熱側の少なくとも一方には、前記ファンを上下方向または左右方向に複数備えるものとし、
これら複数のファン間に、盤用冷却装置の電源部または盤用冷却装置の動作制御を行う制御部の少なくとも何れかを配置し、
さらに前記熱交換部の外部を被覆する箱状のカバーの一面には、前記ファンに臨む、または前記ファンを挿通する開口部を形成するとともに、他面には吸気孔または排気孔を形成するものとし、
前記電源部または/及び制御部の、前記吸気孔または排気孔に臨む面側に、前記電源部または前記制御部に触れることを防止する規制片を形成したことを特徴とする盤用冷却装置。
【請求項2】
前記電源部または/及び制御部を、前記熱交換部の前方または後方位置に載置したことを特徴とする請求項1記載の盤用冷却装置。
【請求項3】
放熱側と吸熱側とに、それぞれ複数の熱交換部を上下方向または左右方向に隣接配置するとともに、
1つのファンを、1つの熱交換部の前方または後方位置に載置し、
さらに前記電源部または/及び制御部を、前記の隣接配置された熱交換部間に跨るよう固定したことを特徴とする請求項2記載の盤用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器収納用箱に収納された内部機器を冷却するための、盤用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配電盤、分電盤及び通信盤等の電気機器収納用箱には、内部機器の発熱による盤内温度の上昇を防止するために、ヒートシンク等の熱交換部及びファンにより放熱を行う盤用冷却装置が設けられる。また、盤用冷却装置としては、ペルチェモジュールを利用して冷却を行う、ペルチェ式盤用冷却装置も広く用いられている(特許文献1)。
【0003】
電気機器収納用箱に収納された内部機器は、一般的に交流入力である。一方で、盤用冷却装置に用いられるペルチェモジュール等は、直流入力により駆動される。したがって、盤用冷却装置内には、電源部としてのAC−DCコンバータが内蔵されることとなる。この電源部は、盤用冷却装置の動作制御を行う制御部の上部や、盤用冷却装置の下端部に配置されることが通常である。ここで、盤用冷却装置に必要とされる冷却能力が高くなるほど、熱交換部及びファンの数が増加することから、それに伴って電源部及び制御部の数やサイズも増加する。したがって、電源部を前述した位置に配設するものとした場合には、盤用冷却装置が大型化してしまう問題があった。同様に、制御部を設置するためのスペースも必要であるため、盤用冷却装置内のスペースを圧迫してしまう問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−155983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は前記した従来の問題点を解決し、電源部や制御部の数やサイズが増加した場合でも、省スペースでこれらを配置可能であり、これにより全体サイズを小型化可能とした盤用冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、放熱側と吸熱側とに、それぞれ熱交換部及びファンを備えた盤用冷却装置であって、放熱側または吸熱側の少なくとも一方には、前記ファンを上下方向または左右方向に複数備えるものとし、これら複数のファン間に、盤用冷却装置の電源部または盤用冷却装置の動作制御を行う制御部の少なくとも何れかを配置し、さらに前記熱交換部を被覆する箱状のカバーの一面には、前記ファンに臨む、または前記ファンを挿通する開口部を形成するとともに、他面には吸気孔または排気孔を形成するものとし、前記電源部または/及び制御部の、前記吸気孔または排気孔に臨む面側に、
前記電源部または前記制御部に触れることを防止する規制片を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の盤用冷却装置において、前記電源部または/及び制御部を、前記熱交換部の前方または後方位置に載置したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の盤用冷却装置において、放熱側と吸熱側とに、それぞれ複数の熱交換部を上下方向または左右方向に隣接配置するとともに、1つのファンを、1つの熱交換部の前方または後方位置に載置し、さらに前記電源部または/及び制御部を、前記の隣接配置された熱交換部間に跨るよう固定したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る盤用冷却装置によれば、放熱側または吸熱側の少なくとも一方には、ファンを上下方向または左右方向に複数備えるものとし、これら複数のファン間に、電源部または制御部の少なくとも何れかを配置するものとした。これにより、複数のファン間のデッドスペースを電源部または制御部の設置スペースとすることが可能となる。したがって、電源部や制御部の数やサイズが増加した場合でも、省スペースでこれらを配置可能となり、盤用冷却装置の全体サイズを小型化することができる。
また電源部や制御部に触れることを防止する規制片を形成したので、吸気孔や排気孔に人の指が入った場合でも、電源部や制御部に触れることを防止できるものとなる。また、この規制片は熱交換部を跨ぐように形成されることから、電源部や制御部の位置規制も兼ねるものとなる。
【0011】
請求項2記載に係る発明のように、電源部または/及び制御部を、熱交換部の前方または後方位置に載置するものとした。より詳細には、請求項3に係る発明のように、放熱側と吸熱側とに、それぞれ複数の熱交換部を上下方向または左右方向に隣接配置するとともに、1つのファンを、1つの熱交換部の前方または後方位置に載置し、さらに電源部または/及び制御部を、隣接配置された熱交換部間に跨るよう固定するものとした。これにより、熱交換部によって電源部や制御部からの放熱を促進させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の盤用冷却装置を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の盤用冷却装置を示す分解斜視図である。
【
図6】本実施形態の盤用冷却装置におけるフィルタを省略した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。なお、本明細書中における上下・左右・前後方向とは
図1に示す方向を指し、詳しくは、上下方向は筐体の長手方向、左右方向は筐体の幅方向、前後方向は筐体の奥行方向である。
図1に示す本発明の盤用冷却装置は、ペルチェ式盤用冷却装置であり、
図2のように冷却装置本体1と、この冷却装置本体1を被覆する箱状の正面側カバー2aと背面側カバー2bとからなる。冷却装置本体1は、
図3に示すように、仕切板3により盤外側と盤内側とに区画される。なお、盤外側は放熱側であり、盤内側は吸熱側である。この仕切板3の略中央部には、図示しないペルチェ素子により構成されたペルチェモジュールが設けられている。さらに、
図4のように、冷却装置本体1の放熱側と吸熱側とには、それぞれ熱交換部としてのヒートシンク4が上下方向に複数隣接して設けられている。なお、放熱側のヒートシンク4aは、吸熱側のヒートシンク4bよりも大きなサイズとすることで、冷却効果を高めるものとした。
【0015】
図3及び
図4のように、冷却装置本体1の放熱側と吸熱側とには、ヒートシンク4a、4bの放熱・吸熱効果を促進するためのファン5が設けられている。より詳しくは、各ファン5は放熱側においてはヒートシンク4aの前方に、吸熱側においてはヒートシンク4bの後方に設けられるものとし、後述するファン取付金具8を介して、1つのヒートシンク4上に1つのファン5が載置されるものとした。なお、ファン5をヒートシンク4の上下左右位置に設けるものとしても良く、また、1つのヒートシンク4の前方または後方位置に2つのファン5を載置するものとしても差し支えない。さらに、本実施形態においてはヒートシンク4、ファン5ともに上下方向に複数隣接配置されているが、例えば左右方向に複数隣接配置されるものであっても良い。
【0016】
図5のように、冷却装置本体1には、ペルチェモジュールを駆動するための電源部6が設けられている。本実施形態において、電源部6はAC−DCコンバータである。ペルチェモジュール等は直流入力で駆動される一方で、電気機器収納用箱に収納される内部機器は交流入力であるため、このようにAC−DCコンバータを盤用冷却装置内に設けるものとした。さらに、この電源部6は、上下方向に複数設けられたファン5、5間に配置するものとした。
【0017】
以上の構成により、上下方向に複数設けられたファン5、5間のデッドスペースを電源部6の設置スペースとすることが可能となる。したがって、電源部6の数やサイズが増加した場合でも、省スペースでこれらを配置可能となり、盤用冷却装置の全体サイズを小型化することができるものとなる。
【0018】
図4のように、ファン5は、上下・左右・前後方向に開口部9が形成されたファン取付金具8を介して、ヒートシンク4に直接取付けられている。これにより、ファン取付金具8自体も熱交換部として機能する。なお、この開口部9は、後述する正面側カバー2a及び背面側カバー2bに形成した吸排気孔10、11と対応する位置に形成されるものである。
【0019】
前述のように、ファン取付金具8を介して、1つのファン5が1つのヒートシンク4の前方または後方位置に載置されている。さらに、電源部6が上下方向に隣接配置されたヒートシンク4、4間に跨るよう固定されることによって、電源部6がヒートシンク4の前方位置に載置されるものとしている。このような構成により、ヒートシンク4によって電源部6からの放熱を促進させることが可能となる。また、このように複数のファン5と電源部6とが同一直線上に配置されることで、盤用冷却装置の筐体幅を小さくすることができる効果を奏するものとなる。
【0020】
図3のように、盤内温度が閾値を超えた場合に、盤用冷却装置を駆動させる等の制御を行う、またその閾値設定を行うための制御部7が、冷却装置本体1の上部に設けられている。なお、制御部7の下方、より詳細には、ファン5の上方かつヒートシンクの前方となる位置に、電源部6等の配線を収納するための配線収納部17を設けるものとした。これにより、デッドスペースを有効活用できる。
【0021】
図1及び
図2のように、正面側カバー2aと背面側カバー2bは、ヒートシンク4、電源部6、制御部7等を被覆し、景観を良くするものである。また、正面側カバー2aの前面には、ファン5に臨む開口部18が形成され、背面側カバー2bの後面には、ファン5を挿通する開口部12が形成されている。また、正面側カバー2aの左右側面には吸排気孔10が形成され、背面側カバー2bの左右側面には吸排気孔11が形成されている。そして、正面側カバー2aの開口部18にはルーバ13を着脱自在に設けるものとし、吸排気孔10にはフィルタ14を設けるものとした。また、吸排気孔11は溝状に形成されている。なお、各吸排気孔10、11にはルーバを着脱自在に、または一体に設けても良い。本実施形態においては、正面側カバー2aが形成される放熱側は、吸排気孔10から盤外の空気を取り込み、放熱側ヒートシンク4aを介してファン5により、開口部18から再び盤外に排出する構造である。同様に、背面側カバー2bが形成される吸熱側は、吸排気孔11から盤内の空気を取り込み、吸熱側ヒートシンク4bを介してファン5により開口部12から再び盤内に排出する構造としている。なお、本実施形態においては、開口部12、18を排気孔とし、吸排気孔10、11を吸気孔としているが、開口部12、18を吸気孔として、吸排気孔10、11を排気孔として使用するものであっても良い。
【0022】
図4のように、電源部6は、取付部15を介してファン取付金具8の前方位置に載置される。この取付部15は略H字形状を有しており、吸気孔または排気孔となる吸排気孔10に臨む規制片16を備えている。これにより、フィルタ14を外した状態を示す
図6に示すように、吸排気孔10に人の指が入った場合でも、電源部6に触れることを防止できるものとなる(斜線箇所参照)。また、この規制片16は、ヒートシンク4を跨ぐように形成されることから、電源部6の位置規制も兼ねるものとなる。なお、規制片16は、取付部15に一体形成されるものとすることで、取付作業の簡略化を図ることが可能となるが、別体に形成しても差し支えない。
【0023】
以上のように、本実施形態においては上下方向に複数設けられたファン5、5間のデッドスペースを電源部6の設置スペースとしているが、電源部6に代わり、制御部7を複数のファン5、5間に配置するものとしても差し支えない。さらに、電源部6と制御部7の双方をファン5、5間に配置することもできる。
【0024】
また、本実施形態はペルチェ式盤用冷却装置であるが、その他にも、冷媒管やチューブとフィンとからなるパイプフィン式の熱交換器を、放熱側や吸熱側に設けるものであっても差し支えない。
【符号の説明】
【0025】
1 冷却装置本体
2a 正面側カバー
2b 背面側カバー
3 仕切板
4 ヒートシンク
5 ファン
6 電源部
7 制御部
8 ファン取付金具
9 開口部
10 吸排気孔
11 吸排気孔
12 開口部
13 ルーバ
14 フィルタ
15 取付部
16 規制片
17 配線収納部
18 開口部