(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の成形方法では、成形途中で得られる原形容器のカール代は全周にわたって同一幅である。そのため、カール部の成形工程において、カール代の先端縁は全周にわたって同時に下型の成形溝に当たる。そのため、カール代に大きな加工負荷がかかり、カール代に座屈が生じることがある。特に、カール代の全周のうち周方向にほぼ直線的に延びる部位では、圧縮荷重に対する強度が低いため、座屈が度々発生する。カール代の座屈は、成形されたカール部に大きな皺や変形をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、一つの態様は、開口側に中心軸線方向に延びる環状のカール代を有し、このカール代の少なくとも一部が外に向かって凸の湾曲部をなす紙製の原形容器を作る第1の工程と、環状の第1成形溝を有するカール成形用第1型を、上記原形容器に対して上記中心軸線方向に移動させることにより、上記第1成形溝を上記カール代の先端縁に当てて、このカール代の先端縁を外側に折り返す第2の工程と、上記カール成形用第1型の上記第1成形溝で上記折り返された上記カール代を押すことにより、上記カール代の先端縁を、上記カール成形用第1型に対向配置されたカール成形用第2型の環状の第2成形溝に当て、これにより、上記カール代を内側に巻き込んでカール部を成形する第3の工程と、を備えたカール部付き紙製容器の成形方法において、
上記原形容器の上記カール代の幅を周方向に変化させ、上記湾曲部の特定箇所で上記カール代の幅を最も広くし、この特定箇所から周方向に遠ざかるにしたがって、上記カール代の幅を徐々に狭くし、これによりカール代の先端縁が上記特定箇所を頂点とする山形を描くようにし、上記第2の工程において、上記カール成形用第1型の上記第1成形溝が上記カール代の先端縁における上記山形の頂点に最初に当たり、この頂点から上記カール代の折り返しを開始することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、カール代の折り返しの際に、第1成形溝がカール代の先端縁の全周にわたって同時に当たるのではなく、カール代の先端縁の山形の頂点に局所的に当たり、ここから折り返しが開始され、この折り返しが上記山形の裾野部に沿って伝播するので、加工負荷を軽減でき、カール代の座屈を回避できる。
また、最初に折り返しが開始される特定箇所は加工負荷が最も高くなるが、当該箇所はカール代の湾曲部にあり圧縮荷重に対する強度が高いので、座屈の発生を確実に回避できる。しかも、この湾曲部は外に向かって凸となっていて折り返し易いので、円滑にカール部を成形できる。
【0009】
好ましくは、さらに絞り成形用の第1型と第2型とが用意され、上記カール成形用第1型が上記絞り成形用第1型を囲むように配置され、上記カール成形用第2型が上記絞り成形用第2型を囲むように配置され、
上記絞り成形用第2型を上記絞り成形用第1型に向かって移動することにより、紙製ブランクから、底部と、胴部と、胴部の開口縁から上記中心軸線方向と交差する方向に外に向かって突出する鍔部とを成形する絞り成形工程と、
上記カール成形用第2型を上記絞り成形用第1型を通過するように移動させることにより、上記カール成形用第2型の内周面と上記絞り成形用第1型の外周面で、上記鍔部の周縁から上記中心軸線と平行に延びる上記カール代を成形するカール代成形工程と、
を実行して、上記原形容器を得、
上記カール成形用の第1型と第2型を互いに接合し、上記第1成形溝と上記第2成形溝が協働して環状の成形空間を形成した状態で、上記カール成形用の第1型と第2型を上記カール代成形工程とは逆方向に移動させることにより、上記カール代の先端縁を上記第1成形溝と上記第2成形溝に順次に当て、上記第2、第3の工程を連続して実行する。
この構成によれば、カール部付き紙製容器を1枚のブランクから成形することができる。しかも金型の入れ替え無しに一連の工程を連続して実行することにより成形を行うので、生産効率が高い。
【0010】
本発明の他の態様は、開口側に中心軸線方向に延びる環状のカール代を有し、このカール代の少なくとも一部が外に向かって凸の湾曲部をなす紙製の原形容器を作る第1の工程と、環状の第1成形溝を有するカール成形用第1型を、上記原形容器に対して上記中心軸線方向に移動させることにより、上記第1成形溝を上記カール代の先端縁に当てて、このカール代の先端縁を外側に折り返す第2の工程と、カール成形用第2型の環状の第2成形溝を上記カール代の先端縁に対向配置させた状態で、このカール成形用第2型に向かってカール成形用第3型を移動させることにより、この第3カール成形用第3型の環状の第3成形溝で、上記折り返された上記カール代を押して、このカール代の先端縁を上記カール成形用第2型の第2成形溝に当て、これにより、上記カール代を内側に巻き込み、カール部を成形する第3の工程と、を備えたカール部付き紙製容器の成形方法において、
上記原形容器の上記カール代の幅を周方向に変化させ、上記湾曲部の特定箇所で上記カール代の幅を最も広くし、この特定箇所から周方向に遠ざかるにしたがって、上記カール代の幅を徐々に狭くし、これによりカール代の先端縁が上記特定箇所を頂点とする山形を描くようにし、上記第2の工程において、上記カール成形用第1型の上記第1成形溝が上記カール代の先端縁における上記山形の頂点に最初に当たり、この頂点から上記カール代の折り返しを開始することを特徴とする。
上記他の態様でも、上記一の態様と同様の理由により、カール代における座屈発生を回避できる。
【0011】
好ましくは、上記原形容器の上記カール代が上記中心軸線方向から見た時に線対称の形状をなし、複数の上記湾曲部と、上記湾曲部を介して互いに連なる複数の辺部とを有し、これら辺部は直線状に延びるか上記湾曲部より曲率半径が大きい。
【0012】
好ましくは、上記湾曲部と上記辺部との間の境界部が上記特定箇所として提供される。
この構成によれば、カール代の先端縁に山形を多く形成でき、その結果、先端縁において山形の裾野部が占める領域(傾斜領域)を十分に確保しつつ山形の裾野部の傾斜を比較的大きくすることができるので、上記折り返しの加工負荷の一層の軽減を図ることができる。
【0013】
好ましくは、上記原形容器の上記カール代が上記中心軸線方向から見た時に線対称の形状をなすとともに、曲率半径が連続して変化し、上記特定箇所が上記曲率半径の最も大きな点から周方向に離れている。
この構成によれば、加工負荷が最も高い特定箇所すなわち山形の頂点が、圧縮荷重に対する強度が最も低い箇所から離れているので、座屈の発生をより一層確実に回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カール部成形の際のカール代の座屈を回避し、カール部を良好に成形することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明方法の第1実施形態を、
図1〜
図12を参照して説明する。
最初に、成形が完了した最終形状の紙製容器1について、
図1、
図2、
図3(A)、
図4(A)を参照しながら説明する。容器1は、底部2と、胴部3と、胴部3の開口縁から容器1の中心軸線Lと交差する方向に外に向かって張り出す環状の鍔部4と、この鍔部4の外周縁4x(容器1の開口側の周縁)に形成されたカール部5とを備えている。
なお、底部2と胴部3の境界部6は横断面Rをなしており、
図1、
図2において2本の細線で表す。同様に、胴部3と鍔部4の境界部7も2本の細線で表す。
【0017】
上記底部2は略長方形をなし4つのコーナー部が曲率半径の小さな円弧をなしている。胴部3は底部2から開口縁に向かって断面積が徐々に大きくなるようテーパをなしており、平面形状が略長方形をなしている。
底部2には、補強のための低い隆起部2aが形成されている。
胴部3において、短軸方向に対峙する壁部分には、内に向かって若干突出するとともに中心軸線Lに沿って延びる補強リブ3aが形成されている。この補強リブ3aは境界部6を超えて底部2の隆起部2aまで延びている。
胴部3において、長軸方向に対峙する壁部分にも、内に向かって突出する補強のための湾曲部3bが形成されている。
【0018】
上記鍔部4の周縁4xおよびカール部5は上記底部2、胴部3に対応して略長方形をなしている。カール部5は、短軸方向に対峙する一対の長辺部5aと、長軸方向に対峙する一対の短辺部5bと、4隅のコーナー部5cとを有している。
【0019】
本実施形態では、上記カール部5の長辺部5aは直線状に延び、短辺部5bは大きな曲率半径を有し外に向かって凸の湾曲をなしている。なお、長辺部5aは大きな曲率半径を有し内に向かって凸又は外に向かって凸の湾曲をなしていてもよく、短辺部5bは直線状に延びていてもよい。コーナー部5cは、小さな曲率半径を有し外に向かって凸の湾曲をなしている。本実施形態では円弧をなしている。
【0020】
次に、
図5(A)を参照しながら、容器1を成形する装置について簡単に説明する。この成形装置は、下側構成部10と、この下側構成部10の上方に配置された上側構成部20とを備えている。
【0021】
下側構成部10は、固定台11と、この固定台11に固定された絞り成形用下型12(絞り成形用第1型)と、この下型12の周囲に上下動可能に配置された環状のカール成形用下型13(カール成形用第1型)と、このカール用成形用下型13の周囲に配置され固定台11に固定された環状の切断用金型14とを備えている。
【0022】
絞り成形用下型12は雄型であり、その上面が凸の絞り成形面12xとして提供され、その外周面12yが後述するカール代成形面として提供されている。この外周面12yは絞り成形面12xの周縁から下方に垂直に延びている。
【0023】
カール成形用下型13は、スプリング(図示しない)により上方に付勢されており、その係止部13aが絞り成形用下型12の係止部12aに係止されることにより、上限位置が設定されている。
上記カール成形用下型13の上面の内周縁には、環状をなしほぼ半円弧の断面形状を有する成形溝13x(第1成形溝)が形成されている。成形溝13xは、全周にわたって同一断面形状をなし同一高さにある。
【0024】
図5(A)に示す成形前の状態では、絞り成形用下型12の絞り成形面12xにおける最も上に位置する面部分と、上限位置にあるカール成形用下型13の上面と、切断用金型14の上面は、ほぼ同一高さにある。
【0025】
上側構成部20は、上記固定台11の上方に配置され駆動手段(図示しない)により昇降される昇降台21と、この昇降台21の下方に上下動可能に配置された絞り成形用上型22(絞り成形用第2型)と、この絞り成形用上型22の周囲に配置され昇降台21に固定された環状のカール成形用上型23(カール成形用第2型)と、このカール成形用上型23の周囲に配置され、昇降台21に対して上下動可能な環状の押さえ枠24とを備えている。
【0026】
絞り成形用上型22は雌型でありその下面が凹の絞り成形面22xとなっている。絞り成形用上型22は、スプリング(図示しない)により下方に付勢されており、その係止部22aがカール成形用上型23の係止部23aに係止されることにより、下限位置が設定されている。
押さえ枠24もスプリング(図示しない)により下方に付勢されており、図示しない係止手段により下限位置が設定されている。
【0027】
図5(A)に示す成形前の状態では、絞り成形用上型22と押さえ枠24が下限位置にあり、その絞り成形面22xのうち最も下に位置する面部分と、カール成形用上型23の下面と、押さえ枠24の下面は、ほぼ同一高さにある。
【0028】
カール成形用上型23の下面の内周縁には、環状をなしほぼ半円弧の断面形状を有する成形溝23x(第2成形溝)が形成されている。成形溝23xは、全周にわたって同一断面形状をなし同一高さにある。
カール成形用上型23の内周面23yは垂直をなし、後述するようにカール代成形面として提供される。
【0029】
上記構成をなす成形装置を用いて、紙製容器1を成形する。
図5(A)に示すように、紙製シート50が下側構成部10の上を通過するように間欠搬送される。この紙製シート50は、紙に樹脂を積層してなり、その所定領域には、前段ステージでのプレス加工により罫線(後述する)が形成されている。この所定領域が成形装置の下側構成部10に達した時に、シート50が一時停止され、上側構成部20の下降、上昇の過程で、ブランク打ち抜き、絞り成形、カール代成形、カール部成形が、順次実行される。
【0030】
以下、各工程について順を追って説明する。
図5(A)の状態から、昇降台21を下降させると、最初は上側構成部20全体が下降する。やがて、押さえ枠24が切断用金型14に至り、押さえ枠24と切断用金型14でシート50を把持する。これと同時にカール成形用上型23の下面がカール成形用下型13の上面に至り、これら上型23と下型13でシート50を把持する。
【0031】
さらに昇降台21が下降すると、絞り成形用上型22とカール成形用上型23が下降し、カール成形用上型23は、シート50を介してカール成形用下型13を下方に押し下げる。この時、シート50は押さえ枠24と切断用金型14で把持された状態で、切断用金型14の上面内周縁のエッジとカール成形用上型23の下面外周縁のエッジで切断され、
図6に示すブランク60が打ち抜かれる。
【0032】
上記ブランク60は、最終形状の容器1に対応した形状をなしており、前段ステージで形成された罫線61(
図6にのみ示す)を有している。この罫線61はブランク60の周縁から内方向に延びている。具体的には長辺部から延びる罫線61は長辺部とほぼ直交し、短辺部から延びる罫線61は短辺部とほぼ直交し、コーナー部から延びる罫線61はコーナー部の曲率半径中心に向かって延びている。罫線61は、後述のカール代65、鍔部4、胴部3となる領域を通っており、その一部は容器1の底部2となる領域まで延びている。
【0033】
上記罫線61は、後述する絞り成形の際に皺が発生するのを防止するとともに、カール部5の成形の際の圧縮荷重に対する強度を高めるためのものであり、
図7に示すように、一方側が溝で、他方側が凸となる横断面形状を有している。
【0034】
図5に戻って説明すると、打ち抜かれたブランク60は、カール成形用上型23とカール成形用下型13に周縁部を把持されて下方に移動される。この過程で、絞り成形用上型22がカール成形用上型23に追随して下降し、ブランク60の絞り成形を開始する。
【0035】
さらに昇降台21が下降すると、カール成形用上型23とカール成形用下型13と絞り成形用上型22が下降し、
図5(B)に示すように絞り成形用上型22の絞り成形面22xがブランク60を介して絞り成形用下型12の絞り成形面12xに達し、絞り成形が完了する。これにより、
図1、
図2に示す底部2と胴部3と鍔部4が成形される。
【0036】
さらに昇降台21が下降すると、カール成形用上型23とカール成形用下型13だけが下降する。これに伴い、
図5(C)に示すように、これらカール成形用上型23とカール成形用下型13に把持されたブランク60の周縁部が徐々にこれら上型23と下型13との間を抜けて絞り成形用下型12の外周面12yとカール成形用上型23の内周面23yとの間に入り込み、カール代65が成形される。
【0037】
上記の工程で、
図5(C)に示す原形容器1’が得られる。この原形容器1’のより詳細な形状を
図3(B)、
図4(B)、
図8に示す。ただし、これら図では成形途中の原形容器1’の姿勢と上下逆にして示す。この原形容器1’は、底部2と胴部3と鍔部4を有しており、さらに、この鍔部4の外周縁に容器1’の中心軸線Lと平行をなすカール代65を有している。このカール代65の形状については後述する。
【0038】
カール代65の成形が終了した時、
図10(A)に示すように、カール成形用の下型13の上面と上型23の下面とが直接に接合する。この接合状態で、成形溝13x、23xが協働して断面ほぼ円形の環状の成形空間30を形成する。この成形空間30の内周側は開いている。
カール代65の成形が終了した時、カール代65の先端縁66は、
図10(A)に示すように、成形空間30の上方かつ近傍に位置している。
【0039】
次に、昇降台21を上昇させると、
図11(A)に示すように、原形容器1’が絞り成形用の下型12と上型22により把持された状態を維持されたまま、カール代65の先端縁66が成形空間30に入り込み、カール成形用下型13の成形溝13xに当たって外側に折り返される。さらに上昇すると、
図5(D)、
図12(A)に示すように、カール代65の先端縁66がカール成形用上型23の成形溝23xに当たって内側に巻き込まれ、カール部5が成形される。
【0040】
上記成形方法における本発明の特徴部について説明する。
図8に示すように、上記原形容器1’のカール代65の平面形状(中心軸線L方向から見た形状)は、鍔部4の外周縁4xおよびカール部5に対応して略長方形をなし、一対の長辺部65aと一対の短辺部65bと4つのコーナー部65c(湾曲部)を有し、長軸および短軸に関して線対称をなしている。
【0041】
図3(B)、
図4(B)、
図9に誇張して示すように、カール代65の幅Wは、全周にわたって一定ではなく、周方向にわたって変化している。本実施形態では、長辺部65aとコーナー部65cの境界部65x(湾曲部の特定箇所)および短辺部65bとコーナー部65cの境界部65y(湾曲部の特定箇所)の合計8箇所で、カール代65の幅が最も広く、これら境界部65x、65yの両側から周方向に離れるにしたがって徐々に幅が減少している。その結果、カール代65の先端縁66には、上記境界部65x、65yで頂点66bとなる山形66aが形成されている。
【0042】
図3(B)、
図4(B)に示すように、カール代65の先端縁66の高さH(例えば底部2からの高さ)は、上記山形66aの頂点66bで最も高いが、成形途中の原形容器1’は上下が逆となっているため、カール代65の成形が終了した時点では、
図10(A)に示すように、山形66aの頂点66bが最も下に位置し、
図10(B)に示すように、長辺部65a、短辺部65bの中央に対応する箇所の先端縁66が最も上に位置している。
【0043】
上述したようにカール代65を成形した後、カール成形用の下型13と上型23が上昇に転じると、
図11(A)に示すように、カール代65の先端縁66の山形66aの頂点66bが最初に成形用空間50に入り、下型13の成形溝13xにより外側に折り返され始める。この時、
図11(B)に示すように、長辺部65a中央、短辺部65b中央でのカール代65の先端縁66は、まだ下型13の成形溝13xの上方にあり、この成形溝13xから離れている。
【0044】
その後、上記カール代65の先端縁66の折り返し開始位置は、上記山形66aの頂点66bから裾部へと徐々に移行し、最後に長辺の中央近傍、短辺の中央近傍に至る。
このように、上記カール代65の先端縁66の折り返し開始が全周にわたって同時に行われず、最初は局所的に行われるので、加工負荷を軽減できカール代65の座屈を回避することができる。
【0045】
最初に折り返しが開始される箇所は加工負荷が最も高くなるが、上記境界部65x、65yは湾曲しているため圧縮荷重に対する強度が高いので、座屈の発生を確実に回避できる。しかも、この境界部65x、65yは外に向かって凸となっていて折り返し易いので、円滑にカール部5を成形できる。
【0046】
上記実施形態では、カール代65の先端縁66の山形66aを合計8カ所形成したので、傾斜領域(山形66aの裾部)が占める割合が大きく、しかもその傾斜角度を比較的大きくすることができるので、加工負荷をより一層軽減できる。
【0047】
上記第1実施形態において、8つの境界部のうち選択された境界部、例えばカール代65の長辺部65aとコーナー部65cの間の4つの境界部65x、または短辺部65bとコーナー部65cの間の4つの境界部65yに、山形66aの頂点66bを配置してもよい。
【0048】
上記カール代65の先端縁66において、山形66aの頂点66bの突出量(山形66aが形成されていない部位からの突出量)は、0.5〜2.5mmが好ましい。0.5mm未満では座屈抑制効果が小さくなり、2.5mmを超えるとカール代65が余り、しわや座屈の要因になり得るからである。
【0049】
以下、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら実施形態において先行する実施形態に対応する構成部には同番号を付してその説明を省略する。
上記第1実施形態では、カール代65のコーナー部65cの端(すなわち、辺部65a,65bとの境界部)に山形66aの頂点66bを配置したが、
図13〜
図15に示す第2実施形態のように、コーナー部65cの任意の箇所、例えば中央65zを特定箇所に設定し、山形66aの頂点66bを配置してもよい。
【0050】
図16は、第3実施形態をなす原形容器のカール代65のみを線で概略的に示している。このカール代65は、底部、胴部に対応して長円形状をなしており、直線状に延びるとともに短軸方向に対峙する一対の辺部65dと、長軸方向に対峙する一対の円弧部65e(湾曲部)とを有している。この円弧部65eの任意の箇所を特定箇所とし、この特定箇所の先端縁に山形の頂点を配置する。例えば、長軸、短軸に関して線対称をなすように、円弧部65eと辺部65dの境界部を特定箇所65x’としてもよいし、長軸上の2カ所、すなわち円弧部65eの中央を特定箇所65z’としてもよいし、円弧部65eの中央と上記境界部との間を特定箇所65y’としてもよい。
【0051】
図17は、第4実施形態をなす原形容器のカール代65のみを線で概略的に示している。このカール代は、底部、胴部に対応して楕円形状をなし、曲率半径が連続的に変化する。この実施形態では、長軸、短軸に関して線対称をなすように、複数箇所例えば4箇所を特定箇所65x”とする。これら特定箇所65x”は、短軸上において対峙する2箇所から離れている。なお、長軸上の2カ所、すなわち曲率半径の最も小さい箇所を特定箇所65z”としてもよい。
【0052】
図18に示す第5実施形態では、第1実施形態と成形方法が異なる。本実施形態でも原形容器1A’は絞り成形されるが、胴部3がテーパをなし、カール代65Aは、胴部3の延長上に延び、胴部3と同一テーパ角をなしている。
【0053】
上記カール代65Aの幅Wは、全周にわたって一定ではなく、周方向にわたって変化しており、カール代65Aの先端縁66Aには頂点65bを有する山形66aが形成されている。この山形66aの頂点66bが配置される特定箇所は、第1〜第4実施形態と同様に、カール代65Aの平面形状に対応して設定される。
【0054】
図18(A)に示すように、上記原形容器1A’をレシーバ(図示しない)にセットする。レシーバには環状をなす第2型80(カール成形用第2型)が固定されており、この第2型80は断面U字形をなす環状の成形溝81(第2成形溝)を有している。
【0055】
次に、原形容器1A’を保持したレシーバと第2型80を、第1型70(カール成形用第1型)と中心軸線L方向に対峙する位置まで移動させる。第1型70は、挿入凸部72とこの挿入凸部72の根元を囲む断面U字形状の環状の成形溝71(第1成形溝)を有している。この成形溝71は、前述した成形溝81および後述する成形溝91と同様に、全周にわたって一定の深さ、同一高さを有している。
【0056】
図18(A)に矢印で示すように、上記第1型70を中心軸線Lに沿って原形容器1A’に近づけると、その挿入凸部72が原形容器1A’に入り込み、やがて、
図18(B)に示すように成形溝71が原形容器1A’のカール代65Aの先端縁66Aに当たり、このカール代65Aを外側に折返す。
この折返し工程において、成形溝71は上記先端縁66Aの山形66aの頂点66bに最初に当たり、折り返しが開始される。この点は前述の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0057】
上記第1型70を後退させた後、
図18(C)に示すように、原形容器1A’を保持したレシーバと第2型80を、第3型90(カール成形用第3型)と中心軸線L方向に対峙する位置まで移動させる。第3型90は、挿入凸部92とこの挿入凸部92の根元を囲む断面U字形状の環状の成形溝91(第3成形溝)を有している。
【0058】
図18(C)に矢印で示すように、上記第3型90を中心軸線Lに沿って第2型80および原形容器1A’に近づけると、その挿入凸部92が原形容器1A’に入り込み、やがて、第3成形溝91が原形容器1A’の折返されたカール代65Aに当たる。さらに近づけると、第3成形溝91によりカール代65Aの折り返しが深められ、その先端縁66Aが第2成形溝81に当たる。これにより、第3成形溝91と第2成形溝81が協働して、カール代65Aを内側に巻き込んでカール部5Aを成形し、最終形状の容器1Aを得る。
【0059】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
例えば、容器、原形容器は中心軸線方向から見て真円形であってもよい。この場合、カール代における周方向に等距離離れた複数箇所を、特定箇所とするのが好ましい。
特許請求の範囲において種々の成形型の移動について記述しているが、この移動は相対的移動を意味し、当該成形型が実際に移動する場合の他、当該型が静止した状態で他の構成要素が移動する場合も含む。