(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持フィルムの前記絶縁樹脂層側とは反対の表面と前記保護フィルムの前記絶縁樹脂層側とは反対の表面とが接するように、ロール状に巻かれている、請求項1に記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る積層フィルムは、支持フィルムと、絶縁樹脂層と、保護フィルムとを備える。本発明に係る積層フィルムでは、支持フィルムと、絶縁樹脂層と、保護フィルムとがこの順で積層されている。上記絶縁樹脂層は、上記支持フィルムの表面に積層されている。上記保護フィルムは、上記絶縁樹脂層の上記支持フィルム側とは反対の表面に積層されている。
【0022】
本発明に係る積層フィルムをロール状に巻いてロール体を得た場合には、積層フィルムの両側の表面が接し、具体的には、上記支持フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面と上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面とが接する。本発明に係る積層フィルムでは、上記支持フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面と上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面との静摩擦係数が0.3以上、1.0以下である。
【0023】
本発明に係る積層フィルムでは、絶縁樹脂層を用いる際に、保護フィルムは剥離される。本発明に係る積層フィルムでは、上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRaが50nm以上である。
【0024】
本発明では、上記の構成が備えられているので、巻ずれを抑え、絶縁樹脂層のラミネート性を高めることができる。さらに、本発明では、巻すべりも抑えることができる。
【0025】
本明細書において、巻ずれとは、ロール体を軸方向が鉛直方向となるように置いたときに、ロール体の軸心の延びる方向において、内側に位置する積層フィルム部分と外側に位置する積層フィルム部分との位置がずれる現象をいう。本明細書において、巻すべりとは、保護フィルムの巻き取りロールが積層フィルムの巻き出しロールと連れまわり方式であるオートカッター装置において、保護フィルムの巻き取りロールが積層フィルムの巻き出しロールと連れまわりせず、結果、積層フィルムから保護フィルムを剥離できない現象のことをいう。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムを示す断面図である。
【0027】
積層フィルム1は、支持フィルム4と、絶縁樹脂層2と、保護フィルム3とを備える。保護フィルム3は、絶縁樹脂層2の第1の表面2aに積層されている。支持フィルム4は、絶縁樹脂層2の第1の表面2aとは反対側の第2の表面2bに積層されている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムがロール状に巻かれたロール体を示す斜視図である。
【0029】
図2に示すロール体51は、積層フィルム1がロール状に巻かれて得られている。芯材61に、積層フィルム1が巻かれている。ロール体51では、積層フィルム1の両側の表面が接し、具体的には、支持フィルム4と保護フィルム3との表面が接し、更に具体的には、支持フィルム4の絶縁樹脂層2側とは反対の表面と保護フィルム3の絶縁樹脂層2側とは反対の表面とが接する。
【0030】
巻ずれ、巻すべり防止性をより一層良好にする観点からは、上記支持フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面と上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側とは反対の表面との静摩擦係数は、好ましくは0.4以上、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下である。
【0031】
絶縁樹脂層のラミネート性をより一層良好にする観点からは、上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRaは好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上である。絶縁樹脂層の厚み均一性をより一層良好にする観点からは、上記保護フィルムの上記絶縁樹脂層側の表面の算術平均粗さRaは好ましくは900nm以下、より好ましくは800nm以下である。上記算術平均粗さRaは、JIS B0601−1994に準拠して測定される。
【0032】
巻ずれ、巻すべり防止性をより一層良好にする観点からは、上記絶縁樹脂層の厚みは好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下である。絶縁性を効果的に高める観点からは、上記絶縁樹脂層の厚みは好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
【0033】
絶縁樹脂層のラミネート性をより一層良好にする観点からは、上記支持フィルムの厚みは好ましくは15μm以上、より好ましくは25μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは38μm以下である。
【0034】
絶縁樹脂層の保護性、巻ずれ、巻すべり防止性をより一層良好にする観点からは、上記保護フィルムの厚みは好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは25μm以下である。
【0035】
上記支持フィルムの材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリカーボネート等が挙げられる。上記支持フィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0036】
上記保護フィルムの材料としては、ポリプロピレン及びポリエチレンなどのポリオレフィン、並びにポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。上記保護フィルムの材料は、ポリオレフィンであることが好ましく、ポリプロピレンであることがより好ましい。
【0037】
巻ずれ、巻すべり防止性をより一層高める観点からは、上記保護フィルムのMD方向のヤング率は好ましくは3GPa以下、より好ましくは2.5GPa以下、更に好ましくは2以下、好ましくは0.3GPa以上、より好ましくは0.5GPa以上である。
【0038】
上記絶縁樹脂層は、熱硬化性化合物と、硬化剤とを含むことが好ましい。上記絶縁樹脂層は、無機充填材を含むことが好ましい。
【0039】
本発明に係る積層フィルムでは、上記絶縁樹脂層は、多層基板において、絶縁層を形成するために好適に用いられ、多層基板において、層間又は線間の絶縁により好適に用いられる。
【0040】
以下、絶縁樹脂層物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0041】
[熱硬化性化合物]
上記絶縁樹脂層は、熱硬化性化合物を含むことが好ましい。熱硬化性化合物は特に限定されない。熱硬化性化合物として、従来公知の熱硬化性化合物を使用可能である。上記熱硬化性化合物は、エポキシ化合物であることが好ましい。該エポキシ化合物は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記熱硬化性化合物及び上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
上記エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0043】
上記エポキシ化合物は、ビフェニル骨格を有することが好ましく、ビフェニル型エポキシ樹脂であることが好ましい。上記エポキシ樹脂がビフェニル骨格を有することで、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0044】
上記エポキシ化合物の分子量は1000以下であることがより好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
【0045】
上記エポキシ化合物の分子量及び後述する硬化剤の分子量は、上記エポキシ化合物又は硬化剤が重合体ではない場合、及び上記エポキシ化合物又は硬化剤の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味する。また、上記エポキシ化合物又は硬化剤が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0046】
[硬化剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤は、特に限定されない。該硬化剤として、従来公知の硬化剤を使用可能である。上記硬化剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物及びジシアンジアミド等が挙げられる。上記硬化剤は、上記エポキシ化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有することが好ましい。
【0048】
上記シアネートエステル化合物としては、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、並びにこれらが一部三量化されたプレポリマー等が挙げられる。上記ノボラック型シアネートエステル樹脂としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂及びアルキルフェノール型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。上記ビスフェノール型シアネートエステル樹脂としては、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂及びテトラメチルビスフェノールF型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記シアネートエステル化合物の市販品としては、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン社製「PT−30」及び「PT−60」)、及びビスフェノール型シアネートエステル樹脂が三量化されたプレポリマー(ロンザジャパン社製「BA−230S」、「BA−3000S」、「BTP−1000S」及び「BTP−6020S」)等が挙げられる。
【0050】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0051】
上記フェノール化合物の市販品としては、ノボラック型フェノール(DIC社製「TD−2091」)、ビフェニルノボラック型フェノール(明和化成社製「MEH−7851」)、アラルキル型フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7800」)、並びにアミノトリアジン骨格を有するフェノール(DIC社製「LA1356」及び「LA3018−50P」)等が挙げられる。
【0052】
上記活性エステル化合物は特に限定されない。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製「HPC−8000」等が挙げられる。
【0053】
上記硬化剤の分子量は1000以下であることが好ましい。この場合には、絶縁樹脂層を基板上にラミネートした場合に、無機充填材を均一に存在させることができる。
【0054】
絶縁樹脂層中の上記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量は、好ましくは75重量%以上、より好ましくは80重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは97重量%以下である。上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層良好な硬化物が得られ、溶融粘度を調整することができるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が濡れ拡がることを防止できる。さらに、硬化物の熱による寸法変化をより一層抑制できる。また、上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との合計の含有量、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記下限以上であると、溶融粘度が低くなりすぎず、硬化過程で、意図しない領域に絶縁樹脂層が過度に濡れ拡がりにくくなる傾向がある。また、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との合計の含有量が上記上限以下であると、最大の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込みが容易になり、さらに無機充填材が不均一に存在しにくくなる傾向がある。上記熱硬化性化合物と上記硬化剤との含有量比、及び、上記エポキシ化合物と上記硬化剤との含有量比は、熱硬化性化合物及びエポキシ化合物が硬化するように適宜選択される。
【0055】
[熱可塑性樹脂]
上記絶縁樹脂層は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
硬化環境によらず、誘電正接を効果的に低くし、かつ、金属配線の密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂フィルムが濡れ拡がり難くなる。上記絶縁樹脂層に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
【0058】
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鉄住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
【0059】
保存安定性により一層優れた樹脂フィルムを得る観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
【0060】
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0061】
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、絶縁樹脂層の回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、より一層良好な絶縁層が得られる。上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0062】
[無機充填材]
上記絶縁樹脂層は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。さらに、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0063】
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
【0064】
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
【0065】
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
【0066】
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理などにより形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
【0067】
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
【0068】
上記無機充填材はそれぞれ、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に絶縁層と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材がそれぞれ球状である場合には、上記無機充填材それぞれのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0069】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、カップリング剤による表面処理物であることがより好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることが更に好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
【0070】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0071】
絶縁樹脂層中の溶剤を除く成分100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、最も好ましくは60重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成されると同時に、この無機充填材量であれば、硬化物の熱膨張率を低くすることも可能である。
【0072】
[硬化促進剤]
上記絶縁樹脂層は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
【0074】
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0075】
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0076】
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0077】
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
【0078】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。絶縁樹脂層中の上記無機充填材及び溶剤を除く成分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上、好ましくは3.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムが効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、絶縁樹脂層の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
【0079】
[溶剤]
上記絶縁樹脂層は、溶剤を含まないか又は含む。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0080】
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
【0081】
上記溶剤の多くは、上記絶縁樹脂層を成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記絶縁樹脂層における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記絶縁樹脂層の層形状を維持できる程度に、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
【0082】
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂組成物には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及びエポキシ化合物以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
【0083】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0084】
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0085】
(多層基板)
本発明に係る積層フィルムは、多層基板において、絶縁層を形成するために好適に用いられる。
【0086】
上記多層基板の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記絶縁樹脂層により形成される。上記多層基板は、上記絶縁樹脂層により形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
【0087】
図3は、本発明の一実施形態に係る積層フィルムにおける絶縁樹脂層を用いた多層基板を模式的に示す断面図である。
【0088】
図3に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13〜16が積層されている。絶縁層13〜16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
【0089】
多層基板11では、絶縁層13〜16が、上記樹脂組成物により形成されている。本実施形態では、絶縁層13〜16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層基板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
(支持フィルム)
T60(未処理PET)(ポリエチレンテレフタレート、東レ社製「ルミラー」、厚み38μm)
【0093】
(保護フィルム)
MAM430(PP)(ポリプロピレン、王子エフテックス社製「アルファン」、算術平均粗さRa750nm、厚み25μm、23℃でのMD方向のヤング率1.6GPa)
GF1(PE)(ポリエチレン、タマポリ社製、算術平均粗さRa87nm、厚み30μm、23℃でのMD方向のヤング率0.3GPa)
MA411(PP)(ポリプロピレン、王子エフテックス社製「アルファン」、算術平均粗さRa100nm、厚み15μm、23℃でのMD方向のヤング率2.2GPa)
MA420(PP)(ポリプロピレン、王子エフテックス社製「アルファン」、算術平均粗さRa200nm、厚み35μm、23℃でのMD方向のヤング率1.9GPa)
YM17S(マット面、PP)(ポリプロピレン、東レ社製「トレファン」、算術平均粗さRa850nm、厚み25μm、23℃でのMD方向のヤング率1.6GPa)
YM17S(光沢面、PP)(東レ社製「トレファン」、算術平均粗さRa40nm、厚み25μm、23℃でのMD方向のヤング率1.6GPa)
E200(PP)(ポリプロピレン、王子エフテックス社製「アルファン」、算術平均粗さRa40nm、厚み20μm、23℃でのMD方向のヤング率1.8GPa)
2511(離型処理PET)(ポリエチレンテレフタレート、リンテック社製、算術平均粗さRa30nm、厚み25μm、23℃でのMD方向ヤング率3.9GPa)
【0094】
上記算術平均粗さRaは、保護フィルムの絶縁樹脂層が配置される側の表面の算術平均粗さRaである。
【0095】
(実施例1)
アミノフェニルシラン処理シリカ(アドマテックス社製「SOC2」)のシクロヘキサノンスラリー(固形分70重量%)107重量部に、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000H」)11重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製「850S」)5重量部と、シクロヘキサノン7.9重量部と、メチルエチルケトン7.7重量部とを加え、攪拌機を用いて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、アミノトリアジン変性フェノールノボラック硬化剤(DIC社製「LA−1356」)のメチルエチルケトン混合溶液(固形分50重量%)11重量部と、フェノールノボラック硬化剤(明和化成社製「H4」)3重量部とを加えて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、ビスフェノールアセトフェノン骨格フェノキシ樹脂(三菱化学社製「YX6954」)のメチルエチルケトン及びシクロヘキサノン混合溶液(固形分30重量%)2.5重量部と、2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製「2E4MZ」)0.1重量部と、レベリング剤(楠本化成社製「LS−480」)0.01重量部とをさらに加え、1200rpmで30分間撹拌し、樹脂組成物(ワニス)を得た。
【0096】
得られた樹脂組成物(ワニス)を上記支持フィルム(T60)上に、乾燥後の絶縁樹脂層の厚みが40μmとなるようにダイコーターにて塗布、80〜120℃(平均100℃)で2.5分間乾燥し、溶剤の残量が1.0重量%以上、3.0重量%以下である絶縁樹脂層を形成した。
【0097】
その後、絶縁樹脂層の表面に、保護フィルム(MAM430)を常圧下、50℃で熱ラミネートし、積層フィルムを製造した。得られた積層フィルムを芯材上でロール状に巻いて、積層フィルムのロール体を得た(巻き取り長50m)。
【0098】
(実施例2〜4及び比較例1〜4)
保護フィルムの種類を下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルムのロール体を得た。
【0099】
(評価)
(1)静摩擦係数
JIS K7125 プラスチック−フィルムおよびシート摩擦係数試験方法に準拠して、ロードセル100N、試験片寸法:縦80mm、横200mm、すべり片の接触面積40cm
2(一辺の長さ63mm)にて、支持フィルムの絶縁樹脂層側とは反対の表面と保護フィルムの絶縁樹脂層側とは反対の表面との静摩擦係数を測定した。
【0100】
(2)巻ずれ
得られたロール体を5℃で3日間縦置きして、巻ずれを評価した。
【0101】
[巻ずれの判定基準]
○○:3日後にずれなし
○:3日後に1mm未満のずれが発生
×:3日後に1mm以上のずれが発生
【0102】
(3)巻すべり
得られたロール体の積層フィルムをオートカッターで搬送した。
【0103】
[巻すべりの判定基準]
○:積層フィルムを50m搬送しても不具合が生じない
×:積層フィルムを50m搬送すると不具合が発生
【0104】
(4)ラミネート性
100mm角の銅張り積層板(厚さ400μmのガラスエポキシ基板と厚さ25μmの銅箔との積層体)の銅箔のみをエッチングすることにより、直径100μm及び深さ25μmの窪み(開口部)を、基板の中心30mm角のエリアに対して直線上にかつ隣接する穴の中心の間隔が900μmになるように開けて、計900穴の窪みを持つ評価基板を準備した。
【0105】
積層フィルム(絶縁樹脂層の厚み40μm)の保護フィルムを剥がし、露出した絶縁樹脂層と評価基板とを重ねて、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用い、ラミネート圧0.4MPaで20秒、プレス圧力0.8MPaで20秒、ラミネート及びプレスの温度90℃で加熱加圧した。常温で冷却した後、支持フィルムを剥離した。このようにして、評価基板上に絶縁樹脂層が積層された評価サンプルを得た。
【0106】
得られた評価サンプルについて光学顕微鏡を用いて、窪みの中のボイドを観察した。ボイドが観察された窪みの割合を評価することによって、ラミネート性を下記の基準で判定した。
【0107】
[ラミネート性の判定基準]
○○:ボイドが観察された窪みの割合0%
○:ボイドが観察された窪みの割合0%を超え、5%未満
×:ボイドが観察された窪みの割合5%以上