(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撹拌流動装置としては、例えば、
図13に示すように、ポンプのメカニカルシール121に設けられているものがある。すなわち、シールケーシング122内に潤滑油131が貯留され、回転軸123がシールケーシング122内を上下方向に挿通され、メカニカルシール121は回転軸123とシールケーシング122およびケーシング120との間をシールしている。
【0003】
メカニカルシール121は上側固定環124と上側回転環125と付勢部材126と下側回転環127と下側固定環128とを有している。付勢部材126は、鋼材を螺旋状に形成したばね部129と、ばね部129に一体に形成された羽根130とを有している。
【0004】
これによると、回転軸123の回転に伴って、上側回転環125と下側回転環127と付勢部材126とが回転し、シールケーシング122内の潤滑油131が、回転している付勢部材126の羽根130によって、撹拌および飛散し、上側回転環125と上側固定環124との摺接面に供給される。
【0005】
尚、上記のような撹拌流動装置を有するメカニカルシール121については例えば下記特許文献1に記載されている。
また、上記とは別の撹拌流動装置を有するメカニカルシールとしては、例えば
図14に示すように、上側固定環103と上側回転環104と圧縮コイルばね105と下側回転環106と下側固定環107とを有しているものがある。回転軸102はモータ108で回転駆動され、回転軸102の回転に伴って、メカニカルシール101の上側回転環104と圧縮コイルばね105と下側回転環106とが回転し、上側回転環104が上側固定環103に対して摺動し、下側回転環106が下側固定環107に対して摺動する。
【0006】
メカニカルシール101の周囲には、冷却用液109を所定方向110に流すシール部流路111が形成されている。尚、冷却用液109はモータ108を冷却するものであり、モータ108には、冷却用液109を循環させる冷却用液循環流路112が形成されている。シール部流路111は冷却用液循環流路112の一部を成している。
【0007】
回転軸102には、回転軸102と共に回転することにより、冷却用液循環流路112内の冷却用液109を強制的に循環させる羽根車113が取り付けられている。羽根車113は内周部に受部114を有しており、受部114が圧縮コイルばね105の下端と下側回転環106との間に挟まれて保持される。
【0008】
これによると、モータ108で回転軸102を回転させると、回転軸102の回転に伴って、上側回転環104と下側回転環106と圧縮コイルばね105と羽根車113とが回転し、冷却用液循環流路112内の冷却用液109が強制的に循環され、モータ108が冷却される。
【0009】
尚、上記のような撹拌流動装置を有するメカニカルシールは例えば下記特許文献2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら
図13に示した従来形式では、羽根130が損傷等した場合、羽根130のみを交換することは困難であり、ばね部129と羽根130とから成る付勢部材126全体を交換しなければならないといった問題がある。
【0012】
また、
図14に示した従来形式では、羽根車113を取り付けた場合、圧縮コイルばね105の取付長さLが羽根車113の受部114の厚さTだけ短縮される。また、羽根車113を取り外した場合、圧縮コイルばね105の取付長さLが羽根車113の受部114の厚さTだけ伸長される。
【0013】
このように羽根車113を取り付けた状態と取り外した状態では、圧縮コイルばね105の取付長さLが異なるため、メカニカルシール101のシール性能が変化する虞がある。また、
図13および
図14に記載した何れの従来形式においても、特別な形状の羽根130又は羽根車113を製作する必要がある。
【0014】
本発明は、羽根部材を容易に取付交換することができる撹拌流動装置、メカニカルシールおよびポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本第1発明は、回転軸に取り付けられて回転軸と一体に回転する撹拌流動装置であって、
回転軸に外嵌されるコイルばねと、
コイルばねを回転軸と一体に回転可能に保持する回転保持部材とを有し、
回転軸の周囲の流体を撹拌流動させる羽根部材が着脱自在にコイルばねに設けられているものである。
【0016】
これによると、回転軸の回転に伴ってコイルばねと羽根部材とが回転し、回転軸の周囲の流体が羽根部材によって撹拌流動される。羽根部材が損傷するなど羽根部材の交換が必要となった場合、羽根部材をコイルばねから取り外し、新しい羽根部材をコイルばねに取り付けることにより、コイルばねを交換することなく、羽根部材のみを容易に取付交換することができる。このため、メンテナンス等においてコストダウンを図ることができる。
【0017】
本第2発明における撹拌流動装置は、コイルばねは螺旋状に形成された線材からなり、
羽根部材はコイルばねの線材間に挿入されているものである。
これによると、羽根部材をコイルばねの線材間に挿入し、コイルばねと共に羽根部材を回転軸に外嵌することにより、羽根部材を容易にコイルばねに取り付けることができる。
【0018】
また、コイルばねと共に羽根部材を回転軸から抜き出し、羽根部材をコイルばねの線材間から離脱させることにより、羽根部材を容易にコイルばねから取り外すことができる。
本第3発明における撹拌流動装置は、羽根部材は、螺旋状に形成され、コイルばねと共に回転軸の軸心方向に変形可能であり、
羽根部材の巻き方向はコイルばねの線材の巻き方向と同じであるものである。
【0019】
これによると、羽根部材が回転軸の軸心方向に変形可能であるため、コイルばねの伸縮が阻害されることはない。また、羽根部材を、軸心周りに一方向に回しながら、コイルばねの端部からコイルばねの線材間に挿入する。これにより、羽根部材を容易にコイルばねに取り付けることができる。
【0020】
また、羽根部材を、コイルばねの巻き方向に沿って軸心周りに回しながらコイルばねの端部に移動させ、コイルばねの線材間から離脱させる。これにより、羽根部材を容易にコイルばねから取り外すことができる。
【0021】
本第4発明における撹拌流動装置は、羽根部材の外径はコイルばねの外径よりも大きいものである。
本第5発明における撹拌流動装置は、羽根部材は外周に補助羽根を有しているものである。
【0022】
これによると、回転軸の周囲の流体を羽根部材によってより多量に撹拌流動することができる。
本第6発明における撹拌流動装置は、コイルばね又は回転保持部材は、羽根部材が回転軸の軸心方向へ移動するのを阻止するものである。
【0023】
これによると、羽根部材が回転軸の軸心方向へ移動するのを防止し、撹拌流動を安定して行うことができる。
本第7発明は、上記第1発明から第6発明のいずれか1項に記載の撹拌流動装置を有し、回転軸に外嵌されるメカニカルシールであって、
回転軸と分離されて固定された固定環と、
回転軸と一体に回転して固定環に対して摺動自在な回転環と、
回転軸の軸心方向において、回転環を固定環に押圧するコイルばねとを有し、
回転環はコイルばねを回転軸と一体に回転可能に保持する回転保持部材であるものである。
【0024】
これによると、回転軸の回転に伴ってメカニカルシールの回転環とコイルばねとが回転し、コイルばねと共に羽根部材が回転する。この羽根部材の回転により、回転軸の周囲の流体が羽根部材によって撹拌流動される。
【0025】
また、羽根部材が不要な場合、羽根部材をコイルばねから取り外す。これにより、羽根部材の有無に係らず、共通のコイルばねを用いることができる。羽根部材を取り付けた状態と取り外した状態とでは、コイルばねの取付長さは変化せずに同じであるため、メカニカルシールのシール性能が安定する。
【0026】
本第8発明は、上記第7発明のメカニカルシールを有するポンプであって、
回転軸に設けられた羽根車と、
羽根車を収納するケーシングと、
回転軸を回転させる駆動装置とを有し、
メカニカルシールは回転軸とケーシングとの間をシールするものである。
【0027】
これによると、駆動装置で回転軸を回転させることにより、羽根車が回転し、ポンプによって流体が圧送される。この際、回転軸とケーシングとの間はメカニカルシールによってシールされている。
【0028】
本第9発明におけるポンプは、駆動装置は、駆動装置を冷却する冷却液が循環する冷却液循環流路を有し、
ケーシング内に、メカニカルシールを収容する収容室が形成され、
収容室は冷却液循環流路の一部を成し、
羽根部材は、回転することによって、冷却液循環流路の冷却液を循環させるものである。
【0029】
これによると、回転軸の回転に伴って羽根部材が収容室内で回転するため、冷却液が冷却液循環流路を強制的に循環し、駆動装置が冷却される。
【発明の効果】
【0030】
以上のように本発明によると、羽根部材をコイルばねから取り外し、新しい羽根部材をコイルばねに取り付けることにより、コイルばねを交換することなく、羽根部材のみを容易に取付交換することができる。このため、メンテナンス等においてコストダウンを図ることができる。
【0031】
また、撹拌流動装置を有するメカニカルシールにおいては、羽根部材を取り付けた状態と取り外した状態とでは、コイルばねの取付長さは変化せずに同じであるため、メカニカルシールのシール性能が安定する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、
図1に示すように、1はポンプの一例である水中ポンプであって、回転軸4の下端部に設けられた羽根車2と、羽根車2を収納するケーシング6と、回転軸4を回転させる駆動装置5と、回転軸4とケーシング6との間をシールするメカニカルシール30とを有している。
【0034】
ケーシング6は、ポンプケーシング7と、ポンプケーシング7上に設けられた駆動装置ケーシング15と、ポンプケーシング7内と駆動装置ケーシング15内とを上下に隔てる隔壁部材25とを有している。ポンプケーシング7には流入口8と流出口9とが形成されている。
【0035】
駆動装置5は、モータであり、駆動装置ケーシング15内に設けられたステータ16及びロータ17と、駆動装置5を冷却するための冷却水18(冷却液の一例)が循環する冷却水循環流路19(冷却用液循環流路の一例)とを有している。
【0036】
駆動装置ケーシング15は、円筒状の胴ケーシング21と、胴ケーシング21の上部に設けられた蓋ケーシング22と、胴ケーシング21の下部に設けられた下部ケーシング23とを有している。胴ケーシング21は、円筒状の内ケーシング21aと外ケーシング21bとを有する、内外二重構造のケーシングである。
【0037】
図1,
図2に示すように、隔壁部材25は下部ケーシング23の下端部に取り付けられており、隔壁部材25の上下両面にはそれぞれ、放熱用のフィン26,27が形成されている。下部ケーシング23内には、メカニカルシール30を収納する収納室29が形成されている。収納室29内には、収納室29を上下に仕切る仕切部材31が備えられている。尚、仕切部材31は隔壁部材25の上部フィン26の上端に配置されている。
【0038】
仕切部材31は、中心部に連通口32を形成した円板状の本体部31aと、本体部31aの内周から上向きに立設された断面円形状の筒部31bとを有している。回転軸4は連通口32を上下方向に貫通しており、メカニカルシール30は回転軸4に外嵌されて連通口32内に位置している。
【0039】
内ケーシング21aと外ケーシング21bとの間には第1流路36が形成されている。また、収納室29内には、仕切部材31の下方において、外周側から上部フィン26間を通って連通口32に連通する第2流路37が形成され、仕切部材31の上方において、連通口32から外周側に連通する第3流路38が形成されている。
【0040】
また、ケーシング15には、第1流路36と第2流路37とに連通する一方の連通流路40と、第1流路36と第3流路38とに連通する他方の連通流路41とが形成されている。
【0041】
また、仕切部材31の筒部31bとメカニカルシール30との間には、連通口32を通って、冷却水18を下から上に流すシール部流路42が全周にわたり形成されている。
冷却水循環流路19は第1〜第3流路36〜38と連通流路40,41とシール部流路42とを有しており、これにより、収納室29は冷却水循環流路19の一部を成している。
【0042】
メカニカルシール30は、回転軸4に外嵌された上部の固定環46と上部の回転環47と下部の固定環48と下部の回転環49とコイルばね50とを有している。
上部の固定環46は、回転軸4と分離され、下部ケーシング23に取り付けられて固定されている。また、下部の固定環48は、回転軸4と分離され、隔壁部材25に取り付けられて固定されている。
上部の回転環47は、回転軸4と一体に回転可能であり、コイルばね50の付勢力によって下方から上部の固定環46に押圧され、上部の固定環46に対して周方向に摺動自在である。同様に、下部の回転環49は、回転軸4と一体に回転可能であり、コイルばね50の付勢力によって上方から下部の固定環48に押圧され、下部の固定環48に対して周方向に摺動自在である。
【0043】
また、コイルばね50は金属製の線材51を螺旋状に巻いたものである。コイルばね50は、上部の回転環47と下部の回転環49との間に挟まれて、回転軸4の軸心14方向において圧縮され、回転軸4の軸心14方向において回転環47,49を固定環46,48に押圧する。これにより、コイルばね50の両端部と回転環47,49との間に摩擦力が生じ、コイルばね50が回転環47,49と一体に回転する。つまり、回転環47,49は、コイルばね50を回転軸4と一体に回転可能に保持する回転保持部材の一例である。
【0044】
コイルばね50には、回転軸4の周囲の冷却水18を撹拌流動させる羽根部材53が着脱自在に設けられている。
図2〜
図5(a)に示すように、羽根部材53は、螺旋状に形成されており、回転軸4の軸心14方向におけるコイルばね50の線材51間に挿入され、コイルばね50と共に回転軸4に外嵌されて回転軸4の軸心14方向に変形可能である。また、回転軸4の軸心14方向から見た羽根部材53の巻き方向Aはコイルばね50の線材51の巻き方向Bと同じであり、羽根部材53のピッチはコイルばね50のピッチと同じ又はほぼ同じである。羽根部材53の内径は、回転軸4に外挿できるように回転軸4の外径よりも大きく、且つ、コイルばね50から外れないようにコイルばね50の外径dよりも小さい。さらに、羽根部材53の外径Dはコイルばね50の外径dよりも大きい。
【0045】
尚、上記のように羽根部材53の外径Dをコイルばね50の外径dよりも大きくすることで、冷却水18等を撹拌流動させる羽根としての機能がより発揮され、撹拌や流動をより積極的に行うことができる。
【0046】
図6に示すように、羽根部材53は、回転軸4の軸心14方向から見て、一端部53aから他端部53bまでが360°ずれた一巻き構造を有している。尚、このような羽根部材53は、
図7に示すように、中央部に円形の開口部56を有する円環状の板材57の一箇所Cを切断し、切断した一端部57aと他端部57bとを軸心14方向へずらして板材57を螺旋状に形成することにより、製作される。
【0047】
尚、
図3,
図4におけるコイルばね50と羽根部材53とはメカニカルシール30から取り外されて伸長した状態を示しており、
図5(a)(b)におけるコイルばね50と羽根部材53とはメカニカルシール30に取り付けられて圧縮された状態を示している。
【0048】
ここで、メカニカルシール30は撹拌流動装置54を備えている。撹拌流動装置54はコイルばね50と両回転環47,49と羽根部材53とで構成されている。
以下、上記構成における作用を説明する。
【0049】
図1に示すように、駆動装置5によって回転軸4が回転すると、回転軸4と共に羽根車2が回転し、水等の流体が流入口8からポンプケーシング7内に吸い込まれて流出口9から圧送される。この際、回転軸4とケーシング6との間はメカニカルシール30によってシールされている。
【0050】
また、
図2に示すように、駆動装置5から見て回転軸4が時計回りに回転し、この回転軸4の回転に伴って、メカニカルシール30の上部および下部の回転環47,49と、両回転環47,49間で圧縮されたコイルばね50とが同じ方向に回転する。さらに、コイルばね50の回転に伴って、コイルばね50に挟持された羽根部材53が、同方向に回転し、シール部流路42の冷却水18を撹拌流動させる。これにより、冷却水18がシール部流路42を下から上へ強制的に流れるため、
図1,
図2に示すように、冷却水18が、第1流路36から、一方の連通流路40、第2流路37、シール部流路42、第3流路38、他方の連通流路41を経て、第1流路36に戻って、冷却水循環流路19を循環する。
【0051】
これにより、駆動装置5は冷却水18で冷却され、冷却水18の熱が、フィン26,27を介して、ポンプケーシング7内を流れる水等の流体に放散される。このため、冷却水18の温度上昇が防止される。
【0052】
尚、コイルばね50の回転に伴って羽根部材53が回転している際、羽根部材53がコイルばね50に対して上方へ移動しても、羽根部材53の上端内周部が上部の回転環47に当接することにより、これ以上羽根部材53が上方(回転軸4の軸心14方向の一例)へ移動することは阻止される。反対に、羽根部材53がコイルばね50に対して下方へ移動しても、羽根部材53の下端内周部が下部の回転環49に当接することで、これ以上羽根部材53が下方(回転軸4の軸心14方向の一例)へ移動することは阻止される。
【0053】
尚、羽根部材53がコイルばね50に挟持されていることによって、羽根部材53の上下方向への移動を阻止することも可能である。
また、メカニカルシール30を取り付ける場合、
図8に示すように、上部の固定環46を回転軸4に外嵌して下部ケーシング23に取り付け、上部の回転環47を回転軸4に外嵌する。さらに、羽根部材53を、軸心14の周りに一方向に回しながら、コイルばね50の一端部からコイルばね50の線材51間に挿入する。これにより、
図3に示すように、羽根部材53を容易にコイルばね50に取り付けることができる。
【0054】
その後、
図8に示すように、羽根部材53と共にコイルばね50を回転軸4に外嵌し、下部の回転環49を回転軸4に外嵌する。次に、下部の固定環48を回転軸4に外嵌して隔壁部材25に取り付け、
図1に示すように、隔壁部材25を下部ケーシング23の下端部に取り付ける。これにより、
図2,
図5(a)に示すように、コイルばね50が軸心14方向において圧縮され、メカニカルシール30が取り付けられる。
【0055】
また、羽根部材53が不要な場合や羽根部材53を交換する場合、上記とは逆の手順で隔壁部材25を下部ケーシング23から取り外し、下部の回転環49を回転軸4から離脱させ、羽根部材53と共にコイルばね50を回転軸4から離脱させる。これにより、圧縮されていたコイルばね50と羽根部材53とが、
図3に示すように、軸心14方向において伸長する。
【0056】
その後、羽根部材53を、コイルばね50の巻き方向に沿って軸心14の周りに回しながら、コイルばね50の一端部に移動させ、コイルばね50の線材51間から離脱させる。これにより、
図8に示すように、羽根部材53を容易にコイルばね50から取り外すことができる。
【0057】
その後、上述したメカニカルシール30を取り付ける場合と同様な手順で、コイルばね50と下部の回転環49を回転軸4に外嵌し、隔壁部材25を下部ケーシング23に取り付けることにより、羽根部材53をコイルばね50から取り外したメカニカルシール30が取り付けられる。
【0058】
これにより、羽根部材53の有無に係らず、コイルばね50を交換することなく、共通のコイルばね50を用いることができる。また、羽根部材53を取り付けた状態と取り外した状態とでは、メカニカルシール30に取り付けた際のコイルばね50の取付長さL(
図2,
図5(a)(b)参照)は変化せずに同じであるため、コイルばね50の圧縮により生じる力は変化せずに一定となり、メカニカルシール30のシール性能が安定する。
【0059】
また、羽根部材53が損傷した場合、上記のようにして、羽根部材53をコイルばね50から取り外し(
図8参照)、新しい羽根部材53をコイルばね50に取り付けることにより、コイルばね50を交換することなく、羽根部材53のみを容易に交換することができる。このため、メンテナンス等においてコストダウンを図ることができる。
【0060】
また、冷却水18の撹拌流動の状況を変化させたい場合、コイルばね50を交換することなく、羽根部材53のみを交換することで対応できる。さらに、今まで冷却水18を撹拌流動させることが不要であったメカニカルシールに、新たに羽根部材53を取り付けることも可能である。
【0061】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、
図9に示すように、羽根部材53は、外周部に、複数の補助羽根61を有している。各補助羽根61は、台形状の平板からなり、羽根部材53の外周縁から径方向外側に突出している。
【0062】
これによると、コイルばね50の回転に伴って、補助羽根61付きの羽根部材53が同方向に回転することにより、シール部流路42において、より多量の冷却水18が撹拌流動され、冷却水18の流量を増加させることができるため、駆動装置5の冷却効率が向上する。
【0063】
また、補助羽根61の大きさや角度あるいは枚数を変えることにより、撹拌流動される冷却水18の量又は圧力を調整することができる。例えば、補助羽根61が羽根部材53に一体に形成されている場合、補助羽根61の全体又は一部を手で変形させて調整することができる。これにより、必要に応じた調整を行うことが可能な撹拌流動装置54とすることができる。
【0064】
尚、補助羽根61は、羽根部材53と一体に製作してもよく、或いは、別体として羽根部材53に後付けしてもよい。
さらに、補助羽根61の形状は、台形状に限らず、その他の形状であってもよい。
【0065】
(第3の実施の形態)
第1および第2の実施の形態では、
図4に示すように、コイルばね50に、一個の羽根部材53を設けているが、第3の実施の形態として、
図10に示すように、上下複数個の羽根部材53をコイルばね50に設けてもよい。
【0066】
また、羽根部材53の個数を増減することにより、撹拌流動される冷却水18の量を調整することができる。また、複数の羽根部材53が重なり合わないように、上位の羽根部材53の下端部と下位の羽根部材53の上端部とを接続してもよい。
【0067】
(第4の実施の形態)
上記第1および第2の実施の形態では、
図3に示すように、羽根部材53を一巻き構造にしているが、一巻き構造よりも長い構造にしてもよい。例えば、第4の実施の形態として、
図11に示すように、羽根部材53を二巻き構造にしてもよい。或いは、コイルばね50の巻き数に応じて、羽根部材53を複数巻きにしてもよい。
【0068】
(第5の実施の形態)
上記各実施の形態では、
図2にて、撹拌流動装置54を備えたメカニカルシール30を示したが、第5の実施の形態では、
図12に示すように、メカニカルシール30の代りに、Vリング又はオイルシール等のパッキン70,71(シール部材の一例)を設け、下部ケーシング23と回転軸4との間がパッキン70でシールされ、隔壁部材25と回転軸4との間がパッキン71でシールされている。
【0069】
撹拌流動装置54は、回転軸4に外嵌されるコイルばね50と、コイルばね50を回転軸4と一体に回転可能に保持する上下一対の回転保持部材73,74と、コイルばね50に着脱自在に設けられた羽根部材53とを有している。
【0070】
回転保持部材73,74はそれぞれ、回転軸4に外嵌された円環状の部材であり、複数のねじ75により回転軸4に取り付けられている。コイルばね50は、両回転保持部材73,74間に挟まれて、回転軸4の軸心14方向において圧縮されている。
【0071】
これによると、回転軸4の回転に伴って、両回転保持部材73,74とコイルばね50とが回転する。さらに、コイルばね50の回転に伴って、羽根部材53が、同方向に回転し、シール部流路42の冷却水18を撹拌流動させる。
【0072】
上記第5の実施の形態では、回転保持部材73,74をねじ75で回転軸4に一体的に取り付けているが、ピンやキー等で取り付けてもよい。また、回転軸4の外周に雄ねじを形成し、回転保持部材73,74の内周に雌ねじを形成し、これら雄ねじを雌ねじに螺合して、回転保持部材73,74を回転軸4に一体的に取り付けてもよい。また、回転軸4の外周と回転保持部材73,74の内周との間に薄いゴム等の弾性部材を設け、弾性部材を介して回転保持部材73,74を回転軸4に一体的に取り付けてもよい。また、コイルばね50の両端部に、回転保持部材73,74が一体に設けられていてもよい。
【0073】
上記各実施の形態では、
図3に示すように、羽根部材53を螺旋状に形成しているが、羽根部材53を、中央部に円形の開口部を有する平板状に形成してもよい。この場合、回転軸4が平板状の羽根部材53の開口部に挿入され、平板状の羽根部材53をコイルばね50に取り付けることにより、羽根部材53が平板状から螺旋状に変形する。
【0074】
また、羽根部材53の外形は、円形に限らず、多角形或いはその他の形状であってもよい。
上記各実施の形態では、羽根部材53を、圧縮されて取付けられるコイルばね50に着脱自在に設けたが、引っ張られて取付けられるコイルばねに着脱自在に設けてもよく、或いは、圧縮荷重や引張荷重を受けないコイルばねに着脱自在に設けてもよい。
【0075】
上記各実施の形態では、冷却用液の一例として冷却水18を用いたが、冷却水18に限定されるものではなく、例えば冷却油等を用いてもよい。
上記各実施の形態では、羽根部材53を回転軸4に外嵌して取り付けているが、羽根部材53が変形自在であれば、回転軸4に外嵌されたコイルばね50に、羽根部材53を外側から取り付けてもよい。
【0076】
上記各実施の形態では、コイルばね50の線材51の断面形状を円形にしているが、円形に限らず、多角形等であってもよい。
上記第1〜第4の実施の形態では、ポンプ1に設けられたメカニカルシール30に撹拌流動装置54を具備しているが、撹拌流動装置54を、ポンプ1以外の機器、例えば回転軸とケーシングとの間のシール機能を有していない機器に取り付けてもよい。