(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、市販のプレポリマーにおいて、平均分子量やNCO当量が同等程度のプレポリマーであっても、製造した研磨パッドの物性等に大きな差やバラつきがあることが分かった。そこで、本発明者らは、市販のプレポリマーについて分析を行い、均一性に優れたプレポリマーを用いることにより、製造上の安定に優れ、物性等のバラつきが少ない研磨パッドが得られると考え本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下のものを提供する。
[1] ポリウレタン樹脂からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂硬化性組成物の硬化体であり、
前記ポリイソシアネート化合物が芳香族ポリイソシアネートを含み、前記ポリオール化合物が低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールを含み、
前記プレポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量分布において、分子量400〜700の領域に存在するピークに含まれる成分の前記プレポリマーの総量に対する割合が8重量%以上であることを特徴とする前記研磨パッド。
[2] ポリウレタン樹脂からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂硬化性組成物の硬化体であり、
前記ポリイソシアネート化合物が芳香族ポリイソシアネートを含み、前記ポリオール化合物が低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールを含み、
前記プレポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量分布において、分子量700〜5000の領域に存在するピークに含まれる成分の数平均分子量が1600以下であることを特徴とする前記研磨パッド。
[3] ポリウレタン樹脂からなる研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂が、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂硬化性組成物の硬化体であり、
前記ポリイソシアネート化合物が芳香族ポリイソシアネートを含み、前記ポリオール化合物が低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールを含み、
前記プレポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の分子量分布において、分子量400〜700の領域に存在するピークに含まれる成分の前記プレポリマーの総量に対する割合が8重量%以上であり、分子量700〜5000の領域に存在するピークに含まれる成分の数平均分子量が1600以下であることを特徴とする前記研磨パッド。
[4] 前記プレポリマーのNCO当量が200〜800であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の研磨パッド。
[5] 前記芳香族ポリイソシアネートがトリレンジイソシアネートである、[1]〜[4]のいずれかに記載の研磨パッド。
[6] 前記分子量400〜700の領域に存在するピークが、ポリイソシアネート化合物と低分子量ポリオールとの反応物を含む成分に由来する、[1]又は[3]に記載の研磨パッド。
[7] 前記分子量700〜5000の領域に存在するピークが、ポリイソシアネート化合物と高分子量ポリオールとの反応物を含む成分に由来する、[2]又は[3]に記載の研磨パッド。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の研磨パッドの製造方法であって、
前記ポリウレタン樹脂硬化性組成物を硬化させて研磨層を成形する工程を含む、前記方法。
[9] 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]〜[7]のいずれかに記載の研磨パッドを使用することを特徴とする方法。
[10] [1]〜[7]のいずれかに記載の研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する際のスクラッチを低減する方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造上の安定に優れ、物性のバラつきが少ない研磨パッドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(研磨パッド)
本発明の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂からなる研磨層を有する。研磨層は被研磨材料に直接接する位置に配置され、研磨パッドのその他の部分は、研磨パッドを支持するための材料、例えば、ゴムなどの弾性に富む材料で構成されてもよい。研磨パッドの剛性によっては、研磨パッド全体を1つの研磨層とすることができる。
【0010】
本発明の研磨パッドは、一般的な研磨パッドと同様の形状を採用することができ、また、一般的な研磨パッドと同様に使用することができ、例えば、研磨パッドを回転させながら研磨層を被研磨材料に押し当てて研磨することもできるし、被研磨材料を回転させながら研磨層に押し当てて研磨することもできる。
【0011】
(研磨パッドの製造方法)
本発明の研磨パッドは、一般に知られたモールド成形、スラブ成形等の製造法より作成できる。まずは、それら製造法によりポリウレタンのブロックを形成し、ブロックをスライス等によりシート状とし、ポリウレタン樹脂から形成される研磨層を成形し、支持体などに貼り合わせることによって製造される。あるいは支持体上に直接研磨層を成形することもできる。
【0012】
より具体的には、研磨層は、研磨層の研磨面とは反対の面側に両面テープが貼り付けられ、所定形状にカットされて、本発明の研磨パッドとなる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。また、本発明の研磨パッドは、研磨層のみからなる単層構造であってもよく、研磨層の研磨面とは反対の面側に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。
【0013】
研磨層は、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂硬化性組成物を調製し、ポリウレタン樹脂硬化性組成物を硬化させることによって成形される。
【0014】
研磨層は発泡ポリウレタン樹脂から構成されるものとすることができ、この場合、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂発泡硬化性組成物を調製し、ポリウレタン樹脂発泡硬化性組成物を発泡硬化させることによって成形される。
【0015】
ポリウレタン樹脂硬化性組成物は、例えば、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むA液と、それ以外の成分を含むB液とを混合して調製する2液型の組成物とすることもできる。それ以外の成分を含むB液はさらに複数の液に分割して3液以上の液を混合して構成される組成物とすることができる。
【0016】
(プレポリマー)
本発明において、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定によりポリスチレン換算の分子量分布は、以下の条件により測定したものを意味する。
(測定条件)
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.5ml/min(26kg/cm
2)
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0017】
本発明においては、プレポリマーをGPCにより測定したポリスチレン換算の分子量分布において、分子量400〜700の領域に存在するピークに含まれる成分の前記プレポリマーの総量に対する割合が、8重量%以上であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、12重量%以下であることが最も好ましい。また、本発明においては、上記分子量400〜700の領域に存在するピークが、ポリイソシアネート化合物と低分子量ポリオールとの反応物を含む成分に由来するものであることが好ましい。
また、本発明においては、プレポリマーをGPCにより測定したポリスチレン換算の分子量分布において、分子量700〜5000の領域に存在するピークに含まれる成分の数平均分子量が、1600以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1400以下であることが最も好ましい。また、本発明においては、上記分子量700〜5000の領域に存在するピークが、ポリイソシアネート化合物と高分子量ポリオールとの反応物を含む成分に由来するものであることが好ましい。
【0018】
本発明において、前記プレポリマーのNCO基1個当たりの分子量を示すプレポリマーのNCO当量としては、200〜800であることが好ましく、300〜700であることがより好ましく、400〜600であることがさらにより好ましい。
具体的に前記プレポリマーのNCO当量は以下のようにして求めることができる。
プレポリマーのNCO当量=(ポリイソシアネート化合物の質量部+ポリオール化合物の質量部)/[(ポリイソシアネート化合物1分子当たりの官能基数×ポリイソシアネート化合物の質量部/ポリイソシアネート化合物の分子量)−(ポリオール化合物1分子当たりの官能基数×ポリオール化合物の質量部/ポリオール化合物の分子量)]
【0019】
(ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、
m−フェニレンジイソシアネート、
p−フェニレンジイソシアネート、
2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、
2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、
ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、
ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、
3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、
3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、
キシリレン−1,4−ジイソシアネート、
4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、
p−フェニレンジイソチオシアネート、
キシリレン−1,4−ジイソチオシアネート、
等の芳香族ポリイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、
プロピレン−1,2−ジイソシアネート、
ブチレン−1,2−ジイソシアネート、
エチリジンジイソチオシアネート
等の脂肪族ポリイソシアネート、
4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、
シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、
シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、
等の脂環族(脂環式)ポリイソシアネート
が挙げられる。
本発明におけるポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーは、ポリイソシアネート化合物として芳香族ポリイソシアネートを含むものであり、ポリイソシアネート化合物として芳香族ポリイソシアネート以外の脂肪族ポリイソシアネート、脂環族(脂環式)ポリイソシアネートを含んでもよい。
【0020】
(ポリオール化合物)
ポリオール化合物としては、例えば、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのジオール;
ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;
エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;
ポリカーボネートポリオール;
ポリカプロラクトンポリオール;
等が挙げられる。
本発明におけるポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーは、ポリオール化合物として低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールを含むものである。本発明において、低分子量ポリオールとは、前述のGPC測定により数平均分子量が30〜300であるポリオールであり、高分子量ポリオールとはGPC測定により数平均分子量が300を超えるポリオールである。
【0021】
(硬化剤)
硬化剤は、プレポリマー中のイソシアネート基と反応させて、ポリウレタン樹脂を完成させる化合物である。硬化剤(活性水素化合物)としては、ポリオール、ポリアミン、等が挙げられる。
【0022】
硬化剤として使用するポリオールは、上述したポリオール成分と同様である。また、3官能のグリセリンなどのトリオール、4官能以上のポリオールも使用できる。
【0023】
ポリアミンとしては、例えば、ジアミンが挙げられ、これには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス−o−クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)などの芳香族環を有するジアミン;
2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;
等が挙げられる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0024】
(発泡剤)
前述したように、本発明の研磨パッドの研磨層はポリウレタン樹脂から構成される。ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物の反応によって得られるプレポリマーを含むポリウレタン樹脂硬化性組成物を硬化して製造するが、このポリウレタン樹脂は無発泡状態のものでも、発泡状態のもの(発泡体)でもよい。
【0025】
ポリウレタン樹脂硬化性組成物を発泡させる方法としては、当業界で一般に採用される微小中空球体、化学的発泡、機械的発泡のいずれの方法も採用できる。
【0026】
微小中空球体をポリウレタン樹脂に混合することによって発泡体を形成することができる。微小中空球体とは、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体を、加熱膨張させたものをいう。前記ポリマー殻としては、例えば、アクリロニトリル−塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル等を用いることができる。
【0027】
化学的発泡としては、例えば、水の添加によりイソシアネート化合物からの二酸化炭素の発生させる方法が挙げられる。
【0028】
機械的発泡としては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを発泡硬化性組成物に機械的に撹拌・混合する方法が挙げられる。
【0029】
(その他の成分)
その他に当業界で一般的に使用される整泡剤、触媒、などを発泡性組成物に添加してもよい。整泡剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられ、より具体的には、例えば、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。触媒は、当業界で一般に使用されるものが本発明においても使用できる。
【実施例】
【0030】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0031】
(材料)
以下の例で使用した材料を列挙する。
・プレポリマーA・・・2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とし水添MDIを含まないNCO当量460のウレタンプレポリマー
・アジプレンL325・・・ユニロイヤルケミカル社製 ウレタンプレポリマーの商品名
・DC6912・・・日本ポリウレタン社製 ウレタンプレポリマーの商品名
・MOCA・・・3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス−o−クロロアニリン)
・MOCA+PTMG・・・3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス−o−クロロアニリン)と数平均分子量650のポリテトラメチレングリコールのモル比1:1の混合物
・Expancel 551DE d42・・・エクスパンセル社製 微小中空球体の商品名
・マツモトマイクロスフェアー F−80 DE・・・松本油脂製薬社製 微小中空球体の商品名
【0032】
(実施例1)
A成分に、2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とし水添MDIを含まないNCO当量460のウレタンプレポリマー(プレポリマーA)を100g(部)、B成分に硬化剤であるMOCAとMOCA+PTMGを重量比1:1で混合したものを30.75g(部)、C成分に中空微粒子を2.25g(部)(Expancel 551DE d42とマツモトマイクロスフェアー F−80 DEを重量比4:1で混合)、それぞれ準備する。なお、比率を示すためg表示として記載しており、ブロックの大きさに応じて必要な重量(部)を準備する。以下同様にg(部)表記で記載する。
A成分およびB成分をそれぞれ予め減圧脱泡した後、A成分、B成分及びC成分を混合機に供給した。
得られた混合液を80℃に加熱した型枠(890mm×890mmの正方形)に注型し5時間加熱し硬化させた後、形成された樹脂発泡体を型枠から抜き出した。この発泡体を1.3mm厚にスライスしてウレタンシートを作成し、研磨パッドを得た。
【0033】
(比較例1)
A成分として、2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とし水添MDIを含まないNCO当量453のウレタンプレポリマー(プレポリマーA) 100g(部)の代わりに、2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とし水添MDIを含むNCO当量464のウレタンプレポリマー(アジプレンL325) 100g(部)を用いた以外は実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0034】
(比較例2)
A成分として、2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とし水添MDIを含まないNCO当量453のウレタンプレポリマー(プレポリマーA) 100g(部)の代わりに、2,4−トリレンジイソシアネートを主成分とするNCO当量540のウレタンプレポリマー(DC6912) 100g(部)を用いた以外は実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。
【0035】
実施例1、比較例1及び2で使用したプレポリマーについて、以下の条件下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定によりポリスチレン換算の分子量分布を測定した。分子量200〜400の領域に存在するピークをピーク1、分子量400〜700の領域に存在するピークをピーク2、分子量700〜5000の領域に存在するピークをピーク3とした。測定結果を
図1、表1及び表2に示す。
(測定条件)
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.5ml/min(26kg/cm
2)
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
図1、表1及び表2において、分子量200〜400の領域に存在するピーク(ピーク1)は、未反応(フリー)の2,4−トリレンジイソシアネートに由来し、分子量400〜700の領域に存在するピーク(ピーク2)は、プレポリマー中の低分子量ポリオール 1分子の両末端に2,4−トリレンジイソシアネート 2分子が付加して形成された成分に由来し、分子量700〜5000の領域に存在するピーク(ピーク3)は、プレポリマー中の高分子量ポリオール 1分子の両末端に2,4−トリレンジイソシアネート 2分子が付加して形成された成分に由来し、分子量5000〜8000の領域に存在するピークは、未反応(フリー)の水添MDIに由来するものであるとそれぞれ考えられる。
図1、表1及び表2の結果より、実施例1で使用したプレポリマーは、ピーク1に含まれる成分の前記プレポリマーの総量に対する割合が5重量%以下であり、未反応(フリー)の2,4−トリレンジイソシアネートが比較例1及び2で使用したプレポリマーより少ないことがわかった。
また、実施例1で使用したプレポリマーは、ピーク2に含まれる成分の前記プレポリマーの総量に対する割合が8重量%以上であり、プレポリマー中の低分子量ポリオール 1分子の両末端に2,4−トリレンジイソシアネート 2分子が付加して形成された成分が比較例1及び2で使用したプレポリマーより多いことがわかった。
さらに、実施例1で使用したプレポリマーは、ピーク3に含まれる成分の数平均分子量が1600以下であり、比較例1及び2で使用したプレポリマーのものに比べて、ピーク2が低分子量側にシフトしブロードなピークとなっている。これは、実施例1で使用したプレポリマーにおける高分子量ポリオールの繰り返し単位のモル数が、比較例1及び2で使用したプレポリマーにおける高分子量ポリオールの繰り返し単位のモル数に比べて小さく、高分子量ポリオール 1分子の両末端に2,4−トリレンジイソシアネート 2分子が付加して形成された成分の分子量が比較例1及び2で使用したプレポリマーのものに比べて小さくなっていることによるものと考えられる。
加えて、実施例1で使用したプレポリマーは、比較例1及び2で使用したプレポリマーと異なり、分子量5000〜8000の領域にピークが検出されておらず、未反応(フリー)の水添MDIが存在しないことがわかった。
また、通常、プレポリマーのNCO当量が大きくなれば平均分子量も大きくなり、NCO当量が小さくなれば平均分子量も小さくなるものであるが、実施例1で使用したプレポリマーは、同様のNCO当量である比較例1で使用したプレポリマーと比較しても最も割合の大きいピーク3の分子量が小さかった。さらに、実施例1で使用したプレポリマーは、比較例2で使用したプレポリマーよりもNCO当量が小さいにも関わらずピーク1に含まれる未反応(フリー)の2,4−トリレンジイソシアネートの割合が少なかった。すなわち、実施例1で使用したプレポリマーは、比較例1及び2で使用したプレポリマーに比べ、未反応のイソシアネート成分の割合又は分子量の大きなイソシアネート成分の割合が少なく、その成分の多くが低分子量ポリオール又は高分子量ポリオール 1分子の両末端に2,4−トリレンジイソシアネート 2分子が付加して形成された成分であるため、成分の均一性に優れていることがわかった。
また、プレポリマーの成分として未反応のイソシアネート成分や分子量の大きなイソシアネート成分が含まれると、その後の硬化剤との反応において、大きな反応速度の差を生じることとなる。すなわち、未反応のイソシアネート成分は硬化剤との反応速度が速いのに対し、分子量の大きなイソシアネート成分はその分子量の大きさのため反応速度が遅くなってしまう。同一のプレポリマー内でこのような成分のバラつきを生じると、硬化する際の硬化時間(ポットライフ)が長くなったり、凝集したりして製造される研磨パッドのブロック内でのバラつきを生じる原因となる。
このように、実施例1で使用したプレポリマーは、上記の分子量分布における特性を有することにより、比較例1及び2で使用したプレポリマーに比べ、成分の均一性に優れたプレポリマーとなっており、このようなプレポリマーを用いることにより、硬化する工程の制御がしやすく製造上の安定に優れており、物性等のバラつきが少ない研磨パッドが得られる。