(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記拘束具は第一の上記ラッチングバーと第二の上記ラッチングバーとを備え、当該第二のラッチングバーは第一のラッチングバーより下流側に間隔をおいて設けられており、
マウスが前進することによって上記ヘッドプレートと第一のラッチングバーの下端とが接触して当該第一のラッチングバーは上方に押し上げられ、マウスがさらに前進すると当該第一のラッチングバーは重力によって下方に戻り、
マウスがさらに前進することによって上記ヘッドプレートと第二のラッチングバーの下端とが接触して当該第二のラッチングバーは上方に押し上げられ、マウスがさらに前進すると当該第二のラッチングバーは重力によって下方に戻る、
請求項1に記載のシステム。
閉じることによって、上記通路の内側空間を、上記第一の開口端部側の空間と上記拘束具側の空間とに隔てる、開閉可能な扉が設けられている、請求項1〜6の何れか一項に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マウスもラットも同じげっ歯類であるが、取扱い性に関して、マウスの性質はラットとは異なる。ラットは総じて、その取扱いや訓練が比較的容易であり、拘束にも比較的寛容である。したがって、ラットは、頭部の固定装置を用いた、頭部の拘束を伴う実験を行うことも比較的容易であり、当該固定装置に対する自己拘束さえも比較的容易である(非特許文献1)。一方、マウスはヒトを非常に恐れるため、取扱いや拘束が難しく、特に、頭部の固定装置を用いた実験における取扱いや拘束が難しい。
【0007】
マウスを用いる利点の一つは、上述の通り、多くの頭数を飼育しながらハイスループットな実験を行うことができる点にある。しかし、頭部の固定装置等の拘束手段を用いてマウスを拘束する必要がある実験では、マウスを拘束する困難性が、実験をハイスループット化する上での大きな障害となっている。ましてや、実質的に人手を介さずに、マウスを拘束することは実現されていない。
【0008】
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、(1)頭部の自己拘束、(2)ハイスループット、(3)自動化された行動訓練、(4)多くの様々な訓練タスクに対する柔軟性、及び、(5)脳研究のための最先端の光学的技術(例えば、二光子イメージング、オプトジェネティックス)への適合、が可能
な、新規なシステムを実現することにある。本発明の他の目的は、実質的に人手を介さずに、マウスを拘束することが可能な新規なシステムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は以下に示す観点の少なくとも一つを含む。
1)マウスを飼育する、少なくとも一つの飼育ケージと、少なくとも一つの第一の開口端部を有する、マウスが移動する通路と、マウスを物理的に固定することによって当該マウスを拘束する拘束具と、を備え、上記通路の、上記少なくとも一つの第一の開口端部が、上記少なくとも一つの飼育ケージと連結されており、上記通路における、当該通路の上記少なくとも一つの第一の開口端部とは異なる場所に、上記拘束具が配置されている、マウスを拘束するシステム。
2)上記拘束具は、マウスの頭部に設置されたヘッドプレートを物理的に固定することによって当該マウスを拘束する、1)に記載のシステム。
3)さらに、ヘッドプレートをガイドするガイド部が上記通路に設けられており、上記ガイド部は、上記拘束具に近づくに従い上り傾斜又は下り傾斜する部分を有する、2)に記載のシステム。
4)上記通路は、上記少なくとも一つの第一の開口端部とは異なる第二の開口端部を有し、上記拘束具は、上記通路の第二の開口端部側に配置されている、1)〜3)の何れかに記載のシステム。
5)閉じることによって、上記通路の内側空間を、上記第一の開口端部側の空間と上記拘束具側の空間とに隔てる、開閉可能な扉が設けられている、1)〜4)の何れかに記載のシステム。
6)上記通路内におけるマウスの位置を検出するセンサを備える、1)〜5)の何れかに記載のシステム。
7)上記センサからの出力に基づき得られるマウスの位置情報に従って、上記拘束具及び/又は上記扉の動作が自動的に制御される、6)に記載のシステム。
8)さらに、上記拘束具に拘束されているマウスに対して、当該マウスの活動データの取得を行う活動データ測定装置が配置されている、1)〜7)の何れかに記載のシステム。
9)さらに、上記拘束具に拘束されている状態にあるマウスの所定の動作と関連付けして報奨を供給する学習装置が配置されている、1)〜8)の何れか一項に記載のシステム。
10)上記拘束具に拘束されているマウスに対する、上記活動データ測定装置及び/又は上記学習装置の動作を自動的に制御する制御部を備える、8)又は9)に記載のシステム。
11)上記通路の、上記少なくとも一つの第一の開口端部として複数個の第一の開口端部を備えており、上記少なくとも一つの飼育ケージとして複数の飼育ケージを備えており、上記第一の開口端部のそれぞれが異なる上記飼育ケージと連結されている、1)〜10)の何れか一項に記載のシステム。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、比較的容易にマウスを拘束することが可能な新規なシステムを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一の実施形態〕
以下、
図1に基づいて、本発明の一実施形態に係るマウス拘束システムについて説明する。
【0013】
マウス拘束システム100は、マウス60の飼育ケージ10と、マウス60の通路20と、マウス60を拘束するヘッドプレート・ラッチ(拘束具)50とを少なくとも備えている。
【0014】
飼育ケージ10には、その容積等に応じて1匹又は複数匹のマウス60が収容されており、複数匹の場合は、例えば、20匹かそれ以下、好ましくは10匹かそれ以下、より好ましくは4匹かそれ以下のマウス60が収容されている。飼育ケージ10内には、必要に応じて、マウス60の餌場、トイレ等の、マウスの飼育に必要な設備が設けられている。飼育ケージ10はペレット餌を有している。飲水は、訓練システムにおける飲み口(後述する給水ユニット72)からのみ可能である(すなわち、水制御下での訓練パラダイムである)。
【0015】
(通路20)
通路20は、内部をマウス60が通過可能な中空構造を持つ、筒状の構造体(第一の実施形態では中空な直方体形状の構造体)である。通路20の両端は開口しており、一方を開口端部21a(第一の開口端部)、他方を開口端部21b(第二の開口端部)と称する。開口端部21aを介して飼育ケージ10から通路20へマウス60が移動可能なように、通路20が飼育ケージ10に連結されている。また、通路20の開口端部21b側には、ヘッドプレート・ラッチ50が配置されている。これにより、マウス60が、通路20を通って、ヘッドプレート・ラッチ50と飼育ケージ10との間を行き来が可能になっている。特に限定されないが、マウス60が好んで通路20内に侵入し易いように、通路20の内部空間の断面積は、好ましくは7cm
2〜15cm
2の範囲内であり、好ましくは9cm
2〜12cm
2の範囲内である。さらに、通路20が設けられる高さも特に限定されないが、通路20の内側の底面が、飼育ケージ10の内側の底面から1cm〜6cmの高さ、好ましくは2cm〜4cmの高さに位置するように設けられる。通路20の内側の底面と、飼育ケージ10の内側の底面との間のかかる高さの相違は、複数のマウス60が通路20へ自由に次々と侵入することを防止する。
【0016】
通路20は、ケージ側通路20a、中央部通路20b、及び、ラッチ側通路20cの三つのポーションからなる。これらのポーションは長さが異なる以外は同じ構造を有しており、同軸配置されることによって、一つの連続した通路20を構成している。ケージ側通路20a、及び、ラッチ側通路20cは共通の土台上に固定されている。中央部通路20bは、重量センサ90によって下方から支持されている。開口端部21aはケージ側通路20aに、開口端部21bはラッチ側通路20cに位置している。重量センサ90によって計測された、中央部通路20b内にいるマウス60の体重情報は、制御部91に入力されてマウス拘束システム100の動作の自動制御に用いられる。
【0017】
(自動ゲート80)
マウス拘束システム100には、上下動が可能に構成された、二つの自動ゲート(扉)80a・80b(自動ゲート80と総称する場合もある)が設けられている。自動ゲート80aは、ケージ側通路20aと中央部通路20bとが、自動ゲート80aを介して互いにつながるように位置している。自動ゲート80aはその開放時には、自動ゲート80aの上面、ケージ側通路20aの下側内面、及び中央部通路20bの下側内面が面一となって、通路20の下側内面を構成する(図中のCの状態)。自動ゲート80aはその閉鎖時には、ケージ側通路20aと中央部通路20bとの間に挿入されるように上昇し、通路20の内部空間を、開口端部21a側とヘッドプレート・ラッチ50とに隔てる(図中のC’の状態)。
【0018】
同様に、自動ゲート80bは、中央部通路20bとラッチ側通路20cとが、自動ゲート80bを介して互いにつながるように位置している。自動ゲート80bはその開放時には、自動ゲート80bの上面、中央部通路20bの下側内面、及びラッチ側通路20cの下側内面が面一となって、通路20の下側内面を構成する(図中のCの状態)。自動ゲート80bはその閉鎖時には、中央部通路20bとラッチ側通路20cとの間に挿入されるように上昇し、通路20の内部空間を、開口端部21a側とヘッドプレート・ラッチ50とに隔てる(図中のC’の状態)。
【0019】
(ビームセンサ22)
マウス拘束システム100には、通路20内におけるマウス60の位置を検出する複数のビームセンサ22が設けられている。複数のビームセンサ22のそれぞれは、照射源と、当該照射源とは反対側に位置するビーム受光素子とを有している。複数のビームセンサ22それぞれの照射源は、マウス60の位置を検出するために、ビーム受光素子に向けてビームを出射する。ビームセンサ22aは、ケージ側通路20aの近傍にセットされている。これによって、中央部通路20bへマウス60が入ることを監視可能とする。ビームセンサ22bは、中央部通路20bの近傍にセットされている。これによって、中央部通路20bを通ってマウス60が通過したことを監視可能とする。ビームセンサ22cは、ヘッドプレート・ラッチ50の近傍にセットされている。これによって、ヘッドプレート・ラッチ50のところにマウス60が到達したことを監視可能とする。複数のビームセンサ22それぞれからの出力から得られるマウス60の位置情報は、制御部91に供給されて、マウス拘束システム100の動作の自動制御に用いられる。
【0020】
(ヘッドプレート・ラッチ50)
ヘッドプレート・ラッチ50は、マウス60の頭部に設置されたヘッドプレート60aを物理的に固定することによってマウス60を拘束する。ヘッドプレート60aの寸法が、(1)通路20の寸法、(2)ラッチ機構のジオメトリと共になって、マウス60がヘッドプレート・ラッチ50から逃げることを不可能にしている。ヘッドプレート60aは、(1)長手方向の中央部に貫通窓60a
1を、(2)長手方向の両端に凹部60a
2・60a
2を有する。ヘッドプレート・ラッチ50は、例えば、ヘッドプレート60aの凹部60a
2・60a
2にフィットするように形成された下向きの凸部を有する。ヘッドプレート・ラッチ50が下方向に動いた場合、上記の凸部は、ヘッドプレート60aの凹部60a
2・60a
2にフィットして、マウス60を拘束する。ヘッドプレート・ラッチ50が上方向に動いた場合、マウス60は拘束から解放される。代替的な構成では、ヘッドプレート・ラッチ50が、マウス60の頭部に設置されたヘッドプレート60aの側面と接触する。これによって、マウス60が戻れないように、ヘッドプレート60aが固定される。これについては、のちほど、
図3を参照しながら記述する。
【0021】
(活動データ測定装置51)
マウス拘束システム100はさらに、ヘッドプレート・ラッチ50によって頭部を拘束されているマウス60の、活動に関するデータ(活動データ)の取得を行う、活動データ測定装置51が配置されている。活動データ測定装置51は、ヘッドプレートを装着したマウスを対象とした各種観察に用いられる任意の装置であってよく、例えば、光学顕微鏡等の顕微鏡装置、光学マクロスコープ等のマクロスコープ装置、脳波測定装置、生理学的記録のための複数の電極、光遺伝学的(optogenetic)刺激のための光ファイバ等でありうる。活動データ測定装置51は、ヘッドプレート60aの貫通窓60a
1を介して、マウス60の脳波(脳波測定装置の場合)や、脳内の顕微鏡画像や脳内のマクロスコープ画像(顕微鏡装置又はマクロスコープ装置の場合)等を活動データとして取得する。
【0022】
(給水ユニット72、ハンドル71)
マウス拘束システム100はさらに、開口端部21b側に、給水ユニット(誘引物質の供給装置を兼ねる)72と、ハンドル(マウスの動作入力装置を兼ねる)71とを備えている。給水ユニット72は、一例として、ヘッドプレート・ラッチ50によって拘束されているマウス60がハンドル71を回転させる等の所定の動作を行った場合に、マウス60に対して所定量の水を供給する。すなわち、給水ユニット72とハンドル71とは、ヘッドプレート・ラッチ50によって拘束されているマウス60の所定の動作と関連付けして報奨としての水を供給する学習装置70として機能する。給水ユニット72は、他の例として、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50側に誘引するために、マウス60に対して所定量の水(誘引物質)を供給する。
【0023】
(制御部91)
制御部91は、マウス拘束システム100の動作を自動的にか半自動的に制御する。マウス拘束システム100では、複数のビームセンサ22のそれぞれ、自動ゲート80、重量センサ90、ヘッドプレート・ラッチ50、活動データ測定装置51、ハンドル71、及び、給水ユニット72がそれぞれ、制御部91と有線でか無線で接続されており、制御部91との間で情報出力及び/又は情報入力が可能となっている。これによって、制御部91が、例えば、複数のビームセンサ22それぞれからの出力に基づき得られたマウス60の位置情報に従って、ヘッドプレート・ラッチ50及び/又は自動ゲート80の動作を自動的に制御する。あるいは、制御部91が、ヘッドプレート・ラッチ50に拘束されているマウス60に対する、活動データ測定装置51及び/又は学習装置70(給水ユニット72とハンドル71)の動作を自動的に制御する。
【0024】
なお、制御部91は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。また、制御部91は、複数のブロックから構成され、各ブロックが異なる機器(マウス拘束システム100を構成する機器)の動作の制御を受け持つように構成されていてもよい。
【0025】
以下、これらに特に限定されるものではないが、制御部91を介した、マウス拘束システム100の動作制御の一例を、具体的に説明する。このような動作制御によって、実質的に人手を介さずに(すなわち効率に優れかつマウスの恐怖心を抑えつつ)、マウスを拘束することが可能な新規なシステムを実現できる。また、飼育ケージ10に格納するマウスの頭数を増やせば、ハイスループット化することも容易である。
【0026】
<態様1> ヘッドプレート・ラッチ50側へ導くべきマウスのスクリーニング
まず、制御部91は、自動ゲート80a・80bを何れも開いた状態となるようにその動作を制御し、マウス60が、飼育ケージ10と通路20とを自由に行き来可能としておく。マウス60が、中央部通路20bに入ったことをビームセンサ22aが検知すると、制御部91は、自動ゲート80a・80bを何れも閉めるようにその動作を制御する。このとき、中央部通路20b内にいるマウス60の体重を、重量センサ90が自動測定する。重量センサ90が自動測定したマウス60の体重が所定の基準を満たす値であれば、制御部91は、自動ゲート80aを閉めたまま自動ゲート80bを開くようにその動作を制御し、マウス60が、ヘッドプレート・ラッチ50側(ラッチ側通路20c側)に移動できるようにする。ビームセンサ22bによって、ヘッドプレート・ラッチ50側へのマウス60の移動を確認すると、制御部91は、自動ゲート80bを再び閉めるようにその動作を制御する。一方、マウス60の体重が所定の基準を満たさない値であれば、制御部91は、自動ゲート80bを閉めたまま自動ゲート80aを開くようにその動作を制御し、マウス60が、飼育ケージ10側に戻ることができるようにする。すなわち、この態様1では、自動ゲート80の開閉の動作を、複数のビームセンサ22からの出力に基づき得られるマウス60の位置情報と、重量センサ90からの出力に基づき得られるマウス60の体重情報とを用いて、制御部91が自動的に制御する。このようにして、マウス拘束システム100では、ヘッドプレート・ラッチ50側へ導くべきマウスをその体重に応じて自動的にスクリーニング可能である。
【0027】
<態様2> ヘッドプレート・ラッチ50に対する馴化訓練
まず、制御部91は、自動ゲート80a・80bを何れも開いた状態となるようにその動作を制御し、マウス60が、飼育ケージ10と通路20とを自由に行き来可能としておく。マウス60が、ラッチ側通路20cに入ったことをビームセンサ22bが検知すると、制御部91は、自動ゲート80bを閉めるようにその動作を制御してもよいが、自動ゲート80bを開いたままとするようにその動作を制御してもよい。制御部91は、給水ユニット72が、必要に応じて、所定のタイミング(例えば、ビームセンサ22aがマウス60を検出したタイミング)で、所定量の水の供給を継続的に行うようにその動作を制御して、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50側に誘引する。ヘッドプレート・ラッチ50によるヘッドプレート60aの固定が可能な領域へのマウス60の移動を、ビームセンサ22cによって確認すると、制御部91は、ヘッドプレート・ラッチ50の動作を制御して、ヘッドプレート60aを固定する。これによって、マウス60は、移動できないように拘束される。なお、初めのうちは、ヘッドプレート・ラッチ50によってヘッドプレート60aを軽く固定することで、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50に慣れさせるようにしてもよい。次いで、所定の時間が経過した後、制御部91は、ヘッドプレート・ラッチ50の動作を制御してヘッドプレート60aを固定状態から開放し、かつ、この動作に連動して自動ゲート80a・80bを何れも開いた状態となるように動作を制御して、マウス60が飼育ケージ10側に戻れるようにする。この操作を同一のマウス60に対して1回行うか好ましくは反復して行うことによって、マウス60がヘッドプレート・ラッチ50に対して徐々に慣れてくる。飼育ケージ10内に複数のマウス60が飼育されている場合は、これら複数のマウスに対して同時進行で、ヘッドプレート・ラッチ50に対する馴化訓練を自動的に行うことができる。
【0028】
すなわち、この態様2では、自動ゲート80の開閉、給水ユニット72の給水動作、及び、ヘッドプレート・ラッチ50の固定・開放動作を、複数のビームセンサ22それぞれからの出力に基づき得られるマウス60の位置情報や、機器相互間(ヘッドプレート・ラッチ50と自動ゲート80a・80bとの間)の動作情報に基づいて、制御部91が自動的に制御する。
【0029】
なお、上述した<態様1>の方法を用いて、この馴化訓練に参加させるマウスをその体重に応じて自動的にスクリーニングするようにしてもよい。
【0030】
<態様3> 学習訓練〜マウスの活動データの取得
まず、制御部91は、自動ゲート80a・80bを何れも開いた状態となるようにその動作を制御し、マウス60が、飼育ケージ10と通路20とを自由に行き来可能としておく。マウス60が、ラッチ側通路20cに入ったことをビームセンサ22bが検知すると、制御部91は、自動ゲート80bを閉めるようにその動作を制御することが好ましい。ヘッドプレート・ラッチ50によるヘッドプレート60aの固定が可能な領域へのマウス60の移動を、ビームセンサ22cによって確認すると、制御部91は、ヘッドプレート・ラッチ50の動作を制御してヘッドプレート60aを固定する。これによって、マウス60は、移動できないように拘束される。なお、ヘッドプレート・ラッチ50によってヘッドプレート60aを軽く固定することで、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50に慣れさせるようにしてもよい。給水ユニット72とハンドル71とは学習装置を構成する。ヘッドプレート・ラッチ50に拘束されている状態にあるマウス60が、ハンドル71を回転させるなどの所定の動作を行った場合に、制御部91は、その動作と関連付けして給水ユニット72から水(報奨)を供給するようにその動作を制御する。次いで、制御部91は、ヘッドプレート・ラッチ50の動作を制御してヘッドプレート60aを固定状態から開放し、この動作に連動して自動ゲート80a・80bを何れも開いた状態となるようにその動作を制御して、マウス60が飼育ケージ10側に戻れるようにする。この操作を同一のマウス60に対して1回行うか好ましくは反復して行うことによって、マウス60は、ハンドル71を回転させるなどすれば、給水ユニット72から水が供給されるということを学習する。飼育ケージ10内に複数のマウス60が飼育されている場合は、これら複数のマウスに対して同時進行で、この学習訓練を自動的に行うことができる。
【0031】
また、ヘッドプレート・ラッチ50に拘束されている状態にあるマウス60に対して、活動データ測定装置51を用いてこのマウス60の活動データを取得してもよい。活動データの取得は、上述した学習訓練が施されたマウス60を対象として行うことが好ましい。
【0032】
すなわち、この態様3では、自動ゲート80の開閉、給水ユニット72の給水動作、活動データ測定装置51の測定動作、及び、ヘッドプレート・ラッチ50の固定・開放動作を、複数のビームセンサ22それぞれからの出力に基づき得られるマウス60の位置情報や、ハンドル71からの出力(マウス60によるハンドルの回転動作に起因する出力)や、機器相互間(ヘッドプレート・ラッチ50と自動ゲート80a・80bとの間や、給水ユニット72とハンドル71との間や、ヘッドプレート・ラッチ50と活動データ測定装置51との間等)の動作情報に基づいて、制御部91が自動的に制御する。
【0033】
なお、上述した<態様1>の方法を用いて、この学習訓練に参加させるマウスをその体重に応じて自動的にスクリーニングするようにしてもよい。
【0034】
(マウス拘束システムの変形的な構成例)
マウス拘束システム100は、
図1に示すハンドル71に代えて、マウス60の動作入力を受け付ける他の装置を備えていてもよい。
【0035】
図1に示す給水ユニット72に代えて、報奨として或いは誘引物質として、餌その他をマウスに与える報奨/誘引物質供給ユニットを設けてもよい。マウスに餌を与える場合は、報奨/誘引物質供給ユニットは給餌ユニットである。この場合、上記の動作入力装置と報奨/誘引物質供給ユニットとがマウスの学習装置を構成する。
【0036】
マウス拘束システム100は、
図1に示す制御部91を省略するかその自動制御の範囲を制限し、マウス拘束システム100を構成する機器の少なくとも一部を手動で動かすようにしてもよい。この構成でも、飼育ケージ10と、ヘッドプレート・ラッチ50が設けられた通路20とが連結されていることによって、人手の介入を抑え、マウス60の恐怖心を低減しながら、比較的容易にヘッドプレート・ラッチ50を用いてマウスを拘束することが可能になる。ただし、制御部91が、1)複数のビームセンサ22それぞれからの出力に基づき得られるマウス60の位置情報に従って、少なくともヘッドプレート・ラッチ50及び/又は自動ゲート80の動作を自動的に制御すること、或いは、2)少なくとも、ヘッドプレート・ラッチ50に拘束されているマウス60に対する、活動データ測定装置51及び/又は学習装置70の動作を自動的に制御すること、が好ましい。より人手の介入を抑制し、作業効率が上がるうえ、マウス60の恐怖心をより一層低減することができるからである。
【0037】
なお、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50による固定に慣れさせるという目的のみを考えれば、
図1に示す構成のうち、少なくとも飼育ケージ10、通路20、及びヘッドプレート・ラッチ50を備えていればよく、他の構成は必須ではない。
【0038】
〔第二の実施形態〕
以下、
図2に基づいて、本発明の他の実施形態に係るマウス拘束システムについて説明する。なお、
図1に示す構成と共通する構成については同一の部材番号を付し、その説明は反復して行わない。
【0039】
図2に示すマウス拘束システム200と、
図1に示すマウス拘束システム100とは、ラッチ側通路20cの内部構造のみが相違している。特に、マウス拘束システム200は、ラッチ側通路20cの内側の両側面上に取り付けられた板状の部材を備えてなる、馴化用ユニット(ヘッドプレート用のガイド部)23を含んでいる。この板状の部材それぞれは、飼育ケージ10側からヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従い、下り傾斜する傾斜部(ガイドレール)23aを有している。
【0040】
馴化用ユニット23は、その傾斜部23aが、マウス60の装着するヘッドプレート60aと当接して、ヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従って、マウス60の上方向への動きの規制を段階的に強める(マウス60の上方向の動きの自由度を徐々に低下させる)ガイド部として機能する。ただし、馴化用ユニット23は、マウス60が、ヘッドプレート・ラッチ50、給水ユニット72、及びハンドル71へアクセスすることを妨げない。これにより、マウス60の恐怖心が急激に増大することを和らげながら、より容易にヘッドプレート・ラッチ50を用いてマウスを拘束することや、マウス60をヘッドプレート・ラッチ50による固定により容易に慣れさせることが可能となる。
【0041】
(馴化用ユニットの変形的な構成例)
図2に示す馴化用ユニット23に代えて、
図3に示す馴化用ユニット23’を設けることもできる。馴化用ユニット23’は、ラッチ側通路20cの内側の両側面上に取り付けられる板状の部材を備える。この板状の部材それぞれは、飼育ケージ10側からヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従い下り傾斜する傾斜部(ガイドレール)23a’と、飼育ケージ10側からヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従い上り傾斜する傾斜部(ガイドレール)23b’とを有している。ヘッドプレート・ラッチ50側において、傾斜部23a’と、傾斜部23b’とは、ヘッドプレート60aの噛み込みが可能な所定の間隔(例えば、ヘッドプレート60aの厚みよりやや大きい間隔)をもって平行に伸長する平行部(拘束溝)23c’を有し、平行部23c’のヘッドプレート・ラッチ50側の端は閉じている。すなわち、傾斜部23a’と傾斜部23b’とは、略Y字形状をしたガイド部を構成し、マウス60の装着するヘッドプレート60aと当接して、ヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従って、マウス60の上下方向への動きの規制を段階的に強める。ヘッドプレート60aが平行部23c’に噛み込んでいる状態では、マウス60は実質的に上下方向へ動けないが、給水ユニット72、及びハンドル71へアクセスすることは妨げない。かかる状態では、マウス60の恐怖心が急激に増大することを抑えられるため、ヘッドプレート・ラッチ50を用いてより容易にマウスを拘束することができる。
【0042】
ここで、ヘッドプレート・ラッチ50は、第一ラッチングバー50aと第二ラッチングバー50bとを含んでなる。第一ラッチングバー50aと第二ラッチングバー50bとは、通路20の側面の方向から見た場合に、当該第一ラッチングバー50a及び第二ラッチングバー50bそれぞれの下端が、馴化用ユニット23’の平行部23c’内に位置するように設けられている。第一ラッチングバー50aは、通路20における上流側(飼育ケージ10側)に設けられ、第二ラッチングバー50bは第一ラッチングバー50aより僅かに下流側に間隔をおいて設けられている。マウス60が前進することによって、ヘッドプレート60aと第一ラッチングバー50aの下端とが接触して、第一ラッチングバー50aは上方に押し上げられる。マウス60がさらに前進を続けると、第一ラッチングバー50aは下方に戻る(重力によって)。第一ラッチングバー50aが下方に戻った場合、第一ラッチングバー50aは、ヘッドプレート60aの、後方側の側面に接触する。これによって、ヘッドプレート60aは、マウス60が後退できないように固定される。マウス60がさらに前進する場合、第一ラッチングバー50aの場合と同様に、第二ラッチングバー50bは上方に押し上げられた後、下方に戻る。その結果、第二ラッチングバー50bが、馴化用ユニット23’の平行部23c’の最末端(幅狭のガイドレールに)に、ヘッドプレート60aを拘束して、移動の自由度が許容されなくなる。訓練セッションの終わりには、サーボモータ機構(図示せず)が第一ラッチングバー50aと第二ラッチングバー50bとを引き上げて、マウス60が飼育ケージ10に戻れるようになる。この二重ラッチングシステムは、自己による頭部拘束に対して、急速にマウスを訓練する上での一つのキーとなる。第一ラッチングバー50aを通過した後のマウスは、馴化用ユニット23’(ガイド部)によって相当に拘束されているにも関わらず、未だその頭部及び体を動かすことが出来るために、マウスのストレスレベルは大きく低減される。
【0043】
なお、
図3に示す馴化用ユニット23’は、傾斜部23a’を省略し、上り傾斜する傾斜部23b’のみを備えた構成とすることもできる。これによっても、マウス60の装着するヘッドプレート60aが傾斜部23b’と当接して、ヘッドプレート・ラッチ50側に近づくに従って、マウス60の下方向への動きの規制を段階的に強めることができる。
【0044】
〔第三の実施形態〕
図1〜
図3に示すマウス拘束システムにおいて、1)飼育ケージ10を複数個有し、2)通路20として、飼育ケージ10と連結される側の開口端部21a(第一の開口端部)を、飼育ケージ10の個数と同数備えた(例えば、通路20の一方の端部が、飼育ケージの数に応じて枝分かれしている、或いは、通路20を飼育ケージ10の個数と同数備えている等)構成のものを用い、3)かつ、複数の開口端部21aのそれぞれが一つの飼育ケージ10と連結されるようにしてもよい。
【0045】
これによって、飼育ケージ10の個数に比例して、ヘッドプレート・ラッチ50側に導入可能なマウス60の数を増大させることができるので、より一層のハイスループット化を図ることができる。
【0046】
例えば、
図4の(A)には、n個(nは2以上の整数であり、ここでは3個)の飼育ケージ10;飼育ケージ10と連結される側の開口端部21aをn個有するように枝分かれした通路20;及び、一つの共通のヘッドプレート・ラッチ50;を備えた、マウス拘束システム300の概略構成を示す。通路20の、ヘッドプレート・ラッチ50が配置される側は枝分かれしておらず、開口端部21bは一つである。マウス拘束システム300では、自動ゲート80a・80b(
図1や2も参照)に加え、自動ゲート80cが設けられている。自動ゲート80cは、通路の分岐点20dの近傍であって、分岐点20dと各開口端部21aとを結ぶ通路内の領域にひとつずつ設けられている。3つの自動ゲート80cは、例えば、一つのゲートを開けているときに残り二つのゲートを閉じるなどして、選択された一つの飼育ケージ10からのみマウスをヘッドプレート・ラッチ50側に送り込めるように、その開閉が制御される。
【0047】
図4の(B)には、n個(nは2以上の整数であり、ここでは4個)の飼育ケージ10と、n本の通路20と、一つの共通のヘッドプレート・ラッチ50と、を備えた、マウス拘束システム400の概略構成を示す。各通路20の開口端部21aは、それぞれ異なる一つの飼育ケージ10に連結され、各通路20の開口端部21bは全て、共通のヘッドプレート・ラッチ50に連結されている。複数の自動ゲート80は、選択された一つの飼育ケージ10からのみヘッドプレート・ラッチ50に対してマウスを送り込むように、その開閉が制御される。
【0048】
なお、
図4中、
図1及び
図2に示す構成と共通する構成については同一の部材番号を付し、その説明は反復して行わない。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0050】
以下の実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例によって限定されることを意図するものではない。
【0051】
〔実施例1〕発明したセットアップを用いて訓練した、頭部を固定したマウスからの生理学的記録、及び脳のイメージング
CaMKII-cre:LSL-GCaMP3マウスの活動を測定するためのシステムをセットアップした。このシステムは、蛍光マクロスコープ、アイ・トラッキングカメラ、動物に対して視覚的な刺激を提示するLCDディスプレイ、及び、
図3に示す訓練システムと同一の頭部ラッチ用のステージを備えてなる。このシステムにおいて、マウスを飼育し、訓練をした。初めに、慢性広視野の蛍光像(
図5(A)。赤線。一次視覚野(V1)を含む8つの視野領域の輪郭)を取得するために、トランスジェニックマウスの背側皮質をモニターした。
【0052】
背側皮質をイメージングすると同時に、赤外照射の元、高倍率において、反対側の目(contra-lateral eye)もイメージングした。この特定の実験では、動物の前に置かれたスクリーンに刺激が提示されることにより、神経のアクチベーションを反映した蛍光シグナルが得られた。ここで課したタスクは二種の視覚的な刺激を区別するものであり、これは、目の動きの制御に不可欠なためである。訓練を受けた動物は、〜80%の正答率を記録した。目の像は、目の輪郭(緑色の楕円)と瞳(黄色の円)とを同定する自動セグメント化アルゴリズムによって処理された(
図5(B))。
【0053】
図5(B)から計算した水平方向への瞳の移動は、V1から得た蛍光アクチベーション(青線、右のy軸)とともに、任意の画素単位において示した(黒線、左のy軸)。垂直の点線は、動物が決定を形成することが出来るが、それを信号により伝達することが出来ない間の時間間隔である。t=2.5秒の後、機械的なアクチュエータ上に対し前脚を介して、この動物は自身の選択を、信号により伝達できた(
図5(C))。神経記録の場合と同じ時間軸上にプロットした、
図5(B)に示すような、上記のセグメント化アルゴリズムを用いて計算された瞳の直径(任意の画素単位)の時間的なエボリューション(
図5(D))。