特許第6570487号(P6570487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570487
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】給湯設備用の計測システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20190826BHJP
   F24H 9/20 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   F24H1/00 E
   F24H9/20 Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-150462(P2016-150462)
(22)【出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2018-17491(P2018-17491A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】田中 知親
(72)【発明者】
【氏名】木内 康博
(72)【発明者】
【氏名】守谷 和行
【審査官】 豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−161454(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0161940(US,A1)
【文献】 特開2003−139387(JP,A)
【文献】 特開2001−165459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 − 4/06
F24H 9/02 − 9/14
G06F 19/00
G06Q 10/00 − 99/00
H03J 9/00 − 9/06
H04Q 9/00 − 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐水口へ湯を供給する複数の給湯管毎に設けられ、それら各給湯管の湯について温度及び流量の少なくとも一方を計測するセンサを有する複数の計測部と、
前記複数の計測部との無線通信によりそれら各計測部から情報を取得する情報取得部とを備え、
前記複数の給湯管として、建物の上階部分に設けられた第1吐水口へ湯を供給する第1給湯管と、建物の下階部分に設けられた第2吐水口へ湯を供給する第2給湯管とを有し、
前記第1給湯管及び前記第2給湯管は、前記下階部分から前記上階部分に向けて立ち上がっており且つそれら立ち上がっている所定部分において互いに近接するように配設されており、
前記各センサは、各給湯管における前記所定部分に配設されていることを特徴とする給湯設備用の計測システム。
【請求項2】
前記第1給湯管は、前記第2吐水口の付近を通過するように配置されており、前記第1給湯管にて前記第2吐水口に接近している部分が当該第1給湯管における前記所定部分となっていることを特徴とする請求項に記載の給湯設備用の計測システム。
【請求項3】
複数の吐水口へ湯を供給する複数の給湯管毎に設けられ、それら各給湯管の湯について温度及び流量の少なくとも一方を計測するセンサを有する複数の計測部と、
前記複数の計測部との無線通信によりそれら各計測部から情報を取得する情報取得部とを備え、
前記複数の給湯管は、建物の下階部分と上階部分とに架け渡すようにして設けられたパイプシャフトに挿入されており、
前記各センサは、各給湯管における前記パイプシャフト内に収容されている所定部分に配設されていることを特徴とする給湯設備用の計測システム。
【請求項4】
前記複数の吐水口として、前記下階部分に設けられた下階側吐水口と前記上階部分に設けられた上階側吐水口とを有し、
前記パイプシャフトは、前記下階側吐水口の付近を通過するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の給湯設備用の計測システム。
【請求項5】
屋外に設置された給湯装置に前記複数の給湯管が接続されており、それら各給湯管を通じて前記各吐水口に湯が供給される構成となっており、
前記複数の給湯管にて前記各吐水口及び前記給湯装置のうち前記給湯装置寄りとなる部分に前記センサが配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1つに記載の給湯設備用の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯設備用の計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物には、屋外の給湯装置等にて温められた温水が配管を通じて浴室や洗面所等の吐水口に供給される給湯設備を備えているものがある。近年では、給湯管毎に配設された流量センサや温度センサ等のセンサ部と、それらセンサ部からの情報を収集するサーバ等の制御装置とを用いて給湯設備用の計測システムを構築する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような計測システムでは、例えばセンサ部からの情報に基づいて漏水や締めわすれ等を監視し、仮に漏水等が発生している場合にはどの給湯管にて不都合が生じているかをユーザ等に知らせることが可能となる。また、ユーザに湯の使用傾向を示すことにより、湯の節約を図る際の利便性の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−132461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した給湯設備用の計測システムにおいては、無線通信によってセンサ部からの情報を収集する構成とすることにより、配線の取り回し等が不要となる。これは、計測システムの施工作業を容易化する上で好ましい。但し、給湯管については床下や壁内等に配置されるため、無線通信の範囲が壁や床の影響によって制限され得る。このような事情等に配慮して、個々の吐水口(給湯管)に対応させて送受信器を配設しようとした場合には、計測システムが大がかりなものとなる。これは、計測システムの普及を図る上で妨げになると懸念される。このように、上記計測システムについては、施工作業の容易化を図りつつその構成の簡略化を図る上で未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、施工作業の容易化を図りつつ構成の簡略化を実現することができる計測システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお以下においては、理解の容易のため、発明の実施の形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0008】
手段1.複数の吐水口(吐水口21〜24)へ湯を供給する複数の給湯管(例えば給湯管52〜53)毎に設けられ、それら各給湯管の湯について温度及び流量の少なくとも一方を計測するセンサ(温度センサ71及び流量センサ72)を有する複数の計測部(センサ部70及び無線モジュール75を有するセンサブロック81)と、
前記複数の計測部との無線通信によりそれら各計測部から情報を取得する情報取得部(無線モジュール76)と
を備え、
前記複数の給湯管は、各給湯管における所定部分(近接部分)において互いに近接するように配設されており、
前記各センサは、各給湯管における前記所定部分に配設されていることを特徴とする給湯設備用の計測システム。
【0009】
手段1に示すように計測部と情報取得部とを無線通信可能とすれば両者を接続する為の配線等の取り回しが不要となる。これにより、施工現場における作業効率の向上に寄与できる。ここで、建物においては壁や床等の建物構造の存在が通信を妨げる障害物となり得る。故に、通信範囲に係る制約が強くなりやすい。この課題は計測部毎(給湯管毎)に情報取得部を設けることで解消し得るものの、このような対策を講じることで計測システムが大がかりなものになる。これは、計測システムの普及の妨げになると懸念される。この点、本手段に示すように、給湯管同士が接近する部分(上記所定部分)にセンサを配置する構成とすれば、情報取得部の共用化を促進し、情報取得部の数を減らすことが可能となる。これにより、施工現場における作業効率の向上を図りつつそれに起因して計測システムが大がかりになものになることを抑制できる。
【0010】
なお、「前記複数の給湯管は、各給湯管における所定部分(近接部分)ではそれら給湯管における他の部分よりも給湯管同士の距離が小さくなるように配設され、前記各センサは、各給湯管における前記所定部分に配設されている」との記載を「前記複数の給湯管は、第1部分と第1部分よりも給湯管同士の距離が小さくなる第2部分と各々有し、前記各センサは、各給湯管における前記第2部分に配設されている」とすることも可能である。
【0011】
手段2.前記複数の給湯管は、上流側の元管部にて分岐してなり、その分岐箇所(ヘッダ54)と各吐水口との間となる部分であって且つ当該分岐箇所寄りとなる部分が前記所定部分となるように構成されていることを特徴とする手段1に記載の給湯設備用の計測システム。
【0012】
給湯管を分岐させることで各吐水口に湯を供給する給湯経路を分けている構成においては、吐水口に近づくに連れて給湯管同士が離れる(遠ざかる)こととなる。このような実情に鑑みた場合、給湯管同士を吐水口に近い位置にて無理矢理近づけようとすれば、給湯経路がいびつになり得る。これに対して、分岐箇所に近い位置では給湯管同士が近くなるのが必然である。そこで、本手段に示すように、分岐箇所に近い部分にセンサの配設箇所たる上記所定部分を設定することにより、手段1に示した効果を享受する上で給湯管の取り回しが複雑になることを抑制できる。
【0013】
手段3.前記複数の給湯管として、第1吐水口(吐水口21)へ湯を供給する第1給湯管(給湯管52)と、当該第1吐水口とは異なる複数の第2吐水口(吐水口22〜24)へ湯を供給する第2給湯管(給湯管53)とを有し、
前記第2給湯管は、途中位置(ヘッダ54)にて複数に分岐しており、当該分岐箇所と前記第2吐水口との間となる各々の部分が前記所定部分となるように構成されており、
前記センサは前記第1給湯管の所定部分及び前記第2給湯管の所定部分に各々配設されていることを特徴とする手段1に記載の給湯設備用の計測システム。
【0014】
第2給湯管を分岐させることで各吐水口に湯を供給する給湯経路を分けている構成においては、各第2吐水口に近づくに連れて第2給湯管同士が離れる(遠ざかる)こととなる。このような実情に鑑みた場合、第2給湯管同士を吐水口に近い位置にて無理矢理近づけようとすれば、給湯経路がいびつになり得る。これに対して、分岐箇所に近い位置では第2給湯管同士が近くなるのが必然である。そこで、本手段に示すように、分岐箇所に近い部分にセンサの配設箇所たる上記所定部分を設定することにより、手段1に示した効果を享受する上で給湯管の取り回しが複雑になることを抑制できる。
【0015】
また、第2給湯管と並列となっている第1給湯管については、第2給湯管の分岐箇所よりも下流側(吐水口側)にて当該第1給湯管に近接させる構成とすれば、第1給湯管用の計測部及び第2給湯管用の各計測部について情報取得部を共用とすることが可能となる。これにより、手段1に示した効果を好適に発揮させることができる。
【0016】
手段4.前記1吐水口は、浴槽の湯張りに使用される吐水口であり、前記第2吐水口は浴槽の湯張り以外で使用される吐水口であることを特徴とする手段3に記載の給湯設備用の計測システム。
【0017】
比較的要求される湯量が多い湯張り用の給湯経路を他の給湯経路とは別に設けることにより、湯張り時に他の吐水口へ供給される湯量や水圧に影響が及ぶことを抑制できる。ここで、途中で複数に分岐している給湯経路においては、分岐箇所に近い位置では給湯管同士が比較的近くなる。それら給湯管群に近接するようにして湯張り用の給湯経路を形成した上で当該給湯経路を構成する給湯管にて他の給湯管群に近接する部分にセンサ部を配設することにより、各センサ部に対応する情報取得部を共用化を好適に実現できる。
【0018】
手段5.前記複数の給湯管として、第1吐水口(吐水口21)へ湯を供給する第1給湯管(給湯管52)と、当該第1吐水口とは異なる第2吐水口(例えば吐水口22)へ湯を供給する第2給湯管(給湯管53)とを有し、
前記第1吐水口は建物の上階部分に設けられ且つ前記第2吐水口は建物の下階部分に設けられており、
前記第1給湯管及び前記第2給湯管は、前記下階部分から前記上階部分に向けて立ち上がっており、それら立ち上がっている部分が前記所定部となるように構成されていることを特徴とする手段1乃至手段4のいずれか1つに記載の給湯設備用の計測システム。
【0019】
計測部を用いて湯温や湯量等を監視する構成においては、計測部を吐水口に近づけることにより計測精度や応答性等の向上が期待できる。そこで、第1給湯管及び第2給湯管にセンサを各々配設する上で、給湯管が立ち上がっている部分を所定部分とすることにより、センサを吐水口に近づけることができ、実用上好ましい構成を実現できる。
【0020】
なお、例えば建物の床部(床下空間LE)と天井部(階間空間ME)とに架け渡すようにしてパイプシャフト(パイプシャフト30)が設けられている場合には、このパイプシャフトに各給湯管を挿通し、それら挿通されている部分が前記所定部分となるように構成するとよい。
【0021】
手段6.前記第1給湯管は、前記第2吐水口の付近を通過するように配置されており、前記第1給湯管にて前記第2吐水口に接近している部分が当該第1給湯管における前記所定部分となっていることを特徴とする手段3乃至手段5のいずれか1つに記載の給湯設備用の計測システム。
【0022】
計測部を用いて湯温や湯量等を監視する構成においては、計測部を吐水口に近い位置に配置することにより計測精度や応答性等の向上が期待できる。そこで、第1給湯管が第2吐水口の付近を通過する配置とした上で、当該第1給湯管にて第2吐水口に接近している部分にセンサを配置する構成とすれば、手段1に示した効果を享受しつつ、第2給湯管に付属のセンサについて計測精度の向上を実現することが可能となる。
【0023】
手段7.前記複数の給湯管は、建物の下階部分と上階部分とに架け渡すようにして設けられたパイプシャフト(パイプシャフト30)に挿入されており、各給湯管にて当該パイプシャフト内に収容されている部分に前記センサが各々配設されていることを特徴とする手段1乃至手段6のいずれか1つに記載の給湯設備用の計測システム。
【0024】
手段6に示すように、パイプシャフトに複数の給湯管を挿通させる構成においては、パイプシャフト内にて給湯管同士が接近することとなる。そこで、これら接近している部分にセンサを配置する構成とすれば、情報取得部の共用化を促進し、情報取得部の数を減らすことが可能となる。これにより、施工現場における作業効率の向上を図りつつそれに起因して計測システムが大がかりになものになることを抑制できる。
【0025】
手段8.前記複数の吐水口として、前記下階部分に設けられた下階側吐水口と前記上階部分に設けられた上階側吐水口とを有し、
前記パイプシャフトは、前記下階側吐水口の付近を通過するように構成されていることを特徴とする手段7に記載の給湯設備用の計測システム。
【0026】
計測部を用いて湯温や湯量等を監視する構成においては、計測部を吐水口に近い位置に配置することにより計測精度や応答性等の向上が期待できる。そこで、パイプシャフト(給湯管)が下階側吐水口の付近を通過する構成とすれば、下階用の給湯管についてセンサを下階側吐水口に近づけることが可能となり、更には情報取得手段の共用化を図りつつ上階用の給湯管についてセンサを上階側吐水口に極力近づけることが可能となる。これにより、上記計測精度の向上等に好適に寄与できる。
【0027】
手段9.屋外に設置された給湯装置(給湯装置51)に前記複数の給湯管が接続されており、それら各給湯管を通じて前記各吐水口に湯が供給される構成となっており、
前記複数の給湯管にて前記各吐水口及び前記給湯装置のうち前記給湯装置寄りとなる部分に前記センサが配設されていることを特徴とする手段1乃至手段8のいずれか1つに記載の給湯設備用の計測システム。
【0028】
手段9に示すように屋外に設置された給湯装置から複数の給湯管が延びる構成においては、給湯装置に近い部分では給湯管同士が近くなり、吐水口に近づくことで給湯管同士が大きく離間する。そこで、根元(給湯装置)に近い位置にセンサ部を配設する構成とすれば、給湯管同士の近接部分を好適に確保できる。このように給湯システムの基本的な構造を上手く利用することにより、手段1等に示した効果を享受する上で給湯管の取り回しがいびつになることを好適に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施の形態における建物を示す概略図。
図2】センサブロックを示す概略図。
図3】給湯システムを示す概略図。
図4】パイプシャフト内を拡大して示す概略図。
図5】センサ部の配置の変形例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態では、住宅等の建物に適用される給湯システムについて具体化されている。図1は建物を示す概略図である。
【0031】
建物10は二階建てとなっており、建物10の一階部分に設けられたキッチン11と、二階部分に設けられた洗面所12及び浴室13とを有し、給湯システム50によって各所に湯が供給される構成となっている。なお、本実施の形態においては建物10を二階建てとしたが、これに限定されるものではない。平屋建て(一階建て)としてもよいし、三階建て以上としてもよい。
【0032】
給湯システム50は、屋外に配設された給湯装置51を備えている。給湯装置51は配水管を介して水道管に接続されており、水道管から供給された水を所定の温度となるように温める構成となっている。給湯装置51は、浴室13(バスユニット)に付属の吐水口21に給湯管52を介して接続されており、給湯装置51にて温められた湯は給湯管52を通じて吐水口21へ供給される構成となっている。
【0033】
また、給湯装置51には給湯管52と並列となるようにして給湯管53が接続されている。給湯管53は、ヘッダ54(「分岐箇所」に相当)にて給湯管55〜57に分岐している。給湯管55はキッチン11(キッチン設備)に付属の吐水口22に接続され、給湯管56は洗面所12(洗面台)に付属の吐水口23に接続され、給湯管57は浴室13(シャワー設備)に付属の吐水口24に接続されている。給湯装置51にて温められた湯は給湯管55〜57を通じて吐水口22〜24へ供給される構成となっている。
【0034】
このように、比較的要求される湯量が多いバスユニット用の給湯経路を他の給湯経路とは別に設けることにより、湯張り時に他の吐水口22〜24へ供給される湯量や水圧に影響が及ぶことを抑制している。
【0035】
本実施の形態に示す給湯管52,55〜57には熱量を計測する計測手段としてセンサ部70が設けられている。図2の概略図に示すように、センサ部70は、湯温を計測する温度センサ71と流量を計測する流量センサ72とを有してなる。センサ部70の上流側及び下流側には手動式の開閉弁が設けられており、センサ部70のメンテナンス等の際の利便性に配慮されている。
【0036】
センサ部70の周辺には子無線モジュール75が配設されている。温度センサ71及び流量センサ72は配線73,74を介して当該子無線モジュール75に接続されており、子無線モジュール75は僅かながら給湯管から離れた位置に配置されている。このような配置は、子無線モジュール75の保護等を図る上で有利である。
【0037】
子無線モジュール75は、温度センサ71及び流量センサ72からの情報に基づいて該当する給湯管における給湯利用量等を算出する演算部を有しており、熱量計として機能している。これら、温度センサ71、流量センサ72、子無線モジュール75により構成されたセンサブロック81(「計測部」に相当)は各給湯管52,55〜57に1対1で対応している。ここで、図3を参照して、給湯システム50に係る電気的構成(計測システム)について説明する。
【0038】
バスユニット用の給湯管52に付属の子無線モジュール75A、キッチン設備用の給湯管55に付属の子無線モジュール75B、洗面台用の給湯管56に付属の子無線モジュール75C、シャワー用の給湯管57に付属の子無線モジュール75Dは、親無線モジュール76(中継器に相当)の通信範囲内に配置されており、当該親無線モジュール76と無線通信可能となっている。親無線モジュール76はLANケーブル79を介してホームサーバ78に接続されており、ホームサーバ78とともに制御ブロック82を構築している。子無線モジュール75A〜75D及び親無線モジュール76、センサブロック81及び制御ブロック82間の通信手段を構成しており、各センサブロック81からの情報は、親無線モジュール76を通じてホームサーバ78に入力される。なお、本実施の形態においては、ホームサーバ78から親無線モジュール76を通じて、給水温度(給湯装置51に供給される水の温度)に関する情報が子無線モジュール75に入力される構成となっており、子無線モジュール75では上記熱量を算出する際に当該給水温度を参照する。
【0039】
ホームサーバ78では、センサブロック81から入力された情報に基づいて吐水口21〜24における湯の使用状況を把握する。湯の供給が停止した場合には、給湯管内に湯が残ることとなる。この湯は外部の影響を受けて徐々に熱を失い、ある程度の時間が経過することで常温に戻る。これに対して、ユーザの締め忘れ等によって吐水口が完全に閉じていない場合には、吐水口からお湯が漏れることで給湯管内の湯は通常よりも短い期間で常温に戻る。ホームサーバ78ではそのような事情が発生していないかを監視しており、当該事象が発生していることを特定した場合には吐水口の確認を促すメッセージをユーザに通知する。
【0040】
また、本実施の形態においては、吐水口21〜24が僅かに開いている状態では給湯装置51が動作せず、湯の供給が回避される構成となっている。センサブロック81からの情報に基づいて湯が供給されるべき状況であるにも関わらず長期間に亘って水が供給されていることを特定した場合についても、吐水口の確認を促すメッセージをユーザに通知する。
【0041】
ここで、本実施の形態においては、複数のセンサブロック81(子無線モジュール75)からの情報が1の親無線モジュール76によって収集される構成となっている。以下、図1及び図4を参照して、センサ部70の配置及びそれに関連する構成について補足説明する。
【0042】
図1に示すように、屋外に設置された給湯装置51から延びる給湯管52,53は、屋外から建物10の床下空間LEに挿通されている。建物10には、床下空間LEと階間空間MEとを繋ぐパイプシャフト30が設けられている。このパイプシャフト30を通じて給湯管52,53が二階部分に到達している。なお、パイプシャフト30には、これら給湯管52,53だけでなく、二階部分からの排水が通過する排水管35が挿通されている。
【0043】
給湯管53における上記分岐箇所(ヘッダ54)は床下空間LEに配されており、パイプシャフト30に挿通される手前側にて給湯管53が給湯管55〜57に分岐している。上記センサ部70については、分岐箇所よりも下流側(吐水口側)となる位置に配設されることで、給湯管55〜57における湯の使用状況を個別に把握可能となっている。
【0044】
パイプシャフト30はキッチン設備に付属の吐水口22に隣接する位置を通過しており、パイプシャフト30の途中位置に形成された開口部を通じて給湯管55が吐水口22に接続されている。他の給湯管52,56,57については、パイプシャフト30を経由して階間空間MEに到達し、階間空間MEを経由して二階部分の各各吐水口21,23,24に接続されている。
【0045】
ここで、パイプシャフト30内での給湯管52,55〜57同士の距離は、床下空間LEや階間空間MEにおける給湯管52,55〜57同士の距離と比べて小さくなっており、パイプシャフト30では給湯管52,55〜57が互いに接近した状態となっている。すなわち、建物10における他の部位と比較して、パイプシャフト30においては給湯管の配置が「密」となっている。本実施の形態においては、給湯管52,55〜57にてパイプシャフト30に挿通されている部分が「所定部分」に相当する。
【0046】
上述したセンサ部70A〜70Dは、各給湯管52,55〜57にてパイプシャフト30内を通過している配管部分に配設されている。より詳しくは、図4に示すように、各給湯管52,55〜57にて一階部分(キッチン設備用)の吐水口22に隣接する部分にセンサ部70A〜70Dが配設されている。センサ部70の応答性の向上等を図る上では、センサ部70を極力吐水口に近い位置に配置することが有利である。吐水口22が設けられたキッチン設備は床面に設置されており、吐水口22の位置は二階部分に近づけてある。このように、吐水口22と同等の高さ位置までセンサ部70の配設箇所を引き上げることにより、上記応答性の低下を抑制することが可能となっている。
【0047】
センサ部70と子無線モジュール75とを配線73,74を介して接続する構成においては、配線73,74の長さを短くすることが計測精度の向上を図る上で有利である。このような事情等に鑑みた場合、子無線モジュール75の配置はセンサ部70の配置に依存することとなる。上述したように給湯管52,55〜57同士が近接している部分にセンサ部70が配すること、すなわちセンサ部70同士を近づけて配置することにより、子無線モジュール75同士を近づけることが可能となっている。
【0048】
図4の1点鎖線に示すように親無線モジュール76の通信範囲CEについては限りがあるが、上述した配置とすることで、1の親無線モジュール76の通信範囲CE内に複数(全て)の子無線モジュール75A〜75Dが集約され、各子無線モジュール75A〜75Dと親無線モジュール76との通信機能が確立されている。
【0049】
以上詳述した実施の形態によれば、以下の優れた効果を奏する。
【0050】
センサブロック81と制御ブロック82とを無線通信可能とすれば両者を電気的に接続する為の配線等の取り回しが不要となり、施工時の作業効率の向上に寄与できる。ここで、建物10においては壁や床等の建物向上が上通信を妨げる障害物となり得る。このため、通信範囲に係る制約が強くなりやすい。このような課題は、センサブロック81毎(給湯管毎)に親無線モジュール76を設けることで解消し得るものの、このような対策を講じた場合には計測システムが大がかりなものになり得る。これは、計測システムの普及の妨げになると懸念される。この点、本実施の形態に示したように、給湯管同士が接近する部分にセンサ部70を配置する構成とすれば、センサ部70に付属の子無線モジュール75とともに通信手段を構成する親無線モジュール76を共用とすることが可能となる。これは、親無線モジュール76の数を減らして計測システムの簡素化を実現する上で好ましい。
【0051】
給湯管53を分岐させることで各吐水口22〜24に湯を供給する給湯経路が分かれている構成においては、吐水口22〜24に近づくに連れて給湯管55〜57同士が離れることとなる。このような実情に鑑みた場合、給湯管55〜57同士を吐水口22〜24に近い位置にて無理矢理近づけようとすれば、給湯経路がいびつになり得る。これに対して、分岐箇所(ヘッダ54)に近い位置では給湯管同士が近くなるのが必然である。そこで、本実施の形態に示したように、分岐箇所に近い部分にセンサ部70の配設箇所を設定することにより、上記効果を享受する上で給湯管の取り回しが複雑になることを抑制できる。
【0052】
また、給湯管53と並列となっている給湯管52については、給湯管52の分岐箇所よりも下流側(吐水口側)にて当該給湯管53に接近させる構成とすれば、給湯管52用の各センサブロック81B〜81D及び給湯管53用のセンサブロック81Aについて親無線モジュール76を共用とすることが可能となる。これにより、計測システムの更なる簡素化に貢献できる。
【0053】
給湯管52,53の立ち上がり部分については、パイプシャフト30内に収容されている。パイプシャフト30については、排水管35等の他の構成が挿通されているため、複数の給湯管52,53を挿通させようとすれば、それら給湯管同士が接近した状態となる。そこで、これら接近している部分にセンサ部70を配置する構成とすれば、センサ部70の集約配置を実現する上で給湯管の取り回しが複雑になることを好適に抑制できる。
【0054】
なお、上述した実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。因みに、以下の別形態の構成を、上記実施の形態における構成に対して、個別に適用してもよく、相互に組み合わせて適用してもよい。
【0055】
(1)上記実施の形態では、パイプシャフト30内に給湯管52,55〜57を集約し且つパイプシャフト30外と比べて給湯管52,55〜57同士を接近させた。その上でパイプシャフト30に挿通されている部分にセンサ部70(「センサ」に相当)を配設した。例えば、床下空間LEや階間空間MEにて給湯管同士の距離が小さくなる(接近させる)構成においては、それら距離が小さくなっている部分にセンサ部70を配設することも可能である。
【0056】
(2)上記実施の形態では、給湯管53がヘッダ54にて分岐する構成とし、ヘッダ54よりも下流側(吐水口側)となる部分にセンサ部70を配設したが、これに限定されるものではない。図5(a)の概略図に示すように、ヘッダ54よりも上流側(給湯装置側)となる部分にセンサ部70を配設することも可能である。この場合、給湯管53におけるセンサ部70の配設箇所と給湯管52とを接近させる構成とし、給湯管52に付属のセンサ部70についてもその接近している箇所に配置する構成とすればよい。これにより、給湯管52に付属のセンサ部70及び給湯管53に付属のセンサ部70について親無線モジュール76の共用化を実現できる。
【0057】
(3)上記実施の形態では、二階部分の吐水口用の給湯管52,56〜57において一階部分を通過している部分にセンサブロック81を配設したが、これに限定されるものではない。給湯管52,56〜57にて二階部分を通過している部分にセンサブロック81を配設することも可能である。一階部分と二階部分とは天井によって仕切られているため、無線通信が妨げられやすくなる。そこで、このような変更を行う場合には、一階部分に対応する親無線モジュール76と二階部分に対応する親無線モジュール76とを併用し、情報の取得対象を階層毎に分けるとよい。
【0058】
(4)上記実施の形態では、給湯管55〜57に付属の各センサブロック81B〜81D(詳しくは子無線モジュール75B〜75D)と、給湯管52に付属のセンサブロック81A(詳しくは子無線モジュール75A)とを1の親無線モジュール76の通信範囲CEに配置して、親無線モジュール76を共用化したが、これに限定されるものではない。少なくとも複数のセンサブロック81について親無線モジュール76の共用化を図る上では、給湯管55〜57に付属の各センサブロック81B〜81Dについて親無線モジュール76の共用化が達成されているのであれば足り、給湯経路が異なる給湯管52については親無線モジュール76を別に設けることを否定するものではない。
【0059】
(5)上記実施の形態では、給湯管52を給湯管53(給湯管55〜57)に近接させる構成としたが、給湯管52と給湯管55〜57の一部とを近接させる構成とし、センサ部70群を2つに分ける構成とすることも可能である。この場合、各集合ごとに親無線モジュール76を設けるとよい。
【0060】
(6)上記実施の形態では給湯管52によって湯張り専用の給湯経路を構築したが、この給湯管52についても給湯管53と同様に複数に分岐する構成とすることも可能である。例えば、給湯管52を分岐させて、湯張り用の吐水口とシャワー用の吐水口に湯を供給する構成とすることも可能である。この場合、給湯管52にて分岐位置の下流側となる部分と、給湯管53にて分岐位置の下流側となる部分とを近接させて各センサ部70を1の親無線モジュールの通信範囲内に配置するとよい。
【0061】
(7)上記実施の形態では、パイプシャフト30がキッチン11に付属の吐水口22付近を通過する構成としたが、パイプシャフト30の位置は任意である。但し、上述したようにセンサブロック81からの情報に基づいて漏水の確認等の各種処理を行う場合、応答性の向上等に鑑みるとセンサブロック81をなるべく吐水口に近づけて配置することが好ましい。吐水口22が床面よりも上方すなわち二階部分寄りとなる点に着目すれば、一階部分及び二階部分の両方に吐水口が存在している場合には、一階部分の吐水口の近くを通過するようにしてパイプシャフトを配設することが、パイプシャフトにてセンサ部70の集約配置を実現し且つ上記応答性の向上を図る上で有利となる。
【0062】
(8)上記実施の形態に示したホームサーバ78では、センサブロック81からの情報に基づいて漏水の確認を行い、必要に応じてユーザに漏水確認の通知を行う構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、センサブロック81からの情報に基づいて各吐水口における湯の使用量を把握し、どの吐水口にてどの程度の湯が使用されているかをユーザに知らせる構成とすることも可能である。
【0063】
(9)上記実施の形態に示したセンサブロック81については、センサ71,72と子無線モジュール75とを別体とした上で配線73,74によってそれらを接続する構成としたが、これに限定されるものではない。センサ71,72及び子無線モジュール75を一体とし、当該ユニットを給湯管に取り付ける構成とすることも可能である。
【0064】
(10)上記実施の形態では、温度センサ71及び流量センサ72を併用する場合について例示したが、センサの種類や数については上記のものに限定されるものではない。例えば、温度センサ71及び流量センサ72のいずれか一方のみを配設する構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…建物、21〜24…吐水口、30…パイプシャフト、50…給湯システム、51…給湯装置、52,53…給湯管、54…分岐部分としてのヘッダ、55〜57…給湯管、70…センサ部、71…温度センサ、72…流量センサ、75…子無線モジュール、76…情報取得部としての親無線モジュール、78…ホームサーバ、81…計測部としてのセンサブロック、82…制御ブロック。
図1
図2
図3
図4
図5