(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570531
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】光断層撮影装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20190826BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
G01N21/17 630
G02B21/00
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-541612(P2016-541612)
(86)(22)【出願日】2014年12月19日
(65)【公表番号】特表2017-504015(P2017-504015A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2014078867
(87)【国際公開番号】WO2015092019
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2017年12月1日
(31)【優先権主張番号】1363234
(32)【優先日】2013年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】515146475
【氏名又は名称】アンスティチュ・ドプティーク・グラデュエイト・スクール
(73)【特許権者】
【識別番号】510294173
【氏名又は名称】ユニベルシテ・パリ−シユド・11
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ,アルノー
【審査官】
伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02447754(EP,A1)
【文献】
特開2009−020448(JP,A)
【文献】
特表2009−505051(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0246972(US,A1)
【文献】
SEOKHAN KIM,SIMULTANEOUS MEASUREMENT OF REFRACTIVE INDEX AND THICKNESS BY COMBINING LOW-COHERENCE INTERFEROMETRY AND CONFOCAL OPTICS,OPTICS EXPRESS,2008年 4月14日,VOL:16, NR:8,,PAGE(S):5516-5526,URL,http://dx.doi.org/10.1364/OE.16.005516
【文献】
CHEN,YU et al.,HIGH-RESOLUTION LINE-SCANNING OPTICAL COHERENCE MICROSCOPY,OPTICS LETTERS,2007年 7月15日,Vol.32, No.14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00− 21/83
G02B 21/00− 21/01
G02B 21/06− 21/36
G01B 9/02
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− 多色光源(SLP)と、
− 一次元光センサ(CIM)と、
− 干渉顕微鏡(MI)であって、いわゆる参照ミラー(MR)が端部に配置されている、参照アームと呼ばれる第1のアーム(BREF)と、対象物アームと呼ばれる第2のアーム(BOBJ)と、前記多色光源及び前記センサに前記第1及び第2のアームを結合するビームスプリッタ(SF)と、少なくとも1つの対物レンズ(LO1、LO2、LO)とを含み、前記参照ミラーが、前記又は1つの前記対物レンズ(LO、LO1)の、参照アームに位置する合焦面に配置される、干渉顕微鏡(MI)と、
− 一次元共焦点空間フィルタリングシステム(FE、FS、CIM)であって、前記又は1つの前記対物レンズ(LO、LO2)の、対象物アームに位置する合焦面にある観察線(LDO)と呼ばれる線に沿って、前記対象物アーム(BOBJ)に配置された観察対象物(OBJ)を照明するために、且つ前記センサ上の前記観察線の一次元画像を形成するために前記多色光源と協働する一次元共焦点空間フィルタリングシステム(FE、FS、CIM)と
を含む、光断層撮影装置において、
− 一方で前記参照アームに沿って前記ビームスプリッタから前記参照ミラーに行きそして戻る第1の軌道と、他方で前記対象物アームに沿って前記ビームスプリッタから前記観察線に行きそして戻る第2の軌道との間のゼロ光路差を維持しつつ、前記対象物の一方向走査を実行するために、前記又は1つの前記対物レンズ(LO、LO2)の対象物アームに沿って延びる光学軸と平行に前記観察線を変位させるように構成された作動システム(PR、TR1、TR2、TR3)と、
− 前記一方向走査中の前記観察線の異なる位置に対応する、前記センサによって取得された複数の一次元干渉画像から、前記対物レンズ(LO、LO2)の対象物アームに沿って延びる前記光学軸と平行に向けられた前記観察対象物の断面の二次元画像を再構成するようにプログラム又は構成されたプロセッサ(PR)と
も含むことを特徴とする、光断層撮影装置。
【請求項2】
前記一次元共焦点空間フィルタリングシステムがまた、前記対象物によって後方散乱され、且つ前記観察線(LDO)から生じる光を選択するように配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記作動システムが、前記参照アーム及び前記対象物アームの光路長を修正することなく、前記干渉顕微鏡に対する前記観察対象物の、前記対物レンズ(LO)又は対象物アームに配置された1つの前記対物レンズ(LO2)の前記光学軸に平行な相対変位を引き起こすように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記作動システムが、前記第1の軌道と前記第2の軌道との間のゼロ光路差を維持するために、前記観察線が位置している合焦面において対物レンズ(LO2)を変位させるように、且つ前記参照アームの光路長を修正するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記対象物アーム及び前記参照アームの少なくとも1つに配置された分散補償装置(DCD、IM)も含み、前記作動システムが、前記一方向走査中に前記分散補償装置にも作用するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記干渉顕微鏡が、前記参照アームに配置された第1の対物レンズ(LO1)、及び前記対象物アームに配置された第2の対物レンズ(LO2)を含むリニク顕微鏡であって、前記参照及び対象物アームが別々である、リニク顕微鏡である、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の対物レンズが、浸漬対物レンズであり、前記作動システムが、前記参照アーム及び前記対象物アームの前記光路長を修正することなく、前記干渉顕微鏡に対する前記観察対象物の、対象物アームに配置された前記第2の対物レンズ(LO2)の前記光学軸に平行な相対変位を引き起こすように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記干渉顕微鏡が、単一の対物レンズ(LO)を含むマイケルソン顕微鏡及びミロー顕微鏡から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記干渉顕微鏡が、単一の対物レンズ(LO)及び参照ミラー(MR)、並びに前記対物レンズに固定され、且つその光学軸に沿って整列されたビームスプリッタ(SF)を含むミロー顕微鏡であり、前記作動システムが、観察対象物に対する前記干渉顕微鏡の、前記光学軸と平行な相対変位を引き起こすように構成され、浸漬媒体(IM)が、一方で前記ビームスプリッタと観察対象物との間に、及び他方で前記ビームスプリッタと参照ミラーとの間に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記多色光源(DSL、FMM)が、空間的にコヒーレントであり、及び前記共焦点フィルタリングシステムが、前記多色光源とビームスプリッタ(SF)との間に配置された非点収差の光学系(LC、LE)と、前記一次元光センサ(CIM)の前に配置されたレンズ(LF)と、それ自体が前記レンズの合焦面に配置された一次元光センサとを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
a)多色光源(SLM)を設けるステップと、
b)参照軌道(TREF)と呼ばれる第1の軌道に沿って前記光源によって放射された光の第1の部分、及び対象物軌道(TROB)と呼ばれる第2の軌道に沿って前記光源によって放射された光の第2の部分を導くためにビームスプリッタ(SF)を用いるステップと、
c)対物レンズ(LO2)を用いるステップであって、前記対物レンズ(LO2)が、前記対物レンズの合焦面に位置する、観察線と呼ばれる線に沿って観察される半透明対象物(OBJ)を照明するために光の前記第2の部分を合焦するように、且つ前記適切に照明された対象物によって後方散乱された光を集めるように、一次元共焦点空間フィルタリングシステム(FS)と協働する、ステップと、
d)前記参照軌道に配置された参照ミラー(MR)に光の前記第1の部分を合焦するために、且つ前記ミラーによって反射された光を集めるために、前記対物レンズ又は別の対物レンズ(LO1)を用いるステップと、
e)前記対象物によって後方散乱された光を前記ミラーによって反射された光と結合させ、且つそれを一次元光センサ(CIM)に導くために前記ビームスプリッタ(SF)を用いるステップと、
f)前記センサ上に前記観察線の一次元画像を形成するために、前記一次元共焦点空間フィルタリングシステム(FS)を用いるステップと、
g)前記参照軌道と前記対象物軌道との間のゼロ光路差を維持しつつ、前記対象物軌道上で観察対象物の一方向走査を実行するために、前記対物レンズ(LO2)の光学軸と平行に前記観察線を変位させるように作動システム(PR、TR1、TR2、TR3、TRO)を用いるステップと、
h)前記一方向走査中の前記観察線の異なる位置に対応する、前記センサによって取得された複数の一次元干渉画像から、前記光学軸に平行に向けられた前記観察対象物の断面の二次元画像を再構成するためにプロセッサ(PR)を用いるステップと
を含む、光断層撮影方法。
【請求項12】
ステップf)がまた、前記観察線(LDO)から生じる光を選択することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップg)が、前記参照アーム及び前記対象物アームの光路長を修正することなく、前記干渉顕微鏡に対する前記観察対象物の、前記光学軸と平行な相対変位を引き起こすことによって実行される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップg)が、前記第1の軌道と前記第2の軌道との間のゼロ光路差を維持するために、前記観察線が位置している合焦面において対物レンズを変位させることによって、且つ前記参照アームの光路長を修正することによって実行される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
前記一方向走査中に、前記観察対象物内の観察線の変位によって引き起こされた分散の変化を補償するステップi)も含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記観察対象物が生物組織である、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排他的ではないが、特に生物学及び医学、並びにとりわけ組織学用途のために意図された光断層撮影装置及び方法に関する。他の可能な用途は、例えば、材料の特性決定に関する。
【背景技術】
【0002】
生検によって取られた組織の組織学研究は、例えば腫瘍を診断するための臨床診療において非常に役立つ。しかしながら、この技術は、実行するには遅く、且つ複雑である。何故なら、それは、生検、即ち調査される組織のサンプルを取り出すことと、顕微鏡によって観察され、且つ解剖病理学者によって解析される薄いスライスにサンプルを切り取ることとを必要とするからである。完全な手順はまた、サンプルの固定、マトリックスにおけるそのオクルージョン、及びその着色を必要とする。それは、とりわけ、速度が根本的に重要である外科手術中に行われる検査の場合には、問題を引き起こす。更に、サンプリングステップは、(例えば脳の場合に)患者にとって厄介であり、危険でさえある。この理由で、非侵入型(特に光学)撮像技術が、生物組織又はより一般的には半透明対象物の内部構造を見るために開発された。従来の組織学的検査に匹敵し得るようにするため、これらの技術は、組織の表面下のミリメートル程度の深さへ原位置でアクセスできるようにし、且つマイクロメートル程度の分解能を示さなければならない。実行の速度、単純性及びコストもまた、考慮される重要なパラメータである。
【0003】
先行技術から周知の撮像技術のいずれも、十分な満足を与えるものではない。
【0004】
走査型光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、「白色」(広帯域)光干渉法に基づく技術である。時間領域におけるそのバージョンにおいて、白色光ビームは、2つの部分、即ち、調査される組織に合焦される部分及び
参照ミラーに合焦される部分に分割される。観察対象物によって反射された(後方散乱された)光は、
参照ミラーによって反射され
た光と
結合され、光検出器によって検出される。光路差が、最大でも放射のコヒーレンス長ほどである場合にのみ、干渉が発生する。干渉計の
参照アームの光路長を修正することによって、対象物において異なる深さにアクセスされる。二次元又は更に三次元の画像が、干渉法(軸方向寸法、即ち深さによる取得を可能にする)及び走査(1つ又は2つの横方向寸法による取得を可能にする)を用いて構成され得る。周波数領域における走査型OCTにおいて、
参照アームは、固定光路長を有し、干渉信号は、スペクトル的に解析される。この点で、A.F.Fercher“Optical coherence tomography−principles and applications”,Reports on Progress in Physics 66(2003)239−303による論文を参照されたい。実際に、OCTは、困難を伴ってのみ、約数マイクロメートルより良い横方向分解能を得ることを可能にする。
【0005】
より最近の技術である全視野OCTは、干渉信号を検出するために二次元画像センサを用いる。ハロゲンランプなど、低い時間的及び空間的コヒーレンスの光源の使用と結合されたこの技術は、走査型OCTと比較して、横方向及び深さ方向(軸方向)の両方で、空間分解能をかなり改善できるようにする。しかしながら、この技術は、対象物が動く可能性がある用途(特に生体内の用途用)には不向きであり、そのときには干渉信号のスクランブルにつながる。更に、それが、(観察対象物の表面と平行な)「表面方向」
断面を提供するのに対して、垂直
断面がより有用であることが多い。更に、その貫入深さは、走査型OCTにおけるよりも浅い。この技術は、文献
EP136418
1及びA.Dubois,K.Grieve,G.Moneron,R.Lecaque,L.Vabre,and A.C.Boccara“Ultrahigh−resolution full−field optical coherence tomography”,Applied Optics 43,p.2874(2004)による論文に説明されている。
【0006】
S.Kim et al.“Simultaneous measurement of refractive index and thickness by combining low−coherence interferometry and confocal optics”,Optics Express,Vol.16,No.8,5516(14 April 2008)による論文は、サンプルの厚さ及びその屈折率を決定することによってサンプルを特徴付けるために、共焦点光学及び干渉法を低コヒーレンス長と組み合わせる方法を説明する。それは、撮像方法ではなく、まして断層撮影法ではない。
【0007】
共焦点顕微鏡法は、観察対象物の小領域から生じる光を選択するために空間フィルタリングを用いる。次に、二次元又は三次元画像が、走査によって再構成され得る。文献
EP244775
4は、スリット色共焦点顕微鏡装置及び方法を説明する。このシステムは、
− 偏光における照明と、
− 強い色収差を有する対物レンズと、
− 顕微鏡の出力部における光のスペクトルを測定するための分光計であって、この測定により、対象物において調査される深さにアクセスすることが可能になる、分光計と
を含む。
【0008】
この装置において、スリットの役割は、スペクトル線(それらの幅は、スペクトル分解能及び従って対象物の深さ方向における空間分解能を定義する)を生成することである。それらは、共焦点フィルタリングの役割を有しない。
【0009】
文献
EP158693
1は、別のスリット共焦点顕微鏡装置及び方法を説明し、その装置及び方法は、線に沿って多数の画素の同時取得を可能にすることによって、画像再構成プロセスを簡略化する。蛍光マーカなしで用いられる共焦点顕微鏡は、走査型OCT及び全視野OCTにおけるよりもかなり浅い貫入深さを提供する。
【0010】
Yu Chen et al.“High−resolution line−scanning optical coherence microscopy”,Optics Letters Vol.32,No.14,15 July 2007,pages 1971−1973による論文は、全視野OCTにおけるよりも高い感度を備えたサンプルの「表面方向」
断面を取得できるようにする、スリット共焦点顕微鏡及び走査型OCTを組み合わせる装置及び方法を説明する。達成される軸方向分解能は、約3μmであり、横方向分解能は、約2μmであり、これらの結果は、非常に高価なフェムト秒パルスレーザを光源として用いることによって得られる。
【0011】
非線形顕微鏡技術(顕微鏡法の2光子、高調波生成、及び他のかかる形態)は、全視野OCTの性能レベルに匹敵する性能レベル(貫入深さ、空間分解能、及び取得速度の点での)を示すが、しかしより高いコスト及び一般により長い取得時間という代償を伴う。
【0012】
実装形態のコスト及び複雑さもまた、X線マイクロ断層撮影(同様に低い取得速度を示す)及び磁気共鳴画像法MRI(その空間分解能は、光学的方法と比較して良くも悪くもない)などの非光学撮像技術の主な欠点に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1364181号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2447754号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1586931号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】A.F.Fercher“Optical coherence tomography−principles and applications”,Reports on Progress in Physics 66(2003)239−303
【非特許文献2】A.Dubois,K.Grieve,G.Moneron,R.Lecaque,L.Vabre,and A.C.Boccara“Ultrahigh−resolution full−field optical coherence tomography”,Applied Optics 43,p.2874(2004)
【非特許文献3】S.Kim et al.“Simultaneous measurement of refractive index and thickness by combining low−coherence interferometry and confocal optics”,Optics Express,Vol.16,No.8,5516(14 April 2008)
【非特許文献4】Yu Chen et al.“High−resolution line−scanning optical coherence microscopy”,Optics Letters Vol.32,No.14,15 July 2007,pages 1971−1973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、先行技術の前述の欠点の少なくとも幾つかを克服することを目的とする。特に、本発明は、高空間分解能(軸方向及び横方向両方で1μm程度)及び満足な貫入深さ(1ミリメートル程度)を備え、高率(数
断面/秒)で(対象物の表面に対して直角な)垂直
断面を取得できるようにする、生物組織などの半透明対象物の内部構造を見るための技術を提供することを目的とする。本発明はまた、生体内及び原位置での用途に適した技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目標を達成できるようにする本発明の1つの主題は、多色光源と、一次元光センサと、干渉顕微鏡であって、いわゆる
参照ミラーが端部に配置されている、
参照アームと呼ばれる第1のアームと、対象物アームと呼ばれる第2のアームと、前記多色光源及び前記センサに前記第1及び第2のアームを結合するビームスプリッタと、少なくとも1つの対物レンズとを含み、前記
参照ミラーが
、前記対物レンズ又は
参照アームに配置された1つの前記対物レンズの合焦面に一致して配置される、干渉顕微鏡と
、前記対物レンズ又は
対象物アームに配置された1つの前記対物レンズの前記合焦面にある観察線と呼ばれる線に沿って、前記対象物アームの端部に配置された観察対象物を照明するために、前記多色光源と協働する一次元共焦点空間フィルタリングシステムであって、前記対象物によって後方散乱され、且つ前記観察線から生じる光を選択するように、且つ前記センサ上の前記線の一次元画像を形成するように配置された
前記一次元共焦点空間フィルタリングシステムとを含む、光断層撮影装置において、一方で
前記参照アームに沿って前記ビームスプリッタから前記
参照ミラーに
行きそして戻る第1の軌道と、他方で
前記対象物アームに沿って前記ビームスプリッタから前記観察線に
行きそして戻る第2の軌道との間のゼロ光路差を維持しつつ、前記対象物の一方向走査を実行するために
、前記対物レンズ又は
対象物アームに配置された1つの前記対物レンズの光学軸と平行に前記観察線を変位させるように構成された作動システムと、前記一方向走査中の前記観察線の異なる位置に対応する、前記センサによって取得された複数の一次元干渉画像から、対象物アームに配置された前記対物レンズ又は1つの前記対物レンズの前記光学軸と平行に向けられた前記観察対象物の
断面の二次元画像を再構成するようにプログラム又は構成されたプロセッサ
とを含むことを特徴とする、光断層撮影装置である。
【0017】
かかる装置の異なる実施形態によれば、
− 前記作動システムは、前記
参照アーム及び前記対象物アームの光路長を修正することなく、前記干渉顕微鏡に対する前記観察対象物の
、前記対物レンズ又は
対象物アームに配置された1つの前記対物レンズの前記光学軸に平行な相対変位を引き起こすように構成され得る。
− 前記作動システムは、前記第1の軌道と前記第2の軌道との間のゼロ光路差を維持するために、前記観察線が位置している合焦面において対物レンズを変位させるように、且つ前記
参照アーム
の光路長を修正するように構成され得る。
− 装置は、前記対象物アーム及び前記
参照アームの少なくとも1つに配置された分散補償装置も含みことができ、前記作動システムが、前記一方向走査中に前記分散補償装置にも作用するように構成される。
− 前記干渉顕微鏡は、前記
参照アームに配置された第1の対物レンズ、及び前記対象物アームに配置された第2の対物レンズを含むリニク顕微鏡であって、前記
参照及び対象物アームが別々である、リニク顕微鏡とすることができる。変形形態として、それは、単一の対物レンズを含むマイケルソン(Michelson)顕微鏡及びミロー(Mirau)顕微鏡から選択することができる。
【0018】
本発明の別の主題は、
a)多色光源を設けるステップと、
b)
参照軌道と呼ばれる第1の軌道に沿って前記光源によって放射された光の第1の部分、及び対象物軌道と呼ばれる第2の軌道に沿って前記光源によって放射された光の第2の部分を導くためにビームスプリッタを用いるステップと、
c)対物レンズを用いるステップであって、
前記対物レンズが、対物レンズの合焦面に位置する、観察線と呼ばれる線に沿って観察される半透明対象物を照明するために光の前記第2の部分を合焦するように、且つ前記適切に照明された対象物によって後方散乱された光を集めるように、一次元共焦点空間フィルタリングシステムと協働する、ステップと、
d)前記
参照軌道に配置された
参照ミラーに光の前記第1の部分を合焦するために、且つ前記ミラーによって反射された光を集めるために、前記対物レンズ又は別の対物レンズを用いるステップと、
e)前記対象物によって後方散乱された光を前記ミラーによって反射された光と
結合させ、且つそれを一次元光センサに導くために前記ビームスプリッタを用いるステップと、
f)前記観察線から生じる光を選択するために、且つその光から前記センサ上に一次元画像を形成するために、前記一次元共焦点空間フィルタリングシステムを用いるステップと、
g)前記
参照軌道と前記対象物軌道との間のゼロ光路差を維持しつつ、前記対象物軌道上で観察対象物の一方向走査を実行するために、前記対物レンズの光学軸と平行に前記観察線を変位させるように作動システムを用いるステップと、
h)前記一方向走査中の前記観察線の異なる位置に対応する、前記センサによって取得された複数の一次元干渉画像から、前記光学軸に平行に向けられた前記観察対象物の
断面の二次元画像を再構成するためにプロセッサを用いるステップと
を含む、光断層撮影方法である。
【0019】
かかる方法の異なる実施形態によれば、
− 前記ステップg)は、前記
参照アーム及び前記対象物アームの光路長を修正することなく、前記干渉顕微鏡に対する前記観察対象物の、前記光学軸と平行な相対変位を引き起こすことによって実行され得る。
− 代替として、前記ステップg)は、前記第1の軌道と前記第2の軌道との間のゼロ光路差を維持するために、前記観察線が位置している合焦面において対物レンズを変位させることによって、且つ前記
参照アームの光路長を修正することによって実行され得る。
− 方法は、前記一方向走査中に、前記観察対象物内
の観察線の変位によって引き起こされた分散の
変化を補償するステップi)も含み得る。
【0020】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例として与えられた添付の図面に関連して提示された説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】リニク干渉顕微鏡に基づく、本発明の実施形態による光断層撮影装置の概略図である。
【
図1B】本発明の前記実施形態の変形形態による光断層撮影装置の詳細である。
【
図2A】マイケルソ
ン干渉顕微鏡の構成に基づく、本発明の他の可能な実施形態である。
【
図2B】
ミロー干渉顕微鏡の構成に基づく、本発明の他の可能な実施形態である。
【
図3A】スリット共焦点フィルタリングの原理である。
【
図3B】スリット共焦点フィルタリングの原理である。
【
図4A】先行技術による光コヒーレンス断層撮影装置を用いることによって取得された画像である。
【
図4B】本発明による光断層撮影装置を用いることによって取得された同じ対象物の画像である。
【
図5A】マイケルソ
ン干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5B】マイケルソ
ン干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5C】マイケルソ
ン干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5D】
ミロー干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5E】
ミロー干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5F】
ミロー干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図5G】
ミロー干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の異なる実施形態である。
【
図6】リニク干渉顕微鏡に基づき、且つ浸漬媒体を用いる本発明の別の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1Aは、本発明の実施形態による光断層撮影装置を示す。この装置は、空間フィルタリング手段(FE、FS)と、干渉計の2つのアーム間の分散差を補償するためのシステム(DCD)と、一次元光センサ(CIM)と、適切にプログラム又は構成されたプロセッサ(PR)と、の追加によって修正された「リニク(Linnik)」干渉顕微鏡から実質的になる。
【0023】
この装置は、多色光源SLPを含む。多色光源SLPは、白熱電球によって概略的に表されているが、しかし、それは好ましくは、発光ダイオード又は発光ダイオードの
集合、スーパールミネッセントダイオード又はスーパールミネッセントダイオードの
集合、ハロゲンフィラメントランプ、アークランプ、更にはレーザ又はレーザベースの光源(例えば「スーパーコンティニューム」発生による光源)など、より高い輝度の光源であり得る。全ての場合に、そのスペクトル幅(中間高さの)は、100nm以上であるのが好ましい。このスペクトル幅が大きければ大きいほど、装置の軸方向分解能は良くなる。帯域中心波長は、可視とするか又は近赤外線に位置することができる。生物学及び医療用途において、典型的には600nm〜1500nmの近赤外線が一般に優先される。光源は、偏光又は非偏光、空間的にコヒーレント又はインコヒーレントとすることができる。(レーザ又はスーパールミネッセントダイオード型の)空間的にコヒーレントな光源は、それらのより大きい輝度のために有利になり得るが、しかし、それらはコヒーレンス「雑音」を導入する可能性がある。スプリアス干渉現象は、有用な干渉信号の相対振幅の低減、及び照明の均一性の不足につながる。更に、空間的にコヒーレントな光源の使用は、装置の全体的コストをかなり増加させる。
【0024】
スリットFE及びレンズLEが、線に沿って観察対象物OBJを照明するために、光源SLP及び干渉顕微鏡と協働する照明光学系を形成する。多色光源が、空間的にコヒーレントな場合に、スリットFEは、マイクロメートル程度の線(より具体的には、線の幅は、撮像システムの横方向分解能の大きさ程度である)に沿って対象物を照明するために、例えば収束又は発散円柱レンズを組み込むビーム形成光学装置によって取り替えることができる。
【0025】
レンズLEによって形成された照明ビームは、ビームスプリッタSF(この場合にはスプリッタキューブ)に導かれる。ビームスプリッタは、「
参照アーム」BREFと呼ばれる干渉顕微鏡の第1のアームに沿って入射ビームの第1の部分を導き、「対象物アーム」と呼ばれる第2のアームBOBJに沿って、入射ビームの第2の部分を導く。第1の顕微鏡対物レンズLO1及びいわゆる「
参照」ミラーMRが、
参照アーム上に配置される。対物レンズは、光をミラーに集め、次に、それによって反射された光を集め、集めた光を
参照アーム又は軌道に沿って逆方向に導く。前記第1の対物レンズLO1の焦点距離と同一の焦点距離の第2の顕微鏡対物レンズLO2が、対象物アーム上に配置される。対物レンズは、観察対象物OBJ上に光を合焦させ、次に、それによって後方散乱された光を集め、対象物アーム又は軌道に沿って逆方向に、集めた光を導く。典型的には、対物レンズは、0.1〜1.0の開口数(従来の走査OCTに反して、用いられる開口数を制限するであろう被写界深度制約はここにはない)を有する。これらの対物レンズが、空気中にあるか又は浸漬され得ることに注目することは興味深い。対照的に、全視野OCTの場合には浸漬対物レンズが用いられるが、それは、或る用途では制限され得る。
【0026】
ビームスプリッタSFは、光ビームを干渉させ得る2つの対物レンズから生じる光ビームを再結合し、いわゆる「観察」アームBOBSに沿って光ビームを向け直す。
【0027】
干渉縞のコントラストは、干渉する2つのビームが同じ強度を示す場合に最大である。従って、弱く反射する
参照ミラーを用いること、又は
参照軌道上に減衰器を設けることが有利になり得る。
【0028】
一次元空間フィルタFSが、観察アーム上に配置される。
図1Aの実施形態において、それは、2つのレンズLF1、LF2を含む共焦点フィルタである。スリットFOが、レンズLF1の後側焦点面に配置される。レンズLF2は、一次元光センサCIM上にスリットFOの画像を形成する。スリットFOは、光源SLPに関連するスリットFEと光学的に共役である。換言すれば、干渉顕微鏡は、スリットFO上にスリットFEの画像を形成し、逆も同様である。
図3A及び3Bに関連して後で説明するように、それは、「共焦点」構成である。実際に、光源SLP、スリットFE、レンズLE、スプリッタSF、対物レンズLO2、空間フィルタSFは、スリット共焦点顕微鏡を形成する。
【0029】
単一の画素
(正方形若しくは長方形)行又は少数(典型的には多くて10若しくは20、最大限で100)の画素行からなる一次元光センサCIM(線形カメラ)は、フィルタの出力部で光を検出する。マトリックス画像センサの単一の画素行又は少数(通常10若しくは20まで)の画素行の組み合わせを隣接して又は近くで用いることもまた可能である。
【0030】
(
図1Bに示されている)変形形態として、空間フィルタリングは、単レンズLFの焦点面に一次元光センサCIMを配置することによって、フィルタリングシステムFSなしに実行することができる。
【0031】
更に、スリットFOが、検出器側に存在する(又は検出器自体が、前に説明したようなスリットとしての役割を果たす −
図1B)場合に、潜在的に検出感度が低下することを代償として、照明スリットFE(又はそれに取って代わるビーム形成システム)を省略することが可能である。
【0032】
装置はまた、複数の平行移動ステージ(TR1、TR2、TR3及びTRO)並びにそれらを駆動するプロセッサPRからなる作動システムを含む。これらの全ての平行移動ステージが、必ずしも同時に存在する必要があるわけではない。特に、TROが存在する場合、TR1及びTR2を省略することができ、反対にTR1及びTR2が存在する場合、TROを省略することができる。
【0033】
参照ミラーMR及び対物レンズのLO1アセンブリは、前記作動システムの第1の平行移動ステージTR1によって軸方向に変位される。従って、対物レンズLO2もまた、前記作動システムの一部を同様に形成するそれぞれの平行移動ステージTR2によって変位されなければならない。対物レンズLO2が、距離「e」だけ下げられた(即ち、対象物の方へ平行移動された)場合に、
参照ミラーMR及び対物レンズLO1は、
【数1】
だけ変位される。n
imは、対物レンズの浸漬媒体(ゲル、液体又は空気(n
im=1))の屈折率であり、n
objectは、対象物の屈折率である。
【0034】
変形形態として、干渉顕微鏡の異なる要素を静止させておくことによって、単に対象物OBJと干渉顕微鏡との間の軸方向距離を変えることが可能であろう。そのために、平行移動ステージTROによって、全ての干渉顕微鏡(変位システムは表現されていない)又は対象物OBJを変位させることが可能である。これは、特に浸漬対物レンズに関して検討することができる。
【0035】
それは、全ての場合に、対象物OBJが調査される深さを修正する効果がある。対物レンズLO2の焦点面に(より一般的には合焦面に)位置する観察線LDOは、前記対象物の「深さ方向」、即ち前記対物レンズの光学軸の方向の走査をもたらす。作動システムは、
同時に、この観察線
を変位させ、且つ
参照軌道と対象物軌道(対象物アームの端部を構成すると考えられる観察線まで)との間の光路差が、ゼロのままか又は最大でも多色光源のコヒーレンス長及び対物レンズの被写界深度未満であることを保証しなければならない。この走査は、対象物アームBOBJに沿って伝搬する光によって通過される対象物の厚さ、及び従って、それが経験する分散を
変化させる。装置DCDが、分散のこの
変化を補償するために設けられる。装置DCDは、干渉計のアームの1つに配置された一定の分
散を備えた要素
ED1(例えば、対象物OBJの分散に近い分散を有する材料であるガラスのブロック)、及び干渉計のもう一方のアームに配置された可変分
散を備えた要素
ED2を含む。要素ED2は、互いに対面して配置された2つのプリズムからなる。プリズムの1つをもう一方に対して変位させることによって、通過されるガラスの厚さ、及び従って、このアームにおける光軌道が修正される。光軌道に対して傾斜されたガラスプレートを用いることもまた可能である。通過されるガラスの厚さは、傾斜角に影響を及ぼすことによって修正される。他のシステムを検討することができる。一般概念は、撮像深さを問わず、干渉計の2つのアームにおける分散を等しくするために(又は少なくとも差を縮小するために)、アームの1つにおける光学的厚さを変更することが必要であるというものである。
【0036】
他の実施形態において、分散補償装置は、より単純に浸漬媒体(典型的には、対象物の屈折率に近い屈折率を備えた液滴)からなることができ、対象物アームにおけるその厚さは、対物レンズが観察対象物に近付くと共に減少する(
図5A〜5Fを参照)。浸漬媒体の厚さの減少は、対象物において通過される厚さの増加によって補償される。従って、対象物アームにおける分散は、
参照アームにおける分散と等しく、一定のままである。
【0037】
図1の実施形態において、装置DCDは、前記作動システムの一部を同様に形成する第3の平行移動ステージTR3によって作動される。それは、もう一方の変位と同期された分散の動的補償をもたらすことを可能にする。
【0038】
変形形態として、光路及び分散の両方を修正するために、干渉計のアームの1つに配置された、ガラスなどの透明な分散材料の可変厚さを用いることが可能である。この可変厚さは、例えば、
図1の装置DCDのような二重プリズム、又は単純な方向付け可能なプレートを用いてもたらすことができる。この場合、対物レンズLO1及びミラーMRアセンブリを変位させることが不必要になり得る。
【0039】
検出器CIMは、対象物において撮像される線の複数の異なる位置に対応する線画像を取得する。この線画像スタックは、対象物の垂直
断面の画像を取得するために、デジタル的に処理することができる。
【0040】
単純なアプローチは、多数の位相シフトされた線画像をデジタル的に組み合わせることを含む、いわゆる位相シフト干渉法を用いることを含む。例えば、軸方向においてλ/8だけ離間された観察線の位置に対応する4つの線画像を組み合わせることが可能であり、λは、対象物における照明光の中心波長である。それは、2つの隣接画像間のπ/2の位相シフトに対応する。E
1、E
2、E
3、E
4が、これらの画像を示すために用いられる場合に、(E
1−E
3)
2+(E
2−E
4)
2は、干渉信号の振幅(即ち、再構成された画像の振幅)に対応し、
【数2】
は、干渉信号の位相に対応する。この位相は、対象物に関する構造及び断層撮影情報以外の情報を提供することができる。位相オフセット又は位相シフトの概念と、対象物及び
参照アーム間のゼロと等しい光路差に観察線が常に対応するという上記の事実との間に矛盾がないことに注目することが極めて重要である。実際に、光を後方散乱させる可能性がある対象物のどのような構造も、それが観察線と一致する時点だけでなく、その前後にも観察される(何故なら、コヒーレンス「ゲート」及び共焦点フィルタリングによって導入されたゲートが、λより大きい幅を有するからである)。従って、実際に、軸方向走査中に連続して取得される画像に対するこの構造の寄与間に位相オフセットが存在する。
【0041】
変形形態として、線画像スタックは、干渉縞のエンベロープ(干渉信号の振幅)を抽出し、且つ信号の非変調部分(非干渉信号)を削除するために、フーリエ解析によって処理することができる。
【0042】
ここで、本発明に従って、軸方向断面の画像を生成するために撮像される全ての深さにわたる対象物の一方向走査がまた、干渉信号を同時に取得できるようにすることが強調されるべきである(明らかに、次に、第2の一方向走査が反対方向で実行され得る)。しかしながら、Yu Chenらの上記の技術及び全視野OCTの両方において、干渉信号を取得するための対象物の深さの走査は存在しない。干渉信号は、典型的には1マイクロメートル未満の、全範囲にわたる
参照ミラーの変位によって生成される可変及び周期的位相シフトを用いて取得される。
【0043】
対象物の三次元画像が、隣接する断面画像を並置することによって取得され得る。それは、取得線、及び対物レンズLO2の光学軸の両方に直角な方向における走査を必要とする。この走査は、横方向平行移動ステージによって対象物(又は同等の方法で、干渉顕微鏡若しくは照明線)を変位させることによって行うことができる。
【0044】
同じプロセッサPRが、アクチュエータTR1、TR2、TR3、及び必要ならばTRO(これらは、平行移動ステージでなくてもよく、又は単に平行移動ステージでなくてもよい)を駆動し、且つセンサCIMによって取得された線画像スタックを処理することができ、これらのタスクは、相互依存している。プロセッサPRは、1つ又は複数のマイクロプロセッサを含む専用装置、又は適切なインターフェースカードを装備したコンピュータとすることができる。変形形態として、作動システムを駆動し、且つ画像を再構成するために、2つの別個のプロセッサを用いることができる。
【0045】
本発明は、リニク干渉顕微鏡に基づき、特定の実施形態に関連して説明された。しかしながら、他のタイプの干渉顕微鏡が存在し、且つ本発明を実施するのに適している。挙げることができる例は、
参照ミラーMRを備えた単一の対物レンズLOと、前記対物レンズに固定され、その光学軸に沿って整列されたビームスプリッタとを含むマイケルソン(
図2A)及びミロー(
図2B)顕微鏡である。これらの機構は、リニクの機構より単純で一層コンパクトであるが、しかし干渉計の要素の可能な変位と同様に、調整可能な分散補償装置の導入はより困難である。干渉計内の部品を移動する必要なしに、干渉計の2つのアーム間の分散差を補償するために浸漬媒体IMを用いるマイケルソン及びミロー構成に基づく実施形態の例が、
図5A(空気中の対物レンズを備えたマイケルソン構成)、
図5B(浸漬対物レンズを備えたマイケルソン構成)、
図5C(観察窓HO及び空気中の対物レンズを備えたマイケルソン構成 − 窓は、穴によって取り替えることができ、且つ/又は対物レンズは、浸漬対物レンズとすることができる。窓が存在する場合、同じ厚さの透明プレートが
参照アームに設けられなければならないことに注意されたい)、
図5D(空気中の対物レンズを備えたミロー構成)、
図5E(浸漬対物レンズ及び窓を備えたミロー構成)、
図5F(空気中の対物レンズ及び窓を備えたミロー構成)、並びに
図5G(浸漬対物レンズを備え、窓のないミロー構成)に示されている。
【0046】
図5D〜5Gの装置において、
参照ミラーは、例えば、金属若しくは誘電体の堆積によって生成されるか、又はプレート自体の屈折率によって
引き起こされる小さい反射ゾーンをその中心に有する透明プレートによって形成される。
図5C、5D及び5Gの実施形態において、反射ゾーンは、透明プレートの後面上に形成され、それは、対象物アームにおいて、窓(
図5C)又はビームスプリッタ(5D、5G)によって導入された分散を補償する役割を果たす。そうでなければ、それは、プレートの前面上に形成される。更に、
図5D〜5Gの実施形態において、ビームスプリッタは、その面の1つに適切な反射係数(典型的には10%〜50%)を有するプレートからなる。スプリッティングは、
図5D及び5Gの場合には、このプレートの前面で、且つ
図5E及び5Fの場合には後面で行われる。「前」面及び「後」面は、プレートに入射する光ビームの伝搬方向に関連して定義される。
【0047】
図6は、本発明の別の実施形態を示す。その実施形態において、
− 干渉顕微鏡MIは、リニクタイプである。
− 対物レンズLO1、LO2は、浸漬タイプである。従って、分散補償は、浸漬媒体IMの2つの滴によってもたらされる。これらの滴のそれぞれは、対物レンズ(LO1、LO2)と透明プレート(LT1、LT2)との間に捕捉される。
参照ミラーは、プレートLT1の(対物レンズLO1と反対側の)後面(プレートの反射係数を調整するために恐らく処理される面)によって生成され、一方で、対象物OBJは、プレートLT2の後面に押し付けられる。
− 多色光源SLPは、空間的にコヒーレントである。それは、主要な多色光源を含み、その光源は、特に、1〜20μm程度の時間的コヒーレンス長を示すスーパールミネッセントダイオードDSL、及びシングルモード光ファイバFMM(任意選択)である。スーパールミネッセントダイオードによって生成された光は、ファイバFMMのいわゆる入力端部に注入され、前記ファイバの反対側の(出力)端部から出て、且つレンズLEによってコリメートされる。
− 照明の空間的コヒーレンスは、特に単純な共焦点フィルタリングを生成できるようにするが、この共焦点フィルタリングは、いかなるスリットも必要とせず、且つそれは、一次元タイプの、光源の側部(実際には光ファイバの出力端部)で発散する1つのみの円柱レンズLC及びセンサCIMの前面に配置された球面レンズLFを含む。円柱レンズLCは、光ビームを図の面において発散させ、直角面で発散させないことによって、非点収差を生成する(点線PPが、図の平面における光ビームの
断面を表すのに対して、破線PLは、図に直角な平面における光ビームの
断面を表す)。その結果は、図の平面に従って向けられた線の形状をした対象物及び
参照ミラーの照明である。レンズLFは、一次元光センサ上にこの線の画像を生成する。観察線から生じない光は、減衰された強度でセンサの画素の単一の線に達し、従って、一次元共焦点フィルタリングをもたらす。変形形態として、システムを同様に非点収差にする収束円柱レンズを用いることが可能であろう。
− 軸方向走査は、対象物OBJ及び透明プレートLT2に対して、全体として(ファイバFMMの出力端部、並びにレンズLE及びLCによって形成される非点収差光学系を含む)干渉顕微鏡を変位させることによって実行される。光センサCIM及び関連するレンズLFは、干渉顕微鏡と共に等しく変位させることができるか、又はできない(第2の選択肢が、図に示されている)。しかしながら、センサCIMが、レンズLFの焦点面(より一般的には合焦面)に留まることが必要である。
【0048】
図3A及び3Bは、スリット共焦点顕微鏡の動作原理を再検討する。空間フィルタリングスリットFOに対して直角の平面(
図3Aにおける平面zy)において、スリットFOは、スリットFEが、対物レンズLOによって合焦される対象物の領域から生じる光(連続線によって表されるビーム)が通過できるようにし、且つ対象物の他の領域から生じる光(例えば点線ビーム)を減衰させる。スリットと平行な平面(
図3Aにおける平面zx)において、かかるフィルタリングは行われない。結果は、「観察線」LDOが、対物レンズの合焦面において画定され、且つスリットFE及びFOのように向けられるということである。合焦面は、光学軸に直角の平面であり、そこに、存在する場合には、入力スリットFEの画像が形成される。より一般に、対象物アームの合焦面は、観察線LDOが形成される面である。その共役面は、観察アームにおける合焦面である。
参照アームの合焦面は、このアームにおいて照明線が形成される面である。
図1A、1Bにおけるように、入力光ビームが、観察又は照明線に直角な平面においてコリメートされる場合、合焦面は対物レンズの焦点面と一致する。
【0049】
従って、本発明による装置は、対象物の決定された領域から生じる光を選択できるようにする2つの手段、即ち共焦点フィルタリング、及び「白色」光干渉法によって画定された「コヒーレンスゲート」を含む。これらの手段は、相補的である。共焦点フィルタリングは、光の散乱によって、且つ漂遊反射によって生成された「背景」を低減することによって、干渉撮像の性能レベルを向上させる。従って、センサのダイナミックレンジのより大きい部分が、有用な干渉信号を検出するために用いられる。
【0050】
実際に、生物組織は、強く散乱する。弾道光子(単一の後方散乱以外の散乱を経験していない)の数は、深さと共に指数関数的に減少する。ここで、干渉法(低いコヒーレンス長を備えてさえいる)は、対象物において撮像された領域から生じる弾道光子と、対象物の他の領域から生じ、且つ経験した散乱のために同じ長さの光軌道をカバーした光子との間を識別できるようにしない。結果は、画像にアーチファクトを生成し且つ到達可能な撮像深さを制限する、有用な干渉信号に追加されるスプリアス干渉信号が存在するということである。本発明の装置において、共焦点フィルタリングは、撮像されるゾーンから生じる弾道光子以外の大量の光子を除去し、この背景を削除する。実際には、スリット共焦点フィルタリングは、一次元でのみ機能するために完全ではないが、しかし、この「背景雑音」の低減はかなり大きいままである。
【0051】
共焦点フィルタリングのみと比較して、干渉検出の使用は、有用な信号のかなりの増幅を可能にする(「純粋な」共焦点顕微鏡の場合、それは、取得深さを制限する低い信号対雑音比となる)。従って、本発明の装置において、関連する2つの原理、即ち低いコヒーレンス長を備えた干渉法による顕微鏡法及びスリット共焦点顕微鏡法間に相乗作用(簡単な並置ではない)が存在する。
【0052】
スリット共焦点フィルタリングの代わりに、穴部を通した共焦点フィルタリングを使用することは、到達可能な撮像分解能及び/又は深さの点でいかなる重要な利点も提供せずに、画像の取得を遅くするであろう(追加スキャンが必要になるであろう)。
【0053】
その装置は、たとえ共焦点フィルタリングが有効でなくても、やはり許容可能な性能レベルを示すことができる。この状況は、比較的大きい被写界深度(典型的には10μm以上)の対物レンズ
が、且つ/又は、極めて広い入力及び出力スリット
が、且つ/又は大きいサイズの画素(例えば長方形)を有するか若しくは幾つかの画素行を有する一次元検出器が用いられる場合に発生する。この場合に、軸方向分解能及び到達可能な撮像深さの点で性能レベルを決定するのは、低い時間的コヒーレンスを用いる干渉検出である。しかし、線に沿った照明及び一次元センサを用いてこの線を検出することの利益は、やはり存在する。何故なら、それが、やはり垂直
断面において高速で画像を生成できるようにするからである。
【0054】
本発明の技術は、生体内の用途には全視野OCTよりもはるかに良く適している。これらの用途において、「対象物」は、干渉信号の取得中に動く可能性がある生体(例えば患者)であり、干渉信号を
乱雑にする。本発明によれば、干渉信号は、例えば10
−4秒程度の非常に短い時間に各線用に取得され、それは、対象物の動きの問題を克服することを可能にする。対照的に、全視野OCTにおいて、干渉信号は、マトリックスカメラによって取得された複数の二次元画像の組み合わせによって取得され、それには、はるかに長い時間がかかる。
【0055】
Yu Chenらの前述の技術と比較して、本発明は、「表面方向」画像より有用なことが多い、観察対象物の垂直スライスの画像を直接提供するという利点を提供する。
【0056】
空気中の0.15の開口数を備えた対物レンズ及びリニク構成の本発明のプロトタイプが、ハロゲンランプ照明を用いて生成された。このプロトタイプは、微細構造を含む粒状プラスチック、非散乱領域及び蛍光体層を囲む2つのプラスチック層を含む、約500μmの厚さを備えた赤外線ビーム用のディスプレイカードを観察対象物として用いることによってテストされた。同じ対象物は、市販されている走査型OCT装置(ThorLabs)を用いることによって撮像された。
図5Aは、市販されている装置で取得された画像(垂直スライス)を示し、
図5Bは、本発明のプロトタイプで取得された画像を示す。本発明の場合に分解能がより優れている点に注目することができる。
【0057】
適切な寸法取りを用いれば、本発明による装置が、軸方向及び横方向の両方において、1μm程度の実質的に「等方性の」空間分解能を示し得ることに注目することは興味深い。