【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの側面では前記課題は、特に負荷とりわけプラズマ放電のインピーダンスに対する高周波電力発生器の出力インピーダンスのインピーダンス整合および/または電力制御のための制御装置であって、
a.第1の目標値と第1の瞬時値と補正値との供給を受ける第1の制御器であって、当該補正値を考慮して第1の操作値を生成するように構成された第1の制御器と、
b.制御値の供給を受ける補正値算出装置であって、前記制御値および設定値を考慮して補正値を算出するように構成された補正値算出装置と、
を備えており、
c.補正値算出装置および第1の制御器は、制御値が設定値から偏差する場合、第1の制御器の調整がなされた状態において第1の瞬時値を第1の目標値から偏差させるように、補正値が当該第1の制御器に影響を及ぼすように構成されている
制御装置により解決される。
【0013】
よって、本発明の制御は、通常のように、調整がなされた状態において、瞬時測定値が目標値に一致するように第1の操作値を生成する構成ではなく、瞬時量と目標値との間に意図的に偏差を生じさせるものとなっている。たとえば第1の瞬時値として、負荷たとえばプラズマ放電により反射された電力Prを検出することができる。この反射電力は、可能な限り小さくなければならない。よって第1の目標値としては、たとえば0Wの反射電力を設定することができる。
【0014】
インピーダンス整合を行うため、基本周波数を変化させることができる。よって、第1の操作値は、反射電力がちょうど0Wにならないように基本周波数を調整すべく生成される。このことは、補正値算出装置において、対応する補正値を生成し、第1の操作値を求めるときにこの補正値を考慮することにより行われる。こうするためにはたとえば、第1の操作値自体を制御値として補正値算出装置へ供給することができる。また、操作値に依存する他の量を制御値として補正値算出装置へ供給することも可能である。これはたとえば、当該操作値を用いて調整される測定対象の周波数とすることができる。またこれは、整合回路において当該操作値によって影響を受ける量、たとえば整合回路のリアクタンスの調整、特に容量の調整とすることも可能である。その際には操作値は、整合回路に対する操作値、特に整合回路のリアクタンスに対する操作値とすることができる。また、第1の操作値を周波数調整のための設定値とし、周波数に対する当該設定値の作用によって間接的に整合回路に、特にそのリアクタンスにも影響を及ぼすことが可能である。つまり、制御値は第1の操作値とすることができ、または、第1の操作値によって直接的もしくは間接的に影響を受ける量とすることもできる。
【0015】
瞬時値はしばしば、たとえば整合回路を制御する制御装置等である第2の制御装置によっても調整されることが多いので、上述のプロセスにより、全体的に安定したインピーダンス整合を達成することができる。
【0016】
したがって、本発明の制御装置では、高周波電力発生器の周波数は制御偏差を最小にするように調整されるのではなく、その所望の小さな不整合によって整合回路の制御が常に、最終的に実周波数が有利な周波数と一致するまで制御する刺激を有するように、有利な周波数(設定値)の方向の傾向を有する。
【0017】
上記にて既に言及したように、補正値は第1の操作値とすることができる。
【0018】
また、補正値は、第1の操作値に依存して生じる、算出された瞬時値とすることもできる。
【0019】
第1の操作値は、高周波電力発生器の周波数に対する操作値とすることができる。
【0020】
第1の操作値は、整合回路の構成要素の量に対する操作値、特にリアクタンスの量に対する操作値、有利には容量に対する操作値とすることができる。
【0021】
補正値は、高周波電力発生器の算出された周波数とすることができる。
【0022】
特に補正値算出装置および第1の制御器は、制御値が設定値から偏差する場合、第1の制御器の調整がなされた状態において補正値の影響によって第1の瞬時値を第1の目標値から偏差させるように、補正値が当該第1の制御器に影響を及ぼすように構成することができる。特に、第1の制御器の調整がなされた状態では、第1の瞬時値を補正値の影響によって変更することができる。
【0023】
補正値は、算出された量、またはかかる量に対する第2の制御装置の操作値とすることができる。これは、整合回路の構成要素の量、特にリアクタンスの量、有利には容量とすることができる。
【0024】
その際には、補正値は、第1の操作値に間接的に依存することも可能である。第1の操作値はたとえば高周波電力発生器の周波数に対する操作値とすることができ、補正値は、算出された量、またはかかる量に対する第2の制御装置の操作値とすることができる。これは、整合回路の構成要素の量、特にリアクタンスの量、有利には容量とすることができる。
【0025】
本発明の制御装置は、上述の第2の制御装置を設けなくても、利点を奏することができる。すなわち、本発明の制御装置自体によって、効率改善を達成することもできる。高周波電力発生器は反射電力を許容することができ、こうするために、反射電力による損失がより多く補償されるように当該高周波電力発生器が格段に高効率で動作する周波数範囲で、動作することができる。
【0026】
また、特に外部整合回路の更なる制御によって(周波数の)内部制御に影響を及ぼすことによっても、インピーダンス整合の制御の安定化が実現される。
【0027】
補正値算出装置は、設定値からの補正値の偏差を減少させるように補正値を決定する構成とすることができる。たとえば、設定値として基本周波数を指定することができ、かつ補正値として、高周波電力発生器の検出された実基本周波数を使用することができる。これにより補正値算出装置は、所定の基本周波数に対する実基本周波数の偏差を減少させる試みを行う。これにより、調整された基本周波数が許容周波数範囲外になるのを防止することができる。設定値としては、単独の周波数を使用できるだけでなく、周波数範囲を使用することもできる。
【0028】
設定値として周波数を使用する代わりに、設定値として整合回路のリアクタンスを設定すること、または、整合回路のキャパシタのまさに操作量を設定することも可能である。
【0029】
第1の操作量は、目標値からの第1の瞬時値たとえば反射電力の偏差を規定通りに達成するように整合回路ないしは整合回路のリアクタンスを調整するために、使用することができる。
【0030】
制御値は、整合回路の検出された実リアクタンスに相当することができる。
【0031】
制御器は積分器を有することができ、この積分器は特にデジタル積分器である。
【0032】
補正値を積分器の積分成分に加算すること、または当該積分成分と乗算することができる。特に、積分器のフィードバックループにおいて補正値を加算または乗算することができる。その際には、制御値が設定値と一致する場合、具体的にはたとえば検出された基本周波数または基本周波数の操作値が所定の周波数と一致するとき、補正値を0(ゼロ)とすることができる。差分「制御値−設定値」が大きくなるほど、補正値をより負とすることができる。
【0033】
差分「設定値−補正値」が大きくなるほど、補正値をより正とすることができる。
【0034】
乗算を行う場合には、制御が設定値の方向、具体的にはたとえば所定の周波数の方向を優先するように、積分器を常時操作することができる。すなわち、偏差が正である場合には積分器の内容を常時ある程度低減させ、周波数偏差が負である場合には積分器の内容を常時ある程度増大させる。
【0035】
制御器は比例制御器を有することができ、この比例制御器に補正値が供給される。これにより、実周波数と有利な周波数ないしは所定の周波数との偏差の絶対値が大きくなるほど、補正値は第1の瞬時値と第1の目標値との偏差を低減することができる。
【0036】
補正値は、設定値と制御値との偏差の関数、特に線形関数もしくは2次関数または他の任意の関数とすることができる。
【0037】
補正値算出装置は、別の制御器として構成することができる。その際には、補正値は別の操作値となり、設定値は別の目標値となり、補正値は別の瞬時値となる。たとえば別の制御器は、周波数を制御するためのものとすることができる。これに代えて別の制御器は、整合回路(「マッチングボックス」とも称される)の構成要素、特にリアクタンスを制御するように構成することもできる。
【0038】
補正値算出装置および/または第1の制御器を制御するコントローラを設けることができる。たとえばコントローラは、所望の基本周波数からの周波数偏差を所望の範囲内にするように介入を行うことができる。
【0039】
本発明の範囲にはさらに、本発明の第1の制御装置と第2の制御装置とを備えた制御システムも包含される。第2の制御装置には、第1の瞬時値または第1の瞬時値と関連する瞬時量を供給することができる。その際には、第2の制御装置は、第2の操作値を生成するように構成されている。たとえば第1の制御装置は、高周波電力発生器の出力端における反射電力を制御するように構成することができ、その際には、第1の制御器はそのためのものとする。上述の別の制御器すなわち補正値算出装置は、基本周波数を制御するように構成することができる。第2の制御装置も同様に、高周波電力発生器の出力端における反射電力ないしは当該反射電力と関連する量を制御するように構成することができる。特に外部整合回路を設けることができ、この外部整合回路は別個の測定装置を用いて、反射電力またはこれと関連する他の量を検出する。当該量は特に、整合回路の構成要素、特にリアクタンス、有利にはキャパシタを調整ないしは制御することにより制御することができる。第2の操作値は、当該構成要素を適切に調整するためのものとされる。
【0040】
もちろん、第1の制御装置を用いて整合回路の構成要素、特にリアクタンス、有利にはキャパシタを制御し、第2の制御装置を用いて高周波電力発生器の励起周波数ないしは基本周波数を制御することも可能である。
【0041】
本発明の範囲にはさらに、高周波電力発生器と、第1の瞬時値を求めるための測定装置と、本発明の制御装置とを備えた高周波発生装置も包含される。
【0042】
第1の操作値が高周波電力発生器の周波数に影響を及ぼすように構成することができる。
【0043】
本発明の範囲にはさらに、高周波電力発生器と、第1の瞬時値を求めるための測定装置と、本発明の制御システムとを備えた高周波発生装置も包含される。
【0044】
さらに本発明は、高周波電力発生器とプラズマ放電部と、第1の瞬時値を求めるための測定装置と、本発明の制御装置とを備えたプラズマ励起システムであって、高周波電力発生器によって生成された電力がプラズマ放電部に供給されるようにプラズマ放電部が高周波電力発生器に接続されているプラズマ励起システムも包含する。
【0045】
本発明の範囲にはまた、高周波電力発生器とプラズマ放電部と、第1の瞬時値を求めるための測定装置と、本発明の制御システムとを備えたプラズマ励起システムであって、高周波電力発生器によって生成された電力がプラズマ放電部に供給されるようにプラズマ放電部が高周波電力発生器に接続されているプラズマ励起システムも包含される。
【0046】
本発明はまた、特に、負荷とりわけプラズマ放電のインピーダンスに対する高周波電力発生器の出力インピーダンスのインピーダンス整合および/または電力制御のための方法であって、
a.第1の目標値と第1の瞬時値と補正値とから、第1の制御器の第1の操作値を生成するステップと、
b.制御値と設定値とから補正値を算出するステップと、
を有し、
c.制御値が設定値から偏差する場合、第1の制御器の調整がなされた状態において第1の瞬時値を第1の目標値から偏差させるように補正値を生成する
方法にも関する。
【0047】
かかる方法により、インピーダンス整合の調整を安定化させることができる。
【0048】
これに代えて、またはこれと共に、第1の操作値をコントローラによって監視し、第1の操作値に基づいて補正値を決定することも可能である。
【0049】
さらに、第1の操作値の生成および補正値の算出を第1の制御装置において行い、第1の瞬時値またはこれと関連する値をさらに、第2の制御装置によって制御することも可能である。その制御方向は両制御装置において合意的(同時)に決定することができる。合意制御の場合には特に、第1の制御装置の第1の制御器は制御偏差算出装置を備えることができ、この制御偏差算出装置には第1の瞬時値および第1の目標値が供給され、制御偏差算出装置は、第1の瞬時値と第1の目標値とから制御偏差を算出するように構成されており、この制御偏差は、第1の操作値を求める際に考慮される。
【0050】
これに代えて、制御方向を連続的に、すなわち試行錯誤を用いて決定することも可能である。かかる連続制御の場合には、誤差量の絶対値および正負を同時に求める必要はなく、試行錯誤を用いて周波数ないしはリアクタンスの制御方向(良好/不良な整合)を求める。たとえば、最適な整合に対応する周波数から有利な周波数の方向への周波数の離調は、その周波数オフセットに許容可能な不整合に達するまで行うことができる。この方向は、ステップ試行によって特定される、整合曲線の勾配によって定まる。
【0051】
第1の制御装置が整合回路のリアクタンスを調整するために使用される場合、有利には、基本周波数に対する操作の依存性がより高い、整合回路のリアクタンスを操作する。
【0052】
特に、制御値が設定値から偏差する場合、補正値の影響により、第1の制御器の調整がなされた状態において第1の瞬時値を第1の目標値から偏差させることができる。特に、第1の制御器の調整がなされた状態では、第1の瞬時値を補正値の影響によって変更することができる。
【0053】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明している。この実施例の記載と特許請求の範囲から、本発明の別の特徴および利点が明らかである。図面には、本発明に重要な詳細を示している。図面中に示された構成は必ずしも実寸の比率通りではないと解すべきであり、本発明の特徴を明確に見やすくするように示されている。これら複数の特徴は単独で実現することができ、また、本発明の一実施形態において任意の組合せで実現することができ、この任意の可能な組合せは複数存在する。
【0054】
概略的な図面に、本発明の実施例を示しており、以下詳細に説明する。