【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の個人医療情報集約システムは、複数の各医療機関で収集された複数の受診者毎の医療情報を、各受診者に予め付与された固有の識別情報に対応付けて集約して保管し、医療従事者および/または各受診者の要求に応じて、前記各受診者の医療情報を予め定めるルールに基づき閲覧可能にする個人医療情報集約システムにおいて、前記受診者が体調に不具合を生じた際に収容される収容場所において、前記識別情報を取得する取得手段と、前記収容場所において、前記受診者の処置に関与する医療従事者が、該受診者の医療情報にアクセス(ダウンロード)するためのID,パスワードなどを用いた認証を行う認証手段と、前記認証手段で認証が得られると、前記収容場所において、前記識別情報に対応付けられた受診者の医療情報を取得し、前記医療従事者に表示する表示手段とを含むことを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、複数の各医療機関で収集された複数の受診者毎の現況のカルテや投薬情報、或いは過去の病歴なども適宜含む医療情報を、管理センターなどで、各受診者に予め付与された固有の識別情報に対応付けて受診者毎に集約して保管し、医療従事者、或いは受診者本人や家族などからの要求に応じて、前記各受診者の医療情報を、予め定めるルールに基づき閲覧可能にする個人医療情報集約システムは、受診者や家族が、セカンドオピニオンなどのために自身の医療情報を携えて新規な外来へ行ったり、地域の保険組合や医師会が、投薬の重複が無いか確認したり、レセプト請求の不備が無いかを確認したりするのに、非常に有効である。或いは、他の病院や診療科が、以前の医療情報を得るために、煩雑で時間の掛かる紹介などの作業を無くすことができる。
【0012】
前記医療情報の閲覧のために予め定めるルールは、たとえば医者が見られるレベル、薬局で見られるレベル、受診者自身で見られるレベルで、医療情報の制限を行う等である。前記識別情報は、IDナンバーなどで、各受診者には1つだけ割当てられ、診察券に記載されるような医療機関毎に割当てられるようなものではない。
【0013】
本発明は、このような個人医療情報集約システムを利用して、受診者が体調に不具合を生じた時、たとえば救急搬送時に、救急車内や搬送先の病院などの受診者の収容場所において、救護処置を行う救命士、医師、看護士などの医療従事者が、前記医療情報を活用し、適切な処置や事前準備を行えるようにする。詳しくは、先ず受診者の識別情報を取得する必要があり、取得手段を設ける。その取得手段が、具体的には後述するようにして、識別情報を取得すると、前記医療従事者が、認証手段において、IDやパスワードなどを用いて、自身が受診者の医療情報にアクセス(ダウンロード)する資格を有しているかどうかの認証を行い、認証されると、医療情報にアクセス(ダウンロード)して、表示手段に表示させる。
【0014】
したがって、管理センターなどで集約して管理されている各個人の医療情報を有効に用いて、救急時においても、医療従事者が適切な対応を取り易く、救命率を上げることができる。
【0015】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記受診者はネットワークを介して、新規の外来などの所望する時点(別病院に掛かる際など)に、適宜自身の医療情報にアクセス可能な専用アプリケーションを有する情報通信端末を有し、前記情報通信端末は、前記受診者の体調不具合時(救急搬送時など)に、前記各受診者に予め付与された固有の識別情報を前記医療従事者に提示することを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、受診者が、タブレット端末やスマートフォンなどのネットワーク接続可能な情報通信端末を所有する場合、それに個人医療情報集約システムの専用アプリケーションをインストールさせ、前記識別情報などで正式なユーザであることが認証されることで、受診者は、適宜自身の医療情報にアクセス可能になる。したがって、取得した医療情報を携えて、前記セカンドオピニオンなどで、新規の外来などに行く(別病院に掛かる)ことができる。そのような専用アプリケーションをインストールしていることから、情報通信端末は、前記受診者の体調不具合時(救急搬送時など)に、前記各受診者に予め付与された固有の識別情報を前記医療従事者に提示する。
【0017】
したがって、前記取得手段での識別情報の取得が容易になる。たとえば、スマートフォンの画面を確認するだけでよい。
【0018】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記収容場所には、近距離の無線LANスポットを有し、その無線LANスポットには、該個人医療情報集約システムに共通の予め定めるIPアドレスが割当てられており、前記情報通信端末は、前記自身の医療情報にアクセス可能な専用アプリケーションを有し、前記予め定めるIPアドレスの無線LANの信号を受信すると、前記専用アプリケーションが起動し、前記識別情報を、表示画面に表示、もしくは前記無線LANの信号で返信することで前記提示を行うことを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、所謂Wi-Fi(登録商標、IEEE 802.11規格)や、Bluetooth(登録商標、IEEE 802.15規格)などの近距離の無線LANのスポットを、救急車内や処置室などの前記収容場所の限られた空間内でしか有効にならないように設置し、その無線LANスポットに割当てていたシステム共通の予め定めるIPアドレスの信号を受信することで、情報通信端末内にインストールしておいた専用アプリケーションが起動し、前記識別情報を、表示画面に表示したり、前記無線LANの信号で返信する。
【0020】
したがって、所有者(受診者)の容態が悪く、携帯情報端末を操作して識別情報を取出せないような場合にも、医療従事者は識別情報を確実に取得することができる。
【0021】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記識別情報に関連して、該識別情報と同様に受診者の医療情報にアクセス可能な附属番号が設定されており、かつ各受診者は、自身の医療情報にアクセスするためのユーザIDおよびパスワードを前記情報通信端末から設定しており、前記情報通信端末のアプリケーションは、前記附属番号ならびにユーザIDおよびパスワードを、前記無線LANの信号で返信することを特徴とする。
【0022】
上記の構成によれば、各受診者には、自身を特定するための前記固有の識別情報が、システムから予め付与されており、この識別情報が一致すれば、システムに集約されている受診者個人の医療情報を、前記予め定めるルールに基づき、閲覧可能になる。一方、一般に、スマートフォンなどの情報通信端末から、何らかのシステムにログインするためには、ユーザIDおよびパスワードの設定が必要になる。そこで、本システムでも、これらのユーザIDおよびパスワードを使用するにあたって、識別情報に関して、受診者個人の医療情報にアクセス可能であるものの、本来の識別情報ではなく、たとえばそれに類似した附属番号を設定し、無線LANではそれを使用する。
【0023】
したがって、ユーザIDおよびパスワードによる認証は必要になるものの、受診者の体調不具合時に、無線LANの呼出しに情報通信端末が自動的に応答し、それが第三者に傍受されても、重要な個人情報である識別情報が明らかになる訳で無く、個人情報の保護を行うことができる。
【0024】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記予め付与された固有の識別情報の前記医療従事者への提示は、前記医療従事者による前記情報通信端末への予め定める起動操作によるものであることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、前記情報通信端末は、前記医療情報にアクセス可能な専用アプリケーションを予め有し(インストールしており)、その専用アプリケーションは、前記予め定める起動操作として、所謂AIスピーカや、検索機能を利用した音声認識によって、前記医療従事者による予め定める音声指示を認識して起動し、前記識別情報を表示画面に表示することで前記提示を行うことを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、受診者が、タブレット端末やスマートフォンなどの情報通信端末を所有し、それに個人医療情報集約システムの専用アプリケーションがインストールされている場合、医療従事者は、その情報通信端末に標準に備えられている音声認識ソフトや検索ソフトから、本個人医療情報集約システムにリンクさせて、前記専用アプリケーションを起動させることができる。起動されると、その専用アプリケーションは、所有者(受診者)の識別情報を、画面表示したり、音声読み上げしたりして、提示を行う。
【0027】
したがって、所有者(受診者)が複雑な本人認証を行わなくても、医療従事者が識別情報を探索し、医療情報にアクセス可能になるので、所有者(受診者)の容態が悪く、識別情報を聞き出せないような状況でも、識別情報を確実に取得することができる。また専用アプリケーションは常時立上がっていなくてもよく、情報通信端末の消費電力を削減することができる。
【0028】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記情報処理端末から取得手段へは、予め定める無線通信によって前記識別情報が送信されて、該取得手段へは前記識別情報が自動セットされ、前記取得手段と情報処理端末との間は、予め定めるタイミングで変更される暗号数列によって暗号化されて前記識別情報が送信されることを特徴とする。
【0029】
上記の構成によれば、救急車内や処置室などの前記受診者の収容場所において、たとえばスマートフォンなどの情報処理端末に表示された識別情報を、医療従事者がパーソナルコンピュータなどの取得手段に手入力したりする場合は、識別情報の取得(セット)にあたって、その収容場所以外に該識別情報が漏れることはないが、無線LANなどの所定の無線通信で前記識別情報を送信して、自動セットすることで、医療従事者の負担軽減を図ったり、入力時間を短縮したりする場合、その無線通信が前記収容場所の外に漏れる可能性がある。医療従事者のID,パスワードなどの認証手段での認証をパスできる手段を有する者が、その識別情報を傍受してしまうと、受診者の個人情報であるカルテなどが閲覧可能になる。
【0030】
そこで、前記取得手段と情報処理端末との間は、予め定めるタイミング、たとえば所定周期や、使用毎に変更される暗号数列によって、前記識別情報を暗号化しておくことで、そのような個人情報の不所望な漏洩を防止することができる。
【0031】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記受診者の収容場所には、前記ネットワークを介して、該収容場所内に存在する任意の情報通信端末が受信可能な送信パワーで、地震などの緊急通報を発信することができる発信機を備え、前記発信機は、前記医療従事者の操作に応答して、前記緊急通報をダミーで発信し、それを受信した情報通信端末が着信反応を示すことで、該情報通信端末の存在を前記医療従事者に示すことを特徴とする。
【0032】
上記の構成によれば、医療従事者が、所有者(受診者)が情報通信端末を、持っているかどうか、持っていても何処に持っているか分からない場合、ダミーで、地震などの緊急通報を、救急車内や処置室などの前記収容場所の限られた空間内でしか有効にならない程度の低パワーで送信してみて、その着信反応から携帯情報端末の所在を確認する。
【0033】
したがって、所有者(受診者)の容態が悪く、携帯情報端末の所在を聞き出せないような状況でも、医療従事者は識別情報を確実に取得することができる。
【0034】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記取得手段は、救急車や処置室などの前記受診者の収容場所において、携帯電話回線或いは無線LAN回線によって応答端末をサーチ(ポーリング、探索)する第1の無線機であり、前記受診者は、ブレスレットなどの習慣的に受診者に身に着けられる装身具を装着し、該装身具は、前記識別情報を記憶する記憶部と、前記サーチに応答して、前記携帯電話回線或いは無線LAN回線を介して、前記識別情報を前記第1の無線機に返信する第2の無線機とを備えることを特徴とする。
【0035】
上記の構成によれば、前記の取得手段による識別情報の取得を、受診者が習慣的に身に付けるブレスレットなどの装身具を用いて行う。詳しくは、前記取得手段は、救急車や処置室などの前記受診者の収容場所だけの狭小な範囲に到達可能な無線信号を送信する第1の無線機とし、該第1の無線機は、携帯電話回線或いは無線LAN回線を使用して、ポーリングなどで応答して来る端末をサーチ(探索)している。前記装身具を装着した受診者が救急車に運び込まれるなどして、応答する第2の無線機を検出すると、取得手段である第1の無線機は、第2の無線機と無線通信を行い、通信相手先に対する所定の認証を行う。認証が行われると、記憶部に記憶されている受診者のIDなどの識別情報が第2の無線機から第1の無線機に送信され、該識別情報に対応付けられた受診者の医療情報の表示が可能になる。
【0036】
したがって、ブレスレットなどの受診者が習慣的に身に付ける装身具を利用して識別情報を取得するので、識別情報が取得できる可能性が高くなる。
【0037】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記取得手段は、前記受診者の指紋を採取する採取手段と、採取した指紋をデータベースで照合して、受診者の個人を特定する個人情報を読出す照合手段と、前記個人情報を、予め登録されている識別情報のテーブルに紹介して、前記受診者の識別情報を読出す読出し手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0038】
上記の構成によれば、前記の取得手段による識別情報の取得を、パスポートや警察などで予め登録されている指紋のデータベースと照合して、受診者の識別情報を読出す。具体的には、データベースで指紋から住所や氏名などの個人情報を読出し、その個人情報を、前記個人医療情報集約システムの機構で作成された識別情報のテーブル、つまり誰に何番の識別情報を割付けているかのテーブルに照合することで、指紋から、最終的に識別情報を読出す。
【0039】
したがって、指紋がデータベースに登録されている受診者であれば、格別、何ら身に着けているものが無くても、また受診者の容態が悪くても、識別情報を読出し、カルテなどが閲覧可能になる。
【0040】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記取得手段は、前記受診者の顔の画像を撮影する撮影手段と、撮影した画像をデータベースで照合して、受診者の個人を特定する個人情報を読出す照合手段と、前記個人情報を、予め登録されている識別情報のテーブルに紹介して、前記受診者の識別情報を読出す読出し手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0041】
上記の構成によれば、前記の取得手段による識別情報の取得を、運転免許証、パスポート、マイナンバーなどで予め登録されている顔写真のデータベースと照合して、受診者の識別情報を読出す。具体的には、データベースで顔画像から住所や氏名などの個人情報を読出し、その個人情報を、前記個人医療情報集約システムの機構で作成された識別情報のテーブル、つまり誰に何番の識別情報を割付けているかのテーブルに照合することで、顔画像から、最終的に識別情報を読出す。
【0042】
したがって、顔画像がデータベースに登録されている受診者であれば、格別、何ら身に着けているものが無くても、また受診者の容態が悪くても、識別情報を読出し、カルテなどが閲覧可能になる。
【0043】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記取得手段は、カードリーダーであり、前記受診者は、前記識別情報を記録したカードを所持することを特徴とする。
【0044】
上記の構成によれば、前記の取得手段による識別情報の取得に、マイナンバーなどで予め登録されているICカードなどを利用することができる。
【0045】
したがって、医療従事者は、カードをカードリーダーに近付けたり、接触させたり、差込んだりして、情報を読取ることで、容易に識別情報を読出すことができる。
【0046】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記受診者は、任意の医療機関の診察券を所持し、前記取得手段は、前記任意の医療機関の診察券番号と、各受診者の識別情報との対応関係を記憶するテーブルであることを特徴とする。
【0047】
上記の構成によれば、元々、個人医療情報集約システムでは、各受診者に割当てられる1つの識別情報に対して、多数の医療機関から集められたその受診者に関する情報が対応付けて記憶されるので、前記受診者に関する情報の中には、各医療機関での診察券の情報も含まれる。
【0048】
したがって、個人医療情報集約システムにおける各受診者の識別情報に対して、その受診者の各医療期間での診察券番号をテーブル(一覧表)にしておき、前記受診者の体調不具合時に、受診者が持ち合わせた診察券の1枚から、前記テーブルを参照して、容易に識別情報を読出すことができる。
【0049】
さらにまた、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記救急車や処置室などの前記受診者の収容場所における画像を撮像する撮像手段と、前記取得手段で取得された識別情報および認証手段で取得された医療従事者のID,パスワードなどの認証に関する情報、ならびに前記撮像手段の撮像画像を送信する送信手段と、前記送信手段から送信されて来た撮像画像を、前記受診者の受入れ医療機関の表示装置に中継する中継手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0050】
上記の構成によれば、前記救急車や処置室などの前記受診者の収容場所におけるライブ画像を、受診者の(最終の)受入れ(予定の)医療機関の表示装置に中継することができる。
【0051】
したがって、前記受入れ(予定の)医療機関では、適切な受入れ準備を行うことができ、患者(受診者)の救命率を向上することができる。また、救急救命士などの医療従事者については、患者(受診者)の処置と並行して行わなければならない受入れ(予定の)医療機関への、症状や処置の説明などの煩雑な作業を軽減することができる。
【0052】
また、本発明の個人医療情報集約システムでは、前記送信手段に関連して受信手段を有し、前記中継手段は、双方向回線で、前記受診者の受入れ医療機関からの少なくとも音声を前記受信手段へ中継することを特徴とする。
【0053】
上記の構成によれば、前記受診者の収容場所におけるライブ画像を見て、少なくとも音声を前記受診者の収容場所に送信可能であるので、前記受入れ(予定の)医療機関側から、治療や処置の指示を行ったり、詳細な状況確認を行ったりすることができる。
【0054】
したがって、患者(受診者)の救命率をより向上することができる。