【実施例】
【0042】
(実施例1)
ここで
図3を参照すると、
図3は、本発明の一実施形態に従ってシミュレーション環境51(
図2)を使用して実行された実験における温度場の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径はカテーテル径の4倍の大きさであり(4×2.5mm)、RF電流は0.35Aであり、そして組織厚は15mmであった。60秒のアブレーション後の加熱ゾーン69の温度勾配が、キー71を参照して理解され得る。55℃等温線が便宜上強調して示される。
【0043】
組織厚がこの例及び以下の例において電極間の距離として使用されたが、電極と組織との間の接触は必須ではないことに留意すべきである。電極と組織との間に約2mmのギャップがあるときでも、本明細書で説明される技術は有効である。
【0044】
この場合、アブレーションは55℃等温線内で発生する。この等温線が経壁であることは明白である。上記したように、最高温度をスチームポップ及び炭化を防止する程度に十分に低く保つことが望ましい。
【0045】
カテーテル電極径を一定に保持しながらパッチ径を変化させることによって、心筋の両側の電流密度が制御される。カテーテル径に対するパッチ径の比率は、実際の心筋厚に従って55℃等温線を最適に形づくるために調整される。
【0046】
小さすぎる比率は、ピーク温度を両側で非常に大きく上昇させることになる。しかしながら、電流を下げることにより温度の上昇を回避しようと試みることによって、経壁はでない2つの小さな損傷部位がもたらされる。パッチの直径を増加させることによって、パッチの温度は下がり、アブレーションが経壁であることが確実となる。
【0047】
ここで
図4を参照すると、
図4は、
図3の例の電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、
図3と同類のグラフ73である。80℃の温度が約10秒で達成される。
【0048】
(実施例2)
ここで
図5を参照すると、
図5は、本発明の一実施形態に従って、シミュレーション環境51(
図2)を使用して実行された実験における、0.3Ampを使用した60秒のアブレーション後の温度場の別の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径は(3×2.5)mmであり、電流は0.3Aであり、そして組織厚は10mmであった。
図3と比較したときに、より広く均一な効果的な経壁アブレーション温度が達成されたことが55℃等温線から明らかである。
【0049】
ここで
図6を参照すると、
図6は、電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、
図4と同類のグラフ75である。80℃の温度が約20秒で達成され、グラフ73(
図4)の2倍の時間がかかっている。
【0050】
(実施例3)
ここで
図7を参照すると、
図7は、本発明の一実施形態に従ってシミュレーション環境51(
図2)を使用して実行された実験における温度場の別の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径は(3×2.5)mmであり、電流は0.25Aであり、そして組織厚は7mmであった。
【0051】
ここで
図8を参照すると、
図8は、
図7の例の電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、
図3と同類のグラフ77である。
【0052】
ここで
図9を参照すると、
図9は、本発明の一実施形態に従って、挿入器具81の管腔内に折り込まれた構成で格納されて示された、パッチ電極79の概略図である。電極79は、制御ワイヤー83を使用して器具81を越えて前進することができ、制御ワイヤー83はまた、電極79への及び電極79からの高周波電流及び電気信号を通信する働きをすることができる。電極79は、形状記憶性を有することができる薄い導電性フィルム又はシートで構成され、そして、任意に電気信号の制御によって、形状変更可能である。いずれにせよ、電極79は、医療処置の間に延伸するときに展開すること、及び器具81の管腔内に格納できるように折り込まれた構成に戻ることが可能である。例えば、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体が、電極79を構成するために使用されてもよい。
【0053】
第1の代替的実施形態
ここで
図10を参照すると、
図10は、本発明の一実施形態に従って、器具81を越えて延伸し配置するために展開された、パッチ電極85の概略図である。電極85は、
図9を参照して上記に説明されたように、器具81を介して導入される。電極85は複数の同心円状セグメント87、89、91、93に分割され、セグメント87、89、91、93は互いに電気的に絶縁されている。ワイヤー95は、セグメント87、89、91、93から一連のスイッチ97へとつながり、スイッチ97は、ケーブル99を介して、コンソール24、及びアブレーション電力発生装置25の1つ(
図1)へ別個に又はまとめてセグメントを接続することができる。追加的に又は代替的に、ケーブル99は、電極85からコンソール24へ電気信号を(
図1)、及びコンソール24から電極85へ制御信号を伝導してもよい。セグメント87、89、91、93のうちの異なるものがコンソール24と電気的に通信にするように及びしないように切り換えられるので、上述のように、標的組織43(
図1)に関連する電極85の有効電流伝送領域は、アブレーション処置の要求に従って変化し得る。
【0054】
第2代替的実施形態
ここで
図11を参照すると、
図11は、本発明の一実施形態に従って、器具81を越えて延伸し配置するために展開されて示された、パッチ電極101の概略図である。構造は、
図10の実施形態と略同類であるが、シートが、中心点105から電極101の縁部へ向かって外側に螺旋状のコースをたどる連続的な絶縁ライン103によって境界を定められた、複数の略細長い湾曲したバンドを有する。バンドは、横断絶縁ライン107、109、111、113によって更にセグメント化される。セグメントはワイヤー115に取り付けられ、ワイヤー115はスイッチ97を介してケーブル99へとつながる。
【0055】
4つのセグメントが
図10及び
図11の例に示されるが、電極85、101の有効領域のサイズ調整で所望の細分性を達成するために、任意の数のセグメントが設けることができる。
【0056】
例えば、境界が、共通の幾何的中心を有する相似三角形である三角形を描く一連のセグメントなどの、パッチ電極用のセグメント化された他の幾何学的配置構成が可能である。パッチ電極の有効電流伝送領域が対向するカテーテル電極の有効電流伝送領域より大きいことが必要であるに過ぎない。いずれにせよ、セグメントの適切な選択は、パッチ電極及びカテーテル電極との間の有効電流伝送領域の比率を最適化する。
【0057】
操作
医療処置の前に、最適な電力設定及び各電極の有効電流伝送領域の比率のデータベースが、例えば上記に説明したシミュレーションを使用して又は動物組織を実験的に使用して、いろいろな電極間の距離に向けて準備される。
【0058】
電極が適切な位置にあるとき、電極間の距離は、例えばCARTOシステムの位置感知機能によって判定される。続いて、アブレーション設定が、有効電流伝送領域の所望の比率を生じさせるためにパッチ電極の適切な数のセグメントに切り換えを行うことによって、そしてRF発生装置のための適切な電力出力を確定することによって、自動で確定され得る。代替的に、設定を承認又は修正することができる操作者に対しては、設定が推奨値として自動的に決定及び提示されてもよい。
【0059】
当業者であれば、本発明は、上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は認識されるところであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記に述べた異なる特性の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明文を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術ではない変形及び改変をも含むものである。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションの方法であって、
生存被験者の心臓の壁の第1側部に第1プローブの第1のアブレーション電極を配置する工程と、
前記第1のアブレーション電極に対向するように前記壁の第2側部に第2プローブの第2のアブレーション電極を配置する工程と、
前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域を変化させる工程と、
前記壁をアブレーションするために前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域との間に十分な電流を流す工程と、を含む方法。
(2) 十分な電流を流す工程が、前記第1のアブレーション電極及び前記第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが前記壁と接触している間に行われる、実施態様1に記載の方法。
(3) 十分な電流を流す工程が、前記第1のアブレーション電極及び前記第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが前記壁から2mmの範囲内にある間に行われる、実施態様1に記載の方法。
(4) 有効電流伝送領域を変化させる工程が、前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極との間の距離に反応して行われる、実施態様1に記載の方法。
(5) 有効電流伝送領域を変化させる工程が、前記壁の厚みに反応して行われる、実施態様1に記載の方法。
【0061】
(6) 前記第2のアブレーション電極が複数のセグメントを備え、前記セグメントが互いに電気的に絶縁され、かつ前記セグメントのそれぞれが前記電流の供給源に切り換え可能に接続可能である、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記セグメントが同心円を構成している、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記セグメントが螺旋状に配置されている、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記セグメントの境界が三角形を構成している、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記三角形が共通の幾何的中心を有する相似三角形である、実施態様9に記載の方法。
【0062】
(11) 前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記フィルムの形状変更を引き起こすように前記フィルムに電気信号を印加する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記第2のアブレーション電極が形状記憶性を有した導電性フィルムを含み、前記第2のアブレーション電極の配置のために前記フィルムを展開する工程と、前記被験者からの前記第2のアブレーション電極の離脱のために前記フィルムを再び折り込む工程とを、更に含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記第2のアブレーション電極が、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体を含む、実施態様1に記載の方法。
【0063】
(16) アブレーション装置であって、
生存被験者の心臓への挿入に適応し、遠位セグメントと、前記心臓の壁の第1側部における標的組織に提供されるように前記遠位セグメントに配置された第1のアブレーション電極とを有する、第1可撓性プローブと、
前記第1のアブレーション電極に対向するように前記壁の第2側部に提供される第2のアブレーション電極であって、前記第2のアブレーション電極が複数のセグメントを備え、前記セグメントが互いに電気的に絶縁されている、第2のアブレーション電極と、
前記第1のアブレーション電極と接続可能であり、かつ前記第2のアブレーション電極の前記セグメントの中の選択されたセグメントに切り換え可能に接続可能で、前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極の前記選択されたセグメントとの間に電流を通過させる、電力発生装置と、を備える、アブレーション装置。
(17) 前記セグメントが同心円を構成している、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記セグメントが螺旋状に配置されている、実施態様16に記載の装置。
(19) 前記セグメントの境界が三角形を構成している、実施態様16に記載の装置。
(20) 前記三角形が共通の幾何的中心を有する相似三角形である、実施態様19に記載の装置。
【0064】
(21) 前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである、実施態様16に記載の装置。
(22) 前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである、実施態様16に記載の装置。
(23) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記導電性フィルムが、前記導電性フィルムの上への電気信号の印加の際に形状を変化させる、実施態様16に記載の装置。
(24) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記フィルムが前記第2のアブレーション電極の配置及び離脱のために展開可能かつ再折り込み可能である、実施態様16に記載の装置。
(25) 前記第2のアブレーション電極が、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体を含む、実施態様16に記載の装置。