特許第6570813号(P6570813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570813
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】双極アブレーションのための適応電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   A61B18/12
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-167382(P2014-167382)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-39634(P2015-39634A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2017年8月1日
(31)【優先権主張番号】13/971,887
(32)【優先日】2013年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル−タル
(72)【発明者】
【氏名】イーガル・ウルチン
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0045871(US,A1)
【文献】 特表2012−508083(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/112844(WO,A2)
【文献】 国際公開第2012/092016(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション装置であって、
生存被験者の心臓への挿入に適応し、遠位セグメントと、前記心臓の壁の第1側部における標的組織に提供されるように前記遠位セグメントに配置された第1のアブレーション電極とを有する、第1可撓性プローブと、
前記第1のアブレーション電極に対向するように前記壁の第2側部に提供される第2のアブレーション電極であって、前記第2のアブレーション電極が複数のセグメントを備え、前記複数のセグメントが互いに電気的に絶縁されている、第2のアブレーション電極と、
前記第1のアブレーション電極と接続可能であり、かつ前記第2のアブレーション電極の前記複数のセグメントの中の選択されたセグメントに切り換え可能に接続可能で、前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極の前記選択されたセグメントとの間に電流を通過させる、電力発生装置と、を備え、
前記第2のアブレーション電極は、形状記憶性を有する材料で形成され、挿入器具の管腔内に折り込まれた構成で格納されて、前記挿入器具の前記管腔内を前進して、前記挿入器具を超えて展開した構成となることができ、前記挿入器具の前記管腔内に格納できるように前記折り込まれた構成に戻ることができ、前記第2のアブレーション電極は、制御ワイヤーからの電気信号に基づいて、前記折り込まれた構成と前記展開した構成との間で形状変更が可能であり、前記制御ワイヤーを使用して、前記第2のアブレーション電極を前進させることができる、アブレーション装置。
【請求項2】
前記複数のセグメントが同心円を構成している、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項3】
前記複数のセグメントが螺旋状に配置されている、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項4】
前記複数のセグメントの境界が三角形を構成している、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項5】
前記三角形が共通の幾何的中心を有する相似三角形である、請求項4に記載のアブレーション装置。
【請求項6】
前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項7】
前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項8】
前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムで構成されている、請求項1に記載のアブレーション装置。
【請求項9】
前記第2のアブレーション電極が、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体で構成されている、請求項1に記載のアブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組織アブレーションシステムに関する。より詳細には、本発明は、双極アブレーションの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の諸区域が、隣接組織に、電気信号を異常に伝導することによって、正常な心周期を阻害し、非同期的な律動を引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈治療の手順としては、不整脈の原因となっている信号源を外科的に遮断すること、並びにそのような信号の伝達経路を遮断することが挙げられる。カテーテルを介してエネルギーを印加して心臓組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓の一部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を分断又は変更することが可能な場合がある。このアブレーション処理は、非導電性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。
【0004】
メイズ処置は、心房細動の外科的な治療の一方法である。メイズ処置は、心房細動と関連した不安定な電気的インパルスに対する障壁として作用する瘢痕組織の「迷路(maze)」を構成するために心房に一連の切開を行うことを伴い、心臓への正しい路を辿るものだけが通過可能となる。非常にうまくいったのだが、メイズ処置は、技術的に困難であり、心臓を停止させること及び患者を人工心肺装置に配置することを必要とする。
【0005】
心臓組織のアブレーションにおける高周波エネルギーの使用について知られている難点の1つとして、組織の局所的な加熱を制御することがある。異常な組織病巣を効果的にアブレーションするうえで、又は異常な伝導パターンを遮断するうえで充分に大きな損傷部位を形成しようとする要求と、過度の局所的加熱の望ましくない効果とは矛盾するものである。高周波装置によって形成される損傷部位が小さすぎる場合には、その医療処置の効果が低くなるか、又は時間がかかりすぎる可能性がある。これに対して、組織が過度に加熱される場合には、過熱による局所的な炭化作用が生じる可能性がある。そのような過熱された領域は、高インピーダンスを発生させ得るものであり、また熱の通過に対する機能的障害を形成することがある。よりゆっくりとした加熱を用いると、アブレーションを制御しやすくなる一方で手術が不要に長引くことになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
双極高周波アブレーションは、アブレーション処置を単純化するための一手法である。外科的切開を使用する代わりに、医者は、心臓壁又は中隔の反対側に配置された2つの電極を通る高周波電流を通過させることによって、心臓に損傷部位を形成し、幅1〜2mmの経壁の損傷部位を生じさせる。その処置は、心臓を停止させることを必要とせず、メイズ処置を使用する場合には1つの損傷部位につき5〜10分かかるのとは対照的に、それぞれの損傷部位を完成させるのに9秒で済む。
【0007】
左心室の経壁アブレーションが、難治性心室頻拍といった不整脈の治療に適切であり得るが、電流アブレーションカテーテル及び方法を使用した左心室の経壁アブレーションは不可能である。灌注式アブレーションカテーテルを使用した場合の心筋に生成される有効なアブレーションゾーンは、アブレーション電極の接触表面の僅か約5mm下方までしか延在しない。左心室厚は少なくとも15mmであり得るため、心室の両側からのアブレーションであっても目的を達成することができないことは明らかである。
【0008】
本発明の実施形態は、損傷部位を適応的に形づくり、そして少なくとも15mmまで有効に損傷部位の深さを効果的に制御するカテーテル及び方法を提供する。
【0009】
アブレーションの方法が本発明の実施形態により提供される。この方法は、生存被験者の心臓の壁の第1側部に第1プローブの第1のアブレーション電極を配置すること、第1のアブレーション電極に対向するように壁の2側部に第2プローブの第2のアブレーション電極を配置すること、第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域を変化させること、そして壁をアブレーションするために第1のアブレーション電極と第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域との間に十分な電流を流すことによって実施される。
【0010】
この方法の更に別の態様によると、十分な電流を流すことは、第1及び第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが壁と接触している間に行われる。
【0011】
この方法の別の態様によると、十分な電流を流すことは、第1及び第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが壁から2mmの範囲内にある間に行われる。
【0012】
この方法の更なる態様によると、有効電流伝送領域を変化させることは、第1及と第2のアブレーション電極との間の距離に反応して行われる。
【0013】
この方法の一態様によると、有効電流伝送領域を変化させることは、壁の厚みに反応して行われる。
【0014】
この方法の更に別の態様によると、第2のアブレーション電極は複数のセグメントを備え、それらセグメントは互いに電気的に絶縁され、そしてセグメントのそれぞれは電流の供給源に切り換え可能に接続可能である。
【0015】
この方法の更なる態様によると、セグメントは同心円を構成している。
【0016】
この方法の更に別の態様によると、セグメントは螺旋状に配置されている。
【0017】
この方法の一態様によると、セグメントの境界は三角形を構成している。
【0018】
この方法の更なる態様によると、三角形は共通の幾何的中心を有する相似三角形である。
【0019】
この方法の更に別の態様によると、第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域は、第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである。
【0020】
この方法の更に別の態様によると、第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域は、第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである。
【0021】
この方法の別の態様では、第2のアブレーション電極は導電性フィルムを含み、そして電気信号が、フィルムの形状変更を引き起こすようにフィルムに印加される。
【0022】
この方法の更に別の態様では、第2のアブレーション電極は形状記憶性を有した導電性フィルムを含み、そしてその方法は、被験者への第2のアブレーション電極の配置のためにフィルムを展開すること、及び被験者からの第2のアブレーション電極の離脱のためにフィルムを再び折り込むことを含む。
【0023】
この方法の更なる態様によると、第2のアブレーション電極は、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体から形成される。
【0024】
生存被験者の心臓への挿入に適合された第1可撓性プローブ、及びプローブの遠位セグメントに配置された第1のアブレーション電極を備えた、アブレーション装置が本発明の実施形態により更に提供される。このプローブは、心臓の壁の第1側部で標的組織に提供されるように構成される。この装置は、第1のアブレーション電極に対向するために壁の第2側部に提供されるように構成された第2のアブレーション電極であって、互いに電気的に絶縁された複数のセグメントを備えた第2のアブレーション電極、及び第1のアブレーション電極と第2のアブレーション電極の選択されたセグメントとの間に電流を通過させるために、第1のアブレーション電極に接続可能で、そして第2のアブレーション電極のセグメントの内選択されたものに切り換え可能に接続可能な電力発生装置を、更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明をより深く理解するために、発明を実施するための形態を実例として参照するが、発明を実施するための形態は、同様の要素に同様の参照番号を付した以下の図面と併せて読むべきである。
図1】本発明の一実施形態に従って構成され動作する、生存被験者の心臓に対してアブレーション処置を行うためのシステムの模式図。
図2】本発明の一実施形態に従って、経壁アブレーションの評価のためのシミュレーション環境を示した概略図。
図3】本発明の一実施形態に従って、図2に示されたシミュレーション環境を使用して実行された実験における温度場の表示。
図4】本発明の一実施形態に従って、図3に示された実験における電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示したグラフ。
図5】本発明の一実施形態に従って、図2に示されたシミュレーション環境を使用して実行された実験における温度場の表示。
図6】本発明の一代替的実施形態に従って、図5に示された実験における電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示したグラフ。
図7】本発明の一代替的実施形態に従って、図2に示されたシミュレーション環境を使用して実行された実験における温度場の表示。
図8】本発明の一代替的実施形態に従って、図7に示された実験における電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示したグラフ。
図9】本発明の一代替的実施形態に従って、挿入器具の管腔内に折り込まれた構成で格納されて示された、パッチ電極の概略図。
図10】本発明の一実施形態に従って、図9に示された挿入器具を越えて延伸し配置するために展開された、パッチ電極の概略図。
図11】本発明の一代替的実施形態に従って、図9に示された挿入器具を越えて延伸し配置するために展開された、パッチ電極の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明では、本発明の様々な原理の完全な理解を提供するために、数多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、これらの詳細のすべてが、本発明を実施するために必ずしも常に必要とされるとは限らないことが当業者には明らかであろう。この例では、一般的な概念を不必要に曖昧にしないように、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細は詳しく示していない。
【0027】
本発明の態様は、コンピュータ可読媒体などの永久記憶装置内に一般的に保存される、ソフトウェアプログラミングコードで具体化することができる。クライアント/サーバ環境では、このようなソフトウェアプログラミングコードは、クライアント又はサーバに記憶され得る。ソフトウェアプログラミングコードは、ディスケット、ハードドライブ、電子媒体、又はCD−ROMなどの、データ処理システムと共に使用するための様々な既知の非一時的媒体のうちの、いずれかの上に具体化することができる。コードは、このような媒体上に配布されてもよく、又は他のコンピュータシステムのユーザが使用するために、該他のシステム上の記憶デバイスへのある種のネットワークを介して、1つのコンピュータシステムのメモリ又は記憶装置からユーザへ配布されてもよい。
【0028】
定義
用語「有効電流伝送領域」は、本明細書で電極に適用されるときには、例えば電極と電極が接触する標的との間で、電極を通る電流の通過を担うことが操作上可能な電極の領域を指す。
【0029】
システムの説明
ここで図面を見て、最初に図1を参照すると、図1は、生存被験者の心臓12に対してアブレーション処置を行うためのシステム10の模式図であり、システム10は、本発明の一実施形態に従って構成され動作する。システム10は、患者の血管系を通じて、心臓12の腔又は血管構造内に操作者16によって経皮的に挿入されるカテーテル14を備える。一般的には医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18をアブレーション標的部位の心臓壁と接触させる。任意に、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,892,091号に開示される方法に従って、電気的活性マップを作製することができる。システム10の各要素を具体化する市販製品の1つが、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)から、CARTO(登録商標)3 Systemとして入手可能である。
【0030】
例えば電気的活性マップの評価によって異常と判定された領域は、熱エネルギーを印加することによって、例えば心筋に高周波エネルギーを印加する遠位先端部18に又は遠位先端部の近傍における1つ以上の電極に、カテーテル内のワイヤーを通じて高周波電流を流すことによって、アブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には約50℃)まで加熱する。支障なく行われた場合、この処置によって心臓組織に非導電性の損傷部位が形成され、この損傷部位が不整脈を引き起こす異常な電気経路を遮断する。本発明の原理を異なる心腔に適用することによって多くの異なる心不整脈を治療することができる。
【0031】
カテーテル14は一般的に、ハンドル20、その遠位端部に又は遠位端部の近傍にアブレーション電極32を備え、ハンドル上で好適な制御をして、操作者16がアブレーションのために必要に応じてカテーテルの遠位部分を操縦、位置決め、及び方向決めすることを可能にする。操作者16を補助するために、カテーテル14の遠位部分は、コンソール24内に配置された位置決めプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)を収容する。
【0032】
第2プローブ、つまり心外膜カテーテル27は、コンソール24に接続され、作業端部のアブレーション要素41を特徴として持つ。アブレーション要素41は、その間に心臓12の標的組織43を挟んでアブレーション電極32に対向するように位置付けられる。アブレーション電極32は、コンソール24にケーブル34を介して接続される。カテーテル27は、例えばComedicus Inc.(3989 Central Avenue N.E.,Suite 610,Columbia Heights,MN 55421)から入手可能なPerDUCER(登録商標)Access Deviceを使用して、配置され得る。
【0033】
第2プローブは図1では心外膜カテーテルとして示されるが、必ずしも心外膜カテーテルでなくともよい。例えば、心室中隔45のアブレーションを必要とする場合には、第2プローブは右心室47の腔に導入され、カテーテル14は第2プローブに対向するように左心室49の腔内から心室中隔45に接触する。図1に概略的に示されるアブレーション要素41は、以下に更に詳細に説明される。
【0034】
アブレーションエネルギー及び電気信号は、アブレーション電極32、41を通じて心臓12へ及び心臓12から伝達され得る。例えば、ペーシング信号及び他の制御信号は、コンソール24から、ケーブル34及びアブレーション電極32を通じて、心臓12へと伝達され得る。コンソール24に同様に接続される感知電極31、33は、アブレーション電極32の近傍に配置され、ケーブル34との接続を有する。
【0035】
コンソール24は、ワイヤー接続35によって、身体表面電極30、及び位置決めサブシステムの他の構成要素と接続される。アブレーション電極32及び身体表面電極30は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,536,218号(Govariら)に教示されるように、アブレーション部位での組織のインピーダンスを測定するために使用され得る。温度センサ(図示せず)、一般的には熱電対又はサーミスタを、アブレーション電極32に、又はアブレーション電極32の近傍に取り付けすることができる。
【0036】
コンソール24は一般的に、1つ以上のアブレーション電力発生装置25を収容する。カテーテル14、27は、例えば高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の既知のアブレーション技術を使用して心臓にアブレーションエネルギーを伝導するように構成され得る。このような方法は、参照により本明細書に組み込まれる本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示される。
【0037】
位置決めプロセッサ22は、カテーテル14、27の位置及び方向座標を測定する、システム10における位置決めサブシステムの一要素である。
【0038】
一実施形態では、位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、既定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルでのこれらの磁場を感知することによって、カテーテル14、27の位置及び方向を判定する、磁気位置追跡の配置を含む。位置決めサブシステムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に教示されるようなインピーダンス測定を利用することができる。
【0039】
上記したように、カテーテル14、27はコンソール24に連結され、コンソール24により操作者16はカテーテル14、27の機能を観察及び調節することが可能になる。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように連結される。信号処理回路は一般的に、カテーテル14、27の遠位に配置された上記のセンサ及び複数の位置感知電極(図示せず)によって生成される信号を含むカテーテル14、27からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化する。デジタル化された信号は、ケーブル38を介して受信され、カテーテル14、27の位置及び方向を計算するために、並びに電極からの電気信号を分析するためにコンソール24及び位置決めシステムによって使用される。
【0040】
簡潔さのために図には示されないが、一般的に、システム10は他の要素を含む。例えば、システム10は、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ以上の身体表面電極からの信号を受信するように連結された心電図(ECG)モニタを含んでもよい。上記に述べたように、システム10は一般的に、被験者の身体の外側に取り付けられた外部に貼付される参照パッチ上に、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された内部に配置されるカテーテル上のどちらかに、参照位置センサも含む。アブレーション部位を冷却するためのカテーテル14、27を通過する液体を循環させる、従来のポンプ及びラインが設けられる。
【0041】
経壁アブレーション
ここで図2を参照すると、図2は、本発明の一実施形態に従って経壁アブレーションを評価するためのシミュレーション環境51を示した概略図である。シミュレーションでは、心筋53は、心内膜59に適用された従来のアブレーションカテーテル57の先端電極55を有する。有効電流伝送領域が電極55のものより、一般的に2倍〜4倍、好ましくは3倍〜4倍大きいアブレーションパッチ61が心外膜63に適用される。心内膜59isに隣接した領域65は、熱拡散性(〜30[W/m/K])の流体65をシミュレートする。心外膜63は流体67に浸されるようにシミュレートされ、流体67は通常の血液を表す。図2の配置は、灌注液を使用した30℃の温度への冷却に相当する、パッチ61の場合の単純な温度調節機構を提供する。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
ここで図3を参照すると、図3は、本発明の一実施形態に従ってシミュレーション環境51(図2)を使用して実行された実験における温度場の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径はカテーテル径の4倍の大きさであり(4×2.5mm)、RF電流は0.35Aであり、そして組織厚は15mmであった。60秒のアブレーション後の加熱ゾーン69の温度勾配が、キー71を参照して理解され得る。55℃等温線が便宜上強調して示される。
【0043】
組織厚がこの例及び以下の例において電極間の距離として使用されたが、電極と組織との間の接触は必須ではないことに留意すべきである。電極と組織との間に約2mmのギャップがあるときでも、本明細書で説明される技術は有効である。
【0044】
この場合、アブレーションは55℃等温線内で発生する。この等温線が経壁であることは明白である。上記したように、最高温度をスチームポップ及び炭化を防止する程度に十分に低く保つことが望ましい。
【0045】
カテーテル電極径を一定に保持しながらパッチ径を変化させることによって、心筋の両側の電流密度が制御される。カテーテル径に対するパッチ径の比率は、実際の心筋厚に従って55℃等温線を最適に形づくるために調整される。
【0046】
小さすぎる比率は、ピーク温度を両側で非常に大きく上昇させることになる。しかしながら、電流を下げることにより温度の上昇を回避しようと試みることによって、経壁はでない2つの小さな損傷部位がもたらされる。パッチの直径を増加させることによって、パッチの温度は下がり、アブレーションが経壁であることが確実となる。
【0047】
ここで図4を参照すると、図4は、図3の例の電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、図3と同類のグラフ73である。80℃の温度が約10秒で達成される。
【0048】
(実施例2)
ここで図5を参照すると、図5は、本発明の一実施形態に従って、シミュレーション環境51(図2)を使用して実行された実験における、0.3Ampを使用した60秒のアブレーション後の温度場の別の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径は(3×2.5)mmであり、電流は0.3Aであり、そして組織厚は10mmであった。図3と比較したときに、より広く均一な効果的な経壁アブレーション温度が達成されたことが55℃等温線から明らかである。
【0049】
ここで図6を参照すると、図6は、電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、図4と同類のグラフ75である。80℃の温度が約20秒で達成され、グラフ73(図4)の2倍の時間がかかっている。
【0050】
(実施例3)
ここで図7を参照すると、図7は、本発明の一実施形態に従ってシミュレーション環境51(図2)を使用して実行された実験における温度場の別の表示である。この例では、カテーテル径は2.5mmであり、パッチ径は(3×2.5)mmであり、電流は0.25Aであり、そして組織厚は7mmであった。
【0051】
ここで図8を参照すると、図8は、図7の例の電流印加の持続時間と最大温度との間の関係を示した、図3と同類のグラフ77である。
【0052】
ここで図9を参照すると、図9は、本発明の一実施形態に従って、挿入器具81の管腔内に折り込まれた構成で格納されて示された、パッチ電極79の概略図である。電極79は、制御ワイヤー83を使用して器具81を越えて前進することができ、制御ワイヤー83はまた、電極79への及び電極79からの高周波電流及び電気信号を通信する働きをすることができる。電極79は、形状記憶性を有することができる薄い導電性フィルム又はシートで構成され、そして、任意に電気信号の制御によって、形状変更可能である。いずれにせよ、電極79は、医療処置の間に延伸するときに展開すること、及び器具81の管腔内に格納できるように折り込まれた構成に戻ることが可能である。例えば、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体が、電極79を構成するために使用されてもよい。
【0053】
第1の代替的実施形態
ここで図10を参照すると、図10は、本発明の一実施形態に従って、器具81を越えて延伸し配置するために展開された、パッチ電極85の概略図である。電極85は、図9を参照して上記に説明されたように、器具81を介して導入される。電極85は複数の同心円状セグメント87、89、91、93に分割され、セグメント87、89、91、93は互いに電気的に絶縁されている。ワイヤー95は、セグメント87、89、91、93から一連のスイッチ97へとつながり、スイッチ97は、ケーブル99を介して、コンソール24、及びアブレーション電力発生装置25の1つ(図1)へ別個に又はまとめてセグメントを接続することができる。追加的に又は代替的に、ケーブル99は、電極85からコンソール24へ電気信号を(図1)、及びコンソール24から電極85へ制御信号を伝導してもよい。セグメント87、89、91、93のうちの異なるものがコンソール24と電気的に通信にするように及びしないように切り換えられるので、上述のように、標的組織43(図1)に関連する電極85の有効電流伝送領域は、アブレーション処置の要求に従って変化し得る。
【0054】
第2代替的実施形態
ここで図11を参照すると、図11は、本発明の一実施形態に従って、器具81を越えて延伸し配置するために展開されて示された、パッチ電極101の概略図である。構造は、図10の実施形態と略同類であるが、シートが、中心点105から電極101の縁部へ向かって外側に螺旋状のコースをたどる連続的な絶縁ライン103によって境界を定められた、複数の略細長い湾曲したバンドを有する。バンドは、横断絶縁ライン107、109、111、113によって更にセグメント化される。セグメントはワイヤー115に取り付けられ、ワイヤー115はスイッチ97を介してケーブル99へとつながる。
【0055】
4つのセグメントが図10及び図11の例に示されるが、電極85、101の有効領域のサイズ調整で所望の細分性を達成するために、任意の数のセグメントが設けることができる。
【0056】
例えば、境界が、共通の幾何的中心を有する相似三角形である三角形を描く一連のセグメントなどの、パッチ電極用のセグメント化された他の幾何学的配置構成が可能である。パッチ電極の有効電流伝送領域が対向するカテーテル電極の有効電流伝送領域より大きいことが必要であるに過ぎない。いずれにせよ、セグメントの適切な選択は、パッチ電極及びカテーテル電極との間の有効電流伝送領域の比率を最適化する。
【0057】
操作
医療処置の前に、最適な電力設定及び各電極の有効電流伝送領域の比率のデータベースが、例えば上記に説明したシミュレーションを使用して又は動物組織を実験的に使用して、いろいろな電極間の距離に向けて準備される。
【0058】
電極が適切な位置にあるとき、電極間の距離は、例えばCARTOシステムの位置感知機能によって判定される。続いて、アブレーション設定が、有効電流伝送領域の所望の比率を生じさせるためにパッチ電極の適切な数のセグメントに切り換えを行うことによって、そしてRF発生装置のための適切な電力出力を確定することによって、自動で確定され得る。代替的に、設定を承認又は修正することができる操作者に対しては、設定が推奨値として自動的に決定及び提示されてもよい。
【0059】
当業者であれば、本発明は、上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は認識されるところであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記に述べた異なる特性の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明文を読むことで当業者には想到されるであろう、従来技術ではない変形及び改変をも含むものである。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションの方法であって、
生存被験者の心臓の壁の第1側部に第1プローブの第1のアブレーション電極を配置する工程と、
前記第1のアブレーション電極に対向するように前記壁の第2側部に第2プローブの第2のアブレーション電極を配置する工程と、
前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域を変化させる工程と、
前記壁をアブレーションするために前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域との間に十分な電流を流す工程と、を含む方法。
(2) 十分な電流を流す工程が、前記第1のアブレーション電極及び前記第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが前記壁と接触している間に行われる、実施態様1に記載の方法。
(3) 十分な電流を流す工程が、前記第1のアブレーション電極及び前記第2のアブレーション電極の中の少なくとも1つが前記壁から2mmの範囲内にある間に行われる、実施態様1に記載の方法。
(4) 有効電流伝送領域を変化させる工程が、前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極との間の距離に反応して行われる、実施態様1に記載の方法。
(5) 有効電流伝送領域を変化させる工程が、前記壁の厚みに反応して行われる、実施態様1に記載の方法。
【0061】
(6) 前記第2のアブレーション電極が複数のセグメントを備え、前記セグメントが互いに電気的に絶縁され、かつ前記セグメントのそれぞれが前記電流の供給源に切り換え可能に接続可能である、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記セグメントが同心円を構成している、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記セグメントが螺旋状に配置されている、実施態様6に記載の方法。
(9) 前記セグメントの境界が三角形を構成している、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記三角形が共通の幾何的中心を有する相似三角形である、実施態様9に記載の方法。
【0062】
(11) 前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記第2のアブレーション電極の前記有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記フィルムの形状変更を引き起こすように前記フィルムに電気信号を印加する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記第2のアブレーション電極が形状記憶性を有した導電性フィルムを含み、前記第2のアブレーション電極の配置のために前記フィルムを展開する工程と、前記被験者からの前記第2のアブレーション電極の離脱のために前記フィルムを再び折り込む工程とを、更に含む、実施態様1に記載の方法。
(15) 前記第2のアブレーション電極が、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体を含む、実施態様1に記載の方法。
【0063】
(16) アブレーション装置であって、
生存被験者の心臓への挿入に適応し、遠位セグメントと、前記心臓の壁の第1側部における標的組織に提供されるように前記遠位セグメントに配置された第1のアブレーション電極とを有する、第1可撓性プローブと、
前記第1のアブレーション電極に対向するように前記壁の第2側部に提供される第2のアブレーション電極であって、前記第2のアブレーション電極が複数のセグメントを備え、前記セグメントが互いに電気的に絶縁されている、第2のアブレーション電極と、
前記第1のアブレーション電極と接続可能であり、かつ前記第2のアブレーション電極の前記セグメントの中の選択されたセグメントに切り換え可能に接続可能で、前記第1のアブレーション電極と前記第2のアブレーション電極の前記選択されたセグメントとの間に電流を通過させる、電力発生装置と、を備える、アブレーション装置。
(17) 前記セグメントが同心円を構成している、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記セグメントが螺旋状に配置されている、実施態様16に記載の装置。
(19) 前記セグメントの境界が三角形を構成している、実施態様16に記載の装置。
(20) 前記三角形が共通の幾何的中心を有する相似三角形である、実施態様19に記載の装置。
【0064】
(21) 前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の2倍〜4倍の大きさである、実施態様16に記載の装置。
(22) 前記第2のアブレーション電極の有効電流伝送領域が、前記第1のアブレーション電極の有効電流伝送領域の3倍〜4倍の大きさである、実施態様16に記載の装置。
(23) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記導電性フィルムが、前記導電性フィルムの上への電気信号の印加の際に形状を変化させる、実施態様16に記載の装置。
(24) 前記第2のアブレーション電極が導電性フィルムを含み、前記フィルムが前記第2のアブレーション電極の配置及び離脱のために展開可能かつ再折り込み可能である、実施態様16に記載の装置。
(25) 前記第2のアブレーション電極が、カーボン−ナノファイバー、酸化カーボン−ナノファイバー、又はカーボンブラックを充填した、導電性形状記憶ポリウレタン複合体を含む、実施態様16に記載の装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11