特許第6570856号(P6570856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミマキエンジニアリングの特許一覧

<>
  • 特許6570856-印刷方法 図000002
  • 特許6570856-印刷方法 図000003
  • 特許6570856-印刷方法 図000004
  • 特許6570856-印刷方法 図000005
  • 特許6570856-印刷方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6570856
(24)【登録日】2019年8月16日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/17 20060101AFI20190826BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20190826BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20190826BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20190826BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20190826BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20190826BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20190826BHJP
【FI】
   B44C1/17 M
   B05D3/06 102B
   B41M5/00 100
   B41M5/00 134
   B41M5/52 100
   B41J2/01 129
   B05D1/28
   B05D7/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-60614(P2015-60614)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179588(P2016-179588A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】大西 勝
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−184409(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/096074(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/073305(WO,A1)
【文献】 特表2016−508080(JP,A)
【文献】 特開2014−124941(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/103941(WO,A1)
【文献】 特開平11−170684(JP,A)
【文献】 特開2014−004821(JP,A)
【文献】 特表2002−536213(JP,A)
【文献】 米国特許第06174634(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0144479(US,A1)
【文献】 特開平05−208478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/17
B05D 1/28
B05D 3/06
B05D 7/00
B41J 2/01
B41M 5/00
B41M 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルベントUVインクからなる顔料系の印刷用インクを、紫外線を透過可能な転写シート上に塗布する印刷用インク塗布工程と、
塗布された前記印刷用インクを加熱するとともに前記印刷用インクに紫外線を照射して、前記印刷用インクを硬化させ印刷用インク層を被膜形成する印刷用インク層形成工程と、
前記印刷用インク層を媒体である布地に接着するためのソルベントUVインクからなる接着用インクを前記印刷用インク層の上に塗布する接着用インク塗布工程と、
前記接着用インクを前記媒体に押し付けた状態で、前記転写シートの、前記印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して前記接着用インクを完全硬化させ接着用インク層を形成する接着用インク層形成工程と、
前記接着用インク層形成工程後に、前記転写シートを前記印刷用インク層から剥離して前記媒体に前記印刷用インク層を転写するインク層転写工程とを備え
前記媒体である前記布地の表面には、毛羽立ちがあり、
前記インク層転写工程後の前記媒体では、前記毛羽立ちの先端よりも前記媒体の表面側に前記印刷用インク層が形成されていることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
ソルベントUVインクからなる顔料系の印刷用インクを、紫外線を透過可能な転写シート上に塗布する印刷用インク塗布工程と、
布された前記印刷用インクを加熱するとともに前記印刷用インクに紫外線を照射して、前記印刷用インクを硬化させ印刷用インク層を被膜形成する印刷用インク層形成工程と、
前記印刷用インク層を媒体である布地に接着するためのソルベントUVインクからなる接着用インクを前記媒体に塗布する接着用インク塗布工程と、
前記印刷用インク層を前記接着用インクに押し付けた状態で、前記転写シートの、前記印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して前記接着用インクを完全硬化させ接着用インク層を形成する接着用インク層形成工程と、
前記接着用インク層形成工程後に、前記転写シートを前記印刷用インク層から剥離して前記媒体に前記印刷用インク層を転写するインク層転写工程とを備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
前記接着用インク塗布工程と前記接着用インク層形成工程との間に、塗布された前記接着用インクを加熱するとともに前記接着用インクに紫外線を照射して、前記接着用インクを半硬化させる接着用インク半硬化工程を備えることを特徴とする請求項1または2記載の印刷方法。
【請求項4】
前記接着用インク層形成工程では、排気孔が形成された筺体の中に前記転写シートおよび前記媒体を配置した状態で、あるいは、排気孔および開口部が形成された筺体の中に前記媒体を配置するとともに前記印刷用インク層が前記筺体の内部に配置されるように前記転写シートによって前記開口部を塞いだ状態で、前記排気孔から前記筺体内の空気を吸引して前記筺体内を減圧させるとともに紫外線を照射することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項5】
前記接着用インク層形成工程では、紫外線を透過可能なゴム材料からなる押付部材によって前記転写シートの、前記印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から前記転写シートを押すとともに前記押付部材を透過するように紫外線を照射することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料系のインクを使用して印刷用の媒体に印刷を行う印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料系のインクを使用して布地(織物)に印刷を行う印刷方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷方法では、インクジェット方式によって布地の表面に水性顔料インクを塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/73305号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
布地のように表面に毛羽立ちがある印刷用の媒体に顔料系のインクを用いて印刷を行う場合、毛羽立ちの先端部分にまで顔料系のインクを十分に染み込ませることは困難である。そのため、特許文献1に記載の印刷方法によって顔料系のインクを使用して布地に印刷を行う場合、布地の表面の毛羽立ちの先端部分にインクが染み込んでいない箇所が生じるおそれがある。また、毛羽立ちの先端部分にインクが染み込んでいない箇所が生じると、インクが染み込んでいない箇所の影響で、布地の表面に形成される画像がぼやけてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、表面に毛羽立ちがある布地等の印刷用の媒体に顔料系のインクを使用して印刷を行う場合であっても、媒体の表面に鮮明な画像を形成することが可能な印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷方法は、ソルベントUVインクからなる顔料系の印刷用インクを、紫外線を透過可能な転写シート上に塗布する印刷用インク塗布工程と、塗布された印刷用インクを加熱するとともに印刷用インクに紫外線を照射して、印刷用インクを硬化させ印刷用インク層を被膜形成する印刷用インク層形成工程と、印刷用インク層を媒体である布地に接着するためのソルベントUVインクからなる接着用インクを印刷用インク層の上に塗布する接着用インク塗布工程と、接着用インクを媒体に押し付けた状態で、転写シートの、印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して接着用インクを完全硬化させ接着用インク層を形成する接着用インク層形成工程と、接着用インク層形成工程後に、転写シートを印刷用インク層から剥離して媒体に印刷用インク層を転写するインク層転写工程とを備え、媒体である布地の表面には、毛羽立ちがあり、インク層転写工程後の媒体では、毛羽立ちの先端よりも媒体の表面側に印刷用インク層が形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、上記の課題を解決するため、本発明の印刷方法は、ソルベントUVインクからなる顔料系の印刷用インクを、紫外線を透過可能な転写シート上に塗布する印刷用インク塗布工程と、塗布された印刷用インクを加熱するとともに印刷用インクに紫外線を照射して、印刷用インクを硬化させ印刷用インク層を被膜形成する印刷用インク層形成工程と、印刷用インク層を媒体である布地に接着するためのソルベントUVインクからなる接着用インクを媒体に塗布する接着用インク塗布工程と、印刷用インク層を接着用インクに押し付けた状態で、転写シートの、印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して接着用インクを完全硬化させ接着用インク層を形成する接着用インク層形成工程と、接着用インク層形成工程後に、転写シートを印刷用インク層から剥離して媒体に印刷用インク層を転写するインク層転写工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の印刷方法では、印刷用インク層形成工程において印刷用インクを転写シート上で硬化させることで被膜形成した印刷用インク層を、接着用インク層形成工程において媒体に接着した後に、インク層転写工程において転写シートを印刷用インク層から剥離して印刷用インク層を媒体に転写している。そのため、本発明では、表面に毛羽立ちがある布地(媒体)に顔料系の印刷用インクを使用して印刷を行う場合であっても、媒体の表面では、毛羽立ちの中に印刷用インク層の全体が染み込まず、毛羽立ちの先端よりも媒体の表面側に印刷用インク層が形成される。したがって、本発明の印刷方法で印刷を行えば、表面に毛羽立ちがある布地(媒体)に顔料系の印刷用インクを使用して印刷を行う場合であっても、媒体の表面に鮮明な画像を形成することが可能となる。
【0009】
また、本発明の印刷方法では、接着用インク塗布工程において、接着用インクを印刷用インク層の上に塗布する場合には、たとえば、インクジェットプリンターを用いて印刷用インクの塗布と接着用インクの塗布とを行うことで、印刷用インク層と接着用インクとの位置合わせを容易に行うことが可能になる。なお、「ソルベントUVインク」とは、紫外線によって硬化可能なモノマーやオリゴマー等を溶剤で希釈したインクである。
【0010】
本発明の印刷方法は、接着用インク塗布工程と接着用インク層形成工程との間に、塗布された接着用インクを加熱するとともに接着用インクに紫外線を照射して、接着用インクを半硬化させる接着用インク半硬化工程を備えることが好ましい。このように構成すると、接着用インク塗布工程において、粘度の低い接着用インクが塗布される場合であっても、接着用インク層形成工程における接着用インクのだれを抑制することが可能になる。したがって、接着用インク層形成工程において、適切な位置に接着用インク層を形成することが可能になり、その結果、接着用インク層を用いて印刷用インク層を媒体に確実に接着することが可能になる。
【0011】
本発明において、接着用インク層形成工程では、排気孔が形成された筺体の中に転写シートおよび媒体を配置した状態で、あるいは、排気孔および開口部が形成された筺体の中に媒体を配置するとともに印刷用インク層が筺体の内部に配置されるように転写シートによって開口部を塞いだ状態で、排気孔から筺体内の空気を吸引して筺体内を減圧させるとともに紫外線を照射することが好ましい。このように構成すると、接着用インク層形成工程において、媒体と接着用インクとを密着させた状態で、あるいは、印刷用インク層と接着用インクとを密着させた状態で紫外線を照射して接着用インクを完全硬化させることが可能になる。したがって、接着用インク層形成工程において、接着用インク層を用いて印刷用インク層を媒体に確実に接着することが可能になる。
【0012】
また、本発明において、接着用インク層形成工程では、紫外線を透過可能なゴム材料からなる押付部材によって転写シートの、印刷用インク層が形成されている面と反対側の面から転写シートを押すとともに押付部材を透過するように紫外線を照射しても良い。この場合であっても、接着用インク層形成工程において、媒体と接着用インクとを密着させた状態で、あるいは、印刷用インク層と接着用インクとを密着させた状態で紫外線を照射して接着用インクを完全硬化させることが可能になるため、接着用インク層を用いて印刷用インク層を媒体に確実に接着することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の印刷方法で印刷を行えば、表面に毛羽立ちがある布地等の印刷用の媒体に顔料系のインクを使用して印刷を行う場合であっても、媒体の表面に鮮明な画像を形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態にかかる印刷用インク塗布工程および印刷用インク層形成工程を説明するための模式図である。
図2】本発明の実施の形態にかかる接着用インク塗布工程を説明するための模式図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる接着用インク層形成工程を説明するための模式図である。
図4】本発明の実施の形態にかかる印刷方法で印刷された印刷物の断面図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかる接着用インク層形成工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
(印刷物の印刷方法)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷用インク塗布工程および印刷用インク層形成工程を説明するための模式図である。図2は、本発明の実施の形態にかかる接着用インク塗布工程を説明するための模式図である。図3は、本発明の実施の形態にかかる接着用インク層形成工程を説明するための模式図である。図4は、本発明の実施の形態にかかる印刷方法で印刷された印刷物1の断面図である。
【0017】
本形態の印刷方法で印刷される印刷物1(図4参照)は、印刷用の媒体2の表面に文字、絵(図形)および/または模様等が描かれたものである。媒体2は、その表面に毛羽立ちがある印刷用の媒体である。本形態の媒体2は、布地(テキスタイル)である。図4に示すように、媒体2の表面には、媒体2の表面に文字や絵等を描くための印刷用のインク(印刷用インク)3の層である印刷用インク層4が、接着用のインク(接着用インク)5の層である接着用インク層6によって接着されている。なお、媒体2は、表面に毛羽立ちがある和紙等の紙や、表面に凹凸が形成されたマット状若しくは砂目状のプラスチック、金属またはガラスであっても良い。
【0018】
印刷用インク3は、顔料系のインクである。また、印刷用インク3は、ソルベントUVインクである。すなわち、印刷用インク3は、紫外線が照射されることで硬化するUV硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂)を有機溶剤で希釈したものである。この印刷用インク3は、印刷用インク層4を140%引き伸ばしても印刷用インク層4に亀裂や割れが生じない柔らかいインクであり、たとえば、株式会社ミマキエンジニアリング製の型番「LF−140」で特定されるUVインクを有機溶剤で希釈したものである。印刷用インク3は、媒体2の表面の色と異なる色に着色されている。また、印刷用インク3には、媒体2の表面に文字や絵等を描くための複数色のカラーインクが含まれている。なお、印刷用インク3に含まれるUV硬化型樹脂は、たとえば、ラジカル重合若しくはカチオン重合によって硬化するタイプのいずれか1つ、または、これらの混合物である。
【0019】
接着用インク5は、印刷用インク層4を媒体2に接着するためのソルベントUVインクである。この接着用インク5は、接着用インク層6を140%引き伸ばしても接着用インク層6に亀裂や割れが生じない柔らかいインクである。また、接着用インク5は、透明なクリアインクである。なお、接着用インク5は、媒体2の表面の色と同じ色に着色されていても良い。また、接着用インク5に含まれるUV硬化型樹脂は、たとえば、ラジカル重合若しくはカチオン重合によって硬化するタイプのいずれか1つ、または、これらの混合物である。
【0020】
媒体2への印刷は、以下のように行われる。まず、図1に示すように、枠状のシートホルダ8に貼り付けられた転写シート9を台10の上にセットする。台10の上には、印刷用インク3および接着用インク5を硬化させるためのヒータ11が設置されており、たとえば、転写シート9にヒータ11が接触するように台10の上に転写シート9をセットする。なお、転写シート9は、紫外線を透過可能な材料で形成されている。また、転写シート9は、たとえば、ポリプロピレンまたはシリコーンゴムで形成されている。あるいは、転写シート9は、表面にシリコーン樹脂またはフッ素樹脂がコーティングされたフィルム状部材によって構成されている。
【0021】
その後、図1に示すように、転写シート9の上方に配置されるインクジェットプリンターのインクジェットヘッド12から印刷用インク3を吐出させて、転写シート9の上に印刷用インク3を塗布する(印刷用インク塗布工程)。また、印刷用インク塗布工程で塗布された印刷用インク3をヒータ11で加熱するとともに、紫外線ランプ13を用いて印刷用インク3に紫外線を照射して、印刷用インク3を硬化させ、印刷用インク層4を被膜形成する(印刷用インク層形成工程)。すなわち、ヒータ11を用いて有機溶剤を蒸発させるとともに紫外線ランプ13を用いてUV硬化型樹脂を硬化させることで印刷用インク3を硬化させ、印刷用インク層4を被膜形成する。本形態では、印刷用インク層形成工程において、印刷用インク3を完全硬化させている。
【0022】
その後、図2に示すように、インクジェットヘッド12から接着用インク5を吐出させて、印刷用インク層4の上に接着用インク5を塗布する(接着用インク塗布工程)。接着用インク塗布工程では、印刷用インク層4の全体を覆うように接着用インク5を塗布する。その後、塗布された接着用インク5をヒータ11で加熱するとともに、紫外線ランプ13を用いて接着用インク5に紫外線を低照度で照射して、接着用インク5を半硬化させる(接着用インク半硬化工程)。すなわち、ヒータ11を用いて有機溶剤を蒸発させるとともに紫外線ランプ13を用いてUV硬化型樹脂を半硬化させることで接着用インク5を半硬化させる。接着用インク半硬化工程では、たとえば、接着用インク5の粘度が10万mPa・sec以下となるように、接着用インク5を半硬化させる。
【0023】
その後、シートホルダ8に貼り付けられた状態の転写シート9を台10から取り外して、図3に示すように、接着用インク5を媒体2に押し付けた状態で、転写シート9の、印刷用インク層4が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して、接着用インク5を完全硬化させ接着用インク層6を形成する(接着用インク層形成工程)。接着用インク層形成工程では、上面に開口部が形成されるとともに排気孔15aが形成された筐体15の中に媒体2を配置し、かつ、印刷用インク層4が筐体15の内部に配置されるように筐体15の開口部を転写シート9で塞いだ状態で、排気孔15aから筐体15の内部の空気を吸引して筐体15の内部を減圧させるとともに、紫外線ランプ13を用いて紫外線を照射する。なお、筐体15の中では、上面が平面状または曲面状に形成された台16の上面に媒体2が貼り付けられている。
【0024】
その後、転写シート9を印刷用インク層4から剥離して媒体2に印刷用インク層4を転写する(インク層転写工程)。インク層転写工程が終わると、図4に示すように、接着用インク層6によって媒体2の表面に印刷用インク層4が接着されて媒体2への印刷が完了する。
【0025】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、印刷用インク層形成工程において印刷用インク3を転写シート9上で硬化させることで被膜形成した印刷用インク層4を、接着用インク層形成工程において媒体2に接着した後に、インク層転写工程において転写シート9を印刷用インク層4から剥離して印刷用インク層4を媒体2に転写している。そのため、本形態では、表面に毛羽立ちがある印刷用の媒体2に顔料系の印刷用インク3を使用して印刷を行う場合であっても、媒体2の表面では、毛羽立ちの中に印刷用インク層4の全体が染み込まず、毛羽立ちの先端よりも印刷物1の表面側に印刷用インク層4が形成される。したがって、本形態の印刷方法で印刷を行えば、表面に毛羽立ちがある印刷用の媒体2に顔料系の印刷用インク4を使用して印刷を行う場合であっても、媒体2の表面に鮮明な画像を形成することが可能となる。
【0026】
また、本形態では、接着用インク塗布工程において、インクジェットプリンターのインクジェットヘッド12を用いて、接着用インク5を印刷用インク層4の上に塗布しているため、印刷用インク層4と接着用インク5との位置合わせを容易に行うことが可能になる。
【0027】
本形態では、接着用インク半硬化工程において、接着用インク5を加熱するとともに接着用インク5に紫外線を照射して、接着用インク5を半硬化させている。そのため、本形態では、接着用インク塗布工程において、粘度の低い接着用インク5が塗布される場合であっても、接着用インク層形成工程における接着用インク5のだれを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、接着用インク層形成工程において、適切な位置に接着用インク層6を形成することが可能になり、その結果、接着用インク層6を用いて印刷用インク層4を媒体2に確実に接着することが可能になる。
【0028】
本形態では、接着用インク層形成工程において、筐体15の中に媒体2を配置するとともに、印刷用インク層4が筐体15の内部に配置されるように筐体15の開口部を転写シート9で塞いだ状態で、排気孔15aから筐体15の内部の空気を吸引して筐体15の内部を減圧させている。そのため、本形態では、接着用インク層形成工程において、媒体2と接着用インク5とを密着させた状態で紫外線を照射して、接着用インク5を完全硬化させることが可能になる。したがって、本形態では、接着用インク層形成工程において、接着用インク層6を用いて印刷用インク層4を媒体2に確実に接着することが可能になる。
【0029】
(他の実施の形態)
上述した形態では、接着用インク層形成工程において、上面に開口部が形成された筐体15の中に媒体2を配置するとともに、筐体15の開口部を転写シート9で塞いだ状態で、排気孔15aから筐体15の内部の空気を吸引して筐体15の内部を減圧させている。この他にもたとえば、接着用インク層形成工程において、排気孔が形成された蓋付きの筐体の中に媒体2および転写シート9を配置した状態で、排気孔から筐体の内部の空気を吸引して筐体の内部を減圧させても良い。この場合には、筐体の蓋は、紫外線を透過可能な材料で形成されている。
【0030】
また、接着用インク層形成工程において、図5に示すように、紫外線を透過可能なゴム材料からなる押付部材18によって転写シート9の、印刷用インク層4が形成されている面と反対側の面から転写シート9を押すとともに押付部材18を透過するように紫外線を照射しても良い。この場合であっても、接着用インク層形成工程において、媒体2と接着用インク5とを密着させた状態で紫外線を照射して、接着用インク5を完全硬化させることが可能になるため、接着用インク層6を用いて印刷用インク層4を媒体2に確実に接着することが可能になる。なお、押圧部材18は、全体がゴム材料で形成されたゴムパッド、あるいは、ゴム材料で形成された袋の中に液体や気体が封入されたパッドである。また、図5に示す例では、たとえば、上面が曲面状に形成された台19の上面に媒体2が貼り付けられており、転写シート9を押す押圧部材18の下面は、台19の上面の形状に応じて変形する
【0031】
上述した形態では、接着用インク半硬化工程において、接着用インク5を加熱するとともに接着用インク5に紫外線を照射して、接着用インク5を半硬化させている。この他にもたとえば、接着用インク5の粘度が比較的高いのであれば、接着用インク半硬化工程が省略されても良い。また、接着用インク5の粘度が比較的高いのであれば、接着用インク半硬化工程において、接着用インク5への紫外線照射を行わずに、接着用インク5の加熱のみを行っても良い。
【0032】
上述した形態では、接着用インク塗布工程において、印刷用インク層4の上に接着用インク5を塗布しているが、接着用インク塗布工程において、媒体2の表面に接着用インク5を塗布しても良い。この場合には、接着用インク層形成工程において、転写シート9上の印刷用インク層4を媒体2上の接着用インク5に押し付けた状態で、転写シート9の、印刷用インク層4が形成されている面と反対側の面から紫外線を照射して、接着用インク5を完全硬化させ接着用インク層6を形成すれば良い。この場合であっても、媒体2の表面において、毛羽立ちの中に印刷用インク層4の全体が染み込まず、毛羽立ちの先端よりも印刷物1の表面側に印刷用インク層4が形成されるため、上述した形態と同様に、媒体2の表面に鮮明な画像を形成することが可能となる。
【0033】
上述した形態では、印刷用インク3は、ソルベントUVインクであるが、印刷用インク3は、UV硬化型樹脂からなるUVインクであっても良い。この場合には、印刷用インク層形成工程において、印刷用インク3に紫外線を照射して、印刷用インク3を硬化させ、印刷用インク層4を被膜形成すれば良い。また、上述した形態では、接着用インク5は、ソルベントUVインクであるが、接着用インク5は、UVインクであっても良い。この場合には、接着用インク半硬化工程において、接着用インク5に紫外線を低照度で照射して、接着用インク5を半硬化させれば良い。なお、印刷用インク3および接着用インク5がUVインクである場合には、台10の上にヒータ11が設置されていなくても良い。
【符号の説明】
【0034】
2 媒体
3 印刷用インク
4 印刷用インク層
5 接着用インク
6 接着用インク層
9 転写シート
15 筺体
15a 排気孔
18 押付部材
図1
図2
図3
図4
図5